本出願は、2018年7月17日出願の米国仮特許出願第62/699,032号、2018年5月11日出願の米国仮特許出願第62/670,180号、2017年12月6日出願の米国仮特許出願第62/595,516号の優先権を主張し、その全体が本明細書において提示されているかのように参照により援用される。
本明細書では、本実施形態を完全に理解するために、特定の構造、構成要素、材料、寸法、処理ステップ、技法など多くの具体的詳細が示されている。しかしながら、実施形態はこれらの具体的詳細なしに実施されてもよいことは当業者であれば理解するであろう。他の例では、実施形態を不明瞭にしないために、周知の構造や処理ステップについての詳しい説明は行われていない。層、領域、基材などの要素が別の要素の「上」や「上方」にあるとされる場合、それは他の要素上に直接存在してもよいし、又は介在要素が存在してもよい。一方、ある要素が別の要素の「直接上」又は「直接」上方にあるとされる場合、介在する要素は存在しない。要素が別の要素の「真下、「下」、「下方」にあるとされる場合、それは他の要素の真下や下方に存在してもよいし、又は介在要素が存在してもよいことも理解されよう。一方、ある要素が別の要素の「真下」や「すぐ下方」にあるとされる場合、介在する要素は存在しない。
以下の詳細な説明における実施形態の提示を不明瞭にしないために、当技術分野で知られているいくつかの構造、構成要素、材料、寸法、処理ステップ、及び技法は、提示や例示を目的として組み合わされていてもよく、詳細に説明されていない場合がある。他の例では、当技術分野で知られているいくつかの構造、構成要素、材料、寸法、処理ステップ及び技法については、まったく説明が行われない場合もある。以下の説明はむしろ本明細書で説明する様々な実施形態の特徴的な機能や要素に焦点を合わせたものであることを理解されたい。
説明するシステムと方法によれば、正常な人と色覚異常(CVD)の人の色知覚を向上させるために、比色性能測定(CPM)での所望の透過スペクトルと所望の性能を有する光学デバイスの設計と構造が提供される。このシステムと方法は、正常な人とCVDの人の色覚を矯正又は向上させるために色知覚を向上または変更するように、380nm~780nmの可視光の透過スペクトルを修正するデバイスを開示する。380nm~780nmの可視光の透過スペクトルを修正するデバイス名は、「光学デバイス」または同等のものである。「光学システム」には、同じ有効可視スペクトル及び/又はCPMで同じ有効性能を有する複数のデバイスが含まれる。デバイス、光学デバイス、光学系及び/又はレンズの用語は、本説明では互換的に使用される。
光学デバイスは、レンズ、サングラス、眼科用ガラス、コンタクトレンズ、光学フィルタ、ディスプレイ、フロントガラス、眼内レンズ(lOL)、人間の水晶体(HCL)、窓、プラスチック、その他のデバイス又はデバイスの一部、もしくは紫外線(UV)、可視光線(VIS)、赤外線などの電磁放射を透過、吸収、又は反射することが可能なデバイスのシステムで構成される。この光学デバイスは、幾何学的形状、屈折率、厚さを含む任意の屈折力、曲率又は他の適切な特性を有していてもよい。吸収性着色剤や反射性薄膜は、別々に又は組み合わせて使用され、所望の透過スペクトル又は有効透過スペクトルを有する光学デバイス又は光学デバイスのシステムを設計及び構築するために基材に適用される。着色剤には、基材の表面に塗るか、又は基材に入れられる染料や色素が含まれる。反射薄膜には、交互のパターン又は他の積み重ねパターンで積み重ねられ、基材の表面に用いられたり、基材内にコーティングされる、高屈折率及び低屈折率を有する膜層が含まれる。反射薄膜には、屈折率が可変で、基材の表面に用いられたり、基材内にコーティングされるルゲートフィルタが含まれる。基材には、ガラス、プラスチック(アクリル、ポリカーボネート、Trivex、CR39など)、結晶、石英、その他の透明又は半透明の材料が含まれる。カラーアピアランスモデル(Color Appearance Model,CAM)を使用して、色知覚を定量的にモデル化することができる。標準CAMには、CIE 1931 XYZ、CIE 1931 xyY、CIE 1976 LUVなど、国際照明委員会(CIE)によって確立されたものが含まれる。CIE 1976 LUV CAM定義に準拠して、本発明における色は、色相、彩度、明度の3要素によって定義される。
このシステムと方法は、特に明記されていない限り、1976 LUV CAM形式で比色パラメータ又は値を開示する。1976 LUVを既定のCAMとして使用しても、本説明はその特定のCAMに限定されるものではない。実際、CIE LABを含め、色空間座標を持ついかなるCAMも既定のものに相当する場合がある。既定のCAMは、説明するシステムと方法を例示するためのモデル例の1つにすぎない。既定の色空間座標は(L、u、v)である。
1976 CIE LABの色のカラーアピアランスモデルでは、基準白色(RW)を用いて、透過率と反射率スペクトルを介して光学デバイスのCPMを決定する。
RWは、基準知覚環境(Reference Perceptual Environment,RPE)に対して、一つ又は複数の光源によって照らされた光学デバイスの装飾的色合いの、一度の光学デバイスの通過(シングルパス)と2度の光学デバイスの通過(ダブルパス)を介した知覚を計算する際に使用される。RPEは、知覚色を対比又は参照するために使用される、隣接、背景及び/又は周囲の環境で構成される。そのような環境の例には、物体の色などの知覚色が対比・比較される空気、白い紙、その他の白い表面、着色面、鏡面が含まれる。
RWは、光学デバイスを通して見たRPEに対して、一つ又は複数の光源によって照らされた、光学デバイスを介した色の知覚の計算に使用される。そのようなRPEの例には、光学デバイスを通して見た空気、白い紙、その他の白い表面、着色面、鏡面が含まれる。
同じ光源又は光源の同じ組み合わせの下では、一度光学デバイスを通過した(シングルパス)光学デバイスの美容用の色と2度光学デバイスを通過した(ダブルパス)光学デバイスの装飾的色合いは、両方の色合いが同じRPEである場合、同じRWを有する。同様に、透過スペクトル又は反射スペクトルが異なる2つの異なる光学デバイスは、両方の光学デバイスのRPEが同じであれば、RWは同じである。このようなRWは、三刺激値XRW,t、 YRW,t及びZRW,tによって表される。ここで、{X、W、Z}は一般に三刺激値を示し、tは光学デバイスの装飾的色合い(この場合、シングルパス色とダブルパス色の両方)を示す。
RWは、CIE標準光源、その他の単一光源、又は光源の組み合わせの、380nmから780nm内の正規化分光分布(Spectral Power Distribution,SPD)の知覚白色点(White Point,WP)であってもよい。式1は、一つ又は複数の光源又は光源によって照らされた、周囲RPEに対する、シングルパスとダブルパスの両方の色について、光学デバイスの装飾的色合いの知覚を評価するのに使用されるRWの三刺激値を計算する式を示す。
式1では、光源(λ)はCIE標準光源、その他の単一光源、又は光源の組み合わせを示し、
は、例えば、1931 CIE 2度標準観察者などの等色関数群である。
装着者又は受領者によって知覚される(すなわち、「シングルパス」)強調される又は補正される光学デバイスの美容用につけられた色は、外部の視者によって知覚される(すなわち、「ダブルパス」)ものとは異なり得る。光学デバイス(Optical device、OD)の装着者又は受領者によって知覚されるODの装飾的色合いは、ODによって一度フィルタリングされる入射光源又は外部光源によるものである。ODは、この構成では、OD装着者に対するシングルパスフィルタとして機能する。この点に関して、本発明では「シングルパス」という用語を使用する。
外部の視者によって知覚されるODの装飾的色合いは、ODによって2回フィルタリングされる反射光路によるものである。より一般的には、反射光路は、外光がODを通過してバックストップ面、例えば、外部ODの場合は装着者の皮膚、コンタクトレンズの場合は装着者の目の虹彩又は強膜に接触し、ODを介して反射又は部分的に反射される際に、ODによって一度フィルタリングされ、光線は外部の視者に到達するまでにODによって2回目のフィルタリングが行われる外光のフィルタリングプロセスを示している。このようにして、ODは外部視者に対してダブルパスフィルタとして機能する。バックストップ面は、可視光スペクトルの特定の波長を部分的又は完全に選択的に吸収し、他の波長を反射することができる。このODによる二重のフィルタリングプロセスは、外部の視者によって知覚されるODの美容用につけられた色全体の設計に含めることができる。この点に関して、本発明では「ダブルパス」という用語を使用する。
シングルパス及び/又はダブルパスの光選別では、380nm~780nmの特定の波長は、ODの使用者(又は内部の受領者)及び/又は外部の視者又は外部の受領者(例えば、ODを見ている別の人)に到達する前に、空気、涙、角膜又は別の媒体とODの境界面によって部分的又は完全に反射される、もしくは反射されない。
光源は、昼光、くもりの天候での光といった自然光と、蛍光、白色光、LED(発光ダイオード)などの人工光で構成される。CIE標準光源は、自然光の場合はD65、代表的な蛍光の場合は{F2、F7、F11}のセット、白色光の場合はAで構成される。LED 3000K、LED 4000K、LED 5000Kは、それぞれ暖色、中間色、寒色の光を生成する対応する色温度を有するLEDである。
図1は、LED 3000K 110、LED 4000K 120、LED 5000K130の代表的な正規化SPD 100を示す。測光的に、3つのSPD(LED 3000K 110、LED 4000K 120、LED 5000K 130)は、次の特性を持つLED SPDを表す。(1)少なくとも1つの420nmと480nmの間の局所ピーク発光(LED130のピーク140、LED120のピーク150、LED110のピーク160として示す)、具体的には、440nmと460nmの間(青色ピークと呼ぶ)、(2)少なくとも1つの460nmと520nmの間の局所谷(低)発光(LED120の谷170、LED110の谷180、LED130の谷190として示す)、具体的には、470nmと500nmの間(青色谷と呼ぶ)、(3)少なくとも1つの520nmと640nmの間の局所ピーク発光(LED130のピーク191、LED120のピーク192、LED110のピーク193として示し、黄色ピークと呼ぶ)。青色と黄色のピークの相対発光を調整すると、所望のLED色温度になる。具体的には、LED110(暖色LED)の場合、黄色のピーク193は、例えば、正規化されたSPDで少なくとも0.25(25%)だけ青色のピーク160より実質的に高くてもよい。LED120(中間色LED)の場合、黄色のピーク192は、例えば、正規化されたSPDで約0.249(24.9%)以内の差で、青色のピーク150と実質的に同じでもよい。LED130(寒色LED)の場合、黄色のピーク191は、例えば、正規化されたSPDで少なくとも0.25(25%)だけ青色のピーク140より実質的に低くてもよい。
式2は、(式1で表す)光学デバイスの装飾的色合いを照らしたものと同じ一つ又は複数の光源で照らされた、光学デバイスを通して見た周囲のRPEに対する、光学デバイスを通しての色(例えば、マンセル色、石原色)の知覚の計算に用いられるRWの三刺激値を評価する式を示す。
式2では、Y
ODは、光学デバイスの透過スペクトルT(λ)を用いて計算された、シングルパス透過における光学デバイスのWPの三刺激値のY要素である。
図2は、2つの光学デバイスの透過スペクトル200を示す。両方の光学デバイスは、図2に示したように、OD Aが透過スペクトル210、OD Bが透過スペクトル220を有する。光学デバイス(A、B)は、ポリカーボネートに配合した染料を有し、厚さ3mm、直径72mmのピアノ光学レンズに成形することができる。OD Aは、屋内と屋外の両方での使用に適した、汎用の眼科用レンズとしての使用を目的としている。OD Bは、サングラスレンズとしての使用を目的としている。4種類の耐光性と熱安定性を有する染料を使用して、図示の透過スペクトルを有する両光学デバイスを製造する。染料は光学デバイスにおいて、459nm(スペクトル220の吸収ピーク230、スペクトル210の吸収ピーク240として示す)、575nm(スペクトル210の吸収ピーク250、スペクトル220の吸収ピーク260として示す)、595nm(スペクトル220の吸収ピーク270、スペクトル210の吸収ピーク280として示す)、636nm(スペクトル220の吸収ピーク290、スペクトル210の吸収ピーク291として示す)で個別の吸収ピークを生成する。そのような染料には、ローダミン系やシアニン系の染料を含まれてもよい。染料は、プラスチック母材内の濃度負荷が異なるだけである。波長依存の吸収ピークを持つ塗料は、各OD(光学デバイス)の透過スペクトルに対応する局所ピーク吸収230、240、250、260、270、280、290、291を生成することができる。
ストップバンド又は透過谷とも呼ばれる吸光度ピークは、局所ピークの吸光度が透過スペクトルにおいて局所的に低い点を生じるような、380nmと780nmを中心とするスペクトルの吸光度であり、結果として得られる局所的な最低透過値は、短波長でのピークと長波長でのピークを含む、2つの直接隣接する局所透過ピークの透過値よりも少なくとも3%低い。380nmを中心とする(すなわち、ピーク吸収波長を有する)ストップバンド(スペクトル220では吸収ピーク292として、スペクトル210では吸収ピーク293として示す)には、長波長で1つの隣接する局所透過ピークがある。780nmを中心とするストップバンド(スペクトル220では吸収ピーク294として、スペクトル210では吸収ピーク295として示す)には、短波長で1つの隣接する局所透過ピークがある。例えば、図2には、実質的に380nm(吸収ピーク292、吸収ピーク293)、459nm(吸収ピーク230、吸収ピーク240)、575nm(吸収ピーク250、吸収ピーク260)、595nm(吸収ピーク270、吸収ピーク280)、780nm(吸収ピーク294、吸収ピーク295)を中心とするストップバンドがある。これは、ストップバンドが中心にあるか、ピークに達しているか、特定された波長で吸光度ピークを有する状態と同等である。
パスバンド又は吸光度の谷とも呼ばれる透過ピークは、局所ピーク透過が透過スペクトルにおいて局所的に高い点を生じるような、380nmと780nm以内のスペクトル透過であり、結果として得られる局所的な最高透過値は、短波長と長波長とに1つずつある2つの直接隣接する透過谷の透過値より少なくとも3%高い。380nmを中心とする(すなわち、ピーク透過波長をもつ)パスバンドには、直接隣接する局所透過谷が長波長では1つしか必要としない。780nmを中心とするパスバンドには、直接隣接する局所透過谷が短波長では1つしか必要としない。例えば、図2には、実質的に410nm(透過ピーク241、透過ピーク242)、500nm(透過ピーク243、透過ピーク244)、780nm(透過ピーク294、透過ピーク295)を中心とするパスバンドがある。これは、パスバンドが中心にあるか、ピークに達しているか、特定された波長で透過ピークを有する状態と同等である。
OD(光学デバイス)の透過スペクトルには、400nmと520nmを中心とする少なくとも1つのストップバンド(吸収ピーク230、吸収ピーク240)と、540nmと620nmを中心とする少なくとも1つのストップバンド(吸収ピーク250、吸収ピーク260、吸収ピーク270、吸収ピーク280)がある。
OD Aの場合、20mgから30mgの「459染料」、15mgから30mgの「574染料」、15mgから35mgの「594染料」、1mgから10mgの「636-染料」染料」を3ポンドのポリカーボネート樹脂に配合し、レンズ形状に成形した。
OD Bの場合、20mgから40mgの「459染料」、30mgから60mgの「574染料」、35mgから75mgの「594染料」、1mgから10mgの「636-染料」染料」を3ポンドのポリカーボネート樹脂に配合し、レンズ形状に成形した。
一般に、染料はコンタクトレンズ及びlOLの中又は上に添加することができる。これらの染料は、ヒドロゲル、シリコーンヒドロゲル、アクリル、イオン性又は非イオン性ポリマー又は他の適切な材料と共重合させることができる。共重合では、発色団を、アクリレート、スチレン、反応性二重結合などの適切な化学基で官能基化する必要がある。デバイス基材に染料を吸収させることも可能である。染料の共重合なしで染料をデバイス基材マトリックスに懸濁又は封入することも可能である。
表1は、(1)OD AとOD B両方について、(2)D65、F2、F7、F1 1、A、LED-3000K、LED-4000K、LED-5000Kの8つの異なる照明条件下で、(3)(a)周囲環境における光学デバイスのシングルパス及びダブルパスの装飾的色合いの知覚、(b)デバイスの装着者又は光学デバイスの透過率の受領者としての光学デバイスによる色知覚、の2つのRPEへ適用されたRW三刺激値を開示する。光学デバイスを通して知覚された色には、マンセル色、石原色覚異常(CVD)検査表の色、自然色、人工色など、考え得るあらゆる色が含まれる。
表1は、例として、OD A、OD Bへの式1、2の適用を示している。RWは表1の値で構成されている。OD A、OD BのRW三刺激値は、CIE D65、CIE F2、CIE F7、CIE F11、CIE A、又はLED 3000K、LED 4000K、又はLED 5000Kの特定のLED光源の下で、周囲RPEにおけるシングルパスとダブルパスODの装飾的色合いでもある。
CIE 1976 CAM(Color Appearance Model、カラーアピアランスモデル)と他のCAMは、正常な人の色覚や三色型色覚を正確にモデル化できる。正常三色型色覚とは、色錐体と呼ばれる目の3つの色センサに基づく色の知覚である。L錐体は長波長可視光に最も敏感で、M錐体は中波長可視光に最も敏感で、S錐体は短波長可視光に最も敏感である。CAMでは、三色の人間の色覚が3つの等色関数(Color Matching Functions、CMF)を使用して定量化され、それぞれがCAMのL錐体、M錐体、S錐体のセットの各色錐体の感度を複製する。CIEには、1931 2度標準観測者(1931 SO(Standard Observer))と1964 10度標準観測者(1964 SO)の2種類のCMFがある。1931 SO及び1964 SOの場合、x ̄、y ̄、z ̄はそれぞれ、L錐体、M錐体、S錐体のCMFを表す。CMFの感度は、波長が変化すると変化する場合がある。つまり、CMFは波長の関数λである。
図3は、正常な色覚を持つ人のCIE 1976 LUV色域300と、それに関連するマクアダム楕円例を示し、これは、知覚的に区別できない色を含む色域領域の例である。パステルカラー320は白色点(WP)に近く、マクアダム楕円が小さく、飽和色310はWPから遠く、通常、大きなマクアダム楕円を有する。CAMは、三色型色覚異常や二色型色覚異常などの色覚異常(CVD)を持つ人々の色知覚をモデル化することができる。三色型色覚異常では、第二色弱(2型異常3色覚者、緑色弱)と第一色弱(1型異常3色覚者、赤色弱)が優性型である。二色型色覚異常では、第二色盲、(2型異常3色覚者、緑色盲)と第一色盲(1型異常3色覚者、赤色盲)が優性型である。総称して、第一色弱、第一色盲、第二色弱、第二色盲は、赤緑色盲又は色覚異常(CVD)という。通常、赤緑CVDの人は、赤、緑、及び茶色、黄色、オレンジ(すなわち、赤と緑の混合色)などの派生色を効果的に区別できない。赤緑CVDでは、赤及び/又は緑と青などの「冷たい色調の(寒色)」色が混ざった色を効果的に区別できない場合がある。例えば、赤緑CVDの人は、シアン、青、紫及び/又はピンクの色を混同してしまう場合がある。
図4は、2型異常3色覚及び第二色覚異常の人のCIE 1976 LUV色域400を示す。第二色弱410に関連するマクアダム楕円のサンプルが描かれている。これは、「混同」色を含む色域領域の例である。軽度、中度、重度の第二色弱の人は、小さいサイズのマクアダム楕円420、中くらいのサイズのマクアダム楕円430、大きいサイズのマクアダム楕円440を有する。図4では、第二色覚異常の混同色線450も示している。それらの線に沿った色やそれらの線に近い色はすべて、2型異常3色覚よりも重度のCVDである第二色覚異常者にとっては混同色である。しかしながら、異なる混同色線上の色は、第二色覚異常者によって弁別可能である。
図5は、1型異常3色覚及び第一色覚異常の人のCIE 1976 LUV色域500を示す。第一色弱510に関連するマクアダム楕円のサンプルが描かれ、「混乱してわかりにくい」色を含む色域領域の例が含まれる。軽度、中度、重度の第一色弱の人は、小さいサイズのマクアダム楕円520、中くらいのサイズのマクアダム楕円530、大きいサイズのマクアダム楕円540を有する。図5では、第一色覚異常の混同色線550も示している。それらの線に沿った色やそれらの線に近い色はすべて、1型異常3色覚よりも重度のCVDである第一色覚異常者にとっては混同色である。第二色覚異常者の場合と同様に、異なる混同色線上の色は、第一色覚異常者によって弁別可能である。
正常色覚者と赤緑CVDの人との間のCMF(Color Matching Functions、等色関数)のばらつきに関して、1931 SO(CIE Standard Ovserver、標準観測者)の場合、CMFのピーク感度は、それぞれ599nm、555nm、446nmにある。1型異常3色覚の人の場合、L錐体のピーク感度は599nmとは異なる波長、例えば、598nm以下又は600nm以上にあり、さらに又は独立して、ピーク感度値が正常者のL錐体CMFの100%未満である。2型異常3色覚の人の場合、M錐体のピーク感度は555nmとは異なる波長、例えば、554nm以下又は556nm以上にあり、さらに又は独立して、ピーク感度値が正常者のM錐体CMFの100%未満である。
また、1964 SOの場合、CMFのピーク感度は、それぞれ595nm、557nm、445nmにある。1型異常3色覚の人の場合、L錐体のピーク感度は595nmとは異なる波長、例えば、594nm以下又は596nm以上にあり、さらに又は独立して、ピーク感度値が正常者のL錐体CMFの100%未満である。2型異常3色覚の人の場合、M錐体のピーク感度は557nmとは異なる波長、例えば、556nm以下又は558nm以上にあり、さらに又は独立して、ピーク感度値が正常者のM錐体CMFの100%未満である。
1931 SOと1964 SOの両方で、第一色覚異常者は見当たらないか、もしくはL錐体を使用していない。従って、L錐体CMF、x ̄は、そのような第一色覚異常者の色覚を補正又は改善する光学デバイスの設計では使用されない。また、M錐体とS錐体のCMFのピーク感度の値と波長位置も正常色覚者のものとは異なる場合がある。
1931 SOと1964 SOの両方で、第二色覚異常者は見当たらないか、もしくはM錐体を使用していない。従って、M錐体CMF、y ̄は、そのような第二色覚異常者の色覚を補正又は改善する光学デバイスの設計では使用されない。また、L錐体とS錐体のCMFのピーク感度の値と波長位置も、正常色覚者のものとは異なる場合がある。
黄色覚(YCV)又は青黄色混乱は、赤緑CVDに加えて、本開示で対処する別の形態のCVDである。YCVは、色覚の白色点(White Point、WP)が中間色又は白色(中間色に近いものを含む)から黄色、黄オレンジ、茶色、又は黄緑色に変化するときに、ヒトを含む哺乳類の色覚で生じるものである。多くの原因の中で、YCVは、眼内の天然の水晶体(NCL)又は眼内レンズ(lOL)などの黄色の人工レンズの黄変が原因である場合がある。多くの場合、これに限らないが、YCVは年齢に関連しており、40代前半の人がYCVを発症し始めることがあり、YCVは平均して加齢とともに悪化する。YCVは主に後天性CVDであり、一般的に遺伝性である赤緑CVDの優性型とは異なる。NCL又はlOLの黄変は、これらの光学媒体による青、シアン、及び/又は緑の波長、すなわち、380nm~580nmの吸収の増加に起因する場合がある。580nm~780nmの吸収の一部は、NCL又はlOLによってより低い吸収レベルで発生する場合もある。このような不均衡な吸収によって、光学媒体の黄変によるYCVが引き起こされる。
本明細書に記載のシステム及び方法では、赤、緑、青、黄、及び、シアン(青緑)やマゼンタ(赤紫)などの派生色にまたがる代表的な色のセットを使用して、正常色覚者の色覚と、2型異常3色覚、第二色覚異常、1型異常3色覚、第一色覚異常の人の色覚を特徴付ける。使用するそのような代表的な色セットの1つとしては、1296マンセルカラーがある。マンセル100色相テストやファーンズワースD-15テストなどの周知のCVDテストでは、マンセルカラーを使用して色覚異常を判定する。マンセルカラーの赤、緑、青、黄色の反射スペクトルのサブセットと派生色が使用可能である。マンセルの赤色に設定された反射スペクトルは、マンセルの名称である2.5YR 5/4、7.5R 5/4、2.5R 5/4、5RP 5/4、10P 5/4、10YR 5/4、10R 5/4、10RP 5/4の1つ以上から構成されている。マンセルの緑色に設定された反射スペクトルは、マンセルの名称である5BG 5/4、10G 5/4、5G 5/4、10GY 5/4、5GY 5/4、10BG 5/4の1つ以上から構成されている。マンセルの青色に設定された反射スペクトルは、マンセルの名称である5B 5/4、10BG 5/4、5BG 5/4、5P 5/4、10B 5/4、10P 5/4、10PB 5/4の1つ以上から構成されている。マンセルの黄色に設定された反射スペクトルは、マンセルの名称である10GY 5/4、5GY 5/4、5Y 5/4、10YR 5/4、2.5YR 5/4、10Y 5/4、10YR 5/4の1つ以上から構成されている。赤、緑、青、黄色、及び派生色のさらなる反射スペクトルは、葉、花、木などの自然色の反射スキャンから得られる。
図6は、正常色覚者とCVDの人の色覚を特徴付けるのに用いられるマンセルカラー600の例を示す。外側の色域610は、飽和マンセルカラーで囲まれている。内側の色域620は、パステル色のマンセルカラーで囲まれている。重心点630は、CIE D65光源のWPである。図6のデータは、光源の例としてのCIE D65昼光による照明から得られたものである。その他多くの光源が可能であり、CIE基準やスペクトル分光法により容易に入手可能である。
色の違いや明度の違いの評価を含むすべてのCPM評価では、(1)使用する緑色のマンセル色セットには5G 5/4、10GY 5/4、5GY 5/4のマンセル色名が含まれ、(2)使用する赤色のマンセル色セットには、2.5YR 5/4、7.5R 5/4、10RP 5/4のマンセル色名が含まれ、(3)青色のマンセル色セットには、10B 5/4、5B 5/4、 10PB 5/4のマンセル色名が含まれ、(4)黄色のマンセル色セットには、10Y 5/4、10YR 5/4、5Y 5/4のマンセルの色名が含まれている。
パステルカラーの色域を形成するパステルマンセルカラーのセットには、10B 5/4、5B 5/4、10BG 5/4、5BG 5/4、10G 5/4、5G 5/4、10GY 5/4、5GY、5/4、10Y 5/4、5Y 5/4、10YR 5/4、2.5YR 5/4、10R 5/4、7.5R 5/4、2.5R 5/4、10RP 5/4、5RP 5/4、10P 5/4、5P 5/4、10PB 5/4が含まれる。
飽和色域を形成する飽和マンセル色セットには、7.5B 5/10、10BG 5/8、2.5BG 6/10、2.5G 6/10、7.5GY 7/10、2.5GY 8/10、5Y 8.5/12、10YR 7/12、5YR 6/12、10R 6/12、2.5R 4/10、7.5RP 4/12、2.5RP 4/10、7.5P 4/10、10PB 4/10、5PB 4/10が含まれる。
マンセルカラーシステムでは、bは青の色相、「G」は緑の色相、「Y」は黄色の色相、「R」は赤の色相、「P」は紫の色相を表す。2つの色相の組み合わせは、これら2つの色相の間にある色相を示す。例えば、「RP」は赤の色相と紫の色相の間の色相を示し、「BG」は青の色相と緑の色相の間の色相を示す。本明細書では、一部の中間の色相が一意の名称を有する場合があり、例えば、「BG」をシアンと呼ぶこともある。
もう一つの代表的な色セットとしては、石原色盲検査で使用する色から構成されたものがある。石原色覚異常検査表の38表版の色の反射スペクトルは、2016石原色覚異常検査表の38表版(発行元:金原貿易株式会社、東京、日本)によるものである。図7a及び7bは、本発明で使用する石原赤色セットを形成する7色と石原緑色セットを形成する5色の反射率をそれぞれ示す。これらの石原色は、赤と緑の明度差(LD)のCPM評価に用いられる。
図7aは、7つの石原赤色700aを示し、それぞれの色は、曲線740a、750a、760a、770a、780a、790a、791aによって表されている。曲線740a、750a、760a、770a、780a、790a、791aは次の範囲の反射率を示す。すなわち、(1)380nmから499nmの反射率710aは約0.2(20%)から0.45(45%)、(2)500nmから589nmの反射率720aは約0.4(40%)から0.55(55%)、(3)590nmから780nmの反射率730aは約0.5(50%)から0.95(95%)。
図7bは、5つの石原緑色700bを示し、それぞれの色は、曲線710b、720b、730b、740b、750bによって表されている。曲線710b、720b、730b、740b、750bは次の範囲の反射率を示す。すなわち、(1)380nmから480nmの反射率760bは約0.25(25%)から0.45(45%)、(2)481nmから580nmの反射率770bは約0.45(45%)から0.6(60%)で局所反射ピーク771bが約505nmから530nm、(3)581nmから720nmの反射率780bは約0.4(40%)から0.65(65 %)、(4)721nmから780nmの反射率790bは、約0.45(45%)から0.9(90%)。
図8は、CIE 1976 LUV色空間810(四角で示す)における石原反射スペクトルの拡張サンプルセットの知覚色800を示す。石原色サンプルには、シアン、緑、黄色、オレンジ、赤の色相が含まれ、マンセルのパステル820と飽和色域830をそれぞれ接続された円マークと接続された星マークで示すように重ね合わせる。
本明細書に記載の光学デバイスは、単一の光源、光源の組み合わせ及び/又は異なる照明環境において複数の別個の光源によって照明されるよう設計されてもよい。光源には、光生成体(太陽、反射面及び/又は蛍光体など)などの主要な光源が含まれる。すべての光源は、特徴付け可能なSPD(Spectral Power Distribution、正規化分光分布)を有している。本発明で使用されるCIE標準光源には、(1)CIE D55、D65、D75などの昼光光源、(2)CIE F2、F7、F11などの蛍光光源、(3)CIE Aなどの白色光源又はフィラメント光源、(4)CIE Lシリーズなどの発光ダイオード(LED)光源、(5)これらの光源の2つ以上の組み合わせがある。光源の組み合わせは、オフィススペースでの昼光と蛍光灯の混合など、同時に複数の光源がある照明環境に適している。そのような混合手法の1つとしては、式3で示す2つ以上の光源の線形結合がある。
式3では、{a}は、混合される各光源の寄与に重み付けする一連の定数である。例えば、混合光は、75%のF2蛍光と25%のD65昼光で構成されるか、又はそれらでモデル化されてもよい。通常、すべての{a}の合計は1(100%)に等しく、各aの値は0(0%)~1(100%)の範囲である。
本明細書で説明するように、特に明記しない限り、既定の光源はCIE D65である。
説明するシステムと方法には、CVDを修正又は低減したり、色のコントラストを増やして正常な色覚を向上させる、光学デバイスの設計と製造の両方に役立ついくつかの重要なCPMが含まれている。上記のシステム及び方法では、色相、彩度、及び/又は明度に関して、色間の色差として定義される2つ以上の色の対比を行う。これらの色差の3要素は、独立して、又は一括に評価してもよい。
CIE 1976 LUV CAMでは、色域座標はuとvで示され、明度スケールはLで示され、色相、彩度、明度を完全に定義する。上記システムと方法では、設計及び製造された光学デバイス(OD)の明度が主要なCPMであり、以下の式4~6で定義される。
光源は、任意の単一の光源であってもよく、もしくは、任意の混合光T(λ)は、光学デバイスの透過スペクトルである。LODは、光学デバイスの明度である。安全又はその他の理由から、一部又はすべての可視波長での透過率を最小限に抑えるために、光学デバイスの最小透過率を0.1%以上として設計・構成することができる。例えば、そのような透過率の下限値は、550nmから620nm内、及び440nmから510nm内の一つ又は複数の波長に対して課されてもよい。
X、Y、Zで示す三刺激値は、光源のスペクトル、光学デバイスの透過率(シングルパス又はダブルパス)、CMF、視野内の色のSPD(反射率など)で構成される。三刺激値ODは、選択的光透過光学デバイス(OD)での三刺激値を示す。
光学デバイスの明度は、ODの明所視及び暗所視の明度と同様のCPMである。これらは、それぞれ、照明又は非常に薄暗い光源下での光学デバイスの見かけの透明度である。赤緑CVD及び/又はYCVの人に対する色補正や改善は、色差の増加によって実現可能であり、これは2つ以上の色の知覚した差が拡大したものである。2つ以上の色の明度の違いは、色のコントラストの要素である。本発明において、光学デバイスを通して知覚される色の明度は、重要なCPMである。式7~9は、光学デバイスを通して知覚される色iの明度を定義する。ここで、iは、マンセル色セット、石原色セット、又はその他の自然色や人工色のサンプルなどの選択した色のインデックスである。
ここで、Ci(λ)は光学デバイスに入射するスペクトルパワー分布(Spectral Power Distribution、SPD)である。そのようなSPDは、選択された色iの反射又は発光スペクトルであってもよい。
もう1つの重要なCPMは、2色又は2つの色セット間の明度差(LD)である。以下の式10は、赤色セットと緑色セットの間のLDを示し、赤緑LDを形成する。
ここで、Rは赤色セットの色数、Gは緑色セットの色数である。
CVDを修正又は低減、又は正常な色覚の改善を目的として、赤緑コントラストの改善を行うために、選択された赤と緑の色セット間のLD(赤緑LD)を、光学デバイスを介した知覚により増加させる。赤緑LDは、オレンジ、バラ色、マゼンタ、ピンク、紫、茶色、黄緑、シアン(青緑)など、赤や緑の派生色のコントラストを同時に拡大する。
光学デバイスの透過スペクトルT(λ)は、そのような赤緑LDを増幅するよう設計及び構成されてもよい。赤と緑の色セットについての上記マンセルカラースペクトルは、赤緑LDのCPMを評価及び改善するのに使用可能である。
図7a、7b及び/又は図8のような、赤と緑の色セットについて説明した石原色スペクトルを使用して、赤緑LDのCPMを評価し増大させることができる。
赤、緑、黄色、青、及び派生色のさらなる自然色や人工スペクトル色のスペクトルを使用して、赤緑LDのCPMを評価し増大させることができる。マンセル色、石原色、及び赤、緑、黄色、青及び/又は派生色のその他の自然色及び人工色のスペクトルの任意の組み合わせを使用して、赤緑LDのCPMを評価し増大させることができる。例えば、裸眼で知覚される選択されたマンセル色又は石原色の赤緑LDが何らかの値Aであり、ODを介して知覚されるものが何らかの値Bである場合、赤緑LDの変化/差異はB-Aである。正の値の赤緑LDは、選択した赤色又は色セットの明度が、選択した緑色セットの明度よりも高いことを意味する。負の値の赤緑LDについてその逆もまた同様である。
式11、12は、三刺激値に基づくCIE LUV色空間における<u、v>の評価を定義する。uvは、CIE LUVに言及する場合、本明細書で参照される色度座標である。
さらなるCPMにより、デバイスの白色点シフト(White Point Shift、WPS)と色付けされた色相である所望の透過スペクトルを有する光学デバイスの設計と構築が可能になる。WPSおよび色付けされた色相は、デバイスの美的外観に直接影響する。式13はWPSを定義する。
ここで、<U
*wp,V
*wp>および<U
ηwp,V
ηwp>は、光学デバイスのuv座標と裸眼での白色点(WP)をそれぞれ示す。これらのWP座標は、特定の光源又は混合光に対応している。これらのWP座標は、正常色覚や色覚異常などの特定の色覚にも対応している。WP及びWPSは、シングルパス及び/又はダブルパスしたODの色に関連付けられている。光学デバイスの色相は、シングルパス又はダブルパスしたODの色における光学デバイスのWPの色相である。一般に、ODの未特定のWPは、シングルパスのWPを指し、ダブルパスのWPを指すものではない。
明度に依存しない赤緑の色差(RG
LI色差)もCPMの1つである。図4及び図5に示すように、色覚異常のマクアダム楕円には、赤、緑、派生色の広い色域が含まれる。マクアダム楕円の内部の色は、第一色覚異常者や第二色覚異常者、とりわけ第一色弱や第二色弱の人にとっては色が混同したり、弁別が困難である。第一色盲及び第二色盲の人は、さらに長く包み込むマクアダム楕円を有する。二色型色覚者も、図4及び図5に示すように、混同色線に沿って隣接するほとんど又はすべての色を混同する可能性がある。従って、RG
LI色差を増加させることは、混同を軽減し、赤緑CVDの人及び/又は正常色覚者の赤緑と派生色の色識別を向上させる効果的な方法である。RG
LI色差の所望の増大を実現する所望の透過スペクトルを有する光学デバイスの設計と構築によれば、CVDの修正又は軽減及び/又は正常色覚を向上させるために、他のCPMも実現できる。式14は、uv座標でのRG
LI色差式を示す。
ここで、評価用に選択された赤と緑の色は、単色、又は一つ又は複数の赤色セット、及び一つ又は複数の緑色セットであってもよい。
特定されたマンセルの赤色セットとマンセルの緑色セットは、RGLI色差、RGLI色差率、LAB RGLI色差、LAB RGLI色差率、赤緑LDを含むCPM計算へ入力される。指定された石原赤色セットと石原緑色セットは、赤緑LDを含むCPM計算へ入力される。指定されたマンセル青色セットとマンセル黄色セットは、BYLI色差、BYLI色差率、LAB BYLI色差、及びLAB BYLI色差率を含むCPM計算へ入力される。
一つ又は複数の選択された赤色セットの平均統計を使用して、<u赤、v赤>、<a赤、b緑>及びL赤を列挙することができる。一つ又は複数の選択された緑色セットの平均統計を使用して、<u緑、v緑>、<a緑、b緑>及びL緑を列挙することができる。
一つ又は複数の選択された青色セットの平均統計を使用して、<u青、v青>、<a青、b青>及びL青を列挙することができる。一つ又は複数の選択された黄色セットの平均統計を使用して、<u黄、v黄>、<a黄、b黄>及びL黄を列挙することができる。
CPM計算におけるLuv色システムの<L、u、v>とCIE LAB色システムの<L、a、b>の個々の座標変数は、CPMに一つ又は複数の色セットが指定されていることを条件に、定義された色セットの基になる色の対応する座標の個々の平均である。LuvのLは、LabのLと同じである。例えば、u赤は、選択した赤色セットのすべての色のu座標値の平均であり、v赤は、選択した赤色セットのすべての色のv座標値の平均である。選択した緑、黄、青の色セットについても同様である。例えば、a赤は、選択された赤色セットのすべての色のa座標値の平均であり、b赤は、選択された赤色セットのすべての色のb座標値の平均である。選択した緑、黄、青の色セットについても同様である。例えば、Lredは、選択した赤色セットのすべての色のL座標値の平均である。選択した緑、黄、青の色セットについても同様である。
赤と緑の色セットのコントラストを、設計及び製造された光学デバイスで見た場合と、その色コントラストを裸眼だけで見た場合とでRG
LI色差率を比較したCPMは式15で表される。
ここで、<u
*、v
*>と<u
η.v
η>は、それぞれ光学デバイスと裸眼での色空間座標を表している。
全赤緑色差(RG
全色差)のCPMは、式16に示すように、明度、色相、彩度の色の3要素すべてを含む赤緑色差を定義する。式16を示す。
赤と緑の色セットのコントラストを、設計及び構築された光学デバイスで見た場合と、その色コントラストを裸眼だけで見た場合とでRG
全色差を比較したCPMを式17に示す。
ここで、<L
*、u
*、v
*>と<L
η、p
η、n
η>は、それぞれ光学デバイスと裸眼での明度を含む色空間座標を表している。つまり、「
*」はODの使用を示し、「η」は裸眼の使用を示す。
すべてのCPMと色域を含むすべての測色特性の評価では、式4に示すような三刺激値を使用して、光学デバイスが関与する色覚の基になる色空間座標を評価する。すべてのCPMと色域を含むすべての測色特性の評価では、式7に示すような三刺激値を使用して、光学デバイスと、色セットを含む選択された色に関係する色覚の基になる色空間座標を評価する。
色相シフト(Hue Shift、HS)のCPMは、光学デバイスの設計と構築における因子である。HSは、透過スペクトルを介して、光学デバイスを使用した場合と使用しない場合の、元の色相を維持又は変更する光学デバイスの能力として定義される。いくつかの実施形態では、HSは、「保存、保存する又は保存された」カテゴリに制約される。すなわち、例えば、裸眼で見たときに色が元々緑の色相を有していた場合、光学デバイスで見たときに知覚される色が実質的に緑の色相を維持する場合、光学デバイスは「緑の色相を保持」している。いくつかの実施形態では、HSは、「変更、変更する、又は変更した」カテゴリに制約される。つまり、例えば、裸眼で見たときに色が元々緑の色相を有していた場合、光学デバイスで見たときに知覚される色が実質的に緑の色相から実質的に非緑の色相に変化すると、光学デバイスは「変更した緑の色相」を有する。HSは、緑、シアン、青、紫、赤、オレンジ、黄色、緑黄色、及び中間(白、グレー、黒を含む)の色相で構成される、知覚可能なすべての色相に適用される。
光学デバイスの透過スペクトルの設計と構築では、380nmから780nmの波長の一部又はすべての領域で最小透過限界(Minimum Transmission Limits、MTL)があると有利な場合がある。具体的には、500nmから650nmの一部又はすべての波長で0.01%以上のMTLがあると、信号機からの十分な照明が光学デバイスを通過し、運転者によって検出されることが可能となる。
明度に依存しない青黄色の色差(BYLI色差)は、黄色の色覚(YCV)を低減するように設計及び製造された光学デバイスにとって重要なCPMである。BYLIの色差が大きいほど、YCVを持つ人が黄色や青と、黄緑、シアン、黄オレンジ、紫などの派生色を弁別できるようになる。未補正のYCVでは、これらの色の弁別がさらに難しくなる。
YCVを補正又は低減するため、及び/又は、正常色覚を向上させるため、及び/又は他のCPMを達成するために、BY
LI色差及びBY
LI色差率の増加を達成するのに望ましい透過スペクトルを有する光学デバイスの設計及び構成がされる。式18は、BY
LI色差式を示す。
ここで、評価用に選択された青と黄色は、単色又は一つ又は複数の青色セットと一つ又は複数の黄色セットである。
式19に示すCPMは、設計及び構成された光学デバイスで青と黄色の色セットのコントラストを見た場合と、その色コントラストを補助なしの裸眼で見た場合とでYCVの人のBY
LI色差率(パーセント)を比較する。
ここで、<u
*、v
*>と<u
η、n
η>は、それぞれ光学デバイスで見た場合と補助なしの裸眼で見た場合のYCV視認者の色空間座標を示す。
YCVを改善する光学デバイスの透過スペクトルを調整すると、(1)青、黄色、類似色の弁別をより良く行うために、パーセント差を含むより大きなBYLI色差、(2)補助又は補正されたYCVのWPS、つまり、OD、NCL、IOL、及びその他の光変換媒体を通過した後の網膜上の光のWPSの減少、及び/又は(3)許容できる表面的色合いとしての光学デバイスの最小WPSを達成可能である。
色バランスは、光学デバイスなどを典型的には目的とする、知覚色の調整及び/又は制御(総称して「うまく扱う」という)である。色バランスは、デバイスのスペクトル要件により、光学デバイスの除去できない装飾的色合いをうまく扱うことができる。例えば、光学デバイスの性能をRGLI色差率で向上させるには、光学デバイスの透過スペクトルで550nm~600nmの黄色の波長のみを抑制することで、光学デバイス上の青、シアン又は紫の除去できない装飾的色合いが知覚される。色バランスを保つことで、光学デバイスの透過スペクトルをさらに変更し、中間色や別の望ましい色を実現又はそれに向けての改善を行うことができる。色バランスの別の応用例としては、例えば、昼光、蛍光、白色光、LED光などの異なる照明条件下で他の様々な光学デバイスの装飾的色合いを継続的にうまく扱うCVDを補正する光学デバイスを設計及び構成する。このような色バランスを色彩恒常という。さまざまな用途において、ある色バランスの場合では、単一の光学デバイス又は光学システムから可変スペクトルを生成して対応する可変照明条件を補正するクロミック着色剤を使用する場合もある。また他の場合では、さまざまな照明条件下での光学デバイスの装飾的色合いの色バランスをとるために、光学デバイスの単一又は固定の透過スペクトルの設計及び製造が慎重に行われる。
図9は、赤色OD(光学デバイス)の形で具現化された、光学デバイスの透過スペクトル940を含む飽和赤色レンズスペクトル900を示す。この光学デバイスは、CVDの人と正常色覚者の赤緑識別を向上させることを目的としている。このODは、それぞれ約480nm、525nm、670nmにピーク吸収を有する、3つの広域吸収性色素を用いて作成してもよい。375nmにピーク吸収を有する紫外(UV)吸収色素を使用して、最大410nmの紫外光や高エネルギー可視光(HEVL)を吸収してもよい。UV吸収剤は、人間の目に有害な電磁スペクトルを遮断すると同時に、広域スペクトル色素に対するUV及びHEVLの漂白効果を低減する働きをする。その結果、ODは耐光性を維持し、その透過スペクトルを保持できる。OD明度のCPMは、CIE D65照明下で49である。図9のODの透過スペクトル940には、(1)最大410nmでの低透過率910が0%~20%であり、(2)411nmから570nmの中程度の透過率920が5%~30%であり、(3)571nmから660nmまでの高透過率930が10%~60%であるという3つの特性がある。
図10は、図9に示す透過スペクトル900を有する赤色ODの比色効果1000を示す。水平同心楕円は、マクアダム楕円1010である。細い実線、細い破線及び実線の円はそれぞれ、裸眼の第一色弱又は第一色覚異常の観察者の飽和マンセル色域、パステルマンセル色域及びWP1020である。太い実線、太い破線及び黒い四角はそれぞれ、光学デバイスで見ている第一色弱又は第一色覚異常の観察者の飽和マンセル色域1040、パステルマンセル色域1050及びWP1030である。中間から、シングルパスでのODのWP1030は、<u、v>座標で0.067、つまり0.005距離単位と0.15距離単位の間、実質的に赤、黄、オレンジ、又はこれらの色相の組み合わせに向けてシフトする。パステルマンセル色域1050と飽和マンセル色域1040(広い色知覚を表す)の両方も、赤に向けてシフトしている。第一色覚異常の混同色線1060が単色の赤又はその近くに収束すると、2つの別個の混同色線上又はそれに隣接して配置された色を弁別する能力が向上する。シングルパス光では、赤色OD及び/又は色知覚の赤にシフトした色域1040、1050により、第一色弱又は第一色覚異常者及び/又は正常色覚者の色識別が向上する。
図10では、第一色覚異常者のマクアダム楕円1010(及び第二色覚異常者の非常に類似した楕円)がマンセル色域1040、1050の上に重ねられている。赤色OD1030と、青色又は黄色ではないODは通常すべて色知覚全域をシフトして、中央の最小のマクアダム楕円に対して、赤の色相側又は緑の色相側のいずれかで、隣接又はより遠くのマクアダム楕円との交差をより良好に行えるようにする。赤緑CVDの人は、異なるマクアダム楕円の色分別が可能であり、同じマクアダム楕円上又はその近くに配置された色に混乱する。従って、青又は黄色ではないODは、第一色覚異常者と第二色覚異常者の両方の色識別を向上させることができる。
以前は混同していた色の間で知覚されるLD(明度差)の大きさを増加させる光学デバイスは、明度情報によりCVDがそれらの色の弁別をより良好に行えるようにする。裸眼では、CIE D65の下で、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択マンセル色セットで表される場合は0.9、(2)これらの色が選択石原色セットで表される場合は-0.5である。正のLD値は、赤色セット(オレンジやピンクなどの派生色を含む)が緑色セット(シアンや黄緑色などの派生色を含む)よりも明度が高く、負のLD値の場合はその逆であることを示す。
図9及び10で規定されている赤色ODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑のLDは、(1)これらの色が選択されたマンセルの赤と緑の色セットで表される場合は2.5又は1.0と4.0の間、(2)これらの色が選択された石原の赤と緑の色セットで表される場合、1.3又は0.5と3.5の間となる。赤色ODは、第一色覚異常者と第二色覚異常者の両方の視覚を改善し、それらの色の間のLDを増加させることで、以前は混同していた赤、緑、派生色の識別をより良好に行えるようにする。図9及び10で規定されている赤色ODのRGLI色差率は、選択したマンセルの赤と緑の色セットに基づいて、9.0%又は5.0%と15%の間である。パステルカラーの色相シフト(HS)CPM(パステルマンセル色域で表される)に関して、ODによって緑、シアン、青の色相がそれぞれオレンジ、黄色、赤の色相又は同様の色相に変更された。HS CPMは赤とオレンジの色相を維持した。飽和色(飽和マンセル色域で表される)のHSに関して、ODによって緑と黄色の色相がそれぞれ黄色とオレンジ又は類似の色相に変更された。HS CPMは他の飽和色相を維持した。用途によっては、ODは、飽和色とパステル色の両方の元の色相をより多く保持することがより望ましい場合がある。例えば、本発明で開示される他の光学デバイスでは、飽和色とパステル色の両方の緑の色相を保持することができる。色差や色差率CPMの場合など、色反射スペクトルが必要なCPM評価では、特に明記されていない限り、定義された色セットを含むマンセル色を選択するか、図示の色スペクトルから定義された色セットを含む石原色を選択する。
図11は、バラ色の光学デバイス(OD)の形態で具現化された光学デバイスの透過スペクトル1110のプロット1100を示す。このバラ色のODを第1のバラ色ODという。このODは、CVDの人と正常色覚者の赤緑の色識別を向上させるのに利用する。このODは、約438nmのピーク吸収1170、約520nmのピーク吸収1160、約555nmのピーク吸収1180を有する3つの狭スペクトル吸収性色素を用いて作成することもできる。390nmにピーク吸収を有するUV吸収色素は、最大405nmのUVや高エネルギー可視光(high-energy visible light、HEVL)1190を吸収するのに使用することができる。この光学デバイスの基材は、任意のプラスチック、ガラス、又は他の光学的に透明な材料であればよい。
図11は、380nmから780nmのOD又は四色型色覚透過スペクトルの透過スペクトル1110における4つのパスバンド1120、1130、1140、1150を示す。少なくとも1つのパスバンド1120は、440nmより短いピーク透過波長を有し、少なくとも2つのパスバンド1130、1140は440nm~600nmのピーク透過波長を有し、1つのパスバンド1130のピーク波長が別のパスバンド1140よりも少なくとも10nm短く、少なくとも1つパスバンド1150のピーク透過波長が600nmより長い。
図11のODの四色型色覚透過スペクトル1110は、440nmから600nmに中心がある2つのパスバンドの間に挟まれた少なくとも1つの1160を示し、そのようなストップバンドの吸光度は、少なくとも10nmを含む、少なくとも5nmのFWHM(full-width at half maximum、半値全幅)を有する。600nmより長い波長で少なくとも1つの吸光度ピークが存在する場合がある。ピーク吸光度が440nmから510nmのストップバンドの場合、そのピーク又は最大吸光度は80%未満であり、結果として得られる透過スペクトルは、ピーク吸光度の波長で20%以上である。
第1のバラ色OD(光学デバイス)は、ポリカーボネート(PC)を使用しており、これはPCの飛散防止特性により、眼科、自動車、航空宇宙及びその他の用途に適した光学的に透明なプラスチックである。直径80mmの円形ディスクである10mmの均一厚さのODに色素が注入される。このディスクは、研磨、フィルム又は処理コーティング(例えば、スクラッチ防止、防眩、防曇)などの後処理が施され、所望の形状に成形又は切断される。さらに、ディスクは、視力及び他の視力矯正用途のための正しい処方に研磨されてもよい。このODで使用される各着色剤は、これらの着色剤の吸収厚10mmあたりの濃度が0.1から100マイクロモルである。吸収の厚さは、光が吸収される場所を光が透過する物理的な距離として定義される。ODの最終的な吸収の厚さが10mmと異なる場合、同じ着色剤の濃度は、ビア・ランバート則に準拠して、同じ比例差によって調整できる。例えば、555nmにピーク吸収がある着色剤の濃度が10mmの吸収厚さあたり70マイクロモルである場合、同様の効果的な吸収を実現するには、その濃度が2mmの吸収厚さあたり350マイクロモルである必要がある。例えば、438nmにピーク吸収がある着色剤の濃度が1mmの吸収厚さあたり80マイクロモルである場合、同様の効果的な吸収を実現するには、その濃度が10mmの吸収厚さあたり8マイクロモルである必要がある。特定の構成では、ODの物理的な厚さは吸収の厚さである。あるいは、吸収厚さは、着色剤のコーティング厚さの物理的厚さである。
マンセルや石原の同じ色セットを使用して、ODを「赤色OD」と比較する場合、すべてのCPMを評価できる。その透過スペクトルと色域性能を図9及び10に示す。OD明度のCPMは、CIE D65照明の下で見た場合、84又は50~100であり、これは、例えば、屋内及び屋外の眼科使用に適した高い明度である。ODの明所及び暗所視感透過率は、それぞれ71%及び67%、又は両方とも40%と100%の間である。
図12は、図11のプロット1100に示される透過スペクトルを有するバラ色ODの比色効果を示すプロット1200を示す。細い実線、細い破線及び実線の円はそれぞれ、裸眼の赤緑CVD観察者の飽和マンセル色域、パステルマンセル色域及びWP1210である。太い実線、太い破線及び黒い四角はそれぞれ、ODで見ている赤緑CVD観察者の飽和マンセル色域1240、パステルマンセル色域1230及びWP1220を示す。ODのWP1220は、<u、v>座標で0.029、すなわち、0.001距離単位と0.2距離単位の間で赤の方へシフトする。このODは、見た目は赤みがかっているというよりバラ色であり、これにより、元々の白やパステル色がより良く保持される。広域の色知覚を表すパステル1230と飽和1240マンセル色域も赤の方にシフトするが、赤や暖色の色相は得られない。特に、暖色(例えば、赤、ピンク、オレンジ)が最も赤の方へシフトした。原色ではなく寒色ではない色(例えば、黄色や紫)は、暖色よりも赤へのシフトが少ない。寒色(例えば、緑、シアン、青)は、赤へのシフトが最も少ない。いくつかの寒色は、気付かないほどわずかに赤へとシフトしたり、JND(Just noticeable difference、最小可知差異)が得られなかった。
第1のバラ色ODのRGLI色差率は10.6%、つまり5%~20%である。パステル及び飽和マンセル色域の色相シフト(HS)CPMに関して、ODによって、緑、黄緑、黄色、及び青の色相をそれぞれ黄緑、黄、オレンジ、紫の色相又は類似の色相に変更された。HS CPMによって他のすべての色相が保持された。HSが最小であるため、本実施形態は、図9及び10に示す赤色ODよりも、裸眼で見た場合の元の色相がより良好に保持された。
図9及び図10に示す赤色ODの場合と同様に、第1のバラ色ODとその赤色シフト域は、ODがユーザの隣接する混同色線間の色距離を減少させる能力があるため、第一色弱第一色覚異常者の色認識/識別を向上させる。
図7及び図8の赤色ODの場合と同様に、第1のバラ色ODは、色知覚の色域をシフトすることで、中央の最小のマクアダム楕円と比較して、暖色相側の隣接する又はより遠くのマクアダム楕円との交差をより良好に行える。従って、第1のバラ色ODは、第二色覚異常者と第一色覚異常者の両方の色識別を向上させることができる。
第1のバラ色ODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色セットと反射スペクトルによって表される場合に3.0、又は0.5と4.5の間であり、(2)これらの色が選択された石原色セットと反射スペクトルによって表される場合に2.1又は0.5と4.5の間である。バラ色のODは、図7及び図8の赤色ODの赤緑LDの効果と同様に、それらの色の間のLDを増大させることで、以前は混同していた赤、緑及び派生色をより識別しやすくする。
図13は、第2のバラ色の光学デバイス(OD)の形で具現化された光学デバイスの透過スペクトル1310を表すプロット1300を示す。このバラ色ODを第2のバラ色ODとする。このODは、CVDの人や正常色覚者の赤緑色識別力を高めることを目的としている。このODは、約395nmのピーク吸収1320、438nmのピーク吸収1330、490nmのピーク吸収1340、570nmのピーク吸収1350、590nmのピーク吸収1360を有する5つの吸収性色素を使用して作成されたものである。このODの基材は、プラスチック、ガラス、又はその他の光学的に透明な材料である。この第2のバラ色ODは、光学的に透明なプラスチックであるCR-39を利用してもよい。色素コーティング処理は、色素を溶剤に溶解し、よく混合してから、光学パワーがゼロの2.5mmの均一な厚さを有するレンズに表面コーティングされる。視力矯正機能の有無にかかわらず、ODのコーティングは標準的な製造プロセスに従えばよい。丸いレンズブランクの直径は70mmである。コーティング処理は、ディッピング、スプレー、スピニング、又はその他の標準的なコーティング方法で行うことができる。色素コーティングの厚さは、一般的には、例えば、1ミクロン~80ミクロンであればよい。これらの色素の濃度は、色素コーティングが薄いため、20マイクロモル~20,000マイクロモルの範囲である。ディスクは、例えば、処理コーティング(例えば、スクラッチ防止、防眩、防曇)など後処理が施され、所望の形状にカットされてもよい。第2のバラ色ODの明度CPMは、CIE D65照明下で56、又は30と70の間である。ODの明所及び暗所視感透過率は、それぞれ28%及び34%、又は両方とも10%と50%の間である。
図13のプロット1300は、ODの透過スペクトル1310(380nmから780nmの四色型色覚透過スペクトル)におけるパスバンド1370、パスバンド1380、パスバンド1390、パスバンド1391を示す。1つのパスバンド1370のピーク透過波長は440nmより短く、2つのパスバンド1380、1390は440nmと610nmの間にピーク透過波長を有し、1つのパスバンドのピーク波長は他のパスバンドのピーク波長よりも少なくとも10nm短く、少なくとも1つのパスバンド1391は610nmより長いピーク波長を有する。591nmより長い波長で少なくとも1つの吸光度ピークが存在する場合がある。
図13のODの四色型色覚透過スペクトル1310は、440nmと610nmの間に中心がある2つのパスバンド1380、1390の間に挟まれたストップバンド1340を示し、そのようなストップバンドは、少なくとも8nmを含む、少なくとも5nmの最大値の80%で全幅の吸収を有する。最大吸光度の80%における全幅は、スペクトルのピーク吸光度の80%における吸光度バンドの幅である。最大透過率の80%での全幅は、スペクトルのピーク吸収率の80%でのパスバンドの幅である。最大の80%の全幅は、より一般的なFWFIM(full-width at 50% of maximum、最大の50%の全幅)の単純な数値変形である。
スペクトル1310の場合、対応するストップバンドは490nm1340を中心とし、局所谷の透過率は約37%、局所ピークの吸光度は63%である。従って、80%の最大吸光度での全幅は、63%×80%=50%での吸光度であるか、同等に透過率が50%である。よって、490nm1340を中心とするストップバンドの全幅と50%の吸光度は約10nmである。従って、ストップバンドでの最大吸光度の80%での全幅は10nmである。
571nmと780nmの間を中心とする少なくとも1つのパスバンド1391は、380nmと570nmの間を中心とする少なくとも1つのパスバンドのピーク透過率より高いピーク透過率1370、1380、1390を有する。例えば、395nmのストップバンド1320、438nmのストップバンド1330、490nmのストップバンド1340、520nmのストップバンド1392、570nmのストップバンド1350、590nmのストップバンド1360、780nmのストップバンド1394は、図13に示すストップバンドである。これは、ストップバンドが中央にある、又はこれらの特定された波長に吸収ピークがある状態に相当する。例えば、380nmのパスバンド1395、410nmのパスバンド1370、475nmのパスバンド1380、505nmのパスバンド1390、535nmのパスバンド1393、585nmのパスバンド1396、670nmのパスバンド1391は、図13に示すパスバンドである。これは、パスバンドが中心にある、又はこれらの特定された波長で透過ピークがある状態に相当する。
図14は、図13に関して説明した第2のバラ色ODの比色効果を表すプロット1400を示す。細い実線、細い破線及び実線の円はそれぞれ、裸眼の赤緑CVD観察者の飽和マンセル色域、パステルマンセル色域、及びWP1410を示す。太い実線、太い破線、及び黒い四角はそれぞれ、ODで見ている赤緑CVD観察者の飽和マンセル色域1420、パステルマンセル色域1430及びWP1440を示す。ODのWP1440は、<u、v>座標で0.036、具体的には0.001距離単位と0.2距離単位の間で赤にシフトする。このODは外見的にはバラ色で、図9及び図10の強い赤色ODよりも元の白色又は強いパステル色を保持する。パステル1430及び飽和1420マンセル色域も黄色、黄赤色又は赤にシフトする。具体的には、暖色(例えば、赤、ピンク、オレンジ)が最も赤くシフトした。原色ではない、寒色ではない色(例えば、黄色、紫)は、暖色よりも赤へのシフトが少ない。いくつかの寒色(例えば、緑、シアン、青)は、赤へシフトした場合、その度合いは最も小さい。他の寒色は、気付かないほどわずかに赤へとシフトしたり、JNDが得られなかった。さらに、一部の緑、シアン、青の色相は元の知覚のままだった。飽和シアンの多くといくつかの緑の色相は、さらに飽和するよう改善してもよい。
第2のバラ色ODのRGLI色差率は77.4%、具体的には、20%~100%である。パステル1430マンセル色域の色相シフト(Hue Shift、HS)CPMに関して、ODによって、緑、黄緑、黄色、及び青の色相がそれぞれ黄緑、黄、オレンジ、紫の色相又は類似の色相に変更した。飽和1420マンセル色域の色相シフト(HS)CPMに関して、ODによって黄緑、黄、オレンジの色相をそれぞれ黄色、オレンジ、赤の色相又は同様の色相に変えられた。色相シフト(HS)CPMは、パステル色と飽和色のセット又は色域の両方で、他のすべての色相を保持した。最小のHSのために、本実施形態では、図9及び図10に示す赤色ODよりも、裸眼で見たときの元の色相がより良好に保持された。
図9及び図10の赤色ODの場合と同様に、第2のバラ色ODとその赤方偏移の色知覚の全域1420、1430によれば、使用者にとっての隣接混同色線間の色距離をODが減少させることにより、第一色弱者や第一色覚異常者の色認識/識別がさらに向上する。図9及び図10の赤色ODの場合と同様に、第2のバラ色ODは、色知覚の色域をシフトし、中央の最小のマクアダム楕円と比較して、暖色相側の隣接する又はより遠くのマクアダム楕円との交差をより良好になる。従って、第2のバラ色ODは、第二色覚異常者及び第一色覚異常者の両方の色識別を向上させることができる。第2のバラ色ODを通して見たとき、赤と緑の色セットの赤緑LD(明度差)は、(1)これらの色が選択されたマンセル色セットで表される場合に2.0、又は0.5と4.0の間であり、(2)これらの色は、選択された石原色セットによって表される場合に1.6、又は0.5と4.0の間である。この第2のバラ色ODによれば、これらの色間のLDを増大させる、特に、石原色盲検査における赤と緑のLDを対象にすることで、第一色覚異常者、第二色覚異常者、正常色覚者が、以前は混同していた赤、緑、派生色を識別できるようになる。
図15は、青色ODと呼ばれる青色光学デバイス(OD)の形で具現化された、光学デバイスの透過スペクトル1510のプロット1500を示す。このODは、CVDの人と正常色覚者の赤緑色識別力を高めることができる。このODは、約475nm、570nm、590nm、615nm、665nmにピーク吸収1520、1530、1540、1550、1560を有する5つの狭スペクトル吸収色素を使用して作成することができる。
この青色ODは、眼科、窓、その他の一般的な用途に適した光学的に透明なプラスチックであるポリメチルメタクリレート(PMMA)から形成してもよい。色素を配合し、成形(すなわち、注入)して、直径68mmの円形ディスクである3mmの均一な厚さのODが得られる。このODで使用される各着色剤の濃度は、これらの着色剤の吸収厚3mmあたり0.1~300マイクロモルである。前に説明した他の配合及び成形プラスチックと同様に、製品の要件を満たすために、研磨、コーティング、研削、切断などのディスクの後処理も実行可能である。青色ODの明度CPMは、CIE D65照明下で40又は20~60である。ODの明所及び暗所視感透過率は、それぞれ13%及び17%、又は両方とも5%~70%である。
図15のプロット1500は、380nmから780nmまでの透過スペクトル1510(四色型色覚透過スペクトル1510)における4つのパスバンド1570、1580、1590、1591を示す。少なくとも1つのパスバンド1570は479nmより短いピーク透過波長を有し、少なくとも1つのパスバンド1580は480nmと570nmの間にピーク透過波長を有し、少なくとも1つのパスバンド1590は571nmと660nmの間にピーク透過波長を有し、少なくとも1つのパスバンド1591は、661nmよりも長いピーク波長を有する。パスバンド1590、1591は、571nmと780nmの間に中心があり、380nmと570nmの間に中心がある少なくとも1つのパスバンド1570、1580のピーク透過より高いピーク透過を有する。480nmと570nmの間に中心がある一つ又は複数のパスバンド1580のピーク波長は、571nm~660nmに中心がある一つ又は複数のパスバンド1590のピーク波長よりも少なくとも40nm短い。630nmと780nmの間を中心とする少なくとも1つのストップバンドのピーク吸光度は、380nmと630nmの間を中心とする少なくとも1つのストップバンドのピーク吸光度よりも高い。ストップバンドの中心は、同じストップバンドのピーク吸光度の波長に相当する。パスバンドの中心は、同じパスバンドのピーク透過の波長に相当する。
図16は、図15に関して説明した青色ODの比色効果を示すプロット1600を示す。細い実線、細い破線及び実線の円はそれぞれ、裸眼の赤緑CVD観察者の飽和マンセル色域、パステルマンセル色域、及びWP1610を示す。太い実線、太い破線及び黒い四角はそれぞれ、ODで見ている赤緑CVD観察者の飽和1620マンセル色域、パステル1630マンセル色域及びWP1640を示す。中間から、ODのWP1640は0.049、又は<u、v>座標で0.001距離単位と0.2の距離単位の間で青にシフトする。パステル1630と飽和1620の両方の色域も青にシフトする。飽和シアンの多くや、青、黄色は、元の色知覚のままであった。青色ODのRGLI色差率は59.7%又は10%と100%の間である。パステル1630マンセル色域の色相シフト(HS)CPMに関して、ODによって黄色、一部の緑、一部の赤の色相をそれぞれほぼ中間、シアン、紫の色相又は類似の色相に変更した。他のマンセルのパステル1630色域の色と飽和した1620マンセル色域については、ODによって色相が保持された。微細なHSにより、この構成では、図9及び図10で規定されている赤色ODよりも裸眼で見た場合の元の色相を維持できる。
図9及び図10の赤色ODの場合と同様に、青色ODは、色知覚の色域をシフトすることで、中央の最小のマクアダム楕円に対して、隣接する又はより遠くの色相側のマクアダム楕円との交差をより良好に行える。このODは、第二色覚異常者と第一色覚異常者の両方の色識別を向上させることができる。青色ODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色セットで表される場合に-1.4又は4.0と0.8の間であり、(2)これらの色が一部の石原色セットで表される場合に-1.0又は、-4.0と-0.6の間である。この青色ODによれば、これらの色セット間のLD(明度差)を増大させることで、第一色覚異常者、第二色覚異常者、及び正常色覚者が以前は混同していた赤、緑及び派生色をより良好に識別できるようになる。緑色セットは赤色セットよりも明度が高いため、裸眼だけで見た場合、ODは緑色セットよりも明度が高い赤色セットの元の明度の差を克服した。
図17は、さまざまな照明条件にさらされた光学デバイスの透過スペクトル1710、1720、1730を表すプロット1700を示す。この黄色ODは、フォトクロミズムを示し、第1のフォトクロミックOD(光学デバイス)とする。このODは、CVDの人や正常色覚者の赤緑色識別を向上させる。破線は、CIE F11蛍光などの非UV又は低UV人工照明下でのODの透過スペクトル1720である。点線は、CIE D65などの昼光照明下でのフォトクロミック着色剤の透過スペクトル1710であり、昼光や他のUV源にさらされた場合に持続透過スペクトル1720(破線)に加えて発生する。フォトクロミック色素は、UV光源によって活性化される。曇天光を含む、昼光下でのODの結果としての又は有効な透過スペクトル1730は、実線で示されている。蛍光照明と昼光の両方が存在する照明条件の場合、結果として得られるODの透過スペクトルは、380nm~780nmの各波長で、実線スペクトル1730と破線スペクトル1720の間に制限される。純粋な昼光照明スペクトル1730が下限であり、純粋な非UV又は低UV光照明スペクトル1720が上限である。純粋な非UV光透過スペクトル又は低UV光透過スペクトル1720は、約475nm、595nm、645nmにピーク吸収1740、1750、1760を有する3つの非フォトクロミック色素を使用して作成してもよい。2つのフォトクロミック色素が使用され、UV光源によって活性化されると、それぞれ約490 nmと575nmにピーク吸収1770、1780を有する。少なくとも1つのフォトクロミック色素は、ピーク吸収1770など、活性化時に380nmと540nmの間に吸収ピークを有する。少なくとも1つのフォトクロミック色素は、ピーク吸収1780など、活性化時に541nmと780nmの間に吸収ピークを有する。
昼光などのUV光源下では、プロット1700は、ODの透過スペクトル、又は実線で示される380nm~780nmの少なくとも四色型色覚透過スペクトルに、少なくとも4つのパスバンド1791、1792、1793、1794を示す。少なくとも1つのパスバンドが440nmより短いピーク透過波長1791を有し、少なくとも1つのパスバンドが480nm~570nmのピーク透過波長1792を有し、少なくとも1つのパスバンドが571nm~670nmのピーク透過波長1793を有し、少なくとも1つのパスバンドが671nmより長いピーク波長1794を有する。図17の場合、1つのパスバンド1791は実質的に415nmを中心とし、1つのパスバンド1792は実質的に515nmを中心とし、1つのパスバンド1793は実質的に630nmを中心とし、1つのパスバンド1794は実質的に690nmを中心としている。480nm~570nmに中心がある一つ又は複数のパスバンド1792のピーク透過波長は、571nm~670nmに中心がある一つ又は複数のパスバンド1793のピーク透過波長より少なくとも40nm短い。571nm~780nmの最低透過率は、380nm~570nmの最低透過率よりも高い。
非UV光源又は低UV光源は、CIE F11、F2及びF7などのフォトクロミック色素を実質的に活性化しない任意の光源である。UV光源は、昼光など、フォトクロミック色素を実質的に活性化する任意の光源である。
ODの透過スペクトルの480nmから570nmの範囲内で、非UV光源又は低UV光源のみによって照明された場合の少なくとも1つのピーク透過率は、少なくともUV光源によって照らされた場合の少なくとも1つのパスバンドのピーク透過率よりも少なくとも2%高くなる。
ODの透過スペクトルの520nmから620nmの範囲内で、少なくともいずれかのUV光源で照明された場合の少なくとも1つのストップバンドのFWHM(full-width at half maximum、半値全幅)は、非UV光源又は低UV光源でのみ照明された場合の少なくとも1つのストップバンドのFWHMよりも少なくとも2nm広くなる。
例えば、図17では、ほぼ520nmを中心とし、CIE F11によって照らされるパスバンド1795のピーク透過率は、ほぼ515nmを中心とし、CIE D65によって照らされるパスバンド1792のピーク透過率よりも約10%高くなっている。
例えば、図17では、ほぼ595nmを中心とし、CIE D65によって照らされるストップバンドのFWHMは、CIE F11によって照らされる、ほぼ595nmを中心とするストップバンドのFWHMよりも約20nm広くなっている。
フォトクロミック色素は、スピロキサジン、ナフトピラン、又はその他のタイプに化学的に分類される。フォトクロミック色素を追加して、非UV光又は低UV光と昼光照明の両方でODの表面的色合いの色バランスを調整し、複数の照明環境でのシングルパス及び/又はダブルパスでのODの表面的色合いが許容できる彩度、例えば、パステルイエロー、パステルブルー、パステルレッド、パステルグリーン又はその他のパステルカラーなどになるようにする。
フォトクロミック着色剤や非フォトクロミック着色剤を使用してODの透過スペクトルを変更することにより、さまざまな照明条件下でのODの装飾的色合いを、それらの照明条件のすべて(又はサブセット)で色が一定となるよう設計及び構成してもよい。フォトクロミック色素と非フォトクロミック色素は、透過スペクトルを調整して、さまざまな照明条件下、例えば、昼光と蛍光下で高いCPM性能を達成できる。
フォトクロミック色素をOD上又はODに組み込む方法はいくつかある。フォトクロミック色素は、多くの場合、フレキシブルであり、フォトクロミック色素が物理的構造を変化させるのに十分な分子レベルのスペースを持つ基材マトリックスを必要とする。これらの要件は、MMA(メチルメタクリレート)樹脂ブレンドなどの光学モノマーに2つのフォトクロミック色素を注入し、機械的、幾何学的、光学的要件などの所望の仕様でUV硬化又は熱硬化することで達成できる。また、フォトクロミック色素は、一つ又は複数のマトリクス層に組み込まれてもよく、その後、他の層間に積層又はサンドイッチされる。さらに、フォトクロミック色素は、スプレー、スピン、ディップ又は他のコーティング方法を使用して層上に表面コーティングされてもよい。シロキサンなどの化学添加剤や他の樹脂を基材と共に使用して、ODの基材の化学構造を変化させ、フォトクロミック色素の性能を向上させることができる。
第1のフォトクロミックODの場合、フォトクロミック色素の場合と同じ方法で非フォトクロミック色素をOD基材に組み込むことができる。非フォトクロミック色素の適切な性能を得るためには、基材の分子構造に対する要件を緩和する必要がある。非フォトクロミック色素は、それぞれコーティングや混合により、又は他の周知の製造方法により、フォトクロミック色素の一つ又は複数の光学層と同じ又は異なる光学層の上又は中に組み込むことができる。本明細書に記載のODの後処理、例えば表面コーティング、硬化、切断、研削、研磨などを適用することができる。
CIE F11照明下で見た、フォトクロミック色素活性化なしの場合、第1のフォトクロミックODの明度CPMは44であり、裸眼での明度は57である。同様に、CIEF11照明下では、ODの明度は、裸眼の場合の77%、もしくは77又は50~100である。ODの明所及び暗所視感透過率は、それぞれ56%、50%、又は両方とも30%~90%である。CIE D65照明下で(フォトクロミック色素が活性化された状態で)見た場合、第1のフォトクロミックODの明度CPMは70であり、裸眼で見た場合は96である。同様に、CIE D65照明下では、ODの明度は、裸眼の場合の73%、もしくは73又は50~100である。ODの明所及び暗所視感透過率は、それぞれ45%及び43%、又は両方とも20%~90%である。
一つ又は複数のフォトクロミック色素の存在に関係なく、光源がCIE F11からCIE D65に切り替わる場合、ODの明所視感透過率の差は40%以内である。
一つ又は複数のフォトクロミック色素の存在に関係なく、光源がCIE F11からCIE D65に切り替わる場合、ODの暗所視感透過率の差は40%以内である。
図18aは、F11光源下で、第二色弱観察者による第1のフォトクロミックODの比色効果を表すプロット1800aを示し、M錐体は10nm赤方偏移している。図18bは、D65光源下で、同じ第二色弱観察者による第1のフォトクロミックODの比色効果を表すプロット1800bを示す。
図18aと図18bではいずれも、細い実線、細い破線及び実線の円はそれぞれ、裸眼の赤緑CVD観察者のマンセル飽和色域1840a、1840b、パステルマンセル色域1850a、1850b及びWP1820a、1820bを示す。太い実線、太い破線及び黒い四角はそれぞれ、ODで見ている赤緑CVD観察者の飽和マンセル色域1830a、1830b、パステルマンセル色域1860a、1860b及びWP1810a、1810bを示す。選択したパステル及び飽和マンセル色を使用する。
図18aの場合、中間色1820aから、ODのWP1810aは<u、v>座標で0.01、又は0.001~0.2の距離単位だけシフトされる。図18bの場合、中間1820bから、ODのWP1810bは<u、v>座標で0.012、又は0.001~0.2の距離単位だけシフトされる。
フォトクロミック色素(そのような色素の使用を含む)が活性化されていない場合、昼光でのODのWPは、<u、v>座標で、フォトクロミック色素が活性化された昼光でのODのWPS1810bよりも少なくとも0.005距離単位だけシフトしてもよい。WPSは、青、シアン、緑、黄緑、黄、黄赤、赤、紫、又は実質的にこれらの色相を対象としている。フォトクロミック色素の使用や活性化に関係なく、光源がCIE F11からCIE D65に切り替わる場合、ODのWPSの差異はuv座標で0.2以内である。
CIE F2、D65、又はF11に照らされた場合、ODのシングルパスWPの少なくとも1つ、すなわち、シングルパスした装飾的色合いは、裸眼の場合と比べて赤ではない(すなわち、彩色的に中間である)。「裸眼の場合と比べて赤ではない」とは、ODのWPのu値が、光源の下での裸眼のu値(同様に、裸眼のWP)より小さいことを意味する。
CIE F11光源下では、第1のフォトクロミックODのRGLI色差率は17.1%、又は5%~70%である。パステル色域及び飽和色域1860a、1830aはいずれも、黄色に最小限にシフトされる。色相シフト(HS)CPMに関しては、ODの有無にかかわらず、色相はほぼ同じままであった。よって、色合いが保持される。CIE D65光源下では、第1のフォトクロミックODのRGLI色差率は41.0%、又は5%~70%である。パステル色域及び飽和色域1860b、1830bはいずれも、黄色に向かって最小限にシフトされる。色相シフト(HS)CPMに関しては、ODの有無にかかわらず、すべての色相はほぼ同じままであった。よって、色合いが保持される。
フォトクロミック色素の有無や活性化に関係なく、光源がCIE F11からCIE D65に切り替わるとき、ODのRGLI色差率の差は50%以内である。
CIE D65照明下で、第1のフォトクロミックODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色セットで表される場合に1.9、又は0.5と4.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原色セットで表される場合に1.8又は0.5と4.0の間である。CIE F11照明下で、第1のフォトクロミックODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色セットで表される場合に1.6又は0.5と4.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原色セットによって表される場合に1.7又は0.5と4.0の間である。この第1のフォトクロミックODによれば、これらの色セット間のLD(明度差)を増大させることで、第一色覚異常者、第二色覚異常者、正常色覚者が以前は混同していた赤、緑及び派生色をより良好に識別できるようになる。ODを通して見た場合、光源がCIE F11からCIE D65に切り替わった際の赤緑LDの差は、フォトクロミック色素の有無及び/又は活性化に関係なく、石原とマンセルの両色セットで3.5以内である。
図19は、さまざまな照明条件にさらされた黄色OD(光学デバイス)の形で具現化された光学デバイスの透過スペクトル1910、1920、1930を表すプロット1900を示す。このODは、フォトクロミズムを示し、第2のフォトクロミックODとする。このODは、CVDの人や正常色覚者の赤緑色識別を向上させる。破線は、非UV光源又は低UV光源の他の例としてのCIE F2蛍光下でのODの透過スペクトル1920である。点線は、D65昼光照明下でのフォトクロミック着色剤の透過スペクトル1910であり、昼光や他のUV源にさらされた場合に持続透過スペクトル1920(破線)に加えて発生する。曇天での光を含む、昼光下でのODの結果としての又は有効な透過スペクトル1930は、実線で示されている。蛍光照明と昼光の両方が存在する照明条件の場合、結果として得られるODの透過スペクトルは、380nmから780nmの各波長で、実線スペクトル1930と破線スペクトル1920の間に制限される。非UV又は低UV、例えば、蛍光で照らされた透過スペクトル1920は、約438nmにピーク吸収1940、475nmにピーク吸収1950、585nmにピーク吸収1960、645nmにピーク吸収1970を有する4つの非フォトクロミック色素を使用して構成してもよい。少なくとも1つのフォトクロミック色素は、ピーク吸収1980など、活性化時に520nmと780nmの間に吸収ピークを有する。
昼光などのUV光源下で、プロット1900は、実線で示される透過スペクトル1930又は380nm~780nmの少なくとも四色型色覚透過スペクトルで、少なくとも4つのパスバンド1990、1991、1992、1993、1994を示す。少なくとも1つのパスバンド1990のピーク透過波長は440nmより短く、少なくとも2つのパスバンド1990、1991のピーク透過波長は495nmより短く、少なくとも4つのパスバンド1990、1991、1992、1993のピーク透過波長は595nmより短く、少なくとも1つのパスバンドのピーク透過波長は他のパスバンドのピーク透過波長よりも少なくとも5nm長く、少なくとも1つのパスバンド1994は596nmより長いピーク透過波長を有する。スペクトル1930の場合、1つのパスバンド1990はほぼ405nmを中心とし、1つのパスバンド1991はほぼ450nmを中心とし、1つのパスバンド1992はほぼ510nmを中心とし、1つのパスバンド1993はほぼ545nmを中心とし、別のパスバンド1994はほぼ690nmを中心としている。530nm~780nmの最低透過率は、380nm~529nmの最低透過率よりも高くなっている。
ODの透過スペクトルの380nm~780nmの範囲内で、非UV光源又は低UV光源、すなわち、不活性化された一つ又は複数のフォトクロミック色素によって照射された場合の少なくとも1つのパスバンド1995のピーク透過率は、少なくとも1つのUV光源で照らされた場合の少なくとも1つのパスバンド(1993)のピーク透過率よりも少なくとも2%高くなる。ODの透過スペクトルの520nmから620nmの範囲内で、少なくとも任意のUV光源で照らされた場合の少なくとも1つのストップバンド1960のFWHM(full-width at half maximum、半値全幅)は、非UV光源又は低UV光源によって照らされた場合の少なくとも1つのストップバンド(1996)のFWHMよりも少なくとも2nm広くなる。
例えば、図19では、ほぼ545nmを中心とするCIE F2(非UV光源又は低UV光源)によって照らされたパスバンド1995のピーク透過率は、CIE D65で照らされた場合に、ほぼ545nmを中心とするパスバンド1993のピーク透過率よりも約6%高くなっている。例えば、図19では、ほぼ585nmを中心とするCIE D65で照らされたストップバンド1960のFWHMは、CIE F2で照らされた場合、同様に585nmを中心とするストップバンド1996のFWHMよりも約10nm広くなっている。
一つ又は複数のフォトクロミック色素を使用し、UV光源によって活性化されると、約590nmのピーク吸収1980になる。フォトクロミック着色剤と非フォトクロミック着色剤の両方を、前述の作成方法によりOD基材の中又は上に組み込むことができる。
CIE F2照明下で、フォトクロミック色素の活性化なしでは、第2のフォトクロミックODの明度CPMは59であり、裸眼では81である。CIE F2照明下で、ODの明度は裸眼での明度の72%、もしくは72又は50と100の間である。ODの明所及び暗所視感透過率は両方とも5%~95%である。CIE D65照明下で見た場合、フォトクロミック色素が活性化されている場合、第2のフォトクロミックODの明度CPMは72であり、裸眼では96である。同様に、CIE D65照明下では、ODの明度は裸眼での75%、もしくは75又は50と100の間である。ODの明所及び暗所視感透過率は、両方とも5%~95%である。フォトクロミック色素の有無や活性化に関係なく、光源がCIE F2からCIE D65に切り替わると、ODの明所視感透過率の差は40%以内である。フォトクロミック色素の有無や活性化に関係なく、光源がCIE F2からCIE D65に切り替わると、ODの暗所視感透過率の差は40%以内である。
図20aは、F2光源下で、第二色弱者による第2のフォトクロミックODの比色効果を表すプロット2000aを示し、M錐体は15nm赤方偏移している。選択したパステル及び飽和マンセル色域を使用する。中間2020aから、ODのWP2010aは、<u、v>座標の0.007、又は0.001距離単位と0.2距離単位の間でシフトする。
フォトクロミック色素が活性化されていない場合(そのような色素の使用を含む)、昼光のODのWPは、<u、v>座標で、フォトクロミック色素が活性化されている場合の昼光のODのWPS2010bよりも少なくとも0.003距離単位だけシフトする場合がある。
図20bは、D65光源下で同じ第二色弱観測者による第2のフォトクロミックODの比色効果を表すプロット2000bを示す。中間色2020bから、ODのWP2010bは、<u、v>座標で、0.013、又は0.001距離単位と0.2距離単位の間で黄色にシフトし、ODのパステルイエローのシングルパスした装飾的色合いを生成する。
フォトクロミック色素の使用及び/又は活性化に関係なく、光源がCIE F2からCIE D65に切り替わるとき、ODのWPSの差はuv座標で0.2以内である。ODのシングルパスWPの少なくとも1つ、つまり、シングルパスした装飾的色合いは、CIE F2、D65及び/又はF11に照らされた場合、裸眼の場合と比べて赤ではない(すなわち、彩色的に中間である)。
図20a及び図20bではいずれも、細い実線、細い破線及び実線の円はそれぞれ、裸眼の赤緑CVD観察者の2020a、2020bのマンセル飽和色域2040a、2040b、パステルマンセル色域2050a、2050b及びWPを示す。太い実線、太い破線及び黒い四角はそれぞれ、ODで見ている赤緑CVD観測者の飽和マンセル色域2030a、2030b、パステルマンセル色域2060a、2060b及びWP2010a、2010bを示す。
CIE F2照明下では、第2のフォトクロミックODのRGLI色差率は48.6%、又は10%と90%の間である。パステル色域2060aと飽和色域2030aの両方が黄色に最小限にシフトする。色相シフト(HS)CPMに関して、ODの有無にかかわらず、色域の色相はほぼ同じままであった。よって、色相が保持される。CIE D65光源下では、第2のフォトクロミックODのRGLI色差率は40.9%、又は10%~90%である。パステル色域2060bと飽和色域2030bの両方は、黄色に向かって最小限にシフトする。色相シフト(HS)CPMに関して、ODの有無にかかわらず、色域の色相はほぼ同じままであった。よって、色相が保持される。
フォトクロミック色素の使用及び/又は活性化に関係なく、光源がCIE F2からCIE D65に切り替わる場合、ODのRGLI色差率の差は50%以内である。
CIE D65照明下で、第2のフォトクロミックODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色セットで表される場合に2.3、又は0.5~5.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原色セットで表される場合に2.1、又は0.5~5.0の間である。CIE F2照明下で、第2のフォトクロミックODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色セットで表される場合に2.5又は0.5と5.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原色セットで表される場合に2.0又は0.5と5.0の間である。この第2のフォトクロミックODによれば、これらの色の間のLDを増大させることで、第一色覚異常者、第二色覚異常者、正常色覚者がこれまで混合していた赤、緑及び派生色をより良好に識別できるようになる。一方、CIE D65光源下で裸眼で見た場合、赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセルの赤と緑の色セットで表される場合は0.9となり、(2)これらの色が選択された石原の赤と緑の色セットで表される場合は-0.5となる。ODを通して見た場合、光源がCIE F2からCIE D65に切り替わったときの赤緑LDの差は、フォトクロミック色素の有無に関係なく、石原とマンセルいずれの色セットでも4.5以内である。
図21は、色一定光学デバイス(OD)の形態で具現化された光学デバイスの透過スペクトル2110を表すプロット2100を示す。このODを第1の色一定ODという。このODは、CVDの人と正常色覚者の赤緑色識別を向上させる。このODは、クロミック着色剤は使用せずに、昼光など、蛍光や自然光を含む複数の光源の下で、シングルパス及び/又はダブルパスの装飾的色合い(中間色や中間に近い色を含む)の色不変を示す。クロミック着色剤は、色素、顔料、その他の着色剤であり、誘導することでそれらの光学特性を変化させることができる。クロミック着色剤には、フォトクロミック、サーモクロミック、エレクトロクロミック、及びその他多くが含まれる。装飾的色合いには、ODを通して見ている観察者の色覚のWP(白色点)も含まれる。色不変とは、さまざまな光源を含むさまざまな視覚環境で、色の見えの明度、色相及び/又は彩度が同じ又はほぼ同じであることを意味する。
3つの非クロミック色素を使用して、約460nm、580nm、610nmにそれぞれピーク吸収2120、2130、2140を有する透過スペクトル2110を作成してもよい。このスペクトルは、不変であるように、すなわち、クロミックではないように設計及び構成され得る。非クロミック色素を使用して、透過スペクトルを変更し、さまざまな照明条件、例えば、昼光、蛍光、LED光の下で高いCPM性能を達成できる。これらの非クロミック着色剤は、色素を基材に配合し、基材を成形したり、浸漬、スプレー及び/又はスピン又は他の基材層間に着色剤層を積層したりすることにより基材をコーティングしたりするなど、多くの製造方法によって適切な光学特性を持つ基材内又は上に組み込むことができる。表面コーティング、硬化、切断、研削、研磨など、ODの既知の後処理を適用することができる。図21に示すように、製造方法、幾何学的寸法、後処理に関係なく、ODには有効透過スペクトルが含まれている。
図21は、ODの透過スペクトル2110又は380nm~780nmの少なくとも四色型色覚透過スペクトルにおける少なくとも4つのパスバンド2150、2160、2170、2180を表すプロット2100を示す。少なくとも1つのパスバンド2160は、460nmより短いピーク透過波長を有し、少なくとも2つのパスバンド2160、2170は540nmより短いピーク透過波長を有し、少なくとも3つのパスバンド2160、2170、2150は640nmより短いピーク透過波長を有し、少なくとも4つのパスバンド2160、2170、2150、2180は780nmより短いピーク透過率波長を有し、最も長いピーク透過率波長を有するパスバンド2180は、2番目に長いピーク透過率波長を有するパスバンド2150の波長よりも少なくとも10nmだけ長い。
スペクトル2100の場合、1つのパスバンド2160はほぼ405nmを中心とし、1つのパスバンド2170はほぼ505nmを中心とし、1つのパスバンド2150はほぼ600nmを中心とし、別のパスバンド2180はほぼ680nmを中心とする。460nm~540nmの平均透過率は、550nmと600nmの間の平均透過率よりも高くなっている。
CIE F11照明の下で見た場合、第1の色一定ODの明度CPMは41であり、裸眼では57である。同様に、CIE F11照明下では、ODの明度は裸眼の場合の72%、もしくは72又は50と100の間である。ODの明所及び暗所視感透過率は、それぞれ48%と52%、又は両方とも5%と95%の間である。CIE F2照明下で見た場合、第1の色一定ODの明度CPMは55であり、裸眼では81である。同様に、CIE F2照明下では、ODの明度は裸眼の場合の68%、もしくは68又は50と100の間である。ODの明所及び暗所視感透過率は、それぞれ39%及び51%、又は両方とも5%と95%の間である。CIE D65照明下で見た場合、第1の色一定ODの明度CPMは71であり、裸眼では96である。同様に、CIE D65照明下では、ODの明度は裸眼の場合の74%、もしくは74又は50と100の間である。ODの明所及び暗所視感透過率は、それぞれ47%及び54%、又は両方とも5%と95%の間である。CIE D65、F2、F11の間で光源が切り替わる場合、ODの明所視感透過率の変化は40%以内である。CIE D65、F2、F11の間で光源が切り替わる場合、ODの暗所視感透過率の変化は40%以内である。
図22aは、F11光源下での第1の色一定ODの比色効果を表すプロット2200aを示す。選択したパステル及び飽和マンセル色域を使用する。中間色2220aから、ODのシングルパスした装飾的色合い2210aは、<u, v>座標で、ほとんど気付かないほどわずかに、0.003、又は0.001と0.2の間の距離単位だけシフトする(WPS)。ODのWP2210aの色相は、ほぼ黄色、黄赤、赤又は紫の色相にシフトした。
図22bは、F2光源下での第1の色一定ODの比色効果を表すプロット2200bを示す。図22aと同じパステル及び飽和マンセル色域を使用する。中間食2220bから、シングルパスしたODの装飾的色合い2210bは、<u, v>座標で、0.008、又は0.001と0.2の間の距離単位だけ最小限シフトする(WPS)。ODのWP2210bの色相は、ほぼ青、シアン又は紫の色相にシフトした。
図22cは、D65光源下での第1の色一定ODの比色効果を表すプロット2200cを示す。図22a、図22bと同じパステル及び飽和マンセル色域を使用する。中間2220cから、シングルパスしたODの装飾的色合い2210cは、<u, v>座標で、0.007、又は0.001と0.2の間の距離単位だけ最小限シフトする(WPS)。ODのWP2210cの色相は、ほぼ緑、黄緑、黄又は黄赤の色相にシフトした。
図22a、図22b、図22cでは、細い実線、細い破線及び実線の円はそれぞれ、裸眼の赤緑CVD観察者の飽和マンセル色域2240a、2240b、2240c、パステルマンセル色域2250a、2250b、2250c、及びWP2220a、2220b、2220cを示す。太い実線、太い破線及び黒い四角はそれぞれ、ODで見ている赤緑CVD観察者又は正常な人の飽和マンセル色域2230a、2230b、2230c、パステルマンセル色域2260a、2260b、2260c、及びWP2210a、2210b、2210cを示す。光源がCIE D65、F2、F11の間で切り替わる場合、ODのWPSの変動は、uv座標で0.2以内である。
ODのシングルパスWP2210b、すなわち、シングルパスした装飾的色合いは、CIE F2で照明されたときの裸眼のWP2220bのv値に比べてv値が小さく(又はそれほど大きくない)、CIE D65 2210c、2220c及び/又はCIE F11 2210a、2220aによって照らされた場合より青くなる。ODの装飾的色合いは、D65やF11の場合よりもCIE F2の場合の方がより青くなったり黄色が少なくなったりする。より青くなるということは、色が青に近づいている、すなわち、青の方向にあることを意味するが、必ずしも青になるとは限らない。青と黄色は反対色なので、より青くなることは黄色が少なくなることと同じであり、黄色の場合はその逆である。
ODのシングルパスWP2210aは、CIE F11で照明されたときの裸眼のWP2220aのu値に比べてu値が大きく(又はそれほど小さくない)、CIE D65 2210c、2220c及び/又はCIE F2 2210b、2220bによって照らされた場合よりも赤くなる。シングルパスしたODの装飾的色合いは、D65やF2の場合よりもCIE F11の場合の方がより赤くなっていたり、緑が少ないように見える。より赤くなるとは、色が赤に近づいている、すなわち、赤の方向にあることを意味するが、必ずしも赤になるとは限らない。赤と緑は反対色なので、より赤くなることは緑が少なくなることと同じであり、緑の場合はその逆である。
CIE F11の照明下では、第1の色一定ODのRGLI色差率は20.9%、又は10%と90%の間である。パステルカラーと飽和青色の両方が、ほぼ気付かれないほどわずかに黄色にシフトする。色相シフト(HS)CPMに関して、ODの有無にかかわらず、色相は同じままであった。よって、色相が保持される。CIE F2照明下では、第1の色一定ODのRGLI色差率は54.1%、又は10%と90%の間である。パステルカラーの色域2260bは、最小限青にシフトした。飽和色域2230bは青にシフトしなかった。色相シフト(HS)CPMに関して、ODの有無にかかわらず、色相はほぼ完全に同じままであった。従って、色相が保持される。CIE D65照明下では、第1の色一定ODのRGLI色差率は41.5%、つまり10%と90%の間である。パステルカラーと飽和青色の両方が、黄又は黄緑色に最小限シフトする。色相シフト(HS)CPMに関しては、ODの有無にかかわらず、色相はほぼ完全に同じままであった。従って、色相が保持される。光源がCIE F2、D65、F11の間で切り替わる場合、ODのRGLI色差率の変化は60%以内である。
CIE D65照明下で、第1の色一定ODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセルの赤と緑の色セットで表される場合に1.3、又は0.5と5.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原の赤と緑の色セットで表される場合に1.5、又は0.5と5.0の間である。CIE F11照明下では、第1の色一定ODを通して見たとき、赤と緑の色セットの赤緑のLDは、(1)これらの色が選択したマンセル色で表される場合に1.0、又は0.5と5.0の間であり、(2)これらの色は、選択された石原色によって表される場合に1.1、又は0.5と5.0の間である。CIE F2照明下で、第1の色一定ODを通してみた場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色で表される場合に0.9、又は0.5と5.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原色で表される場合に0.8、又は0.5と5.0の間である。
ODを通して見た場合、CIE F2、D65、F11の間で光源が異なる場合の赤緑LDの変化は、石原とマンセルいずれの色セットでも5.0以内である。
第1の色一定ODは、(1)RGLI色差を増大させる、及び/又は、(2)マンセル及び/又は石原赤と緑の色セット間のLD(明度差)を増大させることで、以前は混合していた赤、緑、及び派生色をより良好に識別できるようにする。第1の色一定ODは色一定であると見なされる。これは、さまざまな照明環境の下で上記シングルパスの装飾的色合いの間の色差が最小限であるためである。第1の色一定ODは、装飾的色合い(さまざまな照明環境下を含む)のWPSが最小限、例えば、裸眼でのWPSが0.10未満であり、及び/又は、装飾的色合いが、例えば、黄色、青、緑、赤など、許容可能な色相である。
図23は、色一定光学デバイス(OD)の形態で具現化された光学デバイスの透過スペクトル2310を表すプロット2300を示す。このODを第2の色一定OD(光学デバイス)という。このODは、CVDの人と正常色覚者の赤緑色識別を向上させる。このODは、クロミック着色剤は使用せずに、昼光など、蛍光や自然光を含む複数の光源の下で、シングルパス及び/又はダブルパスした装飾的色合い(中間色や中間に近い色を含む)の色一定性を示す。5つの非クロミック色素を使用して、約425nm、460nm、490nm、580nm、610nmにそれぞれピーク吸収2320、2330、2340、2350、2360を有する透過スペクトル2310を構成してもよい。このスペクトルは、不変であるように、すなわち、クロミックではないように設計及び構成され得る。また、非クロミック色素を使用して、透過スペクトルを変更し、さまざまな照明条件、例えば、昼光、蛍光、LED光の下で高いCPM性能を達成した。このODで使用される各着色剤の濃度は、これらの着色剤の吸収厚2mmあたり0.1から250マイクロモルである。
図23は、ODの透過スペクトル2310又は380nmから780nmの少なくとも四色型色覚透過スペクトルにおける少なくとも4つのパスバンドを表すプロット2300を示す。ストップバンドの中心は、425nmの2320、460nmの2330、490nmの2340、535nmの2370、580nmの2350、610nmの2360である。パスバンドの中心は380nmの2380、450nmの2381、475nmの2382、510nmの2383、600nmの2384、670nmの2385である。
スペクトル2310には、プロット2300に示す、ピーク透過波長が460nmより短い、少なくとも一つのパスバンド、プロット2300に示す2つのパスバンド、パスバンド2380、パスバンド2381、ピーク透過波長が461nmから540nmの、少なくとも1つのパスバンドと2つのパスバンド、パスバンド2382、パスバンド2383、ピーク透過波長が541nmより長い、少なくとも2つのパスバンド2384、2385、および隣接するパスバンド中央の対の間が少なくとも5nmの間隔がある。例えば、450nm、475nmを中心とするパスバンド2381、2382は、隣接するパスバンドの中心の対である。475nm、510nmを中心とするパスバンド2382、2383も、隣接するパスバンドの中心の対である。500nmと550nm間の平均透過率は、570nmと590nmの間の平均透過率よりも高くなっている。
450nmよりも短いストップバンド2320の中心には、少なくとも30%のピーク吸光度がある。550nmと610nmの間に中心がある最もピーク吸収性の高いストップバンド2350は、少なくとも30%のピーク吸光度を有する。440nmと510nmの間に中心がある少なくとも1つのストップバンド2330、2340のピーク吸光度は85%未満である。480nmと570nmの間に中心がある最高のピーク透過率を有するパスバンド2383のピーク透過率は20%以上である。580nmより長い波長を中心とするストップバンド2360が少なくとも1つある。
CIE F11照明の下で見た場合、第2の色一定ODの明度CPMは40であり、裸眼では57である。同様に、CIE F11照明の下で、ODの明度は裸眼での70%、もしくは70又は50と100の間である。ODの明所視及び暗所視感透過率は、それぞれ45%及び45%であるか、又は両方とも5%と95%の間である。CIE F2の照明下で見ると、第2の色一定ODの明度CPMは53であり、裸眼では81である。同様に、CIE F2の照明下で、ODの明度は裸眼での明度の66%、もしくは66又は50~100である。ODの明所視及び暗所視線透過率は、それぞれ37%及び45%、又は両方とも5%と95%の間である。CIE D65の照明下で見た場合、第2の色一定ODの明度CPMは69であり、裸眼では96である。同様に、CIE D65の照明下で、ODの明度は裸眼での72%、もしくは72又は50と100の間である。ODの明所視及び暗所視線透過率は、それぞれ44%及び49%、又は両方とも5%と95%の間である。光源がCIE D65、F2、F11の間でかわる場合、ODの明度の変化は40以内である。光源がCIE D65、F2、F11の間で変わる場合、ODの暗所視感透過率の変動は40%以内である。
図24aは、F11光源の下での第2の色一定ODの比色効果を示すプロット2400aを示す。選択したパステル及び飽和マンセル色域を使用する。中間食2420aから、ODのWP2410aは、<u, v>座標で、0.01、又は0.001と0.2の間の距離単位だけ最小限にシフトされる。ODのWP2410aの色相は、裸眼のWPから、実質的に黄緑色、黄、黄赤、赤又は紫の色相へとシフトした。
図24bは、F2光源の下での第2の色一定ODの比色効果を示すプロット2400bを示す。図24aと同じパステル及び飽和マンセル色が使用されている。中間食2420bから、ODのWP2410bは、<u、v>座標で、0.002、又は0.001と0.2の間の距離単位で青に向かって最小限シフトされる。裸眼のWP2420bからの装飾的色合いS2410bのそのように低いWPは、裸眼のWP2420bから、視覚的に知覚できないと考え得る。
図24cは、D65光源下での第2の色一致ODの比色効果を示すプロット2400cを図示する。図24a、図24bと同じパステル及び飽和マンセル色が使用されている。中間色2420cから、ODのWP 2410cは、<u, v>座標で、0.006、又は0.001と0.2の間の距離単位だけ最小限にシフトされる。ODのWP2410cの色相は、裸眼のWP2420cから、実質的に黄緑色、黄、黄赤又は赤の色相へとシフトした。
ODのWPSの変動は、光源がCIE D65、F2、F11間で変わる場合、uv座標で0.07以内である。ODのシングルパスWP2410b、つまりシングルパスした装飾的色合いは、CIE F2で照明されたときの裸眼のWP2420bのv値に比べてv値が小さく(又はそれほど大きくない)、CIE D65 2410c、2420c及び/又はCIE F11 2410a、2420aによって照らされた場合より青くなる。ODの装飾的色合いは、D65及び/又はF11の場合よりもCIE F2の場合の方がより青くなったり黄色が少なくなったりするようである。
図24a、図24b、図24cの場合、細い実線、細い破線及び実線の円はそれぞれ、裸眼の赤緑CVD観察者の飽和マンセル色域2440a、2440b、2440c、パステルマンセル色域2540a、2540b、2540c、及びWP2420a、2420b、2420cを示す。太い実線、太い破線、及び黒い四角はそれぞれ、ODで見ている赤緑CVD観察者の飽和マンセル色域2430a、2430b、2430c、パステルマンセル色域2460a、2460b、2460c、及びWP2410a、2410b、2410cを示す。
CIE F11の照明下では、第2の色一定ODのRGLI色差率は21.7%、又は10%と90%の間である。パステル及び飽和した青色の両方が、黄色に向かって最小限にシフトする。色相シフト(HS)CPMに関して、ODの有無にかかわらず、すべての色相はほぼ同じままであった。従って、色相が保持される。CIE F2の照明下では、第2の色一定ODのRGLI色差率は56.2%、又は10%と90%の間である。パステル色域と飽和色域の両方2460b、2430bは青にシフトしなかった。色相シフト(HS)CPMに関しては、ODの有無にかかわらず、色相はほぼ完全に同じであったので、色相が保持される。CIE D65の照明下では、第2の色一定ODのRGLI色差率は42.5%、又は10%と90%の間である。パステル及び飽和した青色の両方が、黄色に向かって最小限にシフトする。色相シフト(HS)CPMに関しては、ODの有無にかかわらず、色相はほぼ完全に同じであったので、色相が保持される。光源がCIE F2、D65、F11の間で変わる場合、ODのRGLI色差率の変化は70%以内である。
CIE D65照明下で、第2の色一定ODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセルの赤、緑で表される場合に1.5、又は0.5と5.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原の赤と緑の色セットで表される場合に1.4、又は0.5と5.0の間である。CIE F11の照明下で、第2の色一定ODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色セットで表される場合に0.9、又は0.5と5.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原色セットによって表される場合に1.1、又は0.5と5.0の間である。CIE F2照明下で、第2の色一定ODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑のLDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色セットで表される場合に1.0、又は0.5と5.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原色セットで表される場合に、0.7、又は0.5と5.0の間である。
ODを通して見た場合、CIE F2、D65、F11の間で光源が異なる場合の赤緑LDの変化は、石原とマンセルいずれの色セットでも5.0以内である。
この第2の色一定ODによれば、(1)RGLIの色差を増大させたり、及び/又は(2)マンセル及び/又は石原の赤と緑の色セット間のLDを増大させたりすることで、第一色覚異常者、第二色覚異常者、正常色覚者が以前は混同していた赤、緑、派生色をより良好に識別できるようになる。第2の色一定ODは色一定又はほぼ色一定であると見なされる。これは、さまざまな照明環境の下で上記シングルパスの装飾的色合い(WP)間の色差が最小限、例えば、裸眼でのWPSが0.07未満であり、及び/又は、装飾的色合いが、例えば、黄色、青、緑などの許容可能な色相である。
図25は、色一定ODの形で具現化された、光学デバイスの透過スペクトル2510を示すプロット2500を図示する。このODを第3の色一定ODという。このODは、CVDの人と正常色覚者の赤緑色識別を向上させる。また、このODも、クロミック着色剤の使用をせずに、蛍光、LED、白色光や昼光のような自然光を含む複数の光源の下で、シングルパス及び/又はダブルパスした装飾的色合い(中間色又は中間に近い色を含む)の色不変性を示す。透過スペクトル(2510)は、干渉及び/又はルゲート薄膜などの薄膜を使用して構成してもよい。Ti02とSi02の13層の交互層を干渉薄膜層材料として使用してもよく、屈折率はそれぞれ平均2.35と1.48である。各Ti02層の物理的な厚さは400nm~480nmである。各Si02層の物理的な厚さは240nmと320nmの間である。少なくとも1つの透過ストップバンド2520は、約575nm、又は540nm~605nmを中心とする。ストップバンド2520は、RGLI色差及び/又はRG全色差で測定したODのRG色分離能を向上させるように設計及び構成されている。このストップバンドは、シングルパス及び/又はダブルパスしたODの装飾的色合いの色バランスや色調整、及び受領者の色覚にも貢献する。
スペクトル2510は、プロット2500に示された、539nm未満を中心とする少なくとも1つのストップバンド、ストップバンド2530、ストップバンド2540、ストップバンド2550を有する。スペクトル2510は、ストップバンド2560、ストップバンド2570、ストップバンド2580として示される少なくとも1つのストップバンドを有し、606nm以上を中心とする。これらのストップバンドは、シングルパス及び/又はダブルパスしたODの装飾的色合いの色バランスや色調整をさらに行ったり、ODの色分離能を向上させたりするために備えられてもよい。約430nmの2540や395nmの2550など、ピーク波長が470nmより短い一つ又は複数のストップバンドが存在する。
一つ又は複数の薄膜で完全に又は部分的に作成された有効透過スペクトルの場合、スペクトルストップバンドには、少なくとも8nmの反射率のFWHM(full-width at half maximum、半値全幅)、少なくとも25%のピーク反射率が必要であり、そのピーク反射波長は別のより反射する波長領域のピーク反射波長の20nm以内ではない。透過スペクトルグラフでは、反射率及び/又は吸収率はグラフの負のスペースである。前述のストップバンドに加えて、別のストップバンドの例2570は745nmを中心とする。475nmを中心とする局所反射領域は、通常、ストップバンド2590とは呼ばない。
このスペクトルは不変である、すなわち、クロミックではない、ように設計及び構成されている。薄膜材料、蒸着方法、層の厚さを使用してODの透過スペクトルを変更し、昼光、蛍光、白色光、LED光などのさまざまな照明条件下で高いCPM性能を実現できる。薄膜形成法は周知であり、物理蒸着(PD)及び/又は化学蒸着(CD)が含まれ得る。CDには、めっき、蒸着、溶液堆積、コーティングなど数多くの技術がある。PDには、熱蒸発、分子線エピタキシー、スパッタリング、その他多くの技術が含まれる。付着した完全な薄膜(構成層を含む)は、2つ以上の基材層の間に積層したり、ODの他の所望の特性(硬度、疎水性、防幻など)を向上させる追加の材料でコーティングしたり、一つまたは複数の材料で包み込んだりなどの後処理を行うことができる。
CIE F11照明の下で見ると、第3の色一定ODの明度CPMは49であり、裸眼では57である。同様に、CIE F11照明の下では、ODの明度は裸眼での86%、もしくは86又は50と100の間である。ODの明所視及び暗所視感透過率は、それぞれ69%と63%、又は両方とも5%と95%の間である。CIE F2の照明下で見ると、第3の色一定ODの明度CPMは60.7であり、裸眼では81である。同様に、CIE F2照明の下で、ODの明度は裸眼での75%、もしくは75又は50と100の間である。ODの明所視及び暗所視感透過率は、それぞれ49%及び62%、又は両方とも5%と95%の間である。CIE D65照明の下で見ると、第3の色一定ODの明度CPMは78であり、裸眼では96である。同様に、CIE D65照明の下で、ODの明度は裸眼での81%、もしくは81又は50と100の間である。ODの明所視及び暗所視線透過率はそれぞれ59%及び64%、又は両方とも5%と95%の間である。光源がCIE D65、F2、F11の間で変わる場合、ODの明度の変化は40以内である。CIE D65、F2、F11の間で光源が変わる場合、ODの明所視感透過率の変化は50%以内である。CIED65、F2、F11の間で光源が変わる場合、ODの暗所視感透過率の変化は50%以内である。
図26aは、F11光源の下での第3の色一定ODの比色効果を示すプロット2600aを図示する。選択したパステル及び飽和マンセル色域を使用する。中間食2620aから、ODのWP2610aは、<u, v>座標で、0.003、又は0.001~0.2の距離単位で最小限シフトされる。中間食2620aから、ODのWP2610aの色相は、実質的に緑、黄緑、黄、黄赤、赤、又は紫の色相にシフトする。
図26bは、F2光源の下での第3の色一定ODの比色効果を示すプロット2600bを図示する。図26aと同じパステル及び飽和マンセル色域が使用されている。中間色2620bから、ODのWP2610bは、<u, v>座標で、0.02、又は0.001~0.2の距離単位だけシフトされる。中間2620bから、ODのWP2610bの色相は、実質的に緑、シアン、青、又は紫の色相にシフトする。
図26cは、D65光源の下での第3の色一定ODの比色効果を示すプロット2600cを図示する。図26a、図26bと同じパステル及び飽和マンセル色域が使用されている。中間2620cから、ODのWP2610cは、<u, v>座標で、0.014、又は0.001~0.2の距離単位だけシフトされる。中間色2620cから、ODのWP 2610cの色相は、実質的に緑、シアン、青、又は紫の色相にシフトした。
ODのシングルパスWP2610a、つまりシングルパスした装飾的色合いは、CIE F11で照明されたときの裸眼のWP2620aのv値と比較してv値が大きく(又はそれほど小さくはなく)、CIE D65(2610c、2620c)及び/又はCIE F2(2610b、2620b)で照らされた場合よりも黄色が強く(又は青が弱く)なる。ODの装飾的色合いは、D65やF2の場合よりもCIE F11の場合の方が黄色が強くなったり、青み弱くなったりしているように見える。
大きい値は、それほど小さくない値と同等の意味を持ち、その逆も同様である。
任意の光源又は光源の組み合わせの下での裸眼のWPは、人間の色覚における色順応のため、中間と見なされる。彩度、色相及び/又は明度のシフトを含むWP色シフト(つまり、WPの変化)は、他の基線が示されない限り、デフォルトでは色順応した中間色からシフトする。
図26a、図26b、図26cの場合、細い実線、細い破線、及び実線の円はそれぞれ、裸眼の赤緑CVD観察者又は正常な観察者の飽和マンセル色域2640a、2640b、2640c、パステルマンセル色域2650a、2650b、2650c、及びWP2620a、2620b、2620c。太い実線、太い破線、及び四角の実線はそれぞれ、ODで見ている赤緑CVD観察者又は正常な観察者の飽和したマンセル色域2630a、2630b、2630c、パステルマンセル色域2660a、2660b、2660c、及びWP2610a、2610b、2610cである。
CIE F11では、第3の色一定ODのRGLI色差率は18.7%、又は10%と90%の間である。パステル及び飽和青色の両方が、ほぼ気付かないほどわずかに黄色にシフトする。色相シフト(HS)CPMに関して、色域の色相は、ODの有無にかかわらず、同じままであったので、色相が保持される。CIE F2では、第3の色一定ODのRGLI色差率は56.7%、又は10%と90%の間である。パステル色域と飽和色域の両方が青にシフトした。色相シフト(HS)CPMに関しては、ODの有無にかかわらず、色相はほぼ同じままで、黄緑、黄、オレンジの色相が保持される。色相の大部分が保持されている。CIE D65では、第3の色一定ODのRGLI色差率は36.3%、又は10%と90%の間である。パステル色域と飽和色域の両方が青にシフトした。色相シフト(HS)CPMに関しては、ODの有無にかかわらず、色相はほぼ同じままで、黄緑、黄、オレンジの色相が保持される。ODの有無にかかわらず、色相は保持される。
光源がCIE F2、D65、F11の間で変わる場合、ODのRGLI色差率の変動は70%以内である。CIE F11照明下で、第3の色一定ODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色で表される場合に0.7又は0.1と5.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原色で表される場合に1.1又は0.1と5.0の間である。CIE D65照明下で、第3の色一定ODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色で表されている場合に、-1.0又は-0.1と-5.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原色で表される場合に、-0.7又は-0.1と-5.0の間である。選択したマンセル色と石原色では、緑色が赤色よりも明度が高くなっている。CIE F2照明下で、第3の色一定ODを通して見た場合、赤と緑の色セットの赤緑LDは、(1)これらの色が選択されたマンセル色で表される場合に0.9又は0.1と5.0の間であり、(2)これらの色が選択された石原色で表される場合に1.0又は0.1と5.0の間である。選択したマンセル色と石原色では、赤色が緑色よりも明度が高くなっている。
この第3の色一定ODによれば、(1)RGLI色差を大きくしたり、及び/又は(2)これらの色の間のLDを変更することで、第一色覚異常者、第二色覚異常者、正常色覚者が、以前は混同していた赤、緑、及び派生色をより良好に識別できるようになる。第3の色一定ODは、色合いが青と黄色又は同様の色相であるため、外見上許容可能であると見なされる。第3の色一定ODは、昼光及びCIE F2(図26b、26cに示す)などのいくつかの蛍光光源の下で見た場合、色一定と見なされる。第3の色一定ODは、CIE F11(図26aに示す)などの少なくともいくつかの蛍光光源の下で見た場合、外観が中間色であると見なされるか、中間色WP(ほぼ中間色を含む)と見なされる。F2、F11及びD65の照明条件下では、裸眼からのWPSが0.1未満のOD、及び/又は外観は、黄色、青、緑、又はこれらの色相の可能な組み合わせなど、許容可能な色相である。
CIE標準光源で明度差及び/又はRGLI色差率の性能向上を図る、本開示の説明に従って設計及び構成された透過スペクトルを持つ任意の光学デバイスによれば、ファーンズワース・マンセルD-15検査及び/又は石原仮性同色表検査において使用者のパフォーマンスを向上させる。
図27は、プロット2700を示し、図28は、正常色覚に近いレベルまでYCV(黄色の色覚)を補正又は部分的に補正又は改善するOD(及び関連情報)の透過スペクトル2710、色域およびWP(2810)を集合的に示すプロット2800を示す。このODを、第1のYCV補正ODという。図28では、小さい色域はマンセルのパステルカラーの色域2820、2830、2840であり、大きい色域はマンセルの飽和色の色域2850、2860、2870である。破線は未補正のYCV色域2840、2870を表し、点線はODで見た改善されたYCV色域2820、2860を表し、実線は正常色覚色域2830、2850を表し、四角は未補正YCVのWP2880、ひし形はOD改善YCVのWP2891、円は正常色覚のWP2890、三角はシングルパスWP2810又はODの装飾的色合いである。パステル2840と飽和2870の色域は、未補正YCVのBYLI色差が正常色覚2830、2850の色差よりもはるかに小さいことを示す。このCPMは、マンセル青色セットとマンセル黄色セットとを弁別する能力を測定するため、このCPMの値が高ければ、本明細書に記載する透過、吸収及び/又は反射スペクトルを有するODを通して見た場合に、青黄色(類似の色を含む)の色識別が改善することがわかる。派生CPM、BYLI色差率(パーセント)は、このYCV改善をパーセンテージとして測定する。
WP2810とYCVの補正ODのWPSは、デバイスの表面的な色合いを測定するための重要なCPMである。WPS(White Point Shift、白色点シフト)が大きすぎると、ODは、おそらく見る人が許容できないほど目立つ色合いになる。WP2880と比較して改善又は補正されたYCVのWP2891及びWPSや未改善YCVのWPSも、OD使用によるYCV改善の測定には重要なCPMである。
図27は、YCV補正ODの透過スペクトル2710の例を示す破線を有するプロット2700を示す。点線は、黄色の人間の水晶体(HCL)又は黄色の人工IOLの典型的な透過スペクトル2720を示す。実線は、黄色のHCL又はIOLと補正ODで構成される光学システムの有効透過スペクトル2730を示す。この光学システムによれば、眼の錐体細胞によって検出され、脳によって解釈される透過光がYCVを形成しないか、YCVを低減するよう入射光の透過を変更する。ODの透過スペクトル2710は、425nm、575nm、590nm、640nm、665nmにそれぞれピーク吸収2740、2750、2760、2770、2780を有する5つの色素を用いて設計及び構成されている。このODで使用する各着色剤の濃度は、これらの着色剤を含むODの吸収厚2mmあたり0.1~350マイクロモルである。
YCV補正ODの透過スペクトル2710には、ピーク吸収又は反射波長が540 nmと610nmの間の少なくとも1つのストップバンド2750と、ピーク透過波長が440nmと520nmの間の少なくとも1つのパスバンド2790とがある。380nmと440nmの間の平均透過率は30%未満である。
ODで使用される着色剤の濃度は、通常、それらの着色剤を含むODの吸収厚さ2mmあたり0.1~500マイクロモルである。変形例、特に、ODの表面への拡散を含む、着色剤の一つ又は複数の層が表面に付着されるコーティングを含む変形例では、これらの着色剤の濃度は、10マイクロモル~50,000マイクロモルの範囲であればよい。色素は、ポリカーボネート系樹脂に配合された後、押し出され、厚さ2.0mm、直径100mmのODへと成形される。この色素は、ディップ、スプレー又はスピンコーティング技術によりポリカーボネート系樹脂上にコーティングされてもよい。この色素を含むコーティングの厚さは150ミクロン未満である。この厚さは、ODの表面全体の平均厚さである。
CIE D65の照明下では、第1のYCV補正ODのBYLI色差率(パーセント)は33.2%、又は10%と90%の間である。ODの明度は裸眼の78又は78%(ODは眼科用途に使用可能)、もしくは78、又は50と100の間である。ODの明所視及び暗所視の光線透過率は53%及び69%、又はいずれも10%と90%の間である。ODのWP(2810)色相は、青、シアン、緑、紫である。WPSは0.005であり、これは、シングルパス色ではほぼ知覚できないパステルカラーのODである。WPSは0.001と0.05の間である。
D65の照明下では、第1のYCV補正ODを使用した場合の未補正のYCV(2880)と改善されたYCV(2891)のWP色相はいずれも黄色である。未補正のYCVのWPSは0.055であり、改善されたYCVの値は0.041である。YCVのWPSは0.014の減少、又は0.001と0.2の間の減少がある。
CIE F2の照明下では、第1のYCV補正ODのBYLI色差率は49.2%、又は10%と90%の間である。ODの明度は、裸眼での色覚の明度の72%、もしくは72、又は50と100の間である。ODの明所視及び暗所視線透過率は、それぞれ45%及び60%、又はいずれも10%と90%の間である。ODのWP色相は、赤、黄赤、黄、紫、青である。WPSは0.004であり、これは、シングルパス色ではほぼ知覚できないパステルカラーのODである。このようなWPSは0.001~と0.05の間である。
F2照明下では、第1のYCV補正ODを使用した場合の未補正のYCVと改善されたYCVのWP色相はいずれも黄色である。未補正のYCVのWPSは0.038、改善されたYCVのWPSは0.031である。ODを通して見たYCVのWPSは、未補正のYCVから0.007の減少、又は0.001と0.2の間の減少である。
YCVを正常色覚に近いものに補正又は改善するOD(及び関連情報)の、図29は透過スペクトル2910を示すプロット2900を示し、図30はWP3030を示すプロット3000を示す。このODを第2のYCV補正ODという。図30では、小さい色域はマンセルのパステルカラーの色域3050、大きい色域はマンセルの飽和色域3040である。実線は正常色覚3040、3050を表す。四角は未補正YCVのWP3060を示し、ひし形はODを通して見た改善されたYCVのWP3010を示し、円は正常色覚のWP3020を示し、三角はODのシングルパスWP3030を示す。
図29は、YCV補正ODの透過スペクトル2910の例の破線を示すプロット2900を図示する。点線は、黄色化したHCL又は黄色の人工IOLの典型的な透過スペクトル2920を示す。実線は、黄色のHCL又はIOLと補正ODで構成される光学システムの有効透過スペクトル2930を示す。この光学システムは、入射光の透過を変更する。ODの透過スペクトル2910は、約430nm、560nm、575nm、590nm、610nm、665nmにそれぞれピーク吸収2940、2950、2960、2970、2980、2990の中心がある6つの色素を用いて設計及び作成されている。
YCV補正ODの透過スペクトル2910は、540nmと620nmの間にピーク吸収又は反射波長を伴う、ストップバンド2950、ストップバンド2970で示される、少なくとも1つのストップバンドと2つのストップバンドと、ピーク透過波長が440nmと520nmの間にピーク吸収波長を伴う、少なくとも1つのパスバンド2991を有するよう設計される。380nmと440nmの間の平均透過率は30%未満である。上記ストップバンドのFWHMは10nmと150nmである。上記パスバンドのFWHMは約120nmである。
CIE D65の照明下では、第2のYCV補正ODのBYLI色差率は90.8%、又は10%と110%の間である。ODの明度は裸眼での54又は54%、又は30と90の間である。ODの明所視及び暗所視線透過率は、それぞれ23%及び38%、又はいずれも10%と90%の間である。ODのWP(シングルパス、3030)色相は、青、シアン、緑又は紫である。WPSは0.006であり、シングルパス色合いではほぼ知覚できないパステルカラーのODである。WPSは0.001と0.02の間である。
D65の照明下では、第2のYCV補正ODを使用した場合の未補正YCV(3060)と改善されたYCV(3010)のWP色相はいずれも、黄色、オレンジ(つまり、黄-赤)、黄-緑、又は緑である。未補正のYCVのWPSは0.055、改善されたYCVのWPSは0.034である。ODを通して見たYCVのWPSは、未補正のYCVから0.021の減少、又は0.001と0.2の間の減少である。
YCVを改善又は補正するためのODの作成は、赤緑CVDの手法と同じ順列に従い、これらはすべて以下に該当する:(1)色素や顔料などの着色剤をODの基材に満たす、ODの基材に入れる、又はODの一つ又は複数層の表面を含むODの一つ又は複数の表面へのコーティング、(2)ODの一つ又は複数の層の表面を含む、ODの一つ又は複数の表面への干渉及びルゲート膜などの薄膜の付着、(3)一つ又は複数の色素と一つ又は複数の薄膜を用いる前述の技術の任意の組み合わせ。作成における着色剤及び/又は薄膜の使用の目的は、異なる光源を含むさまざまな視覚条件下で、所望の透過スペクトルや、BYLI色差、BYLI色差率(パーセント)、明度、ODの装飾的色合い(WP、WPS、WP色相)で構成されるCPMの値及び/又はODを通してYCVの人が見る装飾的色合い(WP、Wで構成されるCPMの値を生成する、ODから透過スペクトルを生成する又はODの集合システムから有効スペクトルを生成することである。
BYLI色差率の増加及び/又はYCVのWPSの低減を行う、本開示の説明に従って設計及び作成された透過スペクトルを有する任意の光学デバイスは、ユーザのYCVを改善する。YCV用テストの一つには、マンセル100色相テストがある。
任意のODの場合、製造中及び製造後の追加の表面コーティングと処理ステップにより、ODに色を追加したり、可視スペクトルのさらなる抑制によってODの有効透過スペクトルを変更したり、着色剤及び/又は薄膜の既存のスペクトル抑制を減らしたりすることができる。例えば、サングラスでは、スペクトル変化は、ODからの表面的反射又はODの色にしばしば使用される反射コーティング、すなわち「ミラー」又は「フラッシュ」コーティングの透過スペクトルを含むことができる。例えば、眼科用レンズでは、このようなスペクトルの変化は、反射防止(AR)コーティング又はOD樹脂の本来の色が原因である可能性がある。ODの有効なターゲット透過スペクトルが決定されると、前述のスペクトル変化は、そのような対象スペクトルを380nm~780nmの1nm波長ごとのスペクトル変化で割ることにより、ODの有効対象スペクトルから引かれる。次に、結果として得られる透過スペクトルは、一つ又は複数の着色剤及び/又は1つ又は複数の薄膜によって、OD用の一つ又は複数の基材の上又は中に作成される。
図31には、ハント効果を示すプロット3100が含まれ、色の明度又は明るさが増大すると、色の彩度3110、3120、3130が増し、その逆も同様である。ハント効果とは、輝度又は明度が増加すると色の彩度又は色のコントラストが増加し、輝度又は明度が減少すると色のコントラストが減少する色の見え現象である。電子ディスプレイなどの多くの光学用途では、ディスプレイの明度や輝度が高いか、低いレベルから増加し、それによって色の彩度(飽和)が増加する。このような彩度は、色の識別に役立つ。しかしながら、色刺激源の明度や明るさを増加させることは、目に不快感、目の疲労や他の医学的及び/又は視覚の問題を引き起こす可能性がある。
光学デバイスは、明度や輝度の問題を克服するために、色刺激源の明度や輝度を増やす必要なく、赤、緑、青、黄色及び派生色セットのRGLI色差率(パーセント)、RGLI色差、BYLI色差率(パーセント)及び/又はBYLI色差を増大させる。また、そのような光学デバイスを使用する場合、色刺激源の明度や輝度は同じままであるか、ハント効果による色彩度の付随する低下が上記光学デバイスによって中和又は低減されるようなレベルに低下する可能性がある。具体的には、RGLI色差率(パーセント)及び/又はBYLI色差率(パーセント)を1%増加させる機能を備えた光学デバイスは、これらの色刺激の明度の1%減少から、それらの色の彩度の減少を無効にすることができる。
視者にとって、色刺激の明度の低下は、裸眼で見た光源の基線から測定された、光学デバイスの明度の低下と同じ量に相当する。補正なし又は裸眼の視力は、比色分析及び測光分析の観点から、380nmと780nmの間の透過率が100%の光学デバイスを通して見ることと同等である。
例えば、第2のバラ色ODのRGLI色差率は77.4%である。このODには、赤色と緑色(及び派生色)の彩度の低下を、それらの色の明度での上限77.4%低下から無効にする機能がある。これらの色の明度のこのような低下は、(1)色刺激源の明度での上限77.4%低下、(2)第2のバラ色ODの明度での上限77.4%低下、又は(3)これら2つのケースの組み合わせ、に起因する可能性がある。光源の明度が96であるCIE D65照明の下で、光学デバイスの明度が上限で77.4%減少すると、ハント効果を無効にするために、D65下での光学デバイスの明度は22以上になる。同様に、自己光源の明るさが81であるCIE F2照明では、光学デバイスの明度が上限で77.4%減少すると、ハント効果を無効にするために、F2下で光学デバイスの明度は18以上になる。同様に、自己光源の明度が57であるCIE F11照明では、光学デバイスの明度が上限で77.4%減少すると、ハント効果を無効にするために、、F11下で光学デバイスの明度が13以上になる。
別の例では、色刺激の輝度や明度が増加することでハント効果が生じる。ただし、本開示では光学デバイスを使用しているため、増加はそれほど大きくない。この場合、光学デバイスは、刺激の明度や輝度を増加させることなく、色彩と識別を増大させる。
光学デバイスには、レンズ、サングラスや眼科用ガラス、コンタクトレンズ、光学フィルタ、電子ディスプレイ、フロントガラス、眼内レンズ(lOL)、ヒト水晶体(HCL)、窓、プラスチックが含まれ得る。この光学デバイスは、任意の屈折力、曲率、及び/又は幾何学的形状、屈折率、厚さなどの他の適切な特性を有していればよい。
装着者や受領者によって知覚される色改善又は色補正光学デバイスの装飾的色合いは、外部の観察者によって知覚されるものとは異なる場合がある。図32aは描写3200aを示し、図32bは描写3200bを示し、ODの装着者や受領者によって知覚されるODの装飾的色合いは、入射又は外部光源3260a、3260bが一度ODによってフィルタリングされる3210a、3210bによるものであることを示す。このOD3220a、3220bは、ODの装着者3230a、3230bに対してシングルパスフィルタ3210a、3210bとして機能している。また、入射光は、装着者や受領者に到達する前に、ODによって最小限又は部分的に反射されることもある。
外部の視者3240a、3240bによって知覚されるODの装飾的色合いは、OD 3220a、3220bによって3250a、3250bで2回フィルタリングされる反射光路によるものである。より一般的には、反射光路は、外光がODを通過するときに、ODによって3270a、3270bが一度フィルタリングされるプロセスを示し、外付けのOD3220aの場合、バックストップ表面3290a、3290b、例えば、装着者の皮膚に接触する。コンタクトレンズ3220bの場合、装着者の目の虹彩又は強膜は、ODを通して反射又は部分的に反射され、光線が外部の視者3240a、3240bに到達するまで、ODによって3280a、3280bで2回目フィルタリングされる。このODは、外部の視者に対してダブルパスフィルタ(3250a、3250b)として機能する。
外部の視者が見る色合いの制御には、さらに複雑さが伴う。これらは次のとおりである。(1)ODに接触する光は、ODによって最小限、部分的、又は完全に反射されるため、外部の視者が見ると「ミラー」又はグレア効果を引き起こす、(2)バックストップ面の光吸収特性が外部の視者によるODの装飾的色合いの知覚に寄与し得る、(3)他の外部光、例えば、OD装着者の背後からの光などがODを通過して外部の視者に到達する場合がある、(4)バックストップ面は、可視光スペクトルの特定の波長を選択的に吸収し、他の波長を部分的に反射することができる。さらに、この反射光は、外部の視者に到達する前に、ODによってもう一度フィルタリングされる。このODによる二重フィルタリングプロセスは、上記複雑さとともに、外部の視者によって知覚されるダブルパスしたODの装飾的色合いの全体を設計に含むこともできる。
シングルパスとダブルパスの光フィルタリングは、OD装着者と外部の視者が認識する1つのOD3220a、3220bの装飾的色合いをそえることができる。これらの2種類の色は、一般に異なる色であるが、場合によっては同じ色又はほぼ同じ色になることがある。シングルパス及び/又はダブルパスしたODの装飾的色合いは、緑、琥珀色、中間色グレー、青、又はその他の色が含まれる。緑の色合いはG-15を含み、琥珀色又は茶色の色合いはB-15を含む。装飾的色合いには、コンタクトレンズなどの特定のレンズの色の取り扱いも含まれる。
1976 CIE LABのカラーアピアランスモデル(Color Appearance Model,CAM)は、OD装着者(受領者や内部の視者を含む)又は外部の視者によって知覚されるODの白色点(WP)又は装飾的色合いを評価するために使用される。装着者に知覚されるODの装飾的色合いは、装着者に到達する前に、光源からの光のシングルパスフィルタ(1回フィルタリング)としてODの透過スペクトル(T)を使用して評価される。外部の視者によって知覚されるODの装飾的色合いは、外部の視者に到達する前に、ODの透過スペクトルの2乗を光源からの光のダブルパスフィルタ(2回フィルタリング)として使用して評価される。このようなODの透過スペクトルの二乗は、ダブルパス効果の場合、波長あたりのT
2である。式20を用いて、CIE Luv、CIE Lab及び/又は他の多くのカラーシステムで使用される、三刺激値でのこれら2つの装飾的色合いを評価できる。
光源は、CIE昼光D65、広帯域蛍光F2またはトライバンド蛍光F11でシミュレーションされる。光源は、単一の光源でも、オフィス空間を照らす昼光や蛍光など複数の異なる光源からの混合光源でもかまわない。
ODのシングルパス及び/又はダブルパスの装飾的色合いは、さまざまな照明環境をシミュレーションする、組み合わせ{D65、F2、F11}のようなさまざまな光源の組み合わせにはWPの特定の範囲内に制約される場合がある。そのような制約は、複数の照明環境におけるシングルパス及び/又はダブルパスしたODの装飾的色合いの色不変性を評価する場合のように、単一の光源、個別の複数の光源、混合される複数の光源、及び/又は複数の光源に対するものである。CIE光源の組み合わせ、{D65、F2、F11}は、本発明で使用される多くの光源の例であり、昼光、くもり、蛍光、白色光、LED光が含まれる。
図33は、光学デバイスの透過スペクトルを示すプロット3300を示し、シングルパス及びダブルパス装飾的色合い、もしくは総称して「装飾的色合い」についての開示を示す。実線は、光学デバイスのシングルパスフィルタ透過スペクトル3310(7)を示し、破線は、光学デバイスのダブルパスフィルタ透過スペクトル3320(P)を示す。このODは、色覚異常(CVD)の人と正常な色覚の人の赤緑色識別を向上させるよう設計及び作成されればよい。このODは、約460nmにピーク吸収3330、3331、500nmにピーク吸収3340、3341、575nmにピーク吸収3350、3351、595nmにピーク吸収3360、3361を有する4つの狭スペクトル吸収色素を使用して作成されたものである。T及び/又はT2の場合、ピーク透過波長が420nmと530nmの間のストップバンド3330、3331、3340、3341が少なくとも2つ、ピーク透過波長が550nmと610nm間のストップバンド3350、3360、3361が少なくとも1つ存在する。いずれか2つのストップバンドのピーク透過波長間の差異は少なくとも5nmである。例えば、各スペクトルの場合、プロット3300は、460nmでほぼ中央となるストップバンド3330、3331、500nmでほぼ中央となる3340、3341、575nmでほぼ中央となる3350、3351、595nmでほぼ中央となる3360、3361を示し、いずれか2つのピーク透過波長間の差異が少なくとも約20nmである。
この光学デバイスの基材はポリカーボネートであり、任意のプラスチック、ガラス、又は他の光学的に適切な材料から形成されてもよい。4つの色素を配合して押し出し、直径約75mm、厚さ2mmのレンズブランクに成形する。このレンズブランクには、アイウェア用のレンズを製造するための縁取り、切断、及び/又は表面コーティングが施されてもよい。これらの色素の濃度は、10マイクロモルから200マイクロモルの範囲であればよい。この光学デバイスの基材としては、コンタクトレンズ用のアクリル又はヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲル又は他の任意の光学的に適切な材料を用いてもよい。一般に、色素は、重合性又は共重合性色素を使用するなど、物理的混合及び/又は化学結合を介してコンタクトレンズの中又は上に入れられる。これらの染料の濃度は、10マイクロモルから1000マイクロモルの範囲であればよい。また、ODは、目薬などの角膜上に一時的又は永続的なフィルムを形成する、光学的及び医学的に適切な材料であってもよい。色素は、物理的混合及び/又は化学結合を介して、角膜フィルムの中又は上にしみこまされる。これらの色素の濃度は、10マイクロモルから5000マイクロモルの範囲であればよい。
ODの透過スペクトル(T)は、干渉薄膜コーティングを使用して作成し、選択した入射光の波長を反射することで所望の波長をフィルタリングするようにしてもよい。結果として得られる透過スペクトルは、図33のような対象スペクトルに厳密に一致するように構成できる。このような干渉薄膜コーティングは、Ti02とSi02などの高屈折率材料と低屈折率材料の組み合わせを用いて作成してもよい。
ODの透過スペクトル(T)は、選択した透過波長のフィルタリングへの影響が付加的であるため、吸収性着色剤(色素を含む)と薄膜コーティングの組み合わせを使用して作成することもできる。ODの透過スペクトルは、(1)少なくとも1つの着色剤、及び/又は(2)少なくとも1つの薄膜コーティングを使用して作成される。
図34には、図34a、図34b、図34cが含まれている。まとめて、各図は、CIE LAB色空間でのD65、F2、及びF11を光源として、図33の透過スペクトルを有するODの比色効果を示すプロット3400a、3400b、3400cを示す。細い実線、細い破線、及び実線の円はそれぞれ、裸眼の赤緑色覚異常(CVD)観察者や正常色覚観察者のマンセルの飽和色域3420a、3420b、3420c、パステルマンセルの色域3460a、3460b、3460c、及びWP3440a、3440b、3440cを示す。太い実線と太い破線はそれぞれ、ODで見ている赤緑CVD観察者や正常色覚観察者の飽和マンセル色域3410a、3410b、3410c及びパステルマンセル色域3470a、3470b、3470cを示す。黒塗り四角は、WPの3450a、3450b、3450c、又はODの装飾的色合いを、シングルパスフィルタ(T)として、つまり、ODの装着者又は受領者に知覚されたものとして示す。黒塗り星印は、WPの3430a、3430b、3430c、又はODの装飾的色合いを、ダブルパスフィルタ(T2)として、つまり外部の視者によって知覚されたものとして示す。装着者に知覚されるODの装飾的色合いは、<L、a、b>形式のCIE LAB値で、D65 3450cの下で<78±20、-10±20、6±20>を有し、F2 3450b下では、<73±20、-10±20、-6±20>、F11 3450a下では、<79±20、-1±20,2±20>である。明所視感透過率の値は、D65、F2、F11光源の下で、それぞれ53%、46%、55%である。暗所視感透過率の値は、D65、F2、F11光源の下で、それぞれ57%、56%及び57%である。明所視及び暗所視の光線透過率の値は、D65、F2、F11で5%と95%の間である。明度に依存しない装飾的色合いのWPSは、D65、F2、F11光源の下で、黄緑の色相3450cで12±20、シアンの色相3450bで12±20、黄色、中間色に近い色相3450aで3±20と計算される。
外部の視者によって知覚されるODのダブルパス装飾的色合いは、<L、a、b>形式のCIE LAB値が、D65 3430cの下で<65±20、-6±20,10±20>、F2 3430bで<58±20、-7±20、-6±20>、F11 3430aで<65±20、5±20、4±20>である。明度に依存しない装飾的色合いのWPSは、D65、F2、F11光源の下で、黄緑色の色相3430cで13±20、シアンの色相3430bで12±20、茶色の中間色相3430aで6±20である。装着者と外部の視者によって知覚されるこのODの装飾的色合いは、D65、F2、又はF11の光源の下で同じ又は類似した色相である。
「±」という表記は、範囲と単純な平均を表すために使用される。具体的には、A±BはA-BからA+Bまでの範囲を示し、単純な平均はAである。例えば、<78±20、-10±20、6±20>は、<58、-30、-14>から<98、10,26>までのLab範囲を示し、単純平均は<78、-10,6>である。「±」の範囲表記が一つ又は複数の実行不可能な最終値を持つ実行不可能な範囲を形成する場合はいつでも、実行不可能な最終値は最も近い実行可能な最終値に自動的に置き換えられ、最大の実行可能な範囲になる。例えば、L=78±30の場合、明度は48と108の間である。最大実現可能明度は100であるため、L=78±30は明度の範囲が48から100であることを示す。最小WPS値は0である。
明度に依存しない色差は、式21で計算される。
ここで、iは1つの対応する色を表し、jは別の対応する色を表す。iは対応する色セットの平均を表すこともでき、jは対応する別の色セットの平均を表すこともできる。
jは、明度に依存しない色差がWPSに適用されたときの裸眼のWPを表す。これは、明度に依存しないWPSと呼ばれる。ここで、aj=bj=0、<uj、vj>は、特定の光源の下での裸眼のWPのuv座標値に対応する。後者については、同等の式13を参照されたい。
式21を使用すると、一部のODの実施形態では、装着者の色知覚(シングルパス)のWPと外部視者のOD色知覚(ダブルパス)のWPの間の明度に依存しない色差は、CIE D65、F2及び/又はF11光源の一つ又は複数の光源の下ではCIE LAB色空間で60以内である。装着者及び/又は外部の視者によって知覚されるODの装飾的色合いは、赤、オレンジ、ピンク、紫、茶色、又は一つ又は複数のCIE D65、F2及び/又はF11光源の下でのそれらの色ではない。ODによる補正がない場合、バックストップ面の色は、白、グレー、中間色、黄色、青、緑、茶色、非赤、非ピンク、非紫、又は、ヒトの目の虹彩及び/又は強膜など、実質的にこれらの色である。
装着者や外部の視者によって知覚されたODの装飾的色合いは、CIE LAB色空間での{D65、F2、F11}の組み合わせで、2つ又は3つの光源の任意の組み合わせの下で、WPSの明度に依存しない色差は40未満である。これらの装飾的色合いは、白、灰色、黒、中間色、又は、黄色、黄緑、緑、シアン、青、紫、赤、オレンジ、ピンク、又は茶色のパステルカラーである。装着者及び/又は外部の視者によって知覚されるODの装飾的色合いは、CIE LAB色空間で、{D65、F2、F11}の組み合わせに含まれる2つ又は3つの光源の任意の組み合わせの下、-30と+30の間のa値、及び/又は、-30と+30の間のb値を持つ。シングルパスフィルタ処理での、又はCIE LAB色空間で装着者に知覚されるODの「L」又は明度の値は、D65又はF11光源では60以上であり、F2光源では50以上である。ODのシングルパス明所視感透過率は、D65又はF11光源の下では40%以上であり、F2光源の下では30%以上である。
外部の視者によって知覚される装飾的色合い、つまりダブルパス装飾的色合いのa値と比較すると、装着者が知覚するODのシングルパス装飾的色合いは、CIE LAB色空間で低いa値、すなわち、CIE LAB色空間で少なくとも1単位だけ正に低いa値からわかるように、より緑、つまり緑の色相に近づいている。装着者及び/又は外部の視者によって知覚されるODの装飾的色合いは、D65及び/又はF11光源の下よりもF2光源下の方がより青い、つまりCIE LAB色空間で少なくとも1単位だけb値が低い(つまり、正に小さい)。
装着者及び/又は外部の視者によって知覚されるODの装飾的色合いは、D65及び/又はF2光源下よりもF11光源下の方がより赤い又は正に大きい、つまり、CIE LAB色空間で少なくとも1単位だけa値が高くなる。
式22は、CIE LAB色空間の明度に依存しない赤と緑の色差を測定する比色性能測定基準(Colorimetric Performance Metric、CPM)を示す。評価用に選択された赤と緑の色は、赤のマンセル色セットと緑のマンセル色セットである。選択した一つ又は複数の赤い色セットの場合、一つ又は複数の赤い色セットの平均を用いて、<a赤、b赤>を列挙することができる。選択した一つ又は複数の緑色セットについては、一つ又は複数の緑色セットの平均を用いて<a緑、b緑>を列挙することができる。
上記の赤と緑の色セットのコントラストを、設計及び作成された光学デバイスを通して見る場合と、そのような色差を裸眼で見る場合とのRG
LI色差率を比較するCPMは、式23に示される。
式23では、<a
*、b
*>と<a
η、a
η>は、それぞれ光学デバイスで見た場合と裸眼で見た場合の色のCIE LAB色空間座標を示す。選択した赤と緑のマンセル色セットを用いると、図33と図34に示すODでは、D65、F2、F11光源の下で、それぞれLAB RG
LI色差率(パーセント)が31%、42%、18%増加している。LAB色空間では、この増加は5%から110%の間である。光学デバイスは、D65、F2、F11光源の下で、LAB RG
LI色差率の増加がそれぞれ5%、10%、5%以上である。これらの増加率について、各光源の下で個別に、又は複数の光源をまとめて示す。
図34に示すように、ODは、{D65、F2およびF11}の組み合わせでの一つ又は複数の光源の下で、緑の色相成分を有する少なくとも一つのマンセル色、つまりLAB色空間の負のa値を高め、少なくとも1単位低いa値を有するより緑色にした。図34に示すように、ODは、{D65、F2およびF11}の組み合わせでの一つ又は複数の光源の下で、赤の色相成分を有する少なくとも一つのマンセル色、つまり、LAB色空間の正のa値を高め、少なくとも1単位正に大きいa値を有するより赤色にした。緑の色相成分を持つマンセル色には、黄、黄緑、緑、シアン、及び/又は青が含まれる。赤の色相成分を持つマンセルの色には、黄色、オレンジ、赤、ピンク、紫、及び/又は青が含まれる。
特定の構成において、ODは、装着者又は受領者によって知覚される装飾的色合いを得ることができ、それは、外部の視者によって知覚されるその外部色と著しく異なる。このような状況は、ゴルファーなどの装着者が中間色に近い色合いのアイウェアを通して見ながらも、アイウェアの装飾的色合いは外から見る人からは異なって、例えば赤に見せたい場合に生じる。他の構成では、装着者が知覚するODの装飾的色合いはシングルパスフィルタで、色合いは中間色、グレー、ブラウン、イエロー、イエローグリーン、グリーン、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、パープル、又は実質的にこれらの色相である。このODの外部の視者によって知覚される装飾的色合いは、ダブルパスフィルタであり、その色相は、赤、オレンジ、茶色、ピンク、紫、又は実質的にこれらの色相である。いくつかの構成では、外部の視者によって知覚されるODの装飾的色合いは、装着者や受領者によって知覚される装飾的色合いよりも、赤くなる、もしくは赤の色相寄り又は赤みがかった色相になるが、必ずしも赤とは限らない。
特定の構成では、CIE LAB色空間で、外部の視者によって知覚されるODの装飾的色合い(つまり、ODのダブルパスWP)は、{D65、F2およびF11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、装着者が知覚するODの装飾的色合いのa値(つまり、ODのシングルパスWP)よりも赤に向かって(つまり、より正に)少なくとも1ユニット大きいa値を有する。全体として、装着者から見たODの装飾的色合いの白色点は、{D65、F2およびF11}のくみあわせでの一つ又は複数の光源の下で、外部の視者から見たODの装飾的色合いから、CIE LABのa座標及び/又はb座標において、少なくとも1単位離れている。
図35は、ODのシングルパスの装飾的色合いに対する装着者の知覚よりも、ODのダブルパスの装飾的色合いに対する外部の視者の知覚がより赤い色相であることを表す、光学デバイスの透過スペクトルを示すプロット3500を示す。実線は、ODのシングルパスフィルタ透過スペクトル3510を示し、破線は、光学デバイスのダブルパスフィルタ透過スペクトル3520を示す。そのようなODは、色覚異常(CVD)の人及び/又は正常な色覚の人の赤緑色識別を向上させるように製造されてもよい。ODは、約460nm、500nm、575nm、595nmにそれぞれピーク吸収3530、3540、3550、3570を有する4つの狭スペクトル吸収色素を用いて作成されてもよい。この光学デバイスの基材は、ポリアミド(すなわち、ナイロン)から形成してもよいし、プラスチック、ガラス、又はその他の光学的に適切な材料であってもよい。4つの色素を配合して、押し出し、直径約75mm、厚さ2mmのレンズブランクに成形する。これらの色素の濃度は、10マイクロモルから200マイクロモルの範囲である。
T及び/又はT2の場合、スペクトル3510に少なくとも2つのストップバンド3530、3540があり、スペクトル3520にストップバンド3531、3541があり、ピーク透過波長が410nmと540nmの間である。また、少なくとも1つのストップバンド3550、3560、3570のピーク透過波長が550nmと610nmの間である。いずれか2つの隣接するストップバンドのピーク透過波長間の差は少なくとも10nmである。例えば、ダブルパススペクトルの場合、プロット3500は、460nm、500nm、585nmをほぼ中央とするストップバンド3531、3541、3560を示し、隣接するいずれか2つのピーク透過率波長間の差が少なくとも約35nmである。ODのシングルパス及び/又はダブルパス透過スペクトルの場合、620nm~660nmの平均透過率は、530nm~570nmの平均透過率よりも高くなる。
図36には、CIE LAB色空間において、D65又はF2を光源とする図35の透過スペクトルを有するODの比色効果を集合的に示すプロット3600aを示す図36a及びプロット3600bを示す図36bが含まれる。細い実線、細い破線、及び実線の円は、裸眼の赤緑の色覚異常(CVD)観察者(又は正常色覚観察者)の飽和マンセル色域3660a、3660b、パステルマンセル色域3640a、3640b、WP3630a、3630bを示す。太い実線と太い破線は、ODで見た赤緑CVD観察者(又は正常色覚観察者)の飽和マンセル色域3670a、3670b及びパステルマンセル色域3650a、3650bを示す。黒塗り四角は、WP3620a、3620b、又はODの装飾的色合いをシングルパスフィルタとして、すなわち、OD装着者又は受領者に知覚されたものとして描写する。黒塗り星印は、WP3610a、3610b、又はODの装飾的色合いをダブルパスフィルタとして、すなわち、外部視認者に知覚されたものとして描写する。装着者に知覚されるシングルパスしたODの装飾的色合いは、<L、a、b>形式で、D65(3620a)の下では、<61±20,0±20,11±20>、F2(3620b)の下では<54±20、-1±20、-6±20>のCIE LAB値を有する。明所視感透過率の値は、D65及びF2光源の下でそれぞれ29%、22%で、両方の値は5%と95%の間である。シングルパスした装飾的色合いの明度に依存しない白色点(WP)シフトは、それぞれD65及びF2光源の下で、黄色の色相で11±20、青色の色相(灰色に近い)で6±20である。
外部の視者によって知覚されるダブルパスしたODの装飾的色合いは、<L、a、b>形式で、D65(3610a)の下では、<43±20、19±20、14±20>、F2の下(3610b)では、<36±20、14±20、-1±20>のCIE LAB値を有する。ダブルパス装飾的色合いの明度に依存しないWPシフトは、D65及びF2光源の下で、赤又は赤茶色の色相で23±20、赤の色相で14±20である。装着者及び/又は外部の視者によって知覚されるODの装飾的色合いは、{D65、F2}の組み合わせでは一つ又は複数の光源の下では、CIE LAB色空間で60未満の明度に依存しないWPシフトを有する。{D65、F2}のくみあわせで一つ又は複数の光源の下では、CIE LAB色空間で、装着者及び/又は外部の視者によって知覚されるODの装飾的色合いは、-40と+40の間のa値、及び/又は-40と+40の間のb値を有する。ODのシングルパスWPとダブルパスWPの明度に依存しない色差は、{D65、F2}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下では、CIE LABで1と150単位の間である。CIE LAB色空間でのシングルパスしたODの装飾的色合いの「L」又は明度の値は、D65光源では15以上、F2光源では10以上である。シングルパスフィルタ過程、又は装着者に知覚されるODの暗所視感透過率は、{D65、F2}組み合わせで一つ又は複数の光源の下で5%と95%の間である。選択されたマンセルの赤と緑の色セットを使用すると、図35と図36で示したODでは、LAB RGLI色差率(パーセント)がD65とF2光源の下でそれぞれ58%、84%増加するか、両方の値が5%と110%の間である。
図36に示すように、ODは、緑の色相成分、つまり、LAB色空間の負のa値で少なくとも1つのマンセル色を増強し、{D65、F2}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、少なくとも1単位低いa値でより緑にした。このODは、赤の色相成分、つまり、LAB色空間の正のa値で少なくとも1つのマンセル色を増強し、{D65、F2}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、少なくとも1単位正に大きいa値でより赤にした。
特定の構成では、CIE LABでは、外部の視者(T2)が知覚するダブルパスしたODの装飾的色合いは、{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の照明の下では、装着者又は受領者(T)が知覚するシングルパスしたODの装飾的色合いよりも緑が強い、黄緑が強い、シアンが強い、青が強い(すなわち、少なくとも1単位低い又は正に小さいa値と、少なくとも1単位異なるb値)ものとなる。
図32a、図32bに戻って、バックストップ面としての装着者の皮膚又は強膜は、入射した1回フィルタリングされたシングルパス光を反射し、その光は外部の視者に到達するようにODを通して戻る。このダブルパスフィルタ処理では、装着者の皮膚(口語的には:皮膚の色)の反射スペクトルと強膜が、さまざまな割合で、入射光の異なる可視波長を選択的に反射する。人間の皮膚の色は、通常、黄白色、黄色、茶色、暗褐色とさまざまあり、人間の強膜の色は、通常、白やパステルイエローなどさまざま(赤い血管が混ざったもの)であり、赤又は赤みがかった色合いが含まれることもある。従って、赤緑色を増強する光学デバイスは、皮膚や強膜の赤色や黄色をさらに増強して、外部の視者が見た皮膚や強膜の色をより赤っぽく見せることができる。赤緑色の増強又は色補正するODは、{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、元の皮膚や強膜の色のa値をCIE LAB色空間で少なくとも1単位だけ正に大きいa値にすることができる。このようなODに誘発された皮膚や強膜の色の見えの赤化及び/又は黄変を説明するために、外部視認者によって知覚されるダブルパスしたODの装飾的色合いは、緑、青、シアン、緑、黄色の場合がある。具体的には、ダブルパスしたODのWP及び/又はシングルパスしたODのWPのa値は、{D65、F2、F11}の気見合わせで一つ又は複数の光源の下で、-1以下である。
さらに、ダブルパスしたODのWPは、より緑色(緑が強い、黄緑色が強い、シアンが強いを含む)、つまり、{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、装着者が知覚したシングルパスしたODの装飾的色合いのa値と比較して、CIE LAB色空間で少なくとも1単位低いa値にすることができる。
あるいは、ダブルパスしたODのWPは、{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、シングルパスしたODの装飾的色合いのa値と比較して、CIE LAB色空間で最大60単位高いa値とすることができる。
特定の構成では、ODのシングルパス及び/又はダブルパスの装飾的色合いは、ほぼ中間色、グレー、茶色、黄色、黄緑、緑、シアン、青、又は、明るい赤の色相を有する、すなわち、CIE LABでのa値は60未満である。特定の構成では、シングルパス又はダブルパスしたODの装飾的色合いは、ほぼ中間色、グレー、茶色、黄色、黄緑、緑、シアン、青、又は紫の色相を有する、すなわち、CIE LABでのb値は60未満である。ODのダブルパスWPは、{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、シングルパスしたODのWPのb値と比較してより青く、つまり、CIE LAB色空間でb値を少なくとも1単位小さくすることができる。
あるいは、ダブルパスしたODのWPは、{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、シングルパスしたODの装飾的色合いのb値と比較して、CIE LAB色空間でb値を最大60単位大きくすることができる。ODのダブルパスWP及びシングルパスWPは、CIE LABで明度に依存しない<a、b>値を正確又はほぼ正確な値とすることができる。つまり、それらのa値の違いは1単位以下であり、それらのb 値の違いも1単位以下である。
図37は、ODの装飾的色合いに対する装着者の知覚よりも、外部の視者が、より緑、黄緑、シアン、又は青の色相に近いODの装飾的色合いを知覚することを実現する光学デバイスの透過スペクトルを示すプロット3700を示す。ダブルパスしたODの装飾的色合い(WP)は、{D65、F2、 F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、シングルパスしたODの装飾的色合いのa値よりも少なくとも1単位低いa値を有する。実線は、ODのシングルパスフィルタ透過スペクトル3710を示し、破線は、ODのダブルパスフィルタ透過スペクトル3720を示す。ODは、色覚異常(CVD)の人と正常色覚者の赤緑色識別を向上させるよう製造される。このODは、約460nm(3730、3731)、575nm(3740、3741)、595nm(3750、3751)、635nm(3760、3761)にピーク吸収を持つ4つの狭スペクトル吸収色素を用いて作成されてもよい。このODの基材はCR39である。4つの色素は、直径約72mm、厚さ2.5mmのレンズブランクにディップ塗布されている。これらの色素の濃度は、1マイクロモルから2500マイクロモルの範囲であればよい。
T(3710)及び/又はT2(3720)の場合、ピーク透過波長が420nmと520nmの間で少なくとも1つのストップバンド3730、3731と、ピーク透過波長がそれぞれ550nmと700nmの間である、スペクトル3710の少なくとも2つのストップバンド、ストップバンド3740、3760と、スペクトル3720のストップバンド3741、3761がある。隣接するいずれか2つのストップバンドのピーク透過波長間の違いは少なくとも8nmである。
このODの基材は、コンタクトレンズ用のシリコーンヒドロゲル又はその他の光学的に適切な材料である。色素は、物理的混合及び/又は化学結合を介してコンタクトレンズの中又は上に入れられる。これらの色素の濃度は1マイクロモルから5000マイクロモルの範囲であればよい。
図38は、図38aのプロット3800a、図38bのプロット3800b、及び図38cのプロット3800cの3つのプロットを示し、これらは、D65、F2、F11を光源として、CIE LAB色空間における図37の透過スペクトルを有するODの比色効果を示す。細い実線、細い破線、及び実線の円はそれぞれ、裸眼の赤緑色覚異常(CVD)観察者や正常色覚観察者の飽和マンセル色域3820a、3820b、3820c、パステルマンセル色域3860a、3860b、3860c、及びWP 3840a、3840b、3840cを示す。太い実線と太い破線は、ODで見ている赤緑CVD観察者や正常色覚観察者の飽和したマンセル色域3810a、3810b、3810c、及びパステルマンセル色域3870a、3870b、3870cを示す。黒塗り四角は、ODの白色点3850a、3850b、3850c又は装飾的色合いをシングルパスフィルタとして、つまりOD装着者又は受領者に知覚されたものとして描写する。黒塗り星印は、ODの白色点3830a、3830b、3830c又は装飾的色合いをダブルパスフィルタとして、つまり外部の視者によって知覚されたものとして。装着者に知覚されるシングルパスしたODの装飾的色合いは、<L、a、b>形式で、D65 3850cの下では、<80±20、-13±20,8±20>、F2 3850bの下では<75±20、-7±20、-4±20>、F11 3850aの下では<81±19,1±20,8±20>のCIE LAB値を持つ場合がある。明所視感透過率の値は、D65、F2、F11光源の下でそれぞれ56%、48%、59%、又は5%と95%の間である。装飾的色合いの明度に依存しない白色点シフト(WPS)は、D65光源の下では、黄色、黄緑色、又は緑色の色相で15±15、F2光源の下では緑、シアン、又は青の色相で8±8、F11光源の下では黄色、黄緑、又は黄赤色の色相で8±8である。
外部の視者によって知覚されるODのダブルパスしたODの装飾的色合いは、<L、a、b>形式で、D65 3830cの下では、<68±20、-17±20,10±20>、F2 3830bの下では、<61±20、-10±20、-5±20>、F11 3830aの下では、<69±20、-2±20,7±20>のCIE LAB値を有する。装飾的色合いの明度に依存しないWPSは、D65光源の下では緑、黄緑、又は黄色の色相で19±19、F2光源の下では緑、シアン、又は青の色相で11±11、F11光源の下は黄色、黄緑又は黄赤の色相で7±7である。
シングルパスとダブルパスしたODの装飾的色合いはそれぞれ、CIE LAB色空間で{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、明るさに依存しないWPSが60未満である。シングルパスとダブルパスしたODの装飾的色合いは、{D65、F2、F1 1}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下では、CIE LAB色空間で、-60と+605の間のa値、及び/又は-60と+60の間のb値を有する。シングルパスフィルタ処理での、又は、装着者がCIE LAB色空間で知覚したODの明度値は、D65及び/又はF11光源下では55以上、F2光源下では50以上である。シングルパスフィルタ処理の下で、又は装着者によって知覚されるODの明所視感透過率は、{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で95%未満である。選択されたマンセルの赤と緑の色セットを使用すると、図37、図38で示すODは、LAB RGLI色差率(パーセント)がそれぞれD65、F2、F11の光源の下で30%、42%及び15%増加するか、上記すべての光源下で5%と110%の間で増加する。
図38に示すように、ODは、{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、緑色の色相成分を持つ少なくとも1つのマンセル色、すなわち、LAB色空間で負のa値を持つ色を増強させて、より低いa値を持つ緑にした。図38に示すように、ODは、{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下で、赤の色相成分を持つ少なくとも1つのマンセル色、すなわち、LAB色空間で正のa値を持つ色を増強させて、より高いa値でより赤くなるようにした。
赤緑色改善又はカラー補正ODは、外部の視者から見たときに、装着者の顔の皮膚又は強膜の元々の色のa値を少なくとも1単位増やす。このODは、外部の視者から見たときに、ODで覆われた皮膚及び/又は目の領域の赤、ピンク、オレンジ、茶色、紫、又はこれらの色の見えを増大させる。
式24は、CIE LAB色空間の明度に依存しない青黄色の色差を測定する比色性能測定基準(CPM)を表す。マンセルの青と黄色の色セットは、選択された入力である。選択された青色のセットについては、青色セットの平均統計を用いて<a青、b青>を列挙する。選択した黄色のセットについては、黄色のセットの平均統計を用いて<a黄、b黄>を列挙する。
式25では、適切に設計及び作成された光学デバイスを通して、青と黄色の色セットのコントラストを見た場合と、裸眼でそのような色差を見た場合とで、BY
LI色差率を比較するCPMが得られる。
式25では、<a
*、b
*>及び<a
η、a
η>は、それぞれ光学デバイスで見た場合と裸眼で見た場合との色のCIE LAB色空間座標を示す。
マンセル色、石原色、自然色、人工色を含む任意の色又は色セットの場合、平均的な緑色のCIE LAB「a緑」値は、これらの色の個々のa値の平均をとることによって得られる。平均的な緑色のLAB「b緑」値は、これらの色の個々のb値の平均をとることによって得られる。平均的な緑色のCIE LAB「L緑」値は、これらの色の個々の「L」値の平均をとることによって得られる。平均的な赤色のCIE LAB「a赤」値は、これらの色の個々のa値平均をとることによって得られる。平均的な赤色のCIE LAB「b赤」値は、これらの色の個々のb値平均をとることによって得られる。平均的な赤色のCIE LAB「Lred」値は、これらの色の個々の「L」値の平均をとることによって得られる。平均的な青色のCIE LAB「a青」値は、これらの色の個々のa値の平均をとることによって得られる。平均的な青色のCIE LAB「b青」値は、これらの色の個々のb値の平均をとることによって得られる。平均的な青色のCIE LAB「L青」値は、これらの色の個々のL値の平均をとることによって得られる。平均的な黄色のCIE LAB「a黄」値は、これらの色の個々のa値の平均をとることによって得られる。平均的な黄色のCIE LAB「b黄」値は、これらの色の個々のb値の平均をとることによって得られる。平均的な黄色のCIE LAB「L黄」値は、これらの色の個々のL値の平均をとることによって得られる。
赤、緑、青、黄色の平均値<L、a、b>は、特に明記されていない限り、すべて色差、明度差、対応するパーセントの計算を含む、すべてのCPMへの入力である。これらの入力は、色改善光学デバイスがある場合とない場合の人間の色覚で使用され、ODのシングルパス及び/又はダブルパス色合いの評価に使用される。
いくつかの構成では、Lab色空間はLuvに置き換えられる。ここで、式11と12で示すように、Lは明度、uvは周知の色度座標系である。従って、各対象のLには、見ている色又はODの色が含まれ、LabとLuvの色システム間で同じ値である。<L緑、a緑、b緑>座標は、<L緑、u緑、v緑>座標に置き換えられ、<L赤、a赤、b赤>座標は、<L赤、u赤、v赤>座標に置き換えられ、<L青、a青、b青>座標は、<L青、u青、v青>座標に置き換えられ、<L黄、a黄、b黄>座標は、<L黄、u黄、v黄>座標に置き換えられる。
マンセル又は石原色の使用や平均値の使用を含むCPM計算では、Luv色システムが使用されている場合、Lab値ではなくLuv値を使用して実行される。Luvがデフォルトである。
いくつかの構成では、1976 CIE LABのカラーアピアランスモデルの等色関数は、CIE 1931 2度標準観測者のものである。特定の構成では、2005 Sharpe-Stockman光度関数により、光学デバイスの明所視感透過率を評価する。本発明では、1951標準CIE暗所視輝度関数が使用される。
特定の構成では、装着者に到達する前に光源からの光のシングルパスフィルタ(1回フィルタリング)としてODの透過スペクトル(T)を用いて、装飾的色合いのスペクトル値、光学値、及び測色値と、装着者が知覚するODの色改善又は変更性能が評価される。
特定の構成では、外部の視者によって知覚されたODの装飾的色合いのスペクトル値、光学値、及び測色値は、外部の視者に到達する前に、ODの透過スペクトルを光源からの光のダブルパスフィルタ(2回フィルタリング)として用いて評価される。ここで、ODの有効透過スペクトルは波長あたりT2である。スペクトル値、光学値、測色値には、ODのスペクトル、視感透過率、色差、色空間表現(例えば、座標)、色域、白色点、及び本明細書に記載の、及び/又は、光学およびカラー業界で一般的に受け入れられているその他の関連パラメータが含まれる。
図39は、CIE LAB色空間における、D65を光源とした、図40(HG5、4010)の透過スペクトルを有するODの比色効果を示すプロット3900を図示する。細い実線、細い破線、及び実線の円は、裸眼の青黄色覚異常(CVD)観察者又は正常色覚観察者の飽和マンセル色域3920、パステルマンセル色域3960、及びWP3940をそれぞれ示す。太い実線と太い破線は、それぞれODで見た青黄CVD観察者又は正常色覚観察者の飽和マンセル色域3910とパステルマンセル色域3970を示す。黒塗り四角は、ODの白色点3950又は装飾的色合いを、シングルパスフィルタとして、つまりOD装着者又は受領者に知覚されたように描写している。黒塗り星は、白色点3930又はODの装飾的色合いを、ダブルパスフィルタとして、つまり外部視認者によって知覚されたように描写する。
このODのシングルパスフィルタの透過スペクトル4010は、ピーク吸収が約430nm(4011)、470nm(4012)、500nm(4013)、520nm(4014)、575nm(4015)、595nm(4016)、610nm(4017)、640nm(4018)、670nm(4019)である。このODの基材は、ポリカーボネートであってもよく、又は任意のプラスチック、ガラス、又は他の光学的に適切な材料であってもよい。色素は配合され、押し出されて、直径約68mm、厚さ2.5mmのレンズブランクに成形される。これらの色素の濃度は、5マイクロモル~200マイクロモルの範囲である。装着者に知覚されるシングルパスしたODの装飾的色合い3950は、ほぼパステルブルーである。外部の視者によって認識されるダブルパスしたODの装飾的色合い3930は、緑、緑-シアン、シアン、又はほぼこれらの色である。青と黄色のマンセル色セットを使用して、図39と図40(図5)に示した光学デバイスは、D65光源の下で、LAB BYLIの色差率(パーセント)が20%、又は5%と95%の間で増加する。
表2は、スペクトル4000、4100、4200、4300における透過スペクトルを図40から図43に示す25個の光学デバイスの比色及び光学性能指標を示す。光学デバイスは、赤、緑、青、黄色、中間色、紫、オレンジ、シアン、黄緑色、又はほぼ同様の色相で構成されたシングルパスの装飾的色合い(WP)を有していてもよい。ODは、赤、緑、青、黄色、中間色、紫、オレンジ、シアン、黄緑色、又はほぼ同様の色相のダブルパス装飾的色合い(WP)を個別に有していてもよい。緑の色相は、緑、黄、緑、シアンの色相で構成される。赤の色相は、黄-赤(つまり、オレンジ)、茶色、ピンク、赤、紫の色相で構成される。青の色相は、シアン、青、紫の色相で構成される。黄色の色相は、黄緑、黄色、オレンジ、茶色の色相で構成される。すべての色相には、ほぼ類似した色相が含まれる。表2は、ODの明所視感透過率が0%~100%、シングルパスフィルタ(装着者の知覚)の明度が0~100、及び/又は、ダブルパスフィルタ(外部の視者の知覚)の明度が0~100であることを示す。表2は、ODの装飾的色合いが、装着者や外部の視者によって知覚され、いずれかの装飾的色合いが中間色又はほぼ中間色であるとみなされた場合、CIE LAB色空間で20単位未満の明度に依存しないWPSを有することを示す。表2は、装着者及び/又は外部の視者によって認識されたODの装飾的色合いが、赤、緑、青、黄色又はほぼこれらの色の色相であるとみなされた場合、CIE LABの色空間で明度に依存しないWPシフトが3つ以上あることを示す。表2は、装着者及び/又は外部の視者によって認識されたODの装飾的色合いが、CIE LAB色空間で、-100と+100の青田のa値、及び/又は-100と+100の間のb値を有することを示す。表2は、LABにおけるODの明度に依存しない赤緑の色差の増加の範囲が-60%~100%であることを示す。表2は、LABにおけるODの明度に依存しない青黄の色差の増加の範囲が-50%~50%であることを示す。
CIE D65光源では、本明細書で説明するODは、(1)シングルパスWPのa値とダブルパスWPのa値が少なくとも5距離単位離れているa値、及び/又は(2)シングルパスWPのb値とダブルパスWPのb値との間隔が少なくとも5距離単位離れているb値を有し、少なくとも1つの色素を用いて可視透過スペクトル4000、4100、4200、4300を変更し、ストップバンド4020、4030、4110、4120、4210、4220、4310、4320として示されているストップバンドが少なくとも1つ存在し、380nmと780nmの間の透過スペクトルに、最大透過率と最小透過率の比は、少なくとも1.25から1である、明所視感透過率が95%未満である、明度に依存しないRG色差の増加が-80%と120%の間である、明度に依存しないBY色差の増加が-50%と110%の間である、ODのシングルパスWPのa値とb値がいずれも-15と15の間である、という条件のうちの一つ又は複数の条件が適用される。
図示の透過スペクトル4000、4100、4200、4300のいずれかを有するODは、特定の波長を吸収するため色素又は着色剤を用いて作成されてもよい。この色素は、光学的に適切な基材に入れられる、又はコーティングしてもよい。この物理的ODは、外観的にアイウェアなどの形態で、外部から目の前に配置したり、及び/又は、コンタクトレンズや点眼液などの形態で、外部から角膜の上に配置したり、及び/又は、眼内レンズのような形態で眼の内部に配置したりしてもよい。
ODは、1つの統合された物質的デバイスに一つ又は複数の機能を組み込んだ設計としてもよい。ODが1つの機能を備えて設計された実施形態では、ODは、単一の機能的透過スペクトルを有する。ODが複数の機能を備えて設計された実施形態では、ODは、多数の機能的透過スペクトルを効果的に集めてできた全体的な透過スペクトルを有する。例えば、UV光と高エネルギーの青色光(380nmから460nmのHEBL)をブロックする色向上ODの場合、この統合された多機能のODの全体的な透過スペクトルは、色向上スペクトル、UV遮断スペクトル、HEBL遮断スペクトルの積である。つまり、T統合=T色向上*TUV遮断*THEBL遮断。
別の例では、HEBLを遮断する別のODの装飾的色合いを除く、低減、又は変更する色バランスODは、HEBL遮断ODに物理的、化学的又は電子的に統合された色バランス透過スペクトルを有していてもよい。この設計により、新しい色バランスのHEBL遮断ODは、元のHEBL遮断ODと比較して、装飾的色合いが少なくなったり、変更されたりする。この統合されたODの全体的な透過スペクトルは、色調整スペクトルとHEBL遮断スペクトルとの積である。つまり、T統合=T色調整*THEBL 遮断。いずれか一つの機能を持つODを別の機能を持つODと結合して、複数の機能を持つODへと統合することができる。
色改善ODのシングルパスしたODの装飾的色合いのWPは、ODのダブルパスしたODの装飾的色合いから、Lab空間のa値及び/又はb値で少なくとも1単位離れている。
装着者から見た光学デバイスのシングルパス装飾的色合いのWPは、{D65、F2、F11}の組み合わせで一つ又は複数の光源の下、外部視認者から見たODのダブルパス装飾的色合いから、25単位未満(明度に依存しない色差で測定、式21)離れていてもよい。
シングルパスフィルタ処理での光学デバイスの明度値は、D65又はF11光源では15以上、F2光源では10以上である。
これらの発明の応用例としては、レンズがある。この開示に従って作製されたレンズは、正常色覚者や、先天的及び後天的を含む色覚異常者のヒトの色覚を向上させる。これらのレンズは、フレームに入れて目の外に装着したり、コンタクトレンズのように目の表面に装着したり、lOLなどのように眼の中に挿入したり、光学スコープ、望遠鏡、顕微鏡などのように遠距離観察又は拡大用途のデバイスに装着することができる。
本開示の別の用途例としては、人間の顔や目用ではない、建物及び他の構造物やフレームに貼り付けられる又は取り付けられる光学媒体がある。例えば、部分的又は完全に透明な窓、テーブル、ドア、床、壁、鏡、パネル、カバー、シールド、コンテナ。パネル、シールド、カバー、コンテナには、他の物体やエネルギー波を部分的又は完全に遮断しながら、UV、VIS、及び赤外線の波長のすべて又は一部を透過、反射、吸収することを目的とした光学媒体が含まれる。パネル、シールド、カバー、コンテナの例としては、ソーラーパネルの表面カバー、くしゃみ・唾吐きガード、水族館のパネル、ガラスカップなどが挙げられる。
本開示のさらなる用途例としては、窓、フロントガラス、ムーンルーフ、サンルーフ、ミラーなどの自動車用光学媒体がある。
本開示のさらなる用途例としては、テレビ、モニタ、電話ディスプレイ、電子ビューゴーグルの上又は中にある電子表示スクリーンがある。これらのデバイスは、UV、VIS、及び/又は赤外線を放射し、これらの波長は、例えば、人間の目やカメラなど、放射エミッタとレシーバの間に配置された一つ又は複数の表示画面を介して変更可能である。
その他の用途例としては、電球、チューブ、発光ダイオード(LED)、蛍光灯、白熱灯、メタルハライドライトなどの照明デバイスの中又は上にある光学媒体が挙げられる。光学媒体は、カバー、パネル、シールド、コンテナ、筐体、及び、いずれか他のデバイス又はデバイスシステムの一部であってよく、そのデバイス又はデバイスのシステムはUV、VIS、赤外線が、例えば人間の目やカメラなどのレシーバに到達する前に、本開示に係る媒体によって、又はその媒体を介して透過、吸収、反射される。そのような光学媒体の実施形態には、電球、ねじれた又は直線の管、及び他のケース又は筐体が含まれる。
偏光フィルム又はシートなどの一つ又は複数の光偏光層を、光学デバイスの中又は上に導入してもよい。光偏光層を導入する方法には、コーティング、積層、封入、材料注入などがある。偏光層は、光学デバイスの外面であってもよく、又は光学デバイス内の他の層の間に「挟まれて」いてもよい。偏光層は、最も外側の層であってもよく、又は薄膜層や染料層などの上に追加の層が塗布されていてもよい。薄膜層は、反射防止コーティング、ハードコーティング、疎水性コーティング、及びそれらの任意の組み合わせを含み得る。色素層は、ソリッド色、勾配色、カラーティント、中間色、及びそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
図44は、色素で修正された3つの光学デバイスの透過スペクトル4410、4420、4430を示すプロット4400を示す。スペクトル4410に示されているOD Aは、410nm(4440)での透過率が約90%(0.9)であり、透過率35%(0.35)である460nmの4450でブロックし、残りの可視波長4470で40%から100%を透過し、4480は透過率25%(0.25)の約580nmの4460でブロックする(4460)。スペクトル4420に示されるOD Bは、460nmの4451でブロックし、570nmから600nmの4461でブロックし、460nm未満の4441で通過し、460nmと570nmの間の4470で通過し、610nmの4480以上で通過する。OD Bは、平均して、OD Aよりも多くブロックする。スペクトル4430で示されているOD Cは、OD A及びOD Bと比較して、同様の波長4470、4480を通過しつつ、460nmの4452でブロックし、570nmから600nmの4462でブロックする(透過率はほぼゼロ)。ただし、OD Cの460nmから570nmの間の4470の最大透過率は約35%(0.35)である。
OD Aは、厚さ0.5mmの染料浸出ポリカーボネート(PC)層と、直径72mm、厚さ1.5 mmのベース基材を積層することによって作成される。染色されたPC層の積層では、ODは光パワーが平坦である場合もあれば、ODの透過スペクトルを視野周辺から視野中心にほぼ変更せずに非平坦な光パワーの場合もある。PCと互換性のある4つの「ノッチ」吸収色素を460nmの4450、495nの4490、585nmの4460、635nmの4491で使用して、透過スペクトル4410を作成する。色素の濃度は、PCの1ポンドあたり0.01mgから200mgである。色素には、シアニン、ローダミン、クマリン、スクアリリウム、BODIPY構造が含まれる。他の多くの色素を使用して、OD Aの透過スペクトルと同様のODの透過スペクトルを得ることができる。
OD Bは、配合及び成形プロセス中に、3つの色素をポリアミド(PA、ナイロン)の母材に入れることによって作成される。PAと互換性のある3つのノッチ吸収色素を460nm 4451、575nm、595nm 4461で使用して、所望の透過スペクトル4420を作成する。620nmより長い波長でのスペクトルの不均一性は、ハードコーティングと反射防止コーティングが主な原因である。色素の濃度は、PAの1ポンドあたり0.01mgから200mgである。
OD Cは、OD Bと同様に構成されている。ODCは、「カーボンブラック」などのほぼ中性濃度又は広い可視スペクトル吸収色素を添加して、OD Cの透過スペクトルを380nmから780nmまで大幅に低減させる。OD Cで使用する色素の濃度は、PA又はPCの1ポンドあたり0.1mgから1000mgの範囲である。
光学デバイスは、国際標準化機構(ISO)、米国規格協会(ANSI)、オーストラリア規格(AS/NZS)などのさまざまな標準化グループによって設定された標準のすべて、過半数、又は一部をパスするよう作成すればよい。特に、ODの可視透過スペクトルは、これらの規格の一部又はすべてに準拠している。
表3は、2013 ISO 12312-1、2018 ANSI Z80.3、2016 AS/NZS 1067.1によって設定された、380nmから780nmの可視波長における光学デバイスの透過スペクトルに関連する関連規格を示す。表3は、OD A、OD B及びOD Cの3つの色改善光学デバイスのテスト値と結果を示す。その透過スペクトル4410、4420、4430は、図44に示す。OD Aは、上記すべての規格をクリアしている。OD B、OD Cは、分光透過率標準を除いて、上記規格のほぼすべてをクリアしている。
色改善光学デバイスは、表3に記載されていない、及び/又は他の規則制定団体によって設定されたさらなる規格に合格するよう作成すればよい。
表3の光学デバイスを含む色改善光学デバイスは、赤、緑、青の光などの信号機の光の相対視覚減衰率(Q)を増強させる。これらの光学デバイスは、信号機の色や視認性を増強させるために、ドライバー、ライダー、サイクリストなどが個人利用してもよい。
いくつかの実施形態では、ODの相対視覚減衰指数(Q)は、赤、黄、緑、又は青の指定の少なくとも1つの白熱信号灯について、最小ISO要件よりも少なくとも0.02大きい。いくつかの実施形態では、ODの相対視覚減衰指数(Q)は、赤、黄、緑、又は青の指定の少なくとも1つのLED信号灯について、最小ISO要件よりも少なくとも0.02だけ大きい。いくつかの実施形態では、ODのISO相対視覚減衰指数(Q)は、赤、黄、緑、又は青の指定の少なくとも1つの白熱信号灯について少なくとも1.0である。いくつかの実施形態では、ODのISO相対視覚減衰指数(Q)は、赤、黄、緑又は青の指定の少なくとも1つのLED信号灯について少なくとも1.0である。
図45は、ANSIに従って、OD Cと裸眼で見た青信号灯4510、黄色信号灯4530、D65、昼光4520のCIE xyY色度座標を示すプロット4500を示す。
プロット4500に示すように、OD Cなどの色改善光学デバイスは、黄色の信号灯のオレンジ又は赤4580への色の見え方を、裸眼4590で見た場合と比較して、許容可能な黄信号領域4530の範囲内で変更する場合がある。そのような光学デバイスは、丸印の点で示されるように、それを見るとき又はそれを介して見るときに、許容可能なシングルパスWP4560を維持し、マークされたCIE D65領域4520内に留まってもよい。許容可能な光学デバイスの色合いには、光学デバイス4560の白色点(円でマークされた点)と光学デバイス4570なしの裸眼で見た色覚の白色点(四角でマークされた点)の近さによって示されるほぼ中間色又はパステルカラーの色合いが含まれてもよい。
色改善光学デバイスは、裸眼での補正なしの知覚と比較して、もともとは黄色やオレンジ色の動線、マーキング、標識、コーン又は他のデバイスの色の見え方をオレンジや赤に向けて変更する場合がある。そのような色改善光学デバイスは、許容可能な青信号領域(4510)内で、裸眼4550で見た場合と比較して、青信号の色の見え方をより青く又はより高い彩度の青4540になるよう変更することができる。
第一色弱者や第一色覚異常者、及び、一部の正常色覚者の場合、色改善、色補正又は色補償ODの透過スペクトル3710には、(1)560nmと595nmの間にピーク吸収波長がある少なくとも1つのストップバンド3740、3750を含み、(2)そのストップバンドは少なくとも30%のピーク吸光度を有し、(3)そのストップバンドは、図37のプロット3700に示すように、少なくとも10nmのFWHMを有する。
第二色弱者や第二色覚異常者、及び、一部の正常色覚者の場合、色改善、色補正又は色補償ODの透過スペクトル3310には、(1)575nmと610nmの間にピーク吸収波長がある少なくとも1つのストップバンド3350、3360を含み、(2)そのストップバンドは少なくとも30%のピーク吸光度を有し、(3)そのストップバンドは、図33のプロット3300に示すように、少なくとも10nmのFWHMを有する。
CVDの人や一部の正常色覚者の場合、色強調、色補正又は色補償ODの透過スペクトルは、(1)560nmと610nmの間にピーク吸収波長がある少なくとも1つのストップバンドを含み、(2)そのストップバンドは少なくとも30%のピーク吸光度を有し、(3)そのストップバンドは、少なくとも10nmのFWHMを有する。
CVDの人や一部の正常色覚者の場合、色強調、色補正又は色補償ODの透過スペクトルは、(1)575nmと595nmの間にピーク吸収波長がある少なくとも1つのストップバンドを含み、(2)そのストップバンドは少なくとも30%のピーク吸光度を有し、(3)そのストップバンドは、少なくとも15nmのFWHMを有する。
≧X%のピーク吸光度は、≦(100-X)%の谷(最低局所)透過率に等しい。
本明細書に記載の測光及び/又は比色属性を有する一つ又は複数の視野領域(すなわち、表面)は、ODの表面全体を部分的又は完全に覆ってもよい。
図46は、コンタクトレンズ4600を示す。一実施形態では、コンタクトレンズ4610は、瞳孔及び/又は強膜4630のみを又は実質的に覆うその中央視野領域のみを染色することができ、この視野領域4630の面積は、レンズ4610全体の面積よりも小さい。別の実施形態として、コンタクトレンズ4620は、そのレンズ全体を染色することができ、視野領域4640の面積は、レンズ4620全体の面積と同じ又はほぼ同じである。
上記例では、ODの出力は透過スペクトルである。そのようなスペクトルは、任意の光学デバイスで作成し得ることは当業者であれば理解するであろう。
赤、緑、青、及び/又は黄色の色改善光学デバイスは、380nmから780nmの透過スペクトルに少なくとも4つのパスバンドを有する。少なくとも1つのパスバンドのピーク透過波長は440nmより短く、少なくとも2つのパスバンドのピーク透過波長は440nmと610nmの間であり、1つのパスバンドのピーク透過波長は他のパスバンドよりも少なくとも10nm短く、少なくとも1つのパスバンドは、610nmより長いピーク透過波長を有する。そのような光学デバイスは、少なくとも1つの吸収性色素及び/又は少なくとも1つの反射性薄膜から構成される。
赤、緑、青、及び/又は黄色の色改善光学デバイスは、380nmから780nmの透過スペクトルに少なくとも3つのパスバンドを有する。571nmと780nmの間に中心がある少なくとも1つのパスバンドのピーク透過は、380nmと570nmの間に中心がある少なくとも1つのパスバンドのピーク透過よりも少なくとも1%高い。いずれかのパスバンドは、そのピーク透過波長が他のパスバンドとは少なくとも10nm異なる。そのような光学デバイスは、少なくとも1つの吸収性色素及び/又は少なくとも1つの反射性薄膜から構成される。
赤、緑、青、及び/又は黄色の色改善光学デバイスは、380nmから780nmの透過スペクトルに少なくとも4つのパスバンドを有する。ピーク透過波長が460nmより短い少なくとも1つのパスバンドがある。少なくとも1つのパスバンドは、461nmと540nmの間にピーク透過波長を有し、少なくとも2つのパスバンドのピーク透過波長は541nmより長い。直接隣接するパスバンドのすべての対で、ピーク透過波長間は少なくとも5nm離れている。そのような光学デバイスは、少なくとも1つの吸収性色素及び/又は少なくとも1つの反射性薄膜から構成される。
赤、緑、青、及び/又は黄色の色改善光学デバイスは、380nmから780nmの透過スペクトルに少なくとも4つのパスバンドを有する。450nmより短い波長を中心とする少なくとも1つのストップバンドがあり、そのピーク抑制は少なくとも30%である。550nmと610nmの間に中心がある少なくとも1つのストップバンドのピーク抑制は、少なくとも30%である。440nmと510nmの間に中心がある少なくとも1つのストップバンドのピーク抑制は80%未満である。ピーク透過率が20%で、480nmと570nmの間に中心がある少なくとも1つのパスバンドがある。580nmより長い波長を中心とする少なくとも1つのストップバンドがある。そのような光学デバイスは、少なくとも1つの吸収性色素及び/又は少なくとも1つの反射性薄膜から構成される。
光学デバイスは、その380nmから780nmの透過スペクトルに少なくとも2つのパスバンドがある。そのような光学デバイスは、少なくとも1つの吸収性色素及び/又は少なくとも1つの反射性薄膜から構成される。CIE D65光源下及びCIE LAB色空間では、光学デバイスは、(1)シングルパス白色点のa値とダブルパス白色点のa値が5距離単位と150距離単位の間で(包括的に)互いに離間している、及び/又は、(2)シングルパス白色点のb値とそのダブルパス白色点のb値は、5距離単位と150距離単位の間(包括的に)で互いに離間している、(3)このデバイスには以下の条件の1つ以上が適用される。
1nmの解像度で、380nmから780nmのデバイスの透過スペクトルにおいて、最大透過率と最小透過率の比が少なくとも1.25から1である。
明所視視透過率が95%未満である。
デバイスを通して見た赤と緑のマンセル色について、明度に依存しない赤緑色差を、-2%から2%を除く、-80%から120%で増大させる。
デバイスを通して見た青と黄色のマンセル色について、明度に依存しない青と黄色の色差を、-2%から2%を除く、-50%から50%で増大させる。
デバイスのシングルパス白色点のa値及び/又はb値が-15と15の間である。
光学デバイスは、380nmから780nmの透過スペクトルに少なくとも3つのパスバンドを有する。そのような光学デバイスは、少なくとも1つの吸収性色素及び/又は少なくとも1つの反射性薄膜から構成される。CIE D65、F2、及び/又はF11光源のうちの一つ又は複数の光源下で、デバイスを通して見た赤と緑のマンセル色又は石原色、あるいはその両方の赤緑の明度の差は、-0.1から0.1を除く、-5.0から5.0(包含的)である。
透過スペクトルに少なくとも1つのストップバンドがあり、その阻止波長のピークが440nmと600nmの間であり、ストップバンドの半値全幅が少なくとも5nmである光学デバイス。
光学デバイスの透過スペクトルでは、ピーク抑制波長が440nmと510nmの間であるストップバンドはいずれもピーク抑制が85%未満である。
光学デバイスの透過スペクトルにおいて、480nmと570nmの間に中心がある一つ又は複数のパスバンドのピーク透過波長は、571nmと660nmの間に中心がある一つ又は複数のパスバンドのピーク透過波長よりも少なくとも40nm短い。
光学デバイスは、UV照明下でフォトクロミックである。
光学デバイスの透過スペクトルでは、少なくとも1つのストップバンドは、590nmより長い波長を中心としている。
光学デバイスの透過スペクトルでは、530nmと780nmの間の最低透過率は、380nmと529nmの間の最低透過率よりも少なくとも1%高くなる。
光学デバイスの透過スペクトルにおいて、ピーク透過波長が最も長いパスバンドは、ピーク透過波長が2番目に長いパスバンドよりも少なくとも10nm長い波長を有する。
光学デバイスの透過スペクトルでは、460nmと540nmの間の平均透過率は、550nmと600nmの間の平均透過率よりも少なくとも1%高くなる。
光学デバイスの透過スペクトルの場合、500nmと550nmの間の平均透過率は、570nmと590nmの間の平均透過率よりも少なくとも1%高くなる。
光学デバイスの透過スペクトルの場合、380nmから780nmまでのすべての波長におけるそのようなスペクトルの2乗は、そのようなスペクトル自体と比較して、すべて同じスペクトル特性を有する。
光学デバイスの場合、シングルパスとダブルパスの装飾的色合いはどちらも、CIE D65、F2及び/又はF11のうちの一つ又は複数の光源下では、CIE LAB色空間において、-60と+60の間のa値、及び/又は、-60と+60の間のb値を有する。
光学デバイスの場合、CIE D65、F2、F11のうちの一つ又は複数の光源の下で、デバイスのシングルパスを介した明所視感透過率は95%未満(包含的)である。
光学デバイスの場合、CIE D65、F2及び/又はF11のうちの一つ又は複数の光源の下で、デバイスを通して見た赤と緑のマンセル色の場合、LAB RGLI色差率(パーセント)が5%から110%増加する。
光学デバイスの場合、CIE D65、F2及び/又はF11のうちの一つ又は複数の光源の下で、デバイスを通して見た青と黄色のマンセル色の場合、LAB BYLI色差率が10%から110%増加する。
光学デバイスの場合、光学デバイスのシングルパス装飾的色合いの白色点とダブルパス装飾的色合いの白色点の間の明度に依存しない色差は、CIE D65、F2及び/又はF11のうちの一つ又は複数の光源の下で、CIE LAB色空間において互いに60距離単位以内である。
光学デバイスの場合、光学デバイスのシングルパス装飾的色合いの明度に依存しない白色点シフトとダブルパス装飾的色合いの白色点シフトはいずれも、CIE D65、F2及び/又はF11のうちの一つ又は複数の光源の下で、CIE LAB色空間において、中間色から60距離単位未満離れている。
光学デバイスの場合、そのシングルパス装飾的色合いは、CIE D65、F2及び/又はF11のうちの一つ又は複数の光源の下で、CIE LAB色空間において、ダブルパス装飾的色合いのa値とは少なくとも1距離単位だけ異なるa値を有する。
光学デバイスの場合、シングルパスの装飾的色合いは、CIE D65、F2及び/又はF11のうちの一つ又は複数の光源の下で、CIE LAB色空間において、ダブルパス装飾的色合いのb値とは少なくとも1距離単位だけ異なるb値を有する。
光学デバイスの場合、CIE F2光源でのシングルパス及び/又はダブルパスの装飾的色合いは、CIE LAB色空間において、CIE D65及び/又はF11光源でのその対応するシングルパス及び/又はダブルパスの装飾的色合いのb値よりも少なくとも1距離単位小さいb値を有する。
光学デバイス及び黄色の色覚を持つ人の場合、CIE D65照明とCIE LUV空間では、その人の裸眼で見た色覚の中間色からの白色点シフトと、同じ人がデバイスを介してみたものとの差は、距離単位0.002~0.2の間になる。
光学デバイスの場合、デバイスを通して見ると、赤と緑の明度の差の変動は、CIE D65、F2及び/又はF11光源群のうちのいずれか2つの光源間で5.0以内である。
光学デバイスの場合、デバイスの計算された相対視覚減衰率(Q)は、赤、黄、緑、又は青の指定の少なくとも1つの白色信号灯に対して、最小ISO要件より少なくとも0.02大きくなる。
光学デバイスの場合、すべての測色性能測定基準は、1931 CIE 2度標準観測者を使用する。
光学デバイスの場合、一つ又は複数の視野領域は、ODの表面全体を部分的又は完全に覆うことができる。
光学デバイスの場合、デバイスは、レンズ、サングラス、眼科用ガラス、コンタクトレンズ、光学フィルタ、ディスプレイ、フロントガラス、眼内レンズ、ヒト水晶体、窓、プラスチックで構成される。光学デバイスは、任意の光パワー、曲率、又は、幾何学的形状、屈折率、厚さを含む他の適切な特性を有することができる。
以上、特徴及び要素について特定の組み合わせで説明しているが、各特徴又は要素が単独で、又は他の特徴及び要素の有無にかかわらず任意の組み合わせで使用できることは当業者であれば理解するであろう。さらに、本明細書に記載の方法は、コンピュータ又はプロセッサによって実行されるために、コンピュータ可読媒体に組み込まれたコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアに実装可能である。コンピュータ可読媒体の例には、電子信号(有線又は無線接続を介して送信される)やコンピュータ可読記憶媒体が含まれる。コンピュータ可読記憶媒体の例には、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気メディア、光磁気媒体、CD-ROMディスクやデジタル多用途ディスク(DVD)などの光学メディアが含まれるが、これらに限定されるものではない。