配列表
添付の配列表に列挙されている核酸配列およびアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822において定義されている通り、ヌクレオチド塩基については標準の文字略語、およびアミノ酸については3文字コードを使用して示されている。各核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、示されている鎖への言及のいずれにも相補鎖が含まれると理解されたい。配列表は、ASCIIテキストファイル[Sequence_Listing, March 1, 2019, 32.4KB]として提出され、参照により本明細書に組み込まれる。添付の配列表中:
配列番号1は、ヒトIL-34の例示的なアミノ酸配列である。
配列番号2は、マウスIL-34の例示的なアミノ酸配列である。
配列番号3は、ヒトIL-34をコードする例示的な核酸配列である。
配列番号4は、マウスIL-34をコードする例示的な核酸配列である。
配列番号5は、光受容体間レチノイド結合ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号6は、pV5.2 CMV mIL-34の核酸配列である。
配列番号7は、デオキシサイクリン(deoxycycline)誘導性プロモーターの例示的な核酸配列である。
配列番号8は、AAV7m8の核酸配列である。
配列番号9は、pAAV-Tet-On-mIL34ベクターの核酸配列である。
いくつかの実施形態の詳細な説明
IL-34は、免疫調節機能を有する。例えば、IL-34により分化した単球では、TNFαおよびIL-1βの発現が下方調節される(Zwicker, S. et.al. 2015)。さらに、IL-34の存在下で分化したマクロファージでは、IL-10発現が上方調節される(Zwicker, S. et.al. 2015)。このサイトカインはまた、T細胞生物学においてもいくつかの役割を有する(Bezie, S. et.al. 2015; J. Clin. Invest.)。例えば、ラットにおいて、IL-34による処置により、同種異系移植片耐性が促進され、これは、CD4+およびCD8+調節性T細胞(Treg)の誘導によって媒介された。さらに、IL-34と共に培養したヒトマクロファージでは、優れたサプレッサー機能を有するCD4+およびCD8+Foxp3+Tregが増えた。IL-34は、ラットCD8+CD45RCloTregおよびヒトFoxp3+CD45RCloCD8+およびCD4+Tregによっても発現される。IL-34はまた、アルツハイマー病モデルにおける神経保護効果も有する(Mizuno, et.al., Am. J. Pathol. 179:2016-2027, 2011)。理論に束縛されることなく、IL-34は、Tregの活性および/または数を増加させることによってその効果を発揮することができる。
IL-34およびその受容体が網膜において構成的に発現されることが本明細書に開示される。自己免疫性ブドウ膜炎のモデルでは、IL-34のレベルが低減された。眼の環境におけるIL-34の治療的発現により、神経網膜が、盛んに誘発されるブドウ膜炎から保護されることが決定された。したがって、炎症を低下させ、網膜変性を阻害するためにIL-34を使用することができる。
用語
以下の用語および方法の説明は、本開示をよりよく説明するため、および本開示の実施に関して当業者をガイドするために提供される。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈により明確に別段の規定がなされない限り、1つまたは1つよりも多くを指す。例えば、「1つの細胞を含む(comprising a cell)」という用語は、単一の細胞または複数の細胞を含み、「少なくとも1つの細胞を含む(comprising at least one cell)」という句と等価であるとみなされる。「または(or)」という用語は、文脈によりそうでないことが明白に示されない限り、記載されている代替要素のうちの単一の要素または2つもしくはそれよりも多くの要素の組合せを指す。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む(comprising A or B)」は、「A、B、またはAとBとを含む(including A,B,or A and B)」を意味し、追加的な要素は排除されない。本明細書で言及されるGENBANK(登録商標)受託番号の日付は、少なくとも2015年9月16日には入手可能であった配列である。本明細書において引用されている全ての参考文献、特許出願および刊行物、ならびにGENBANK(登録商標)受託番号が参照により組み込まれる。本開示の種々の実施形態の精査を容易にするために、以下の特定の用語に関する説明を提供する。
アデノ随伴ウイルス(AAV):AAVは、ヒトおよびいくつかの他の霊長類種に感染する小さなウイルスである。AAVは、疾患を引き起こすことは現在知られておらず、したがって、当該ウイルスは非常に軽度の免疫応答を引き起こす。AAVは、分裂細胞および非分裂細胞のどちらにも感染し得、宿主細胞において主にエピソーム形態で存在する。AAVゲノムは、プラスセンスまたはマイナスセンスのいずれかの一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)で構成され、約4.7キロベース(kb)長である。ゲノムは、DNA鎖の両末端の逆方向末端反復(ITR)、ならびに2つのオープンリーディングフレーム(ORF):repおよびcapを含む。RepはAAV生活環に必要なRepタンパク質をコードする4つの重複した遺伝子で構成され、Capは、一緒に相互作用して正二十面体対称のカプシドを形成するカプシドタンパク質:VP1、VP2およびVP3の重複するヌクレオチド配列を含有する。遺伝子治療に関して、ITRは、治療用遺伝子に隣接してシスで(in cis)必要とされる唯一の配列であると思われる:構造遺伝子(cap)およびパッケージング遺伝子(rep)は、トランスで(in trans)送達することができる。
加齢黄斑変性(AMD):米国および他の先進工業国において失明の主要な原因となっている疾患。(Evans J, Wormald R., British Journal Ophthalmology 80:9-14, 1996;Klein R, Klein B E K, Linton K L P, Ophthalmology 99:933-943, 1992;Vingerling J R, Ophthalmology 102:205-210, 1995)。初期AMDは、網膜色素上皮(RPE)の真下に位置する、タンパク質、脂質、および細胞デブリの細胞外沈着物であるドルーゼン(Hageman G S, Mullins R F, Mol Vis 5:28, 1999)によって臨床的に特徴付けられる。RPEは、その上を覆う光受容体への栄養機能、代謝機能、および食作用機能をもたらす。有意な視力喪失は、AMDの後期ステージ(網膜色素上皮細胞の地図状萎縮および網膜下血管新生)と関連して斑における光受容体の機能障害または死に起因する。
細胞培養物:制御された条件下で成長させた細胞。初代細胞培養物は、生物体から直接取得し、最初の継代培養をする前の細胞、組織または器官の培養物である。細胞は、細胞の成長および/または分裂を容易にする条件下で成長培地に入れると、培養物中で増え、その結果、当該細胞のより大きな集団が生じる。
先天性停止性夜盲症:非進行性網膜障害であり、重症度に応じて2つの形態、1型としても公知の完全型(CSNB1)および2型(CSNB2)としても公知の不完全型がある。完全型(CSNB1)では光に対する測定可能な杆体細胞応答が見られないが、この応答は不完全型では測定可能である。患者は、光受容体伝達が損なわれているので光が少ない状況への適合が困難である。これらの患者はまた、多くの場合、視力の低下、近視、眼振、および斜視も有する。CSNB1は、網膜シナプス形成またはシナプス伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子NYXの変異によって引き起こされる。CSNB2は、電位依存性カルシウムチャネルCaV1.4をコードする遺伝子CACNA1Fの変異によって引き起こされる。
サイトカイン:リンパ球などの他の細胞の挙動に影響を及ぼす細胞によって作られるタンパク質。一実施形態では、サイトカインは、細胞の輸送に影響を及ぼす分子であるケモカインである。別の実施形態では、サイトカインは、リンパ球の成熟化を変更し、B細胞によるアイソタイプ切り換えに影響を及ぼすものである。
糖尿病性網膜症:糖尿病の対象において生じる網膜の変性。糖尿病性網膜症は、網膜の小血管およびニューロンへの損傷の結果として生じる。糖尿病の網膜において検出される最も早い変化としては、網膜の血流の低下を伴う網膜動脈の狭小化;後期ステージには視覚機能のわずかな変化および血液網膜関門の機能障害を伴う網膜の外側の機能の変化があり、網膜内部のニューロンの機能障害が挙げられる。後に、網膜血管の基底膜が肥厚し、毛細血管が変性し、細胞、特に周皮細胞および血管平滑筋細胞が失われ、それにより、血流の喪失および進行性虚血、ならびに顕微鏡レベルの動脈瘤がもたらされる(eading to)。さらに、網膜のニューロンおよびグリア細胞の機能障害および変性が存在する。
非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)と称される第1のステージでは、臨床症状はない(または最小である)。しかし、眼底撮影により、毛細血管瘤が明らかになる。視覚が低下している場合、蛍光眼底造影により網膜虚血が明らかになる。NPDRのあらゆるステージで黄斑浮腫が生じ得る。この黄斑浮腫の症状は、霧視および両眼で同じではない暗いまたは歪んだ像である。糖尿病患者の10パーセントが、黄斑浮腫に関連する視力喪失を有する。光干渉断層撮影により、黄斑浮腫の網膜肥厚(流体の蓄積に起因する)の領域が示される。
第2のステージでは、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)の一部として血管新生が生じる;硝子体出血が生じ、視覚がかすむ恐れがある。この出血が最初に生じた時はそれほど重症ではない可能性がある。ほとんどの場合、ごくわずかな血液の小斑点、または斑点浮遊が人の視野に残るが、この斑点は多くの場合、数時間後になくなる。これらの斑点の後、多くの場合、数日または数週間以内に、はるかに大きな血液の漏出があり、これにより視覚がかすむ。極度の場合には、人はその眼で明暗しかわからなくなる恐れがある。血液が眼の内側から除かれるのに、数日から数年かかる場合がある(一部の場合では除かれない)。
下流:ポリヌクレオチド上の相対的な位置であり、「下流」の位置は、基準点よりもポリヌクレオチドの3’末端に近い。二本鎖ポリヌクレオチドの場合では、5’末端および3’末端の方向性は、アンチセンス鎖と対照的にセンス鎖に基づく。
実験的自己免疫性ブドウ膜網膜炎(EAU):いくつかの網膜自己抗原によって誘発することができるブドウ膜炎の動物モデル(Gery and Streilein, Curr. Opinion Immunol. 6:938, 1994;Nussenblatt and Gery, J. Autoimmunity 9:575-585, 1996;Gery et al., "Autoimmune Diseases of the Eye. In: Theofilopoulosand Bona" (eds.), The Molecular Pathology of Autoimmune Diseases, 2nd Edition, Taylor and Francis, New York, pp. 978-998, 2002を参照されたい)。一般に、眼内炎症は、非ヒト動物種において自己抗原を使用して誘発される。例えば、マウス、ラット、ウサギまたはブタの、眼特異的抗原での免疫処置を使用して、モデル系を作製することができる。アレスチンおよび光受容体間レチノールタンパク質(IRBP、アミノ酸配列に関してはSwissprot受託番号P12661、P49194、P12662を参照されたい)は、どちらもEAUを生じさせるために使用されている。
最も多く評価された抗原およびモデル系の1つは、網膜S-抗原(S-Ag、Swissprot受託番号Q99858、P10523、P20443、P36576を参照されたい)によって誘発されるEAUである。S-Agは、リン酸化された細胞色素に結合し、トランスデューシンと視覚的カスケードの光励起された光受容体との相互作用を遮断する。S-Agは、実質的な数の内在性中間部および後部ブドウ膜炎のヒト患者が一貫してin vitro増殖応答を示す唯一の網膜自己抗原である(Nussenblatt et al., Am. J. Ophthalmol. 89:173, 1980;Nussenblatt et al., Am. J. Ophthalmol. 94:147, 1982)。S-Agのアミノ酸配列全体が記載されており、それぞれ齧歯類および非ヒト霊長類においてブドウ膜炎性(uveitogenicity)が実証されている(Donoso et al., Curr. Eye Res. 8: 1151, 1987;Singh et al., Cell. Immunol. 115:413, 1988)NおよびMと称される2つの断片を含む。このモデルの免疫操作は、EAUモデルで最初に試験されたヒトにおけるシクロスポリン使用の臨床的効果で実証されている通り、ヒトブドウ膜網膜炎に関して優れた予測的な価値を有すると思われる(Nussenblatt et al., J. Clin. Invest. 67:1228, 1981)。
Fcポリペプチド:最初の定常領域免疫グロブリンドメインを除外した抗体の定常領域を含むポリペプチド。Fc領域とは、一般に、IgA、IgD、およびIgGの最後2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後3つの定常領域免疫グロブリンドメインを指す。Fc領域は、これらのドメインに対してN末端の柔軟なヒンジの一部または全部も含み得る。IgAおよびIgMに関しては、Fc領域は、尾部(tailpiece)を含んでもよく含まなくてもよく、また、J鎖が結合していても結合していなくてもよい。IgGに関しては、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCgamma2およびCgamma3(Cγ2およびCγ3)、ならびにCgamma1(Cγ1)とCγ2との間のヒンジの下部を含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、典型的には残基C226またはP230からカルボキシル末端までを含み、ここで、番号付けはKabatのようなEU指針に従う。IgAに関しては、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCalpha2およびCalpha3(Cα2およびCα3)、ならびにCalpha1(Cα1)とCα2との間のヒンジの下部を含む。
FOXP3:「FKHsf」または「スクルフィン」としても公知の転写因子。FOXP3をコードする例示的な核酸、およびFOXP3ポリペプチドの例示的なアミノ酸配列は、参照により本明細書に組み込まれる公開PCT出願第02/090600A2号に開示されている。FOXP3転写因子は、Treg細胞によって優勢に発現される。FOXP3は、サイトカイン産生およびTエフェクター細胞活性化の細胞間接触依存性阻害の調節因子である。FOXP3の変異は、scurfyマウスおよびIPEX(免疫調節不全、多腺性内分泌障害、および腸疾患、X連鎖)を有するヒトに関与することが示されている。FOXP3発現により、末梢CD4+CD25+Treg細胞に抑制機能が付与される。
融合タンパク質:一緒に融合した少なくとも2つのドメインを有するタンパク質。一般に、開示される融合物のドメインは、各タンパク質ドメイン(またはサブドメイン)をコードする核酸分子が、例えば、直接またはリンカーオリゴヌクレオチドを通じてなどで機能的に連結しており、それにより、融合タンパク質をコードする(キメラ)核酸分子が生じるという点で、遺伝子的に融合している。そのような融合物をコードする(キメラ)核酸分子の翻訳産物は、融合タンパク質(例えば、IL-34と連結したFcポリペプチドを含む融合タンパク質、すなわち、「Fc融合タンパク質」)である。
緑内障:網膜神経節細胞死、視神経乳頭の陥凹および視野の段階的な喪失により特徴付けられる眼の障害。異常に高い眼圧が眼に有害であることが一般に公知であり、緑内障の主要な危険因子の1つである。緑内障患者では、高眼圧の結果、網膜の変性的変化が生じ得る。「高眼圧症」は、眼圧が異常に高い個体における、視野や視神経乳頭の欠陥のいかなる顕在化も伴わない臨床的状況を指す。高眼圧症の個体は、緑内障への変換のリスクを保有し、このリスクは、より高い眼圧測定値と相関する。
緑内障は、開放隅角形態と閉塞隅角形態に分けることができ、急性形態と慢性形態にさらに分類することができる。正常眼圧緑内障も存在する。緑内障は、原発緑内障または続発緑内障であり得る。全ての緑内障の症例の80%よりも多くが慢性開放隅角緑内障(COAG)であり、これは原発開放隅角緑内障とも称される。これらの緑内障の形態のいずれも、本明細書に開示される方法を使用して処置することができる。
「原発閉塞隅角緑内障」は、虹彩、小柱網、および末梢角膜の間の接触によって引き起こされ、それにより次に、眼からの房水の流出が妨げられる。虹彩と小柱網(TM)との間のこの接触は、それが房水産生と歩調を合わせられなくなり、圧力が上昇するまで、小柱網の機能を徐々に損傷する可能性がある。全症例の過半数で、虹彩とTMとの持続的な接触により、癒着の形成が引き起こされる(事実上「傷痕を残す」)。これらにより、房水流出の恒久的な閉塞が引きこされる。一部の場合では、眼圧が急速に高まり、それにより、疼痛および発赤が引き起こされる恐れがある(症候性、またはいわゆる「急性」閉塞隅角)。この状況では、視覚がかすむ可能性があり、また、明るい光の周囲に暈輪が見られる可能性がある。付随的な症状としては、頭痛および嘔吐を挙げることができる。診断は、身体的な徴候および症状:瞳孔の中等度散大および光に対する不応答性、角膜浮腫(混濁)、視覚の低下、発赤、ならびに疼痛から行うことができる。しかし、大多数の症例が無症候性である。これらの症例は、非常に重度の視力喪失の前には、一般に眼科専門家による検査によってしか同定されない。
「原発開放隅角緑内障」は、視神経損傷の結果、進行性の視野の喪失が生じた場合に生じる。原発開放隅角緑内障の全員が正常を超えて上昇した眼圧を有するわけではない。圧の上昇は、房水流出経路の遮断によって引き起こされる。顕微鏡レベルの通路が遮断され、眼圧が高まり、非常に段階的なわずかな視力喪失が引き起こされる。周辺視が最初に影響を受けるが、処置しなければ最終的に視覚全体が失われる。診断は、視神経陥凹を探すことおよび視野を測定することによって行うことができる。プロスタグランジンアゴニストは、ブドウ膜強膜路を広げることによって働く。
緑内障の他の形態は、発達緑内障および続発緑内障であり、これらは、ブドウ膜炎、虹彩毛様体炎、眼内出血、外傷、または眼内腫瘍の後に生じ得る。あらゆる形態の緑内障を、本明細書に開示される方法を使用して処置することができる。
緑内障では網膜神経節細胞死が生じる。網膜神経節細胞の生存を増加させるための方法が本明細書に開示される。
免疫抑制剤:炎症反応などの免疫応答を低減することができる化学化合物、小分子、ステロイド、核酸分子、または他の生物学的薬剤などの分子。免疫抑制剤としては、これだけに限定されないが、ブドウ膜炎、網膜炎および脈絡網膜炎の処置において有用な薬剤が挙げられる。免疫抑制剤の具体的な非限定的な例は、コルチコステロイド、シクロスポリンA、FK506、および抗CD4である。
免疫応答:B細胞、T細胞、またはマクロファージなどの免疫系の細胞の、刺激に対する応答。一実施形態では、応答は、特定の抗原に対して特異的である(「抗原特異的応答」)。
炎症:病原体、損傷細胞、または刺激物などの有害な刺激に対する体組織の複雑な生物学的応答であり、免疫細胞、血管、および分子メディエーターが関与する防御応答である。炎症の機能は、細胞傷害の最初の原因を排除し、壊死細胞および損傷組織を元の侵襲および炎症過程から取り除くこと、ならびに組織修復を開始することである。
急性炎症の古典的な徴候は、熱(calor)、疼痛(dolor)、発赤(rubor)、腫脹(tumor)(熱(heat)、疼痛(pain)、発赤(redness)および腫脹(swelling))ならびに機能喪失である。炎症は、一般的な応答であり、したがって、各病原体に特異的である適応免疫とは対照的に、自然免疫の機構とみなされる。「慢性炎症」として公知の持続的な炎症は、単核細胞などの炎症部位に存在する細胞の型の進行性シフトをもたらし、また、炎症過程からの組織の同時に起こる破壊および治癒によって特徴付けられる。「眼炎症」は、眼の炎症である。「ブドウ膜炎」は、眼内炎症である。抗炎症剤により炎症が低減する。
疾患を阻害することまたは処置すること:例えば、ブドウ膜炎および/または眼表面炎症などの疾患のリスクがある対象における疾患または状態の完全な発生を阻害すること。「処置」は、疾患または病的状態の徴候または症状が発生し始めた後にそれを軽減する治療介入を指す。「軽減すること」という用語は、疾患または病的状態に関しては、処置によるあらゆる観察可能な有益な効果を指す。有益な効果は、例えば、易罹患性患者における疾患の臨床症状の発症の遅延、疾患の臨床症状の一部もしくは全部の重症度の低下、疾患の増悪が遅いこと、対象の全体的な健康もしくは健康状態(well-being)の改善によって、または特定の疾患に特異的な当技術分野で周知の他のパラメーターによって証明することができる。「予防的」処置は、疾患の徴候を示していないまたは初期の徴候しか示していない対象に対して、病状が発生するリスクを低減させる目的で投与される処置である。
眼内投与:薬剤を、例えば、硝子体中、もしくは前眼房中、または網膜下に送達することによって眼内に直接、局所的に投与すること。間接的な眼内送達(例えば、角膜を通じた拡散によるもの)は眼内への直接投与ではない。
硝子体内投与:薬剤を硝子体腔中に投与すること。硝子体腔は、眼の中心部の体積の大部分を占める空間であり、その前縁として水晶体およびその懸垂系(毛様小帯)、ならびに周囲縁として網膜およびその被覆部を伴う。硝子体内投与は、注射、ポンピングによって、または埋め込みによって実現することができる。
単離された:「単離された」生物学的構成成分は、当該構成成分が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的構成成分、例えば、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、ならびにタンパク質などから実質的に分離されている、それらと切り離して作製されている、またはそれらから離して精製されている。したがって、「単離された」核酸、ペプチドおよびタンパク質は、標準の精製方法によって精製された核酸およびタンパク質を含む。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸、ペプチド、およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸も包含する。
レーバー先天性黒内障(LCA):出生時または生後数カ月のうちに出現する稀な遺伝性の眼疾患であり、主に網膜に影響を及ぼす。LCAは多数の遺伝子に関連するので、症状(presentation)は変動し得る。しかし、LCAは、眼振、羞明、瞳孔反射が緩慢であることまたは瞳孔反射がないこと、および重度の視力喪失または失明によって特徴付けられる(characterized by characterized by)。
通常は眼に入ってくる光の量に応答して拡大収縮する瞳孔が、正常に光に反応しない。その代わりに、瞳孔は、正常よりもゆっくりと拡大収縮する、または光に全く応答しない場合もある。さらに、眼を覆っている透明な前面(角膜)が円錐形で異常に薄くなる場合があり、この状態は円錐角膜として公知である。
フランセスケッティの眼指徴候(Franceschetti’s oculo-digital sign)と称される特異的な挙動は、レーバー先天性黒内障の特性である。この徴候は、指関節または指で眼を突くこと、押すこと、および、こすることからなる。
ミクログリア:脳および脊髄全体を通して位置する神経膠細胞(グリア細胞)の1種。ミクログリアは、中枢神経系(CNS)の主要な免疫細胞であり、末梢マクロファージと同様に作用する。しかし、ミクログリア細胞は、非常に可塑性であり、種々の構造的な変化を受ける;これにより、ミクログリアはマクロファージと区別される。ミクログリアは、局所的な条件および化学的シグナルに応答して特異的な表現型に適合する。ミクログリア細胞は、その所定の領域を動くが、あらゆる外来物質、損傷細胞、アポトーシス細胞、神経原線維変化、DNA断片、またはプラークを見つけると、「活性化」し、その物質または細胞を貪食する。したがって、活性化されたミクログリア細胞は、細胞デブリを貪食する「ハウスキーパー」として作用する。炎症後、ミクログリアは、神経組織の再成長を促進するためのいくつかのステップを受ける。これらとしては、シナプス除去、抗炎症性サイトカインの分泌、ニューロンおよびアストロサイトの損傷領域への動員、ならびに格子細胞の形成が挙げられる。
神経保護:ニューロン構造および/または機能の保存。進行中の侵襲(神経変性侵襲)の場合には、薬剤は、ニューロン完全性の相対的保存が経時的なニューロン喪失率の低下を意味する場合、「神経保護性」である。神経保護によって、ニューロンの喪失が停止または遅くなることにより、疾患増悪および二次傷害が防止されるまたは遅くなる。神経保護の具体的な非限定的な機構としては、酸化ストレス、ミトコンドリア機能不全、興奮毒性、炎症性変化、鉄の蓄積、およびタンパク質凝集の低下が挙げられる。一部の実施形態では、炎症の低下により、神経毒性が低下し、ニューロンの生存および/または機能が増加する。
薬学的に許容される担体:本発明において有用な薬学的に許容される担体は、従来のものである。Remington's Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)には、本明細書において開示されている融合タンパク質の医薬送達に適した組成物および製剤が記載されている。
一般に、担体の性質は、利用される特定の投与形式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的かつ生理的に許容される流体をビヒクルとして含む注射液を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態)に関しては、従来の無毒性固体担体として、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。投与される医薬組成物は、生物学的に中性の担体に加えて、微量の無毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含み得る。
医薬品:対象または細胞に適正に投与された場合に所望の治療効果または予防効果を誘導することができる化学化合物または組成物。「インキュベートすること」は、薬物が細胞と相互作用するために十分な時間を含む。「接触させること」は、薬物を固体または液体の形態で細胞と一緒にインキュベートすることを含む。
ポリヌクレオチド:任意の長さの核酸配列(線状配列など)。したがって、ポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドを含み、染色体において見いだされる遺伝子配列も含む。「オリゴヌクレオチド」は、ネイティブなリン酸ジエステル結合によってつながれた、複数の接合ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、6ヌクレオチドから300ヌクレオチドの間の長さのポリヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドアナログは、オリゴヌクレオチドと同様に機能するが、天然に存在しない部分を有する部位を指す。例えば、オリゴヌクレオチドアナログは、変更された糖部位、またはホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドなどの糖間連結などの天然に存在しない部分を含有し得る。天然に存在するポリヌクレオチドの機能的なアナログとは、RNAまたはDNAと結合することができるものであり、ペプチド核酸(PNA)分子を包含する。
ポリペプチド:3つまたはそれよりも多くの、共有結合により付着したアミノ酸。この用語は、タンパク質、タンパク質断片、およびタンパク質ドメインを包含する。「DNA結合性」ポリペプチドは、DNAに特異的に結合する能力を有するポリペプチドである。
「ポリペプチド」という用語は、天然に存在するタンパク質、および組換えによってまたは合成的に作製されたものを網羅することが具体的に意図されている。「ポリペプチドの機能性断片」という用語は、ポリペプチドの活性を保持するポリペプチドの断片全てを指す。生物学的機能性断片は、例えば、抗体分子に結合することができるエピトープほどの小ささのポリペプチド断片から、細胞内の表現型の変化の特徴的な誘導またはプログラミングに関与することができる大きなポリペプチドまで、サイズが様々であり得る。「エピトープ」は、抗原との接触に応答して生成された免疫グロブリンに結合することができるポリペプチドの領域である。したがって、インスリンの生物活性を含有するより小さなペプチド、またはインスリンの保存的バリアントがこのように有用なものとして含まれる。
「実質的に精製されたポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、天然ではそれに付随する他のタンパク質、脂質、炭水化物または他の材料が実質的に除かれている ポリペプチドを指す。一実施形態では、ポリペプチドは、天然ではそれに付随する他のタンパク質、脂質、炭水化物または他の材料が少なくとも50%、例えば、少なくとも80%除かれている。別の実施形態では、ポリペプチドは、天然ではそれに付随する他のタンパク質、脂質、炭水化物または他の材料が少なくとも90%除かれている。さらに別の実施形態では、ポリペプチドは、天然ではそれに付随する他のタンパク質、脂質、炭水化物または他の材料が少なくとも95%除かれている。
保存的置換は、1つのアミノ酸が、サイズ、疎水性などが同様である別のアミノ酸で置き換えられたものである。保存的置換の例を以下に示す。
保存的であるか否かにかかわらず、アミノ酸の変化をもたらすcDNA配列の変動は、コードされるタンパク質の機能的および免疫学的同一性を保存するために、最小化されるべきである。タンパク質の免疫学的同一性は、当該タンパク質が抗体によって認識されるかどうかを決定することによって評価することができる;そのような抗体によって認識されるバリアントは、免疫学的に保存されたものである。いずれのcDNA配列バリアントも、コードされるポリペプチドに20アミノ酸以下、好ましくは10アミノ酸未満の置換が導入されることが好ましい。バリアントアミノ酸配列は、ネイティブなアミノ酸配列と、例えば、80%、90%またはさらには95%または98%同一であり得る。
プロモーター:プロモーターは、核酸の転写を方向付ける一群の核酸制御配列である。プロモーターは、転写の開始部位の付近に、必要な核酸配列、例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合ではTATAエレメントなどを含む。プロモーターはまた、必要に応じて、転写の開始部位から数千塩基対程度のところに位置し得る遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントも含む。
プロモーターは、構成的に活性なプロモーター(すなわち、構成的に活性/「オン」状態にあるプロモーター)、誘導性プロモーター(すなわち、その状態が活性/「オン」であるか不活性/「オフ」であるかが、外部刺激、例えば、特定の温度、化合物、またはタンパク質の存在によって制御されるプロモーター)、空間的に制限されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)であってもよく、時間的に制限されたプロモーター(すなわち、プロモーターは胚発生の特定のステージの間、または生物学的プロセスの特定のステージの間、「オン」状態または「オフ」状態にある)であってもよい。
誘導性プロモーターの例としては、これだけに限定されないが、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、T3 RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)により調節されるプロモーター、ラクトースにより誘導されるプロモーター、熱ショックプロモーター、テトラサイクリンにより調節されるプロモーター、ラパマイシンにより調節されるプロモーター、低酸素反応エレメント(HRE)により調節されるプロモーター、RU486により調節されるプロモーター、ステロイドにより調節されるプロモーター、金属により調節されるプロモーター、エストロゲン受容体により調節されるプロモーターなどが挙げられる。誘導性プロモーターは、これだけに限定されないが、ドキシサイクリン;RNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ;エストロゲン受容体;エストロゲン受容体融合物などを含めた分子により調節され得る。
精製された:「精製された」という用語は、絶対的な純度を要求するものではなく、相対的な用語として意図されている。したがって、例えば、精製されたタンパク質調製物は、言及されているタンパク質の純度が細胞内のその天然の環境にあるそのタンパク質よりも高い調製物である。例えば、タンパク質の調製物は、タンパク質がその調製物の総タンパク質含有量の少なくとも50%を表すように精製される。同様に、精製されたオリゴヌクレオチド調製物は、オリゴヌクレオチドの純度が、オリゴヌクレオチドの複合混合物を含めた環境におけるものよりも高い調製物である。精製された核酸またはタンパク質の集団は、約90%よりも大きく、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%純粋である、またはそれぞれ他の核酸もしくはタンパク質を含まない。
組換え:組換え核酸は、天然には存在しない配列を有する、またはそうでなければ分離した2つの配列のセグメントの人工的な組合せによって作製された配列を有する核酸である。この人工的な組合せは、多くの場合、化学合成によって、または、より一般には、単離された核酸のセグメントの人工的な操作、例えば、遺伝子操作技法によって、実現される。同様に、組換えタンパク質は、組換え核酸分子によってコードされるタンパク質である。
網膜:光に対する光受容体(錐体および杆体)を含有する眼の光(光子)感受性部分。杆体および錐体が感光色素を使用することによって光の知覚を行う。感光色素は、オプシンと称されるタンパク質およびビタミンAのバリアントであるレチネンと称される発色団で構成される。杆体はロドプシンを含有し、一方、錐体はヨードプシンを含有する。杆体および錐体は、網膜の出力細胞および神経節細胞における神経放電を誘発する連続的なニューロンを通じてシグナルを伝達する。視覚シグナルが視神経によって外側膝状体に伝えられ、そこから視覚シグナルが視覚野(後頭葉)に移り、視覚刺激として登録される。「杆体細胞」、または「杆体」は、他の型の視覚光受容体である錐体細胞よりも強くない光の下で機能することができる眼の網膜内の光受容体細胞である。杆体は、網膜の外縁に集中しており、周辺視に使用される。杆体は、錐体よりもわずかに長く、引き締まっているが、構造的な基礎は同じである。オプシンまたは色素が外側側面にあり、網膜色素上皮に広がり、細胞の恒常性を完成させる。この上皮末端は、多くの積み重なったディスクを含有する。杆体は、視覚色素のための高領域を有し、したがって、光吸収の実質的な効率を有する。錐体と同様に、杆体細胞は、シナプス末端、内節、および外節を有する。シナプス末端は、別のニューロン、例えば、双極性細胞とシナプスを形成する。内節および外節は、遠位節を裏打ちする繊毛によって接続されている。内節は、細胞小器官および細胞の核を含有し、一方、眼の背後の方を向いている杆体外節は、光吸収物質を含有する。光による光色素の活性化により、杆体細胞が過分極することによってシグナルが送られ、それは、杆体細胞がその神経伝達物質を送らない原因となり、それにより、次いで、双極性細胞がその伝達物質を双極性-神経節シナプスにおいて放出し、シナプスの興奮を引き起こす。「錐体細胞」または「錐体」は、比較的明るい光の中で最良の色覚および機能を担う。錐体細胞は、網膜の末梢に向かって数が急速に低下する非常に薄い高密度に詰め込まれた錐体を伴う直径0.3mmの杆体がない領域である中心窩に高密度に詰め込まれている。ヒト眼には約600~700万個の錐体が存在し、斑(macula)に向かって最も集中している。錐体は、網膜内の杆体細胞(低い光レベルでの視覚を支持する)よりも光に対する感受性が低いが、色の知覚を可能にする。錐体はまた、刺激への応答時間が杆体よりも速いので、画像のより細かな詳細およびより迅速な変化も知覚することができる。ヒトでは、錐体は、通常、それぞれが異なる色素を有する3つの型、すなわち:S-錐体、M-錐体およびL-錐体のうちの1つである。したがって、各錐体は、短波長光、中波長光および長波長光に対応する光の可視波長に感受性である。3つの型は、個体に応じて、それぞれ420~440nm付近、534~545nm付近および564~580nm付近のピーク波長を有する。
網膜色素上皮:下にある脈絡膜に付着した神経感覚網膜のすぐ外側の、哺乳動物においてin vivoで存在する六角形の細胞の色のついた層。これらの細胞には色素顆粒が高密度に詰め込まれており、入射光から網膜を遮蔽する。網膜色素上皮はまた、アミノ酸、アスコルビン酸およびD-グルコースなどの小分子を供給する一方で、脈絡膜血液由来物質に対しては緊密な関門のままであることによって、網膜環境を維持する輸送制限因子としての機能も果たす。
配列同一性:アミノ酸配列間の類似性は、他には配列同一性と称される配列間の類似性に関して表される。配列同一性は、同一性(または類似性または相同性)パーセンテージに関して頻繁に測定される;パーセンテージが高いほど、2つの配列が類似している。FGFポリペプチドのホモログまたはバリアントは、標準の方法を使用してアラインメントした場合に比較的高い程度の配列同一性を有する。
比較のために配列をアラインメントする方法は当技術分野で周知である。種々のプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981;Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970;Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988;Higgins and Sharp, Gene 73:237, 1988;Higgins and Sharp, CABIOS 5:151, 1989;Corpet et al., Nucleic Acids Research 16:10881, 1988;およびPearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988に記載されている。Altschul, et al., Nature Genet., 6:119, 1994には、配列アラインメント方法および相同性の算出に関する詳細な考察が示されている。
配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと関連して使用するためのNCBI Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)(Altschul, et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)が、National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、MD)を含めたいくつかの供給源から、およびインターネット上で入手可能である。このプログラムを使用して配列同一性をどのように決定するかについての説明は、インターネット上でNCBIウェブサイトにおいて入手可能である。
ポリペプチドのホモログおよびバリアントは、典型的には、NCBI Blast 2.0、デフォルトパラメーターに設定したギャップ付きblastpを使用して上記因子のアミノ酸配列との全長アラインメントにわたって計数して、少なくとも約75%、例えば、少なくとも約80%の配列同一性を有することによって特徴付けられる。約30アミノ酸を超えるアミノ酸配列の比較に関しては、Blast2配列機能を、デフォルトパラメーター(ギャップ存在コスト11、および1残基当たりのギャップコスト1)に設定したデフォルトのBLOSUM62マトリックスを使用して用いる。短いペプチド(約30アミノ酸未満)をアラインメントする場合には、Blast2配列機能を、デフォルトパラメーター(オープンギャップ9、エクステンションギャップ1ペナルティ)に設定したPAM30マトリックスを用いて使用して、アラインメントを実施すべきである。この方法によって評価した場合、参照配列に対してさらに大きな類似性を有するタンパク質では、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性など、同一性パーセンテージの上昇が示される。配列全体未満を配列同一性について比較する場合には、ホモログおよびバリアントは、典型的には、10~20アミノ酸の短いウィンドウにわたって少なくとも80%の配列同一性を有し、参照配列に対するそれらの類似性に応じて、少なくとも85%または少なくとも90%または95%の配列同一性を有し得る。そのような短いウィンドウにわたって配列同一性を決定するための方法は、インターネット上でNCBIウェブサイトにおいて入手可能である。これらの配列同一性の範囲は単に手引きとして提供するものであり、提供された範囲外の強力に有意なホモログを得ることができる可能性が全面的にあることが当業者には理解されよう。
対象:例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などの哺乳動物および非哺乳動物などの全ての脊椎動物を含めたヒトおよび非ヒト動物。当該記載の方法の多くの実施形態では、対象は、ヒトである。
T細胞:Tリンパ球としても公知であるT細胞は、細胞表面に特徴的なT細胞受容体を有する、細胞媒介性免疫に関与するリンパ球(白血球亜型)の1種である。T細胞の型は、ヘルパーT細胞(Th細胞)などの刺激に積極的に応答するエフェクターT細胞を含み、これは、活性化されると特定の亜型に分化し、特徴的なサイトカインを分泌して特定の型の免疫応答を促進する。
T細胞としては、これだけに限定されないが、CD4+T細胞およびCD8+T細胞が挙げられる。CD4+Tリンパ球は、その表面に表面抗原分類(cluster of differentiation)4(CD4)として公知のマーカーを保有する免疫細胞である。これらの細胞は、古典的にはヘルパーT細胞(Th細胞)として公知であり、抗体応答およびキラーT細胞応答を含めた免疫応答を統合する(orchestrate)のに役立つ。CD8+T細胞は、表面抗原分類8(CD8)マーカーを保有する。一実施形態では、CD8 T細胞は、直接細胞接触によって標的細胞を溶解させることができる細胞傷害性Tリンパ球(Tc細胞)である。これらの細胞は、ウイルス感染した細胞および腫瘍細胞の排除において役割を果たし、また、移植片拒絶プロセスに関与する。別の実施形態では、CD8細胞は、サプレッサーT細胞である。成熟T細胞はCD3を発現する。
調節性T細胞(Treg)は、他の細胞の免疫応答を抑制するT細胞である。一例では、調節性T細胞は、免疫応答を抑制するCD4+CD25+である。さらなる例では、調節性T細胞は、CD4、CD25およびFOXP3を発現する。
導入遺伝子:外因性遺伝子。
処置すること(treating)、処置(treatment)、および治療(therapy):症状の緩解、寛解、減縮、または状態を患者により許容されるものにすること、変性もしくは減退の速度を遅くすること、変性の最終点をより消耗性の低いものにすること、対象の身体的もしくは精神的健康状態を改善すること、または視覚を改善することなどのあらゆる客観的または主観的パラメーターを含めた、傷害、病状または状態の減弱または軽減のあらゆる成功または成功の兆候。処置は、身体検査、神経学的検査、または精神医学的評価の結果を含めた客観的または主観的パラメーターによって評価することができる。
上流:ポリヌクレオチド上の相対的な位置であり、ここで、「上流」の位置は、基準点よりもポリヌクレオチドの5’末端に近い。二本鎖ポリヌクレオチドの場合では、5’末端および3’末端の方向性は、アンチセンス鎖と対照的にセンス鎖に基づく。
アッシャーI型:ハルグレン症候群、アッシャーハルグレン症候群、網膜色素変性-聴覚不全症候群、または網膜ジストロフィー聴覚不全症候群としても公知のアッシャー症候群は、聴力損失と視力障害の組合せをもたらす少なくとも11種の遺伝子のうちのいずれか1種の変異によって引き起こされる非常に稀な遺伝障害である。アッシャー症候群は、盲ろうの主な原因である。アッシャー症候群は、症状の発症および重症度によって3つの亜型にクラス分けされる。3つの亜型は全て、内耳および網膜の機能に関与する遺伝子の変異によって引き起こされる。
アッシャーIの臨床亜型は、6種(USH1B~G)のうちのいずれか1種の変異に関連する。これらの遺伝子は、有毛細胞(不動毛)などの内耳構造の発達および維持において機能する。これらの遺伝子の変更により、平衡を維持できなくなること(前庭機能障害)および聴力喪失が引き起こされ得る。この遺伝子はまた、杆体光受容体細胞および網膜色素上皮の両方の構造および機能に影響を及ぼすことによって網膜の発達および安定性においても役割を果たす。これらの遺伝子の正常機能に影響を及ぼす変異により、網膜色素変性症および結果として生じる視力喪失がもたらされ得る。アッシャーIの人は、通常、生まれつき耳が聞こえず、多くの場合、前庭系の問題に起因して平衡を維持することが困難である。アッシャーIを有する乳児は、通常、歩行などの運動技能の発達が遅い。世界的に、推定されるアッシャー症候群I型の有病率は、母集団100,000人当たり3~6人である。I型は、アシュケナジユダヤ人を祖先とする人々(中央ヨーロッパ人および東ヨーロッパ人)ならびにフランス系アカディア集団(ルイジアナ)に多くみられることが見いだされている。
ブドウ膜炎:虹彩炎、毛様体炎、汎ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、および前部ブドウ膜炎を含む眼内炎症性疾患。虹彩炎は虹彩の炎症である。毛様体炎は毛様体の炎症である。汎ブドウ膜炎は、眼のブドウ膜(血管)層全体の炎症を指す。中間部ブドウ膜炎は、周辺部ブドウ膜炎とも称され、毛様体および毛様体扁平部(pars plana)の領域内の虹彩および水晶体のすぐ後ろの領域に集中し、「毛様体炎」および「毛様体扁平部炎」とも称される。
「後部」ブドウ膜炎とは、一般に、脈絡網膜炎(脈絡膜および網膜の炎症)を指す。後部ブドウ膜炎では、多様な症状が生じ得るが、最も一般的に引き起こされるものは、中間部ブドウ膜炎と同様にフローターおよび視力低下である。徴候としては、硝子体液中の細胞、網膜および/または下にある脈絡膜における白色または黄白色の病変、滲出性網膜剥離、網膜血管炎、ならびに視神経浮腫が挙げられる。
前部ブドウ膜炎は、虹彩毛様体炎(虹彩および毛様体の炎症)ならびに/または虹彩炎を指す。前部ブドウ膜炎は、最も症候性になる傾向があり、典型的には、疼痛、発赤、羞明、および視力低下が示される。前部ブドウ膜炎の徴候としては、瞳孔収縮および角膜に隣接する結膜の充血、いわゆる縁潮紅(perilimbal flush)が挙げられる。生体顕微鏡または細隙灯による所見として、房水中の細胞およびフレア、ならびに角膜内皮に対して接着性の細胞およびタンパク質性物質の凝集塊である角膜後面沈着物が挙げられる。「びまん性」ブドウ膜炎は、前部構造、中間部構造、および後部構造を含めた眼の全ての部分が関与する炎症を意味する。
「急性」ブドウ膜炎は、徴候および症状が突発的に生じ、最大で約6週間続く、ブドウ膜炎の形態である。「慢性」ブドウ膜炎は、発症が段階的であり、約6週間よりも長く続く形態である。
眼の炎症の炎症性産物(すなわち、細胞、フィブリン、過剰なタンパク質)は、一般に、眼の流体空間、すなわち、前眼房、後眼房および硝子体空間、ならびに差し迫って炎症反応に関与する浸潤組織に見いだされる。
ブドウ膜炎は、眼への外科的傷害または外傷性傷害後に;自己免疫障害(例えば、関節リウマチ、ベーチェット病、強直性脊椎炎、サルコイドーシスなど)の構成成分として;単離した免疫媒介性眼障害(例えば、毛様体扁平部炎または虹彩毛様体炎など)として;公知の病因に関連しない疾患として、および、ブドウ膜組織内への抗体-抗原複合体の沈着を引き起こすある特定の全身性疾患後に生じ得る。ブドウ膜炎は、ベーチェット病、サルコイドーシス、フォークト小柳原田症候群、バードショット網脈絡膜症および交感性眼炎に関連する眼の炎症を含む。したがって、感染性因子の不在下では非感染性ブドウ膜炎が生じる。
多種多様な感染因子によってもブドウ膜炎が引き起こされ得る。感染性の病因が診断されている場合、疾患を治癒させるために適切な抗菌薬を与えることができる。リンパ腫および眼の悪性黒色腫を含めたある特定のがんも、ブドウ膜炎に関連付けられる。しかし、ブドウ膜炎の病因は大多数の症例において依然としてわかりにくい。
ベクター:宿主細胞に導入され、それにより、形質転換された宿主細胞を生じさせる核酸分子。ベクターは、複製開始点などの、宿主細胞での複製を可能にする核酸配列を含み得る。ベクターは、1つまたは複数の治療用遺伝子および/または選択マーカー遺伝子ならびに当技術分野で公知の他の遺伝子エレメントも含み得る。ベクターは、細胞に形質導入する、形質転換するまたは感染させ、それにより、細胞にその細胞のネイティブなもの以外の核酸および/またはタンパク質を発現させることができるものである。ベクターは、必要に応じて、例えばウイルス粒子、リポソーム、タンパク質コーティングなどの、核酸の細胞への進入の実現を補助する材料を含む。
ウイルス:生細胞の内部で繁殖する顕微鏡レベルの感染性生物体。ウイルスは、タンパク質被膜で囲まれた単一の核酸であるコアから本質的になり、生細胞の内部でのみ複製する能力を有する。「ウイルス複製」は、少なくとも1つのウイルス生活環の出現による追加的なウイルスの産生である。ウイルスベクターが当技術分野で公知であり、それらとして、例えば、アデノウイルス、AAV、レンチウイルスおよびヘルペスウイルスが挙げられる。
他に説明がなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等である方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。材料、方法および例は、単に例示的なものであり、それに限定されるものではない。
概要
IL-34が網膜における抗炎症効果および神経保護効果を有することが本明細書に開示される。ブドウ膜炎、網膜炎および脈絡網膜炎を処置するための方法が本明細書に提供される。網膜変性を阻害するための方法も本明細書に提供される。
一部の実施形態では、対象を網膜変性から保護するため、および/または対象におけるブドウ膜炎、網膜炎もしくは脈絡網膜炎を処置するための方法が提供される。方法は、ブドウ膜炎、網膜炎、もしくは脈絡網膜炎を有する、ならびに/または炎症および/もしくは網膜変性からの保護を必要とする対象を選択するステップと、対象の眼に、(a)インターロイキン(IL)-34のアミノ酸1~182を含むポリペプチド、IL-34のバリアント、もしくはIL-34のFc融合タンパク質であって、i)抗炎症性もしくはii)神経保護性である、ポリペプチド、バリアント、もしくはFc融合タンパク質;または(b)ポリペプチド、バリアント、もしくはFc融合タンパク質をコードする核酸分子を治療有効量で局所的に投与するステップとを含む。ポリペプチド、バリアント、またはFc融合タンパク質は、i)調節性T細胞(Treg)数を増加させること、および/またはii)ミクログリア数を増加させることができる。一部の実施形態では、方法により、ミクログリアの活性化が阻害される。対象は、これだけに限定されないが、ヒトなどの任意の哺乳動物であってもよい。眼への局所投与としては、これだけに限定されないが、硝子体内または網膜下投与が挙げられる。
一部の実施形態では、対象に、(a)配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のポリペプチドであって、Tregの活性もしくは数を増加させるポリペプチド;(b)配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸1~182を含むポリペプチド;(c)配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または(d)(a)、(b)もしくは(c)のポリペプチドをコードする核酸分子を投与する。
ポリヌクレオチドを利用する場合、方法は、対象に、核酸分子に作動可能に連結したプロモーターを含むウイルスベクターを投与するステップを含み得る。具体的な非限定的な例では、ウイルスベクターは、核酸分子を含むAAV8ベクターなどのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。さらなる実施形態では、プロモーターは、これだけに限定されないが、サイトメガロウイルスプロモーターなどの構成的プロモーターである。
一部の実施形態では、ブドウ膜炎を有する対象を、開示されている方法を使用して処置する。ブドウ膜炎は、前部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、またはびまん性ブドウ膜炎を含み得る。ブドウ膜炎は、虹彩炎、毛様体炎、毛様体炎、毛様体扁平部炎、脈絡網膜炎、虹彩毛様体炎、または虹彩炎のうちの少なくとも1つを含み得る。ブドウ膜炎は、外科手術、外傷、自己免疫障害、化学的刺激への曝露、炎症性障害、またはヒト白血球抗原B27(HLA-B27)ハプロタイプに起因するものであり得る。一部の実施形態では、対象は、Bartonella henselae、帯状疱疹、単純ヘルペス、レプトスピラ症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、梅毒、結核、ライム病、ウエストナイルウイルス、サイトメガロウイルス、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの感染を有する。
他の実施形態では、網膜炎または脈絡網膜炎を有する対象を、開示されている方法を使用して処置する。一部の非限定的な例では、対象は、細菌感染症、ウイルス感染症、原生動物感染症、または真菌感染症などの感染症を有する。感染症は、例えば、(a)ウイルス感染症であり得、ウイルスは、エプスタインバーウイルス(EBV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、もしくはウエストナイルウイルスである;(b)細菌感染症であり得、対象は、結核、梅毒、ブルセラ症、ライム病、もしくはYersinia enterocolitica感染症を有する;または(c)真菌感染症であり得、真菌は、Candida、Aspergillus、Fusarium、もしくはCryptococcusである。追加的な非限定的な例では、対象は、眼トキソプラズマ症、眼トキソカラ症、びまん性片側性亜急性視神経網膜炎、急性網膜壊死、サイトメガロウイルス網膜炎、ベーチェット関連網膜炎、急性網膜色素上皮炎またはサルコイドーシスを有する。
さらなる実施形態では、網膜変性からの保護を必要とする対象を、開示されている方法を使用して処置する。一部の非限定的な例では、対象は、これだけに限定されないが、緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性、レーバー先天性黒内障、糖尿病性網膜症、アッシャーI型、または先天性停止性夜盲症などの、網膜変性に関連する疾患を有する。
一部の実施形態では、方法は、追加的な抗炎症剤、免疫抑制剤、抗菌剤、抗真菌剤、または免疫調節剤のうちの少なくとも1つを治療有効量で対象に投与するステップも含む。具体的な非限定的な例では、薬剤は、グルココルチコイドまたはカルシニューリンアンタゴニストである。
開示されている方法のいずれかにおける使用のための医薬組成物が提供される。この組成物は、(a)インターロイキン(IL)-34のアミノ酸1~182を含むポリペプチド、IL-34のバリアント、もしくはIL-34のFc融合タンパク質であって、i)Treg数を増加させ、ii)ミクログリア数を増加させるポリペプチド、バリアント、もしくはFc融合タンパク質、および/または(b)ポリペプチド、そのバリアント、もしくはそのFc融合タンパク質をコードする核酸を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、ミクログリアの活性化を阻害する。
IL-34ポリペプチドおよびIL-34をコードするポリヌクレオチド
ヒトおよびマウスIL-34ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、どちらも参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,770,486号、および米国特許出願公開第2017/0202921号に開示されている。IL-34ポリペプチドおよびIL-34ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、開示されている方法において有用であり、ここで、IL-34ポリペプチドは、抗炎症性かつ/または神経保護性である。
例示的なヒトIL-34は、
MPRGFTWLRYLGIFLGVALGNEPLEMWPLTQNEECTVTGFLRDKLQYRSRLQYMKHYFPINYKISVPYEGVFRIANVTRLQRAQVSERELRYLWVLVSLSATESVQDVLLEGHPSWKYLQEVETLLLNVQQGLTDVEVSPKVESVLSLLNAPGPNLKLVRPKALLDNCFRVMELLYCSCCKQSSVLNWQDCEVPSPQSCSPEPSLQYAATQLYPPPPWSPSSPPHSTGSVRPVRAQGEGLLP(配列番号1、参照により本明細書に組み込まれるNCBI Ref.Seq.No.NP_689669.2、2018年3月1日を参照されたい)である。
例示的なマウスIL-34は、
MPWGLAWLYCLGILLDVALGNENLEIWTLTQDKECDLTGYLRGKLQYKNRLQYMKHYFPINYRIAVPYEGVLRVANITRLQKAHVSERELRYLWVLVSLNATESVMDVLLEGHPSWKYLQEVQTLLENVQRSLMDVEIGPHVEAVLSLLSTPGLSLKLVRPKALLDNCFRVMELLYCSCCKQSPILKWQDCELPRLHPHSPGSLMQCTATNVYPLSRQTPTSLPGSPSSSHGSLP(配列番号2、参照により本明細書に組み込まれるNCBI Ref.Seq.No.NP_001128572.1、2018年3月1日を参照されたい)である。
ウマIL-34の例示的なアミノ酸配列は、GENBANK(登録商標)受託番号XP_023493074.1、2018年1月23日で提供され、イヌIL-34の例示的なアミノ酸配列は、GENBANK受託番号XP_022274925.1、2017年9月5日で提供され、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。これらのポリペプチド、およびこれらのポリペプチドをコードする核酸は、開示される方法において有用である。
一部の実施形態では、抗炎症性かつ神経保護性のIL-34の断片およびバリアントを利用することができる。具体的な非限定的な例では、断片またはバリアントは、i)調節性T細胞(Treg)数を増加させ、かつ/または、ii)ミクログリア数を増加させ、ミクログリアの活性化を阻害する。
抗炎症活性は、当技術分野で周知の多くの方法を使用して評価することができる。一実施形態では、全身免疫抑制を評価するために、白血球数(WBC)を使用して、対象における白血球の数を測定することによって対象の免疫系の応答性を決定する。一部の実施形態では、対象の血液試料中の白血球を、他の血液細胞から分離し、計数する。白血球の正常値は、1μL当たり白血球約4,500~約10,000個である。白血球の数が少ないことにより、対象における免疫抑制の状態が示され得る。別の実施形態では、Tリンパ球数を利用することができる。当技術分野で周知の方法を使用し、対象の血液試料中の白血球を、他の血液細胞から分離する。Tリンパ球を、例えば、免疫蛍光法または蛍光活性化細胞選別(FACS)などの当技術分野における標準の方法を使用して、他の白血球と区別する。T細胞の数の低下、または特定のT細胞の集団を免疫抑制の測定として使用することができる。処置前のT細胞の数(または特定の集団内の細胞の数)と比較したT細胞の数または特定のT細胞の集団の低下を使用して、免疫抑制が誘導されていることを示すことができる。
一部の実施形態では、抗炎症活性は、Treg数の増加である。Treg数を測定するための方法は当技術分野で公知である。それらとして、これだけに限定されないが、例えば、免疫組織化学的検査または蛍光活性化細胞選別(FACS)などの細胞選別法などを使用して、CD4+CD25+T細胞を測定すること、およびFOXP3活性を測定することが挙げられる。生体試料をFOXP3の発現および/または活性(例えば、遺伝子、転写物、またはタンパク質)について分析することができる。典型的には、生体試料は、DNA、RNAおよび/またはタンパク質を、所望の分析を行うために十分な量で含有する。適当な生体試料としては、例えば、血液、または血清もしくは単離された白血球などの血液の構成成分が挙げられる。別の非限定的な例では、CD4+CD25+T細胞などのCD4+細胞におけるFOXP3の発現を評価することができる。したがって、方法は、CD4+CD25+細胞などのCD4+細胞を単離することを含み得る。Tregを測定するための方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第2006/012641号に開示されており、また、例示的な方法が下記の実施例に提供される。
神経保護を測定するための方法も当技術分野で公知であり、それらとして、組織化学的分析およびニューロン機能の測定が挙げられる。これらの方法は、当技術分野で公知である。一部の実施形態では、神経保護は、酸化ストレス、ミトコンドリア機能不全、興奮毒性、炎症性変化、鉄の蓄積、ならびに、例えば網膜および/または網膜神経節へのタンパク質凝集の低下を含む。動物モデルにおける神経保護をモニタリングするための方法としては、網膜電図(ERG)、光干渉断層撮影(OCT)、眼の切片に対する免疫組織化学的検査によって実証されるRGC喪失の低減、眼の環境における脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT3)、および塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)などの神経栄養因子のレベルの測定が挙げられる。他の実施形態では、網膜内の杆体細胞および/または錐体細胞の数を、眼の切片の免疫組織化学的検査によって測定する。
IL-34のアミノ酸1~182は、本明細書に開示される方法において活性である。したがって、一部の実施形態では、有用なポリペプチドは、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸1~182など、IL-34のアミノ酸1~182を含む。N21~V193の成熟ポリペプチドも有用である;これらのポリペプチド(1~182および21~193)は、どちらも生物活性がある(Reference PMID 22483114、参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、一部の実施形態では、これだけに限定されないが、配列番号1または配列番号2のアミノ酸21~193などのIL-34のアミノ酸21~193を利用することができる。参照により本明細書に組み込まれるMa et al., Structure 20:676-687, 2012を参照されたい。
一部の実施形態では、方法は、IL-34のバリアント、例えば、ヒトまたはマウスIL-34と約95%、96%、97%、98%、または99%同一のポリペプチドなどを投与するステップを含む。一部の実施形態では、IL-34ポリペプチドは、配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸と少なくとも95%同一であり、例えば、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である。さらなる実施形態では、投与されるIL-34ポリペプチドは、配列番号1に多くて1カ所、2カ所、3カ所、4カ所、5カ所、6カ所、7カ所、8カ所、9カ所、もしくは10カ所の保存的置換、または配列番号2に多くて1カ所、2カ所、3カ所、4カ所、5カ所、6カ所、7カ所、8カ所、9カ所、10カ所、もしくは11カ所の保存的置換を含み、ここで、ポリペプチドは、抗炎症活性を有し、かつ/または神経保護性である。さらなる実施形態では、これらのバリアントは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸1~182を含む。
IL-34ポリペプチドを融合タンパク質に含めることができる。したがって、一部の実施形態では、Il-34を、Fc融合タンパク質などの融合タンパク質として投与する。一部の具体的な非限定的な例では、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 FcドメインなどのIgG Fcドメインである。一部の実施形態では、これらのIL-34の形態は、融合タンパク質に含まれていないIL-34と比較して、半減期の増加を有する。
理論に束縛されることなく、Fcドメインは、新生児Fc受容体(FcRn)との独特のpH依存性会合を通じて、IgGの半減期を増加させる。内部移行後、IgGのFcドメインはエンドソームの酸性環境下でFcRnに結合することができ、したがって、次いでIgGが細胞表面に循環し、循環中に再放出される。この生物システムにより、IgGが分解から保護され、長い血清中半減期がもたらされる。Fcドメインと治療用分子との融合物は、延長された半減期を有する。さらに、IgGのFc断片は密接に詰め込まれたホモ二量体からなるので、各分子内に2つの治療用タンパク質が存在する。最近、単一の活性タンパク質が二量体野生型Fcと融合した単量体Fc融合タンパク質が生成された。これらのより小さな分子は、二量体バージョンと比較して、いっそう延長された半減期を有することが示されている。
さらなる実施形態では、ポリペプチド、バリアント、またはFc融合タンパク質は、i)調節性T細胞(Treg)数を増加させ、かつ/またはii)ミクログリア数を増加させるものである。ポリペプチド、断片、バリアントもしくはFc融合タンパク質、またはポリペプチド、断片、バリアントもしくはFc融合タンパク質をコードする核酸分子は、ブドウ膜炎、網膜炎および脈絡網膜炎を処置するため、かつ/または網膜変性を低下させるために有用である。ポリペプチド、断片、バリアントもしくはFc融合タンパク質、またはポリペプチド、断片、バリアントもしくはFc融合タンパク質をコードする核酸分子は、i)調節性T細胞(Treg)数を増加させることができ、かつ/またはii)ミクログリア数を増加させることができるものである。一部の実施形態では、ポリペプチド(teh polypeptide)、バリアント(varian)またはFc融合タンパク質は、ミクログリアの活性化を阻害するものである。
さらなる実施形態では、方法は、IL-34ポリペプチドをコードする核酸分子を投与するステップを含む。
ヒトIL-34をコードする例示的な核酸は、
(配列番号3、参照により本明細書に組み込まれるNCBI受託番号NM_152456.2を参照されたい)である。追加的な核酸配列は、NCBI受託番号NM_152456.2、NCBI受託番号NM_001172771.1、NCBI受託番号NM_001172772.1で提供され、これらは全て2018年3月1日で入手可能であるものとして、参照により本明細書に組み込まれる)。
マウスIL-34をコードする例示的な核酸は、
ATGCCCTGGGGACTCGCCTGGCTATACTGTCTTGGGATCCTACTTGACGTGGCTTTGGGAAACGAGAATTTGGAGATATGGACTCTGACCCAAGATAAGGAGTGTGACCTTACAGGCTACCTTCGGGGCAAGCTGCAGTACAAGAACCGGCTTCAGTACATGAAACATTACTTCCCCATCAACTACAGGATTGCTGTGCCTTATGAGGGGGTACTCAGAGTGGCCAACATCACAAGGCTGCAGAAGGCTCACGTGAGTGAGCGAGAGCTTCGGTACCTGTGGGTCTTGGTGAGTCTCAATGCCACTGAGTCTGTGATGGATGTACTTCTCGAGGGCCACCCGTCCTGGAAGTATCTACAGGAGGTTCAGACATTGCTGGAGAACGTACAGCGGAGCCTCATGGATGTGGAGATTGGCCCTCACGTGGAAGCTGTGTTATCTCTTCTGAGTACTCCAGGCCTAAGCCTGAAGCTGGTGCGGCCCAAAGCCTTGCTGGACAACTGCTTCCGGGTCATGGAACTGCTGTACTGTTCTTGCTGTAAACAAAGCCCCATCTTAAAATGGCAGGACTGCGAGCTGCCCAGGCTCCATCCCCACAGTCCGGGGTCCTTGATGCAATGTACAGCTACAAATGTGTACCCTTTGTCTCGGCAGACCCCCACCTCCCTGCCCGGATCCCCAAGCTCAAGCCATGGCTCGTTGCCCTGA(配列番号4、参照により本明細書に組み込まれるGENBANK(登録商標)受託番号NM_001135100.2、2018年3月1日を参照されたい)である。マウスIL-34をコードする別の核酸配列は、参照により本明細書に組み込まれる、GENBANK(登録商標)受託番号NM_029646.3、2018年3月1日である。
一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である、例えば、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。さらなる実施形態では、核酸分子は、配列番号1に多くて1カ所、2カ所、3カ所、4カ所、5カ所、6カ所、7カ所、8カ所、9カ所、もしくは10カ所の保存的置換を含む、または配列番号2に多くて1カ所、2カ所、3カ所、4カ所、5カ所、6カ所、7カ所、8カ所、9カ所、もしくは10カ所の保存的置換を含むポリペプチドをコードする。追加的な実施形態では、これらのポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸1~182を含む。さらに他の実施形態では、核酸分子は、配列番号3または配列番号4と少なくとも85%同一であり、例えばさらに、配列番号3または配列番号4と85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一の核酸分子である。
これらのポリヌクレオチドは、目的のIL-34ポリペプチドをコードするDNA、cDNA、およびRNA配列を含む。コード配列のサイレント変異は、1つよりも多くのコドンが同じアミノ酸残基をコードし得る遺伝暗号の縮重(すなわち、重複性)に起因する。したがって、例えば、ロイシンは、CTT、CTC、CTA、CTG、TTA、またはTTGによってコードされ得、セリンは、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、またはAGCによってコードされ得、アスパラギンは、AATまたはAACによってコードされ得、アスパラギン酸は、GATまたはGACによってコードされ得、システインは、TGTまたはTGCによってコードされ得、アラニンは、GCT、GCC、GCA、またはGCGによってコードされ得、グルタミンは、CAAまたはCAGによってコードされ得、チロシンは、TATまたはTACによってコードされ得、イソロイシンは、ATT、ATC、またはATAによってコードされ得る。標準の遺伝暗号を示す表は、種々の出典において見いだすことができる(例えば、L. Stryer, 1988, Biochemistry, 3. sup. rd Edition, W.H. 5 Freeman and Co., NY)。縮重バリアントも本明細書に開示される方法において有用である。
IL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードする核酸分子は、本明細書に提供されるアミノ酸配列および遺伝暗号を使用して、当業者が容易に作製することができる。IL-34をコードする核酸配列は、例えば、適切な配列のクローニング、または、例えば、Needham-VanDevanter et al., Nucl. Acids Res. 12:6159-6168, 1984に記載されている自動合成機および米国特許第4,458,066号の固相支持法を使用した、例えばNarang et al., Meth. Enzymol. 68:90-99, 1979のホスホトリエステル法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109-151, 1979のホスホジエステル法;Beaucage et al., Tetra. Lett. 22:1859-1862, 1981のジエチルホスホラミダイト法;Beaucage & Caruthers, Tetra. Letts. 22 (20):1859-1862, 1981に記載されている固相ホスホラミダイトトリエステル法などの方法による直接化学合成によるものを含めた、任意の適当な方法によって調製することができる。化学合成により、一本鎖(ss)オリゴヌクレオチドが作製され、これを、相補配列とのハイブリダイゼーションによって、または一本鎖を鋳型として使用したDNAポリメラーゼとの重合によって、二本鎖(ds)DNAに変換することができる。IL-34ポリペプチドをコードする配列を含む例示的な核酸は、クローニング技法によって調製することができる。
IL-34ポリペプチドをコードする核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅系(TAS)、自家持続配列複製系(3SR)、およびQβレプリカーゼ増幅系(QB)などのin vitroにおける方法によってクローニングまたは増幅することができる。例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、分子のDNA配列に基づいたプライマーを使用してcDNAのポリメラーゼ連鎖反応によって単離することができる。多種多様なクローニングおよびin vitroにおける増幅方法体系は、当業者に周知である。PCR法は、例えば、米国特許第4,683,195号;Mullis et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263, 1987;およびErlich, ed., PCR Technology, (Stockton Press, NY, 1989)に記載されている。ポリヌクレオチドはまた、ゲノムまたはcDNAライブラリーを、所望のポリヌクレオチドの配列から選択されたプローブを用いて、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でスクリーニングすることによって単離することもできる。
本明細書に記載の組成物および方法に関しては、例えば上記のIL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードする核酸配列を、確立された分子生物学の手順を使用し、宿主細胞における発現が可能なベクターに組み込む。例えば、IL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードするcDNAなどの核酸を、制限酵素消化、DNAポリメラーゼを用いたフィルイン、エキソヌクレアーゼによる欠失、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼによる伸長、合成またはクローニングされたDNA配列のライゲーション、部位特異的配列-一本鎖バクテリオファージ中間体による変更、または特定のオリゴヌクレオチドとPCRもしくは他のin vitro増幅の組合せの使用などの標準手順を用いて操作することができる。
IL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞における発現が可能なベクターの作製を当業者にガイドするために十分な例示的な手順は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989;Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Press, 2001;Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, 1992 (and Supplements to 2003);およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, 4th ed., Wiley & Sons, 1999に見いだすことができる。
典型的には、IL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、例えば、プロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含めた転写制御配列に作動可能に連結している。プロモーターは、転写の開始に関与する宿主細胞の転写機構(または導入された合成機構)によって認識されるポリヌクレオチド配列である。ポリアデニル化シグナルは、適切なプロセシングおよび翻訳のために転写物を核から細胞質に輸送するための、mRNA転写物の末端上の一連のヌクレオチドの付加を指示するポリヌクレオチド配列である。
例示的なプロモーターとしては、ウイルスプロモーター、例えば、サイトメガロウイルス最初期遺伝子プロモーター(「CMV」)、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(「tk」)、SV40初期転写単位、ポリオーマ、レトロウイルス、パピローマウイルス、B型肝炎ウイルス、ならびにヒトおよびサル免疫不全ウイルスなどが挙げられる。他のプロモーターとしては、哺乳動物遺伝子から単離されたプロモーター、例えば、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖、T細胞受容体、HLA DQ αおよびDQ β、β-インターフェロン、インターロイキン2、インターロイキン2受容体、MHCクラスII、HLA-DRα、β-アクチン、筋肉クレアチンキナーゼ、プレアルブミン(トランスサイレチン)、エラスターゼI、メタロチオネイン、コラゲナーゼ、アルブミン、フェトプロテイン、β-グロビン、c-fos、c-HA-ras、神経系細胞接着分子(NCAM)、α1-抗トリプシン、H2B(TH2B)ヒストン、I型コラーゲン、グルコース調節タンパク質(GRP94およびGRP78)、ラット成長ホルモン、ヒト血清アミロイドA(SAA)、トロポニンI(TNI)、血小板由来成長因子、およびジストロフィン、ならびに網膜細胞に特異的なプロモーターが挙げられる。
プロモーターは、誘導性プロモーターであっても構成的プロモーターであってもよい。誘導性プロモーターは、インデューサー物質の存在下以外では不活性であるまたは低活性を示すプロモーターである。プロモーターの例としては、これだけに限定されないが、MT II、MMTV、コラゲナーゼ、ストロメライシン、SV40、マウスMX遺伝子、α-2-マクログロブリン、MHCクラスI遺伝子h-2kb、HSP70、プロリフェリン、テトラサイクリン誘導性、腫瘍壊死因子、または甲状腺刺激ホルモン遺伝子プロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターの1つの例は、インターフェロン誘導性ISG54プロモーターである(参照により本明細書に組み込まれるBluyssen et al., Proc. Natl Acad. Sci. 92:5645-5649, 1995を参照されたい)。一部の実施形態では、プロモーターは、追加的な因子の不在下で、宿主細胞に導入された際に高レベルの転写をもたらす構成的プロモーターである。必要に応じて、転写制御配列は、転写を最小のプロモーター単独で観察されるものよりも増加させる1つまたは複数の転写因子の認識部位に結合する1つまたは複数のエンハンサーエレメントを含む。mRNAの安定化および発現の増加に役立つイントロンも含めることができる。
遺伝子転写物の適切な終結およびポリアデニル化をもたらすためにポリアデニル化シグナルを含めることが望ましい場合がある。例示的なポリアデニル化シグナルは、ベータグロビン、ウシ成長ホルモン、SV40、および単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子から単離されている。
IL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、自律複製性プラスミドもしくはウイルスにおけるベクターに組み込まれるか、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれるか、または他の配列とは独立した別個の分子(例えば、cDNAなど)として存在する組換えDNAを含む。本発明のヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのヌクレオチドの改変形態であり得る。この用語は、DNAの単一形態および2重形態を包含する。
IL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードする核酸を、Tet-On系に含めることができる。Tet-On系では、rtTAタンパク質は、テトラサイクリンまたはデオキシサイクリン(deoxycycline)が結合している場合にのみ、オペレーター(ドキシサイクリンプロモーター)に結合することができる。したがって、プロモーターは、ドキシサイクリンによって活性化される。本明細書に開示される系では、3G TET技術に基づく誘導性発現プラットフォームを利用することができる。このプロモーターの例示的な核酸配列は、
ATCGATACTAGACTCGAGTTTACTCCCTATCAGTGATAGAGAACGTATGAAGAGTTTACTCCCTATCAGTGATAGAGAACGTATGCAGACTTTACTCCCTATCAGTGATAGAGAACGTATAAGGAGTTTACTCCCTATCAGTGATAGAGAACGTATGACCAGTTTACTCCCTATCAGTGATAGAGAACGTATCTACAGTTTACTCCCTATCAGTGATAGAGAACGTATATCCAGTTTACTCCCTATCAGTGATAGAGAACGTATAAGCTTTAGGCGTGTACGGTGGGCGCCTATAAAAGCAGAGCTCGTTTAGTGAACCGTCAGATCGCCTGGA(配列番号7)である。
この核酸配列のバリアント、例えば、配列番号7と少なくとも90%、91%、92%、935、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一である核酸配列なども、当該核酸配列がドキシサイクリン誘導性プロモーターとして機能するという条件で、使用することができる。
ドキシサイクリン誘導性プロモーターは、感受性が高く、漏出性を伴わずに転写をもたらす。ドキシサイクリン誘導性プロモーターの別の実施形態は、Tet-on-3G系である。この系は、2つのエレメント:(1)CMVプロモーターなどのプロモーターによる制御下で、構成的に発現されるリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子誘導性プロモーター(rtTA);(2)目的の配列の転写を制御するテトラサイクリン応答エレメント(TRE)で構成される。一部の実施形態では、TREは、最小プロモーターの上流に位置する19bpの細菌Tet-On配列の7つのリピートで構成され、Tet-Onの不在下での基礎発現が非常に低い。rtTAタンパク質は、ドキシサイクリン/テトラサイクリンが結合している場合にのみTREに結合する。ドキシサイクリン/テトラサイクリンを系に添加することにより、目的の配列(例えば、IL-34、そのバリアントまたは融合タンパク質など)の転写が開始される。テトラサイクリン/ドキシサイクリン誘導性プロモーターは、例えば、全て参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,464,758号;米国特許第5,851,796号;米国特許第5,912,411号;および米国特許第6,000,494号において開示されている。これらのプロモーターはいずれも、本明細書に開示される方法において有用である。追加的な適当なプロモーターは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0107190号において開示されている。したがって、一部の実施形態では、ウイルスベクターなどのベクターは、rtTAタンパク質、およびIL-34、そのバリアントまたは融合物の転写を制御するTREをコードする構築物である。デオキシサイクリン誘導性系を含む例示的なベクターが図16に示されている。
IL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードするウイルスベクターを調製することもできる。ポリオーマ;SV40(Madzak et al., 1992, J. Gen. Virol., 73:15331536);アデノウイルス(Berkner, 1992, Cur. Top. Microbiol. Immunol., 158:39-6;Berliner et al., 1988, Bio Techniques, 6:616-629;Gorziglia et al., 1992, J. Virol., 66:4407-4412;Quantin et al., 1992, Proc. Nad. Acad. Sci. USA, 89:2581-2584;Rosenfeld et al., 1992, Cell, 68:143-155;Wilkinson et al., 1992, Nucl. Acids Res., 20:2233-2239;Stratford-Perricaudet et al., 1990, Hum. Gene Ther., 1:241-256);ワクシニアウイルス(Mackett et al., 1992, Biotechnology, 24:495-499);アデノ随伴ウイルス(Muzyczka, 1992, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:91-123;On et al., 1990, Gene, 89:279-282);HSVおよびEBVを含めたヘルペスウイルス(Margolskee, 1992, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:67-90;Johnson et al., 1992, J. Virol., 66:29522965;Fink et al., 1992, Hum. Gene Ther. 3:11-19;Breakfield et al., 1987, Mol. Neurobiol., 1:337-371;Fresse et al., 1990, Biochem. Pharmacol., 40:2189-2199);シンドビスウイルス(H. Herweijer et al., 1995, Human Gene Therapy 6:1161-1167;米国特許第5,091,309号および同第5,2217,879号);アルファウイルス(S. Schlesinger, 1993, Trends Biotechnol. 11:18-22;I. Frolov et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11371-11377);ならびにトリ起源のレトロウイルス(Brandyopadhyay et al., 1984, Mol. Cell Biol., 4:749-754;Petropouplos et al., 1992, J. Virol., 66:3391-3397)、マウス起源のレトロウイルス(Miller, 1992, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:1-24;Miller et al., 1985, Mol. Cell Biol., 5:431-437;Sorge et al., 1984, Mol. Cell Biol., 4:1730-1737;Mann et al., 1985, J. Virol., 54:401-407)、およびヒト起源のレトロウイルス(Page et al., 1990, J. Virol., 64:5370-5276;Buchschalcher et al., 1992, J. Virol., 66:2731-2739)を含めたいくつものウイルスベクターが構築されている。バキュロウイルス(Autographa californica多核多角体病ウイルス;AcMNPV)ベクターも当技術分野で公知であり、商業的供給源から入手することができる(例えば、PharMingen、San Diego、Calif.;Protein Sciences Corp.、Meriden、Conn.;Stratagene、La Jolla、Calif.など)。
したがって、一実施形態では、IL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、ウイルスベクターに含める。適当なベクターとしては、レトロウイルスベクター、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、スイポックスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびポリオウイルスベクターが挙げられる。具体的な例示的なベクターは、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルスおよび高度に弱毒化されたワクシニアウイルス(MVA)などのポックスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、酵母ベクターなどである。アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)は、さらなる詳細が下に開示されており、開示されている方法において有用である。
ポリペプチドが機能的に活性である限りは、IL-34ポリペプチドをコードする核酸配列の一部を欠失させることができることが理解される。例えば、N末端、C末端、またはその両方から1つまたは複数のアミノ酸を欠失させることが望ましい場合がある。IL-34ポリペプチド内の残基の置換は、例えば、保存的置換であってよく、したがって、IL-34ポリペプチドの機能性は維持されることも意図されている(上記を参照されたい)。一部の実施形態では、IL-34のアミノ酸1~182を利用する。
AAVベクター
ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクターまたはアデノウイルスベクター、またはAAVベクターなどの1つまたは複数のベクターを利用することを含む方法および組成物が本明細書に開示される。ウイルス遺伝子を完全にまたはほぼ完全に欠く欠陥ウイルスを使用することができる。欠陥ウイルスベクターの使用により、ベクターが他の細胞に感染する恐れがあるという懸念を伴わずに特定の細胞に投与することが可能になる。有用なアデノウイルスおよびAAVベクターは、その複製コンピテント形態、複製欠損形態、ガットレス形態を含む。理論に束縛されることなく、アデノウイルスベクターは、in vitroにおける強力な発現、優れた力価、ならびにin vivoにおける分裂細胞および非分裂細胞への形質導入能を示すことが公知である(Hitt et al., Adv in Virus Res 55:479-505, 2000)。in vivoにおいて使用した場合、これらのベクターにより、強力であるが、ベクター骨格に対して引き出される免疫応答に起因して一過性である遺伝子発現がもたらされる。一部の非限定的な例では、有用なベクターは、Stratford-Perricaudet et al.(J. Clin. Invest., 90:626-630 1992;La Salle et al., Science 259:988-990, 1993)に記載されているベクターなどの弱毒化アデノウイルスベクター;または、欠陥AAVベクター(Samulski et al., J. Virol., 61:3096-3101, 1987;Samulski et al., J. Virol., 63:3822-3828, 1989;Lebkowski et al., Mol. Cell. Biol., 8:3988-3996, 1988)である。
組換えAAVベクターは、標的とした細胞における選択されたトランスジェニック産物の発現および産生を指示することができるという点において特徴付けられる。したがって、組換えベクターは、カプシド形成のために必須であるAAVの配列および標的細胞への感染のための物理的構造の全てを少なくとも含む。
AAVは、Parvoviridae科およびDependovirus属に属する。AAVは、直鎖状の一本鎖DNAゲノムをパッケージングしている小さな、エンベロープを有さないウイルスである。AAV DNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖はどちらも、等頻度でAAVカプシドにパッケージングされる。一部の実施形態では、AAV DNAは、Pdx1およびMafAをコードする核酸を含むが、Ngn3をコードする核酸は含まない。本明細書に開示される核酸分子を含む組換えアデノウイルスベクターおよび組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターなどの組換えベクターがさらに提供される。一部の実施形態では、AAVは、rAAV8、および/またはAAV2、例えば、AAV7m8である。しかし、AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11もしくはAAV12などの任意の他の適当なAAV血清型、または2つまたはそれよりも多くのAAV血清型のハイブリッド(例えば、これだけに限定されないが、AAV2/1、AAV2/7、AAV2/8もしくはAAV2/9など)であってよい。
AAVゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)に隣接する2つの逆方向末端反復(ITR)によって特徴付けられる。AAV2ゲノムでは、例えば、ITRの最初の125ヌクレオチドはパリンドロームであり、それ自体でフォールディングして塩基対合が最大になり、T字形ヘアピン構造が形成される。ITRの他の20塩基はD配列と称され、対合しないまま残る。ITRは、AAV DNA複製のための重要なシス作用性配列である;ITRは、複製開始点であり、DNAポリメラーゼによる第2の鎖合成のプライマーとしての機能を果たす。この合成の間に形成される二本鎖DNAは、複製型単量体と称され、セルフプライミング複製の第2ラウンドに使用され、複製型二量体を形成する。これらの二本鎖中間体が鎖置き換え機構によってプロセシングされ、その結果、パッケージングに使用される一本鎖DNAおよび転写に使用される二本鎖DNAがもたらされる。ITR内にはRep結合性エレメントおよび末端分解部位(TRS)が位置する。これらの特徴は、AAV複製の間にウイルス調節タンパク質Repによって使用されて、二本鎖中間体にプロセシングされる。AAV複製におけるそれらの役割に加えて、ITRは、AAVゲノムパッケージング、転写、非許容条件下での負の調節、および部位特異的組み込みにも必須である(Daya and Berns, Clin Microbiol Rev 21(4):583-593, 2008)。一部の実施形態では、これらのエレメントをAAVベクターに含める。
AAVの左側のORFは、4種のタンパク質 - Rep78、Rep68、Rep52およびRep40をコードするRep遺伝子を含有する。右側のORFは、3種のウイルスカプシドタンパク質(VP1、VP2およびVP3)を生じさせるCap遺伝子を含有する。AAVカプシドは、正二十面体対称性に配置された60種のウイルスカプシドタンパク質を含有する。VP1、VP2およびVP3は、1:1:10のモル比で存在する(Daya and Berns, Clin Microbiol Rev 21(4):583-593, 2008)。一部の実施形態では、これらのエレメントをAAVベクターに含める。
AAVベクターは遺伝子治療に使用することができる。有用な例示的なAAVは、AAV2(例えば、AAV7m8など)、AAV5、AAV6、AAV8およびAAV9である。アデノウイルス、AAV2およびAAV8は、網膜内の細胞を形質導入することができる。したがって、rAAV2またはrAAV8ベクターのいずれも、本明細書に開示される方法において使用することができる。しかし、rAAV6およびrAAV9ベクターも有用である。例示的なrAAV7m8ベクターが図16に示されている。
AAVは、ヒトおよびいくつかの他の霊長類種に感染するが、疾患を引き起こすことは知られておらず、非常に軽度の免疫応答を引き出す。AAVを利用する遺伝子治療ベクターは、分裂細胞および静止細胞のどちらにも感染することができ、宿主細胞のゲノムに組み込まれずに染色体外の状態で持続する。AAV8は、網膜の細胞に優先的に感染する。AAVの有利な特徴を理由として、本開示は、本明細書に開示される方法へのrAAVの使用を意図している。
AAVは、標的細胞に結合し、侵入する能力、核への侵入能力、長期間にわたって核において発現される能力、および低毒性を含めた、遺伝子治療ベクターとして望ましいいくつかの追加的な特徴を有する。AAVは、細胞へのトランスフェクトに使用することができ、適当なベクターは当技術分野で公知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0037585号を参照されたい。遺伝子治療に適したrAAVを作製するための方法は当技術分野で周知であり(例えば、米国特許出願公開第2012/0100606号;同第2012/0135515号;同第2011/0229971号;および同第2013/0072548号;ならびにGhosh et al., Gene Ther 13(4):321-329, 2006を参照されたい)、本明細書に開示される方法と共に利用することができる。
一部の実施形態では、ベクターは、rAAV8ベクター、rAAV6ベクター、rAAV9ベクターである。具体的な非限定的な例では、ベクターは、AAV8ベクターである。AAV8ベクターは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,692,332号において開示されている。例示的なAAV8核酸配列が、図1および米国特許第8,692,332号の配列番号1に示されている。AAV核酸配列は、この核酸配列と約90%より大きく、95%、98%または99%同一であり得ることが開示されている。カプシド、rep68/78、rep40/52、VP1、VP2およびVP3の位置および配列は、この米国特許第8,692,332号に開示されている。AAV8の位置および超可変領域も提供される。一部の実施形態では、ベクターは、AAV7m8などのrAAV2ベクターである。
本明細書に開示される方法において有用なベクターは、単一のAAV血清型(例えば、AAV2、AAV6、AAV8またはAAV9)に由来するものであってもよいインタクトなAAVカプシドをコードする核酸配列を含有し得る。米国特許第8,692,332号に開示されている通り、有用なベクターは、組換えの場合もあり、したがって、異種AAVまたは非AAVカプシドタンパク質(またはその断片)と融合したAAV8カプシドの1つまたは複数の断片を含有する人工的なカプシドをコードする配列を含有し得る。これらの人工的なカプシドタンパク質は、AAV2、AAV6、AAV8またはAAV9カプシドの非連続部分から、または他のAAV血清型のカプシドから選択される。例えば、rAAVベクターは、VP2および/もしくはVP3から、またはVP1から選択されるAAV8カプシド領域、あるいは、AAV8カプシドのアミノ酸1~184、アミノ酸199~259;アミノ酸274~446;アミノ酸603~659;アミノ酸670~706;アミノ酸724~738から選択されるその断片の1つまたは複数を含むカプシドタンパク質を有し得る。米国特許第8,692,332号の配列番号2を参照されたい。別の例では、VP3タンパク質の開始コドンをGTGに変更することが望ましい場合がある。あるいは、rAAVは、AAV血清型8カプシドタンパク質超可変領域の1つまたは複数、例えば、米国特許第8,692,332号の配列番号2に記載のAAV8カプシドのaa185~198;aa260~273;aa447~477;aa495~602;aa660~669;およびaa707~723を含有し得る。
一部の実施形態では、AAV血清型8カプシドを有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を生成する。ベクターを作製するために、本明細書で定義されているAAV血清型8カプシドタンパク質またはその断片をコードする核酸配列;機能的rep遺伝子;最低でもAAV逆方向末端反復(ITR)および例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸1~182を含む、IL-34またはその機能性断片をコードする導入遺伝子などの導入遺伝子で構成されるミニ遺伝子;ならびにAAV8カプシドタンパク質へのパッケージングを可能にするために十分なヘルパー機能を含有する、培養することができる宿主細胞。AAVミニ遺伝子をAAVカプシドにパッケージングするために宿主細胞中で培養する必要がある構成成分は、宿主細胞にトランスでもたらすことができる。あるいは、必要な構成成分(例えば、ミニ遺伝子、rep配列、cap配列、および/またはヘルパー機能)の任意の1つまたは複数を、当業者に公知の方法を使用して必要な構成成分の1つまたは複数を含有するように操作された安定な宿主細胞によってもたらすことができる。一部の実施形態では、安定な宿主細胞は、必要な構成成分(複数可)を誘導性プロモーターまたは組織特異的プロモーターの制御下で含有する。同様の方法を使用して、rAAV2、rAAV6またはrAAV9ベクターおよび/またはビリオンを生成することができる。
組織特異的プロモーターは、光受容体特異的プロモーター、例えば、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターなどの網膜特異的プロモーターであり得る。ロドプシンキナーゼプロモーターにより、杆体細胞および錐体細胞における発現が指示される。このプロモーターは、発現のために最適化されている(参照により本明細書に組み込まれるKhani et al., Invest. Opthamol. Vis. Science, 48:3954-3961, 2007を参照されたい)。このプロモーターの配列は、この参照文献の図1に提供されている。追加的なプロモーターとして、これだけに限定されないが、NRL、CRX、IRBP、またはロドプシンプロモーターが挙げられる。他の実施形態では、これだけに限定されないが、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸1~182を含む、IL-34、そのバリアント、融合タンパク質、または機能性断片をコードする導入遺伝子などの構成成分(複数可)を、構成的プロモーターの制御下に置くことができる。適当な構成的プロモーターの非限定的な例は、サイトメガロウイルスプロモーターである。追加的な非限定的な例は、ユビキチン(例えば、U6など)またはH1プロモーターである。有用なプロモーターは、上の節にも開示されている。ベクターは、デオキシサイクリン/テトラサイクリン誘導性系(例えば、TET-On)などの誘導性系を含有し得る。
なお別の代替では、選択された安定な宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下にある選択された構成成分(複数可)と、1つまたは複数の誘導性プロモーターの制御下にある他の選択された構成成分(複数可)とを含有し得る。例えば、293細胞(構成的プロモーターの制御下にあるE1ヘルパー機能を含有する)に由来するが、誘導性プロモーターの制御下にあるrepおよび/またはcapタンパク質を含有する安定な宿主細胞を生成することができる。当業者は、なお他の安定な宿主細胞を生成することができる。
rAAVを作製するために必要なミニ遺伝子、rep配列、cap配列、およびヘルパー機能は、それが担持する配列を伝達する任意の遺伝子エレメントの形態でパッケージング宿主細胞に送達することができる。選択された遺伝子エレメントは、本明細書に記載のものを含めた任意の適当な方法によって送達することができる。ベクターを構築するために使用される方法は、核酸操作の当業者には公知であり、遺伝子操作、組換え操作、および合成の技法を含む。例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Yを参照されたい。同様に、rAAVビリオンを生成する方法は周知であり、適当な方法の選択は、本発明を限定するものではない。例えば、K. Fisher et al, J. Virol., 70:520-532 (1993)および米国特許第5,478,745号を参照されたい。一部の実施形態では、選択されたAAV構成成分を、AAV8を含めたAAV血清型から、当業者が利用可能な技法を使用して容易に単離することができる。そのようなAAVは、学術的、商業的、または公共の供給源(例えば、American Type Culture Collection、Manassas、Va.)から単離または入手され得る。あるいは、AAV配列は、文献またはデータベース、例えばGENBANK(登録商標)などにおいて入手可能なものなどの公開された配列を参照することにより、合成または他の適当な手段を通じて入手することができる。
医薬組成物および処置方法
対象を網膜変性から保護するため、および/またはブドウ膜炎、網膜炎もしくは脈絡網膜炎を処置するための方法が本明細書に開示される。これらの方法は、ブドウ膜炎、網膜炎、もしくは脈絡網膜炎を有する、および/または網膜変性からの保護を必要とする対象を選択するステップと、対象の眼に、(a)インターロイキン(IL)-34のアミノ酸1~182を含むポリペプチド、IL-34のバリアント、もしくはIL-34のFc融合タンパク質であって、i)抗炎症性および/もしくはii)神経保護性である、ポリペプチド、バリアント、もしくはFc融合タンパク質;ならびに/または(b)ポリペプチド、バリアント、もしくはFc融合タンパク質をコードする核酸分子を治療有効量で局所的に投与するステップとを含む。一部の実施形態では、ポリペプチド、バリアント、またはFcタンパク質は、調節性T細胞(Treg)数を増加させること、および/またはii)ミクログリア数を増加させ、ミクログリアの活性化を阻害することができる。追加的な実施形態では、方法は、核酸分子を、これだけに限定されないが、AAVベクター、例えばAAV8ベクターなどのウイルスベクター中で投与するステップを含む。対象は、動物対象またはヒトなどの哺乳動物であり得る。対象は、ネコ、イヌまたはウサギなどの飼育ペットであり得る。対象は、ブタ(wine)、反芻動物、ウマ、および家禽を含めた非ヒト、霊長類、または家畜であり得る。
一部の実施形態では、対象は、神経損傷またはシナプス機能障害を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、神経保護をもたらし、ミクログリアの恒常性を増加させる。一般に、対象が神経損傷を有する場合、網膜電図(ERG)応答が影響を受ける。開示される方法により、EGF応答が改善される。
一部の実施形態では、方法は、網膜変性を有する対象を選択するステップと、この対象を処置するステップとを含み得る。対象は、緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性、レーバー先天性黒内障(LCA)、糖尿病性網膜症、アッシャーI型、または先天性停止性夜盲症を有し得る。
網膜変性に関しては、診断には、眼の眼底を検査し、かつ/または視野を評価する検査を利用することができる。これらとしては、網膜電図、蛍光血管造影、および目視検査が挙げられる。眼底検査は、網膜の状態を評価すること、および網膜表面の特徴的な色素斑点の存在について評価することを目的とする。視野の検査により、網膜の種々の部分の光刺激に対する感受性を評価することが可能になる。網膜電図(ERG)を使用することができ、これは、特定の光刺激に応答した網膜の電気的活動を記録し、2つの異なる型の光受容体(すなわち、錐体細胞および杆体細胞)の機能性に関する別個の評価を可能にするものである。
本開示の方法を使用して、あらゆる型の網膜色素変性症を処置することができる。一部の実施形態では、網膜色素変性症は、ロドプシン遺伝子、ペリフェリン遺伝子、および/または杆体において発現される他の遺伝子の変異によって引き起こされる。網膜色素変性症は、常染色体優性、常染色体劣性またはX連鎖様式での遺伝性の遺伝学的状態の結果であり得る。X連鎖網膜色素変性症は、劣性であり、男性に影響を及ぼす場合もあり、または優性であり、したがって、男性および女性に影響を及ぼす場合もある。網膜色素変性症は、中心性黄斑色素変化(ブルズアイ黄斑症)を示す杆体錐体網膜変性に関連し得る。網膜色素変性症は、X連鎖劣性網膜変性疾患であるコロイデレミアであり得る。一般に、網膜色素変性症(RP)は、光受容体細胞の進行性の喪失によって特徴付けられる。
一部の実施形態では、方法は、緑内障の対象を選択するステップと、この対象を処置するステップとを含む。対象は、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、または正常眼圧緑内障を有し得る。緑内障は、原発性緑内障または続発緑内障であり得る。これらの対象のいずれも処置のために選択することができる。
眼内の流体圧である眼圧(IOP)は、水銀柱ミリメートル(mmHg)またはキロパスカル(kPa)の単位で測定することができる。正常眼圧は、典型的には、10mmHgから20mmHgの間とみなされる。眼圧の平均値は15.5mmHgであり、約2.75~3.50mmHgの変動がある。眼圧の上昇(21mmHgまたは2.8kPaを上回る)が緑内障に関して最も重要であり、唯一の改変可能な危険因子である。一部の実施形態では、眼圧が上昇している対象を選択する。他の実施形態では、眼圧の上昇とまで言えないが、緑内障性損傷のエビデンスを有する対象を選択する。例えば、対象は、視神経乳頭陥凹を有し、陥凹乳頭径比が増加したまたは増加中であり得る(例えば、0.3よりも大きい、0.5よりも大きいまたは0.7よりも大きい)。他の実施形態では、対象は、緑内障性視神経損傷(例えば、陥凹乳頭径比の増悪など)の存在下でわずかに上昇したIOPを有し得る。
緑内障の検査は、例えば、眼圧測定、前房隅角検査または隅角鏡検査を使用した眼圧の測定、ならびに損傷、陥凹乳頭径比の変化、周縁部の外観および血管の変化の検出を同定するための視神経の検査を含み得る。視野検査を実施することができる。網膜神経線維層を、光干渉断層撮影、走査レーザー旋光分析、および/または走査レーザー検眼鏡検査(ハイデルベルク網膜断層像)などのイメージング技法を用いて評価することができる。追加的な検査として、眼圧測定、検眼鏡検査、視野測定、隅角鏡検査、角膜厚測定、および神経線維分析が挙げられる。本明細書に開示される方法に従った処置のための対象を選択するために、これらの方法を実施することができる。
一部の実施形態では、主題の方法により、治療利益、例えば、緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性、レーバー先天性黒内障(LCA)、糖尿病性網膜症、アッシャーI型、または先天性停止性夜盲症などの網膜障害の発生の防止、網膜障害の増悪の停止、網膜障害の増悪の逆転がもたらされる。一部の実施形態では、方法は、治療利益が実現されたことを検出するステップを含む。
投与後、対象を応答について、当技術分野で公知の任意の方法を使用して評価することができる。それらとしては、これだけに限定されないが、検眼鏡検査、視野測定、隅角鏡検査、角膜厚測定、または神経線維分析が挙げられる。一部の実施形態では、網膜神経節細胞の数および/または生存能力を評価することができる。当業者は、開示されている方法が有効であることを容易に判定することができる。例えば、これは、陥凹乳頭径比が安定化されているかどうかによって決定することができる。例えば、網膜神経線維層分析を実施するために、走査レーザー旋光分析または光干渉断層撮影を使用することができる。緑内障の増悪をモニタリングするために視野検査を使用することができる。開示されている方法のいずれかに関して、視覚欠損の処置における治療有効性は、個体の視覚の変更としてであり得る。
治療有効性の評価基準は、改変される特定の疾患に適用可能であり、治療有効性を測定するために使用するための適切な検出方法が認識されよう。例えば、治療有効性を眼底撮影またはERG応答の評価によって観察することができる。方法は、対象に組成物を投与した後の検査結果と対象に組成物を投与する前の検査結果とを比較することを含み得る。別の例として、進行性の錐体機能障害の処置における治療有効性は、錐体機能障害の増悪の速度の低下として、錐体機能障害の増悪の休止として、または錐体機能の改善として観察することができ、その効果は、例えば、ERGおよび/もしくはcERG;色覚検査;機能的補償光学;ならびに/または視力検査によってなどで、例えば、対象に組成物を投与した後の検査結果と対象に組成物を投与する前の検査結果とを比較し、錐体の生存能力および/または機能の変化を検出することによって、観察することができる。第3の例として、視覚欠損の処置における治療有効性は、例えば、赤色波長の知覚における、緑色波長の知覚における、青色波長の知覚における個体の視覚の変更としてであり得、その効果は、cERGおよび色覚検査によって、例えば、対象に組成物を投与した後の検査結果と対象に組成物を投与する前の検査結果とを比較し、錐体および杆体の生存能力および/または機能の変化を検出することによって、観察することができる。一部の実施形態では、方法は、形態および構造保存ならびに/またはERGの評価を含む。
一部の実施形態では、方法は、ブドウ膜炎を有する対象を選択するステップを含む。任意の形態のブドウ膜炎を、開示されている方法を使用して処置することができる。対象は、前部ブドウ膜炎(すなわち、虹彩毛様体炎または虹彩および毛様体の炎症ならびに/または虹彩炎)、中間部ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎(すなわち、脈絡網膜炎または脈絡膜および網膜の炎症)、またはびまん性ブドウ膜炎(すなわち、汎ブドウ膜炎)を有し得る。一部の他の例では、ブドウ膜炎は、虹彩炎、毛様体炎、毛様体炎、毛様体扁平部炎、脈絡網膜炎、虹彩毛様体炎、または虹彩炎を含み得る。方法を、急性または慢性であるブドウ膜炎を処置するために使用することもできる。一部の例では、ブドウ膜炎は、外科手術、外傷、自己免疫障害、化学的刺激への曝露、感染症、炎症性障害、またはヒト白血球抗原B27(HLA-B27)ハプロタイプに起因するものであり得る。
一実施形態では、対象における前部ブドウ膜炎を処置するための方法が提供される。特発性虹彩毛様体炎、HLA-B27陽性虹彩毛様体炎、若年性関節リウマチに関連するブドウ膜炎、フックス異色性虹彩毛様体炎、単純ヘルペス角膜ブドウ膜炎、強直性脊椎炎、眼内レンズ関連ブドウ膜炎、ライター症候群、帯状疱疹角膜ブドウ膜炎、梅毒に関連するブドウ膜炎、外傷性虹彩毛様体炎、炎症性腸疾患に関連するブドウ膜炎、および/または結核性虹彩毛様体炎を患っている対象を処置することができる。
別の実施形態では、対象における後部ブドウ膜炎を処置するための方法が提供される。したがって、トキソプラズマ脈絡網膜炎(retinochroiditis)、網膜血管炎、特発性後部ブドウ膜炎、眼ヒストプラスマ症、トキソカラ症、サイトメガロウイルス網膜炎、特発性網膜炎、匍行性脈絡膜症、急性多発性斑状(acute multifocal placoid)、色素上皮症、急性網膜壊死、バードショット脈絡膜症(bird shot choroidopathy)、白血病もしくはリンパ腫に関連するブドウ膜炎、細網肉腫、眼カンジダ症、結核性ブドウ膜炎、および/またはループス網膜炎を患っている対象を処置することができる。さらなる実施形態では、びまん性ブドウ膜炎を処置するための方法が提供される。したがって、サルコイドーシス、梅毒、フォークト小柳原田症候群、および/またはベーチェット病を患っている対象を処置することができる。
一実施形態では、ブドウ膜炎の徴候または症状を低減または緩和する。眼の徴候としては、毛様充血、房水フレア、眼科検査で房水細胞、水晶体後細胞、および硝子体細胞などの細胞の目に見える蓄積、角膜後面沈着物、ならびに前房出血が挙げられる。症状としては、疼痛(例えば、毛様体痙攣など)、発赤、羞明、流涙の増加、および視力低下が挙げられる。当業者は、ブドウ膜炎を容易に診断することができる。一実施形態では、ブドウ膜炎を診断するため、疾患の臨床経過を評価するため、または処置プロトコールが上首尾であったことを検証するために、生体顕微鏡検査(例えば、「細隙灯」)を使用する。
方法を使用して、ブドウ膜炎を有する対象を処置することができ、ここで、対象は、自己免疫障害を有する。一部の例示的な方法では、自己免疫障害は、サルコイドーシス、強直性脊椎炎、関節炎、多発性硬化症、または乾癬であり得る。他の実施形態では、対象は、炎症性障害を有し得る。一部の例では、炎症性障害は、クローン病、潰瘍性大腸炎、またはベーチェット症候群であり得る。追加的な例示的な方法では、対象は、感染症を有し得る。一部の方法では、感染症は、ネコひっかき病、帯状疱疹、単純ヘルペス、レプトスピラ症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、梅毒、結核、ライム病、ウエストナイルウイルス、サイトメガロウイルス、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に起因するものであり得る。他の実施形態では、対象は、ハプロタイプHLA-B27を有し得る。
さらなる実施形態では、網膜炎または脈絡網膜炎を有する対象を選択し、本明細書に開示される方法を使用して処置する。これらの対象は、細菌感染症、ウイルス感染症、原生動物感染症、または真菌感染症などの感染症を有し得る。感染症は、例えば、エプスタインバーウイルス(EBV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、またはウエストナイルウイルス感染症であり得る。感染症は、単純ヘルペス、帯状疱疹、サイトメガロウイルス感染症であり得る。他の実施形態では、対象は、結核、梅毒、ブルセラ症、ライム病、またはYersinia enterocolitica感染症を有し得る。さらに他の実施形態では、対象は、Candida種、Aspergillus種、Fusarium種、またはCryptococcus種による感染症を有し得る。さらなる実施形態では、対象は、眼トキソプラズマ症、眼トキソカラ症、びまん性片側性亜急性視神経網膜炎、急性網膜壊死、サイトメガロウイルス網膜炎、ベーチェット関連網膜炎、急性網膜色素上皮炎またはサルコイドーシスを有する。
IL-34ポリペプチド、バリアント、および融合タンパク質、または、例えばウイルスベクター内の本明細書に開示されるIL-34ポリペプチド、バリアント、および融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物が本明細書に提供される。医薬組成物は、処置される疾患の位置および型に応じて様々なやり方で製剤化し、投与することができる(例えば、IL-34ポリペプチドおよびそのバリアントの医薬組成物ならびにそのような組成物の投与が開示されており、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0054567号を参照されたい)。医薬組成物は、ナノ粒子を含み得る。これらの医薬組成物は、本明細書に開示される方法において有用である。
本明細書に開示される通り、眼に送達するための医薬組成物が提供される。IL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質を含む医薬組成物が本開示の範囲内に含まれる。例えば、ウイルスベクター、例えばAAVベクター内のIL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードする核酸分子を含む医薬組成物も本開示の範囲内に含まれる。
IL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質およびIL-34ポリペプチド、そのバリアント、またはその融合タンパク質をコードする核酸分子は、ex vivoで投与することもでき(例えば、眼に埋め込まれる幹細胞内に)、例えば、これだけに限定されないが、網膜下(sub-retainl)または硝子体内投与(administrt)など、in vivoで対象の眼内に投与することもできる。一般に、組成物を意図された適用に適した医薬組成物として調製することが望ましい。したがって、上記のポリペプチド、核酸分子、またはベクターを含有する医薬または医薬組成物を作製する方法が本明細書に含まれる。典型的には、医薬組成物(医薬)の調製には、発熱物質、およびヒトまたは動物に有害であり得るあらゆる他の不純物を本質的に含まない医薬組成物を調製することが必要である。典型的には、医薬組成物は、組成物の構成成分を安定にし、標的細胞による核酸またはウイルスの取り込みを可能にするために、適切な塩および緩衝剤を含有する。
例えば硝子体内または(of)網膜下投与のための、注射用の治療用組成物を提供することができる。そのような組成物は、一般に、開示される治療剤を、所望の程度の純度、単位投与量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、またはエマルション)で、薬学的に許容される担体、例えば、用いられる投与量および濃度でレシピエントに対して無毒性であり、製剤の他の成分と適合する担体と混合することによって製剤化される。医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤中に分散(例えば、溶解または懸濁)させた、有効量のポリペプチド、核酸分子を含み得る。薬学的に許容される担体および/または薬学的に許容される賦形剤は、当技術分野で公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th Edition (1995)に記載されている。担体の性質は、用いられる特定の投与形式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的かつ生理的に許容される流体を含む注射液をビヒクルとして含有する。さらに、投与される医薬組成物は、微量の無毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、pH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含有し得る。開示される治療剤は、水性担体、例えば、pH約3.0~約8.5、例えば、約4.0~約8.0、約6.5~約8.5、または約7.4などの等張性または低張性緩衝溶液に懸濁させることができる。有用なバッファとしては、食塩水緩衝リン酸バッファまたはイオン性ホウ酸バッファが挙げられる。活性成分は、必要に応じて賦形剤と一緒に、凍結乾燥物の形態であってもよく、投与前に適当な溶媒を添加することによって溶液にすることができる。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、任意のあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを含む。そのような媒体および剤の薬学的に活性な物質への使用は当技術分野で周知である。任意の従来の媒体または剤が活性成分と適合しない場合を除いて、任意の従来の媒体または剤の医薬組成物における使用が意図されている。補足的な活性成分も組成物に組み込むことができる。例えば、ある特定の医薬組成物は、ベクターまたはウイルスを水中に、ヒドロキシ-プロピルセルロースなどの適当な界面活性物質と混合して含み得る。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中の分散液剤も調製することができる。保管および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防止するために保存剤を含有する。
IL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子を、眼への局部適用または注射のため、例えば、硝子体内または網膜下投与のために、不活性マトリックスに含めることができる。不活性マトリックスの一例として、卵ホスファチジルコリン(PC)などのジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)からリポソームを調製することができる。カチオン性およびアニオン性リポソームを含めたリポソームを、当業者に公知の標準手順を使用して作製することができる。一部の適用に関しては、IL-34ポリペプチド、そのバリアント、その融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子を含むリポソームを、眼内に注射することができる。眼内注射用の製剤中で、リポソームカプセルは、細胞による消化に起因して分解する。理論に束縛されることなく、これらの製剤により、対象をある期間にわたって実質的に一定の濃度のIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子に曝露させる緩徐放出薬物送達システムの利点がもたらされる。一例では、以前に記載されている通り、IL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子を、DMSOまたはアルコールなどの有機溶媒中に溶解させることができ、また、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール)酸、ポリ(乳)酸、またはポリカプロラクトンポリマーを含有させることができる。
一部の実施形態では、IL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子を含む医薬組成物を、正確な投与量の個々の投与に適した単位剤形に製剤化する。投与される活性化合物(複数可)の量は、処置される対象、病気の重症度、および投与様式に依存し、処方する臨床医の判断に委ねるのが最良である。これらの縛りの中で、投与される製剤は、ある数量の活性構成成分(複数可)を、処置される対象において所望の効果を実現するために有効な量で含有する。
IL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子を、埋め込み物のサイズ、形状、および製剤化ならびに移植手順の種類に応じて眼内の様々な部位に埋め込むことができる送達システムに含めることができる。IL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子を、単独で使用することができる。しかし、別の実施形態では、以下に開示される少なくとも1つの剤などの少なくとも1つの追加的な剤を、IL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子と一緒に、埋め込み物などの送達システムに含めることができる。次いで、送達システムを眼内に導入する。適当な部位としては、これだけに限定されないが、前房、前眼部、後眼房、後眼部、および硝子体腔が挙げられる。
埋め込み物は、強膜への切開(例えば、2~3mmの切開)または他の適当な部位への切開を入れた後にピンセットまたはトロカールによって配置することを含めた、種々の方法によって眼内に挿入することができる。一部の場合では、トロカールによって、別の切開を入れず、その代わりに、トロカールを用いて眼に直接穴を形成することによって、埋め込み物を配置することができる。配置の方法は、放出動態に影響を及ぼす可能性がある。例えば、トロカールを用いてデバイスを硝子体または後眼房内に埋め込むことにより、ピンセットによる配置よりも硝子体内の深部へのデバイスの配置がもたらされ、これにより、埋め込み物を硝子体の縁により近づけることができる。埋め込まれたデバイスの位置は、デバイスの周囲のIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子の濃度勾配に影響を及ぼす可能性があり、したがって、放出速度に影響を及ぼす可能性がある(例えば、硝子体の縁により近づけて配置されたデバイスでは、より遅い放出速度をもたらすことができる。米国特許第5,869,079号および米国特許第6,699,493号を参照されたい)。
眼内への埋め込み物の使用は当技術分野で周知である(米国特許第6,699,493号および米国特許第5,869,079号を参照されたい)。一実施形態では、埋め込み物を、IL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子と共に、生物侵食性ポリマーマトリックスと会合させて製剤化する。
一般に、埋め込み物を使用する場合、IL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子を、ポリマーマトリックスにおける一様でない分布に起因する放出速度の有害な変動が生じないように一様に分布するように、ポリマーマトリックスを通じて均一に分布させる。用いるポリマー組成物の選択は、所望の放出動態、埋め込み物の位置、患者の許容性、および埋め込み手順の性質によって変動する。ポリマーを埋め込み物の少なくとも約10重量パーセントで含めることができる。一例では、ポリマーを埋め込み物の少なくとも約20重量パーセントで含める。別の実施形態では、埋め込み物は、1つよりも多くのポリマーを含む。これらの因子は、米国特許第6,699,493号に詳しく記載されている。ポリマーの特性としては、一般に、とりわけ、埋め込み部位における生分解性、目的の薬剤との適合性、封入のしやすさ、および水不溶性が挙げられる。一般に、ポリマーマトリックスは、薬物負荷量が放出されるまで完全には分解されない。適当なポリマーの化学組成は当技術分野で公知である(例えば、米国特許第6,699,493号を参照されたい)。本明細書に開示されるIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質またはIL-34ポリペプチド、そのバリアント、もしくはその融合タンパク質をコードする核酸分子は、他の担体および溶媒を用いて埋め込み形態に製剤化することができる。例えば、緩衝剤および保存剤を用いることができる。埋め込み物のサイズおよび形状も、眼の特定の領域における使用のために変動させることができる(米国特許第5,869,079号を参照されたい)。一部の実施形態では、ナノ粒子を使用する。
局所投与形式としては、例として、眼内経路、眼窩内経路、硝子体内経路および網膜下経路が挙げられる。ある実施形態では、局所的に(例えば、硝子体内に)投与した場合、全身的に(例えば、静脈内に)投与した場合と比較して、有意に少量の構成成分(全身手法と比較)で効果が発揮される。局所投与形式により、潜在的な副作用の発生率を低下させるまたは排除することができる。一実施形態では、本明細書に記載の構成成分を網膜下に、例えば網膜下注射によって送達する。網膜下注射は、黄斑に直接行うことができ、例えば、黄斑下注射であってもよい。例示的な方法としては、眼内注射(例えば、眼球後、網膜下、黄斑下、硝子体内および脈絡膜内)、イオン導入、点眼、および眼内埋め込み(例えば、硝子体内、テノン嚢下および結膜下)が挙げられる。
一実施形態では、本明細書に開示される組成物を硝子体内注射によって送達する。硝子体内注射は、網膜剥離のリスクが比較的低い。薬剤を眼に投与するための方法は医学の分野で公知であり、本明細書に記載の構成成分を投与するために使用することができる。
投与は、単回投与、周期的なボーラス(例えば、網膜下、静脈内もしくは硝子体内)または内部リザーバー(例えば、眼球内もしくは眼球外の位置に配置された埋め込み物(米国特許第5,443,505号および同第5,766,242号を参照されたい))から、もしくは外部リザーバー(例えば、静脈内バッグ)からの連続注入として提供することができる。構成成分を、眼の内壁に固定した持続放出薬物送達デバイスからの、または脈絡膜への標的化経強膜制御放出による特定の期間にわたる連続放出によって投与することができる(例えば、PCT/US00/00207、PCT/US02/14279、Ambati et al. (2000) INVEST. OPHTHALMOL. VIS. SCI. 41:1181-1185、およびAmbati et al. (2000) INVEST. OPHTHALMOL. VIS. SCI. 41:1186-1191を参照されたい)。構成成分を眼の内側に局所的に投与するために適した種々のデバイスが当技術分野で公知である。例えば、米国特許第6,251,090号、同第6,299,895号、同第6,416,777号、同第6,413,540号、およびPCT/US00/28187を参照されたい。
個々の用量は、典型的には、対象に対する測定可能な効果を生じさせるために必要な量以上であり、主題の組成物またはその副産物の吸収、分布、代謝、および排泄(「ADME」)についての薬物動態学および薬理学に基づいて、したがって、対象内での組成物の処理(disposition)に基づいて決定することができる。これは、網膜下適用(主に局所的効果のために作用が望まれる場所に直接適用される)、硝子体内適用(汎網膜効果のために硝子体に適用される)に関して調整することができる投与経路および投薬量の考慮を含む。有効な投与量および/または投与レジメンは、前臨床アッセイから、安全性および漸増および用量範囲試験から、個々の臨床医と患者の関係から、ならびにin vitroおよびin vivoアッセイから、経験的に容易に決定することができる。治療剤の硝子体内注射または網膜下注射は、1回実施することもでき、または、繰り返し、例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、または10回実施することもできる。投与は、2週間に1回、毎週、隔週、毎月、または2カ月毎、3カ月毎、4カ月毎、5カ月毎、または6カ月毎に実施することができる。
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドを、例えば、AAVベクターなどのウイルスベクターにおいて利用する。例えば、ウイルスを、マイクロインジェクション、電気穿孔、脂質媒介性トランスフェクション、ペプチド媒介性送達、または当技術分野で公知の他の方法によって送達することができる。in vivo送達のために、アデノウイルスまたはAAVベクターなどのベクターを医薬組成物に製剤化することができ、一般に、眼に、例えば、硝子体内または網膜下に局所的に投与する。ウイルスベクターの適切な用量は、他の因子の中でも、処置される対象(例えば、ヒトもしくは非ヒト霊長類または他の哺乳動物)、処置される対象の年齢および全身状態、処置される状態の重症度、ベクター/ビリオンの投与形式に依存する。当業者は、適切な有効量を容易に決定することができる。したがって、「治療有効量」は、臨床試験によって決定することができる比較的広範な範囲に入る。
それだけに限定されないがAAVベクターを含めたウイルスベクターを、特定の期間にわたる放出が可能になるように製剤化することができる。放出系は、生分解性材料または組み込まれた構成成分を拡散によって放出する材料のマトリックスを含み得る。構成成分は、放出系内に均一にまたは不均一に分布する。種々の放出系が有用であり得るが、適切な系の選択は、特定の適用で必要とされる放出速度に依存する。非分解性放出系および分解性放出系のどちらを使用することもできる。適当な放出系は、ポリマーおよびポリマーマトリックス、非ポリマーマトリックス、または、これだけに限定されないが、炭酸カルシウムおよび糖(例えば、トレハロース)などの無機および有機賦形剤および希釈剤を含む。放出系は、天然のものであっても合成のものであってもよい。しかし、一般に、合成放出系はより信頼でき、より再現性があり、かつ、より定義された放出プロファイルが生じるので、合成放出系が好ましい。放出系材料は、分子量が異なる構成成分が材料への拡散または材料の分解によって放出されるように選択することができる。
代表的な合成生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリアミド、例えば、ポリ(アミノ酸)およびポリ(ペプチド);ポリエステル、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、およびポリ(カプロラクトン);ポリ(酸無水物);ポリオルトエステル;ポリカーボネート;ならびにそれらの化学的誘導体(化学基の置換、付加、例えば、アルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化、および当業者により常套的になされる他の修飾)、それらの共重合体および混合物が挙げられる。代表的な合成非分解性ポリマーとしては、例えば、:ポリエーテル、例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、およびポリ(テトラメチレンオキシド);ビニルポリマー-ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、例えば、メチル、エチル、他のアルキル、ヒドロキシエチルメタクリル酸、アクリルおよびメタクリル酸など、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、およびポリ(酢酸ビニル);ポリ(ウレタン);セルロースおよびその誘導体、例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、エステル、ニトロセルロース、および種々の酢酸セルロース;ポリシロキサン;ならびにそれらの任意の化学的誘導体(化学基の置換、付加、例えば、アルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化、および当業者により常套的になされる他の修飾)、それらの共重合体および混合物が挙げられる。
ポリ(ラクチド-co-グリコリド)マイクロスフェアも、眼内注射のために使用することができる。典型的には、マイクロスフェアは、乳酸およびグリコール酸のポリマーで構成され、構造化されて中空球体を形成している。この球体は、直径およそ15~30ミクロンであり得、本明細書に記載の構成成分と共にロードすることができる。
例えば、in vivo注射、すなわち、対象への直接注射に関しては、治療有効用量は、約105~1016個のAAVビリオン、例えば、108~1014個のAAVビリオン程度になる。用量は当然、形質導入の効率、プロモーターの強度、メッセージおよびそれによりコードされるタンパク質の安定性、ならびに臨床的因子に依存する。有効な投与量は、当業者が用量応答曲線を確立する常套的試験によって容易に確立することができる。
一部の実施形態では、主題の組成物がAAVである場合、変化を実現するための有効量は、約1×108個またはそれよりも多くのベクターゲノム、一部の場合では、約1×109個、約1×1010個、約1×1011個、約1×1012個、または約1×1013個またはそれよりも多くのベクターゲノム、特定の例では、約1×1014個またはそれよりも多くのベクターゲノム、および通常は約1×1015個以下のベクターゲノムになる。一部の実施形態では、送達されるベクターの量は、約1×1014個またはそれ未満のベクター、例えば、約1×1013個、約1×1012個、約1×1011個、約1×1010個、または約1×109個またはそれ未満のベクターであり、ある特定の例では、約1×108個のベクター、および典型的には1×108個以上のベクターである。一部の非限定的な例では、送達されるベクターゲノムの量は、約1×1010個~約1×1011個のベクターである。追加的な非限定的な例では、送達されるベクターの量は、約1×1010個~約1×1012個のベクターゲノムである。
一部の実施形態では、投与される医薬組成物の量を、感染多重度(MOI)を使用して測定することができる。一部の実施形態では、MOIは、ベクターまたはウイルスゲノムの、核酸を送達することができる細胞に対する比、または倍数を指す。一部の実施形態では、MOIは、約1×106であり得る。一部の場合では、MOIは、約1×105~約1×107であり得る。一部の場合では、MOIは、約1×104~約1×108であり得る。一部の場合では、本開示の組換えウイルスは、少なくとも約1×101、約1×102、約1×103、約1×104、約1×105、約1×106、約1×107、約1×108、約1×109、約1×1010、約1×1011、約1×1012、約1×1013、約1×1014、約1×1015、約1×1016、約1×1017、および約1×1018MOIである。一部の場合では、本開示の組換えウイルスは、約1×108~1×1014MOIである。
一部では、送達される医薬組成物の量は、約1×108~約1×1015個の組換えウイルスの粒子、約1×109~約1×1014個の組換えウイルスの粒子、約1×1010~約1×1013個の組換えウイルスの粒子、または約1×1011~約1×10.s12個の組換えウイルスの粒子を含む(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0259395号を参照されたい)。
投薬処置は、最終的に上記の量を送達する単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであり得る。さらに、対象に必要なだけの用量を投与することができる。したがって、対象に、例えば、105~1016個のAAVビリオンを、例えば、105~1016個のAAVビリオンの送達を集合的にもたらす単回投与、または2回、4回、5回、6回もしくはそれよりも多くの投与で与えることができる。当業者は、施行する投与の適切な回数を容易に決定することができる。
一部の実施形態では、AAVを、約1×1011~約1×1014個のウイルス粒子(vp)/kgの用量で投与する。一部の実施例では、AAVを、約1×1012~約8×1013vp/kgの用量で投与する。他の例では、AAVを、約1×1013~約6×1013vp/kgの用量で投与する。具体的な非限定的な例では、AAVを、少なくとも約1×1011vp/kg、少なくとも約5×1011vp/kg、少なくとも約1×1012vp/kg、少なくとも約5×1012vp/kg、少なくとも約1×1013vp/kg、少なくとも約5×1013vp/kg、または少なくとも約1×1014vp/kgの用量で投与する。他の非限定的な例では、rAAVを、約5×1011vp/kg以下、約1×1012vp/kg以下、約5×1012vp/kg以下、約1×1013vp/kg以下、約5×1013vp/kg以下、または約1×1014vp/kg以下の用量で投与する。1つの非限定的な例では、AAVを、約1×1012vp/kgの用量で投与する。AAVは、所望の治療結果のために必要に応じて、単回投与で、または複数回投与で(例えば、2回投与、3回投与、4回投与、5回投与、6回投与、7回投与、8回投与、9回投与または10回投与)投与することができる。
医薬組成物は、AAVベクターなどのベクター、および/またはビリオン、ならびに薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。そのような賦形剤は、それ自体では組成物を受け取る個体に対して有害な抗体の産生を誘導するものではなく、過度の毒性を伴わずに投与することができる任意の医薬品を含む。薬学的に許容される賦形剤としては、これだけに限定されないが、水、食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体が挙げられる。薬学的に許容される塩、例えば、鉱酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など;および有機酸の塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などをその中に含めることができる。さらに、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質がそのようなビヒクル中に存在し得る。薬学的に許容される賦形剤の詳細な考察は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Mack Pub. Co., N.J. 1991)において入手可能である。
一部の実施形態では、賦形剤により、AAVビリオンに対して保護効果が付与され、その結果、製剤手順、包装、保管、輸送などに起因するAAVビリオンおよび形質導入能の喪失が最小化される。したがって、これらの賦形剤組成物は、これらにより、標準アッセイを使用して測定して、それらの保護されていない対応物よりも高いAAVビリオン力価および高い形質導入能レベルがもたらされるという意味で、「ビリオン安定化性」である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0219528号を参照されたい。したがって、これらの組成物は、本明細書に記載の特定の賦形剤を欠く組成物と比較して、「形質導入能レベルの増強」を示し、したがって、それらの保護されていない対応物よりも安定である。
AAVビリオンを活性分解条件から保護するために使用することができる例示的な賦形剤としては、これだけに限定されないが、界面活性剤、タンパク質、例えば、オボアルブミンおよびウシ血清アルブミン、アミノ酸、例えば、グリシン、これだけに限定されないが、1500~6000の分子量が好ましいが、PEG-200、PEG-400、PEG-600、PEG-1000、PEG-1450、PEG-3350、PEG-6000、PEG-8000およびこれらの値の間の任意の分子量などの種々の分子量のポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、炭水化物、好ましくはソルビトールなどの糖アルコールなどの多価アルコールおよび二価アルコールが挙げられる。界面活性剤は、存在する場合、アニオン性、カチオン性、双性イオン性または非イオン性界面活性剤であってもよい。例示的な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。1つの適当な型の非イオン性界面活性剤は、ソルビタンエステル、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN(登録商標)-20)ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(TWEEN(登録商標)-40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(TWEEN(登録商標)-60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(TWEEN(登録商標)-65)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN(登録商標)-80)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(TWEEN(登録商標)-85)、例えば、TWEEN(登録商標)-20および/またはTWEEN(登録商標)-80である。これらの賦形剤は、Sigma、St.Louis、Moなどのいくつかのベンダーから市販されている。
AAVを含めた開示された組成物のいずれかに存在する種々の賦形剤の量は、様々であり、当業者によって容易に決定される。例えば、BSAなどのタンパク質賦形剤は、存在する場合、1.0重量(wt.)%~約20wt.%、好ましくは10wt.%の濃度で存在し得る。グリシンなどのアミノ酸が製剤に使用される場合、約1wt.%~約5wt.%の濃度で存在し得る。ソルビトールなどの炭水化物は、存在する場合、約0.1wt%~約10wt.%、例えば、約0.5wt.%~約15wt.%、または約1wt.%~約5wt.%の濃度で存在し得る。ポリエチレングリコールが存在する場合、一般に、約2wt.%~約40wt.%、例えば、約10wt.%~約25wt.%程度で存在し得る。プロピレングリコールが主題の製剤に使用される場合、典型的には、約2wt.%~約60wt.%、例えば、約5wt.%~約30wt.%の濃度で存在し得る。ソルビタンエステル(TWEEN(登録商標))などの界面活性剤が存在する場合、約0.05wt.%~約5wt.%、例えば、約0.1wt.%から約1wt%の間の濃度で存在し得る。参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0219528号を参照されたい。一例では、水性ビリオン安定化製剤は、ソルビトールなどの炭水化物を0.1wt.%~約10wt.%、例えば約1wt.%~約5wt.%の濃度で含み、ソルビタンエステル(TWEEN(登録商標))などの界面活性剤を約0.05wt.%から約5wt.%の間、例えば、約0.1wt.%から約1wt.%の間の濃度で含む。ビリオンは、一般に、上で定義されている通り1回または複数回の投与で与えられる場合に治療効果をもたらすために十分な量で組成物中に存在する。
一部の実施形態では、本明細書に開示される薬剤を治療有効量で、眼内注射、例えば、硝子体内注射または網膜下注射によって投与する。硝子体内注射のための一般的な方法は、以下の簡単な概略により例示することができる。この例は、ただ単に方法のある特定の特徴を例示するものであり、決して限定を意味するものではない。硝子体内注射の手順は当技術分野で公知である(例えば、Peyman, et al. (2009) Retina 29(7):875-912およびFagan and Al-Qureshi, (2013) Clin. Experiment. Ophthalmol. 41(5):500-7を参照されたい)。眼内投与の他の方法が当技術分野で公知であり、網膜下投与を含む。
簡単に述べると、硝子体内注射するための対象に対し、瞳孔の拡張、眼の滅菌、および麻酔薬の投与による手順を用意することができる。当技術分野で公知の任意の適当な散瞳剤を瞳孔の拡張のために使用することができる。処置前に十分な瞳孔の拡張を確認することができる。滅菌は、滅菌用の眼の処置、例えば、ポビドンヨウ素(BETADINE(登録商標))などのヨウ化物含有溶液を適用することによって実現することができる。眼瞼、睫毛、およびあらゆる他の近くの組織(例えば、皮膚)を清潔にするために同様の溶液を使用することもできる。リドカインまたはプロパラカインなどの任意の適当な麻酔薬を任意の適当な濃度で使用することができる。麻酔薬は、これだけに限定することなく、麻酔薬の局所滴剤、ゲルまたはゼリー、および結膜下適用を含めた当技術分野で公知の任意の方法によって投与することができる。
注射前に、滅菌開瞼器を使用して、睫毛をその領域から取り除くことができる。注射の部位をシリンジでマークすることができる。注射の部位は、患者の水晶体に基づいて選択することができる。例えば、注射部位は、偽水晶体または無水晶体患者では縁(limus)から3~3.5mm、有水晶体患者では縁からおよび3.5~4mmであり得る。患者は、注射部位とは逆の方向を見ることができる。注射中、針を強膜に垂直に挿入し、眼の中心に向けることができる。針を、先端が網膜下空間ではなく硝子体内に留まるように挿入することができる。当技術分野で公知の任意の適当な注射体積を使用することができる。注射後、眼を抗生物質などの滅菌剤で処置することができる。眼をすすいで過剰な滅菌剤を除去することもできる。
対象に、追加的な治療剤を投与することができる。それらとしては、これだけに限定されないが、例えば、緑内障の対象に対して眼圧を低下させる薬剤が挙げられる。薬剤は、a)プロスタグランジンアナログ、b)ベータ-アドレナリン作動性遮断薬、c)アルファ-アドレナリン作動性アゴニスト、またはd)コリン作動性アゴニストであってもよい。例示的な薬剤としては、ラタノプロスト、ビマトプロスト(bimatorpost)、トラボプロスト、チモロール、ベタキソロール、ブリモニジン、ピロカルピン、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、およびアセタゾラミドが挙げられる。一部の具体的な非限定的な例では、薬剤は、a)ラタノプロスト、b)チモロール、c)ブリモニジン、またはd)ピロカルピンである。対象に、これだけに限定されないが、リパスジルまたはネタルスジルなどのRho-キナーゼ阻害剤を投与することができる。
対象に投与することができる追加的な薬剤としては、感染症および炎症のリスクを低下させるための抗細菌性および抗真菌性抗生物質、ならびに非ステロイド性抗炎症剤が挙げられる。追加的な薬剤は、任意の経路によって投与することができる。追加的な薬剤は、別々に、または同じ組成物中に製剤化することができる。
有用な薬剤としては、抗生物質、例えば、アミノグリコシド(minoglycosides)(例えば、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、フォーチミシン、ゲンタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、ミクロノマイシン、ネオマイシン、ネオマイシンウンデシレン酸塩、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、トロスペクトマイシン)、アンフェニコール(例えば、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、チアンフェニコール)、アンサマイシン(例えば、リファミド、リファンピン、リファマイシンsv、リファペンチン、リファキシミン)、β-ラクタム(例えば、カルバセフェム(例えば、ロラカルベフ)、カルバペネム(例えば、ビアペネム、イミペネム、メロペネム、パニペネム)、セファロスポリン(例えば、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフカペンピボキシル、セフクリジン、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフェタメト、セフィキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファセトリルナトリウム、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロスポリン、セファロチン、セファピリンナトリウム、セフラジン、ピブセファレキシン)、セファマイシン(例えば、セフブペラゾン、セフメタゾール、セフィニノックス、セフォテタン、セフォキシチン)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム、カルモナム、チゲモナム)、オキサセフェム、フロモキセフ、モキサラクタム)、ペニシリン(例えば、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、アンピシリン、アパルシリン、アスポキシシリン、アジドシリン、アズロシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、カルベニシリン、カリンダシリン、クロメトシリン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロサキシリン、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ヘタシリン、レナンピシリン、メタンピシリン、メチシリンナトリウム、メズロシリン、ナフシリンナトリウム、オキサシリン、ペナメシリン、ペネタメートヨウ化水素酸塩、ペニシリンGベネタミン、ペニシリンgベンザチン、ペニシリンgベンズヒドリルアミン、ペニシリンGカルシウム、ペニシリンGヒドラバミン、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGプロカイン、ペニシリンN、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン、ペニメピサイクリン、フェネチシリンカリウム、ピペラリシン、ピバンピシリン、プロピシリン、キナシリン、スルベニシリン、スルタミシリン、タランピシリン、テモシリン、チカルシリン)、その他(例えば、リチペネム)、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン)、マクロライド(例えば、アジスロマイシン、カルボマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシストレート、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシングルコヘプトネート、エリスロマイシンラクトビオン酸塩、エリスロマイシンプロピオネート、エリスロマイシンステアリン酸塩、ジョサマイシン、ロイコマイシン、ミデカマイシン、ミオカマイシン、オレアンドマイシン、プリマイシン、ロキタマイシン、ロサラミシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン)、ポリペプチド(例えば、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンデュラシジン、エンビオマイシン、フサファンギン、グラミシジンS、グラミシジン(S)、ミカマイシン、ポリミキシン、プリスチナマイシン、リストセチン、テイコプラニン、チオストレプトン、ツベラクチノマイシン、チロシジン、チロスリシン、バンコマイシン、バイオマイシン、バージニアマイシン、亜鉛バシトラシン)、テトラサイクリン(例えば、アピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、グアメサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、ロリテトラサイクリン、サンサイクリン、テトラサイクリン)、など(例えば、サイクロセリン、ムピロシン、ツベリン)が挙げられる。有用な薬剤として、合成抗細菌薬、例えば、2,4-ジアミノピリミジン(例えば、ブロジモプリム、テトロキソプリム、トリメトプリム)、ニトロフラン(例えば、フラルタドン、塩化フラゾリウム、ニフラデン、ニフラテル、ニフルホリン、ニフルピリノール、ニフルプラジン、ニフルトイノール、ニトロフラントイン)、キノロンおよびアナログ(例えば、シノキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、ジフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、グレパフロキサシン、ロメフロキサシン、ミロキサシン、ナジフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキソリニン酸、パズフロキサシン、ペフロキサシン、ピペミド酸、ピロミド酸、ロソキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、トロバフロキサシン)、スルホンアミド(例えば、アセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルファミド、クロラミン-b、クロラミン-t、ジクロラミンt、マフェニド、4’-(メチルスルファモイル)スルファニルアニリド、ノプリルスルファミド、フタリルスルファセタミド、フタリルスルファチアゾール、サラゾスルファジミジン、スクシニルスルファチアゾール、スルファベンズアミド、スルファセタミド、スルファクロルピリダジン、スルファクリソイジン、スルファシチン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファドキシン、スルファエチドール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファレン、スルファロクス酸、スルファメラジン、スルファメータ、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトミジン、スルファメトキサゾール、スルファメトキシピリダジン、スルファメトロール、スルファミドクリソイジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、スルファニリル尿素、n-スルファニリル-3,4-キシラミド、スルファニトラン、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファプロキシリン、スルファピラジン、スルファピリジン、スルファソミゾール、スルファシマジン、スルファチアゾール、スルファチオ尿素、スルファトラミド、スルフイソミジン、スルフイソキサゾール)スルホン(例えば、アセダプソン、アセジアスルホン、アセトスルホンナトリウム、ダプソン、ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、ソラスルホン、スクシスルホン、スルファニル酸、p-スルファニルベンジルアミン、スルホキソンナトリウム、チアゾールスルホン)、など(例えば、クロホクトール、ヘキセジン、メテナミン、メテナミンアンヒドロメチレン-クエン酸塩、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、スルホサリチル酸メテナミン、ニトロキソリン、タウロリジン、キシボルノール)も挙げられる。
追加的な有用な薬剤としては、抗真菌抗生物質、例えば、ポリエン(例えば、アンホテリシンB、カンジシジン、デンノスタチン、フィリピン、フンギクロミン、ハチマイシン、ハマイシン、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ナイスタチン、ペチロシン、ペリマイシン)、その他(例えば、アザセリン、グリセオフルビン、オリゴマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、ピロールニトリン、シッカニン、ツベルシジン、ビリジン)アリルアミン(例えば、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン)、イミダゾール(例えば、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン、クロルミダゾール(chlormiidazole)、クロコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール硝酸塩、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール)、チオカルバメート(例えば、トルシクレート、トリンデート、トルナフテート)、トリアゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、サペルコナゾール、テルコナゾール)その他(例えば、アクリゾルシン、アモロルフィン、ビフェナミン、ブロモサリシルクロラニリド、ブクロサミド、プロピオン酸カルシウム、クロルフェネシン、シクロピロックス、クロキシキン、コパラフィネート、ジアムタゾールジヒドロクロリド、エキサラミド、フルシトシン、ハレタゾール、ヘキセチジン、ロフルカルバン、ニフラテル、ヨウ化カリウム、プロピオン酸、ピリチオン、サリチルアニリド、プロピオン酸ナトリウム、スルベンチン、テノニトロゾール、トリアセチン、ユジョチオン、ウンデシレン酸、プロピオン酸亜鉛)が挙げられる。(1)抗生物質およびアナログ(例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ピラルビシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ジノスタチン、ゾルビシン)、(2)代謝拮抗薬、例えば、葉酸アナログ(例えば、デノプテリン、エダトレキセート、メトトレキセート、ピリトレキシム、プテロプテリン、トリメトレキセート)、(3)プリンアナログ(例えば、クラドリビン、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン)、(4)ピリミジンアナログ(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エミテフール、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、タガフール)を含めた抗新生物剤も有用であり得る。
ステロイド性抗炎症剤、例えば、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、シクロスポリン、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロベタソールプロピオン酸塩、ハロメタゾン、ハロプレドン酢酸エステル、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンフランカルボン酸エステル、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノ-アセテート、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバール、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、およびトリアムシノロンヘキサアセトニドも使用することができる。
さらに、非ステロイド性抗炎症剤を使用することができる。これらとしては、アミノアリールカルボン酸誘導体(例えば、エフェナム酸、エトフェナメート、フルフェナム酸、イソニキシン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸、タルニフルメート、テロフェナメート、トルフェナム酸)、アリール酢酸誘導体(例えば、アセクロフェナク、アセメタシン、アルクロフェナク、アンフェナク、アムトルメチングアシル、ブロムフェナク、ブフェキサマク、シンメタシン、クロピラク、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、フェルビナク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、グルカメタシン、イブフェナック、インドメタシン、イソフェゾラク、イソキセパク、ロナゾラク、メチアジン酸、モフェゾラク、オキサメタシン、ピラゾラク、プログルメタシン、スリンダク、チアラミド、トルメチン、トロペシン、ゾメピラック)、アリール酪酸誘導体(例えば、ブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェン、キセンブシン)、アリールカルボン酸(例えば、クリダナク、ケトロラク、チノリジン)、アリールプロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ベルモプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピケトプロレン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プロチジン酸、スプロフェン、チアプロフェン酸、キモプロフェン、ザルトプロフェン)、ピラゾール(例えば、ジフェナミゾール、エピリゾール)、ピラゾロン(例えば、アパゾン、ベンズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、モラゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピフェナゾン、ラミフェナゾン、スキシブゾン、チアゾリノブタゾン)、サリチル酸誘導体(例えば、アセタミノサロール、アスピリン、ベノリレート、ブロモサリゲニン、アセチルサリチル酸カルシウム、ジフルニサル、エテルサレート、フェンドサール、ゲンチジン酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸イミダゾール、リシンアセチルサリチル酸、メサラミン、サリチル酸モルホリン、サリチル酸1-ナフチル、オルサラジン、パルサルミド、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サルアセトアミド、サリチルアミドo-酢酸、サリシル硫酸、サルサレート、スルファサラジン)、チアジンカルボキシアミド(例えば、アンピロキシカム、ドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、ピロキシカム、テノキシカム)、イプシロン-アセトアミドカプロン酸、s-アデノシルメチオニン、3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン、ベンダザック、ベンジダミン、アルファ-ビサボロール、ブコローム、ジフェンピラミド、ジタゾール、エモルファゾン、フェプラジノール、グアイアズレン、ナブメトン、ニメスリド、オキサセプロール、パラニリン、ペリソキサール、プロカゾン、スーパーオキシドジスムターゼ、テニダップ、およびジロートンが挙げられる。
本開示を以下の非限定的な実施例により例示する。
インターロイキン-34は、炎症性の状態の下でマクロファージ、単球、およびミクログリアの分化、生存および増殖を誘導する神経細胞によって、主に産生されるサイトカインである。IL-34のレベルの上昇が種々の自己免疫疾患の患者において報告されており、炎症促進性サイトカインのレベルと正に相関する。しかし、IL-34は、単球のM2極性化を通じてFoxp3+調節性T細胞を誘導することも示されている。自己免疫性ブドウ膜炎におけるIL-34の役割を、実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)のマウスモデルを使用して調査した。
(実施例1)
材料および方法
動物およびヒト対象
近交系マウス系統C57BL/6JをJackson Laboratoriesから入手し、IL-34 KO(PMID:22729249)をDr.Marco Colonna(Washington University、St.Louis、MO)から入手した。動物を特定の病原体を含まない条件下、標準固形飼料および水を自由にとらせて維持した。動物飼育および使用は、施設のガイドラインに適合するものであった。
ヒト対象由来の試料は、National Institutes of Health Institutional Review Boardのガイドラインに従って使用し、全ての手順がヘルシンキ宣言の教義に適合するものであった。National Eye Institute Institutional Review Boardプロトコール番号03-EI-0122に登録された非感染性ブドウ膜炎の明確に定義された臨床的診断を有する患者由来の血清試料を、本研究に使用した。血液試料採取に関して全ての患者からインフォームドコンセントを得た。研究目的の健康な対照試料を、Department of Transfusion Medicine、National Institutes of Healthからインフォームドコンセントと共に得た。
EAUの誘発および評価
C57BL/6バックグラウンドのマウスに対する光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)のブドウ膜炎発生性ペプチド(ペプチドIRBP651-670 LAQGAYRTAVDLESLASQLT、配列番号5)をBio Basic Inc(Amherst、New York)で、ソリッドステート法を使用して合成し、>70%純度で使用した。マウスに、2.5mg/mlのMycobacterium tuberculosis H37RA(Difco、Detroit、MI)を含有する完全フロイントアジュバント中に1:1v/vで乳化したペプチドIRBP651-670 300μgを皮下に能動免疫した。合計200μlのエマルションを3つの部位 - 尾の基部(100μl)および後肢(各50μl)に分布させた。マウスに、100μlの1×PBS中1.0μgの百日咳毒素(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO;Cat番号P7208)も免疫と同じ日に腹腔内に単回投与した(PMID:26284549)。
実験的自己免疫性ブドウ膜炎を、眼底検査により、炎症の程度に基づいて0~4の尺度で評価した(PMID:15286397)。各実験の最後に眼を回収し、病理組織検査のために処理し、標準のヘマトキシリン-エオシンで染色した。EAUの重症度を二重盲検試験で病変の数、型、およびサイズに基づく0~4の尺度に基づいて評価した(PMID:15286397)。
ELISAによるIL-34の定量
EAUを誘発するために免疫したマウスの脾臓および免疫部位(腸骨および鼠径部)から流出しているリンパ節から単一細胞浮遊液を作製した。細胞(合計200μlのHL-1培地中ウェル当たり細胞1×106個;Lonza、Walkersville、MD)を、免疫用ペプチド(10μg/ml)の存在下または不在下で培養し、48時間後に細胞培養上清をELISAによるサイトカインレベルの定量のために採取した。EAUマウス由来の眼をプールし、プロテアーゼ阻害剤(Pierce Biotechnology、Waltham、MA)を含有するHL-1培地(Lonza、Walkersville、MD)中に1眼当たり培地50μlの比率で細かく切って入れ、以前に記載されている通りQiashredder(Qiagen Inc、CA)を通して濾過して、上清を単離した(PMID18391061)。LEGEND MAX mouse IL-34 ELISA kit(BioLegend、San Diego、CA)を使用してサイトカインレベルを測定した。
遺伝子特異的転写物を定量するための定量的リアルタイムPCR
全網膜、またはマウスミューラー細胞系、または661Wマウス光受容体細胞、またはBV2マウスミクログリア細胞から、RNeasy Mini kit(Qiagen Inc.、Valencia、CA)を使用して全RNAを単離し、オリゴ-dTおよびSUPERSCRIPT(登録商標)III逆転写酵素を使用して製造者(Life Technologies、Grand Island、NY)の指示通りcDNAを合成した。IL-34の両受容体、すなわち、CSF1受容体(TAQMAN(登録商標)Assay ID:Mm01266652_m1)またはPTPRzeta受容体(TAQMAN(登録商標)Assay ID:Mm00459467_m1)ならびにIL-34(TAQMAN(登録商標)Assay ID:Mm01243248_m1)およびCSF1(TAQMAN(登録商標)Assay ID:Mm00432686_m1)などのCSF1Rの両リガンドの遺伝子発現プロファイルを、TAQMAN(登録商標)RT-PCRアッセイ(Life Technologies、Grand Island、NY)をApplied Biosystems 7500 Fast system(Life Technologies、Grand Island、NY)で使用して測定した。データを、ABI 7500ソフトウェアv2.0.6(Life Tech. Corp. Carlsbad、CA)を使用して比較CT(ΔΔCT)法によって解析した。遺伝子転写物の相対的な定量は、各試料をそれ自体のGapdh遺伝子(内在性対照)の発現に対して正規化した後に測定した。
治療剤の眼内投与
内在性に産生されたIL-34の影響を中和するために、中和抗体を眼の環境中に局所的に注入した。マウスをケタミン-キシラジンの組合せ(77mg/kg+4.6mg/kg)で麻酔し、400ng/2μl/眼の抗マウスIL-34抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)を、以前に記載されている通り硝子体内に注入した(PMID27784063)。アデノ随伴ウイルス(AAV)送達方法を使用した遺伝子治療のために、動物を麻酔し、空AAV8またはAAV8-IL-34のいずれかのウイルス粒子7×108個を、以前に記載されている通り網膜下に注入した(PMID26274541)
AAV8-IL-34構築物の生成
AAV8-IL-34構築物を、マウスIL-34のcDNA配列全長(受託番号:NM_001135100.2)を使用して作製した。ベクタープラスミドは、CMVプロモーター、CMVおよびベータ-グロビンに由来するキメライントロン、マウスIL-34コード配列およびベータグロビン由来のポリアデニル化シグナルによって分離された2つのAAV2由来ITRを含有する。2つのITRの外側は、Amp R遺伝子を含有する細菌骨格である。
(実施例2)
結果
ブドウ膜炎患者および健康な対照由来の血清試料中のIL-34および他の炎症促進性サイトカインのレベルを分析した。C57BL/6Jマウスにおいて網膜抗原を用いて免疫することによってEAUを誘発し、EAUの過程中の種々の網膜細胞におけるIL-34およびその受容体の発現を決定した。EAUについて免疫したマウスにおいて、それぞれ中和抗体を眼内注射することまたはアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を網膜下注射することにより、IL-34を局所的に中和させたまたは過剰発現させた。
ブドウ膜炎患者および一部の健康な対照の血清中に検出可能なレベルのIL-34が存在した。マウスでは、IL-34サイトカインは網膜光受容体細胞および網膜グリアミュラー細胞により構成的に発現され、一方、その受容体であるCsf1rおよびPtpr-bは、それぞれ網膜ミクログリア細胞および光受容体によって発現された。マウス網膜におけるIL-34の発現は、EAU疾患の増悪と共に徐々に低減する。眼内のIL-34の局所的な過剰発現により、神経網膜が自己免疫性ブドウ膜炎に起因する損傷から完全に保護された。結果を図1~8に示す。
したがって、IL-34の局所送達を、神経保護のために使用することができる。理論に束縛されることなく、自己免疫性ブドウ膜炎の間、網膜光受容体層の段階的な変性により、IL-34の内在性産生が枯渇する可能性がある。遺伝子治療によるIL-34の局所的な過剰発現の結果、神経網膜の自己免疫性炎症攻撃からの保護をもたらすことができる。IL-34により、広範な視覚を脅かす自己免疫性ブドウ膜炎疾患において神経保護を増強するための有望な処置戦略がもたらされる。
(実施例3)
追加的な研究
図11A~11Cは、網膜におけるAAV8媒介性IL-34の外因性発現の結果、高ウイルス力価で使用した場合、ミクログリア細胞の増殖および活性化、その後の視覚の段階的な喪失がもたらされたことを示す。上の実施例1に開示されている通りアッセイを実施した。簡単に述べると、ベクターAAV8またはAAV8-IL34発現系のウイルス粒子7.0×108個を、C57BL/6Jマウスの左眼(OS)または右眼(OD)の網膜下に注入した。上の実施例1に開示されている通りIL-34産生をELISAによって定量するために、AAV8-IL-34遺伝子送達後の様々な時点で動物を屠殺し、眼を採取した(11A)。IL-34の外因性発現は9日目にピークに達したが、注射後45日目であっても、対照の眼における発現のレベルと比較して数倍高いままであった。細胞レベルでの網膜の変化を免疫組織化学的検査によって評価するために眼を採取した(11B)。マウスを二酸化炭素吸入によって安楽死させ、それらの眼を摘出し、水晶体を除去した。得られた眼杯をそれらの向きについて印をつけ、次いで、4%パラホルムアルデヒド中に室温で1時間にわたって固定した。眼杯を7%アガロースに包埋し、視神経を通って上下の平面に、ビブラトーム(VT1000、Leica)を使用して厚さ100μmの切片に切片作製した。切片をブロッキングし、透過処理し(0.5%Triton X-100を伴う1×PBS中5%正常ヤギ血清、室温で3時間)、次いで、0.5%Triton X-100を伴う1×PBS中、一次抗体と4℃で36時間インキュベートした。一次抗体には、ミクログリアを検出するためのウサギ抗マウスIba1(和光、#019-19741、1:500)、活性化を検出するためのラット抗マウスCD68(AbD Serotec、#MCA1957、1:500)、および増殖を検出するためのKi67(1:50、Ki67(1:50、eBioscience、#50-5698-82)を含めた。AAV8-IL-34構築物を受けた右眼(OD)では、ヌルベクターAAV8を受けた左眼と比較して、ミクログリア細胞の数の増加が明らかになり、中等度のレベルの活性化および増殖シグナルが伴った。一部の動物では、AAV8媒介性IL-34遺伝子送達後の様々な時点で、暗所順応条件下で網膜電図(ERG)によって視覚機能を評価した(11C)。マウスを終夜暗所順応させ、杆体の活性化を誘導するため、ならびに杆体光受容体および下流の網膜細胞の機能を測定するために、可変の強度の閃光に曝露させた。暗順応(暗所順応)「b」波シグナルは、IL-34遺伝子構築物を受けた右眼(OD)ではAAV8-IL-34の網膜下送達後12日目までに失われた。AAV8-IL-34のウイルス粒子7×108個を使用したブドウ膜炎からの保護(上の実施例2に開示されている通り)には、ミクログリアの望ましくない過剰活性化に起因するERG応答の喪失が伴った。
望ましくない副作用に起因して、ウイルス粒子の用量の用量設定を下げた。図12Aは、同じ用量のヌルベクターを注射した同側の眼における内在性レベルと比較して数倍高いレベルの外因性IL-34発現には、AAV8-IL34粒子7×105個という低用量で十分であったことを示す。この用量で、ERG応答における暗所順応「b」波の振幅は、それらのIL-34発現とは無関係に、網膜下への遺伝子送達の3週間後に両眼で同様であった(図12B)。しかし、この用量では、予防的処置として使用した場合にEAU重症度は低下しなかった。AAV8-IL-34のウイルス粒子1×107個の用量で、右眼(AAV8-IL-34)における疾患重症度が左眼(ヌルベクター)と比較して低下したことにより、保護効果があることが見いだされた(図12C)。Micron III齧歯類眼底カメラによって取得した眼底画像から、AAV8-IL-34を注射した右眼(OD)の網膜後部では、IL-34遺伝子送達を受けていない左眼(OS)における網膜炎症を示す細胞の浸潤および血管の怒張と比較して、細胞浸潤がないことおよび血管炎がないことが示される(図12D-代表的なマウス5匹のうち1匹の画像)。これにより、IL-34の眼内送達のための適正な用量を決定することができることが実証される。
網膜における外因性IL-34発現の機能的結果を理解するために、遺伝子発現プロファイリングを実施した。EAU誘発の14日後にマウス眼の網膜組織からRNAを単離し、ヌルベクターAAV8(OS)またはAAV8-IL-34(OD)を予防的に注射した。種々の遺伝子転写物の相対的存在量を、Nanostringマウス神経炎症アレイを使用して定量した。図13は、EAUを有さないナイーブな網膜、またはヌルベクターAAV8(OS)もしくはAAV8-IL-34(OD)で処置したEAU網膜の遺伝子発現プロファイルのヒートマップを示す。各群2匹のマウスの眼からの発現データから、IL-34の存在下でのいくつかの遺伝子の発現レベルの差異が示される。
ナイーブな網膜において低レベルのIL-34発現が存在するので、このサイトカインの先天性欠損を有するマウスにおいてEAU転帰に対するIL-34の効果を調査した。ナイーブな免疫していない野生型対照系統C57BL/6JおよびIL-34ノックアウト系統の眼から調製した網膜フラットマウントを、ミクログリアマーカーであるIba1について染色した。先天性IL-34欠損では眼内のミクログリア細胞が少なくなる(図14A)。IL-34ノックアウトマウス(n=15)およびその野生型対照C57BL/6J(n=17)において、実施例1に開示されている方法に従って、しかしIRBP651-670の量を減らして(200μg)、EAUを誘発し、グレード付けした。この低用量免疫レジメンでは、これらの2つの系統の易罹患性の差異が、前に実施例2において記載したものよりも明らかであった。出生時の全身性IL-34欠損により、EAU顕在化の重症度が有意に低下した(図14B)。これは、IL-34ノックアウトマウスでは、ミクログリアおよび他の単球系列の細胞の数が少ないことに起因して、抗原提示の効率が低いことに起因する可能性がある。
IL-34のEAU転帰に対する有益な効果に基づいて、IL-34により様々な形態の先天的にもたらされた網膜変性の慢性の状態をレスキューすることができると仮定した。網膜変性の間にIL-34産生の内在性レベルが低下するかどうかを評価した。網膜変性の間のIL-34産生の内在性レベルの定量的差異を評価するために、網膜における光受容体の変性が顕在化する天然に存在するマウス変異体または遺伝子ノックアウトマウス系統から、実施例1に開示されている通り眼組織抽出物を採取した。天然の変異体系統は、RD1(Pde6brd1)、RD5(tub)、RD9(X連鎖半優性)、RD10(Pde6brd10)、およびRD16(Cep290rd16)であり、「レーバー先天性黒内障」のモデルである遺伝子ノックアウト系統は、RPGRIP(Rpgripノックアウト)、およびAIPL1(Aipl1ノックアウト)である。
図15は、視軸の遺伝子の変異に起因する網膜変性の種々の状態を有するマウスでは、正常な網膜を有する野生型マウスと比較してIL-34産生のレベルが低いことを示す。網膜抽出物を調製し、IL-34のレベルを、前に実施例1において開示されている通りELISAによって測定した。網膜変性の初期ステージのIL-34の外因性発現により、光受容体の恒常性維持によって失明を防止することができる。
(実施例4)
AAV7m8
AAV8-mIL-34ベクターの網膜下投与により網膜毒性が引き起こされる場合、硝子体内注射の使用によりこの問題を回避することができる。AAV8ベクターは網膜の多数の層を透過することができず、したがって、硝子体内注射後に光受容体への形質導入は十分ではない。in-vivo定向進化によって開発されたAAV2バリアントであるAAV7m8は、硝子体内注射後に網膜外層を標的とする(Dalkara et al., Sci Transl Med. 2013 Jun 12;5(189):189ra76. doi:10.1126/scitranslmed. 3005708)、参照により本明細書に組み込まれる。このベクターの配列は配列番号8として提供される。
このベクターを使用して、テトラサイクリン(またはドキシサイクリン)により制御されるIL-34発現を媒介するTet-OnマウスIL-34 AAVベクターを作製することができる。有用なベクターのマップが図16に提供される。この構築物では、ミニCMVプロモーターに挟まれたテトラサイクリン応答エレメント(TRE)を有する双方向プロモーターを使用する(Goudy et al., J Immunol. 2011 Mar 15; 186(6):3779-86. doi:10.4049/jimmunol.1001422、参照により本明細書に組み込まれる)。図16に示されている構築物では、プロモーターにより、リバーステトラサイクリン(tetracline)トランス活性化因子(rtTA)およびマウスIL-34の両方の発現が駆動される。しかし、ヒトIL-34、またはそのバリアント、断片および融合タンパク質も構築物に導入することができる。テトラサイクリンなしではIL34は発現されない。テトラサイクリン(またはドキシサイクリン)がもたらされると、rtTAがテトラサイクリンに結合し、次いで、TREに結合し、その結果、ミニCMVプロモーターが活性化され、IL-34が発現される。
pAAV-Tet-On-mIL34の配列が配列番号9として提供される。このベクターは、以下のエレメントを含む:
左側ITR:5134-26;BGHポリA(相補的):39~263
rtTAコード配列(相補的):264~1010
ミニCMVプロモーター(相補的):1011~1070
Tet応答エレメント:1071~1327
ミニCMVプロモーター:1328~1397
マウスIL-34コード配列:1417~2124
ベータグロビンポリA:2126~2350
右側ITR:2387~2523
本発明者らの発明の原理を適用することができる多くの可能性のある実施形態を考慮して、例示されている実施形態は単に本発明の例であり、本発明の範囲に対する限定とみなされるべきではないことが認識されるべきである。そうではなく、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、これらの特許請求の範囲の範囲および主旨に入る全てが本発明者らの発明であると主張する。