以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明に好適に用いられる粉粒体の散布装置の一実施形態が示されている。図1に示す散布装置1は、粉粒体Pを内部に一時的に貯蔵するホッパー2と、ホッパー2から排出された粉粒体Pを一方向(搬送方向X)に搬送して、連続搬送される基材100上に散布する搬送手段3とを備えている。ホッパー2は、搬送手段3と、後述する受取手段30との上方に位置している。基材100は、例えば図1に示すように、搬送ロールやベルトコンベア等の公知の搬送装置により連続搬送することができる。なお、基材100及びその搬送装置は、散布装置1を構成するものではない。
図1に示すホッパー2は、上底が下底より長い台形形状となっている貯蔵部20と、該貯蔵部20の下端に連接され、該側面視において長方形形状をなす直方体形状の排出部21とを備える。貯蔵部20は、その内部に空間を有し、該空間に粉粒体Pを一時的に貯蔵できるようになっている。粉粒体Pは、貯蔵部20の上部開口を通じ、粉体供給装置90によって貯蔵部20内の空間に供給される。排出部21は、その内部に形成された粉粒体Pの移動路22と、排出部21の下端に形成された粉粒体Pの排出口23とを有する。貯蔵部20の内部空間、移動路22及び排出口23はそれぞれ連通しており、移動路22を介して、一時的に貯蔵された粉粒体Pを排出口23から排出できるようになっている。
図1に示す搬送手段3は、ホッパー2から排出された粉粒体Pを受け取る平板状の受取手段30と、受取手段30を振動させる振動発生手段31とを備える。搬送手段3は、粉粒体Pと接触する部位である受取手段30の上面30aと、排出口23との間に所定の間隔Gが形成されるように配置されている。振動発生手段31は、粉粒体Pと接触しない部位である受取手段30の下面30bに固定されている。振動発生手段31は、これを作動させて振動を発生させることによって、振動発生手段31と接触している受取手段30に振動を伝播させ、受取手段30上の粉粒体Pを所定の方向(搬送方向X)に搬送できるようになっている。
振動発生手段31としては、受取手段30上の粉粒体Pを所望の一方向に搬送させ得る振動成分を発生可能なものであれば良く、例えば、圧電セラミック等の圧電素子、振動フィーダ等の公知の振動発生手段が挙げられる。中でも振動フィーダは、振動発生手段31として好ましく用いられる。また、振動発生手段31の振動数は、粉粒体の搬送性並びに散布の均一性及び定量性を向上させる観点から、好ましくは50Hz以上、更に好ましくは100Hz以上であり、そして、好ましくは500Hz以下、更に好ましくは300Hz以下である。より具体的には、好ましくは50Hz以上500Hz以下であり、更に好ましくは100Hz以上300Hz以下である。振動発生手段31の振動数は、例えば後述する制御部40によって制御することができる。
散布装置1は、振動発生手段31に印加する電圧及び周波数を制御して、振動発生手段31を作動させる制御部40を備える。制御部40は、振動発生手段31の振動数及び振幅の少なくとも一方を制御して、受取手段30上の粉粒体Pの搬送状態を制御する。詳細には、振動発生手段31が作動しないように制御部40によって制御されている場合には、受取手段30は振動していないので、受取手段30上の粉粒体Pの搬送は停止又は抑制されている。この状態から振動発生手段31を作動させると、受取手段30が振動を開始することによって、受取手段30上の粉粒体Pの停止又は抑制が解除され、粉粒体Pは搬送方向Xに搬送される。その後、搬送された粉粒体Pは、図1に示すように、受取手段30の端部から落下して、受取手段30の下方を連続搬送されている基材100上に散布される。
制御部40は、上述のとおり、受取手段30の振動数及び振幅の少なくとも一方を制御して、振動の強弱を制御する機能を有する。これに加えて、制御部40は、後述する計量装置50から送信された計量データを受信できるようになっている。更に制御部40は、ホッパー2の貯蔵部20上に設置されている粉体供給装置90に接続されており、貯蔵部20内への粉粒体Pの供給も制御する機能を有する。制御部40としては、例えば制御処理用ソフトウエアがインストールされたコンピュータを用いることができる。
ホッパー2には、ホッパー2の質量と、ホッパー2内に貯蔵されている粉粒体Pの質量との合計である全質量を連続して計量可能な計量装置50が取り付けられている。連続して計量可能とは、全質量の計量が経時的に行われることを指し、具体的には計量データのサンプリングタイムが1秒以下であることをいう。計量装置50によって計量された全質量の計量データは、データが取得されるたびに、上述した制御部40に送信され、該データに基づいて、受取手段30の振動数及び振幅の少なくとも一方を制御したり、粉体供給装置90による粉粒体Pの供給も制御したりできるようになっている。計量装置50の具体例としては電気式計量器が挙げられ、具体的には、ロードセル式計量器や電磁式計量器、音叉式計量器等を用いることができる。
次に、散布装置1を用いて、連続搬送されるシート状の基材100上に粉粒体Pを散布する方法について説明する。まず、ホッパー2内に貯留されている粉粒体Pを排出口23から落下させ、搬送手段3の受取手段30上に散布する。このとき、ホッパー2内の粉粒体Pの質量は粉粒体Pの落下に伴って次第に減少していく。ホッパー2内の粉粒体Pの質量Wpは、ホッパー2の質量Whと、ホッパー2内に残存する粉粒体Pの質量Wpとの合計である全質量Wtの形で計量装置50によって連続的に計量される。ホッパー2内の粉粒体Pの質量を容易に測定する観点から、全質量Wtの連続計量に先立ち、粉粒体Pをホッパー2内に充填した状態での全質量Wtを予め測定しておくことが好ましい。
次いで、搬送手段3における受取手段30上に落下した粉粒体Pが、所定量で安定的に基材100上に散布されるように、振動発生手段31によって、受取手段30に付与される振動を制御して、粉粒体Pの搬送能力の制御を行う。粉粒体Pの搬送能力とは、単位時間当たりに搬送される粉粒体の質量、及び粉粒体Pの搬送速度の少なくとも一方を指す。
振動発生手段31による振動の制御は、具体的には以下の基準に従い行われることが好ましい。すなわち、全質量Wtを連続的に測定し、全質量Wtの単位時間当たりの変化量ΔWを算出する。任意の時間における全質量をWt1とし、該時間から所定時間t経過する前の全質量をWt2としたときに、変化量ΔWは、各時間における全質量Wt1,Wt2の差分を所定時間tで除した「(Wt2-Wt1)/t」の式として表される。上述のとおり、ホッパー2内の粉粒体Pの質量は粉粒体Pの落下に伴って次第に減少していくのに対して、ホッパー2自体の質量は不変であるから、各全質量Wt1,Wt2の大小関係は、所定時間tを経過する前の全質量Wt2のほうが大きく、「Wt1<Wt2」の関係となる。このように算出される変化量ΔWは、ホッパー2内に残存する粉粒体Pの質量Wpの減少速度に等しい。
全質量Wtの単位時間当たりの変化量ΔWは、例えば以下の方法で算出することができる。すなわち、任意の時間における全質量Wt1を所定時間s(秒)毎に計量し、計量した全質量Wt1と、所定時間t(秒)(ただし、0(ゼロ)<s<tである。)前に計量した全質量Wt2との差分を算出し、その値をt(秒)で除した値を変化量ΔWと算出することができる。変化量ΔWの具体例としては、図2に示すように、所定時間sを0.5秒とし、所定時間tを5秒としてそれぞれ設定して、0.5秒ごとに全質量Wtを測定するとともに、最新の測定値である全質量Wt1と、5秒前の測定値である全質量Wt2との差分をとり、その差分を所定時間t(同図では5秒)で除すことで、変化量ΔWを算出することができる。
このように得られた変化量ΔWに応じて、搬送手段3の搬送能力を制御し、該搬送手段3によって基材100上に散布される粉粒体Pの単位時間当たりの散布量ΔSを、単位時間当たりの目標散布量ΔStに一致させる搬送能力制御操作を行う。搬送能力制御操作において、例えば散布量を単位時間当たりの質量に基づいて制御する場合には、変化量ΔWと、散布量ΔSとは同一のものとみなすことができる。搬送能力制御操作において、変化量ΔWが目標散布量ΔStよりも少ない場合には、搬送手段3の搬送能力を高めて、散布量ΔSを増加させる操作を行う。また、変化量ΔWが目標散布量ΔStよりも多い場合には、搬送手段3の搬送能力を低くして散布量ΔSを減少させる操作を行う。
本発明における粉粒体Pの搬送能力を制御する操作は、最新の搬送能力制御操作と、その直前に行われた搬送能力制御操作との間の時間uが、直前に行われた搬送能力制御操作において算出された変化量ΔWに応じて変化するように制御されることを特徴の一つとしている。つまり、最新の搬送能力制御操作の直前に行われた搬送能力制御操作として行われる第1の搬送能力制御操作から所定時間u(秒)(ただし、0<s≦u<tである。)後に、最新の搬送能力制御操作として行われる第2の搬送能力制御操作を行うものである。このような構成となっていることによって、直前に行われた搬送能力制御操作の結果が適切であったか否かを早期にモニタリングすることができるので、粉粒体の散布量をより早期に一定にすることができ、その結果、粉粒体供給を安定的に行うことができるとともに、粉粒体の散布を、ロスが少なく且つ散布誤差を低減させて安定的に行うことができる。以下の説明では、変化量ΔWと、散布量ΔSとを同一のものとして説明し、第1の搬送能力制御操作を「第1制御操作」ともいい、第1制御操作に連続して行われる第2の搬送能力制御操作を「第2制御操作」ともいう。
所定時間u(秒)は、第1制御操作において制御された粉粒体Pの単位時間当たりの散布量ΔSが目標散布量ΔStと一致していない場合には、短くなるように制御されることが好ましい。また、所定時間u(秒)は、第1制御操作において制御された粉粒体Pの単位時間当たりの散布量ΔSが目標散布量ΔStと一致している場合には、同一又は長くなるように制御されることも好ましい。これらの場合の所定時間uの制御は、いずれも制御部40によって行うことができる。
散布量ΔSが目標散布量ΔStと一致していない場合には、粉粒体の散布をより安定的に行う観点から、次の搬送能力制御操作をより早期に行って散布量ΔSを制御する必要があるので、第1制御操作が行われたあと早期に第2制御操作が行われ、散布量ΔSが目標散布量ΔStと一致するように制御される。一方、散布量ΔSが目標散布量ΔStと一致している場合には、粉粒体の散布が安定的に行われているので、次の搬送能力制御操作は必ずしも早期に行う必要がない。したがって、後者の場合、時間uは、粉粒体散布におけるモニタリングの欠落が生じない最大時間であるt(秒)未満の時間で制御することができる。このような構成とすることによって、散布量ΔSが目標散布量ΔStと一致していない場合には、変化量ΔWを早期且つ精密に算出して、散布量ΔSの制御を応答性高く行うことができるとともに、散布量ΔSが目標散布量ΔStと一致している場合には、制御部40における演算負荷を少なくできるという利点を有する。なお、目標散布量ΔStと一致するとは、目標散布量ΔStを基準とする一定の範囲内に、散布量ΔSが含まれることを包含する意味である。
図2は、粉粒体の質量計測と、粉粒体の散布量とに基づいて、時間uを制御する方法の具体例を示すグラフである。本実施形態においては、まず、目標散布量ΔStを基準値として、基準値±(基準値×5%)の範囲の閾値を設定し、この範囲内に散布量ΔSが含まれれば、目標散布量ΔStと一致すると判定するようにしておく。この閾値は、例えば制御部40で設定することができる。次いで、時間sを0.5秒、時間tを5秒として設定して粉粒体Pの散布を開始し、5秒当たりの全質量Wの変化量に相当する第1回目の散布量ΔS1を測定し、該散布量ΔS1に応じて、第1回目の搬送能力制御操作を行う。測定された散布量ΔS1と、目標散布量ΔStとを比較して、散布量ΔS1が目標散布量ΔStの範囲外であることを制御部40が判定し、この判定に基づいて、該制御部40が振動発生手段31から発生する振動を制御する。図2に示す散布量ΔS1は、目標散布量ΔStの下限値を下回っているので、粉粒体Pの搬送能力が増加するように制御される。これとともに、制御部40による前記判定に基づいて、次の搬送能力制御操作を開始する時間u1が1秒となるように、制御部40によって制御される。
続いて、時間u1の経過後に、5秒当たりの全質量Wの変化量に相当する第2回目の散布量ΔS2を測定し、該散布量ΔS2に応じて、第2回目の搬送能力制御操作を行う。測定された散布量ΔS2と、目標散布量ΔStとを比較して、散布量ΔS2が目標散布量ΔStの範囲内であることを制御部40が判定し、この判定に基づいて、該制御部40が振動発生手段31から発生する振動を制御する。図2に示す散布量ΔS2は、目標散布量ΔStの範囲内であるので、粉粒体Pの搬送能力が抑制されるか、あるいは一定となるように制御される。これとともに、制御部40による前記判定に基づいて、次の搬送能力制御操作を開始する時間u2が、時間u1よりも長い時間である2.5秒となるように、制御部40によって制御される。時間u2が時間u1よりも長い時間となるように制御される理由の一つとして、散布量ΔS2が粉粒体の散布が安定的に行われる範囲に制御されていると判定されているので、散布量ΔS2を維持できる搬送能力を維持していれば、粉粒体の散布を安定的に行うことができ、次の搬送能力制御操作を早期に行う必要がないことが挙げられる。
更に、時間u2の経過後に、5秒当たりの全質量Wの変化量に相当する第3回目の散布量ΔS3を測定し、該散布量ΔS3に応じて、第3回目の搬送能力制御操作を行う。図2に示す散布量ΔS3は、上述した散布量ΔS2と同様に目標散布量ΔStの範囲内となっているので、散布量ΔS3が目標散布量ΔStの範囲内であることを制御部40が判定し、この判定に基づいて、該制御部40が振動発生手段31から発生する振動が一定となるように、振動発生手段31に印加する電圧及び周波数を制御する。その結果、粉粒体Pの搬送能力が一定となるように制御される。これとともに、制御部40による前記判定に基づいて、次の搬送能力制御操作を開始する時間u3が、時間u2と同一の時間である2.5秒となるように、制御部40によって制御される。この制御は、散布量ΔS3を維持できる搬送能力を維持していれば、粉粒体の散布を安定的に行うことができ、次の搬送能力制御操作を早期に行う必要がないためである。また同様に、時間u3の経過後に、5秒当たりの全質量Wの変化量に相当する第4回目の散布量ΔS4を測定し、該散布量ΔS4に応じて、第4回目の搬送能力制御操作を行う。これ以降は、上述した搬送能力及び所定時間uの制御が連続して行われる。図2に示す実施形態では、説明の便宜上、時間u3は時間u2と同一の時間に制御されている状態を説明したが、これに代えて、時間u3は、時間u2である2.5秒よりも長い時間で、且つ、粉粒体散布におけるモニタリングの欠落が生じない最大時間である時間t=5秒未満の時間で制御されていてもよい。
第(n+1)回目(ただし、nは正の整数である。)の搬送能力制御操作は、時間uの経過後に、時間t(秒)当たりの全質量Wの変化量に相当する第n回目の散布量ΔSnを測定し、搬送能力制御操作を行う。測定された散布量ΔSnと、目標散布量ΔStとを比較して、制御部40が判定し、この判定に基づいて、該制御部40が振動発生手段31から発生する振動を制御する。
詳細には、散布量ΔSnが目標散布量ΔStの範囲内である場合、散布量は目標とする量に制御されているので、粉粒体Pの搬送能力が抑制されるか、あるいは一定となるように制御される。これとともに、前記判定に基づいて、制御部40によって、第(n+1)回目の搬送能力制御操作を開始する時間uα(秒)(ただし、0<s≦uα<t)が選択され、第n回目の搬送能力制御操作から時間uα経過後に、第n回目の搬送能力制御操作に連続して、第(n+1)回目の搬送能力制御操作を行う。この場合、時間uαは、好ましくは、第(n-1)回目の搬送能力制御操作から第n回目の搬送能力制御操作までの時間uγ以上、時間t(秒)未満の時間で制御される。
散布量ΔSnが目標散布量ΔStの下限値を下回っている場合、散布量は目標とする量に達していないので、散布量が増加するように、すなわち粉粒体Pの搬送能力が増加するように制御される。これとともに、前記判定に基づいて、制御部40によって、第(n+1)回目の搬送能力制御操作を開始する時間uβ(秒)(ただし、uα≧uβ、0<s≦uβ<t)が選択され、第n回目の搬送能力制御操作から時間uβ(秒)経過後に、第n回目の搬送能力制御操作に連続して、第(n+1)回目の搬送能力制御操作を行う。この場合、時間uβは、好ましくは、第(n-1)回目の搬送能力制御操作から第n回目の搬送能力制御操作までの時間uγ未満に制御され、また、好ましくはuα>uβとなるように制御される。
散布量ΔSnが目標散布量ΔStの上限値を上回っている場合、散布量は目標とする量よりも多くなっているので、散布量が減少するように、すなわち粉粒体Pの搬送能力が減少するように制御される。これとともに、前記判定に基づいて、制御部40によって、第(n+1)回目の搬送能力制御操作を開始する時間uβが選択され、第n回目の搬送能力制御操作から時間uβ(秒)経過後に、第n回目の搬送能力制御操作に連続して、第(n+1)回目の搬送能力制御操作を行う。この場合、時間uβは、上述と同様に、好ましくは、第(n-1)回目の搬送能力制御操作から第n回目の搬送能力制御操作までの時間uγ未満に制御され、また、好ましくはuα>uβとなるように制御される。
搬送手段3の搬送能力は、例えば振動発生手段31の振動の振幅及び周波数の少なくとも一方を、制御部40を介して変更することで制御することができる。同様に、所定時間uは、粉粒体Pの単位時間当たりの散布量ΔSと目標散布量ΔStとの比較を制御部40内で行って、この比較結果に基づいて、制御部40を介して制御することができる。振動発生手段31の制御には、例えばP制御(比例制御)、PI制御又はPID制御などの公知のフィードバック制御方法を採用することができる。これらの各種の制御方法における係数は、散布対象物への散布を行う前に、試運転を行って予め決定することができる。
粉粒体の散布においては、ホッパー2内に残存する粉粒体Pの量に応じて、粉粒体Pの受取手段30への落下量に差が生じる場合があり、その結果、粉粒体の散布量にばらつきが生じてしまうことがある。このような落下量の差の発生を抑制して、粉粒体の散布を定量的且つ安定的に行う観点から、全質量Wtを連続して計量している状態において、ホッパー2の質量と、ホッパー2内の粉粒体Pの最大充填状態で質量との合計である全質量Wmに対する所定割合の質量を閾値として設定し、測定される全質量Wtが該閾値を下回ったら、初期設定質量、すなわち最大充填状態での全質量Wmとなるまで、ホッパー2内に粉粒体Pを補充する粉粒体補充操作を行うことが好ましい。この粉粒体補充操作は、先に述べた搬送能力制御操作とは独立して行われる。「独立して行われる」とは、粉粒体補充操作と搬送能力制御操作とを、別個の制御系を用いて行うこと意図するものではなく、一つの制御系のみを用い、粉粒体補充操作と搬送能力制御操作とを並列処理によって行うことも包含される。
詳細には、最大充填状態での全質量Wmを100質量%としたときに、全質量Wtは、好ましくは40質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、また、好ましくは100質量%以下に維持した状態で粉粒体Pを散布する。上述のとおり、ホッパー2自体の質量は不変であるから、経時的に測定される全質量Wtは、ホッパー2内に残存する粉粒体Pの質量の減少に伴って減少するので、例えば、最大充填状態での全質量Wmが40質量%となったとき、すなわち「全質量Wm×0.4」の値を閾値として設定し、全質量Wtが全質量Wm×0.4を下回ったら、初期設定質量となるまで粉粒体補充操作を行うことが好ましい。なお「下回ったら」とは、全質量Wtが閾値を下回ったその時点だけでなく、閾値を下回った後の時点も包含する。この粉粒体補充操作は、制御部40から粉体供給装置90に向けて動作指令を発し、粉体供給装置90によって粉粒体Pをホッパー2内に供給することで行われる。
上述した粉粒体補充操作によってホッパー2内に粉粒体Pを供給している間も、全質量Wtの計量は連続して行われている。全質量Wtの計量を正確に行って、散布量ΔSを目標散布量ΔStに一致させるように、散布量の正確且つ精密な制御を行う観点から、粉粒体補充操作を行っている間は、搬送能力制御操作を休止することが好ましい。またこれとともに、搬送能力制御操作を休止している間は、搬送手段3の搬送能力を、該搬送能力制御操作の休止直前の搬送能力に保持しておくことも好ましい。搬送能力制御操作の休止及び搬送手段3の搬送能力の保持は、第1制御操作又は第2制御操作の前又は後で行われてもよく、各制御操作の間に行われてもよい。
搬送能力制御操作の休止は、粉粒体補充操作の完了後、すなわち全質量Wtが、初期設定質量である最大充填状態での全質量Wmに達した後、全質量Wtが所定時間にわたり連続して減少したときに解除されることが好ましい。全質量Wtが所定時間にわたり連続して減少した以降は、搬送能力制御操作が再開される。このように制御されていることによって、全質量Wtの計測並びに搬送能力及び所定時間uの制御を正確にかつ精度良く行うことができ、その結果、粉粒体の散布を応答性高く且つ精度良く行うことができる。
「全質量Wtが所定時間にわたり連続して減少したとき」とは、例えば全質量Wtの計測を0.5秒ごとに連続して行っている場合には、粉粒体補充操作の完了後、全質量Wtが0.5秒前よりも少ない状態が5回継続した場合のことである。この処理は制御部40において行われ、該制御部40における判断の結果、振動発生手段31の作動指令が制御部40から振動発生手段31に向けて発せられる。
所定時間s,t,uの関係について、0<s≦u<tの関係を満たすことを条件として、t/sの値は好ましくは1以上、更に好ましくは50以上、好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下である。また、u/sの値は好ましくは1以上、更に好ましくは2以上、好ましくは100以下、更に好ましくは50以下である。また、t/uの値は好ましくは1以上、更に好ましくは2以上、好ましくは100以下、更に好ましくは50以下である。なお、上述した各時間u1,u2,u3,uα,uβ,uγはそれぞれ、所定時間uと同義である。
所定時間s,t,uは、0<s≦u<tの関係を満たすことを条件として、sの値は好ましくは0.1秒以上、更に好ましくは0.5秒以上、好ましくは10秒以下、更に好ましくは1秒以下である。また、uの値は好ましくは0.5秒以上、更に好ましくは1秒以上、好ましくは10秒以下、更に好ましくは5秒以下である。また、tの値は好ましくは1秒以上、更に好ましくは5秒以上、好ましくは300秒以下、更に好ましくは30秒以下である。これに加えて、プログラムによる制御負荷を低減させる観点から、u及びtは、それぞれsの倍数であることも好ましく、また、0<s<u<tの関係であることも好ましい。なお、上述した各時間u1,u2,u3,uα,uβ,uγはそれぞれ、所定時間uと同義である。
粉粒体Pの詰まりを抑制し、ホッパー2の排出口23から円滑に粉粒体Pを排出する観点から、受取手段30の上面30aと排出口23との間隔G(図1及び図3参照)は、粉粒体Pの最大粒子径rに対して、好ましくは1倍以上、より好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2倍以上、そして、好ましくは10倍以下、より好ましくは8倍以下、更に好ましくは5倍以下である。より具体的には、間隔Gは、粉粒体Pの最大粒子径rに対して、好ましくは1倍以上10倍以下、より好ましくは1.5倍以上8倍以下、更に好ましくは2倍以上5倍以下である。
粉粒体Pの最大粒子径rは、その形状に応じた方法で測定することができる。粉粒体Pの最大粒子径rの測定方法は、例えば乾式篩法(JIS Z8815-1994)、動的光散乱法、レーザー回折法、遠心沈降法、重力沈降法、画像イメージング法、FFF(フィールド・フロー・フラクショネーション)法、静電気検知体法、コールター法等が挙げられる。これらのうち、レーザー回折法又はコールター法で測定した最大粒子径rを採用することが、再現性及び精度の点から好ましい。
散布装置1を用いた散布の対象となる粉粒体Pとしては、例えば紙粉、パルプ、木粉、吸水性ポリマー粒子、砂糖、活性炭、小麦粉、ポリエチレンペレット、ポリプロピレンペレット、ポリエチレンテレフタレートチップ、ポリカーボネートチップ、ポリエチレングラニュール、ポリアクリル酸ブチルビーズ等の有機物の粉粒体や、金属粉、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ガラス、石灰等の無機物の粉粒体が挙げられる。これらの粉粒体Pは、粘着剤等のバインダーが更に混合、添加又は被覆され、粘着性を有するものとなっていてもよい。粉粒体Pの形状は特に制限されず、例えば、球状、碁石状、楕円形、楕円柱、針状、キュービック状等が挙げられる。
基材100は、例えばシート状の基材や、シート状の基材の上に組成物や機能性を有する材料が塗布又は散布された積層体等が挙げられる。シート状の基材としては、各種製法による繊維シート、不織布、樹脂フィルム、織物、編物、紙等、及びこれらのうちの同種又は異種のものを複数枚積層した積層体等が挙げられる。シート状の基材の上に材料が塗布又は散布された積層体としては、例えば塩などの電解質が散布された積層体や、ホットメルト接着剤、被酸化性金属及び水を含む発熱組成物等が塗布された積層体等が挙げられる。
散布装置1を用いて、連続搬送されるシート状の基材上に粉粒体を散布する粉粒体の散布方法の一例として、被酸化性金属の粒子、及び水を含む発熱シートを製造する際に、連続搬送される繊維シートからなるシート状の基材上に、高吸水性ポリマーの粒子、金属粒子、固形の電解質等を散布して、発熱組成物を形成する方法が挙げられる。この発熱組成物の層に、塩化ナトリウム等の電解質や吸水性ポリマーといった粉粒体を、本発明の散布装置を用いて散布することにより、これら粉粒体が均一な状態で配置された発熱体を得ることができる。このような発熱体であれば、発熱ムラの少ない、優れた発熱特性を得られることが期待できる。なお、本発明の装置及び粉粒体の散布方法は、発熱体の製造方法において好ましいものであるが、他の機能性シートの製造方法にも適用可能である。例えば、連続搬送される繊維シートからなるシート状の基材上に、吸水性ポリマーの粒子を散布し、吸水性シートを製造することができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、排出口23から排出された粉粒体Pを、受取手段30の搬送方向Xに対して先端部から均一に散布する観点から、搬送方向X以外からの散布を防止するために、受取手段30の側面にガイドを設けても良い。斯かる平板部材からなる受取手段30の材質は特に制限されないが、例えば、各種プラスチックや各種金属などが挙げられる。
また、移動路22における粉粒体Pの流れを定常流化させて、基材100の幅方向に均一に定量性良く粉粒体Pを散布する観点から、排出口23の平面視形状は、長方形形状、楕円形形状等の「一方向に長い形状」であることが好ましい。排出口23の平面視形状における長手方向は、粉粒体Pの搬送方向Xと交差するように配置されることが好ましく、粉粒体Pの搬送方向と直交するように配置されることが好ましい。粉粒体Pの搬送方向Xと直交する方向を幅方向としたときに、排出口23の幅方向における最大長さDに対する排出口23の長手方向における最大長さWの比は、好ましくは2以上1000以下、更に好ましくは5以上100以下である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
図1に示す構成を有する散布装置1を用いて、粉粒体(吸水性ポリマー粒子)の散布を一方向に連続搬送される基材(パルプ、搬送速度51m/分)上に行った。計量装置50としてロードセル(A&D製)を用い、時間sを0.5秒として、全質量Wtを連続して計量した。搬送能力制御操作における所定時間tは5秒とした。制御部40による振動発生手段31の制御はPI制御に基づく振幅制御を行い、時間uを、粉粒体の散布質量が(目標散布質量±目標散布質量×5%)の範囲外である場合には1秒とし、粉粒体の散布質量が(目標散布質量±目標散布質量×5%)の範囲内である場合には2.5秒となるように設定した。粉体供給装置90による粉粒体の供給は、「最大充填状態での全質量Wm×0.8」の値を閾値として設定し、計測される全質量Wtが全質量Wm×0.8を下回った時点で搬送能力制御操作を休止して、初期設定質量となるまで粉粒体補充操作を行った。搬送能力制御操作を休止してから再開するまでの時間は、0.5秒間隔で全質量Wtを計量し、全質量Wtが1.0秒前よりも少ない状態が5回継続するまでとした。これらの条件下に、50分間にわたり粉粒体の散布を行ったときの該粉粒体の散布質量を、目標散布質量に対する比率として算出し、図4(a)に示した。同様に、粉粒体の散布質量の算術平均値及び標準偏差を、目標散布質量に対する百分率として、図4(a)に示した。
〔比較例1〕
図1に示す構成を有する散布装置1を用いて、時間uを、粉粒体の散布質量と目標散布質量との関係によらず5秒に一律設定した他は、実施例1と同様に粉粒体の散布を行った。結果を図4(b)に示す。
図4(a)及び(b)に示すように、実施例1の制御方法では、比較例1の制御方法と比較して、散布量が目標散布量を超過する回数が少なく、粉粒体の散布量が応答性高く制御されていることが判る。これに加えて、実施例1の制御方法では、散布量のばらつきを示す標準偏差が比較例1の制御方法よりも小さくなっているので、粉粒体の散布量を高い精度で一定とすることができる。したがって、本発明によれば、粉粒体の散布量を一定にして、粉粒体の散布を少ない誤差で且つ高い制御応答性で安定的に行うことができる。