従来、SDI(Serial Digital Interface)信号等の映像信号をIPパケット化し、汎用のイーサネット(登録商標)ネットワーク上を伝送するIP番組制作システムの標準化がSMPTE(米国映画テレビ技術者協会)で進展している。
図12は、従来の映像伝送システムの全体構成を示す概略図である。この映像伝送システム100は、IP番組制作に用いるシステムであり、送信側のカメラ101、送信機102及びクロック生成回路103、並びに受信側の受信機104、分配器105、モニタ106、映像位相測定器107及びクロック生成回路108を備えて構成される。送信機102及び受信機104は、ネットワークスイッチ109が設置されたネットワーク110を介して接続される。
送信機102は、カメラ101から映像を含むSDI信号を受信してRTP(Real-time Transport Protocol)パケットを生成し、RTPパケットのRTPヘッダに、クロック生成回路103により生成されたクロックに基づくタイムスタンプを付与し、IP信号を生成して送信する。IP信号は、ネットワーク110を介して受信機104へ送信される。
受信機104は、送信機102から送信されたIP信号を、ネットワーク110を介して受信し、IP信号に含まれるRTPパケットのRTPヘッダからタイムスタンプを取得してSDI信号を生成し、これを再生SDI信号として送信する。再生SDI信号は、分配器105にて分配され、モニタ106及び映像位相測定器107へ送信される。
モニタ106は、受信機104から送信された再生SDI信号を受信し、再生SDI信号から映像を抽出して画面表示する。映像位相測定器107は、受信機104から送信された再生SDI信号を受信し、再生SDI信号の位相を測定し、再生SDI信号の位相を調整するための情報をユーザへ提示する。
図12に示した映像伝送システム100における送信側及び受信側は、非同期で動作することが一般的であるが、IP番組制作システムでは、送信側及び受信側を同期させて動作させる方式が採用されている。
この同期方式は、送信側と受信側との間で伝送されるIP信号を介して、送信側のクロックと受信側のクロックとの間で同期をとる方式である。つまり、この方式は、送信側及び受信側の同期信号源(クロックドメイン)間で同期をとる方式であり、両クロックは同じ周波数で動作する。これにより、送信側のクロックと受信側のクロックとが同期した状態で、受信側で再生される映像信号の位相を、送信側の映像信号に同期させることができる。
SMPTEは、この同期信号源の間の同期方法及び同期信号源からの映像信号の位相再生方法について、標準規格を発行している(例えば、非特許文献1,2を参照)。
具体的には、同期プロトコルとしてPTP(Precision Time Protocol)を用いることで、PTPマスター及びPTPスレーブは、時刻情報パケットを定期的に送受信する。これにより、PTPスレーブの時刻情報をPTPマスターの時刻情報に同期させることができる。
このPTPを用いた同期方式の例が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の技術は、PTPにより時刻同期した複数の送信機、及び受信機を備えて構成される映像伝送システムにおいて、複数の送信機がシーケンス番号を合わせることなく、同一のシーケンス番号を設定して映像信号を送信するものである。
さらに、PTPマスターのクロックをGPS(全地球測位システム)信号に同期させることで、PTPマスターの時刻情報及びPTPスレーブの時刻情報を、UTC(協定世界時)の絶対時刻にナノ秒レベルの誤差で同期させることができる。
図12に示した映像伝送システム100の例では、高精度時刻信号源であるPTPマスター(図示せず)と、送信側の送信機102並びに受信側の受信機104及び映像位相測定器107であるPTPスレーブとにより、同一時刻情報を用いた同期が可能となる。同様に、特許文献1の映像伝送システムでは、異なる機器間または異なる場所に設置された装置間においても、同一時刻情報を用いた同期が可能となる。
ところで、映像信号の位相を再生する際に用いる演算式として、1970年1月1日午前0時0分0秒(SMPTE Epoch)の時刻を基準とする関係式が規定されている(例えば、非特許文献1,2を参照)。この関係式を用いることにより、再生SDI信号の位相である映像フレーム同期信号及びライン同期信号を再生することができる。
映像フレーム同期信号を再生するための関係式として、以下の式が用いられる。
[数1]
NextAlignmentPoint=(int(t/(H×V×T)+1)×(H×V×T))
・・・(1)
NextAlignmentPointは、映像フレーム同期信号に相当するデータであり、映像フレーム同期信号を再生するための次の調整ポイントを示す。tは、SMPTE Epochを基準とした時刻を示す変数である。Hは、映像フレームにおける1ラインのサンプル数を示し、Vは、映像フレームのライン数を示し、Tは、T=1/SRにより算出されるサンプリングクロックの周期である。SRは、サンプリングクロックの周波数を示す。
また、ライン同期信号を再生するための関係式として、以下の式が用いられる。
[数2]
SampleWordNumber=(int(t/T)+P)%H ・・・(2)
[数3]
LineNumber=(int(((t/T)+P-HA)/H)%V)+1 ・・・(3)
SampleWordNumberは、ライン同期信号に相当するデータであり、サンプルワード番号を示す。Pは、水平アライメントのタイミング位置を示す。LineNumberは、ライン同期信号に相当するデータであり、ライン番号を示し、HAは、アクティブラインのサンプル数を示す。%は、割算結果の余りを示す。
図13は、前記関係式(1)~(3)に使用するパラメータを説明する図であり、前述の非特許文献1のSMPTE ST2059-1:2015から抜粋したものである。
図13には、750ラインプログレシブ方式(1280×720アクティブイメージエリア)を規定するSMPTE ST296規格、1125ラインプログレシブ方式及びインターレース方式(1920×1080アクティブイメージエリア)を規定するSMPTE ST274規格、及び1125ラインプログレシブ方式(2048×1080イメージコンテナ)を規定するSMPTE ST2048-2規格における映像信号のテレビジョン方式において、フレームレート、参照規格システム番号、水平アライメントのタイミング位置P、1ラインのサンプル数H、アクティブラインのサンプル数HA、ライン数V及びサンプリングクロックの周波数SRが示されている。
図12に示した映像伝送システム100の受信側の映像位相測定器107では、前記関係式(1)~(3)を用いることにより、基準となる映像信号の位相情報を生成する。以下、映像位相測定器107による従来の位相再生方法について説明する。
〔映像位相測定器107〕
図14は、映像位相測定器107の構成を示すブロック図である。この映像位相測定器107は、SDI信号受信部111、位相情報生成部112、PTPクロック受信部113、基準位相情報生成部114及び位相比較部115を備えている。
SDI信号受信部111は、受信機104から送信された再生SDI信号を、分配器105を介して受信する。位相情報生成部112は、SDI信号受信部111により受信された再生SDI信号に基づいて、再生SDI信号の位相情報を生成する。具体的には、位相情報生成部112は、再生SDI信号に含まれるライン毎のタイミング信号に基づいて、1/60秒毎の映像フレームの先頭位置等を判定する。そして、位相情報生成部112は、映像フレームの先頭位置等に基づいて、映像フレーム同期信号及びライン同期信号を再生SDI信号の位相情報として生成し、位相比較部115に出力する。
PTPクロック受信部113は、当該映像位相測定器107がPTPを用いたPTPスレーブとして、PTPマスター(図示せず)からPTPクロックを受信することで、クロック生成回路108-1として機能する。PTPクロック受信部113は、PTPクロックをカウントし、カウント値をPTPタイムスタンプカウント値として求める。
基準位相情報生成部114は、PTPクロック受信部113により求めたPTPタイムスタンプカウント値を変数tとし、予め設定された水平アライメントのタイミング位置P、1ラインのサンプル数H、アクティブラインのサンプル数HA、ライン数V及びサンプリングクロックの周期Tを用いて、前記関係式(1)~(3)の演算を行う。前述のとおり、周期Tは、T=1/SR(サンプリングクロックの周波数)により定められる。
基準位相情報生成部114は、演算により、現時刻における映像フレーム同期信号に相当する次の調整ポイントNextAlignmentPoint、並びにライン同期信号に相当するサンプルワード番号SampleWordNumber及びライン番号LineNumberを求める。基準位相情報生成部114は、これらの情報を、受信側のクロックに基づく現時刻を基準とした基準位相情報として位相比較部115に出力する。
これにより、基準位相情報生成部114において、現時刻の映像信号の基準位相である映像フレーム同期信号及びライン同期信号が再生され、基準位相情報として生成される。
位相比較部115は、位相情報生成部112により生成された再生SDI信号の位相情報と、基準位相情報生成部114により生成された基準位相情報とを用いて、両位相を比較すると共に、再生SDI信号の位相を調整するための調整情報を画面表示する。
これにより、ユーザは、基準位相に対する再生SDI信号の位相のずれを確認することができる。つまり、ユーザは、再生SDI信号の位相が後述する引込範囲に収まっているか否かを確認することができる。
一般に、受信機104から送信される再生SDI信号の位相は、受信機104の後段に接続される機器(例えばモニタ106、映像スイッチャ等)が再生SDI信号を受信可能な範囲の位相ずれ(引込範囲)に収まっていることが必要である。なぜならば、再生SDI信号の位相が引込範囲に収まっていない場合には、モニタ106等は、再生SDI信号を正常に受信することができず、表示する映像に位相ずれが現れ、正しい映像が表示されないからである。
このため、ユーザは、再生SDI信号の位相を確認し、当該位相が引込範囲に収まっていないことを確認した場合、当該位相を引込範囲に収めるための位相調整を行うことが必要となる。
図15は、映像位相測定器107の画面を説明する図である。位相比較部115は、例えば横軸を1映像フレームにおける1ラインのサンプル数H(2200ピクセル)とし、縦軸を1映像フレームにおけるライン数V(1125ライン)として、予め設定された引込範囲を画面表示する。引込範囲は、1映像フレームの中央のライン番号を基準として、所定ライン数だけ前後した範囲とする。
位相比較部115は、基準位相情報の示す映像フレーム同期信号及びライン同期信号に基づいて、1映像フレームの枠内の中心位置(固定位置)に基準位相のマーク(十字印)を表示する。この基準位相は、受信側のクロックに基づいた位相である。
また、位相比較部115は、再生SDI信号の位相情報の示す映像フレーム同期信号及びライン同期信号に基づいて、1映像フレームの枠内の位置を算出し、当該位置に再生SDI信号の位相のマーク(丸印)を表示する。
これにより、ユーザは、この画面から、映像フレームが2200ピクセル及び1125ラインであるハイビジョンの場合における基準位相と再生される映像信号の位相との間の関係を一目で確認することができ、位相ずれの程度を認識することができる。また、ユーザは、再生される映像信号の位相が引込範囲に収まっているか否かを判断することができる。
そして、ユーザは、再生SDI信号の位相が引込範囲に収まっていないと判断した場合、受信機104の所定のパラメータを手動にて変更する。具体的には、ユーザは、受信機104に備えたバッファ(IP信号を格納するバッファ)に格納されるIP信号のバッファ設定量のパラメータを変更する。
この場合、受信機104は、ユーザの操作に従い、新たなバッファ設定量のパラメータを入力する。そして、受信機104は、バッファに格納されたIP信号のデータ量が新たなバッファ設定量に到達したときに、当該バッファからIP信号を読み出し、IP信号からRTPパケットを抽出する等の一連の処理を行うことで、再生SDI信号を生成する。
受信機104は、再生SDI信号を、分配器105を介してモニタ106及び映像位相測定器107へ送信する。これにより、新たなバッファ設定量のパラメータに応じたタイミングで再生SDI信号が生成され、送信される。
そして、映像位相測定器107の位相情報生成部112により、再生SDI信号に含まれるライン毎のタイミング信号に基づいて、再生SDI信号の位相情報が生成される。また、位相比較部115により、その位相情報に対応する位置、すなわち変更されたバッファ設定量による読み出しタイミングに対応する位置に、再生SDI信号の位相のマーク(丸印)が表示される。
ユーザは、再生SDI信号の位相が引込範囲に収まるように、前述のパラメータであるバッファ設定量を手動にて変更する。これにより、ユーザは、受信機104のバッファ量を変化させ、映像信号の遅延時間を変更することで、再生SDI信号の位相を調整することができる。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、SDI信号をIPパケット化してネットワーク伝送する映像伝送システムにおいて、送信機及び受信機にてクロックが同期している状態で、受信機が、RTPパケットから取得したタイムスタンプ(受信タイムスタンプ値)及びそのときのタイムスタンプに基づいて、IP信号の伝送に関する遅延時間を算出し、当該遅延時間及び予め設定されたSDI/IPの変換処理に関する遅延時間を考慮した再生SDI信号の位相情報を生成し、受信タイムスタンプ値を基準とした基準位相情報を生成することを特徴とする。
これにより、映像信号の位相を調整するための専用の測定器を用いることなく、受信機にて、その調整に必要な情報を簡易に生成して提示することができる。ユーザは、これらの情報を用いて、映像信号の位相を調整することができる。
〔映像伝送システム〕
まず、IP番組制作の映像伝送システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態による受信機を含む映像伝送システムの全体構成を示す概略図である。この映像伝送システム1は、IP番組制作に用いるシステムであり、送信側(例えばスタジオ)のカメラ101、送信機2及びクロック生成回路103、並びに受信側(例えば副調整室)の受信機3、モニタ106及びクロック生成回路108を備えて構成される。送信機2及び受信機3は、ネットワークスイッチ109が設置されたネットワーク110を介して接続される。
送信機2は、図12に示した送信機102と同様に、カメラ101からSDI信号を受信してRTPパケットを生成し、RTPパケットのRTPヘッダに、クロック生成回路103により生成されたクロックに基づくタイムスタンプを付与し、IP信号を生成して送信する。IP信号は、ネットワーク110を介して受信機3へ送信される。送信機2の詳細については後述する。
受信機3は、図12に示した受信機104と同様に、送信機2から送信されたIP信号を、ネットワーク110を介して受信し、IP信号に含まれるRTPパケットのRTPヘッダからタイムスタンプを取得し、再生SDI信号を生成してモニタ106へ送信する。また、受信機3は、再生SDI信号の位相を測定し、その位相を調整するための情報をユーザへ提示する。受信機3の詳細については後述する。
この映像伝送システム1は、図12に示した映像伝送システム100と同様に、PTPを用いることで、送信側のクロックと受信側のクロックとが同期する。つまり、映像伝送システム1では、両クロックが同期している状態で、各種処理が行われる。
〔送信機2〕
次に、図1に示した映像伝送システム1の送信機2について詳細に説明する。図2は、送信機2の構成を示すブロック図である。この送信機2は、SDI信号受信部20、RTPパケット化部21、タイムスタンプ付与部22、IP信号送信部23及びクロック生成回路103-1を備えている。IP信号送信部23は、IP信号を格納するバッファ23’を備えている。
SDI信号受信部20は、カメラ101からSDI信号を受信し、SDI信号をRTPパケット化部21に出力する。RTPパケット化部21は、SDI信号受信部20からSDI信号を入力し、SDI信号の映像をRTPペイロード内に搭載することによりRTPパケット化し、RTPパケットを生成する。そして、RTPパケット化部21は、RTPパケットをタイムスタンプ付与部22に出力する。
タイムスタンプ付与部22は、RTPパケット化部21からRTPパケットを入力すると共に、クロック生成回路103-1からPTPタイムスタンプカウント値を入力する。
タイムスタンプ付与部22は、映像フレームの先頭のRTPパケットを入力したタイミングのPTPタイムスタンプカウント値をRTPタイムスタンプ値として保持し、映像フレーム毎に、RTPパケットのRTPヘッダに同一のRTPタイムスタンプ値を付与する。これにより、1映像フレームに対応する全てのRTPパケットのRTPヘッダには、同一のRTPタイムスタンプ値が付与される。そして、タイムスタンプ付与部22は、RTPタイムスタンプ値を含むRTPパケットをIP信号送信部23に出力する。タイムスタンプ付与部22及びクロック生成回路103-1の詳細については後述する。
IP信号送信部23は、タイムスタンプ付与部22からRTPタイムスタンプ値を含むRTPパケットを入力し、RTPパケットを含むIP信号を生成してバッファ23’に格納する。そして、IP信号送信部23は、所定の条件を満たすタイミングにて、バッファ23’からIP信号を読み出し、IP信号を、ネットワーク110を介して受信機3へ送信する。
図3は、図2に示したタイムスタンプ付与部22の入出力信号及び処理を説明する図であり、図4は、タイムスタンプ付与部22の処理を示すフローチャートである。
クロック生成回路103-1は、PTPクロックを発振する発振器及びPTPタイムスタンプカウンタ24を備えている。PTPタイムスタンプカウンタ24は、発振器からPTPクロックを入力し、PTPクロックをカウントすることで、ある時刻における(SMPTE Epochからの)カウント値を求める。そして、PTPタイムスタンプカウンタ24は、ある時刻のカウント値をPTPタイムスタンプカウント値としてタイムスタンプ付与部22に出力する。
タイムスタンプ付与部22は、RTPパケット化部21からタイムスタンプがRTPヘッダに付与されていないRTPパケット(RTPタイムスタンプ値なし)を入力する(ステップS401)。タイムスタンプ付与部22は、入力したRTPパケットが映像フレームの境界のパケットであるか否か、すなわち入力したRTPパケットが映像フレームの先頭のパケットであるか否かを判定する(ステップS402)。
具体的には、タイムスタンプ付与部22は、RTPヘッダに格納された映像フレームのタイムスタンプ値を用いて、前述の判定を行う。タイムスタンプ値が変化した場合、映像フレームの先頭のパケットであると判定され、タイムスタンプ値が変化しない場合、映像フレームの先頭のパケットでないと判定される。
タイムスタンプ付与部22は、ステップS402において、入力したRTPパケットが映像フレームの先頭のパケットであると判定した場合、すなわち映像フレームの境界のパケットであると判定した場合(ステップS402:Y)、PTPタイムスタンプカウンタ24からPTPタイムスタンプカウント値を入力する。そして、タイムスタンプ付与部22は、これをRTPタイムスタンプ値に設定して保持し(ステップS403)、ステップS404へ移行する。
一方、タイムスタンプ付与部22は、ステップS402において、入力したRTPパケットが映像フレームの先頭のパケットでないと判定した場合、すなわち映像フレームの境界のパケットでないと判定した場合(ステップS402:N)、ステップS404へ移行する。
タイムスタンプ付与部22は、ステップS402(N)またはステップS403から移行して、RTPパケットのRTPヘッダに、保持したRTPタイムスタンプ値を付与する(ステップS404)。そして、タイムスタンプ付与部22は、RTPヘッダにタイムスタンプが付与されたRTPパケット(RTPタイムスタンプ値あり)をIP信号送信部23に出力する(ステップS405)。
これにより、1映像フレームに対応する全てのRTPパケットのRTPヘッダには、同一のRTPタイムスタンプ値が付与される。このRTPタイムスタンプ値は、当該映像フレームの境界である先頭のRTPパケットの入力タイミングにおけるPTPタイムスタンプカウント値である。
SMPTE ST2110の規格には、同一の映像フレーム内のRTPパケットのタイムスタンプ値は同一になることが規定されており、タイムスタンプ付与部22は、この規格に準拠した処理を行うこととなる。すなわち、タイムスタンプ付与部22は、次の映像フレームの先頭のRTPパケットを入力するまでの間、同一のRTPタイムスタンプ値を継続してRTPパケットのRTPヘッダに付与することとなる。
〔受信機3〕
次に、図1に示した映像伝送システム1の受信機3について詳細に説明する。図5は、本発明の実施形態による受信機3の構成を示すブロック図である。この受信機3は、IP信号受信部30、タイムスタンプ取得部31、RTPデパケット化部32、SDI信号送信部33、位相測定部10及びクロック生成回路108-1を備えている。IP信号受信部30は、IP信号を格納するバッファ30’を備えている。
IP信号受信部30は、送信機2から送信されたIP信号を、ネットワーク110を介して受信し、バッファ30’に格納する。
タイムスタンプ取得部31は、バッファ30’に格納されたIP信号のデータ量(バッファ量)が所定のバッファ設定量に到達したときに、バッファ30’からIP信号を読み出す。そして、タイムスタンプ取得部31は、IP信号からRTPパケットを抽出し、RTPパケットのRTPヘッダからRTPタイムスタンプ値を取得し、RTPタイムスタンプ値を受信RTPタイムスタンプ値Q(受信タイムスタンプ値)として位相測定部10に出力する。また、タイムスタンプ取得部31は、RTPパケットをRTPデパケット化部32に出力する。
RTPデパケット化部32は、タイムスタンプ取得部31からRTPパケットを入力し、RTPペイロード内に搭載された映像を抽出することによりRTPデパケット化し、SDI信号を生成する。そして、RTPデパケット化部32は、SDI信号をSDI信号送信部33に出力する。
SDI信号送信部33は、RTPデパケット化部32からSDI信号を入力し、SDI信号を再生SDI信号としてモニタ106へ送信する。
クロック生成回路108-1は、図2及び図3に示したクロック生成回路103-1と同期しており、発振器から出力されたPTPクロックをカウントし、ある時刻のカウント値をPTPタイムスタンプカウント値として位相測定部10に出力する。
位相測定部10は、タイムスタンプ取得部31から受信RTPタイムスタンプ値Qを入力する。また、位相測定部10は、映像フレームの境界である先頭のRTPパケットの受信RTPタイムスタンプ値Qを入力したタイミングにて(タイムスタンプ取得部31により受信RTPタイムスタンプ値Qが取得されたタイミングにて)、クロック生成回路108-1からPTPタイムスタンプカウント値を入力する。そして、位相測定部10は、これをPTPタイムスタンプカウント値R(クロックタイムスタンプ値)に設定する。位相測定部10は、PTPタイムスタンプカウント値Rから受信RTPタイムスタンプ値Qを減算してIP伝送遅延時間d2を求める。
そして、位相測定部10は、予め設定されたSDI/IP遅延時間d1(第1処理遅延時間)、予め設定されたSDI/IP遅延時間d3(第2処理遅延時間)、及び算出したIP伝送遅延時間d2を考慮して、再生SDI信号の位相を測定する。位相測定部10は、再生SDI信号の位相を調整するための情報をユーザへ提示する。位相測定部10の詳細については後述する。
〔SDI/IP遅延時間d1,d3及びIP伝送遅延時間d2〕
次に、SDI/IP遅延時間d1,d3及びIP伝送遅延時間d2について説明する。図6は、これらの遅延時間を説明する図である。
図6を参照して、SDI/IP遅延時間d1は、送信機2のSDI信号受信部20がSDI信号を受信した時刻t1と、送信機2のタイムスタンプ付与部22がRTPパケットのRTPヘッダにタイムスタンプを付与した時刻t2(受信RTPタイムスタンプ値Q)との間の遅延時間(d1=Q-t1)である。SDI/IP遅延時間d1は、後述する遅延算出部11のSDI/IP遅延換算部15により求められ、固定の遅延時間が用いられる。
また、IP伝送遅延時間d2は、前述の時刻t2(受信RTPタイムスタンプ値Q)と、受信機3のタイムスタンプ取得部31が当該RTPパケットのRTPヘッダからタイムスタンプを取得した時刻t3(PTPタイムスタンプカウント値R)との間の遅延時間(d2=R-Q)である。IP伝送遅延時間d2は、後述する遅延算出部11のIP伝送遅延算出部16により算出される。
また、SDI/IP遅延時間d3は、前述の時刻t3(R)と、受信機3のSDI信号送信部33が再生SDI信号を送信した時刻t4との間の遅延時間(d3=t4-R)である。SDI/IP遅延時間d3は、後述する遅延算出部11のSDI/IP遅延換算部17により求められ、固定の遅延時間が用いられる。
受信機3から送信される再生SDI信号の位相ずれは、これらの遅延時間の和(d1+d2+d3)に起因する。
本発明の実施形態では、送信機2のクロック生成回路103-1及び受信機3のクロック生成回路108-1により生成されるPTPクロックが絶対時刻に同期していることを前提として、これらの遅延時間を求める。そして、本発明の実施形態では、前記関係式(1)~(3)を用いて、再生SDI信号の位相情報を生成する。
これにより、再生SDI信号の位相情報を簡易に生成することができ、ユーザは、専用の測定器(図12及び図14に示した映像位相測定器107)を用いることなく、再生SDI信号の位相を調整することができる。
SDI/IP遅延時間d1,d3は、予め設定された固定の遅延時間が用いられる。図2、図5及び図6に示したとおり、SDI信号とIP信号との間には、信号形式を変換するために、送信機2のIP信号送信部23にはバッファ23’が配置され、受信機3のIP信号受信部30にはバッファ30’が配置される。IP信号は、バッファ23’,30’に一時的にバッファリングされ、変換処理が行われる。
SDI/IP遅延時間d1,d3における遅延の主な要因は、これらのバッファリングによるものである。SDI信号は、一定のビットレートで送信機2にて受信され、変換処理の後、受信機3から送信される。そして、IP信号との変換の際に、バッファオーバーフローまたはアンダーフローによる信号断が生じないように、装置設計の段階で固定容量のバッファ23’,30’が用意される。
このため、SDI/IP遅延時間d1,d3は、既知の固定遅延時間として設定されるのが一般的である。例えば図3に示したPTPタイムスタンプカウンタ24を用いて、予め判明しているSDI/IP遅延に相当するカウント値のパラメータを、PTPタイムスタンプカウント値に換算することにより、SDI/IP遅延時間d1,d3を得ることができる。つまり、SDI/IP遅延時間d1,d3として、SDI/IP遅延に相当するPTPタイムスタンプカウント値が予め設定される。
〔位相測定部10〕
次に、図5に示した受信機3の位相測定部10について詳細に説明する。図7は、位相測定部10の構成を示すブロック図である。この位相測定部10は、遅延算出部11、位相情報生成部12、基準位相情報生成部13及び位相比較部14を備えている。
遅延算出部11は、タイムスタンプ取得部31から受信RTPタイムスタンプ値Qを入力すると共に、クロック生成回路108-1からPTPタイムスタンプカウント値を入力し、さらに、予め設定されたSDI/IP遅延パラメータα,βを入力する。
遅延算出部11は、映像フレームの境界である先頭のRTPパケットのRTPヘッダから取得された受信RTPタイムスタンプ値Qを入力した際に、クロック生成回路108-1から入力したPTPタイムスタンプカウント値をPTPタイムスタンプカウント値Rに設定する。そして、遅延算出部11は、PTPタイムスタンプカウント値Rから受信RTPタイムスタンプ値Qを減算し、IP伝送遅延時間d2を求める。また、遅延算出部11は、クロック生成回路108-1から入力するPTPタイムスタンプカウント値に基づいて、SDI/IP遅延パラメータα,βをSDI/IP遅延時間d1,d3に換算する。そして、遅延算出部11は、SDI/IP遅延時間d1,d3及びIP伝送遅延時間d2を位相情報生成部12に出力する。遅延算出部11の詳細については後述する。
位相情報生成部12は、タイムスタンプ取得部31から受信RTPタイムスタンプ値Qを入力すると共に、遅延算出部11からSDI/IP遅延時間d1,d3及びIP伝送遅延時間d2を入力する。また、位相情報生成部12は、予め設定された同期パラメータである水平アライメントのタイミング位置P、1ラインのサンプル数H、アクティブラインのサンプル数HA、ライン数V及びサンプリングクロックの周期Tを入力する。これらの同期パラメータは、図13に示したように、映像信号のフレームを規定するためのデータである。前述のとおり、周期Tは、T=1/SR(サンプリングクロックの周波数)により定められる。
位相情報生成部12は、受信RTPタイムスタンプ値Q、SDI/IP遅延時間d1,d3、IP伝送遅延時間d2及びこれらの同期パラメータを用いて、前記関係式(1)~(3)の演算を行い、映像フレーム同期信号及びライン同期信号を求め、再生SDI信号の位相情報を生成する。これにより、再生SDI信号の位相が再生される。そして、位相情報生成部12は、再生SDI信号の位相情報を位相比較部14に出力する。位相情報生成部12の詳細については後述する。
基準位相情報生成部13は、タイムスタンプ取得部31から受信RTPタイムスタンプ値Qを入力する。また、基準位相情報生成部13は、予め設定された同期パラメータである水平アライメントのタイミング位置P、1ラインのサンプル数H、アクティブラインのサンプル数HA、ライン数V及びサンプリングクロックの周期Tを入力する。
基準位相情報生成部13は、受信RTPタイムスタンプ値Q及びこれらの同期パラメータを用いて、前記関係式(1)~(3)の演算を行い、映像フレーム同期信号及びライン同期信号を求め、基準位相情報を生成する。これにより、基準位相が再生される。そして、基準位相情報生成部13は、基準位相情報を位相比較部14に出力する。基準位相情報生成部13の詳細については後述する。
位相比較部14は、位相情報生成部12から再生SDI信号の位相情報を入力すると共に、基準位相情報生成部13から基準位相情報を入力する。そして、位相比較部14は、図14に示した位相比較部115と同様に、位相情報及び基準位相情報を用いて、図15に示したように、両位相を比較すると共に、再生SDI信号の位相を調整するための調整情報を画面表示する。
これにより、ユーザは、基準位相に対する再生SDI信号の位相のずれを確認し、再生SDI信号の位相が引込範囲に収まっているか否かを確認することができる。そして、ユーザは、再生SDI信号の位相を引込範囲に収めるために、受信機3に備えたバッファ30’におけるバッファ設定量のパラメータを変更し、位相調整を行う。
例えば、ユーザは、再生SDI信号の位相が引込範囲に収まっておらず、基準位相よりも遅れていると判断した場合、現在設定されているバッファ設定量よりも小さいバッファ設定量に変更する。受信機3のタイムスタンプ取得部31は、ユーザの操作に従い、変更後のバッファ設定量のパラメータを入力し、当該バッファ設定量にてIP信号の読み出しを行う。これにより、IP信号の読み出しタイミングが早くなり、受信RTPタイムスタンプ値Qの取得タイミングも早くなるから、位相測定部10が設定するPTPタイムスタンプカウント値Rが小さくなり、IP伝送遅延時間d2が小さくなる。結果として、基準位相に対する再生SDI信号の位相の遅れ具合いは小さくなる。
一方、ユーザは、再生SDI信号の位相が引込範囲に収まっておらず、基準位相よりも進んでいると判断した場合、現在設定されているバッファ設定量よりも大きいバッファ設定量に変更する。受信機3のタイムスタンプ取得部31は、ユーザの操作に従い、変更後のバッファ設定量のパラメータを入力し、当該バッファ設定量にてIP信号の読み出しを行う。これにより、IP信号の読み出しタイミングが遅くなり、受信RTPタイムスタンプ値Qの取得タイミングも遅くなるから、位相測定部10が設定するPTPタイムスタンプカウント値Rが大きくなり、IP伝送遅延時間d2が大きくなる。結果として、基準位相に対する再生SDI信号の位相の進み具合いは小さくなる。
(遅延算出部11)
次に、図7に示した遅延算出部11について詳細に説明する。前述のとおり、この遅延算出部11は、PTPタイムスタンプカウント値Rから受信RTPタイムスタンプ値Qを減算してIP伝送遅延時間d2を求める。また、遅延算出部11は、クロック生成回路108-1から入力するPTPタイムスタンプカウント値に基づいて、予め設定されたSDI/IP遅延パラメータα,βをSDI/IP遅延時間d1,d3に換算する。
図8は、遅延算出部11の構成を示すブロック図である。この遅延算出部11は、SDI/IP遅延換算部15,17及びIP伝送遅延算出部16を備えている。
SDI/IP遅延換算部15は、予め設定されたSDI/IP遅延パラメータαを入力すると共に、クロック生成回路108-1からPTPタイムスタンプカウント値を入力する。そして、SDI/IP遅延換算部15は、PTPタイムスタンプカウント値に基づいて、SDI/IP遅延パラメータαをSDI/IP遅延時間d1に換算し、SDI/IP遅延時間d1を位相情報生成部12に出力する。これにより、SDI/IP遅延パラメータαの示す時間長がPTPタイムスタンプカウント値の示す時間長に換算され、SDI/IP遅延時間d1が求められる。
具体的には、SDI/IP遅延換算部15は、予め設定されたSDI/IP遅延パラメータαである遅延時間を入力する。そして、SDI/IP遅延換算部15は、その遅延時間の時間期間に入力するPTPタイムスタンプカウント値の差(遅延時間相当のPTPタイムスタンプカウント値)をSDI/IP遅延時間d1として求める。
尚、SDI/IP遅延換算部15は、予め設定されたSDI/IP遅延パラメータαを入力する代わりに、予め設定されたSDI/IP遅延時間d1を直接入力し、これを位相情報生成部12に出力するようにしてもよい。
IP伝送遅延算出部16は、タイムスタンプ取得部31から受信RTPタイムスタンプ値Qを入力し、映像フレームの境界である先頭のRTPパケットのRTPヘッダから取得された受信RTPタイムスタンプ値Qを入力した際に、クロック生成回路108-1からPTPタイムスタンプカウント値を入力する。そして、IP伝送遅延算出部16は、入力したPTPタイムスタンプカウント値をPTPタイムスタンプカウント値Rに設定する。
IP伝送遅延算出部16は、PTPタイムスタンプカウント値Rから受信RTPタイムスタンプ値Qを減算してIP伝送遅延時間d2を求め、IP伝送遅延時間d2を位相情報生成部12に出力する。
図9は、IP伝送遅延算出部16の処理を示すフローチャートである。IP伝送遅延算出部16は、タイムスタンプ取得部31から受信RTPタイムスタンプ値Qを入力する(ステップS901)。
IP伝送遅延算出部16は、入力した受信RTPタイムスタンプ値Qが変化したか否か、すなわち映像フレームの境界(入力した受信RTPタイムスタンプ値Qに対応するRTPパケットが映像フレームの先頭のRTPパケット)であるか否かを判定する(ステップS902)。具体的には、IP伝送遅延算出部16は、当該判定処理のスキャン毎に、前回入力した受信RTPタイムスタンプ値Qと今回入力した受信RTPタイムスタンプ値Qとを比較し、その変化を判定する。
前述のとおり、送信機2のタイムスタンプ付与部22において、1映像フレームに対応する全てのRTPパケットのRTPヘッダに付与されるRTPタイムスタンプ値は同じ値であるため、受信機3のタイムスタンプ取得部31において、1映像フレームに対応する全てのRTPパケットのRTPヘッダから取得される受信RTPタイムスタンプ値Qも同じ値である。このため、IP伝送遅延算出部16は、受信RTPタイムスタンプ値Qに基づいて、映像フレームの境界を判定することができる。
IP伝送遅延算出部16は、ステップS902において、受信RTPタイムスタンプ値Qが変化していないと判定した場合(ステップS902:N)、映像フレームの境界でないと判定し、ステップS901へ移行する。
一方、IP伝送遅延算出部16は、ステップS902において、受信RTPタイムスタンプ値Qが変化したと判定した場合(ステップS902:Y)、映像フレームの境界であると判定し、クロック生成回路108-1からPTPタイムスタンプカウント値を入力し、これをPTPタイムスタンプカウント値Rに設定する(ステップS903)。
IP伝送遅延算出部16は、PTPタイムスタンプカウント値Rから受信RTPタイムスタンプ値Qを減算してIP伝送遅延時間d2を求め(ステップS904)、IP伝送遅延時間d2を位相情報生成部12に出力する(ステップS905)。尚、図9において、タイムスタンプ取得部31から入力した受信RTPタイムスタンプ値Qをそのまま出力する処理は省略してある。
このように、送信機2及び受信機3間でPTPクロックが同期しているため、映像フレームの先頭のRTPパケットのRTPヘッダから取得した受信RTPタイムスタンプ値Qを、その取得時刻におけるPTPタイムスタンプカウント値Rから減算することで、IP伝送遅延時間d2を求めることができる。
図8に戻って、SDI/IP遅延換算部17は、予め設定されたSDI/IP遅延パラメータβを入力すると共に、クロック生成回路108-1からPTPタイムスタンプカウント値を入力する。そして、SDI/IP遅延換算部17は、PTPタイムスタンプカウント値に基づいて、SDI/IP遅延パラメータβをSDI/IP遅延時間d3に換算し、SDI/IP遅延時間d3を位相情報生成部12に出力する。これにより、SDI/IP遅延パラメータβの示す時間長がPTPタイムスタンプカウント値の示す時間長に換算され、SDI/IP遅延時間d3が求められる。
具体的には、SDI/IP遅延換算部17は、予め設定されたSDI/IP遅延パラメータβである遅延時間を入力する。そして、SDI/IP遅延換算部17は、その遅延時間の時間期間に入力するPTPタイムスタンプカウント値の差(遅延時間相当のPTPタイムスタンプカウント値)をSDI/IP遅延時間d3として求める。
尚、SDI/IP遅延換算部17は、予め設定されたSDI/IP遅延パラメータβを入力する代わりに、予め設定されたSDI/IP遅延時間d3を直接入力し、これを位相情報生成部12に出力するようにしてもよい。
(位相情報生成部12)
次に、図7に示した位相情報生成部12について詳細に説明する。前述のとおり、この位相情報生成部12は、受信RTPタイムスタンプ値Q、SDI/IP遅延時間d1,d3、IP伝送遅延時間d2及び予め設定された同期パラメータを用いて、前記関係式(1)~(3)の演算を行い、映像フレーム同期信号及びライン同期信号を求め、再生SDI信号の位相情報を生成する。
図10は、位相情報生成部12の処理を示すフローチャートである。位相情報生成部12は、タイムスタンプ取得部31から受信RTPタイムスタンプ値Qを入力すると共に、遅延算出部11からSDI/IP遅延時間d1,d3及びIP伝送遅延時間d2を入力する(ステップS1001)。また、位相情報生成部12は、予め設定された同期パラメータである水平アライメントのタイミング位置P、1ラインのサンプル数H、アクティブラインのサンプル数HA、ライン数V及びサンプリングクロックの周期Tを入力する(ステップS1002)。
位相情報生成部12は、受信RTPタイムスタンプ値Q、SDI/IP遅延時間d1,d3及びIP伝送遅延時間d2を加算し、加算結果を、時刻を示す変数tとして求める(ステップS1003)。
位相情報生成部12は、ステップS1003にて算出した変数t、並びに予め設定された同期パラメータである1ラインのサンプル数H、ライン数V及びサンプリングクロックの周期Tを用いて、前記関係式(1)の演算を行い、映像フレーム同期信号を求める(ステップS1004)。
また、位相情報生成部12は、ステップS1003にて算出した変数t、並びに予め設定された同期パラメータである水平アライメントのタイミング位置P、1ラインのサンプル数H、アクティブラインのサンプル数HA、ライン数V及びサンプリングクロックの周期Tを用いて、前記関係式(2)(3)の演算を行い、ライン同期信号を求める(ステップS1005)。
位相情報生成部12は、ステップS1004にて求めた映像フレーム同期信号及びステップS1005にて求めたライン同期信号を位相情報として生成し、位相情報を位相比較部14に出力する(ステップS1006)。
これにより、位相情報生成部12にて、受信RTPタイムスタンプ値Q、SDI/IP遅延時間d1,d3及びIP伝送遅延時間d2を加算して得られた時刻における映像フレーム同期信号及びライン同期信号が再生SDI信号の位相情報として生成される。
(基準位相情報生成部13)
次に、図7に示した基準位相情報生成部13について詳細に説明する。前述のとおり、基準位相情報生成部13は、受信RTPタイムスタンプ値Q及び予め設定された同期パラメータを用いて、前記関係式(1)~(3)の演算を行い、映像フレーム同期信号及びライン同期信号を求め、基準位相情報を生成する。
図11は、基準位相情報生成部13の処理を示すフローチャートである。基準位相情報生成部13は、タイムスタンプ取得部31から受信RTPタイムスタンプ値Qを入力する(ステップS1101)。また、基準位相情報生成部13は、予め設定された同期パラメータである水平アライメントのタイミング位置P、1ラインのサンプル数H、アクティブラインのサンプル数HA、ライン数V及びサンプリングクロックの周期Tを入力する(ステップS1102)。
基準位相情報生成部13は、受信RTPタイムスタンプ値Qを、時刻を示す変数tに代入することで、変数tを設定する(ステップS1103)。
基準位相情報生成部13は、ステップS1103にて設定した変数t、並びに予め設定された同期パラメータである1ラインのサンプル数H、ライン数V及びサンプリングクロックの周期Tを用いて、前記関係式(1)の演算を行い、映像フレーム同期信号を求める(ステップS1104)。
また、基準位相情報生成部13は、ステップS1103にて設定した変数t、並びに予め設定された同期パラメータである水平アライメントのタイミング位置P、1ラインのサンプル数H、アクティブラインのサンプル数HA、ライン数V及びサンプリングクロックの周期Tを用いて、前記関係式(2)(3)の演算を行い、ライン同期信号を求める(ステップS1105)。
基準位相情報生成部13は、ステップS1104にて求めた映像フレーム同期信号及びステップS1105にて求めたライン同期信号を基準位相情報として生成し、基準位相情報を位相比較部14に出力する(ステップS1106)。
これにより、基準位相情報生成部13にて、映像フレームの境界である先頭のRTPパケットのRTPヘッダにRTPタイムスタンプ値を付与した時刻(受信RTPタイムスタンプ値Qの時刻)における映像フレーム同期信号及びライン同期信号が基準位相情報として生成される。
前述のとおり、位相情報生成部12により生成される再生SDI信号の位相情報は、受信RTPタイムスタンプ値Q、SDI/IP遅延時間d1,d3及びIP伝送遅延時間d2を加算して得られた時刻における情報である。このため、再生SDI信号の位相情報と基準位相情報との間の差は、SDI/IP遅延時間d1,d3及びIP伝送遅延時間d2に起因するものとなる。
以上のように、本発明の実施形態の受信機3によれば、IP信号受信部30は、送信機2から送信されたIP信号を受信してバッファ30’に格納する。タイムスタンプ取得部31は、バッファ30’のバッファ量が所定のバッファ設定量に到達したときに、バッファ30’からIP信号を読み出し、IP信号からRTPパケットを抽出し、RTPパケットのRTPヘッダからRTPタイムスタンプ値(送信機2により付与されたタイムスタンプ)を受信RTPタイムスタンプ値Qとして取得する。
RTPデパケット化部32は、RTPパケットの映像をRTPデパケット化してSDI信号を生成し、SDI信号送信部33は、SDI信号を再生SDI信号としてモニタ106へ送信する。
クロック生成回路108-1は、図2及び図3に示したクロック生成回路103-1と同期しており、発振器から出力されたPTPクロックをカウントし、ある時刻のカウント値をPTPタイムスタンプカウント値として出力する。
位相測定部10は、タイムスタンプ取得部31が映像フレームの境界である先頭のRTPパケットのRTPヘッダから受信RTPタイムスタンプ値Qを取得したタイミングにて、クロック生成回路108-1から入力したPTPタイムスタンプカウント値をPTPタイムスタンプカウント値Rに設定する。そして、位相測定部10は、PTPタイムスタンプカウント値Rから受信RTPタイムスタンプ値Qを減算してIP伝送遅延時間d2を求める。
位相測定部10は、受信RTPタイムスタンプ値Q、予め設定されたSDI/IP遅延時間d1,d3、IP伝送遅延時間d2、及び予め設定された水平アライメントのタイミング位置P等の同期パラメータを用いて、前記関係式(1)~(3)の演算を行い、映像フレーム同期信号及びライン同期信号を求め、再生SDI信号の位相情報を生成する。
また、位相測定部10は、受信RTPタイムスタンプ値Q、及び予め設定された水平アライメントのタイミング位置P等の同期パラメータを用いて、前記関係式(1)~(3)の演算を行い、映像フレーム同期信号及びライン同期信号を求め、基準位相情報を生成する。
位相測定部10は、位相情報及び基準位相情報を用いて、両位相を比較すると共に、再生SDI信号の位相を調整するための調整情報を画面表示する。
このように、再生SDI信号を用いることなく、RTPパケットのRTPヘッダから取得した受信RTPタイムスタンプ値Qを用いて、再生SDI信号の位相情報が生成される。これにより、映像信号の位相を調整するための専用の測定器を用いることなく、受信機3にて、その調整に必要な再生SDI信号の位相情報及び基準位相情報を簡易に生成することができる。また、専用の測定器が不要になるから、ハードウェアのコストを抑えることができる。
ユーザは、基準位相に対する再生SDI信号の位相のずれを確認し、再生SDI信号の位相が引込範囲に収まっているか否かを確認することができる。そして、ユーザは、バッファ30’のバッファ設定量のパラメータを変更し、位相調整を行うことで、再生SDI信号の位相を引込範囲に収めることができる。
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。前記実施形態では、図1に示した番組制作システムは、受信機3とモニタ106とが独立した装置として構成される。これに対し、受信機3とモニタ106とが一体化した装置として構成されるようにしてもよい。