JP7355384B2 - 根粒菌および甘草の生産方法、ならびに甘草の成長促進剤 - Google Patents
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Description
<A2> 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3108である、甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株。
(根粒菌1)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3109である、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株
(根粒菌2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3108である、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株
<B2> 前記甘草が、ウラルカンゾウおよび/またはスペインカンゾウである前記の生産方法。
(根粒菌1)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3109である、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株
(根粒菌2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3108である、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株
本発明の第一の根粒菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3109である、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株に関する。
本発明の甘草の生産方法は、甘草に根粒菌を接種し、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させる栽培を行う工程を有し、前記根粒菌が、(根粒菌1)および/または(根粒菌2)である。
このような生産方法とすることで、甘草の成長を促進させながら、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させることができる。
本発明の成長促進剤は、本発明の根粒菌を含む甘草の成長促進剤とすることができる。
この成長促進剤を甘草の栽培時に利用することで、甘草の成長を促進させながら、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させることができる。
根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株(根粒菌MSPJ8株)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3109(受領番号NITE AP-3109)として寄託されている。根粒菌MSPJ8株は、甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する。根粒菌MSPJ8株の科学的性質や、遺伝子の塩基配列について以下に記載する。
(1)YM(Yeast-Mannitol)寒天培地において28℃、5日程度で約1mmの薄いクリームまたはピンク色のコロニーを形成する。
(2)培養同定・一般細菌キット(ビオメリュー・ジャパン株式会社「アピ20NE」)を用いた培地上の特徴は以下のものである。培養は29℃で2日行った。
硝酸塩の亜硝酸塩への還元(-)
インドール産生(-)
発酵(グルコース)(-)
アルギニンジヒドラーゼ(-)
ウレアーゼ(+)
加水分解(β-グルコシダーゼエスクリン)(+)
加水分解(プロテアーゼゼラチン)(-)
β-ガラクトシダーゼ(パラーニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシダーゼ)(-)
グルコース同化(+)
アラビノース同化(+)
マンノース同化(+)
マンニトール同化(+)
N-アセチルーグルコサミン同化(+)
マルトース同化(+)
グルコン酸カリウム同化(-)
カプリン酸同化(-)
アジピン酸同化(-)
リンゴ酸塩同化(+)
クエン酸三ナトリウム同化(-)
酢酸フェニル同化(-)
根粒菌MSPJ8株の16S rRNA遺伝子をコードする遺伝子の塩基配列(DNA)(16S rRNA)を、配列番号1に示す。
根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株(根粒菌BEE1株)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3108(受領番号NITE AP-3108)として寄託されている。根粒菌BEE1株は、甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する。根粒菌BEE1株の科学的性質や、遺伝子の塩基配列について以下に記載する。
(1)YM寒天培地において28℃、8日で約0.4mmの白色のコロニーを形成する。
(2)培養同定・一般細菌キット(ビオメリュー・ジャパン株式会社「アピ20NE」)を用いた培地上の特徴は以下のものである。培養は29℃で2日行った。なお、この菌の増殖は極めて遅いため、偽陰性の可能性がある。
硝酸塩の亜硝酸塩への還元(+)
インドール産生(-)
発酵(グルコース)(-)
アルギニンジヒドラーゼ(-)
レアーゼ(+)
加水分解(β-グルコシダーゼ,エスクリン)(+)
加水分解(プロテアーゼ,ゼラチン)(-)
β-ガラクトシダーゼ(パラ-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシダーゼ)(-)
グルコース同化(-)
アラビノース同化(-)
マンノース同化(+)
マンニトール同化(+)
N-アセチルーグルコサミン同化(-)
マルトース同化(-)
グルコン酸カリウム同化(-)
カプリン酸同化(-)
アジピン酸同化(-)
リンゴ酸塩同化(-)
クエン酸三ナトリウム同化(-)
酢酸フェニル同化(-)
根粒菌BEE1株の16S rRNA遺伝子をコードする遺伝子の塩基配列(DNA)(16S rRNA)を、配列番号2に示す。なお、日本DNAデータバンク(DDBJ)の配列相同性検索ソフトであるBLASTで検索した結果、同塩基配列のものは確認されなかった。
根粒菌MSPJ8株や根粒菌BEE1株は、例えば、以下のような組成の培地を用いるYM(Yeast-Mannitol)培地で、好気的な環境で静置培養や振とう培養することができる。
「stock A (100mL)」 KH2PO4:10g、K2HPO4:10g、NaCl:2g、NH4Cl:5g
「stock b (100mL)」 MgSO4・7H2O:1.8g
「stock c (100mL)」 CaCl2・2H2O:1.3g
stock solutionは、オートクレーブ後、4℃で保存。
300mLのフラスコに0.1gのyeast extract、1gのmannitol、97mLの蒸留水を入れオートクレーブで滅菌する。室温まで冷めたところで、クリーンベンチ内で3種類のストックを各1mLずつ入れ、穏やかに撹拌する。
次に、本発明の甘草の生産方法について説明する。本発明の甘草の生産方法は、甘草に根粒菌を接種し、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させる栽培を行う工程を有する。この根粒菌には、本発明の根粒菌を用いることができる。
甘草は、薬用植物として知られているマメ科の多年草である。甘草はグリチルリチン酸をはじめとする様々な機能性成分を含んでいる。それらの成分の機能として、鎮痛、鎮痙、解毒、鎮咳などの効果があげられる。甘草は広く利用されており、漢方処方の約70%に配合されている。
甘草の種には、Glycyrrhiza acanthocarpa、G. aspera、G. astragalina、G. bucharica、ロシアカンゾウ(G. echinata)、G. eglandulosa、G. foetida、G. foetidissima、スペインカンゾウ(G. glabra)、G. gontscharovii、G. iconica、G. korshinskyi、アメリカカンゾウ( G. lepidota)、G. pallidiflora、G. squamulosa、G. triphylla、ウラルカンゾウ(G. uralensis)、G. yunnanensis、新疆カンゾウ(G. inflata)があげられる。本発明の生産方法の対象となる甘草は、これらのいずれとしてもよい。
本発明の生産方法の対象となる甘草は、これらの中でも、ウラルカンゾウおよび/またはスペインカンゾウであることが好ましい。これらのカンゾウは、甘草の中でも特に広く栽培され利用されている。また、本発明の根粒菌による成長促進効果と、グリチルリチン酸含量向上効果が発揮されやすい対象である。
根粒菌は、マメ科植物の根に根粒と呼ばれる器官を形成し、そこで窒素を還元してアンモニア態窒素に変換し、宿主へと供給する共生的窒素固定を行う土壌微生物である。本発明の甘草の生産方法には、甘草に根粒を形成する根粒菌を利用する。一般的に根粒菌が確認されやすい植物はダイズが知られており、圃場のダイズはすべての個体に根粒が形成される場合が多い。しかし、甘草の根を観察しても根粒を全く見いだせない場合も多い。
グリチルリチン酸は、甘草の根に含まれる有効成分である。グリチルリチン酸の構造は以下の式1に表されるものである。グリチルリチン酸は、甘味料や調味料として用いられたり、その薬効を利用して消化性潰瘍薬や去痰約などに用いられている。
本発明の甘草の生産方法は、甘草を栽培する工程において甘草に根粒菌を接種する。甘草への根粒菌の接種は、甘草と根粒菌が接触する条件であれば共生が成立する可能性があるため、甘草の栽培段階等を鑑み、適宜、任意の方法でおこなってよい。根粒菌MSPJ8株や根粒菌BEE1株のような本発明の根粒菌を甘草に接種すると、一般的に根粒を形成しにくい甘草が根粒を形成する。
本発明の成長促進剤は、本発明の根粒菌を含む甘草の成長促進剤とすることができる。この成長促進剤は、実質的に根粒菌からなるものとしてもよい。また、根粒菌の至適培地を混合したものとしてもよいし、保管のために、冷凍等したものとしてもよい。また、甘草の生産に用いるとき、甘草への接種や甘草の栽培時に利用しやすいように、液体培地や固形培地、担体等と根粒菌とを混合した資材としてもよい。また、複数株の根粒菌を含むものとして、多種の甘草に対する成長促進剤としてもよい。
佐賀大学圃場の土壌から単離した根粒菌である、Mesorhizobium属のMSPJ8株および、Bradyrhizobium属のBEE1株を、根粒菌として用いた。
ウラルカンゾウ、スペインカンゾウを、根粒菌を接種して栽培する対象の甘草として栽培した。
砂と、硝酸カリウム等を含み甘草の培養に一般的な組成の液肥とを混合した栽培培地を用いて、甘草の栽培を行った。この栽培培地に、甘草の苗を挿し木して栽培した。この栽培培地に、甘草を挿し木して、各菌株を培養させた細菌培地を混合した。これにより、栽培培地内で、甘草の挿し木から根が形成される過程で、根粒菌が取り込まれる。甘草に取り込まれた根粒菌は、根粒を形成して、共生する。
ウラルカンゾウを用いて、MSPJ8株の接種の有無による栽培時の影響を評価した。なお、本実施例に係る図において、MSPJ8株を接種したものを「根粒菌あり」と示し、MSPJ8株を接種せずに他の条件は同じものとして栽培した対照試験を「根粒菌なし」と示す。
図2に示すように、根粒菌を接種した場合のみ、ウラルカンゾウから根粒が検出された。図3に示す根粒菌接種個体の葉における高い窒素含量は、根粒菌によって固定された窒素に起因すると考えられる。
さらに90日後の甘草のグリチルリチン酸の含量(GL含量)を図5に示す。グリチルリチン酸の含量も根粒菌を接種した場合に明らかに高い値を示していることから、ウラルカンゾウへMSPJ8株を接種した場合は、ウラルカンゾウの地上部および地下部の成長が促進されるとともに地下部のGL含量も高くなる。
スペインカンゾウを用いて、BEE1の接種の有無による栽培時の影響を評価した。なお、本実施例に係る図において、BEE1株を接種したものを「根粒菌あり」と示し、BEE1株を接種せずに他の条件は同じものとして栽培した対照試験を「根粒菌なし」と示す。このスペインカンゾウは路地に植えた場合、ほとんど根粒が形成されない。
Claims (5)
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3109である、
甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する、
根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株。 - 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3108である、
甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する、
根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株。 - 甘草に根粒菌を接種し、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させる栽培を行う工程を有し、前記根粒菌が、以下の(根粒菌1)および/または(根粒菌2)である、甘草の生産方法。
(根粒菌1)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3109である、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株
(根粒菌2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3108である、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株 - 前記甘草が、ウラルカンゾウおよび/またはスペインカンゾウである請求項3に記載の生産方法。
- 以下の(根粒菌1)および/または(根粒菌2)を含む甘草の成長促進剤。
(根粒菌1)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3109である、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株
(根粒菌2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE P-3108である、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株
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