JP7355384B2 - 根粒菌および甘草の生産方法、ならびに甘草の成長促進剤 - Google Patents

根粒菌および甘草の生産方法、ならびに甘草の成長促進剤 Download PDF

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Description

NPMD NITE P-03109 NPMD NITE P-03108
特許法第30条第2項適用 平成31年3月26日 日本作物学会主催「日本作物学会第247回講演会」のウェブサイト(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/247/0/247_92/_article/-char/ja)に要旨を発表
特許法第30条第2項適用 平成31年3月28日 筑波大学中地区第二エリアで開催された日本作物学会主催「日本作物学会第247回講演会」で発表
特許法第30条第2項適用 令和1年6月1日 三学会合同大会2019実行委員会主催「日本動物学会九州支部(第72回) 九州沖縄植物学会(第68回) 日本生態学会九州地区会(第64回) 三学会合同長崎大会 プログラム・講演要旨集 2019」に要旨を発表
特許法第30条第2項適用 令和1年6月1日 長崎大学文教キャンパスで開催された三学会合同大会2019実行委員会主催「日本動物学会九州支部(第72回) 九州沖縄植物学会(第68回) 日本生態学会九州地区会(第64回) 三学会合同長崎大会2019」で発表
本発明は、根粒菌および根粒菌を用いる甘草の生産方法に関する。また、根粒菌を含む甘草の成長促進剤に関する。
マメ科植物は根粒菌や菌根菌と共生することが知られている。根粒菌は大気中の窒素をアンモニアへ固定して宿主へ供給し、菌根菌は根に感染することでリン酸や水分等を効率よく宿主植物へ供給して成長を助けている。
例えば特許文献1は、団粒形成率が60重量%以上の担体に根粒菌を保持させることを特徴とする根粒菌接種資材の製造方法を開示している。そして、この根粒菌接種資材をマメ科植物の種子の直下等に施用することを開示している。
また、特許文献2は、アゾスピリラム菌及び根粒菌を、水分量50%~90%の担体に担持させたマメ科植物用微生物製剤を開示している。また、特許文献3は、アゾスピリラム ブラジレンスNI-10株と根粒菌とを含有するマメ科植物用微生物製剤を開示している。これらは、マメ科植物に対し優れた成長促進効果及び収量増加効果を有する微生物製剤等を開示するものである。
特開2002-097093号公報 特開平08-109110号公報 特開平08-109109号公報
甘草(カンゾウ)は、マメ科の多年草で、薬用植物であり、根を乾燥したものを生薬などとして利用されている。甘草も、マメ科植物であることから根粒菌や菌根菌と共生することが知られている。しかし、これらの微生物が共生することが甘草の成長や、甘草に含まれる機能性成分などに与える影響に関する知見はあまり公開されていない。
なお、根粒菌は、種や株による違いも大きく、特許文献1~3に開示されているような根粒菌が甘草にどのような影響を与えるかは不明であり、甘草に適したものとして検討されたものでない限り好適な影響が期待できるものではない。また、甘草の根粒菌はほとんど知られておらず、広く知られている根粒菌はダイズなどのものが多い。
甘草は、肝機能障害やアレルギーに有効とされ、消炎作用や美白作用も有すると考えられているグリチルリチン酸を含んでいる。そして、甘草は、このグリチルリチン酸の原料としても利用されている。植物におけるグリチルリチン酸のような二次代謝産物は、生育時の環境ストレスがかかったときに生産量が増え、その植物中での含有量が増加することが多い。しかし、甘草の一般的な栽培方法は、生産量等を向上させる観点から、生育時の環境ストレスを低減した方法である。このように、甘草の生産量の増加(高バイオマス)と、グリチルリチン酸の含有量の間には、トレードオフの関係が存在すると考えられる。
係る状況下、本発明の目的は、甘草の栽培に適した根粒菌および根粒菌を利用する甘草の生産方法等を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<A1> 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3109である、甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株。
<A2> 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3108である、甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株。
<B1> 甘草に根粒菌を接種し、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させる栽培を行う工程を有し、前記根粒菌が、以下の(根粒菌1)および/または(根粒菌2)である甘草の生産方法。
(根粒菌1)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3109である、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株
(根粒菌2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3108である、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株
<B2> 前記甘草が、ウラルカンゾウおよび/またはスペインカンゾウである前記の生産方法。
<C1> 以下の(根粒菌1)および/または(根粒菌2)を含む甘草の成長促進剤。
(根粒菌1)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3109である、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株
(根粒菌2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3108である、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株
本発明の根粒菌は、甘草の成長促進能や、甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する。このような根粒菌を利用することで、甘草の成長促進や、甘草のグリチルリチン酸含量を向上させることができる。
実施例における根粒菌の有無によるウラルカンゾウ栽培後のSPAD値の測定結果を示すグラフである。 実施例における根粒菌の有無によるウラルカンゾウ栽培後の根粒数の測定結果を示すグラフである。 実施例における根粒菌の有無によるウラルカンゾウ栽培後の窒素固定活性の測定結果を示すグラフである。 実施例における根粒菌の有無によるウラルカンゾウ栽培後のバイオマスの測定結果を示すグラフである。 実施例における根粒菌の有無によるウラルカンゾウ栽培後のGL含量の測定結果を示すグラフである。 実施例における根粒菌を用いて栽培したスペインカンゾウの根の像である。 実施例における根粒菌の有無によるスペインカンゾウ栽培後のGL含量の測定結果を示すグラフである。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
[本発明の根粒菌]
本発明の第一の根粒菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3109である、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株に関する。
本発明の第二の根粒菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3108である、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株に関する。
本願において、本発明の第一の根粒菌および本発明の第二の根粒菌を合わせて、本発明の根粒菌と呼ぶ場合がある。また、本発明の第一の根粒菌を単に「根粒菌1」または「根粒菌MSPJ8株」と呼び、本発明の第二の根粒菌を単に「根粒菌2」または「根粒菌BEE1株」と呼ぶ場合がある。本発明の根粒菌は、甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有し、有用である。
[本発明の甘草の生産方法]
本発明の甘草の生産方法は、甘草に根粒菌を接種し、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させる栽培を行う工程を有し、前記根粒菌が、(根粒菌1)および/または(根粒菌2)である。
このような生産方法とすることで、甘草の成長を促進させながら、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させることができる。
[本発明の成長促進剤]
本発明の成長促進剤は、本発明の根粒菌を含む甘草の成長促進剤とすることができる。
この成長促進剤を甘草の栽培時に利用することで、甘草の成長を促進させながら、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させることができる。
なお、本願において本発明の根粒菌を、本発明の甘草の生産方法や、本発明の成長促進剤に用いることができ、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
本発明者らは、甘草の栽培にあたって、微生物共生を導入することで、その微生物の感染が環境ストレスの一因としてグリチルリチン酸の含有量を向上させ、一方で根粒菌の作用により宿主植物の成長も促進させることを検討した。佐賀大学農学部圃場の土壌で生育させたウラルカンゾウやスペインカンゾウといった甘草から根粒菌を単離した。これらの根粒菌から、根粒形成能を示すものを選択し、さらに、甘草へ接種させたときの、生育やグリチルリチン酸(GL)濃度に与える影響を評価した。
佐賀大学農学部圃場の土壌で生育させたウラルカンゾウやスペインカンゾウといった甘草から67種の菌が単離され、塩基配列から19系統にまとめ、これらの中からウラルカンゾウに接種したとき根粒形成能を有するものは7系統であった。これらの単離された菌について、それぞれ選択的に甘草に接種させたときの影響を評価した。その結果、特に2つの株の単離された根粒菌が、甘草の生育を促進させ、グリチルリチン酸(GL)濃度を向上させることが見出された。本発明はこのような単離された根粒菌等に関する。
[根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株]
根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株(根粒菌MSPJ8株)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3109(受領番号NITE AP-3109)として寄託されている。根粒菌MSPJ8株は、甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する。根粒菌MSPJ8株の科学的性質や、遺伝子の塩基配列について以下に記載する。
<科学的性質>
(1)YM(Yeast-Mannitol)寒天培地において28℃、5日程度で約1mmの薄いクリームまたはピンク色のコロニーを形成する。
(2)培養同定・一般細菌キット(ビオメリュー・ジャパン株式会社「アピ20NE」)を用いた培地上の特徴は以下のものである。培養は29℃で2日行った。
硝酸塩の亜硝酸塩への還元(-)
インドール産生(-)
発酵(グルコース)(-)
アルギニンジヒドラーゼ(-)
ウレアーゼ(+)
加水分解(β-グルコシダーゼエスクリン)(+)
加水分解(プロテアーゼゼラチン)(-)
β-ガラクトシダーゼ(パラーニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシダーゼ)(-)
グルコース同化(+)
アラビノース同化(+)
マンノース同化(+)
マンニトール同化(+)
N-アセチルーグルコサミン同化(+)
マルトース同化(+)
グルコン酸カリウム同化(-)
カプリン酸同化(-)
アジピン酸同化(-)
リンゴ酸塩同化(+)
クエン酸三ナトリウム同化(-)
酢酸フェニル同化(-)
<遺伝学的性質>
根粒菌MSPJ8株の16S rRNA遺伝子をコードする遺伝子の塩基配列(DNA)(16S rRNA)を、配列番号1に示す。
これらの科学的性質や遺伝子の塩基配列の情報から、根粒菌MSPJ8株は、Mezorhizobium sp.に分類されると判断した。科学的性質や単離元の宿主が共通し、かつ、16S rRNA(日本DNAデータバンク(DDBJ)の配列相同性検索ソフトであるBLASTで検索)が100%の相同性を有する条件をすべて満足するものは存在しなかったため、根粒菌MSPJ8株は新規の株である。なお、マメ科植物と根粒菌の共生には宿主特異性が存在し、甘草由来ではない根粒菌は本根粒菌とは異なる菌であると考えられる。
[根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株]
根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株(根粒菌BEE1株)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3108(受領番号NITE AP-3108)として寄託されている。根粒菌BEE1株は、甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する。根粒菌BEE1株の科学的性質や、遺伝子の塩基配列について以下に記載する。
<科学的性質>
(1)YM寒天培地において28℃、8日で約0.4mmの白色のコロニーを形成する。
(2)培養同定・一般細菌キット(ビオメリュー・ジャパン株式会社「アピ20NE」)を用いた培地上の特徴は以下のものである。培養は29℃で2日行った。なお、この菌の増殖は極めて遅いため、偽陰性の可能性がある。
硝酸塩の亜硝酸塩への還元(+)
インドール産生(-)
発酵(グルコース)(-)
アルギニンジヒドラーゼ(-)
レアーゼ(+)
加水分解(β-グルコシダーゼ,エスクリン)(+)
加水分解(プロテアーゼ,ゼラチン)(-)
β-ガラクトシダーゼ(パラ-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシダーゼ)(-)
グルコース同化(-)
アラビノース同化(-)
マンノース同化(+)
マンニトール同化(+)
N-アセチルーグルコサミン同化(-)
マルトース同化(-)
グルコン酸カリウム同化(-)
カプリン酸同化(-)
アジピン酸同化(-)
リンゴ酸塩同化(-)
クエン酸三ナトリウム同化(-)
酢酸フェニル同化(-)
<遺伝学的性質>
根粒菌BEE1株の16S rRNA遺伝子をコードする遺伝子の塩基配列(DNA)(16S rRNA)を、配列番号2に示す。なお、日本DNAデータバンク(DDBJ)の配列相同性検索ソフトであるBLASTで検索した結果、同塩基配列のものは確認されなかった。
これらの科学的性質や遺伝子の塩基配列の情報から、根粒菌BEE1株は、Bradyrhizobium elkaniiに分類されると判断した。一方、科学的性質や16S rRNAが同一のものは発見されなかったため、根粒菌BEE1株は、新規の株である。
<培養例>
根粒菌MSPJ8株や根粒菌BEE1株は、例えば、以下のような組成の培地を用いるYM(Yeast-Mannitol)培地で、好気的な環境で静置培養や振とう培養することができる。
・培地の調製
「stock A (100mL)」 KH2PO4:10g、K2HPO4:10g、NaCl:2g、NH4Cl:5g
「stock b (100mL)」 MgSO4・7H2O:1.8g
「stock c (100mL)」 CaCl2・2H2O:1.3g
stock solutionは、オートクレーブ後、4℃で保存。
300mLのフラスコに0.1gのyeast extract、1gのmannitol、97mLの蒸留水を入れオートクレーブで滅菌する。室温まで冷めたところで、クリーンベンチ内で3種類のストックを各1mLずつ入れ、穏やかに撹拌する。
[甘草の生産方法]
次に、本発明の甘草の生産方法について説明する。本発明の甘草の生産方法は、甘草に根粒菌を接種し、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させる栽培を行う工程を有する。この根粒菌には、本発明の根粒菌を用いることができる。
[甘草]
甘草は、薬用植物として知られているマメ科の多年草である。甘草はグリチルリチン酸をはじめとする様々な機能性成分を含んでいる。それらの成分の機能として、鎮痛、鎮痙、解毒、鎮咳などの効果があげられる。甘草は広く利用されており、漢方処方の約70%に配合されている。
甘草の種には、Glycyrrhiza acanthocarpa、G. aspera、G. astragalina、G. bucharica、ロシアカンゾウ(G. echinata)、G. eglandulosa、G. foetida、G. foetidissima、スペインカンゾウ(G. glabra)、G. gontscharovii、G. iconica、G. korshinskyi、アメリカカンゾウ( G. lepidota)、G. pallidiflora、G. squamulosa、G. triphylla、ウラルカンゾウ(G. uralensis)、G. yunnanensis、新疆カンゾウ(G. inflata)があげられる。本発明の生産方法の対象となる甘草は、これらのいずれとしてもよい。
本発明の生産方法の対象となる甘草は、これらの中でも、ウラルカンゾウおよび/またはスペインカンゾウであることが好ましい。これらのカンゾウは、甘草の中でも特に広く栽培され利用されている。また、本発明の根粒菌による成長促進効果と、グリチルリチン酸含量向上効果が発揮されやすい対象である。
[根粒菌]
根粒菌は、マメ科植物の根に根粒と呼ばれる器官を形成し、そこで窒素を還元してアンモニア態窒素に変換し、宿主へと供給する共生的窒素固定を行う土壌微生物である。本発明の甘草の生産方法には、甘草に根粒を形成する根粒菌を利用する。一般的に根粒菌が確認されやすい植物はダイズが知られており、圃場のダイズはすべての個体に根粒が形成される場合が多い。しかし、甘草の根を観察しても根粒を全く見いだせない場合も多い。
本発明の甘草の生産方法では、このような根粒が見られない場合が多い甘草に対して、効率よく根粒を形成させることで根粒菌の感染による環境ストレスを甘草に与え、さらに共生によって甘草の成長も促進する。
[グリチルリチン酸]
グリチルリチン酸は、甘草の根に含まれる有効成分である。グリチルリチン酸の構造は以下の式1に表されるものである。グリチルリチン酸は、甘味料や調味料として用いられたり、その薬効を利用して消化性潰瘍薬や去痰約などに用いられている。
[接種]
本発明の甘草の生産方法は、甘草を栽培する工程において甘草に根粒菌を接種する。甘草への根粒菌の接種は、甘草と根粒菌が接触する条件であれば共生が成立する可能性があるため、甘草の栽培段階等を鑑み、適宜、任意の方法でおこなってよい。根粒菌MSPJ8株や根粒菌BEE1株のような本発明の根粒菌を甘草に接種すると、一般的に根粒を形成しにくい甘草が根粒を形成する。
甘草は、自然環境で露地栽培等することができる。露地栽培の場合、生育に約3~4年程度かかる。また、水耕栽培等により栽培することもできる。水耕栽培等の条件によっては1~2年程度で生育することもできる。根粒菌の接種は、これらの栽培期間の任意のときに行ってもよいが、主に生育初期に行うことが有効である。
例えば、甘草は、栽培用の砂などの固体と、液肥を混合した栽培培地に、挿し木して栽培することができる。この培地には、硝酸カリウムなどの窒素源となるものを積極的に混合しておくことで窒素固定が行われやすいものとすることなどができる。根粒菌の接種は、予め培養したり、保管しておいた根粒菌を含む細菌培地などを、甘草の栽培培地に添加などして混合することで、栽培培地から甘草に取り込ませることで行うことができる。
[甘草の成長促進剤]
本発明の成長促進剤は、本発明の根粒菌を含む甘草の成長促進剤とすることができる。この成長促進剤は、実質的に根粒菌からなるものとしてもよい。また、根粒菌の至適培地を混合したものとしてもよいし、保管のために、冷凍等したものとしてもよい。また、甘草の生産に用いるとき、甘草への接種や甘草の栽培時に利用しやすいように、液体培地や固形培地、担体等と根粒菌とを混合した資材としてもよい。また、複数株の根粒菌を含むものとして、多種の甘草に対する成長促進剤としてもよい。
甘草の生産時に用いる本発明の根粒菌の使用量は特に制限されるものではなく、根粒菌が甘草と共生して増殖することから微量でもよい。効率的に共生を開始させるために,甘草一個体当たり1x105~1x109細胞程度とすることができ、1x106~1x108細胞程度としてもよく、1x107細胞程度用いるものとしてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[菌株]
佐賀大学圃場の土壌から単離した根粒菌である、Mesorhizobium属のMSPJ8株および、Bradyrhizobium属のBEE1株を、根粒菌として用いた。
[甘草]
ウラルカンゾウ、スペインカンゾウを、根粒菌を接種して栽培する対象の甘草として栽培した。
[根粒菌の接種]
砂と、硝酸カリウム等を含み甘草の培養に一般的な組成の液肥とを混合した栽培培地を用いて、甘草の栽培を行った。この栽培培地に、甘草の苗を挿し木して栽培した。この栽培培地に、甘草を挿し木して、各菌株を培養させた細菌培地を混合した。これにより、栽培培地内で、甘草の挿し木から根が形成される過程で、根粒菌が取り込まれる。甘草に取り込まれた根粒菌は、根粒を形成して、共生する。
[実施例1]ウラルカンゾウにおけるMSPJ8株接種の影響
ウラルカンゾウを用いて、MSPJ8株の接種の有無による栽培時の影響を評価した。なお、本実施例に係る図において、MSPJ8株を接種したものを「根粒菌あり」と示し、MSPJ8株を接種せずに他の条件は同じものとして栽培した対照試験を「根粒菌なし」と示す。
MSPJ8株を接種したウラルカンゾウを、接種から60日後に葉緑素計を用いて葉のSPAD値を測定したところ、根粒菌を接種した方が高い値を示したことから葉の窒素含量が高いことがわかる(図1)。なお、SPAD値は、クロロフィル量と相関があるため、窒素含量を示す指標として用いられている。
接種から90日後のウラルカンゾウの根に形成された根粒数を図2に示す。また、接種から90日後のアセチレン還元法により測定した個体あたりの窒素固定活性を図3に示す。
図2に示すように、根粒菌を接種した場合のみ、ウラルカンゾウから根粒が検出された。図3に示す根粒菌接種個体の葉における高い窒素含量は、根粒菌によって固定された窒素に起因すると考えられる。
90日後の栽培されたウラルカンゾウの質量(バイオマス)を比較した結果を図4に示す。地上部、地下部のいずれも根粒菌を接種した場合に高い値を示している。根粒における窒素固定によってウラルカンゾウの成長が促進されていることは明らかである。
さらに90日後の甘草のグリチルリチン酸の含量(GL含量)を図5に示す。グリチルリチン酸の含量も根粒菌を接種した場合に明らかに高い値を示していることから、ウラルカンゾウへMSPJ8株を接種した場合は、ウラルカンゾウの地上部および地下部の成長が促進されるとともに地下部のGL含量も高くなる。
[実施例2]スペインカンゾウにおけるBEE1株接種の影響
スペインカンゾウを用いて、BEE1の接種の有無による栽培時の影響を評価した。なお、本実施例に係る図において、BEE1株を接種したものを「根粒菌あり」と示し、BEE1株を接種せずに他の条件は同じものとして栽培した対照試験を「根粒菌なし」と示す。このスペインカンゾウは路地に植えた場合、ほとんど根粒が形成されない。
BEE1株を接種して90日栽培した後のスペインカンゾウの根の像を図6に示す。BEE1株を接種することで、容易に根粒を形成する。
また、接種から90日栽培した後のグリチルリチン酸の含量(GL含量)を図7に示す。ウラルカンゾウの場合と同様に根粒菌を接種した方がGL含量も高くなる。
以上のことから、ウラルカンゾウおよびスペインカンゾウへ根粒菌を接種して根粒を形成させることにより、成長促進と高GL含量を誘導することができることが確認された。
本発明の根粒菌は、甘草の栽培に利用することができ、得られた甘草はグリチルリチン酸の原料等として利用することができ、産業上有用である。

Claims (5)

  1. 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3109である、
    甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する、
    根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株。
  2. 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3108である、
    甘草の成長促進能および/または甘草のグリチルリチン酸含量向上能を有する、
    根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株。
  3. 甘草に根粒菌を接種し、甘草のグリチルリチン酸の含有量を向上させる栽培を行う工程を有し、前記根粒菌が、以下の(根粒菌1)および/または(根粒菌2)である、甘草の生産方法。
    (根粒菌1)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3109である、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株
    (根粒菌2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3108である、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株
  4. 前記甘草が、ウラルカンゾウおよび/またはスペインカンゾウである請求項3に記載の生産方法。
  5. 以下の(根粒菌1)および/または(根粒菌2)を含む甘草の成長促進剤。
    (根粒菌1)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3109である、根粒菌Mezorhizobium sp. MSPJ8株
    (根粒菌2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター受託番号NITE-3108である、根粒菌Bradyrhizobium elkanii BEE1株
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