JP7354564B2 - エレクトレット膜、エレクトレット部材、及びエレクトレット膜の製造方法 - Google Patents
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赤外分光分析装置(FT-IR)におけるATR(Attenuated Total Reflection)法により、厚み方向に対向するエレクトレット膜の第一の面側および第二の面側から各々測定された赤外線吸収スペクトルにおける2800cm-1乃至3150cm-1の間の最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)が、0.95以下である樹脂製のエレクトレット膜。
<2>
前記最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)が、0.90以下である<1>に記載のエレクトレット膜。
<3>
前記エレクトレット膜の樹脂が、-R-O-C(=O)-構造(ただし、Rはアルキル鎖又は芳香環を示す)を有する樹脂であるである<1>又は<2>に記載のエレクトレット膜。
<4>
前記アルキル鎖を主鎖および側鎖の少なくとも一方に有する樹脂が、ポリカーボネート樹脂材料、及びポリアリレート樹脂材料から選択される少なくとも1種である<3>に記載のエレクトレット膜。
<5>
エレクトレット膜の厚さが、1μm以上100μm以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載のエレクトレット膜。
<6>
エレクトレット膜の厚さが、5μm以上50μm以下である<5>に記載のエレクトレット膜。
<7>
基材と、
基材上に設けられた、<1>~<6>のいずれか1項に記載のエレクトレット膜であって、エレクトレック膜の前記第二の面側を前記基材に対向して設けられたエレクトレット膜と、
を有するエレクトレット部材。
<8>
厚み方向に対向する樹脂製のエレクトレット膜の第一の面を、プラズマに暴露するプラズマ暴露工程と、
前記プラズマに暴露したエレクトレット膜の第一の面を、帯電処理する帯電処理工程と、
を有するエレクトレット膜の製造方法。
<9>
前記プラズマ暴露工程が、前記エレクトレット膜の第一の面を、水素プラズマに暴露する工程である<8>に記載のレクトレット膜の製造方法。
<10>
前記帯電処理工程が、前記エレクトレット膜の第一の面を、コロナ放電により帯電処理する工程である<8>又は<9>に記載のエレクトレット膜の製造方法。
<11>
前記プラズマ暴露工程および前記帯電処理工程を経て、得られるエレクトレット膜が、赤外分光分析装置(FT-IR)におけるATR(Attenuated Total Reflection)法により、厚み方向に対向するエレクトレット膜の第一の面側および第二の面側から各々測定された吸収スペクトルにおける2800cm-1乃至3150cm-1の間の最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)が、0.95以下である<8>~<10>のいずれか1項に記載のエレクトレット膜の製造方法。
<2>に係る発明によれば、樹樹脂製のエレクトレット膜であって、赤外分光分析装置(FT-IR)におけるATR法により、厚み方向に対向するエレクトレット膜の第一の面側および第二の面側から各々測定された吸収スペクトルにおける2800cm-1乃至3150cm-1の間の最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)が、0.90超えである場合に比べ、帯電寿命が長いエレクトレット膜が提供される。
<3>又は<4>に係る発明によれば、アルキル鎖を主鎖および側鎖の少なくとも一方に有する樹脂を含む樹脂製のエレクトレット膜であって、赤外分光分析装置(FT-IR)におけるATR法により、厚み方向に対向するエレクトレット膜の第一の面側および第二の面側から各々測定された吸収スペクトルにおける2800cm-1乃至3150cm-1の間の最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)が、0.95超えである場合に比べ、帯電寿命が長いエレクトレット膜が提供される。
<5>、又は<6>に係る発明によれば、樹脂製のエレクトレット膜であって、赤外分光分析装置(FT-IR)におけるATR法により、厚み方向に対向するエレクトレット膜の第一の面側および第二の面側から各々測定された吸収スペクトルにおける2800cm-1乃至3150cm-1の間の最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)が、0.95超えである場合に比べ、エレクトレット膜の厚さが1μm以上100μm以下であっても、帯電寿命が長いエレクトレット膜が提供される。
<8>、<9>、<10>、又は<11>に係る発明によれば、樹脂製のエレクトレット膜の製造方法であって、厚み方向に対向するエレクトレット膜の第一の面を、プラズマに暴露するプラズマ暴露工程を有さない場合に比べ、帯電寿命が長いエレクトレット膜の製造方法が製造される。
赤外分光分析装置(FT-IR)におけるATR法により測定される赤外線吸収スペクトルにおける2800cm-1乃至3150cm-1の間に表れる最大吸収ピークは、炭素-炭素結合(不飽和炭素-炭素結合(C-C)結合、不飽和炭素-炭素(C=C)結合等)に由来するピークである。
つまり、上記最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)が、0.95以下であることは、第一の面を構成する樹脂が、本来の樹脂で構成された第二の面に比べ、炭素-炭素結合が切れていると考えられ、結合切断面にはトラップサイトが生じるために、第二の面に比べ、第一の面では、帯電したときに電荷が保持され易くなる。
ただし、製造上の観点から、最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)の下限は、例えば、0.80以上である。
次に、測定試料におけるエレクトレット膜の第一面および第二面に相当する面に対して、各々、赤外分光分析装置(パーキンエルマー製:Frontier FT IR)にセレン化亜鉛のATR法より、積算回数16回、分解能4cm-1の条件で、波数435cm-1以上5500cm-1以下の範囲を測定し、赤外線吸収スペクトルを得る。
次に、得られた赤外線吸収スペクトルから、2800cm-1乃至3150cm-1の間の最大吸収ピークI(第一の面)および最大吸収ピーク(第二面)の強度を算出する。
なお、最大吸収ピークI(第一の面)および最大吸収ピーク(第二面)の強度は、波数1600cm-1のベンゼン環由来のピークを1としたときの比で算出する。
エレクトレット膜の樹脂(以下、「エレクトレット樹脂」とも称する)としては、ポリカーボネート樹脂材料、ポリアリレート樹脂材料、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリビニル樹脂(ポリ塩化ビニル等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(テフロン(登録商標)(Teflon-FEP、Teflon-TFE)等)等の周知の樹脂が挙げられる。
エレクトレット膜は、厚さが「厚い」程、帯電寿命が低下する傾向がある。しかし、厚さが上記範囲でも、本実施形態に係るエレクトレット膜は帯電寿命の向上が図れる。
本実施形態に係るエレクトレット部材は、基材と、基材上に設けられた、上記本実施
形態に係るエレクトレット膜であって、エレクトレック膜の第二の面側を基材に対向して設けられたエレクトレット膜と、を有する。
基材としては、例えば、電極等の導電体、金属板、ガラス上に塗布された酸化インジウムスズ(ITO)膜が例示される。
本実施形態に係るエレクトレット膜及びエレクトレット部材は、振動発電装置、音・振動検出センサ、電子時計、静電アクチュエータ、静電発電装置等に適用できる。
本実施形態に係るエレクトレット膜の製造方法は、
厚み方向に対向する樹脂製のエレクトレット膜の第一の面を、プラズマに暴露するプラズマ暴露工程と、
プラズマに暴露したエレクトレット膜の第一の面を、帯電処理する帯電処理工程と、
を有する。
プラズマ暴露工程では、例えば、基材上に、未処理のエレクトレット膜が設けられたエレクトレット部材を準備する。
・樹脂膜にコロナ放電処理する方法
・樹脂膜を軟化温度または溶融温度近くまで加熱し、高い直流電界を印加しつつ冷却する方法、
・樹脂膜に絶縁破壊電圧に近い高い直流電界を室温(25℃等)で印加する方法
・樹脂膜に真空中で、電子線、γ線等の放射線を照射する方法
・樹脂膜に、光照射しつつ、高い直流電界を印加する方法
・樹脂膜に、機械的な変形(加圧・延伸等による変形)を付与する方法
・プラズマ処理時間:30分
・プラズマ処理圧力:25Pa
・プラズマ処理RF電力:500W
・プラズマ生成ガス種:水素
ただし、以下で説明するプラズマ処理装置10では、プラズマ生成ガス供給管22及びプラズマ生成ガス供給管24の2か所から、プラズマ生成ガスを処理容器12内に供給する態様を説明するが、この態様に限られず、プラズマ生成ガス供給管22及びプラズマ生成ガス供給管24の少なくとも一方から、プラズマ生成ガスを処理容器12内に供給する態様であればよい。
放電電極20が空洞構造でなく放電面にガス供給孔が無いものである場合、別に設けられたプラズマ生成ガス供給口から供給されたプラズマ生成ガスが放電電極20と円柱状部材18の間を通過するようにした構成でもよい。
放電電極20と処理容器12との間で放電が起こらないように、円柱状部材と対向している面以外の電極面が約3mm以下程度のクリアランスを有してアースされた部材により覆われていることが好適である。
プラズマ生成ガスは、プラズマ生成ガス供給源42からプラズマ生成ガス供給管22を介してプラズマ生成ガス供給口22Aから処理容器12内へと供給される。
すなわち、プラズマ生成ガスのプラズマが生成されることによって、処理容器12内の全ての領域は、活性領域44と、この活性領域44に連続する領域であってプラズマ生成ガスが励起分解されない領域としての不活性領域48と、に分けられる。このため、処理容器12内には、円柱状部材18の回転方向に沿って、活性領域44と不活性領域48とが連続して設けられることとなる。
プラズマ生成ガスが円柱状部材18の外周面や処理対象部材40の表面に噴き付けられると、プラズマ生成ガスはこれら表面上を流れ、処理対象部材40の表面で拡散、吸着、再蒸発が起こる。これらの効果によりプラズマ生成ガスは処理対象部材40の表面に密度が均一に近い状態となることが促進された状態で滞在し、処理対象部材40の移動とともに活性領域44に入り、プラズマ生成ガスからプラズマを生成することが可能である。
制御部16により、モータ30の回転数が制御されることによって、目的とする速度で円柱状部材18を回転することができる。
制御部16によって、電磁弁46及び電磁弁38各々とプラズマ生成ガス供給源49に含まれるマスフローコントローラーが制御されることによって、プラズマ生成ガスの供給量を調整することができる。
制御部16の制御によって真空排気装置28が駆動して、処理容器12の内部が予め定められた圧力まで減圧されると、制御部16は、円柱状部材18を予め定められた速度で回転するようにモータ30を制御する。この回転速度の制御は、例えば、モータ30に円柱状部材の回転速度を測定するためのセンサを設けて、このセンサからの入力信号に基づいて、目的とする回転速度となるようにモータ30の回転速度を調整するようにすればよい。
また、不活性猟奇48に、プラズマ生成ガスを供給するためのプラズマ生成ガス供給管24は、処理容器12内に1つ設けられている場合を説明したが、プラズマ生成ガス供給口24Aが不活性領域48に位置していればよく、処理容器12に複数設けられるようにしてもよい。
例えば、活性領域44は、光、熱によりプラズマ生成ガスを励起する領域であってもよい。
帯電工程では、プラズマに暴露した、基材上に設けられたエレクトレット膜の第一の面(具体的には、基材と対向する面とは膜厚方向の反対側の面)を、帯電処理(好ましくはコロナ放電)する。
・帯電処理時間: 1分
・基板加熱温度:160℃
・帯電手段:コロナ放電
・グリッド電圧: 700V
・ワイヤー電流: 1μA
まず、アルミ製の基材上にエレクトレット膜が設けられたエレクトレット部材を準備した。
なお、エレクトレット膜は、次の通り形成した。下記構造式(PC1)で表されるポリカーボネート樹脂(分子量4万)15質量部を、テトラヒドロフラン85重量部を加えて撹拌、溶解した。この溶液を、洗浄したアルミ基材に浸漬塗布した後、塗膜を135℃で40分間乾燥して、ポリカーボネート樹脂膜を形成した。ただし、塗布速度をコントロールすることで、厚さ15μmとした。このように、厚さ15μmのポリカーボネート樹脂膜からなるエレクトレット膜を形成した。
ただし、プラズマ生成ガス供給管24からプラズマ生成ガスを処理容器12に供給せず、プラズマ生成ガス供給管22からのみプラズマ生成ガスを処理容器12に供給する態様で、プラズマ処理を実施した。
具体的には、次の通りである。
プラズマ処理時間を10分に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面(つまり第一の面)がプラズマ処理されたエレクトレット膜を得た。
プラズマ生成ガス種をHeに変更した以外は、実施例1と同様にして、表面(つまり第一の面)がプラズマ処理されたエレクトレット膜を得た。
エレクトレット膜の樹脂種をポリアリレート樹脂に変更し、プラズマ処理時間を10分に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面(つまり第一の面)がプラズマ処理されたエレクトレット膜を得た。
プラズマ処理時間を5分に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面(つまり第一の面)がプラズマ処理されたエレクトレット膜を得た。
実施例1において、プラズマ処理を実施せず、準備したエレクトレット膜を比較例2のエレクトレット膜とした。
(各種特性)
各例のエレクトレット膜の下記特性を、既述の方法に従って測定した。
・赤外分光分析装置(FT-IR)におけるATR法により、厚み方向に対向するエレクトレット膜の第一の面側および第二の面側から各々測定された赤外線吸収スペクトルにおける2800cm-1乃至3150cm-1の間の最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)
各例のエレクトレット膜の帯電寿命について、次の通り評価した。
まず、基材を160℃に熱し、グリッド電圧を700Vの条件でコロナ放電をしたのちに冷却することにより、エレクトレット膜に帯電処理した。
そして、帯電処理直後の表面電位の測定を表面電位計を用いて基板の5か所を測定し、その平均値を算出した(Vini)。帯電寿命の評価は、20℃、50RH%の環境下に保管し、240時間後(10日後)の電位を帯電処理後と同等の評価方法にて測定した(Vend)。そして、エレクトレット膜の帯電寿命を下記基準で評価した。
A:Vend/Vini≧ 0.95
B:0.85≦Vend/Vini<0.95
C:0.75≦Vend/Vini<0.85
D:Vend/Vini<0.75
12 処理容器
14 排気管
16 制御部
18 円柱状部材
20 放電電極
22 プラズマ生成ガス供給管
22A プラズマ生成ガス供給口
24 プラズマ生成ガス供給管
24A プラズマ生成ガス供給口
26 遮蔽部材
28 真空排気装置
40 処理対象部材
42 プラズマ生成ガス供給源
Claims (9)
- 赤外分光分析装置(FT-IR)におけるATR(Attenuated Total Reflection)法
により、厚み方向に対向するエレクトレット膜の第一の面側および第二の面側から各々測定された赤外線吸収スペクトルにおける2800cm-1乃至3150cm-1の間の最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)が、0.95以下である樹脂製のエレクトレット膜であり、
かつ前記エレクトレット膜の樹脂が、-R-O-C(=O)-構造(ただし、Rはアルキル鎖又は芳香環を示す)を有する樹脂であるエレクトレット膜。 - 前記最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)が、0.90以下である請求項1に記載のエレクトレット膜。
- 前記アルキル鎖を主鎖および側鎖の少なくとも一方に有する樹脂が、ポリカーボネート樹脂材料、及びポリアリレート樹脂材料から選択される少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載のエレクトレット膜。
- エレクトレット膜の厚さが、1μm以上100μm以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のエレクトレット膜。
- エレクトレット膜の厚さが、5μm以上50μm以下である請求項4に記載のエレクトレット膜。
- 基材と、
基材上に設けられた、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のエレクトレット膜であって、エレクトレック膜の前記第二の面側を前記基材に対向して設けられたエレクトレット膜と、
を有するエレクトレット部材。 - 厚み方向に対向する樹脂製のエレクトレット膜の第一の面を、プラズマに暴露するプラ
ズマ暴露工程と、
前記プラズマに暴露したエレクトレット膜の第一の面を、帯電処理する帯電処理工程と、
を有し、
前記エレクトレット膜の樹脂が、-R-O-C(=O)-構造(ただし、Rはアルキル鎖又は芳香環を示す)を有する樹脂であり、
前記プラズマ暴露工程が、前記エレクトレット膜の第一の面を、水素プラズマに暴露する工程であるエレクトレット膜の製造方法。 - 前記帯電処理工程が、前記エレクトレット膜の第一の面を、コロナ放電により帯電処理する工程である請求項7に記載のエレクトレット膜の製造方法。
- 厚み方向に対向する樹脂製のエレクトレット膜の第一の面を、プラズマに暴露するプラズマ暴露工程と、
前記プラズマに暴露したエレクトレット膜の第一の面を、帯電処理する帯電処理工程と、
を有し、
前記プラズマ暴露工程および前記帯電処理工程を経て、得られるエレクトレット膜が、赤外分光分析装置(FT-IR)におけるATR(Attenuated Total Reflection)法に
より、厚み方向に対向するエレクトレット膜の第一の面側および第二の面側から各々測定された吸収スペクトルにおける2800cm-1乃至3150cm-1の間の最大吸収ピーク強度比=I(第一の面)/I(第二の面)が、0.95以下であるエレクトレット膜の製造方法。
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