JP7353041B2 - フランジ付鋳鉄管およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、プラント内配管等に使用されるフランジ付鋳鉄管とその製造方法に関する。
石炭火力発電所のプラント内で石炭灰の輸送に使用される灰流し管は、粉粒体である石炭灰による内面のエロージョン摩耗が生じやすいため、耐摩耗性に優れた配管が要求される。また、プラント内配管は、点検や取り替えの容易さに対する要求から、両端にフランジを有する継手形式のもの(両フランジ管)が主流となっている。
上記のような要求を満たすプラント内配管として、フランジ付きの耐摩耗鋳鉄管がよく使用される。ただし、鋳鉄管は一般に遠心鋳造によって製造されており、その鋳造方法の特性から直管部の両端にフランジを設けた形で鋳造を行うことは困難なので、フランジ付鋳鉄管の場合、少なくとも一方のフランジは鋳造した直管部に溶接等で取り付ける必要がある。
そして、鋳鉄は炭素を多量に(2.14%以上)含む鉄系合金であり、難溶接材料として知られているため、鋳鉄で形成された部材に溶接する際は、一般に、高温予熱(500~600℃)を行い、溶接中も極力高温に保持し、かつ後熱、徐冷を行う方法や、低温予熱を行うか予熱なしで、Ni系やFe-Ni系の溶接棒または溶接ワイヤ等を用いて溶接を行う方法が採られる。
図4は、上記のような溶接方法により直管部51の軸方向端部の外周面にフランジ52を溶接したフランジ付鋳鉄管の一例を示す。このフランジ付鋳鉄管の直管部51へのフランジ52の溶接は、通常の差し込みフランジ溶接方法(例えば、特許文献1参照。)によって行われており、フランジ52の一部が直管部51の軸端から軸方向外側にはみ出した状態で、フランジ52の軸方向内側の端面と直管部51の外周面との間に外側溶接部53が形成され、フランジ52のはみ出し部の内周面と直管部51の軸端面との間に内側溶接部54が形成されている。
しかし、このフランジ付鋳鉄管は、図5に示すように、同じ構成のものと軸方向で突き合わせた状態で、それぞれのフランジ52のボルト孔52aに通したボルト(図示省略)を締め付けて接合した場合、そのフランジ接合部の内面に凹部が生じるので、この凹部によって管内を輸送される物体の流れが乱され、管内面の摩耗が早く進行してしまうおそれがある。
これに対して、図6に示すように、フランジ52の内周部に開先52bを設けて、フランジ52が直管部51の軸端からはみ出さない状態で、図4の例と同様に外側溶接部53が形成され、フランジ52の開先52bと直管部51の外周面との間に内側溶接部54’が形成されるように溶接を行えば、管どうしのフランジ接合部の内面が平坦になり、管内面の早期摩耗を生じにくくすることができる。
特開2016-223311号公報
しかしながら、上記のようにフランジ52に開先52bを設ける方式の差し込みフランジ溶接方法を採用したフランジ付鋳鉄管では、図7に示すように、その内側溶接部54’の収縮に伴って直管部51に生じる径方向の引張応力が大きくなりやすい。
そして、その直管部51を形成する鋳鉄は、炭素を多く含む材料のため溶接時の急加熱、急冷により熱影響部に脆化層が発生しやすく、溶接割れが発生してしまう場合がある。なお、フランジ52は、SS400等の熱影響を受けにくい材料を使用しているため、変形が起こりにくい。
そこで、本発明は、フランジ溶接時に溶接割れを生じにくく、かつ長期間にわたって耐摩耗性を維持できるフランジ付鋳鉄管とその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明のフランジ付鋳鉄管は、直管部の軸方向端部の外周面にフランジが溶接されたフランジ付鋳鉄管において、前記フランジはその一部が前記直管部の軸端から軸方向外側にはみ出しており、前記フランジの軸方向内側の端面と直管部の外周面との間に外側溶接部が形成され、前記フランジのはみ出し部の内周面と直管部の軸端面との間に内側溶接部が形成されるとともに、前記内側溶接部を覆う硬化肉盛溶接部が形成されており、前記硬化肉盛溶接部は、前記フランジの軸方向外側の端面と同一平面内に納まる第1の表面と、前記直管部の内周面と同一円筒面内に納まる第2の表面とが全周にわたって連続している構成とした。
すなわち、前述の通常の差し込みフランジ溶接方法を採用したものと同じく、フランジの一部が直管部の軸端から軸方向外側にはみ出した状態で、フランジの軸方向内側の端面と直管部の外周面との間、およびフランジのはみ出し部の内周面と直管部の軸端面との間が溶接された構成とすることにより、フランジに開先を設ける方式の溶接方法を採用したものに比べて、溶接時に直管部に生じる径方向の引張応力が小さくなるようにして、直管部の熱影響部での溶接割れを生じにくくするとともに、フランジの軸方向外側の端面と面一となる第1の表面と、直管部の内周面と面一となる第2の表面とが全周にわたって連続した硬化肉盛溶接部を設けることにより、同じ構成のフランジ付鋳鉄管とフランジ接合した際にそのフランジ接合部の内面が平坦で耐摩耗性の高いものとなり、管内を輸送される物体の流れの乱れによる早期摩耗が生じにくくなるようにしたのである。
また、本発明のフランジ付鋳鉄管の製造方法は、上記構成のフランジ付鋳鉄管の製造方法において、前記直管部の軸方向端部の外周面にフランジを溶接する際には、前記フランジをその一部が前記直管部の軸端から軸方向外側にはみ出す状態でセットして、前記フランジの軸方向内側の端面と直管部の外周面との間に外側溶接部を形成する溶接を行うとともに、前記フランジのはみ出し部の内周面と直管部の軸端面との間に内側溶接部を形成する溶接を行ったうえで、前記内側溶接部の表面に硬化肉盛溶接を行って、前記フランジの軸方向外側の端面および前記直管部の内周面からはみ出す硬化肉盛層を形成した後、前記硬化肉盛層の表面を研削することにより、前記第1の表面と第2の表面を有する硬化肉盛溶接部を形成するようにしたものである。
本発明のフランジ付鋳鉄管は、上述したように、溶接時に直管部に生じる径方向の引張応力が小さいので、直管部の熱影響部での溶接割れを生じにくいし、同じ構成のものとフランジ接合した際にそのフランジ接合部の内面が平坦で耐摩耗性の高いものとなるので、長期間にわたって耐摩耗性を維持することができる。したがって、プラント内配管等、耐摩耗性が要求される両フランジ管として使用するのに適している。
また、本発明のフランジ付鋳鉄管の製造方法によれば、上記構成のフランジ付鋳鉄管を効率よく製造することができる。
実施形態のフランジ付鋳鉄管の正面断面図 図1のフランジ付鋳鉄管の要部拡大正面断面図 図1のフランジ付鋳鉄管のフランジ接合状態の要部拡大正面断面図 従来のフランジ付鋳鉄管の一例を示す正面断面図 図4のフランジ付鋳鉄管のフランジ接合状態の要部拡大正面断面図 従来のフランジ付鋳鉄管の別の例を示す正面断面図 図6のフランジ付鋳鉄管に生じる引張応力の説明図
以下、図1乃至図3に基づき、本発明の実施形態を説明する。このフランジ付鋳鉄管は、石炭火力発電所の灰流し管等、耐摩耗性が要求される両フランジ形式のプラント内配管として使用されるもので、図1および図2に示すように、直管部1の軸方向端部の外周面に、フランジ2をその一部が直管部1の軸端から軸方向外側にはみ出す状態で溶接したものである。その直管部1は耐摩耗性を有する鋳鉄で形成されたものであり、フランジ2はSS400製で、軸方向に貫通するボルト孔2aが周方向に等間隔で設けられている。なお、図1では、管の一方の端部のみを図示しているが、管のもう一方の端部もこれと同じ構造である。
前記フランジ2の軸方向内側の端面と直管部1の外周面との間には外側溶接部3が形成され、フランジ2のはみ出し部の内周面と直管部1の軸端面との間には、内側溶接部4が形成されるとともに、その内側溶接部4を覆う硬化肉盛溶接部5が形成されている。
前記外側溶接部3および内側溶接部4は、Fe-Ni系の溶接棒または溶接ワイヤを用いた溶接によって形成されている。一方、前記硬化肉盛溶接部5は、JIS Z 3251に規定される硬化肉盛用被覆アーク溶接棒またはJIS Z 3326に規定される硬化肉盛用アーク溶接フラックス入りワイヤを用いた溶接によって形成されている。
ここで、硬化肉盛溶接部5は、図2に示すように、溶接時にはフランジ2の軸方向外側の端面および直管部1の内周面からはみ出す状態となっているが(図中の二点鎖線)、その余盛り部が溶接後に削り取られることにより、フランジ2の軸方向外側の端面と同一平面内に納まる(面一となる)第1の表面5aと、直管部1の内周面と同一円筒面内に納まる(面一となる)第2の表面5bとが全周にわたって連続する表面形状となっている。
したがって、図3に示すように、この実施形態のフランジ付鋳鉄管を同じ構成のものと軸方向で突き合わせた状態で、それぞれのフランジ2のボルト孔2aに通したボルト(図示省略)を締め付けて接合した場合、そのフランジ接合部の内面は凹凸のない平坦な形状となる。
このフランジ付鋳鉄管は、上記の構成であり、フランジ2の一部が直管部1の軸端から軸方向外側にはみ出した状態で、フランジ2の軸方向内側の端面と直管部1の外周面との間、およびフランジ2のはみ出し部の内周面と直管部1の軸端面との間が溶接されているので、フランジに開先を設ける方式の溶接方法を採用したものに比べて、溶接時に直管部1に生じる径方向の引張応力が小さく、直管部1の熱影響部での溶接割れを生じにくいものとなっている。
また、同じ構成のフランジ付鋳鉄管とフランジ接合した際にそのフランジ接合部の内面が硬化肉盛溶接部5によって平坦で耐摩耗性の高いものとなるので、そのフランジ接合部で管内を輸送される物体の流れを乱すことがなく、管内面の早期摩耗が生じにくい。
このフランジ付鋳鉄管の製造方法は、予め直管部1を遠心鋳造によって作製しておく。そして、直管部1の軸方向端部の外周面にフランジ2を溶接する際には、まず、フランジ2をその一部が直管部1の軸端から軸方向外側にはみ出す状態でセットして、低温予熱を行うか予熱なしで、フランジ2の軸方向内側の端面と直管部1の外周面との間に外側溶接部3を形成する溶接を行うとともに、フランジ2のはみ出し部の内周面と直管部1の軸端面との間に内側溶接部4を形成する溶接を行う。次に、内側溶接部4の表面に硬化肉盛溶接を行って、フランジ2の軸方向外側の端面および直管部1の内周面からはみ出す硬化肉盛層を形成する。最後に、その硬化肉盛層の表面をグラインダ等で研削して余盛り部を削り取ることにより、平滑な第1の表面5aおよび第2の表面5bを有する硬化肉盛溶接部5を形成すればよい。
この製造方法では、フランジに開先を設ける方式の溶接方法を採用する場合に比べると、溶接棒または溶接ワイヤとしてFe-Ni系のものと硬化肉盛用のものの二種類を使用する手間が増えるが、予めフランジに開先加工を行う手間がなくなるという点で、フランジ付鋳鉄管を効率よく製造することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、実施形態のフランジ付鋳鉄管は両フランジ管としたが、片フランジ管としてもよい。
また、本発明は、実施形態のような耐摩耗性が要求されるプラント内配管の鋳鉄管に特に有効に適用できるが、そのほか耐摩耗性の要求が高くない一般的なフランジ付鋳鉄管にももちろん適用可能である。
1 直管部
2 フランジ
3 外側溶接部
4 内側溶接部
5 硬化肉盛溶接部
5a 第1の表面
5b 第2の表面

Claims (2)

  1. 直管部の軸方向端部の外周面にフランジが溶接されたフランジ付鋳鉄管において、
    前記フランジはその一部が前記直管部の軸端から軸方向外側にはみ出しており、前記フランジの軸方向内側の端面と直管部の外周面との間に外側溶接部が形成され、前記フランジのはみ出し部の内周面と直管部の軸端面との間に内側溶接部が形成されるとともに、前記内側溶接部の全体を覆う硬化肉盛溶接部が形成されており、
    前記硬化肉盛溶接部は、前記外側溶接部および前記内側溶接部の材質と異なる材質からなり、前記フランジの軸方向外側の端面と同一平面内に納まる第1の表面と、前記直管部の内周面と同一円筒面内に納まる第2の表面とが全周にわたって連続していることを特徴とするフランジ付鋳鉄管。
  2. 請求項1に記載のフランジ付鋳鉄管の製造方法において、
    前記直管部の軸方向端部の外周面にフランジを溶接する際には、前記フランジをその一部が前記直管部の軸端から軸方向外側にはみ出す状態でセットして、前記フランジの軸方向内側の端面と直管部の外周面との間に外側溶接部を形成する溶接を行うとともに、前記フランジのはみ出し部の内周面と直管部の軸端面との間に内側溶接部を形成する溶接を行ったうえで、前記内側溶接部の表面に硬化肉盛溶接を行って、前記フランジの軸方向外側の端面および前記直管部の内周面からはみ出す硬化肉盛層を形成した後、前記硬化肉盛層の表面を研削することにより、前記第1の表面と第2の表面を有する硬化肉盛溶接部を形成することを特徴とするフランジ付鋳鉄管の製造方法。
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