本発明に係る静電容量型荷重センサは、付与された荷重に応じて処理を行う管理システムや電子機器の荷重センサに適用可能である。
管理システムとしては、たとえば、在庫管理システム、ドライバーモニタリングシステム、コーチング管理システム、セキュリティー管理システム、介護・育児管理システムなどが挙げられる。
在庫管理システムでは、たとえば、在庫棚に設けられた荷重センサにより、積載された在庫の荷重が検出され、在庫棚に存在する商品の種類と商品の数とが検出される。これにより、店舗、工場、倉庫などにおいて、効率よく在庫を管理できるとともに省人化を実現できる。また、冷蔵庫内に設けられた荷重センサにより、冷蔵庫内の食品の荷重が検出され、冷蔵庫内の食品の種類と食品の数や量とが検出される。これにより、冷蔵庫内の食品を用いた献立を自動的に提案できる。
ドライバーモニタリングシステムでは、たとえば、操舵装置に設けられた荷重センサにより、ドライバーの操舵装置に対する荷重分布(たとえば、把持力、把持位置、踏力)がモニタリングされる。また、車載シートに設けられた荷重センサにより、着座状態におけるドライバーの車載シートに対する荷重分布(たとえば、重心位置)がモニタリングされる。これにより、ドライバーの運転状態(眠気や心理状態など)をフィードバックすることができる。
コーチング管理システムでは、たとえば、シューズの底に設けられた荷重センサにより、足裏の荷重分布がモニタリングされる。これにより、適正な歩行状態や走行状態へ矯正または誘導することができる。
セキュリティー管理システムでは、たとえば、床に設けられた荷重センサにより、人が通過する際に、荷重分布が検出され、体重、歩幅、通過速度および靴底パターンなどが検出される。これにより、これらの検出情報をデータと照合することにより、通過した人物を特定することが可能となる。
介護・育児管理システムでは、たとえば、寝具や便座に設けられた荷重センサにより、人体の寝具および便座に対する荷重分布がモニタリングされる。これにより、寝具や便座の位置において、人がどのような行動を取ろうとしているかを推定し、転倒や転落を防止することができる。
電子機器としては、たとえば、車載機器(カーナビゲーション・システム、音響機器など)、家電機器(電気ポット、IHクッキングヒーターなど)、スマートフォン、電子ペーパー、電子ブックリーダー、PCキーボード、ゲームコントローラー、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホン、タッチパネル、電子ペン、ペンライト、光る衣服、楽器などが挙げられる。電子機器では、ユーザからの入力を受け付ける入力部に荷重センサが設けられる。
以下の実施形態における荷重センサは、上記のような管理システムや電子機器の荷重センサにおいて典型的に設けられる静電容量型荷重センサである。このような荷重センサは、「静電容量型感圧センサ素子」、「容量性圧力検出センサ素子」、「感圧スイッチ素子」などと称される場合もある。また、以下の実施形態における検出回路は、上記のような荷重センサに接続される検出回路であり、以下の実施形態における荷重検出装置は、上記のような荷重センサおよび検出回路を備える荷重検出装置である。以下の実施形態は、本発明の一実施形態あって、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向は、荷重センサ1の高さ方向である。
図1(a)~図4を参照して、荷重センサ1について説明する。
図1(a)は、基材11と、基材11の上面に設置された3つの導電弾性体12とを模式的に示す斜視図である。
基材11は、弾性を有する絶縁性の部材であり、X-Y平面に平行な平板形状を有する。基材11は、非導電性を有する樹脂材料または非導電性を有するゴム材料から構成される。基材11に用いられる樹脂材料は、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(たとえば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材11に用いられるゴム材料は、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
導電弾性体12は、基材11の上面(Z軸正側の面)に接着剤等により設置される。図1(a)では、基材11の上面に、3つの導電弾性体12が設置されている。導電弾性体12は、弾性を有する導電性の部材である。各導電弾性体12は、基材11の上面においてY軸方向に長い帯状の形状を有しており、X軸方向に互いに離間した状態で並んで設置されている。各導電弾性体12のY軸負側の端部に、導電弾性体12と電気的に接続されたケーブル12aが設置される。導電弾性体12は、樹脂材料とその中に分散した導電性フィラー、またはゴム材料とその中に分散した導電性フィラーから構成される。
導電弾性体12に用いられる樹脂材料は、上述した基材11に用いられる樹脂材料と同様、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(ポリジメチルポリシロキサン(たとえば、PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。導電弾性体12に用いられるゴム材料は、上述した基材11に用いられるゴム材料と同様、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
導電弾性体12に用いられる導電性フィラーは、たとえば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In2O3(酸化インジウム(III))、およびSnO2(酸化スズ(IV))等の金属材料や、PEDOT:PSS(すなわち、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)からなる複合物)等の導電性高分子材料や、金属コート有機物繊維、金属線(繊維状態)等の導電性繊維からなる群から選択される少なくとも1種の材料である。
図1(b)は、図1(a)の構造体に載置された3つの被覆付き銅線13を模式的に示す斜視図である。
被覆付き銅線13は、図1(a)に示した3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置される。ここでは、3つの被覆付き銅線13が3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置されている。各被覆付き銅線13は、導電性の線材と、当該線材の表面を被覆する誘電体とからなる。3つの被覆付き銅線13は、導電弾性体12の長手方向(Y軸方向)に沿って、導電弾性体12に交差するように並んで配置されている。各被覆付き銅線13は、3つの導電弾性体12に跨がるよう、X軸方向に延びて配置される。被覆付き銅線13の構成については、追って図3(a)、(b)を参照して説明する。
図2(a)は、図1(b)の構造体に設置された糸14を模式的に示す斜視図である。
図1(b)のように3つの被覆付き銅線13が配置された後、各被覆付き銅線13は、被覆付き銅線13の長手方向(X軸方向)に移動可能に、糸14で基材11に接続される。図2(a)に示す例では、12個の糸14が、導電弾性体12と被覆付き銅線13とが重なる位置以外の位置において、被覆付き銅線13を基材11に接続している。糸14は、導電性を有する材料により構成され、たとえば、繊維とその中に分散した導電性の金属材料から構成される。糸14に用いられる導電性の金属材料は、たとえば銀である。
図2(b)は、図1(b)の構造体に設置された、基材15を模式的に示す斜視図である。
図2(a)に示した構造体の上方から、図2(b)に示すように、基材15が設置される。基材15は、絶縁性の部材である。基材15は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、およびポリイミド等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材15は、X-Y平面に平行な平板形状を有し、X-Y平面における基材15の大きさは、基材11と同様である。基材15の四隅の頂点が基材11の四隅の頂点に対して、シリコーンゴム系接着剤や糸などで接続されることにより、基材15が基材11に対して固定される。こうして、図2(b)に示すように、荷重センサ1が完成する。
図3(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線13の周辺を模式的に示す断面図である。図3(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、図3(b)は、荷重が加えられている状態を示している。
図3(a)に示すように、被覆付き銅線13は、銅線13aと、銅線13aを被覆する誘電体13bと、により構成される。銅線13aは、銅により構成されており、銅線13aの直径は、たとえば、約60μmである。誘電体13bは、電気絶縁性を有し、たとえば、樹脂材料、セラミック材料、金属酸化物材料などにより構成される。誘電体13bは、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフテレート樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料でもよく、Al2O3およびTa2O5などからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物材料でもよい。
図3(a)に示す領域に荷重が加えられていない場合、導電弾性体12と被覆付き銅線13との間にかかる力、および、基材15と被覆付き銅線13との間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、図3(b)に示すように、基材11の下面に対して上方向に荷重が加えられ、基材15の上面に対して下方向に荷重が加えられると、被覆付き銅線13によって導電弾性体12が変形する。なお、基材11の下面または基材15の上面が静止物体に載置されて、他方の基材に対してのみ荷重が加えられた場合も、反作用により静止物体側から同様に荷重を受けることになる。
図3(b)に示すように、荷重が加えられると、被覆付き銅線13は、導電弾性体12に包まれるように導電弾性体12に近付けられ、被覆付き銅線13と導電弾性体12との間の接触面積が増加する。これにより、被覆付き銅線13内の銅線13aと導電弾性体12との間の静電容量が変化し、この領域の静電容量が検出され、この領域にかかる荷重が算出される。
図4は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1を模式的に示す平面図である。図4では、便宜上、糸14および基材15の図示が省略されている。
図4に示すように、3つの導電弾性体12と3つの被覆付き銅線13とが交わる位置に、荷重に応じて静電容量が変化する素子部A11、A12、A13、A21、A22、A23、A31、A32、A33が形成される。各素子部は、導電弾性体12と被覆付き銅線13を含み、被覆付き銅線13は、静電容量の他方の極(たとえば陽極)を構成し、導電弾性体12は、静電容量の一方の極(たとえば陰極)を構成する。
すなわち、被覆付き銅線13の銅線13aは、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)の一方の電極を構成し、導電弾性体12は、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)の他方の電極を構成し、被覆付き銅線13の誘電体13bは、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)において静電容量を規定する誘電体に対応する。この構成では、銅線13aが、特許請求の範囲に記載の「第1電極」に対応し、導電弾性体12が、特許請求の範囲に記載の「第2電極」に対応し、誘電体13bが、特許請求の範囲に記載の「誘電体」に対応する。
各素子部に対してZ軸方向に荷重が加わると、荷重により被覆付き銅線13が導電弾性体12に包み込まれる。これにより、被覆付き銅線13と導電弾性体12との間の接触面積が変化し、当該被覆付き銅線13と当該導電弾性体12との間の静電容量が変化する。被覆付き銅線13のX軸負側の端部およびケーブル12aのY軸負側の端部は、図5を参照して後述する検出回路2に接続されている。
図4に示すように、3つの被覆付き銅線13をラインL11、L12、L13と称し、3つの導電弾性体12から引き出されたケーブル12aをラインL21、L22、L23と称する。ラインL11がラインL21、L22、L23に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、素子部A11、A12、A13であり、ラインL12がラインL21、L22、L23に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、素子部A21、A22、A23であり、ラインL13がラインL21、L22、L23に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、素子部A31、A32、A33である。
素子部A11に対して荷重が加えられると、素子部A11において導電弾性体12と被覆付き銅線13との接触面積が増加する。したがって、ラインL11とラインL21との間の静電容量を検出することにより、素子部A11において加えられた荷重を算出することができる。同様に、他の素子部においても、当該他の素子部において交わる2つのライン間の静電容量を検出することにより、当該他の素子部において加えられた荷重を算出することができる。
次に、荷重検出装置3の構成について説明する。
図5は、荷重検出装置3の回路構成を示す図である。荷重検出装置3は、上記のような荷重センサ1と、荷重センサ1に電気的に接続された検出回路2と、を備える。図5において、便宜上、荷重センサ1については、被覆付き銅線13と導電弾性体12のみが図示されており、導電弾性体12は、線状に図示されている。また、図5においては、被覆付き銅線13と導電弾性体12の数は、図1(a)~図4に示した例とは異なり、いずれも6個である。
検出回路2は、電圧出力部21と、抵抗22と、等電位生成部23と、スイッチ24、25、26と、電圧計27と、制御部28と、第1切替部30と、第2切替部40と、を備える。検出回路2は、荷重センサ1に対し、被覆付き銅線13と導電弾性体12との交差位置における静電容量の変化を検出するための検出回路である。
電圧出力部21は、電源21aとスイッチ21bを備え、矩形電圧を回路に出力する。スイッチ21bは、電源21aの陽極側に接続されている。抵抗22は、電圧出力部21の陽極側に接続されており、電圧出力部21と複数の被覆付き銅線13の銅線13aとの間に配置されている。抵抗22の下流側端子には、第1供給ラインL1が接続されている。
第1供給ラインL1には、第1切替部30と、等電位生成部23と、スイッチ26と、電圧計27とが接続されている。等電位生成部23の出力側端子には、スイッチ24、25が接続されている。等電位生成部23は、オペアンプであり、出力側端子と入力側のマイナス端子とが互いに接続されている。等電位生成部23は、第1供給ラインL1の電位(抵抗22の下流側の電位)と等電位の抑止電圧を生成する。
第2供給ラインL2は、第1切替部30および第2切替部40に接続されている。スイッチ24は、等電位生成部23と第2供給ラインL2との間に介挿されている。スイッチ24は、ほぼ無抵抗のスイッチであり、たとえば、メカニカルスイッチにより構成される。スイッチ25は、等電位生成部23と第2供給ラインL2との間に介挿された抵抗成分を含む電気素子である。図5では、便宜上、スイッチ25の切り替え機能がスイッチ部25aとして示され、スイッチ25の抵抗成分が抵抗部25bとして示されている。スイッチ部25aは、等電位生成部23およびグランドラインL3の何れか一方を第2供給ラインL2に選択的に接続する。
スイッチ26は、第1供給ラインL1とグランドラインL3との間に介挿されている。電圧計27は、第1供給ラインL1とグランドラインL3との間に介挿されている。電圧計27は、第1供給ラインL1とグランドラインL3との間の電位差を測定する。
第1切替部30は、抵抗22の下流側の電位を供給するための第1供給ラインL1および抑止電圧を供給するための第2供給ラインL2の何れか一方を選択的に複数の被覆付き銅線13(銅線13a)に接続する。
具体的には、第1切替部30は、6個のマルチプレクサ31を備えている。6個のマルチプレクサ31は、それぞれ、6個の被覆付き銅線13(銅線13a)に対応して設けられている。各マルチプレクサ31の出力側端子に、被覆付き銅線13の銅線13aが接続されている。各マルチプレクサ31の入力側端子は2つ設けられている。一方の入力側端子に第1供給ラインL1が接続されており、この入力側端子に、第1供給ラインL1および抵抗22を介して、電圧出力部21から矩形電圧が印加される。マルチプレクサ31の他方の入力側端子は、第2供給ラインL2に接続されており、この入力側端子に、第2供給ラインL2を介して、等電位生成部23から抑止電圧が印加される。
第2切替部40は、抑止電圧を供給するための第2供給ラインL2およびグランドと等電位に設定されたグランドラインL3の何れか一方を選択的に導電弾性体12(ケーブル12a)に接続する。
具体的には、第2切替部40は、6個のマルチプレクサ41を備えている。6個のマルチプレクサ41は、それぞれ、6個の導電弾性体12(ケーブル12a)に対応して設けられている。各マルチプレクサ41の出力側端子に、導電弾性体12に接続されたケーブル12aが接続されている。各マルチプレクサ41の入力側端子は2つ設けられている。一方の入力側端子に第2供給ラインL2が接続されており、この入力側端子に、第2供給ラインL2を介して、等電位生成部23から抑止電圧が印加される。マルチプレクサ41の他方の入力側端子は、グランドラインL3に接続されている。
制御部28は、演算処理回路とメモリを備え、たとえばFPGAやMPUにより構成される。制御部28は、スイッチ21b、25a、26およびマルチプレクサ31、41の切り替えを行う。
次に、荷重検出時の制御部28の制御について説明する。
荷重検出装置3が起動すると、制御部28は、たとえば以下に示すように、被覆付き銅線13と導電弾性体12とが交わる位置(図5の場合は36箇所)における素子部の静電容量を順に測定し、各素子部にかかる荷重を算出する。
たとえば、図5において最も上の被覆付き銅線13と最も左の導電弾性体12とが交わる位置の素子部A11について荷重の測定を行う場合について説明する。
制御部28は、素子部A11について測定を開始すると、測定対象の素子部A11の電極を構成する被覆付き銅線13(銅線13a)に接続されたマルチプレクサ31が第1供給ラインL1に接続されるよう、このマルチプレクサ31の切り替えを行う。また、制御部28は、他の5個のマルチプレクサ31が第2供給ラインL2に接続されるよう、他の5個のマルチプレクサ31の切り替えを行う。
さらに、制御部28は、測定対象の素子部A11の電極を構成する導電弾性体12に接続された1つのマルチプレクサ41がグランドラインL3に接続されるよう、このマルチプレクサ41の切り替えを行う。また、制御部28は、他の5個のマルチプレクサ41が第2供給ラインL2に接続されるよう、他の5個のマルチプレクサ41の切り替えを行う。
また、制御部28は、スイッチ24をオン状態に設定する。なお、スイッチ24は、後述するように、短絡を検知する際にオフ状態(短絡検知モード)に設定される場合を除いて、通常の使用の際にはオン状態(通常モード)が維持される。また、制御部28は、等電位生成部23と第2供給ラインL2とが接続されるよう、スイッチ部25aの切り替えを行う。また、制御部28は、スイッチ26をオフ状態に切り替える。
その後、制御部28は、スイッチ21bを所定時間オンに設定して、電圧出力部21に矩形電圧を出力させる。
図6は、素子部A11が測定対象となっている場合に、スイッチ21bがオンに設定された後の状態を模式的に示す回路図である。図6において、太線は、第1供給ラインL1の電位と等電位の部分を示している。
図6に示すように、スイッチ21bがオンに設定されると、測定対象の素子部A11に、抵抗22を介して矩形電圧が印加され、測定対象の素子部A11に電荷がチャージされる。これに伴い、抵抗22の抵抗値Rと、荷重に応じた素子部A11の容量とで規定される時定数により、素子部A11の電位が上昇する。この電位は、第1供給ラインL1の電位に反映される。この電位は、電圧計27により測定されて、制御部28に出力される。
制御部28は、矩形電圧の印加期間の所定のタイミングにおいて、電圧計27の測定電圧を参照し、この測定電圧と上記時定数および矩形電圧の電圧値とに基づいて、測定対象の素子部A11の静電容量Cを算出する。そして、制御部28は、静電容量Cに基づいて、素子部A11にかかる荷重を算出する。
このとき、測定対象の素子部A11と同じ行(同じ被覆付き銅線13)の他の素子部A12~A16には、陰極側に等電位生成部23からの電位が印加されるため、陽極と陰極とが等電位となる。よって、他の素子部A12~A16に電荷が貯まることはないため、測定対象の素子部A11に適切に電荷が貯まり、素子部A11の電圧を精度良く計測できる。また、素子部A12~A16と同じ列(同じ導電弾性体12)の他の素子部には、陽極および陰極に等電位生成部23からの電位が印加されるため、これら他の素子部にも電荷が貯まることはない。よって、これらの素子部を、測定において無効化することができる。
なお、測定対象の素子部A11と同じ列(同じ導電弾性体12)の他の素子部には、陽極に等電位生成部23からの電位が印加され、陰極にグランドラインL3が接続されているため、これら他の素子部には電荷が貯まる。しかしながら、これらの素子部は、陽極が第1供給ラインL1から切り離されているため、これら他の素子部に貯まった電荷が、電圧計27における素子部A11の電位の測定に影響を及ぼすことはない。
制御部28は、測定対象の素子部A11に対して荷重を算出すると、スイッチ21bをオフに切り替える。こうして1つの素子部における荷重の測定が終了する。その後、制御部28は、第2供給ラインL2とグランドラインL3とが接続されるよう、スイッチ部25aの切り替えを行い、さらに、スイッチ26をオンに切り替える。これにより、各素子部に貯まった電荷が放電される。
図7は、図6の状態からスイッチ21b、スイッチ部25a、およびスイッチ26の切り替えにより放電が行われる状態を模式的に示す回路図である。
図7に示すように切り替えが行われることにより、直前に測定対象とされた素子部A11が位置する被覆付き銅線13は、スイッチ26を介してグランドラインL3に接続される。また、素子部A11と異なる行の被覆付き銅線13、および、素子部A12~A16と同じ列の導電弾性体12は、スイッチ25を介してグランドラインL3に接続される。これにより、全ての素子部に貯まった電荷が放電される。
その後、制御部28は、次の素子部の荷重を測定するために、マルチプレクサ31、41の接続状態を設定し、図6と同様に、スイッチ25、26を切り替え、スイッチ21bをオンに切り替える。こうして、制御部28は、各素子部の静電容量を順に測定し、各素子部にかかる荷重を算出する。
次に、隣り合う2つの導電弾性体12に接続された2本のケーブル12aの間で短絡が生じた場合に、当該短絡を検出する方法について説明する。このような短絡は、荷重検出装置3の出荷後に、たとえば、想定外の使用による振動等によって起こり得る。
図8は、素子部A11に対応するケーブル12aと、素子部A11に対して列方向に隣り合う素子部A12に対応するケーブル12aとの間で、短絡線42により短絡が生じている場合に、この短絡が検出される過程を示す図である。
オペレータは、短絡の有無を確認する場合、検出回路2の動作モードを短絡検知モードに設定する。具体的には、オペレータは、動作モードを短絡検知モードに設定するために、図8に示すように、スイッチ24をオフ状態に設定する。そして、オペレータは、全ての素子部を無荷重状態に維持したまま、上記図6、7を参照して説明した動作を各素子部に対して実行し、各素子部について電圧計27の出力値を取得する。
図8に示すように、素子部A11、A12に対応する2本のケーブル12aの間で短絡が生じているときに、素子部A11に対して荷重の算出が行われると、電圧計27の出力値は、短絡が生じていない場合に比べて大きく低下する。
すなわち、図8に示すように、素子部A11が測定対象の場合、素子部A11に対応する導電弾性体12およびケーブル12aは、グランドラインL3に接続される。このとき、素子部A11、A12に対応する2本のケーブル12aの間で短絡が生じていると、隣の素子部A12に対応する導電弾性体12およびケーブル12aも、短絡部分(以下、「短絡線42」という)を介してグランドラインL3に接続される。これにより、隣の素子部A12において陽極と陰極とが異なる電位となるため、素子部A12においても電荷が蓄積される。
また、この場合、短絡線42によって、第2供給ラインL2とグランドラインL3との間に、図8の矢印に示す電気経路が生じ、この電気経路を介して、等電位生成部23からグランドラインL3へと電流が流れる。このとき、スイッチ25の抵抗部25bにおいて電圧降下が生じ、第2供給ラインL2の電位が等電位生成部23で生成された電位、すなわち、第1供給ラインL1の電位よりも低下する。図8において、二重線は、電圧降下により電位が下がっている部分を示している。これにより、測定対象の素子部A11と同じ行に位置する素子部A13~A16においても、陽極と陰極とが異なる電位となるため、素子部A13~A16においても電荷が蓄積される。
このように、短絡検知モードにおいて素子部A11が測定対象とされると、測定対象の素子部A11のみならず、同じ行のその他の素子部A12~A16にも電荷が蓄積される。すなわち、第1供給ラインL1に繋がる静電容量が増加する。このため、電圧計27の出力値は、短絡が生じていない場合に比べて大きく低下する。オペレータは、測定された電圧値を参照することにより、素子部A11に対応するケーブル12aと、隣接するケーブル12aとの間で短絡が生じていることが分かる。
したがって、短絡検知モードにおいて素子部A11~A16が順に測定対象とされることにより、素子部A11~A16に対応するケーブル12aが、隣接するケーブル12aに対して短絡しているか否かを調査することができる。何れの素子部の測定において電圧値が異常であったかによって、短絡が生じているケーブル12aを特定できる。オペレータは、上記のように短絡が生じていると判断した場合、荷重センサ1の修理や交換といった適切な措置をとることができる。
なお、上記の検出回路2によれば、2本の隣り合うケーブル12aにおいて短絡が生じたとしても、検出回路2の動作モードが通常モードに維持されることにより、測定精度はやや低下するものの、荷重の測定自体を継続することが可能となる。
図9は、測定対象の素子部A11に対応するケーブル12aと、素子部A11と同じ行において隣り合う素子部A12に対応するケーブル12aとの間で短絡が生じている場合に、通常モードが継続されることを示す回路図である。
通常モード(スイッチ24がオン状態)で測定が行われると、等電位生成部23の抑止電圧がスイッチ24を介して第2供給ラインL2に供給される。このとき、素子部A11、A12に対応する2本のケーブル12aが短絡線42により短絡されているため、素子部A12においても陽極と陰極とが異なる電位となり、素子部A12にも電荷が蓄積される。しかしながら、ケーブル12aにおいて短絡が生じたとしても、第2供給ラインL2の電圧が抑止電圧から降下することがなく、抑止電圧に維持される。したがって、素子部A13~A16に電荷が蓄積されることはない。このため、電圧計27により測定される電位差は、素子部A12に対する電荷の蓄積により、正常時に比べてやや変動するものの、素子部A13~A16の影響が回避されるため、正常時に比べて大きくは低下しない。よって、測定精度はやや低下するものの、荷重の測定自体をそのまま継続することができる。
<実施形態の効果>
以上、実施形態によれば、以下の効果が奏される。
複数の導電弾性体12をそれぞれ第2切替部40(複数のマルチプレクサ41)に接続する複数のケーブル12a間で短絡が生じた場合、たとえば、測定対象の導電弾性体12とともに、その隣の導電弾性体12が、短絡箇所を介して、グランドラインL3に接続される。これにより、隣の導電弾性体12と、測定対象の被覆付き銅線13の銅線13aとの交差位置にも電荷が蓄積される。また、この短絡により、等電位生成部23からスイッチ25および短絡線42を介してグランドラインL3に電流が流れる。このとき、スイッチ25の抵抗部25bにおいて電圧降下が生じ、第2供給ラインL2の電位が第1供給ラインL1よりも低下する。これにより、測定対象の被覆付き銅線13の銅線13aと他の全ての導電弾性体12との交差位置にも、それぞれ電荷が蓄積される。このように、測定対象の銅線13aにおける全ての交差位置に電荷が蓄積されるため、正常時に比べ、静電容量が大きく変化し、電圧計27によって測定される電位差が大きく低下する。よって、電圧計27の測定結果に基づいて、ケーブル12a間の短絡を適切に見つけ出すことができる。
スイッチ25は、等電位生成部23およびグランドラインL3の何れか一方を、第2供給ラインL2に選択的に接続するスイッチである。このため、非測定期間において、図7に示したように、スイッチ25をグランド側に切り替えることにより、測定対象の素子部を含む行以外の他の行の素子部に蓄積された電荷が、スイッチ25を介してグランドに回収される。すなわち、スイッチ25を、ケーブル12a間の短絡の検出と、各素子部における電荷の回収とに共用できる。これにより、検出回路2の構成の簡素化を図ることができる。
スイッチ25とは別の他のスイッチ26が、第1供給ラインL1とグランドラインL3との間に介挿されている。このため、非測定期間において、図7に示したように、スイッチ25により第1供給ラインL1をグランドラインL3に接続することにより、測定対象の素子部および当該素子部と同じ行の他の素子部に蓄積された電荷を、スイッチ26を介してグランドに回収させることができる。
等電位生成部23と第2供給ラインL2との間に、電気的経路を形成可能なスイッチ24(ジャンパ部)が設けられている。スイッチ24を介して電気的経路が形成された場合、等電位生成部23の抑止電圧が当該電気的経路を通じて第2供給ラインL2に供給される。このため、図9に示したように、ケーブル12a間に短絡が生じたとしても、第2供給ラインL2の電圧が抑止電圧から降下することがなく、抑止電圧に維持される。よって、上記のとおり、精度はやや低下するものの、荷重の測定自体をそのまま継続することができる。また、スイッチ24をオフに切り替えることにより、図8を参照して説明したとおり、短絡を検知できる。よって、スイッチ24を介して電気的経路を形成するか否かによって、短絡が生じた場合も動作を継続させ続ける通常モードと、短絡を見つけ出すための短絡検知モードとの間で、検出回路2の動作モードを切り替えることができる。
等電位生成部23と第2供給ラインL2との間の電気的接続の有無がスイッチ24によって切り替えられるため、等電位生成部23と第2供給ラインL2との間の電気的接続の有無を簡易に切り替えることができ、通常モードと短絡検知モードを簡易に切り替えることができる。
被覆付き銅線13の銅線13aは、線状の導電部材であり、誘電体13bは、銅線13aの周囲に被覆され、導電弾性体12は、導電性の弾性体により形成されている。この構成によれば、誘電体13bと導電弾性体12との間の接触面積により静電容量が生じるため、荷重非付与時の静電容量が微小となる。これに対し、検出回路2では、図9に示すようにケーブル12a間に短絡が生じた場合、測定対象の交差位置(素子部A11)および列方向に隣り合う交差位置(素子部A12)のみならず、同じ被覆付き銅線13の他の交差位置(素子部A13~A16)にも電荷が蓄積されるため、トータルの静電容量は大きくなり、電圧計27の測定結果は正常時に比べて大きく低下する。よって、上記構成のように個々の交差位置の静電容量が微小であっても、電圧計27の測定結果に基づいて、ケーブル12a間の短絡を適切に見つけ出すことができる。
<変更例>
荷重センサ1および検出回路2の構成は、上記実施形態に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施形態において、等電位生成部23と第2供給ラインL2との間に電気的経路を形成するジャンパ部は、電気的接続の有無を切り替えるためのスイッチ24により構成されたが、他の構成であってもよい。たとえば、図10(a)、(b)に示すように、等電位生成部23側の端子51と、第2供給ラインL2側の端子52と、はんだ53とによりジャンパ部が構成されてもよい。
図10(a)、(b)は、それぞれ、この場合の変更例に係る、通常モードおよび短絡検知モードにおける接続状態を模式的に示す図である。オペレータは、動作モードを通常モードに設定する場合、図10(a)に示すように、端子51と端子52とが電気的に接続されるよう、端子51と端子52との間にはんだ53を設置する。一方、オペレータは、動作モードを短絡検知モードに設定する場合、図10(b)に示すように、はんだ53を取り外し、端子51と端子52との間を開放させ、電気的接続を解消させる。なお、端子51と端子52との間は、はんだ53により接続されることに限らず、たとえば、他のジャンパ部材(たとえば、ケーブル等)の両端が端子51、52にはんだ付けされることにより、端子51、52間が接続されてもよい。
また、上記実施形態では、図5に示したように、導電弾性体12の上面には6個の被覆付き銅線13が配置されたが、被覆付き銅線13の数は6個に限らず、1個以上であればよい。また、基材11の表面に6個の導電弾性体12が形成されたが、導電弾性体12の数は6個に限らず、2個以上であればよい。
また、上記実施形態において、被覆付き銅線13に代えて、銅以外の物質からなる線状の導電部材と、当該導電部材を被覆する誘電体と、により構成された電極が用いられてもよい。この場合の電極の導電部材は、たとえば、金属体、ガラス体およびその表面に形成された導電層、樹脂体およびその表面に形成された導電層などにより構成される。
また、上記実施形態において、荷重センサ1の構成は、必ずしも、被覆付き銅線13と導電弾性体12とを組み合わせた構成でなくてもよく、たとえば、上下の電極の間に伸縮性の誘電体が挟まれた構成であってもよい。
また、上記実施形態において、被覆付き銅線13の銅線13aは、第1切替部30(6個のマルチプレクサ31)によって、第1供給ラインL1および第2供給ラインL2の何れか一方に選択的に接続された。しかしながら、第1切替部30はマルチプレクサによって構成されなくてもよく、マルチプレクサ以外の切替回路により構成されてもよい。同様に、導電弾性体12は、第2切替部40(6個のマルチプレクサ41)によって、第2供給ラインL2およびグランドラインL3の何れか一方に選択的に接続された。しかしながら、第2切替部40はマルチプレクサによって構成されなくてもよく、マルチプレクサ以外の切替回路により構成されてもよい。
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。