以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1には、本実施の形態の表示装置の一例として、ヘッドマウントディスプレイとして眼前に画像を表示する表示装置1が示されている。表示装置1は、画像光を出射する表示部5と、表示部5の各位置から出射された画像光を屈折させるレンズ7と、入射した表示部5からの画像光をその内部で導光させて観察者の眼前から出射する光学部材10と、を有している。
表示部5は、画像光を出射する装置である。表示部5は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、LCOS、DLP等の任意の表示部を用いることができる。表示部5は、光学部材10の後述する第1回折光学部材20に対面する位置に配置され、第1回折光学部材20に向けて画像光を出射する。
レンズ7は、表示部5の各位置から出射された画像光を出射位置ごとに屈折させることで進行方向を変化させて、光学部材10の第1回折光学部材20に入射させる。レンズ7は、典型的には、画像光を平行光にするコリメータである。レンズ7は、表示部5と光学部材10との間であって、表示部5の画像光を出射する面に対面する位置に配置される。レンズ7は、例えば凸レンズである。
光学部材10は、画像光をその内部で導光して、観察者の眼前から出射させる。光学部材10に入射する画像光が略平行な方向に進む光であると、光学部材10から出射する画像光を、略平行な方向に進む光とすることができる。光学部材10に入射する光及び光学部材10から出射する光が、図1に実線矢印で示されており、光学部材10の内部を導光する光が、図1に点線矢印で示されている。図1に示されているように、光学部材10の表示部5に対面する位置に入射した光が、光学部材10の画像を表示する位置まで進行方向を変更されながら導光され、観察者の眼前の画像を表示する位置から出射される。
光学部材10は、基材11と、第1回折光学部材20と、第2回折光学部材30と、第3回折光学部材40と、遮光部材70と、を有している。第1回折光学部材20、第2回折光学部材30及び第3回折光学部材40は、基材11のそれぞれ別の位置に積層されている。より詳しくは、第2回折光学部材30は、第1回折光学部材20から第1方向d1にずれた位置において基材11に積層されている。第3回折光学部材40は、第2回折光学部材30から第2方向d2にずれた位置において基材11に積層されている。第2方向d2は、第1方向d1とは非平行な方向であり、図示された例では、第1方向d1と直交する方向である。
以下、図2乃至図4を参照しながら、光学部材10の各構成要素について説明する。図2は、光学部材10の正面図である。図3は、図2におけるIII-III線に沿った光学部材10の断面図である。図4は、光学部材10に含まれる後述する回折光学素子の断面図の一例である。
基材11は、光学部材10において、光を導光させる導光体として機能する。可視光を導光させるために、基材11は透明になっている。また、基材11は、板状の部材である。光は、板状の基材11の一対の主面や基材11上に設けられた回折光学部材等において反射、とりわけ全反射されることで、基材11の内部を導光される。基材11の主面において全反射しやすいよう、基材11の屈折率は、光学部材10の外部の空気等の屈折率より十分に大きくなっていることが好ましい。具体的には、基材11の屈折率は、1.50以上であることが好ましく、1.55以上であることがより好ましく、1.6以上であることがさらに好ましく、1.7以上であることがさらにより好ましく、1.8以上であることが最も好ましい。
なお、本明細書において、屈折率とは、波長が587.6nmの光に対する屈折率のことを意味する。
基材11は、その内部において光を導光させるための形状を維持するために、変形しにくい材料、すなわち剛性の高い材料からなる。また、基材11は、基材11上に積層された第1回折光学部材20、第2回折光学部材30及び第3回折光学部材40を適切に支持している。基材11としては、可視光透過性、剛性、第1回折光学部材20、第2回折光学部材30及び第3回折光学部材40の支持性等を考慮すると、例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、アクリル等の樹脂材料や、ガラスであることが好ましい。特に、樹脂材料は、重量や脆性の観点から好適である。また、基材11は、可視光透過性、剛性や、第1回折光学部材20、第2回折光学部材30及び第3回折光学部材40の支持性等を考慮すると、0.1mm以上2.0mm以下であり、好ましくは0.2mm以上1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.3mm以上0.7mm以下の厚みである。さらに、基材11の主面において光を全反射によって導光させるために、基材11の主面は平坦性が高いことが好ましい。具体的には、基材11のうち平面視における任意の1mm角の領域において、最も厚い部分の厚さと最も薄い部分の厚さの差が5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、0.5μm以下であることがさらにより好ましい。
なお、透明とは、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される可視光透過率が、80%以上であることを意味する。
第1回折光学部材20は、光学部材10に入射した光を回折させる。第1回折光学部材20は、光学部材10の入射部に設けられている。第1回折光学部材20は、表示部5と対面している。第1回折光学部材20は、第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23を含んでいる。
第1回折光学素子21は、基材11へ入射する光のうち第1波長域の光を回折する。言い換えると、第1回折光学素子21は、基材11のシート面の法線方向から入射した第1波長域の光を回折させるように設けられている。第1回折光学素子21は、第1波長域の光を回折させる回折格子を含んでいる。第1回折光学素子21で回折された第1波長域の光は、基材11内を第1方向d1に導光される。なお、基材11内で導光される方向は、基材11の平面視において、基材11内における光の進行方向のことを意味している。したがって、基材11内における厚み方向への移動を無視している。
なお、第1波長域の光を回折させるように設けられているとは、第1波長域に含まれる任意の波長の光に対する回折効率が、10%以上であることを意味している。回折効率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-2450」)を用いて、透過率の差分から測定する。
第1回折光学素子21に含まれる回折格子の回折効率は、適切な範囲にあることが好ましい。具体的には、第1回折光学素子21に含まれる回折格子の回折効率は、50%以下であることが好ましく、10%以上40%以下であることがより好ましく、10%以上30%以下であることがさらに好ましく、15%以上25%以下であることが最も好ましい。第1回折光学素子21に含まれる回折格子の回折効率を適切に設定することで、より多くの第1波長域の光を第1方向d1に導光させることができる。
第2回折光学素子22は、基材11へ入射する光のうち第2波長域の光を回折する。言い換えると、第2回折光学素子22は、基材11のシート面の法線方向から入射した第2波長域の光を回折させるように設けられている。第2回折光学素子22は、第2波長域の光を回折させる回折格子を含んでいる。第2波長域は、第1波長域とは異なる波長域である。好ましくは、第2波長域は、第1波長域とは重複していない波長域である。第2回折光学素子22で回折された第2波長域の光は、基材11内を第1方向d1へ導光される。
第2回折光学素子22に含まれる回折格子の回折効率は、適切な範囲にあることが好ましい。具体的には、第2回折光学素子22に含まれる回折格子の回折効率は、50%以下であることが好ましく、10%以上40%以下であることがより好ましく、10%以上30%以下であることがさらに好ましく、15%以上25%以下であることが最も好ましい。第2回折光学素子22に含まれる回折格子の回折効率を適切に設定することで、より多くの第2波長域の光を第1方向d1に導光させることができる。
第7回折光学素子23は、基材11へ入射する光のうち第3波長域の光を回折する。言い換えると、第7回折光学素子23は、基材11のシート面の法線方向から入射した第3波長域の光を回折させるように設けられている。第7回折光学素子23は、第3波長域の光を回折させる回折格子を含んでいる。第3波長域は、第1波長域及び第2波長域とは異なる波長域である。好ましくは、第3波長域は、第1波長域及び第2波長域とは重複していない波長域である。第7回折光学素子23で回折された第3波長域の光は、基材11内を第1方向d1へ導光される。
第7回折光学素子23に含まれる回折格子の回折効率は、適切な範囲にあることが好ましい。具体的には、第7回折光学素子23に含まれる回折格子の回折効率は、50%以下であることが好ましく、10%以上40%以下であることがより好ましく、10%以上30%以下であることがさらに好ましく、15%以上25%以下であることが最も好ましい。第7回折光学素子23に含まれる回折格子の回折効率を適切に設定することで、より多くの第3波長域の光を第1方向d1に導光させることができる。
第1波長域は、例えば青色の光の波長域であり、第2波長域は、緑色の光の波長域であり、第3波長域は、赤色の光の波長域である。すなわち、第1波長域は、400nm以上490nm以下であり、第2波長域は、500nm以上580nm以下であり、第3波長域は、600nm以上700nm以下である。
なお、特に青色の光の波長域と緑色の光の波長域とは近い波長であるため、青色の光の波長域を含む第1波長域の光を回折させるように意図された回折光学素子において、すなわち第1回折光学素子21において、緑色の光の波長域を含む第2波長域の光を回折させることがあり得る。同様に、緑色の光の波長域を含む第2波長域の光を回折させるように意図された回折光学素子において、すなわち第2回折光学素子22において、青色の光の波長域を含む第1波長域の光を回折させることがあり得る。
第1回折光学素子21は、第2波長域の光及び第3波長域の光を透過させることができる。具体的には、第1回折光学素子21における第2波長域の光及び第3波長域の光の透過率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがさらにより好ましい。同様に、第2回折光学素子22は、第1波長域の光及び第3波長域の光を透過させることができる。具体的には、第2回折光学素子22における第1波長域の光及び第3波長域の光の透過率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがさらにより好ましい。さらに、第7回折光学素子23は、第1波長域の光及び第2波長域の光を透過させることができる。具体的には、第2回折光学素子22における第1波長域の光及び第2波長域の光の透過率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがさらにより好ましい。
レンズ7を透過した画像光を第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23に適切に入射させるために、第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23は、レンズ7より小さくなっていることが好ましい。具体的には、平面視における第1回折光学素子21の最小寸法、第2回折光学素子22の最小寸法及び第7回折光学素子23の最小寸法は、レンズ7の寸法の1/2以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましく、1/50以下であることがさらに好ましく、1/100以下であることがさらにより好ましい。ここで、レンズの寸法とは、レンズの直径のことを意味する。また、平面視における第1回折光学素子21の最小寸法、第2回折光学素子22の最小寸法及び第7回折光学素子23の最小寸法は、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは50μm以上であり、さらにより好ましくは100μm以上である。
図2に示されているように、平面視において、第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23は、それぞれ第1方向d1に直交する方向にずれた位置に設けられている。言い換えると、第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23は、第1方向d1に沿って並んでいない。
第2回折光学部材30は、第1回折光学部材20で回折された光を回折させる。第2回折光学部材30は、第1方向d1に延びている。第2回折光学部材30は、複数の第3回折光学素子31、複数の第4回折光学素子32及び複数の第8回折光学素子33を含んでいる。
第3回折光学素子31は、第1回折光学素子21で回折された光を回折する。すなわち、第3回折光学素子31は、第1方向d1に基材11内を進む第1波長域の光を回折する回折特性を有している。第3回折光学素子31は、第1波長域の光を回折させる回折格子を含んでいる。第3回折光学素子31で回折された第1波長域の光は、第2方向d2に基材11内を導光される。
第4回折光学素子32は、第2回折光学素子22で回折された光を回折する。すなわち、第4回折光学素子32は、第1方向d1に基材11内を進む第2波長域の光を回折する回折特性を有している。第4回折光学素子32は、第2波長域の光を回折させる回折格子を含んでいる。第4回折光学素子32で回折された第2波長域の光は、第2方向d2に基材11内を導光される。
第8回折光学素子33は、第7回折光学素子23で回折された光を回折する。すなわち、第8回折光学素子33は、第1方向d1に基材11内を進む第3波長域の光を回折する回折特性を有している。第8回折光学素子33は、第3波長域の光を回折させる回折格子を含んでいる。第8回折光学素子33で回折された第3波長域の光は、第2方向d2に基材11内を導光される。
第3回折光学素子31の回折効率、第4回折光学素子32の回折効率及び第8回折光学素子33の回折効率は、第1回折光学素子21の回折効率、第2回折光学素子22の回折効率や第7回折光学素子23の回折効率よりも低くなっている。したがって、例えば或る第3回折光学素子31に入射した第1波長域の光の一部のみが回折されて、基材11内を第2方向d2に導光されるようになる。ただし、第2回折光学部材30は第1方向d1に長手方向を有している。複数の第3回折光学素子31は、第2回折光学部材30の長手方向である第1方向d1に互いに離間して配置されている。このため、或る第3回折光学素子31で回折されなかった光は、その後、第3回折光学素子31及び基材11の表面で反射(好ましくは全反射)し、再び別の第3回折光学素子31に入射する。同様に、第2回折光学部材30の複数の第4回折光学素子32は、長手方向である第1方向d1に互いに離間して配置されている。或る第4回折光学素子32で回折されなかった光は、その後、第4回折光学素子32及び基材11の表面で反射(好ましくは全反射)し、再び別の第4回折光学素子32に入射する。さらに、第2回折光学部材30の複数の第8回折光学素子33は、長手方向である第1方向d1に互いに離間して配置されている。或る第8回折光学素子33で回折されなかった光は、その後、第8回折光学素子33及び基材11の表面で反射(好ましくは全反射)し、再び別の第8回折光学素子33に入射する。
第3回折光学素子31の回折効率、第4回折光学素子32の回折効率及び第8回折光学素子33の回折効率は、好ましくは、第1方向d1に進む光が第2回折光学部材30が設けられた位置を通過する前に、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33のそれぞれで回折されるよう設定されている。また、第3回折光学素子31の回折効率、第4回折光学素子32の回折効率及び第8回折光学素子33の回折効率は、好ましくは、第1方向d1に沿った各位置において第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33で回折される光の強度が均一となるように調節されている。第3回折光学素子31第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33で回折された光は、その後、第3回折光学部材40の後述する第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43でさらに回折されることで、画像光として光学部材10から出射する。第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33での回折により、基材11内を進む光の第1方向d1に沿った強度分布を均一化しておくことで、第3回折光学部材40に入射する光の第1方向d1に沿った強度分布を均一化することができる。
第3回折光学素子31の回折効率、第4回折光学素子32の回折効率及び第8回折光学素子33の回折効率は、具体的には、基材11の厚みや、第2回折光学部材30の第1方向d1に沿った長さ等を考慮して決定される。また、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33での回折光の第1方向d1に沿った強度分布を均一化する観点から、第3回折光学素子31の回折効率、第4回折光学素子32の回折効率及び第8回折光学素子33の回折効率は、第1回折光学部材20に近接する側で低く、入射光の強度が低下する第1回折光学部材20から離間する側で高くなっていることが好ましい。すなわち、第3回折光学素子31の回折効率、第4回折光学素子32の回折効率及び第8回折光学素子33の回折効率は、第1方向d1に沿って第1回折光学部材20から離間するにつれて高くなっていることが好ましい。
図2に示されているように、平面視において、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33は、第1方向d1に直交する方向にずれた位置に設けられている。言い換えると、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33は、第1方向d1に沿って並んでいない。さらに、第3回折光学素子31第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33は、第2方向d2に直交する方向にずれた位置に設けられている。言い換えると、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33は、第2方向d2に沿って並んでいない。
また、第1回折光学部材20の第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23は、第1方向d1に導光させるよう光を回折させ、第2回折光学部材30の第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33は、第2方向d2に導光させるよう光を回折させる。すなわち、第1回折光学部材20の第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23で回折された光は、第1回折光学部材20に対して第2回折光学部材30が設けられた方向に進み、第2回折光学部材30の第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33で回折された光は、第2回折光学部材30に対して第3回折光学部材40が設けられた方向に進む。言い換えると、第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23は、第1回折光学部材20に対して第2回折光学部材30が設けられた方向に光を回折させるように設けられており、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33は、第2回折光学部材30に対して第3回折光学部材40が設けられた方向に光を回折させるように設けられている。
第3回折光学部材40は、第2回折光学部材30で回折された光を回折して、基材11から出射させる。第3回折光学部材40は、光学部材10の出射部に設けられている。第3回折光学部材40は、光学部材10の観察者の眼前に位置する。第3回折光学部材40は、第1方向d1及び第2方向d2に延びている。第3回折光学部材40は、複数の第5回折光学素子41、複数の第6回折光学素子42及び複数の第9回折光学素子43を含んでいる。
第5回折光学素子41は、第3回折光学素子31で回折された光を回折する。すなわち、第5回折光学素子41は、第2方向d2に基材11内を進む第1波長域の光を回折する回折特性を有している。第5回折光学素子41は、第1波長域の光を回折させる回折格子を含んでいる。第5回折光学素子41で回折された第1波長域の光は、基材11から出射する。
第6回折光学素子42は、第4回折光学素子32で回折された光を回折する。すなわち、第6回折光学素子42は、第2方向d2に基材11内を進む第2波長域の光を回折する回折特性を有している。第6回折光学素子42は、第2波長域の光を回折させる回折格子を含んでいる。第6回折光学素子42で回折された第2波長域の光は、基材11から出射する。
第9回折光学素子43は、第8回折光学素子33で回折された光を回折する。すなわち、第9回折光学素子43は、第2方向d2に基材11内を進む第3波長域の光を回折する回折特性を有している。第9回折光学素子43は、第3波長域の光を回折させる回折格子を含んでいる。第9回折光学素子43で回折された第3波長域の光は、基材11から出射する。
第5回折光学素子41の回折効率、第6回折光学素子42の回折効率及び第9回折光学素子43の回折効率は、第1回折光学素子21の回折効率、第2回折光学素子22の回折効率や第7回折光学素子23の回折効率よりも低くなっている。したがって、例えば第5回折光学素子41の或る位置に入射した第1波長域の光の一部のみが回折されて、基材11から出射されるようになる。ただし、第3回折光学部材40は、第2方向d2に延びている。このため、第5回折光学素子41の或る位置で回折されなかった光は、その後、第5回折光学素子41及び基材11の表面で反射(好ましくは全反射)し、再び第5回折光学素子41に入射する。同様に、第6回折光学素子42の或る位置で回折されなかった光は、その後、第6回折光学素子42及び基材11の表面で反射(好ましくは全反射)し、再び第6回折光学素子42に入射する。さらに、第9回折光学素子43の或る位置で回折されなかった光は、その後、第9回折光学素子43及び基材11の表面で反射(好ましくは全反射)し、再び第9回折光学素子43に入射する。
第5回折光学素子41の回折効率、第6回折光学素子42の回折効率及び第9回折光学素子43の回折効率は、好ましくは、第2方向d2に進む光が第3回折光学部材40が設けられた位置を通過する前に、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43で回折されるよう設定されている。また、第5回折光学素子41の回折効率、第6回折光学素子42の回折効率及び第9回折光学素子43の回折効率は、好ましくは、第2方向d2に沿った各位置において第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43で回折される光の強度が均一となるように調節されている。第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43で回折された光は、画像光として光学部材10から出射する。第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43での回折により、光学部材10から出射する画像光の第2方向d2に沿った強度分布を均一化することができる。
第5回折光学素子41の回折効率、第6回折光学素子42の回折効率及び第9回折光学素子43の回折効率は、具体的には、基材11の厚みや、第3回折光学部材40の第2方向d2に沿った長さ等を考慮して決定される。また、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43での回折光の第2方向d2に沿った強度分布を均一化する観点から、第5回折光学素子41の回折効率、第6回折光学素子42の回折効率及び第9回折光学素子43の回折効率は、第2回折光学部材30に近接する側で低く、入射光の強度が低下する第2回折光学部材30から離間する側で高くなっていることが好ましい。すなわち、第5回折光学素子41の回折効率、第6回折光学素子42の回折効率及び第9回折光学素子43の回折効率は、第2方向d2に沿って第2回折光学部材30から離間するにつれて高くなっていることが好ましい。
図2に示されているように、平面視において、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43は、第2方向d2に直交する方向にずれた位置に設けられている。言い換えると、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43は、第2方向d2に沿って並んでいない。
第1回折光学素子21、第2回折光学素子22、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42、第7回折光学素子23、第8回折光学素子33及び第9回折光学素子43は、典型的には、ホログラムとすることができる。第1~第9回折光学素子の回折格子のパターンのうち少なくとも1つは、図4に示すように、凹凸形状によって形成されている表面レリーフ型のホログラムである。この凹凸形状の回折格子のパターンに光が入射することで、光が回折される。このような回折格子パターンは、例えば凹凸形状の凹凸の深さや幅を調節することで、容易に回折効率を調節することができる。また、凹凸形状の回折格子のパターンは、高い回折効率とすることができる。さらに、凹凸形状の回折格子のパターンは、回折させる光の波長域を狭い範囲にすることができる。とりわけ、図4に示された凹凸形状は、基材11のシート面に対して傾斜した方向に延びている。凹凸形状を傾斜させることで、回折光学素子によって回折された光の進行方向を一方向に偏らせることができる。凹凸形状の凹凸の深さや幅、傾斜角度は、回折させる光の回折方向や回折効率に応じて適宜に設定することができる。
表面レリーフ型のホログラムは、例えばそれぞれ基材11の一方の面に凹凸形状を型押しすることで形成することができる。
なお、第1~第9回折光学素子は、図4に示された例に限らず、位相型のホログラムであってもよいし、振幅型のホログラムであってもよい。また、第1~第9回折光学素子は、反射型のホログラムであってもよいし、透過型のホログラムであってもよい。さらに、第1~第9回折光学素子は、体積ホログラムであってもよいし、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)であってもよい。
とりわけ、第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23は、体積ホログラムであることが好ましい。一方、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32,第8回折光学素子33、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43は、表面レリーフ型のホログラムであることが好ましい。体積ホログラムは、表面レリーフ型のホログラムより回折格子の回折効率を高くしやすい。一方、表面レリーフ型のホログラムは、体積ホログラムより広い角度範囲の光を回折させることができる。したがって、このような第1、第2、第7回折光学素子は、第3~第6、第8、第9回折光学素子より回折格子の回折効率を高くなっており、第3~第6、第8、第9回折光学素子は、第1、第2、第7回折光学素子より広い角度範囲の光を回折させるようになっている。
また、図3に示された例のように、第1回折光学部材20、第2回折光学部材30及び第3回折光学部材40が光学部材10の表面に形成されている場合、第1~第3回折光学部材は、基材11とともに光を導光させる。第1~第3回折光学部材の表面において光を全反射させるために、第1回折光学部材20、第2回折光学部材30及び第3回折光学部材40の屈折率は、光学部材10の外部の空気等の屈折率より十分に大きくなっていることが好ましい。具体的には、第1回折光学部材20、第2回折光学部材30及び第3回折光学部材40の屈折率は、1.50以上であることが好ましく、1.55以上であることがより好ましく、1.6以上であることがさらに好ましく、1.7以上であることがさらにより好ましく、1.8以上であることが最も好ましい。
図3に示された例では、第1回折光学部材20、第2回折光学部材30及び第3回折光学部材40は、基材11の同じ側に設けられている。しかしながら、これらは基材11の一方の側と他方の側に設けられていてもよい。あるいは、例えば第1回折光学部材20が、基材11の一方の側と他方の側の両方に設けられていてもよい。基材11の一方の側に設けられる回折光学素子は、反射型のホログラムとなり、基材11の他方の側に設けられる回折光学素子は、透過型のホログラムとなる。
遮光部材70は、第3回折光学部材40の第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43のそれぞれの間に設けられている。遮光部材70は、第3回折光学部材40において、特定の波長の光が意図された回折光学素子とは異なる回折光学素子に入射することを抑制する。具体的な例として、第1波長域の光は、第5回折光学素子41に入射することが意図されているが、この第1波長域の光が少しずれてしまい、第6回折光学素子42や第9回折光学素子43へ向かうことがある。言い換えると、第5回折光学素子41との境界付近の第6回折光学素子42や第9回折光学素子43に第1波長域の光が入射し得る。第5回折光学素子41と第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43のそれぞれの間に遮光部材70が設けられていることで、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43に第1波長域の光が遮光部材70に入射することになる。このため、遮光部材70によって、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43に第1波長域の光が入射してしまうことが抑制される。
図2に示された例では、遮光部材70によって、複数の開口部71が形成されている。この開口部71に、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43が配置されている。言い換えると、遮光部材70は、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43を区画している。
次に、表示装置1及び光学部材10の作用について、図5を参照しながら説明する。図5は、図3に示した光学部材10の断面図において、表示部5から入射した光のうち第1波長域の光が観察者の眼前に表示される状態を示している。
まず、表示部5が、拡散光となっている画像光を出射する。出射される画像光は、第1波長域の光、第2波長域の光及び第3波長域の光を含んでいる。典型的には、画像光は、青色の波長域の光と、緑色の波長域の光と、赤色の波長域の光と、を含んでいる。
表示部5から出射した画像光は、レンズ7に入射する。図5に示すように、レンズ7によって、画像光は、拡散光から略平行な方向に進む光となる。略平行な光となった画像光が、光学部材10の第1回折光学部材20に入射する。
第1回折光学部材20に入射した画像光のうち、図5に示されたように、第1波長域の光は、第1回折光学素子21によって回折される。一方、図示されていない第2波長域の光は、第2回折光学素子22によって回折され、第3波長域の光は、第7回折光学素子23によって回折される。第1回折光学素子21によって回折された光、第2回折光学素子22によって回折された光及び第7回折光学素子23によって回折された光は、基材11の一対の主面や基材11上に設けられた回折光学部材等で全反射されることで、第1方向d1に基材11内を導光される。
図5に示すように、第1回折光学部材20の第1回折光学素子21で回折された第1波長域の光は、第2回折光学部材30に入射する。第2回折光学部材30に入射した第1波長域の光は、第3回折光学素子31によって回折される。第3回折光学素子31によって回折された光は、第2方向d2に基材11内を導光される。第3回折光学素子31の回折効率は、第1回折光学素子21の回折効率よりも低くなっているため、或る第3回折光学素子31に入射した第1波長域の光の一部のみが回折されて、第2方向d2に基材11内を導光される。或る第3回折光学素子31で回折されなかった光は、その後、第3回折光学素子31及び基材11の表面で反射し、再び別の第3回折光学素子31に入射する。
同様に、図示されていない第1回折光学部材20の第2回折光学素子22で回折された第2波長域の光及び第7回折光学素子23で回折された第3波長域の光は、第2回折光学部材30に入射する。第2回折光学部材30に入射した第2波長域の光は、第4回折光学素子32によって回折され、第3波長域の光は、第8回折光学素子33によって回折される。第4回折光学素子32の回折効率及び第8回折光学素子33の回折効率は、第2回折光学素子22の回折効率や第7回折光学素子23の回折効率よりも低くなっているため、或る第4回折光学素子32に入射した第2波長域の光の一部のみが回折されて、第2方向d2に基材11内を導光され、或る第8回折光学素子33に入射した第3波長域の光の一部のみが回折されて、第2方向d2に基材11内を導光される。第4回折光学素子32の或る位置で回折されなかった光は、その後、第4回折光学素子32及び基材11の表面で反射し、再び別の第4回折光学素子32に入射する。第8回折光学素子33の或る位置で回折されなかった光は、その後、第8回折光学素子33及び基材11の表面で反射し、再び別の第8回折光学素子33に入射する。
第3回折光学素子31の回折効率、第4回折光学素子32の回折効率及び第8回折光学素子33の回折効率は、第1方向d1に沿った各位置において、第3回折光学素子31で回折される光の強度、第4回折光学素子32で回折される光の強度及び第8回折光学素子33で回折される光の強度が均一となるように調節されている。本実施の形態では、第3回折光学素子31の回折効率、第4回折光学素子32の回折効率及び第8回折光学素子33の回折効率は、第1方向d1に沿って第1回折光学部材20から離間するにつれて高くなっている。したがって、第3回折光学素子31で回折された光の第1方向d1に沿った強度分布、第4回折光学素子32での回折された光の第1方向d1に沿った強度分布及び第8回折光学素子33で回折された光の第1方向d1に沿った強度分布は、均一化されて、第3回折光学部材40に入射する。
第2回折光学部材30の第3回折光学素子31で回折された第1波長域の光、第4回折光学素子32で回折された第2波長域の光及び第8回折光学素子33で回折された第3波長域の光は、第3回折光学部材40に入射する。各波長域の光は、第2方向d2に沿って第3回折光学部材40に入射する。
図5に示すように、第3回折光学部材40に入射した第1波長域の光は、第5回折光学素子41によって回折される。第5回折光学素子41によって回折された光は、基材11から出射する。一方、図示されていない第3回折光学部材40に入射した第2波長域の光は、第6回折光学素子42によって回折され、第3波長域の光は、第9回折光学素子43によって回折される。第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43によって回折された光は、基材11から出射する。第5回折光学素子41の回折効率、第6回折光学素子42の回折効率及び第9回折光学素子43の回折効率は、第1回折光学素子21の回折効率、第2回折光学素子22の回折効率や第7回折光学素子23の回折効率よりも低くなっているため、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43の或る位置に入射した光の一部のみが回折されて、基材11から出射する。第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43の或る位置で回折されなかった光は、その後、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43の表面で反射し、再び第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43に入射する。
第5回折光学素子41の回折効率は、第2方向d2に沿った各位置において第5回折光学素子41で回折される光の強度が均一となるように調節されている。本実施の形態では、第5回折光学素子41の回折効率は、第2方向d2に沿って第2回折光学部材30から離間するにつれて高くなっている。したがって、第5回折光学素子41で回折されて出射した光の第2方向d2に沿った強度分布が均一化されて、基材11から出射する。
同様に、第6回折光学素子42の回折効率及び第9回折光学素子43の回折効率は、第2方向d2に沿った各位置において第6回折光学素子42で回折される光の強度及び第9回折光学素子43で回折される光の強度が均一となるように調節されている。本実施の形態では、第6回折光学素子42の回折効率及び第9回折光学素子43の回折効率は、第2方向d2に沿って第2回折光学部材30から離間するにつれて高くなっている。したがって、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43で回折されて出射した光の第2方向d2に沿った強度分布が均一化されて、基材11から出射する。
基材11から出射した光を観察者が観察することで、画像を視認することができる。観察者の眼前に対面する第3回折光学部材40において出射される第1波長域の光、第2波長域の光及び第3波長域の光が第1方向d1及び第2方向d2において均一な強度となっている略平行な光であるため、観察者の位置がずれたとしても、画像を均一な明るさで観察することができる。
従来の光学部材では、赤色、緑色、青色に対応した各回折光学素子に対応して、3つの基材を有している。そこで、基材を1枚にするために、赤色、緑色、青色のそれぞれの波長の光に対応した3種の回折光学素子を基材に積層することが考えられた。例えば表示部に対面する部分に3つの回折光学素子が積層される。しかしながら、上述したように、画像光の入射部に設けられたある波長の光に対応する回折光学素子で回折された光が、画像光の出射部に設けられた当該波長とは異なる波長の光に対応する回折光学素子で回折されてしまうことがある。このような光は意図された方向に回折されないため、表示装置に表示されるべき画像の品質を低下させてしまう。とりわけ、このような現象は、近い波長に対応する回折光学素子の間で起こりやすい。具体的には、青色の波長の光に対応した回折光学素子は、青色の波長に近い波長の緑色の波長の光をも回折させてしまい得る。このように、表示される画像の品質の低下させることなく、基材を1枚にすることは困難であった。
一方、本実施の形態の光学部材10では、平面視において、第1回折光学素子21及び第2回折光学素子22は、第1方向d1に直交する方向にずれた位置に設けられている。また、平面視において、第3回折光学素子31及び第4回折光学素子32は、第1方向d1に直交する方向にずれた位置に設けられている。そして、第1回折光学素子21及び第2回折光学素子22で回折された光は、第1方向d1に導光される。このため、第1回折光学素子21で回折された第1波長域の光は、第2波長域の光を回折させるように意図された第4回折光学素子32に入射することなく、第3回折光学素子31に入射することができる。同様に、第2回折光学素子22で回折された第2波長域の光は、第1波長域の光を回折させるように意図された第3回折光学素子31に入射することなく、第4回折光学素子32に入射することができる。すなわち、第1波長域の光と第2波長域の光とが同じ基材11内を導光しても、第1回折光学部材20と第2回折光学部材30との間では、意図されない回折が起こりにくい。したがって、基材11を1枚にしながら、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
さらに、平面視において、第3回折光学素子31及び第4回折光学素子32は、第2方向d2に直交する方向にずれた位置に設けられている。また、平面視において、第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42は、第2方向d2に直交する方向にずれた位置に設けられている。そして、第3回折光学素子31及び第4回折光学素子32で回折された光は、第2方向d2に導光される。このため、第3回折光学素子31で回折された第1波長域の光は、第2波長域の光を回折させるように意図された第6回折光学素子42に入射することなく、第5回折光学素子41に入射することができる。同様に、第4回折光学素子32で回折された第2波長域の光は、第1波長域の光を回折させるように意図された第5回折光学素子41に入射することなく、第6回折光学素子42に入射することができる。すなわち、第1波長域の光と第2波長域の光とが同じ基材11内を導光しても、第2回折光学部材30と第3回折光学部材40との間でも、意図されない回折が起こりにくい。したがって、基材11を1枚にしながら、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
加えて、平面視において、各回折光学素子が基材11上のずれた位置に設けられているため、各回折光学素子は、基材11のシート面の法線方向に積層されていない。したがって、回折光学素子同士の界面は形成されていない。このため、回折光学素子が積層されている場合に比べて、反射等の界面における光学的作用を減らすことができる。基材11内を導光する光が意図しない光学的作用を受けにくくなるため、光を効率よく利用することができる。
また、複数の第3回折光学素子31は、第1方向d1に互いに離間して配置されている。このため、複数の第3回折光学素子31が、複数の第4回折光学素子32と第1方向d1にも第2方向d2にも重ならずに、第2回折光学部材30において第1方向d1の全体に亘って配置することができる。すなわち、第2回折光学部材30の全体から、第1波長域の光を回折して第3回折光学部材40に導光させることができる。
さらに、第1回折光学素子21における第2波長域の光の透過率は、30%以上である。言い換えると、第1回折光学素子21で回折されない波長の光は、第1回折光学素子21を透過可能になっている。回折させることが意図されていない波長の光を透過させることで、当該回折光学素子において、意図されない波長の光の回折が生じにくくなる。このため、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。このため、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
また、光学部材10は、第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42の間に設けられた遮光部材70をさらに備える。とりわけ、第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42は、遮光部材70によって形成された開口部71に配置されている。遮光部材70によって、第3回折光学部材40において、基材11内を導光されている間に少し方向がずれた第1波長域の光が第6回折光学素子42に入射することを抑制することができ、基材11内を導光されている間に少し方向がずれた第2波長域の光が第5回折光学素子41に入射することを抑制することができる。すなわち、第3回折光学部材40において、意図されない回折が起こりにくい。したがって、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
さらに、第1回折光学素子21、第2回折光学素子22、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32、第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42の回折格子のパターンのうち少なくとも1つは、凹凸形状によって形成されている。凹凸形状によって形成された回折格子のパターンは、回折効率の調節が容易であり、また、高い回折効率とすることができる。具体的には、各回折光学素子における回折格子のパターンが設けられた領域と設けられていない領域との比率を調節することで、各回折光学素子の回折効率を調節することができる。各回折光学素子において、回折格子のパターンが設けられた領域の比率を増やすことで、回折効率を高くすることができ、回折格子のパターンが設けられていない領域の比率を増やすことで、回折効率を低くすることができる。各回折光学素子において、回折格子のパターンが設けられていない領域は、凹凸形状が設けられていない平坦な領域であってもよいし、他の回折格子のパターンを形成する凹凸形状が設けられた領域となっていてもよい。特に第1回折光学素子21及び第2回折光学素子22の回折効率を高くすることにより、表示部5からの画像光を効率よく回折させて、観察者の眼前に表示させることができる。また、特に第3回折光学素子31、第4回折光学素子32、第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42の回折効率を調節することで、光学部材10から出射する画像光の強度分布を均一化することができる。具体的には、第3回折光学素子31及び第4回折光学素子32では、第1回折光学部材20に近いほど回折効率を低く、第1回折光学部材20から離間するほど回折効率を高くすることで、第1方向d1において光学部材10から出射する画像光の強度分布を均一化することができる。また、第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42では、第2回折光学部材30に近いほど回折効率を低く、第2回折光学部材30から離間するほど回折効率を高くすることで、第2方向d2において光学部材10から出射する画像光の強度分布を均一化することができる。さらには、このような光学部材10の原版は、容易に作製することができる。
とりわけ、凹凸形状は、基材11のシート面に対して傾斜した方向に延びている。この場合、回折光学素子によって回折された光の進行方向を一方向に偏らせることができる。すなわち、導光させる方向に光を回折させやすくすることができる。このため、光を効率よく利用することができる。さらに、凹凸形状によって回折される光の波長域を狭めることができる。このため、意図されない波長域の光を回折することが効果的に抑制される。意図されない回折が起こりにくくなることで、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
また、画像光は、レンズ7の全体に入射し、レンズ7において光学的な作用を受ける。言い換えると、レンズ7の全体から画像光が出射する。レンズ7の寸法に対して第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23が十分に小さければ、レンズ7を透過した画像光を第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23に適切に入射させることができる。具体的には、平面視における第1回折光学素子21の最小寸法及び第2回折光学素子22の最小寸法は、レンズ7の寸法の1/2以下であることで、好ましくは1/10以下であることで、より好ましくは1/50以下であることで、さらに好ましくは1/100以下であることで、第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23に容易に入射させることができる。さらに、第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23の最小寸法がレンズに比べて十分に小さいことで第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23を第1回折光学部材20に分散させて配置できるため、第1回折光学部材20に入射する画像光を波長によってむらが生じることなく回折させることができる。このため、画像光を光学部材10から波長によってむらが生じることなく出射させることができる。
なお、回折光学素子の最小寸法が小さすぎると、回折光学素子内の回折格子が少なくなって回折効率が低下し、さらに他の回折光学素子との境界が多くなるため、回折光学素子間の境界でのノイズが大きくなって回折効率が低下する。とりわけ、回折光学素子の最小寸法が1μm未満となると、回折光学素子の回折効率が著しく低下するため、好ましくない。したがって、回折光学素子の最小寸法は、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることがさらにより好ましい。
また、光学部材10の入射部に設けられた第1回折光学部材20において、第1回折光学素子21及び第2回折光学素子22は、体積ホログラムとなっている。体積ホログラムでは、回折格子の回折効率を比較的高くすることができる。したがって、光学部材10に入射した画像光を第1回折光学部材20で効率よく回折して利用することができる。
一方、第1回折光学部材20からの光を第3回折光学部材40へ回折させる第2回折光学部材30において、第3回折光学素子31及び第4回折光学素子32は、表面レリーフ型のホログラムとなっている。表面レリーフ型のホログラムは、回折格子において比較的広い角度範囲の光を回折させることができる。すなわち、回折光学素子に入射する光の角度が意図された方向とずれていても、回折されやすくなる。このため、第1回折光学部材20からの光が意図された角度からずれて第2回折光学部材30に入射しても、第2回折光学部材30の第3回折光学素子31及び第4回折光学素子32で回折させることができる。とりわけ、第1回折光学素子21及び第2回折光学素子22が体積ホログラムである場合、その製造時等に回折光学素子が意図された形状から変形してしまうことがある。変形した回折光学素子における回折格子は、意図された方向に光を回折させにくくなる。第3回折光学素子31及び第4回折光学素子32が表面レリーフ型のホログラムとなっていることで、体積ホログラムが変形してしまっても、このような意図された方向からずれた光を回折して利用することができる。
また、光学部材10の出射部に設けられた第3回折光学部材40において、第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42は、表面レリーフ型のホログラムとなっている。表面レリーフ型のホログラムは、回折格子において比較的広い角度範囲の光を回折させることができる。すなわち、回折光学素子に入射する光の角度が意図された方向とずれていても、回折されやすくなる。このため、第2回折光学部材30からの光が意図された角度からずれて第3回折光学部材40に入射しても、第3回折光学部材40の第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42で回折させて、光学部材10から出射することができる。すなわち、画像光を効率よく出射して利用することができる。とりわけ、第1回折光学素子21及び第2回折光学素子22が体積ホログラムである場合、第2回折光学部材30からの光は、意図された方向からずれやすくなっている。第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42が表面レリーフ型のホログラムとなっていることで、このような意図された方向からずれた光を回折して利用することができる。
さらに、体積ホログラムの厚さは、表面レリーフ型のホログラムの厚さより十分に厚い。このため、第1回折光学素子21及び第2回折光学素子22が体積ホログラムであり、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32、第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42が表面レリーフ型のホログラムであると、第1回折光学素子21及び第2回折光学素子22は、基材11に対して第3回折光学素子31、第4回折光学素子32、第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42より突出することになる。このため、外部の部材は第3回折光学素子31、第4回折光学素子32、第5回折光学素子41及び第6回折光学素子42に当接しにくくなっている。体積ホログラムによって、表面レリーフ型のホログラムの微細な凹凸形状を、外部からの衝撃から保護することができる。すなわち、体積ホログラムによって、表面レリーフ型のホログラムが損なわれることを抑制することができる。
なお、第1回折光学素子21に含まれる回折格子の回折効率及び第2回折光学素子22に含まれる回折格子の回折効率は、適切な範囲にあることが好ましい。例えば、図6に示すように、第1回折光学素子21において回折格子で回折された光は、基材11の主面で全反射された後、再度第1回折光学素子21に入射することがある。再度第1回折光学素子21に入射した光は、再度第1回折光学素子21の回折格子で回折され得る。再度回折格子で回折された光は、基材11内には向かわず、光学部材10から出射してしまう。このため、第1回折光学素子21に含まれる回折格子の回折効率が高すぎる場合、複数回にわたって回折格子で回折されると、最終的に第1回折光学部材20から第2回折光学部材30に導光される光が少なくなってしまう。本件発明者らが確認したところ、表示部5から入射して第1回折光学素子21において回折格子で回折された光は、基材11の主面で全反射された後、1~5回程度、特には4回、再度第1回折光学素子21に入射することが知見された。
図7は、回折格子の回折効率と一度回折格子で回折された後に再度回折光学素子に入射する回数との関係において、最終的に第1回折光学部材20から第2回折光学部材30に導光される光の割合を示している表である。すなわち、表示部5から入射する光を100%とした場合の、第1回折光学部材20から第2回折光学部材30に導光される光の割合を示している。図7から理解されるように、一度回折格子で回折された後に再度回折光学素子に入射する回数が1回以上の場合、回折格子の回折効率は、50%以下であることが好ましい。また、一度回折格子で回折された後に再度回折光学素子に入射する回数が3回以上の場合、回折格子の回折効率は、10%以上40%以下であることが好ましく、10%以上30%以下であることがより好ましい。さらに、一度回折格子で回折された後に再度回折光学素子に入射する回数が4回以上の場合、回折格子の回折効率は、15%以上25%以下であることが好ましい。
以上のように、本実施の形態の光学部材10は、基材11と、基材11に積層され、第1回折光学素子21及び第2回折光学素子22を含む第1回折光学部材20と、第1回折光学部材20から第1方向d1にずれた位置において基材11に積層され、複数の第3回折光学素子31及び複数の第4回折光学素子32を含む第2回折光学部材30と、第2回折光学部材30から第1方向d1とは非平行な第2方向d2にずれた位置において基材11に積層され、複数の第5回折光学素子41及び複数の第6回折光学素子42を含む第3回折光学部材40と、を備える光学部材であって、第1回折光学素子21は、基材11へ入射する光のうち第1波長域の光を回折して、回折された第1波長域の光が、第1方向d1に基材11内を導光されるようにし、第2回折光学素子22は、基材11へ入射する光のうち第1波長域とは異なる第2波長域の光を回折して、回折された第2波長域の光が、第1方向d1に基材11内を導光されるようにし、第3回折光学素子31は、第1波長域の光を回折して、回折された第1波長域の光が、第2方向d2に基材11内を導光されるようにし、第4回折光学素子32は、第2波長域の光を回折して、回折された第2波長域の光が、第2方向d2に基材内11を導光されるようにし、第5回折光学素子41は、第1波長域の光を回折して、回折された第1波長域の光が、基材11から出射するようにし、第6回折光学素子42は、第2波長域の光を回折して、回折された第2波長域の光が、基材11から出射するようにし、平面視において、第1回折光学素子21及び第2回折光学素子22は、第1方向d1に直交する方向にずれた位置に設けられており、平面視において、第3回折光学素子31及び第4回折光学素子32は、第1方向d1に直交する方向にずれた位置に設けられている。このような光学部材10によれば、第1波長域の光と第2波長域の光とが同じ基材11内を導光しても、第1回折光学部材20と第2回折光学部材30との間では、意図されない回折が起こりにくい。したがって、基材11を1枚にしながら、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
本発明の態様は、上述した個々の実施の形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
例えば、第1回折光学素子21、第3回折光学素子31及び第5回折光学素子41が、青色の波長域の光だけでなく、赤色の波長域の光をも回折するようにしてもよい。言い換えると、第1波長域が、青色の波長域だけでなく赤色の波長域をも含んでいてもよい。すなわち、第1波長域は、600nm以上700nm以下及び400nm以上490nm以下であってもよい。この場合、第7回折光学素子23、第8回折光学素子33及び第9回折光学素子43は、設けられていなくてもよい。
青色の波長域と赤色の波長域とは、十分に離れているため、同一の回折光学素子で回折しても、回折光学素子内においてそれぞれの波長域に対応した回折格子で回折されるため、意図されない方向に回折されにくい。したがって、第1波長域がこのような2つの色の波長域を含んでいても、表示装置に表示されるべき画像の品質が低下しにくい。
あるいは、第1回折光学素子21、第3回折光学素子31及び第5回折光学素子41が、青色の波長域の光だけでなく、緑色の波長域の光をも回折するようにしてもよい。言い換えると、第1波長域が、青色の波長域だけでなく緑色の波長域をも含んでいてもよい。すなわち、第1波長域は、400nm以上550nm以下であってもよい。この場合、第2回折光学素子22、第4回折光学素子32及び第6回折光学素子42が回折する第2波長域の光が赤色であり、第7回折光学素子23、第8回折光学素子33及び第9回折光学素子43は、設けられていなくてもよい。
青色の波長域と緑色の波長域とは近いため、回折光学素子内において1つの波長域として回折格子を対応させることができる。このような回折格子で回折させることで、同一の波長に対応した回折格子で2つの色の波長域の光を回折させることができる。同一の回折格子で回折されるため、意図されない方向に回折されにくい。したがって、第1波長域がこのような2つの色の波長域を含んでいても、表示装置に表示されるべき画像の品質が低下しにくい。
また、表示部5は、第1波長域の光が第1回折光学素子21にのみ入射し、第2波長域の光が第2回折光学素子22にのみ入射し、第3波長域の光が第7回折光学素子23にのみ入射するよう、画像光を出射してもよい。この場合、表示部5から出射する画像光を第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23に効率よく入射させることができる。すなわち、表示部5からの光を効率よく利用することができる。
また、図8に示すように、光学部材10は、第1回折光学部材20から第2方向d2にずれた位置において基材11に積層された第4回折光学部材50をさらに有していてもよい。この場合、第2回折光学部材30は、複数の第3回折光学素子31及び複数の第8回折光学素子33を含んでいるが、第4回折光学素子32を含んでいない。一方、第4回折光学部材50が、第4回折光学素子51を含んでいる。
図8に示された例では、第2回折光学素子22で回折された第2波長域の光は、第2方向d2に基材11内を導光され、第4回折光学部材50に入射する。第4回折光学部材50に入射した第2波長域の光は、第4回折光学素子51によって回折される。第4回折光学素子51の回折効率は、第1回折光学素子21の回折効率、第2回折光学素子22の回折効率や第7回折光学素子23の回折効率よりも低くなっているため、第4回折光学素子51の或る位置に入射した第2波長域の光の一部のみが回折されて、第1方向d1に基材11内を導光される。第4回折光学素子51の或る位置で回折されなかった光は、その後、第4回折光学素子51及び基材11の表面で反射し、再び第4回折光学素子51に入射する。
図8の例においても、第4回折光学素子51の回折効率は、第2方向d2に沿った各位置において、第4回折光学素子51で回折される光の強度が均一となるように調節されている。第4回折光学素子32の回折効率は、第2方向d2に沿って第1回折光学部材20から離間するにつれて高くなっている。したがって、第4回折光学素子51での回折された光の第2方向d2に沿った強度分布は、均一化されて、第3回折光学部材40に入射する。
第4回折光学素子51で回折された第2波長域の光は、第1方向d1に沿って第3回折光学部材40に入射する。一方、第1波長域の光は、上述した実施の形態と同様に、第2方向d2に沿って第3回折光学部材40に入射する。第3回折光学部材40において第2波長域の光は、第6回折光学素子42によって回折されて、基材11から出射する。
回折光学素子に入射した光を回折させる条件には、回折する光の波長のほかに、回折光学素子に入射する光の角度もある。すなわち、意図された方向から回折光学素子に入射する光は回折されやすく、意図された方向から大きく異なる方向から回折光学素子に入射する光はほとんど回折されない。具体的には、回折光学素子が上述した表面レリーフ型のホログラムである場合、進行方向が凹凸形状の延びる方向に対して大きな角度をなす光は回折されやすく、小さな角度をなす光は回折されにくい。例えば、意図された方向と直交する方向から回折光学素子に入射する光、すなわち進行方向が凹凸形状の延びる方向に対して平行な光は、ほとんど回折されない。
この変形例では、第1波長域の光は、第3回折光学部材40に第2方向d2に沿って入射し、第2波長域の光は、第3回折光学部材40に第1方向d1に沿って入射する。そして、第5回折光学素子41は、第2方向d2に導光されている第1波長域の光を回折するよう設けられており、第6回折光学素子42は、第1方向d1に導光されている第2波長域の光を回折するよう設けられている。例えば各回折光学素子が上述した表面レリーフ型のホログラムである場合、第5回折光学素子41の凹凸形状は、第2方向d2に交差する方向に延びており、第6回折光学素子42の凹凸形状は、第1方向d1に交差する方向に延びている。したがって、第5回折光学素子41では、第1向d1導光されている第2波長域の光はほとんど回折されず、第6回折光学素子42では、第2向d2導光されている第1波長域の光はほとんど回折されない。第5回折光学素子41の凹凸形状が延びる方向と第6回折光学素子42の凹凸形状が延びる方向とが、60°以上異なることで、意図されない回折が起こりにくくなり、75°以上異なることで、意図されない回折がより起こりにくくなり、85°以上異なることで、意図されない回折がさらに起こりにくくなる。意図されない回折が起こりにくくなることで、表示装置に表示されるべき画像の品質の低下を抑制することができる。
なお、図8に示されているように、この変形例では、第1回折光学部材20において、第1方向d1及び第2方向d2に沿って第1回折光学素子21、第2回折光学素子22及び第7回折光学素子23が交互に並べられていてもよい。この場合、第1回折光学部材20に入射する画像光が、第1回折光学部材20の全域において各回折光学素子に対応する各波長域の光を回折させることができる。また、第2回折光学部材30において、第1方向d1及び第2方向d2に沿って第3回折光学素子31及び第4回折光学素子32が交互に並べられていてもよい。この場合、例えば第1回折光学部材20で回折された第1波長域の光が第1方向d1からずれて導光されたとしても、第2方向d2にずれた位置の第3回折光学素子31で第1波長域の光を回折することができる。さらに、第3回折光学部材40において、第1方向d1及び第2方向d2に沿って第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43が交互に並べられていてもよい。この場合、例えば第2回折光学部材30で回折された第1波長域の光が第2方向d2からずれて導光されたとしても、第1方向d1にずれた位置の第5回折光学素子41で第1波長域の光を回折することができる。
また、図8に示されているように、この変形例では、第5回折光学素子41、第6回折光学素子42及び第9回折光学素子43は、格子状の遮光部材70によって形成された開口部71に配置されている。これにより、第1方向d1及び第2方向d2から意図しない波長域の光が入射することが抑制され、意図されない回折が起こりにくくすることができ、表示装置に表示されるべき画像の品質の低下を抑制することができる。
また、第2方向d2に隣り合う2つの第5回折光学素子41の間に、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第6回折光学素子42の少なくとも1つが配置されていてもよい。図9に示された例では、第2方向d2に隣り合う2つの第5回折光学素子41の間に、第3回折光学素子31が配置されている。同様に、2つの第6回折光学素子42の間に、第3回折光学素子31、第4回折光学素子32及び第5回折光学素子41の少なくとも1つが配置されていてもよい。図9に示された例では、2つの第6回折光学素子42の間に、第4回折光学素子32が配置されている。
表示部5からの画像光の第1回折光学素子21への入射角度によっては、第1回折光学素子21で回折される第1波長域の光は、第1方向d1に沿った方向からずれた方向に導光されることがある。このため、第1回折光学素子21で回折された第1波長域の光は、第1方向d1に沿った方向からずれた方向に導光されたとしても、第3回折光学素子31に入射することができる。第2方向d2にずれた方向に配置された第3回折光学素子31で回折された第1波長域の光は、第2方向d2に沿った方向に回折されるよう、設けられている。
このように、第1回折光学素子21で回折されて第1方向d1に沿った方向からずれた方向に導光された光を第3回折光学素子31に入射させることで、第1波長域の光を効率よく利用することができる。また、第3回折光学素子31の間に第5回折光学素子41が配置されているため、その第5回折光学素子41で回折された第1波長域の光は、基材11から出射する。このため、光学部材10において、画像光が出射する出射部を広げることができる。
図9に示された例では、2つの第5回折光学素子41の間に、第3回折光学素子31が配置されている。このため、第2回折光学素子22で回折された第2波長域の光及び第7回折光学素子23で回折された第3波長域の光も、第1方向d1に沿った方向からずれた方向に導光されたとしても、第4回折光学素子32及び第8回折光学素子33に入射することができる。したがって、第2波長域の光及び第3波長域の光も、効率よく利用することができる。また、第4回折光学素子32の間に第6回折光学素子42が配置されており、第8回折光学素子33の間に第9回折光学素子43が配置されているため、光学部材10において、画像光が出射する出射部を広げることができる。
なお、第1波長域と第3波長域が十分に離れていると、第1波長域の光を回折させる回折光学素子で第3波長域の光はほとんど回折されず、第3波長域の光を回折させる回折光学素子で第1波長域の光はほとんど回折されない。したがって、第1波長域と第3波長域が十分に離れている場合、図9に示す例のように、第1波長域の光を回折させる第3回折光学素子31と第3波長域の光を回折させる第8回折光学素子33とは、第1方向d1に沿って並んでいてもよい。
さらに、光学部材10は、第1回折光学部材20を基材11とは反対側から覆う保護層17を有していてもよい。図10に示された例のように、保護層17は、第1回折光学部材20だけでなく、第2回折光学部材30、第3回折光学部材40も基材11とは反対側から覆うことが好ましい。このような保護層17は、覆っている各回折光学部材が有する回折光学素子を保護して回折光学素子が傷つくことを防止することができる。保護層17は、回折光学素子を保護する十分な強度を有している。保護層17は、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなり、とりわけ複屈折率の小さな材料であるポリカーボネート、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー等からなることが好ましい。また、保護層17が薄すぎると、保護層17の剛性が低くなるため、光学部材10に外部からの力が加わると、保護層17が変形してしまうことがある。一方、保護層17が厚すぎると、光学部材10に熱が加わると、保護層17が大きく反るように変形してしまう。このような保護層17の変形を抑制するため、保護層17の厚さは、適切な範囲にあることが好ましい。具体的には、保護層17の厚さは、例えば0.2mm以上3mm以下であるであることが好ましく、0.4mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。さらに、光学部材10の表面強度を向上させるために、保護層17は、ハードコート処理されていることが好ましい。
このような保護層17が回折光学部材に接していると、基材内を導光している光が回折光学部材から保護層17に入射することがある。保護層17に入射した光を適切に導光させるためには、保護層17を平坦にすることが求められる。しかしながら、十分な平坦性を有する保護層は、製造することが困難であり、また製造するとしてもコストがかかる。平坦性の低い保護層17に基材内を導光している光が入射すると、光は適切に保護層17内を導光されず、表示装置に表示される画像が劣化してしまう。そこで、保護層を回折光学部材から離間した位置に設けて、回折光学部材と保護層との間に空気層を設けることが考えられた。しかしながら、回折光学部材と保護層との間に空気層を設けると、光学部材全体が厚くなってしまう。また、空気層を適切に設けることも困難である。
そこで、図10に示すように、基材11と保護層17との間に、低屈折率層18を設けることが考えられた。すなわち、光学部材10は、保護層17に加え、低屈折率層18をさらに有している。低屈折率層18は、基材11より屈折率が低い材料からなる。低屈折率層18と基材11との屈折率の差は、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることがより好ましい。低屈折率層18の屈折率は、例えば1.4以下であり、好ましくは1.3以下であり、より好ましくは1.2以下である。また、低屈折率層18の厚さは、例えば0.01μm以上10μm以下、好ましくは0.1μm以上5μm以下である。このような低屈折率層18は、例えばフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、中空シリカ、及びこれらの混合物のいずれかを基材11及び回折光学部材上にコーティングすることで、容易に作製することができる。とりわけ、低屈折率層18の材料としては、特に屈折率の低いフッ素樹脂、中空シリカからなることが好ましい。また、このように低屈折率層18を作製することで、回折光学部材に圧力がかかりにくく、したがって低屈折率層18によって回折光学部材に歪みを生じさせにくくできる。