JP7352511B2 - 繊維用集束剤、繊維束、繊維製品、樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Description
一方、繊維強化複合材料に用いられるマトリックス樹脂としては、従来は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が主流であったが、成形性の観点から、近年はポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリフェニレンサルフィド樹脂等の熱可塑性樹脂が使用され、特に炭素繊維強化複合材料では成形温度が350℃を超える高い耐熱性を有するポリエーテルイミド樹脂及びポリエーテルエーテルケトン樹脂等が使用され始めている。
これらの耐熱性に優れた熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として用いる繊維強化複合材料に用いられる炭素繊維の集束剤としては、シロキサン構造を有するポリカーボネート樹脂やイミド樹脂を含有したもの(例えば特許文献1、2)、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂を含有したもの(例えば特許文献3)が提案されている。
すなわち、本発明は、活性水素基を2~8個有する活性水素基含有有機化合物(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタン樹脂(A)を含有し、昇温速度が5℃/分の条件において空気中で加熱した場合における前記ウレタン樹脂(A)の95%加熱減量温度(T95)が250~430℃である繊維用集束剤(X);炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維が、前記繊維用集束剤で処理された繊維束;前記繊維束を含有する繊維製品;前記繊維束又は前記繊維製品を強化繊維とし、熱可塑性樹脂(E)をマトリックスとしてなる樹脂組成物(Y);並びに前記樹脂組成物(Y)を成形してなる成形体(Z)である。
数平均分子量が400以上の高分子ポリオール(a11)としては、数平均分子量が400以上の各種ポリオールが挙げられ、ポリエーテルポリオール(a111)、ポリカーボネートジオール(a112)、及びポリエステルポリオール(a113)などが挙げられる。
これらのうち、集束性の観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(a1114)が好ましい。
ポリラクトンポリオールの具体例としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
高分子ポリオール(a11)としては、乳化性及び成形体の強度の観点から、ポリエーテルポリオール(a111)及びポリカーボネートジオール(a112)が好ましく、さらに好ましくはポリカーボネートジオール(a112)及びポリテトラメチレングリコール(a1114)である。
ポリエーテルポリオール(a111)及びポリカーボネートジオール(a112)の使用量は、乳化性及び成形体の強度の観点から、ウレタン樹脂(A)の原料中の高分子ポリオール(a11)の重量を基準として、40重量%以上が好ましく、さらに好ましくは100重量%である。
分岐を有する炭素数3~12の脂肪族ジオール[1,2-プロピレングリコール、1,2-、1,3-又は2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,8-オクタンジオール及び4-メチルオクタンジオール等の分岐アルコール等];
炭素数6~20の脂環式ジオール[1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等];
炭素数8~20の芳香環含有ジオール[m-又はp-キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及びビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等];
炭素数3~20のトリオール[脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等];炭素数5~20の4~8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等);
糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)];等が挙げられる。
(a13)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
炭素数1~20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びメチルプロパノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
アニオン性基を有するポリオール(a13)のうち、ウレタン樹脂(A)の水性分散体の分散安定性の観点から好ましいのは、2,2-ジメチロールプロピオン酸及び2,2-ジメチロールブタン酸並びにこれらの塩類であり、更に好ましいのは2,2-ジメチロールプロピオン酸及び2,2-ジメチロールブタン酸のアンモニア又は炭素数1~20のアミン化合物による中和塩である。
複素環式ポリアミン(a23)としては、例えば、ピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ジアミノエチルピペラジン、及び1,4ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジンが挙げられる。
<Mnの測定方法>
Mnは、以下の条件のGPCにより測定する。
機種:Alliance(日本ウォーターズ(株)製液体クロマトグラフ)
カラム:Guardcolumn Super H-L
+TSK gel Super H4000
+TSK gel Super H3000
+TSK gel Super H2000(いずれも東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
検出器:RI(Refractive Index)
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液流量:0.6ml/分
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μl
標準物質:ポリスチレン(東ソー(株)製;TSK STANDARD POLYSTYRENE)
T95が250℃未満のウレタン樹脂では集束性が不十分となる傾向があり、T95が430℃を超えるウレタン樹脂では強度及び外観が不十分となる傾向がある。好ましくはT95が255~415℃であり、さらに好ましくは260~400℃である。
なお、95%加熱減量温度(T95)はウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)を低くする、または(a)を耐熱性の高い組成(例えば、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール)とすることによって高くすることができ、(C1)を高くする、または(a)を耐熱性の低い組成(例えば、ポリオキシエチレングリコール)とすることによって低くすることができる。
なお、10%加熱減量温度(T10)はウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)を低くする、または(a)を耐熱性の高い組成(例えば、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール)とすることによってことによって高くすることができ、(C1)を高くする、または(a)を耐熱性の低い組成(例えば、ポリオキシエチレングリコール)とすることによって低くすることができる。
示差熱熱重量同時測定装置(例えば株式会社日立ハイテクサイエンス製「TG/DTA6200」)を用いて以下条件で測定し、重量減量率が10%の時の温度を10%熱減量温度(T10)、重量減量率が95%の時の温度を95%熱減量温度(T95)とする。
なお、熱減量温度を測定するためのウレタン樹脂(A)のサンプルがウレタン樹脂(A)の水性分散体である場合は、これを130℃で45分乾燥して水及び有機溶媒を揮発させてウレタン樹脂(A)の固形物を得た後、5~10mgのサンプルをアルミニウムパンに量りとり、熱減量温度を評価する。測定容器にはφ5mm×高さ2.5mmのアルミニウムパンを用いる。
測定条件としては空気を200ml/分の流量で流し、昇温開始温度は30℃、昇温速度5℃/分とする。
さらに好ましくは1.2~5.5mmol/gであり、特に好ましくは1.4~5.0mmol/gである。
ウレタン樹脂のウレタン基含量及びウレア基含量は、窒素分析計[ANTEK7000(アンテック社製)]によって定量される窒素原子含量と1H-NMRによって定量されるウレタン基とウレア基の比率から算出する。
1H-NMR測定については、「NMRによるポリウレタン樹脂の構造研究:武田研究所報34(2)、224-323(1975)」に記載の方法で行う。
すなわち1H-NMRを測定して、脂肪族イソシアネートを使用した場合、化学シフト6ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト7ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を測定し、該重量比と上記のN原子含量からウレタン基及びウレア基濃度を算出する。
芳香族イソシアネートを使用した場合、化学シフト8ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト9ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を算出し、この重量比と上記の窒素原子含量からウレア基濃度を算出する。
Mnはゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが出来る。
GPC測定において、測定に用いられる溶剤に対するウレタン樹脂(A)の溶解度が90% 未満の場合はGPCの測定精度が低下する。その場合、分子量の正確な測定が困難
なため、当該ポリウレタン樹脂の分子量は無限大とする。
<Mn測定方法>
DMF中に固形分が0.0125重量%となるように加えて、常温で1時間撹拌溶解後、0.3μmの孔径のフィルターでろ過して、得られたろ液に含まれている成分のMnを、DMFを溶媒として、また、ポリスチレンを分子量標準として用いて、GPCにより測定する。
<GPC測定条件>
装置:「HLC-8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn α」+「TSKgel α-M」[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.0125重量%のジメチルホルムアミド溶液
溶離液:ジメチルホルムアミド
溶液注入量:100μL
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)[東ソー(株)製]
繊維用集束剤として使用する際に、ウレタン樹脂(A)は水性媒体に分散された分散体であることが好ましいため、例えば、以下の[1]及び[2]の方法が挙げられる。
また、本発明における水性媒体とは、水又は水と前記有機溶媒(S)との混合物を意味する。
沸点が100℃未満の有機溶剤を使用することにより、水性媒体から有機溶剤のみを完全に除去しやすくなり、水性分散体中に残存して、乾燥時に有機溶剤が発生することを抑制しやすくなる。また、有機溶剤が繊維束に残存しにくくなり、集束性が経時で変化することを抑制しやすくなる。
ウレタン樹脂(A)の含有量は、成形体強度の観点から、(X)が含有する固形分の重量を基準として、50重量%以上が好ましく、さらに好ましくは90重量%以上である。
ここで、固形分とは、試料1gを130℃45分間循風乾燥機で加熱乾燥した後の残渣である。
界面活性剤(F)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、界面活性剤(F)としては、具体的には下記の化合物が挙げられる。
アルキルフェノールのアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」を「AO」と略記することがある)付加物(Mn500~5,000)、アリールアルキルフェノール{スチレン化フェノール(炭素数14~62)、スチレン化クミルフェノール及びスチレン化クレゾール(炭素数15~61)等}のAO付加物(Mn500~5,000)、アルキルフェノール(炭素数10~20)のAO付加物(Mn500~5,000)の硫酸エステル塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩及びアルカノールアミン塩等)、アリールアルキルフェノール{スチレン化フェノール(炭素数14~62)、スチレン化クミルフェノール及びスチレン化クレゾール(炭素数15~61)等}のAO付加物(Mn500~5,000)の硫酸エステル塩等が挙げられる。
なお、界面活性剤(F)において、AO付加とは、エチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」を「EO」と略記することがある)単独付加、並びに、プロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」を「PO」と略記することがある)及びブチレンオキサイド(以下、「ブチレンオキサイド」を「BO」と略記することがある)の少なくとも一方とEOを付加した物等が挙げられる。PO及びBOの少なくとも一方を含む場合、ランダム付加物、ブロック付加物及びこれらの混合付加物が含まれる。
界面活性剤(F)のMnの測定方法は、上記活性水素基含有有機化合物(a)のMnの測定方法と同様である。
平滑剤としては、ワックス(ポリエチレン、ポリプロピレン、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、変性ポリエチレン及び変性ポリプロピレン等)、高級脂肪酸(脂肪酸の炭素数6~30)アルキル(アルキルの炭素数1~24)エステル(メチルステアレート、エチルステアレート、プロピルステアレート、ブチルステアレート、オクチルステアレート及びステアリルステアレート等)、高級脂肪酸(脂肪酸の炭素数6~30)(ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸等)、天然油脂(ヤシ油、牛脂、オリーブ油及びナタネ油等)及び流動パラフィン等が挙げられる。
防腐剤としては、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、第4級アンモニウム塩及びイミダゾール等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール等)、チオジプロピオネート(ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート等)及びホスファイト(トリフェニルホスファイト等)等が挙げられる。
本発明の繊維束は、3,000~3万本程度の繊維が束ねられていることが好ましい。
本発明の繊維束において、ウレタン樹脂(A)の繊維への付着量(重量%)は、繊維の重量に基づいて、0.05~5重量%が好ましく、更に好ましくは0.2~2.5重量%である。この範囲であると、成形体強度が更に優れる。
このマトリックスとなる熱可塑性樹脂(E)としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、及びポリフェニレンスルフィド等の熱可塑樹脂が挙げられる。
さらに、本願発明の課題のように耐熱性に優れた熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として使用した際に強度を特に発揮するため、熱可塑性樹脂(E)としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂及びポリフェニレンスルフィド樹脂であることが好ましい。
加熱成形の方法は特に限定されず、フィラメントワインディング成形法(回転するマンドレルに張力をかけながら巻き付け、加熱成形する方法)、プレス成形法(プリプレグシートを積層して加熱成形する方法)、オートクレーブ法(プリプレグシートを型に圧力をかけ押しつけて加熱成形する方法)及びチョップドファイバー又はミルドファイバーをマトリックス樹脂と混合して射出成形する方法等が挙げられる。
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置にMnが3000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(a11-2)[宇部興産(株)製「ETERNACOLL UH-300」]131.6部、Mnが2000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(a11-1)[旭化成ケミカルズ(株)製「デュラノールG4672」]87.7部、2,2-ジメチロールプロピオン酸(a13-1)12.1部、イソホロンジイソシアネート(b-1)67.2部及びアセトン100.0部を仕込み、80℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を製造した。
次いで得られたウレタンプレポリマーに中和剤としてのトリエチルアミン(d-1)9.1部及び希釈溶剤としてのアセトン15.0部を加えて均一化した後、水689.9部を200rpmで撹拌しながら加え、ウレタンプレポリマーを水に分散させた。
得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌してウレタンプレポリマーの水による伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してアセトンを留去した。その後、得られた分散体を室温に冷却した後、水で希釈して固形分濃度を30.0重量%に調製することでウレタン樹脂(A-1)の水性分散体を得た。
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置にポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(a11-1)173.3部、2,2-ジメチロールプロピオン酸(a13-1)22.0部、1,4-ブタンジオール(a12-2)2.9部、イソホロンジイソシアネート(b-1)96.1部及びアセトン100.0部を仕込み、80℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を製造した。
次いで得られたウレタンプレポリマーに中和剤としてのトリエチルアミン(d-1)11.6部及び希釈溶剤としてのアセトン15.0部を加えて均一化した後、鎖伸長剤としてのエチレンジアミン(a2-1)0.3部、ジエチレントリアミン(a2-2)5.5部及び水689.9部を200rpmで撹拌しながら加え、ウレタンプレポリマーを水に分散させた。
得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌して水による伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してアセトンを留去した。その後、得られた分散体を室温に冷却した後、水で希釈して固形分濃度を30.0重量%に調製することでウレタン樹脂(A-2)の水性分散体を得た。
製造例2において、(a11-1)を163.8部に、(a13-1)を22.1部に、(a12-2)を2.0部に、(b-1)の代わりに水添MDI(b-2)107.5部に、トリエチルアミン(d-1)を10.0部に、(a2-1)を4.8部に、(a2-2)を使わない以外は製造例2と同様にしてウレタン樹脂(A-3)の水性分散体を得た。
製造例2において、(a11-1)を187.2部に、(a12-2)を4.3部に、(b-1)の代わりにTDI(b-3)81.1部に、(a2-1)を5.5部に、(a2-2)は使わない以外は製造例2と同様にしてウレタン樹脂(A-4)の水性分散体を得た。
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置にポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(a11-1)59.3部、2,2-ジメチロールプロピオン酸(a13-1)20.8部、1,6-ヘキサンジオール(a12-1)34.7部、イソホロンジイソシアネート(b-1)163.1部及びアセトン100.0部を仕込み、80℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を製造した。
次いで得られたウレタンプレポリマーに中和剤としてのトリエチルアミン(d-1)15.6部及び希釈溶剤としてのアセトン15.0部を加えて均一化した後、分子量調整剤としてのn-ブチルアミン(e-1)22.3部及び水684.4部を200rpmで撹拌しながら加え、ウレタンプレポリマーを水に分散させた。
得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌して水による伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してアセトンを留去した。その後、得られた分散体を室温に冷却した後、水で希釈して固形分濃度を30.0重量%に調製することでウレタン樹脂(A-5)の水性分散体を得た。
製造例5において、(a11-1)を169.6部に、(a13-1)を21.5部に、(a12-1)の代わりに(a12-2)2.9部に、(b-1)を94.1部に、トリエチルアミン(d-1)を11.3部に、n-ブチルアミン(e-1)を12.1部に変えた以外は製造例5と同様にしてウレタン樹脂(A-6)の水性分散体を得た。
製造例5において、(a11-1)の代わりにMnが1000のポリテトラメチレングリコール(a11-3)[三菱化学(株)製「PTMG1000」]11.8部に、2,2-ジメチロールプロピオン酸(a13-1)を35.2部に、(a12-1)の代わりに1,4-ブタンジオール(a12-2)42.1部に、(b-1)を206.4部に、トリエチルアミン(d-1)を5.3部に、n-ブチルアミン(e-1)を4.8部に変えた以外は製造例5と同様にしてウレタン樹脂(A-7)の水性分散体を得た。
製造例1において、(a11-1)および(a11-2)の代わりに(a12-2)11.8部に、2,2-ジメチロールプロピオン酸(a13-1)を80.2部に、(a13-1)を10.1部に、(b-1)を209.6部に、トリエチルアミン(d-1)を8.0部に変えた以外は製造例1と同様にしてウレタン樹脂(A-8)の水性分散体を得た。
製造例5において、(a11-1)の代わりにMnが4000のポリテトラメチレングリコール(a11-4)[三菱化学(株)製「PTMG4000」]245.2部に、(a13-1)を10.7部に、(a12-1)の代わりに1,4-ブタンジオール(a12-2)0.1部に、(b-1)を41.0部に、トリエチルアミン(d-1)を8.0部に、n-ブチルアミン(e-1)を3.1部に変えた以外は製造例5と同様にして比較例のためのウレタン樹脂(A’-1)の水性分散体を得た。
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に1,6-ヘキサンジオール(a12-1)139.1部、イソホロンジイソシアネート(b-1)130.9部及びアセトン100.0部を仕込み、80℃で10時間攪拌してウレタン化反応しウレタン樹脂のアセトン溶液を製造した。次いで得られてウレタン樹脂に界面活性剤(F-1)30.0部仕込み撹拌し均一にした後、水700部を200rpmで撹拌しながら加え水に分散させた。更に減圧下60℃に加熱してアセトンを留去し、得られた分散体を室温に冷却した後、水で希釈して固形分濃度を30.0重量%に調製することでウレタン樹脂(A’-2)の水性分散体を得た。
その結果は表1に示す。
(a11-1):デュラノールG4672[旭化成ケミカルズ(株)製、Mn=2000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール]
(a11-2):ETERNACOLL UH-300[宇部興産(株)製、Mn=3000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール]
(a11-3):PTMG1000[三菱化学(株)製、Mn=1000のポリテトラメチレングリコール]
(a11-4):PTMG4000[三菱化学(株)製、Mn=4000のポリテトラメチレングリコール]
(a12-1):1,6-ヘキサンジオール
(a12-2):1,4-ブタンジオール
(a13-1):2,2-ジメチロールプロピオン酸
(a2-1):エチレンジアミン
(a2-2):ジエチレントリアミン (b-1):IPDI
(b-2):水添MDI
(b-3):TDI
(d-1):トリエチルアミン
(e-1):n-ブチルアミン
(F-1):スチレン化フェノールのプロピレンオキサイドエチレンオキサイド付加物「Soprophor 796/P」[ソルベイ日華(株)製]
上記製造例1~8及び比較製造例1~2で得られたウレタン樹脂(A-1)~(A-8)と(A’-1)~(A’-2)の水性分散体をそのまま繊維用集束剤(X-1)~(X-8)と(X’-1)~(X’-2)として用い、下記の評価方法で炭素繊維束の集束性、成形体の成形体の外観、曲げ強度及び耐黄変性を評価した。
結果を表2に示す。
(1)ウレタン樹脂の濃度が1.5重量%となるように繊維用集束剤(X)をさらに水で希釈した水溶液に、未処理炭素繊維(繊度800tex、フィラメント数12,000本)を浸漬して集束剤を繊維に含浸させ、180℃で3分間熱風乾燥させて炭素繊維束を作製した。
(2)得られた炭素繊維束の集束性を、JIS L1096-2010 8.21.1
A法(45°カンチレバー法)に準じて評価した。
数値(cm)が大きいほど集束性に優れることを意味する。
この処理条件で得られた炭素繊維束をカンチレバーで評価した集束性の値は、一般に13cm以上が好ましい。
(1)固形分濃度が1.5重量%となるように繊維用集束剤(X)を、さらに水で希釈した水溶液に、未処理炭素繊維(繊度800tex、フィラメント数12,000本)を浸漬して集束剤を繊維に含浸させ、180℃で3分間熱風乾燥させて、未処理炭素繊維の重量を基準として固形分が1.5重量%付着した炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束を長さ6mmに切断して短繊維束を作製した。
(2)得られた短繊維束10重量部に、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)90重量部を加え、V型ブレンダ―でドライブレンドした。
(3)このドライブレンド物をベント付き2軸押出機にて400℃、回転数70rpm、滞留時間5分で混練して、各樹脂組成物(Y)を得て、ストランド状に押出し、ペレタイザーで切断し樹脂組成物の樹脂ペレットを得た。
(4)得られた樹脂ペレットを日精樹脂工業製射出成型機「PS40EASE」を用い、シリンダー温度:400℃、金型温度:150℃で評価用試験片を成形した。
上記で得られた成形体について、20倍のマイクロスコープで観察して、以下の評価基準で、外観を評価した。
<評価基準>
◎:ホイドが全くない
〇:ボイドがほとんどない
×:ボイドが目立つ
上記で得られた評価用試験片を用いて、JIS K 7171に準じて、成形体の曲げ強度を測定した。
(1)固形分濃度が1.5重量%となるように繊維用集束剤(X)を、さらに水で希釈した水溶液に、未処理ガラス繊維(繊度67.5tex、フィラメント数800本)を浸漬して集束剤を含浸させ、180℃で3分間熱風乾燥させて未処理ガラス繊維の重量を基準として固形分が1.5重量%付着したガラス繊維束を得た。得られたガラス繊維束を長さ6mmに切断して短繊維束を作製した。
(2)得られた短繊維束10重量部に、ポリカーボネート樹脂(PC)90重量部を加え、V型ブレンダ―でドライブレンドした。
(3)このドライブレンド物をベント付き2軸押出機にて330℃、回転数70rpm、滞留時間5分で混練して、各樹脂組成物(Y)を得て、ストランド状に押出し、ペレタイザーで切断し繊維強化樹脂ペレットを得た。
(4)得られた樹脂ペレットを日精樹脂工業製射出成型機「PS40EASE」を用い、シリンダー温度:330℃、金型温度:80℃で評価用試験片(50×50×2mm)を成形した。
(5)試験片(50×50×2mm)を63℃の条件で、紫外線ロングライフフェードメーター(FAL-55H、スガ試験機(株)製)にて紫外線を200時間ダイレクト照射し、分光測色計(CM-70d、コニカミノルタ(株)製)を使用し、色差(ΔY)を測定し以下の評価基準で、耐黄変性を評価した。
<評価基準>
◎:色差(ΔY)が5未満
〇:5以上10未満
△:10以上~20未満
×:20以上
一方、95%加熱減量温度(T95)が430℃を超える繊維用集束剤(X’-1)を用いた成形体の外観は平滑でなく、特に炭素繊維とマトリックス樹脂の間にボイドが多く、さらに曲げ強度も不足する。また、95%加熱減量温度(T95)が250℃未満である繊維用集束剤(X’-2)を用いた場合、95%加熱減量温度(T95)が290℃又は250℃である実施例7又は8と比較すると、成形体の外観、強度及び耐黄変性は同程度であるものの、集束性が極めて劣ることがわかる。
Claims (14)
- 活性水素基を2~8個有する活性水素基含有有機化合物(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタン樹脂(A)を含有し、昇温開始温度が30℃で昇温速度が5℃/分の条件において空気中で加熱した場合における前記ウレタン樹脂(A)の95%加熱減量温度(T95)が250~430℃である繊維用集束剤(X)。
- 前記ウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)とウレア基濃度(C2)の合計の濃度(C)がウレタン樹脂(A)の重量に基づいて1.6~6.0mmol/gである請求項1に記載の繊維用集束剤。
- 前記ウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)がウレタン樹脂(A)の重量に基づいて1.0~6.0mmol/gである請求項1又は2に記載の繊維用集束剤。
- 前記活性水素基含有有機化合物(a)が、ポリオール(a1)及びポリアミン(a2)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維用集束剤。
- 前記活性水素基含有有機化合物(a)として、カルボキシル基、スルホン酸基及びスルファミン酸基からなる群より選ばれる1種以上のアニオン性基を有するポリオール(a13)を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維用集束剤。
- 前記ポリオール(a1)として数平均分子量が400以上の高分子ポリオール(a11)を含み、前記高分子ポリオール(a11)がポリカーボネートジオール(a112)及び/又はポリテトラメチレングリコール(a1114)を含む請求項4又は5に記載の繊維用集束剤。
- 前記ポリイソシアネート(b)が脂肪族ポリイソシアネート(b1)及び/又は脂環式ポリイソシアネート(b2)を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の繊維用集束剤。
- 昇温開始温度が30℃で昇温速度が5℃/分の条件において空気中で加熱した場合における前記ウレタン樹脂(A)の10%加熱減量温度(T10)が150~300℃である請求項1~7のいずれか1項に記載の繊維用集束剤。
- 前記活性水素基含有有機化合物(a)の数平均分子量が40~1,500である請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維用集束剤。
- 炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維が、請求項1~9のいずれか1項に記載の繊維用集束剤で処理された繊維束。
- 請求項10に記載の繊維束を含有する繊維製品。
- 請求項10に記載の繊維束又は請求項11に記載の繊維製品を強化繊維とし、熱可塑性樹脂(E)をマトリックスとする樹脂組成物(Y)。
- 前記熱可塑性樹脂(E)が、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂及びポリフェニレンスルフィド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載の樹脂組成物。
- 請求項12又は13に記載の樹脂組成物(Y)を成形してなる成形体(Z)。
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