JP7352041B1 - ロール - Google Patents
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Abstract
Description
その中でも、芯材に弾性体を被覆したロールについて、品質管理や在庫管理などの効率化を可能にするための技術に関するものである。
更にその中でも特に、加硫や硬化を行うことによって弾性体を形成(被覆)した弾性ロール(例えばゴムロール、ウレタンロール、スポンジロール)について、品質管理や在庫管理などの効率化を可能にするための技術に関するものである。換言すれば、製造時、使用時、メンテナンス時(再被覆時)など、高温・高圧・高湿度の環境下に繰り返し晒される弾性ロールについて、品質管理や在庫管理などの効率化を可能にするための技術に関するものである。
しかしながら、係る方法は、使用中の過酷な環境(荷重、熱、薬液、油など)によって、打刻したロール情報の識別が困難になってしまうという問題がある。特に、ロールの中には交換の周期が数年ごとというものもあり、このようなロールについては係る問題がより顕著になるという問題がある。
また、係る「同一の又は対応する特別な技術的特徴(STF)」は、ロールがゴムロール、ウレタンロール、スポンジロールなど弾性ロールである場合において、特に有用であるとの知見を得た。すなわち、高温・高圧・高湿度の環境下に繰り返し晒される場合においても、情報記憶媒体が剥離、脱落、通信不良という問題を起こさず、市販されている汎用の情報記憶媒体を用いて品質管理や在庫管理などを効率的に行うことができるという知見を得た。
具体的には、特定の条件下における高温高圧高湿度テスト(例えば、プレッシャークッカーテスト)をクリアする情報記憶媒体については、上記の構成とすることによって、在庫管理や品質管理などを行うことが可能な(情報記憶媒体の通信状態を良好に維持することが可能な)ロールを実現することができる。また、カバー材として熱硬化性樹脂の硬化物に加えて蓋材を併用する構成とすれば、情報記憶媒体の通信状態をより良好に維持することができる。
また、特定の条件下における高温高圧高湿度テストをクリアしない情報記憶媒体であっても、カバー材の構成を、熱硬化性樹脂の硬化物に加えて一定以上の厚みを持つ蓋材を併用する構成とすることによって、在庫管理や品質管理などを行うことが可能な(情報記憶媒体の通信状態を良好に維持することが可能な)ロールを実現することができる。
なお、係る効果は加硫工程や硬化工程を必要とする弾性ロール(ゴムロール、ウレタンロール、スポンジロールなど)において特に顕著なものとなる。
まず、本発明にかかるロール1の構成を図1~3に基づいて説明する。
本発明のロール1は、芯材2と、情報記憶媒体3と、カバー材4を主要部品とするものである。
なお、図2、3においては、上記主要部品に加えて、情報記憶媒体3を収納する収納容器5を用いている。係る収納容器5は、本願発明においては必須の構成要件ではないが、後記するように、情報記憶媒体3の保護や電波の干渉防止をより効果的に行うことができるので好適である。
そしてこれらの中でも、特に、加硫または硬化によって作製した弾性体を被覆層6とする弾性ロール(ゴムロール、ウレタンロール、スポンジロールなど)については、本発明の技術的効果をより効果的に発現させることができるロールとなる。
本発明に用いられる芯材2は、円柱状のものであって、情報記憶媒体3を収納する収納部7を有するものである。
なお、芯材2は、上記のとおり、様々な被覆層6を設ける形態としてもよいし、被覆層を設けずに芯材2に直接製品を巻き付ける形態としてもよい。ここで、ロール1が被覆層6を設けた形態である場合には、本願発明の芯材2は、図1、2に示すように、軸部2aだけでなく、軸部2aと被覆層6との間に位置する胴部2bも含まれることになる。
また、芯材2の材質ついては特に限定されるものではなく、様々な材質のものを用いることができる。
具体的には、図1~5に示すような芯材2に設けた孔部7aを収納部7とする形態や、図6に示すような芯材2に接合した筒状部7bを収納部7とする形態などが挙げられる。
なお、孔部7aを収納部7とする形態を採用する場合には、収納部の開口8を円形とし、収納部の底部9については半球状とする形状(図2、3)や、或いは開口を円形とし、底部については逆円錐状とする形状(図示せず)を採用すれば、穿孔加工(ドリル加工)するだけで容易に収納部7を作製することができるので好適である。
また、筒状部7bを収納部7とする形態を採用する場合には、適当な長さに切断したパイプ材を芯材2の適当な位置に直接接合する方法や、適当な長さに切断したパイプ材を平板に接合した部材(図6(a))を作製した後、係る部材を芯材2の適当な位置に接合する方法(図6(b))を採用すれば、容易に収納部7を作製することができるので好適である。
係る形態を採用すれば、後記するカバー材4を形成する際、使用する熱硬化性樹脂が溝部10内または凹部内に入り込んだ状態で硬化する(溝部10内または凹部内に熱硬化性樹脂の硬化物が充填する)ことになる。従って、ロールが高温・高圧・高湿度の環境下に繰り返し晒されてカバー材4(熱硬化性樹脂の硬化物)が劣化した場合でも、溝部10内または凹部内に充填している熱硬化性樹脂の硬化物が引っ掛かることによって、カバー材4の収納部からの脱落をより効果的に防止することができるので好適である。
そしてその中でも、情報記憶媒体3に入力したロール情報の読み取りを容易に行うことができる点、情報記憶媒体3の脱着、交換などを容易に行うことができる点から、図1、2に示すように、芯材の端面11(ロール1が被覆層6を設けた形態である場合には、軸部2aの端面11aまたは胴部2bの端面11b)に設けることが好ましい。なお、収納部7の設置位置を芯材の端面11にする場合には、ロール軸の強度およびロール回転時におけるバランスを保つために、収納部の開口8の大きさ(直径)を芯材の端面11(特に、軸部2aの端面11a)の直径(Φ)の25%以下とすることが好ましい。
本発明に用いられる情報記憶媒体3は、ロール情報を記憶したものである。具体的には、ICタグ、RFタグ、RFIDタグなど、各種の記憶媒体を用いることができる。そしてその中でも、パッシブ型のRFIDタグを情報記憶媒体3として用いれば、通信範囲が狭いことから他のロールとの誤識別を防止することができ、また電池交換の必要がないことから耐用年数の長期化が図れるので好適である。さらに、係るパッシブ型RFIDタグは、電波の干渉を起こし難いことから、様々な電波が飛び交う工場内においても、他の電子機器との電波の相互干渉の影響を受けずに使用することができるので好適である。
具体的には、155℃、100%RH、0.5~0.6MPa、3hrの条件下における高温高圧高湿度試験(例えば、プレッシャークッカーテスト)を行った後においても通信機能を維持するか否かを、本願発明に用いることができる情報記憶媒体3の判定基準とすることができる。すなわち、本願発明は熱硬化性樹脂の硬化物で形成されたカバー材を必須の構成要件とすることから、上記の高温高圧高湿度試験をクリアするか否かを確認するだけで、市販されている情報記憶媒体の中から、本願発明のロール(特に、弾性ロール)に使用することができる情報記憶媒体3を容易に見つけ出すことができるのである。このことは、弾性ロールにおいて行われる、実際の加硫工程や硬化工程の条件が上記条件よりも過酷な条件となる場合が多いにも拘らず、上記条件が判定基準となり得るという点において極めて有用な知見である。
但し、芯材2が金属製の場合には、情報記憶媒体3と収納部7(芯材2)との間に生じる電波の干渉を防止する必要がある。具体的には、情報記憶媒体3の側面および上面については収納部7(芯材2)との間に一定の距離を設けておく必要がある。
より具体的には、情報記憶媒体の側面12と収納部の内面13との間の距離(隙間:G)が少なくとも1mm以上となるように、且つ情報記憶媒体の上面14が収納部の開口面15から4mm以内の深さ(D)に位置するように、情報記憶媒体3を収納部内に収納することが好ましい。なお、距離(隙間:G)の上限値については特に限定されないが、距離(隙間:G)があまり大きくなりすぎると収納部7が大きくなり、収納部7の加工が難しくなったり、カバー材4が大きくなったりすることから、2mm以下(1~2mmの範囲)とすることが好ましい。また、深さ(D)の下限値についても特に限定されないが、深さ(D)があまり浅すぎるとカバー材4の効果が低下してしまうことから、0.5mm以上(0.5~4mmの範囲)とすることが好ましい。
係る形態を採用すれば、ロールの使用時に発生する振動に情報記憶媒体3が繰り返し晒される場合でも、係る振動によって情報記憶媒体3が収納部7内で暴れることを防止することができる。その結果、情報記憶媒体3が振動によって故障することをより効果的に防止することができるので好適である。
なお、使用する接着剤は熱硬化性樹脂であれば特に限定されるものではないが、後記する熱硬化性樹脂の材質と同一の熱硬化性樹脂を用いれば、高温・高圧・高湿度の環境下に繰り返し晒された場合でも接着力の低下をより効果的に防止することができるので好適である。
・製造番号
・製造年月日
・最終メンテナンス(最終再被覆)年月日
・納品先
・使用される場所(ライン)
・弾性体の種類
・被覆層の初期膜厚
・ロールの全長
・ロールの外径
・ロールの面長
本発明に用いられるカバー材4は、熱硬化性樹脂の硬化物で形成されたものである。具体的には、図2、3に示すように、情報記憶媒体3の上部に、収納部の開口8を塞ぐように設けられるものであって、情報記憶媒体3を様々なストレス(特に、高温・高圧・高湿度の環境下)から保護するためのものである。また、収納部7に収納した情報記憶媒体3を収納部7内に封止(固定)するための封止材(固定材)としても機能するものである。ここで、後記する収納容器5も情報記憶媒体3をストレスから保護する機能を有するものであるが、本発明においては基本的にはカバー材4が情報記憶媒体3をストレスから保護する機能を果たすことになる。
従って、本発明においてカバー材4が無い場合には、情報記憶媒体3の保護能力が無くなることになる。
なお、係る保護機能は、ロール1が加硫または硬化によって作製した弾性体を被覆層6とする弾性ロール(ゴムロール、ウレタンロール、スポンジロールなど)の場合において、特に顕著なものとなる。すなわち、ロール1が弾性ロールである場合には、再被覆が複数回行われることになるが、その場合においても、本願発明はカバー材4があることによって、情報記憶媒体3の剥離、脱落、通信不良などの問題の発生を効果的に防止することができるのである。
そしてその中でも、ロール1が加硫または硬化によって作製した弾性体を被覆層6とする弾性ロール(ゴムロール、ウレタンロール、スポンジロールなど)の場合には、ASTMD648またはISO75に準拠して測定した荷重たわみ温度が130℃以上、その中でも180℃以上、さらにその中でも250℃以上の物性を有する熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
なお、このような物性を有する熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。そしてその中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂を用いることが好ましい。
なお、通常、ロール1の保管、管理はロール1を倒した状態(図1に示すような状態)で行われることから、カバー材4に接着剤やパテ材のような硬化することによって固化するものを用いる場合には、初期状態(接着剤やパテ材を塗布した直後の状態)においても収納部の開口8に流れ落ちずに留まっている形態のもの、すなわち初期状態においてもある程度の粘度を有しているものである必要がある。従って、カバー材4に接着剤やパテ材のような硬化することによって固化するものを用いる場合には、初期状態の粘度が室温(25℃)において100Pa・s以上のもの、その中でも1000Pa・s以上のもの、さらにその中でも10000Pa・s以上のものを用いることが好ましい。
また、カバー材4については、上記の形態(接着剤、パテ材など)に加えて、図2~6に示すようにプラスチック製またはガラス(例えば石英ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス)製の蓋材16を併用することもできる。係る蓋材16を併用する形態を採用すれば、情報記憶媒体3をストレスからより効果的に保護しつつ、カバー材自体の厚みを薄くすることができるので好適である。つまり、情報記憶媒体3をストレスからより効果的に保護しつつ、情報記憶媒体3の通信状態をより良好に維持することができる。
また、蓋材16にプラスチック製のものを用いる場合には、[0050]に記載のとおり、ASTMD648またはISO75に準拠して測定した荷重たわみ温度が130℃以上、その中でも180℃以上、さらにその中でも250℃以上の物性を有する熱硬化性樹脂を用いて成形したものを用いることが好ましい。つまり、カバー材4(熱硬化性樹脂の硬化物)と同一の材質の熱硬化性樹脂を用いて作製した物を蓋材16とすれば、収納部の開口8を塞ぐように設けた熱硬化性樹脂の硬化物と均一の材質による連続した保護層が構成されることになることから、情報記憶媒体3の保護能力をより向上させることができるのである。
なお、このような物性を有する熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。そしてその中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂を用いることが好ましい。
なお、蓋材16を係る形状とした場合には、蓋材16が収納部7を完全に塞ぐことにはならないことから、図4、6の形態に比べてカバー材全体としての機能は低下することになるが、情報記憶媒体3を収納容器5に収納する際の収納性をより高くすることができるというメリットがある。
そしてその中でも、情報記憶媒体3として、[0044]に記載の高温高圧高湿度試験をクリアする情報記憶媒体を用いる場合には、係る蓋材16の厚み(t)を0.5~2mmとすることが好ましい。一方、情報記憶媒体3として、[0044]に記載の高温高圧高湿度試験をクリアしない情報記憶媒体を用いる場合には、係る情報記憶媒体をストレスから保護する観点から、係る蓋材16の厚み(t)を1mm以上(好ましくは1~2mm)とする必要がある。
以上を纏めると以下のとおりとなる。
(1)高温高圧高湿度試験をクリアする情報記憶媒体を用いる場合
カバー材全体の厚み(T):4mm以内、蓋材の厚み(t):0.5~2mm
(2)高温高圧高湿度試験をクリアしない情報記憶媒体を用いる場合
カバー材全体の厚み(T):4mm以内、蓋材の厚み(t):1~2mm
さらに、本発明においては、情報記憶媒体3を収納するための収納容器5を用いることもできる。係る収納容器5を用いれば、情報記憶媒体3を様々なストレス(特に、高温・高圧・高湿度の環境下)からより効果的に保護することができるので好適である。また、芯材2が金属製の場合には、芯材2(金属)の影響をより効果的に排除することができ、情報記憶媒体3からの電波をより適切に発信させることができるので好適である。
なお、このような物性を有する材料としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。そしてその中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂を用いることが好ましい。
また、収納容器5の形状を上記の形状とすれば、穿孔加工して作製した収納部7にも容易に且つ隙間なく収納することができるので好適である。
従って、収納容器5に凹部20を設ければ、情報記憶媒体3と芯材2との間には自ずと一定の距離が確保できることになり、その結果、電波の干渉が生じることをより効果的に防止することができることになる。なお、係る効果は芯材2が金属製の場合において特に顕著なものとなる。
なお、凹部の大きさについては、収納する情報記憶媒体の大きさに応じて適宜調整することができる。また、必要に応じて、スペーサーを使用することもできる。
次に、係る収納容器5をロール1の芯材2に設けた収納部7に収納する。
次に、収納容器5の上部に蓋材16を取り付けて収納容器の開口18を塞ぎ、さらにその上部にカバー材4(図2~4においては接着剤またはパテ材)を塗布することによって収納部7を塞ぐ。
最後に、カバー材4を硬化させることによって、本発明のロール1を作製する。
また、ロール1が弾性ロールなどのように弾性体(被覆層6)の再被覆が必要となる場合には、製造メーカーに送られてきた汚れた状態であっても、ロール情報を容易に把握することができることになり、再被覆作業の際に誤りが発生することを効果的に防止することができることになる。
まず、情報記憶媒体が芯材との間で電波の干渉を起こすことなく通信を行うことができる、収納部(芯材)内における情報記憶媒体の位置に関する試験を行った。具体的には、図10に示すように、芯材を模した鉄材に円柱形の空洞(収納部(孔部))を設け、係る収納部(孔部)内に情報記憶媒体3を収納し、(1)径方向で見た際の情報記憶媒体の側面12と収納部の内面13との間の距離(隙間:G)と、(2)収納部の開口面15から情報記憶媒体の上面14までの深さ(D)を各種変更することによって各試験例のサンプルを作製した。
そして、情報記憶媒体が収納部(芯材)内において問題なく通信を行うことができるか否かを試験した。なお、評価基準としては、〇:電波強度が十分確保されている安定した通信状態、△:電波強度が弱い不安定な通信状態、×:通信不良の3つの基準によって評価を行った。
結果を表1に示す。
次に、高温・高圧・高湿度の環境下に晒されても使用することができる、情報記憶媒体の判定基準に関する試験を行った。具体的には、市販されている以下の6種類の情報記憶媒体(パッシブ型RFID)について、(1)耐蒸気加硫条件下(155℃、100%RH、0.5~0.6MPa、3hr)による試験(高温高圧高湿度試験)と、(2)耐温水加硫条件下(160℃、温水浸漬、1.6MPa、3hr)による試験の2種類の試験を行い、試験後に通信不良を起こすか否かを試験した。
情報記憶媒体1(ニューランドジャパン社製、品番:JOPPD6)
情報記憶媒体2(京セラ社製、品番:0502)
情報記憶媒体3(京セラ社製、品番:0603)
情報記憶媒体4(凸版印刷社製、品番:SMARTRAC)
情報記憶媒体5(村田製作所社製、品番:LXTBKZMCMG-010)
情報記憶媒体6(サイレンスネット社製、品番:Dot-On XS)
なお、評価基準としては、〇:電波強度は十分確保されている安定した通信状態、△:電波強度が弱い不安定な通信状態、×:通信不良の3つの基準によって評価を行った。
結果を表2に示す。
また、後記する実施例1~21、28(情報記憶媒体6を使用)の結果から、耐蒸気加硫条件下による試験(高温高圧高湿度試験)をクリアする情報記憶媒体であれば、耐温水加硫条件下による試験では通信不良となってしまう情報記憶媒体であっても、本願発明を構成する情報記憶媒体となり得ることが分かった。つまり、耐蒸気加硫条件下による試験(高温高圧高湿度試験)に合格することができる情報記憶媒体であれば、情報記憶媒体自体が持つ耐久性とカバー材との相乗効果によって、本願発明において使用することができる(10回の耐久性試験(再被覆作業)をクリアすることができる)情報記憶媒体となり得ることが分かった。
以上のことから、(2)の耐温水加硫条件下による試験ではなく、(1)の耐蒸気加硫条件(155℃、100%RH、0.5~0.6MPa、3hr)による試験(高温高圧高湿度試験)が、本願発明に使用することができる情報記憶媒体の判定基準として妥当なものであることが分かった。
なお、係る判定基準を用いれば、本願発明に用いることができる情報記憶媒体の選択肢(例えばコスト面における選択肢)を広げることができる。従って、当該判定基準は係る観点からも有用な知見となる。
まず、フェノール樹脂成形体(荷重たわみ温度:250℃(応力:1.8MPa))を加工することによって、以下のサイズの収納容器と蓋材を作製した。
収納容器 外寸:直径10mm×高さ6mm、底部は半径(R)5mmの半球状
厚み(g1):2mm
凹部:直径6m×深さ4mmの円柱形の空洞
蓋材 外寸:直径10mm×厚み(t)1mmの円盤状
なお、孔部(収納部)、収納容器(凹部を含む)、蓋材については、それぞれの表面を大きな凹凸がない滑らかな面とすることによって、各部品を無理なく収納(挿入)できる形態とした。
カバー材(エポキシ接着剤の硬化物+蓋材)の厚みを表3に記載の厚みに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2~13のサンプルを作製した。
蓋材を用いずに、エポキシ接着剤の厚みを表3に記載の厚みに変更した以外は、実施例1と同様にして参考例1~8のサンプルを作製した。
情報記憶媒体を情報記憶媒体1(ニューランドジャパン社製、品番:JOPPD6、直径6mm×高さ4mmの円盤形状)に変更するとともに、スペーサーを用いない以外は、実施例1と同様にして参考例9のサンプルを作製した。
カバー材(エポキシ接着剤の硬化物+蓋材)の厚みを表4に記載の厚みに変更した以外は、参考例9と同様にして参考例10~14のサンプルを作製した。
まず、内径10mm、厚み2.5mmの鉄パイプを10mmの長さに切断し、係る鉄パイプを60mm×25mm×2mmの鉄板に溶接することによって、筒状部(収納部)を作製した。
次に、情報記憶媒体として情報記憶媒体6を用い、係る情報記憶媒体を、[0077]に記載の内容と同様にして、スペーサーとともに収納容器の凹部に収納した。その後、係る収納容器を筒状部(収納部)内に収納するとともに、収納容器の上部を[0075]に記載の蓋材(厚み:1mm)で塞いだ。
次に、エポキシ接着剤(粘度:10000Pa・s(25℃)、硬化後の荷重たわみ温度:180℃(応力:1.8MPa))を上記蓋材の上部に筒状部(収納部)の開口を塞ぐようにしつつ、厚みが3mmとなるように塗布した。
最後に、エポキシ接着剤を硬化させることによって、情報記憶媒体の上部に厚み(T)4mmのカバー材(エポキシ接着剤の硬化物+蓋材)が形成された実施例28(図6(b)の形態)のサンプルを作製した。
エポキシ接着剤を用いない以外は、実施例1と同様にして比較例1のサンプルを作製した。
エポキシ接着剤を用いない以外は、実施例7と同様にして比較例2のサンプルを作製した。
カバー材(エポキシ接着剤の硬化物+蓋材)の厚みを表4に記載の厚みに変更した以外は、参考例9と同様にして比較例3~9のサンプルを作製した。
蓋材を用いずに、エポキシ接着剤の厚みを表4に記載の厚みに変更した以外は、参考例9と同様にして比較例10~17のサンプルを作製した。
エポキシ接着剤を用いない以外は、参考例9と同様にして比較例18のサンプルを作製した。
エポキシ接着剤を用いず、蓋材の厚みを0.5mmに変更した以外は、参考例9と同様にして比較例19のサンプルを作製した。
次に、作製した実施例1~13、28、参考例1~14および比較例1~19のサンプルについて評価を行った。具体的には、加硫条件下における耐久性試験を複数回行い、各試験後においても情報記憶媒体に通信不良が発生していないか否かを評価した。加硫条件については、実際の加硫工程の条件の1つである、160℃、温水浸漬、1.6MPa、5hrの条件(温水加硫条件)にて耐久性試験を行った。なお、評価基準としては、〇:電波強度は十分確保されている安定した通信状態、×:電波強度が弱い不安定な通信状態または通信不良の2つの基準によって評価を
行った。
結果を表3、4に示す。
参考例1~7のサンプルの評価結果から、高温高圧高湿度試験をクリアした情報記憶媒体であれば、カバー材を熱硬化性樹脂の硬化物のみで構成するだけで10回の耐久性試験をクリアすることが可能であることが分かった。なお、カバー材の厚みが最も薄い(0.5mm)の参考例8のサンプルについては、10回の耐久性試験をクリアすることはできなかったが、5回の耐久性試験についてはクリアすることができたことから、使用期間に制限を設ければ十分に使用することができるロールとなり得ることが分かった。
さらに、比較例10~17のサンプルの評価結果および比較例18、19のサンプルの評価結果から、高温高圧高湿度試験をクリアしない情報記憶媒体については、カバー材の構成として「熱硬化性樹脂の硬化物」と「厚み(t)が1mm以上の蓋材」のいずれかの要件が欠けてしまうと、耐久性試験を1回も合格することができなくなってしまうことが分かった。特に、比較例10のサンプルの評価結果から、カバー材を蓋材がない構成とした場合(エポキシ接着剤の硬化物のみの構成とした場合)には、カバー材全体の厚みを4mmにしても耐久性試験を1回も合格することができないことが分かった。また、比較例18、19のサンプルの評価結果から、カバー材を蓋材のみの構成とした場合(エポキシ接着剤の硬化物がない構成とした場合)にも、耐久性試験を1回も合格することができないことが分かった。
以上のことから、情報記憶媒体に高温高圧高湿度試験をクリアしない情報記憶媒体を使用する際においては、カバー材が熱硬化性樹脂の硬化物であることに加えて蓋材を備える必要があり、さらにその厚みが重要な要素になることが分かった。
次に、収納部の内側面に溝部を設ける形態についてサンプルの作製を行った。
まず、鉄材を穿孔加工することによって、直径10mm、高さ10mm、底部は半径(R)5mmの半球状となる、孔部(収納部)を設けた。
次に、孔部(収納部)の開口面から深さ1.0mmの内側面の全周に、ハイスカッターストレートカットΦ6(ミニター株式会社製)を用いて切削加工することによって、深さ1.0mmの溝部を設けた。
その後の手順は実施例1と同様の手順を行うことによって、実施例29(図7の形態に近似した形態)のサンプルを作製した。
次に、情報記憶媒体を収納部内に接着(固定)するサンプルの作製を行った。
まず、鉄材を穿孔加工することによって、直径10mm、高さ10mm、底部は半径(R)5mmの半球状となる、孔部(収納部)を設けた。
次に、[0075]に記載の収納容器および蓋材を用い、情報記憶媒体については情報記憶媒体6を用い、スペーサーの代わりに、エポキシ接着剤(粘度:10000Pa・s(25℃)、硬化後の荷重たわみ温度:180℃(応力:1.8MPa))を厚みが1.5mmとなるように塗布した後、その上に情報記憶媒体を載置し、エポキシ接着剤を硬化させることによって、情報記憶媒体を収納容器の凹部に接着(固定)した。
その後の手順は実施例1と同様の手順を行うことによって、実施例30(図9(c)の形態に近似した形態)のサンプルを作製した。
具体的には、実施例29のサンプルについては、[0091]に記載の評価方法、評価基準によって評価を行った。実施例30のサンプルについては、振動試験機(エミック株式会社製、型式:F-16000BDH/LA16AW)を用いて、周波数=10~55HZ、加速度=19.6m/s2(2G)、掃引サイクル数=10の条件にて振動試験を行い、試験後においても情報記憶媒体に通信不良が発生していないか否かを評価した。なお、評価基準は[0091]に記載の評価基準と同じ基準によって評価を行った。
その結果、実施例29のサンプルについては、10回の耐久性試験を行った後においても良好な通信状態を維持した。また、実施例30のサンプルについては、振動試験後においても良好な通信状態(○評価)を維持した。
2 芯材
2a 芯材(軸部)
2b 芯材(胴部)
3 情報記憶媒体
4 カバー材
5 収納容器
6 被覆層
7 収納部
7a 収納部(孔部)
7b 収納部(筒状部)
8 収納部の開口
9 収納部の底部
10 溝部
11 芯材の端面
11a 芯材の端面(軸部)
11b 芯材の端面(胴部)
12 情報記憶媒体の側面
13 収納部の内面
14 情報記憶媒体の上面
15 収納部の開口面
16 蓋材
17 蓋材の上面
18 収納容器の開口
19 収納容器の底部
20 凹部
21 無線機
Φ 芯材の端面の直径
D 収納部の開口面から情報記憶媒体の上面までの深さ
G 情報記憶媒体3の側面と収納部7の内面との間の距離(隙間)
g 収納容器の厚み
g1 収納容器の厚み(Gに相当)
T カバー材の厚み(Dに相当)
t 蓋材の厚み
Claims (9)
- 開口を有する収納部を設けた芯材と、
前記収納部内に収納された情報記憶媒体と、
前記収納部内に収納された前記情報記憶媒体の上部に、前記開口を塞ぐように設けられた熱硬化性樹脂の硬化物で形成されたカバー材を備え、
さらに前記カバー材と前記情報記憶媒体の間に、プラスチック製またはガラス製の蓋材を備え、
前記熱硬化性樹脂の硬化物および/または前記プラスチック製の蓋材は、ASTMD648またはISO75に準拠して測定した荷重たわみ温度が130℃以上であり、
前記情報記憶媒体は、155℃、100%RH、0.5~0.6MPa、3hrの条件下における高温高圧高湿度試験をした後においても通信機能を維持するものであることを特徴とするロール。
- 前記蓋材の厚みが、1mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のロール。
- 前記芯材に、
弾性体が加硫または硬化によって被覆されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロール。
- 前記情報記憶媒体は、
側面が前記収納部の内面と少なくとも1mm以上離れるように前記収納部内に収納され、
且つ上面が前記収納部の開口面から4mm以内の深さに位置するように前記収納部内に収納されたものことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロール。
- さらに、
前記情報記憶媒体を収納し、且つ前記収納部内に収納される収納容器を備えるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロール。
- 前記情報記憶媒体が、
平面視において円形であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロール。
- 前記情報記憶媒体が、
パッシブ型RFIDであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロール。
- 前記収納部の内側面に溝部または凹部を設けるとともに、
前記溝部内または前記凹部内に前記熱硬化性樹脂が入り込んだ状態で硬化していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロール。
- 前記情報記憶媒体は、
前記収納部内に前記熱硬化性樹脂で接着されているものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロール。
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