JP7349849B2 - チェーン - Google Patents

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Description

本発明は、二相ステンレス鋼線材および二相系ステンレス鋼線ならびにチェーンに関する。
二相ステンレス鋼(本発明における二相ステンレス鋼とは、「オーステナイト相およびフェライト相」の二相を有するステンレス鋼をいう。)は、優れた耐食性と強度とを有する。その一例として、特許文献1~5には、材形が鋼線である二相ステンレス鋼が開示されている。
特開2013-87352号公報 特開2013-119627号公報 特開2012-197509号公報 特開2009-91636号公報 特開平10-99984号公報
チェーンは、以下のような工程で製造される。具体的には、上述の鋼線に曲げ加工を行い、その後、鋼線の端面同士を熱接合することで、図1に示すような環状のリンクが製造される。このリンクは、曲げ加工の際、相互に連結され、複数のリンクが結合したチェーンが製造される。
二相ステンレス鋼は、耐食性および強度が良好であるため、これら特性が要求されるチェーン用素材として有用である。しかしながら、チェーン素材とした場合、二相ステンレス鋼線は、熱接合による入熱に起因して、金属組織が大きく変化することが考えられる。この結果、熱接合により接合された箇所(以下、「熱接合部」と記載する。)が、入熱の影響を受けない母材部分と比較し、強度および耐食性が低下するという課題があった。
本発明は、上記課題を解決し、良好な強度および耐食性を有する二相ステンレス鋼線材、および二相系ステンレス鋼線ならびにチェーンを提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記の二相ステンレス鋼線材、および二相系ステンレス鋼線ならびにチェーンを要旨とする。
(1)オーステナイト相およびフェライト相を有する二相ステンレス鋼線材であって、
化学組成が、質量%で、
C:0.06%以下、
Si:1.0%以下、
Mn:0.01~5.5%、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
Ni:1.5~8.0%、
Cr:20.0~28.0%、
Mo:0.05~4.5%、
N:0.06~0.35%、
Cu:0.05~1.5%、
Ti:0~1.0%、
Nb:0~1.0%、
Al:0~0.10%、
B:0~0.003%、
V:0~1.0%、
Sn:0~1.0%、
Co:0~0.5%、
W:0~0.5%、
Ca:0~0.05%、
Mg:0~0.1%、
Zr:0~0.5%、
REM:0~0.1%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で表されるMd30の値が-230~90℃であり、
金属組織中におけるフェライト相の体積率が35.0~65.0%である、二相ステンレス鋼線材。
Md30(℃)=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo-68Nb ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.01~1.0%、および
Nb:0.01~1.0%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)に記載の二相ステンレス鋼線材。
(3)前記化学組成が、質量%で、
Al:0.01~0.10%、
B:0.0001~0.003%、
V:0.03~1.0%、および
Sn:0.001~1.0%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)または(2)に記載の二相ステンレス鋼線材。
(4)前記化学組成が、質量%で、
Co:0.01~0.5%、
W:0.01~0.5%、
Ca:0.001~0.05%、
Mg:0.0002~0.1%、
Zr:0.03~0.5%、および
REM:0.03~0.1%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)~(3)のいずれかに記載の二相ステンレス鋼線材。
(5)チェーンに用いられる、上記(1)~(4)のいずれかに記載の二相ステンレス鋼線材。
(6)上記(1)~(4)のいずれかに記載の二相ステンレス鋼線材を用いた二相系ステンレス鋼線。
(7)チェーンに用いられる上記(6)に記載の二相系ステンレス鋼線。
(8)相互に連結された複数のリンクからなるチェーンであって、
前記リンクは、二相系ステンレス鋼線からなり、母材および熱接合部を有し、
前記二相系ステンレス鋼線の化学組成は、質量%で、
C:0.06%以下、
Si:1.0%以下、
Mn:0.01~5.5%、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
Ni:1.5~8.0%、
Cr:20.0~28.0%、
Mo:0.05~4.5%、
N:0.06~0.35%、
Cu:0.05~1.5%、
Ti:0~1.0%、
Nb:0~1.0%、
Al:0~0.10%、
B:0~0.003%、
V:0~1.0%、
Sn:0~1.0%、
Co:0~0.5%、
W:0~0.5%、
Ca:0~0.05%、
Mg:0~0.1%、
Zr:0~0.5%、
REM:0~0.1%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で表されるMd30の値が-230~90℃であり、
前記リンクの線径dは、3.0~19.0mmであり、
前記母材におけるフェライト相の体積率が、35.0~65.0%であり、
前記熱接合部におけるフェライト相の体積率が、35.0~80.0%であり、
前記熱接合部の幅Lが下記(ii)式を満足し、
前記母材の硬さと前記熱接合部の最小硬さの差が、HV0.3で130以下である、チェーン。
Md30(℃)=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo-68Nb ・・・(i)
1.0≦L(mm)≦d-2.0 ・・・(ii)
但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとし、上記式中の各記号は、以下により定義される。
L(mm):熱接合部の幅
d(mm):リンク線径
本発明によれば、良好な強度および耐食性を有する二相ステンレス鋼線材、および二相系ステンレス鋼線ならびにチェーンを得ることができる。
図1は、チェーンの形状を模式的に示した図である。 図2は、熱接合部を観察するため模式図である。
本発明者らは、熱接合を行った場合であっても、チェーン用鋼として好適な強度および耐食性を有する二相ステンレス鋼線材および二相系ステンレス鋼線について検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
(a)二相ステンレス鋼線材は、伸線加工され、二相系ステンレス鋼線となる。この二相系ステンレス鋼線に、曲げ加工、溶接等の熱接合を行うことで、チェーンが製造される。溶接等の熱接合では、素材に入熱がされるため、金属組織が変化する。
(b)上述の金属組織の変化により、オーステナイト相の量が減少し、フェライト相の量が増加する結果、強度および耐食性が低下する場合がある。
(c)このため、良好な強度と耐食性とを有するチェーン素材とするためには、二相ステンレス鋼線材において、化学組成、製造条件等により、フェライト相の量を適切に制御することが望ましい。
また、伸線加工された二相系ステンレス鋼線では、オーステナイト相の一部が相変態して、加工誘起マルテンサイト相が形成する。形成する加工誘起マルテンサイト相の量は、その後のチェーンの強度、耐食性に影響を及ぼす。このため、二相ステンレス鋼線材において、化学組成を適切に調整し、鋼線加工後に形成する加工誘起マルテンサイト相の量についても制御する必要がある。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.二相ステンレス鋼線材
本発明に係る二相ステンレス鋼線材は、オーステナイト相およびフェライト相を有する。
1-1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.06%以下
Cは、強度を高める効果を有する。しかしながら、C含有量が0.06%を超えると、伸び、伸線加工性、曲げ加工性が低下する。このため、C含有量は0.06%以下とし、0.02%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、C含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
Si:1.0%以下
Siは、脱酸効果を有する元素である。しかしながら、Si含有量が、1.0%を超えると、その効果は飽和するばかりか、伸線加工性、捻り加工性が低下する。このため、Si含有量は1.0%以下とする。一方、上記効果を得て、脱酸生成物を低減し、強度特性を確保するためには、Si含有量は0.05%以上とするのが好ましい。Si含有量は0.20%以上とするのがより好ましい。
Mn:0.01~5.5%
Mnは、高価なNiの代替元素として有効である。また、Mnは、オーステナイト相生成元素であり、オーステナイト量を確保するために重要な元素である。ここで、オーステナイト相の生成が不十分であると、加工時のマルテンサイト相の生成が不十分となる場合がある。また、Mnは、加工性を高める効果を有する。このため、Mn含有量は、0.01%以上とする。Mn含有量は0.10%以上とするのが好ましく、1.0%以上とするのがより好ましい。
しかしながら、Mn含有量が5.5%を超えると、却って、加工性および耐食性を劣化させる。このため、Mn含有量は5.5%以下とする。さらに、鋼中に残存する介在物を低減し、より耐食性を高める場合には、Mn含有量は2.0%以下とするのが好ましい。
P:0.03%以下
Pは不純物として、鋼に含有され、機械的特性および耐食性を低下させる。このため、P含有量は0.03%以下とする。Pは、極力低減するのが好ましい。
S:0.01%以下
Sは不純物として、鋼に含有され、機械的特性および耐食性を低下させる。このため、S含有量は0.01%以下とする。Sは、極力低減するのが好ましい。
Ni:1.5~8.0%
Niは、耐応力腐食割れ性と加工性とを確保する効果を有する。このため、Ni含有量は1.5%以上とする。Ni含有量は2.0%以上とするのが好ましい。しかしながら、Ni含有量が8.0%を超えると、Md30の値が低くなり、強度が低下する。このため、Ni含有量は8.0%以下とし、7.5%以下とするのが好ましい。
Cr:20.0~28.0%
Crは、耐食性を向上させる効果を有する。このため、Cr含有量は20.0%以上とし、20.4%以上とするのが好ましい。しかしながら、Cr含有量が28.0%を超えると、Md30の値が低くなり、強度が低下する。このため、Cr含有量は28.0%以下とし、25.0%以下とするのが好ましい。
Mo:0.05~4.5%
Moは、耐食性を向上させる効果を有する。このため、Mo含有量は0.05%以上とし、0.08%以上とするのが好ましい。しかしながら、Moが4.5%を超えると、その効果は飽和するばかりか、Md30の値が低くなり、強度が低下するおそれがある。このため、Mo含有量は4.5%以下とし、4.0%以下とするのがより好ましい。
N:0.06~0.35%
Nは、強度を向上させる効果を有する。このため、N含有量は0.06%以上とし、0.10%以上とするのが好ましい。しかしながら、N含有量が0.35%を超えると、Md30の値が低くなり、強度が低下するおそれがある。加えて、製鋼プロセスで窒素のブローホールが生成して製造性を大幅に劣化させる。このため、N含有量は0.35%以下とし、0.30%以下とするのが好ましい。
Cu:0.05~1.5%
Cuは、微細Cu析出物として、強度および伸びを向上させる効果を有する。このため、Cu含有量は0.05%以上とし、0.06%以上とするのが好ましい。しかしながら、Cuを、1.5%を超えて含有すると、Md30値が低くなり、強度が低下するおそれがある。このため、Cu含有量は1.5%以下とし、1.0%以下とするのが好ましい。
上記元素に加え、必要に応じて、TiおよびNbから選択される一種以上を含有してもよい。
Ti:0~1.0%
Tiは、炭窒化物を形成して結晶粒径を微細にして、鋼の強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Tiを過剰に含有させると、粗大介在物が生成し、強度が低下するおそれがある。このため、Ti含有量は1.0%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Ti含有量は0.01%以上とするのが好ましく、0.10%以上とするのがより好ましい。
Nb:0~1.0%
Nbは、Tiと同様、炭窒化物を形成して結晶粒径を微細にして、鋼の強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nbを過剰に含有させると、粗大介在物が生成し、強度が低下するおそれがある。このため、Nb含有量は1.0%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Nb含有量は0.01%以上とするのが好ましく、0.10%以上とするのがより好ましい。
上記元素に加え、必要に応じて、Al、B、VおよびSnから選択される一種以上を含有してもよい。
Al:0~0.10%
Alは、脱酸効果を有する元素である。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Al含有量が0.10%を超えると靭性が劣化する。このため、Al含有量は0.10%以下とし、0.05%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Al含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
B:0~0.003%
Bは、熱間加工性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.003%を超えると靭性が劣化する。このため、B含有量は0.003%以下とする。一方、上記効果を得るためには、B含有量は0.0001%以上とするのが好ましい。
V:0~1.0%
Vは、耐食性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、V含有量が1.0%を超えると、靭性が劣化する。このため、V含有量は1.0%以下とする。一方、上記効果を得るためには、V含有量は0.03%以上とするのが好ましい。
Sn:0~1.0%
Snは、強度と耐食性とを向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Snを過剰に含有させると、加工性および製造性の低下につながる。加えて、耐食性向上効果も飽和する。このため、Sn含有量は1.0%以下とする。加工性と製造性とを考慮する場合、Sn含有量は0.8%以下とするのが好ましい。
加工性および製造性に加え、強度および耐食性を考慮する場合は、Sn含有量は0.5%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Sn含有量は0.001%以上とするのが好ましく、0.01%以上とするのがより好ましい。上記効果に加え、加工性および製造性の観点から、Sn含有量は0.05%以上とするのがさらに好ましい。
上記元素に加え、必要に応じて、Co、W、Ca、Mg、Zr、およびREMから選択される一種以上を含有してもよい。
Co:0~0.5%
Coは、耐摩耗性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Co含有量が0.5%を超えると、靭性が劣化する。このため、Co含有量は0.5%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Co含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
W:0~0.5%
Wは、耐摩耗性および耐食性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、W含有量が0.5%を超えると靭性が劣化する。このため、W含有量は0.5%以下とする。一方、上記効果を得るためには、W含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
Ca:0~0.05%
Caは、熱間加工性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Caを、0.05%を超えて含有させると、靭性が劣化する。このため、Ca含有量は0.05%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Ca含有量は、0.001%以上とするのが好ましい。
Mg:0~0.1%
Mgは、耐食性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて、含有させてもよい。しかしながら、Mg含有量が0.1%を超えると、靭性が劣化する。このため、Mg含有量は0.1%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Mg含有量は0.0002%以上とするのが好ましい。
Zr:0~0.5%
Zrは、耐食性および熱間加工性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Zr含有量が0.5%を超えると、上記効果が飽和する。このため、Zr含有量は0.5%以下とする。一方、上記効果、特に耐食性の向上効果を得るためには、Zr含有量は、0.03%以上とするのが好ましい。
REM:0~0.1%
REMは、熱間加工性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、REM含有量が、0.1%を超えると靭性が劣化する。このため、REM含有量は0.1%以下とする。一方、上記効果を得るためには、REM含有量は0.03%以上とするのが好ましい。
ここで、REMとは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し上述のREM含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。REMは、工業的には、ミッシュメタルの形で添加される。
本発明の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
鋼は、不純物として、上述のPおよびS以外にもZn、Bi、Pb、Se、Sb、H、Ga等の元素が含有される場合がある。これらの元素の含有量も、PおよびSと同様、可能な限り低減されるのが好ましい。
不純物として許容される含有量は、例えば、Zn≦0.01%、Bi≦0.01%、Pb≦0.01%、Se≦0.01%、Sb≦0.05%、H≦0.01%、Ga≦0.05%である。
Md30
二相ステンレス鋼線材は、伸線加工され、二相系ステンレス鋼線となる。この伸線加工により、金属組織中のオーステナイト相の一部が加工誘起マルテンサイト相に変態する。上記加工誘起マルテンサイト相の生成量は、鋼線の強度および伸びの特性に影響を与えるとともに、チェーンの強度および伸びにも影響を与える。このため、本発明に係る二相ステンレス鋼線材においては、その後に生成する加工誘起マルテンサイト相の生成量を制御するため、下記のMd30の値を規定する。具体的には、Md30の値は-230~90℃とする。
Md30とは、オーステナイト相の安定度を示す指標である。そして、Md30の値が高い程、オーステナイト相の安定度が低く、加工誘起マルテンサイト相が生成しやすくなる。一方、Md30の値が低い程、オーステナイト相が安定となり、加工誘起マルテンサイト相が生成しにくくなる。
Md30(℃)=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo-68Nb ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
Md30の値が-230℃未満であると、オーステナイト相が安定し、加工誘起マルテンサイト相が生成し難くなる。この結果、強度が低下する。このため、Md30の値は、-230℃以上とする。Md30の値は、-160℃以上とするのが好ましく、-70℃以上とするのがより好ましい。
しかしながら、Md30の値が90℃を超えると、オーステナイト相が不安定となる。この結果、伸線加工で加工誘起マルテンサイト相の生成量が増大し、伸びが劣化する。また、加工誘起マルテンサイトが過剰に生成することで、鋼線からチェーンを製造する際、チェーンの形状に曲げ加工することが困難になる。このため、Md30の値は、90℃以下とし、60℃以下とするのが好ましく、55℃以下とするのがより好ましい。
1-2.金属組織
本発明における二相ステンレス鋼線材の金属組織は、フェライト相およびオーステナイト相を有する組織である。そして、溶接等の入熱により熱接合部の金属組織が変化しても、強度および耐食性を有する組織とするため、組織全体に対するフェライト相の体積率を規定する。具体的には、金属組織中におけるフェライト相の体積率を35.0~65.0%とする。
フェライト相の体積率が35.0%未満であると、伸びが低下する。また、熱接合時のオーステナイト相を十分に確保できない。このため、フェライト相の体積率は35.0%以上とし、40.0%以上とするのが好ましい。
しかしながら、フェライト相の体積率が65.0%を超えると、強度特性に劣り、さらに、熱間製造性を得ることができない。このため、フェライト相の体積率は65.0%以下とし、60.0%以下とするのが好ましい。
なお、本発明に係る二相ステンレス鋼線材においては、基本的には、フェライト相およびオーステナイト相からなる組織であるが、これらの相以外にも、不可避的に生成する不可避的析出相が含まれる場合がある。不可避的析出相は、含有元素の組み合わせによって形成される炭化物、硫化物および窒化物などの析出物相、および脱酸時に生成した酸化物が不可避的に残存した相などが考えられる。金属組織中における不可避的析出相の体積率は、およそ0.5%以下であると考えられる。
また、フェライト相の体積率は、磁気誘導法によって測定することができる。具体的には、フェライトスコープを用いることで測定できる。
1-3.用途
本発明に係る二相ステンレス鋼線材は、チェーンに用いることが好ましい。二相ステンレス鋼線材は、その後、伸線加工され、二相系ステンレス鋼線となる。この二相系ステンレス鋼線に、曲げ加工、熱接合等を施すことで、チェーンが製造される。
2.二相系ステンレス鋼線
本発明に係る二相ステンレス鋼線材に、必要に応じて固溶化熱処理を行った後、伸線加工したものが、本発明に係る二相系ステンレス鋼線となる。本発明に係る二相系ステンレス鋼線は、チェーンに好適に用いることができる。二相ステンレス鋼線材を伸線加工することで、金属組織中のオーステナイト相が加工誘起マルテンサイト相に変態する。このため、二相系ステンレス鋼線は、フェライト相、オーステナイト相、および加工誘起マルテンサイト相を有する。また、これら相に加え、上述した不可避的析出相が含まれる場合がある。
本発明に係る二相系ステンレス鋼線では、金属組織中におけるフェライト相の体積率は、35.0~65.0%であるのが好ましい。フェライト相の体積率が35.0%未満であると、熱接合時のオーステナイト相を十分に確保できない。このため、フェライト相の体積率は35.0%以上とするのが好ましく、40.0%以上とするのがより好ましい。
一方、二相系ステンレス鋼線の金属組織中におけるフェライト相の体積率が65.0%を超えると、強度特性に劣り、さらに、熱間製造性を得ることができない。このため、フェライト相の体積率は65.0%以下とするのが好ましく、60.0%以下とするのがより好ましい。なお、フェライト相の体積率は、鋼線材と同様、磁気誘導法によって測定することができ、具体的には、フェライトスコープを用いることができる。また、二相系ステンレス鋼線の化学組成は、素材である二相ステンレス鋼線材と同様である。
3.チェーン
本発明に係る二相系ステンレス鋼線は、切断、曲げ加工、溶接等による熱接合、およびバリ除去を施され、チェーンリンクの形状とされるとともに、当該リンクは、曲げ加工時に相互に複数連結され、一連のチェーンの形状とされる(図1参照。)。その後、研磨等、表面処理が施され、チェーンとなる。
本発明に係るチェーンのリンクは、上記二相系ステンレス鋼線からなり、母材および熱接合部を有する。また、二相ステンレス鋼線の化学組成は、C:0.06%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.01~5.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:1.5~8.0%、Cr:20.0~28.0%、Mo:0.05~4.5%、N:0.06~0.35%、Cu:0.05~1.5%、Ti:0~1.0%、Nb:0~1.0%、Al:0~0.10%、B:0~0.003%、V:0~1.0%、Sn:0~1.0%、Co:0~0.5%、W:0~0.5%、Ca:0~0.05%、Mg:0~0.1%、Zr:0~0.5%、REM:0~0.1%、残部:Feおよび不純物であり、下記(i)式で表されるMd30の値が-230~90℃である。
Md30(℃)=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo-68Nb ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
3-1.リンクの線径
本発明に係るリンクの線径d(以下、「リンク線径d」ともいう。)は、3.0~19.0mmとする。リンクは、熱接合の際、長手方向に垂直な端面同士を接合するが、リンク線径dが3.0mm未満であると、熱接合部の強度が低下して接合が困難になる。このため、リンク線径dは3.0mm以上とする。
しかしながら、リンク線径dが19.0mmを超えると、例えば、溶接を行う場合には、溶接材料を用いる必要が生じる。この結果、溶接の際の入熱量を大きくする必要が生じ、溶接熱影響部の軟化が生じる。また、析出物の形成に起因して耐食性が低下する。このため、リンク線径dは19.0mm以下とする。なお、上記リンク線径dとは、図1に示されるように、熱接合による入熱の影響を受けない箇所の直径を指す。すなわち、上記リンク線径dは、二相ステンレス鋼線の直径と同じ値になる。
3-2.母材
母材は、通常、熱接合の影響を受ける熱影響部を含む。しかしながら、本発明で規定する母材は、母材のうち、熱接合の影響を受けない部分(「母材原質部」ともいう。)のことをいい、熱影響部を含まない。
3-2-1.母材におけるフェライト相の体積率
母材におけるフェライト相の体積率は35.0~65.0%とする。母材におけるフェライト相体積率が35.0%未満であると、チェーン形状に成形後、フェライト相を十分に確保できない。このため、母材におけるフェライト相体積率は、35.0%以上とし、40.0%以上とするのが好ましい。
しかしながら、母材におけるフェライト相体積率が65.0%を超えると、オーステナイト相が十分でなくチェーンの強度を確保することが難しくなる。このため、母材におけるフェライト相体積率は、65.0%以下とし、60.0%以下とするのが好ましい。
母材のフェライト相の体積率は、リンクにおいて、熱接合部ではない部分を上述したフェライトスコープで測定すればよい。
3-3.熱接合部
本発明に係るチェーンは、図1に示されるような、熱接合により影響を受ける熱接合部の金属組織、および幅等を規定する。なお、熱接合部2は、熱接合により高温で金属組織が変化し、蓚酸電解等の金属組織エッチングにより母材と異なる金属組織が観察される部分のことをいう。
3-3-1.熱接合部におけるフェライト相の体積率
本発明に係るチェーンは、熱接合部におけるフェライト相の体積率を35.0~80.0%とする。上記熱接合部におけるフェライト相の体積率が35.0未満であると、熱接合部における伸びが劣化する。このため、熱接合部におけるフェライト相の体積率は、35.0%以上とし、40.0%以上とするのが好ましい。
一方、熱接合部におけるフェライト相の体積率が80.0%を超えると、母材と比較し、熱接合部の強度が著しく低下する。また、クロム窒化物等の析出物がフェライト相中に多く析出し、耐食性が著しく低下する。このため、熱接合部におけるフェライト相の体積率は80.0%以下とする。なお、熱接合部のフェライト相体積率は、図2(b)に示すようにリンクの線径の中心線3を通り、リンクにより形成される環状の面に平行な面を観察面とし(A-A断面)、光学顕微鏡(100倍~500倍)の組織観察によって体積率を測定する。なお、ここで、図2(a)は、A-A面を観察面となるよう、リンクを切断した際の切断面を示しており、図2(b)は、観察面であるA-A面に垂直な方向からリンクを観察した場合の図を示している。
3-3-2.熱接合部の幅
本発明に係るチェーンでは、図2に示すような熱接合部の接合面に垂直な方向、すなわちチェーン素材である二相系ステンレス鋼線の長手方向の熱接合部の幅(以下、「熱接合部幅」と記載する。)を規定する。具体的には、熱接合部の幅Lは、下記(ii)式を満足するのが好ましい。
1.0≦L(mm)≦d-2.0 ・・・(ii)
但し、上記式(ii)中の記号は、以下により定義される。
L(mm):熱接合部の幅
d(mm):リンク線径
熱接合部の幅Lが1.0mm未満であると、熱接合部の金属組織が不均一で強度および耐食性が劣化する部分が生じ、チェーンとしての機能を果たさなくなる。このため、熱接合部の幅Lは1.0mm以上とする。一方、熱接合部の幅Lが(ii)式右辺値を超えると、入熱量が過剰になり、熱接合部が軟化する。さらに、熱接合部が変形し、引張時に熱接合部が不均一変形し破断しやすくなり、チェーンとしての機能を果たさなくなる。よって、熱接合部の幅Lは上記範囲とする。
なお、熱接合部の幅Lは、図2(b)のようにリンクの線径の中心線3を通り、リンクにより形成される環状の面に平行な面を観察面(A-A断面)として、測定を行う。当該観察面を蓚酸電解等によりエッチングすることで特定される熱接合部において線径の中心線3が通過する長さとする。
3-3-3.硬さの差
本発明に係るチェーンでは、良好な強度を得るため、母材の硬さと熱接合部の最小硬さ(以下、単に「熱接合部最小硬さ」と記載する。)との差を規定する。具体的には、母材の硬さと熱接合部最小硬さの差が、HV0.3で130以下とする。
母材の硬さと熱接合部最小硬さの差が、HV0.3で130を超えると、母材の強度と比較し、熱接合部の強度が著しく低くなる。この結果、チェーンを引っ張った場合、接合面で破断する。母材の硬さと熱接合部最小硬さの差が、HV0.3で130以下であると、母材の硬さと熱接合部との強度差が小さくなる。この結果、チェーンを引っ張った場合、母材曲げ加工部が優先的に変形して破断し、接合部破断を回避することができる。このため、母材の硬さと熱接合部最小硬さの差をHV0.3で130以下とする。母材の硬さと熱接合部最小硬さの差は、HV0.3で100以下とするのが好ましい。
上記母材と熱接合部最小硬さは、以下の手順で測定する。具体的には、図2(b)に示すように、リンクの線径の中心線3を通り、リンクにより形成される環状の面に平行な面を観察面(A-A断面)とする。観察面を続いて、観察面を鏡面研磨し、組織観察することで、上述したエッチング等で熱接合部を特定する。
特定された熱接合部において、熱接合部の中央近傍5からリンクの線径の中心線3、および中心線から径外周方向にそれぞれ1/4dに当たる位置を始点6および6´として、左右に0.5mm間隔で硬さ試験を開始する。硬さ試験を終了する点(以下、単に「終点」と記載する)は、0.5mm間隔で、測定を順に行い、母材領域に入った後、3点以上となった点とする。上記測定(5、6、6´の測定ライン)において、最も小さい硬さの値を熱接合部最小硬さとする。また、母材の硬さとは、母材の領域において、リンクの中心線において3点以上測定した硬さの平均値をいう。
なお、硬さ試験はJIS Z 2244:2009に基づき、試験力2.94Nとして実施する。硬さ試験は、ビッカース試験機を用いる。
4.製造方法
以下に、本発明に係る二相ステンレス鋼線材、二相系ステンレス鋼線、およびチェーンの好ましい製造方法について説明する。本発明に係る二相ステンレス鋼線材、二相系ステンレス鋼線、およびチェーンは、製造方法によらず、上述の構成を有していれば、その効果を得られるが、例えば、以下のような製造方法により、安定して得ることができる。
4-1.鋳造および熱間圧延
上記化学組成を有する鋼を鋳造して、ビレットを作製するのが好ましい。続いて、ビレットを1000~1300℃の温度範囲に加熱するのが好ましい。ここで、加熱する際、ビレットを加熱炉に入れ、加熱するが、炉内でビレットを保持する時間(「在炉時間」ともいう。)は、200分以下であるのがよい。
加熱されたビレットに熱間線材圧延を行い、二相ステンレス鋼線材とするのが好ましい。この際の減面率は99.0%以上とするのが好ましい。必要に応じて、上記二相ステンレス鋼線材に950~1150℃の熱処理温度で、30~120分保持し水冷等を行う固溶化熱処理を行ってもよい。また、必要に応じて、酸洗処理を行ってもよい。なお、減面率は、(鋼線材の断面積-鋼線の断面積)/(鋼線材の断面積)×100(%)で算出される。
4-2.伸線加工
固溶化熱処理を行った場合は、その後、二相ステンレス鋼線材に冷間で伸線加工し、二相系ステンレス鋼線とするのが好ましい。上記伸線加工の減面率は10~70%とするのが好ましい。
また、固溶化熱処理を行った場合であっても、二相ステンレス鋼線材を所定の線径まで伸線加工し、その後、再度、固溶化熱処理を行ってもよい。続いて、再度、10~70%の減面率で伸線加工し、二相系ステンレス鋼線としてもよい。
固溶化熱処理を行わずに、所定の線径まで伸線加工してもよい。この場合では、続く工程で、固溶化熱処理を行い、さらに10~70%の減面率で伸線加工し、二相系ステンレス鋼線としてもよい。
伸線加工における減面率が10%未満であると、700MPa以上の安定した引張強度を得ることができない。このため、固溶化熱処理後の伸線加工における減面率は10%以上とするのが好ましい。一方、固溶化熱処理後の伸線加工における減面率が70%を超えると、硬さが上昇しすぎて、チェーン加工が困難になる。このため、固溶化熱処理後の伸線加工における減面率は、70%以下とするのが好ましい。
4-3.チェーン加工
得られた二相系ステンレス鋼線について、切断するのが好ましい。切断された鋼線は、長手方向に垂直な断面である両端の端面を曲げ加工によりつき合せ、両端面を溶接等により、熱接合するのが好ましい。熱接合の手段は、特に限定されず、溶接、固相接合等、特に限定されないが、溶融温度以下で行う熱接合が好ましい。
鋼線は、熱接合後の冷却時において、空冷状態でも比較的冷却されやすい。このため、入熱量を極力少なくし、オーステナイト相を析出させることで、強度および耐食性の低下を抑制できる。オーステナイト相が析出せず、フェライト相の量が過剰になると、強度および耐食性が低下するからである。
なお、本発明における熱接合とは、接合される部位間に熱または熱と応力とによって、連続性があるようにする操作のことをいい、溶接、固相接合等を含む。
熱接合後、バリを除去し、チェーンリンクを製造するのが好ましい。なお、チェーンリンク同士は、上記の曲げ加工時に相互に連結され、所定の長さのチェーンとなる。このチェーンに研磨等の表面処理を行ってもよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ステンレス鋼の安価な溶製プロセスであるAOD溶製を想定し、100kgの真空溶解炉を用い、表1に示す化学組成を有する鋳片に鋳造した。鋳片の直径は180mmとした。
Figure 0007349849000001
得られた鋳片を1100℃で200分間加熱し、圧延終了温度を1050℃とした熱間線材圧延を行い、その後、950~1100℃の(30分から1時間保定の)固溶化熱処理後水冷し、二相ステンレス鋼線材とした。上記熱間線材圧延により、鋼線材の直径を5.5mmから25.0mmまでの範囲に調整した。酸洗した。酸洗後の二相ステンレス鋼線材のフェライト相体積率は、表2に示すとおりである。
酸洗した二相ステンレス鋼線材について、減面率10~70%の伸線加工を行い、その後、再度、二相系ステンレス鋼線とした。二相系ステンレス鋼線の線径およびフェライト相体積率は、表2に示すとおりである。なお、鋼線材および鋼線のフェライト相体積率は、ヘルムートフィッシャー社製のフェライトスコープにより測定をした。
得られた二相系ステンレス鋼線について、切断加工を行い、鋼線長手方向に垂直な両端面を曲げ加工によりつき合わせて、端面同士を電流密度、加圧を変化させた条件で、アプセットバット溶接で接合し、バリを除去し、チェーンリンクを製造した。チェーンリンク同士を曲げ加工の際、相互に連結し、10個のリンクを有するチェーンを得た。チェーンについては硝酸溶液中でバレル研磨を行い、熱接合によって生じた酸化スケールを除去した。なお、得られたチェーンのリンクの化学組成は、二相ステンレス鋼線材および二相系ステンレス鋼線と同様であった。
(熱接合部のフェライト相体積率および熱接合部の幅)
図2に示すような熱接合部2を組織観察する。熱接合部2の組織観察は、蓚酸電解等の金属組織エッチングにより行い、組織観察から、フェライト相の割合を測定した。また、上述した方法により、熱接合部の幅も測定した。なお、母材のフェライト相は、上述のようにフェライトスコープで測定した。
(強度評価)
得られたチェーンについて、引張試験を行い、強度を調査した。引張試験は、JIS F 2106 に準拠し、10リンクのチェーンで実施した。強度については、リンクの母材部で破断したものについては、チェーンとして良好な強度を有していると評価した。一方、溶接金属で破断したものについては、チェーンとして、良好な強度を有していないと評価した。表2中においては、リンクの母材で破断した例を○と記載し、溶接金属で破断した例を×と記載した。
(耐食性評価)
得られたチェーンの耐食性を評価するために、塩水噴霧試験を実施した。塩水噴霧試験は、JISZ 2371:2013に準拠し実施した。具体的には、得られたチェーンを脱脂洗浄した後塩水噴霧試験を168時間実施し、錆の発生の有無を調査した。表2中においては、発錆が無かったものを◎と記載し、点状の錆が有ったものを△と記載し、流れ錆が有ったものを×と記載した。
(硬さ試験)
母材と熱接合部最小硬さは、以下の手順で測定した。具体的には、図2(b)に示すように、リンクの線径の中心線3を通り、リンクにより形成される環状の面に平行な面を観察面(A-A断面)とした。続いて、観察面を鏡面研磨し、組織観察することで、上述したエッチング等で熱接合部を特定した。
特定された熱接合部において、熱接合部の中央近傍5からリンクの線径の中心線3、および中心線から径外周方向に1/4dに当たる位置を始点6および6´として、左右に0.5mm間隔で硬さ試験を開始した。硬さ試験を終了する点(以下、単に「終点」と記載する。)は、0.5mm間隔で、測定を順に行い、母材領域に入った後、3点以上となった点とした。上記測定(5、6、6´の測定ライン)において、最も小さい硬さの値を熱接合部最小硬さとする。また、母材の硬さとは、母材の領域において、リンクの中心線において3点以上測定した硬さの平均値をした。
なお、硬さ試験はJIS Z 2244:2009に基づき、試験力2.94Nとして実施した。硬さ試験は、ビッカース試験機を用いた。
Figure 0007349849000002
No.1~29は、本発明の規定を満足する鋼線材であり、チェーンに製造後、良好な強度と耐食性とを示した。一方、本発明の規定を満足しないNo.30~50は、強度、耐食性の少なくとも一方が、劣る結果となった。No.51および52は、本発明のチェーンに係る規定を満足しないため、強度、耐食性の少なくとも一方が、劣る結果となった。
表3に示した鋼種1、10、12および13について、加工条件を変化させた二相系ステンレス鋼線を製造し、実施例1と同様の方法で、チェーンを製造した。得られたチェーンについて、実施例1と同様の方法で、強度および耐食性とを評価した。なお、得られたチェーンのリンクの化学組成は、二相ステンレス鋼線材および二相系ステンレス鋼線と同様であった。
Figure 0007349849000003
Figure 0007349849000004
本発明に係るのチェーンの規定を満足するNo.2-1~2-20は、チェーンに製造しても、良好な強度および耐食性を有していた。一方、本発明に係るのチェーンの規定を満足しないNo.2-21~2-40は、強度、耐食性の少なくとも一方が劣る結果となった。
1 リンク
2 熱接合部
3 リンクの線径の中心線
4 観察面
5 熱接合部の中央近傍
6 始点
6´ 始点

Claims (1)

  1. 相互に連結された複数のリンクからなるチェーンであって、
    前記リンクは、二相系ステンレス鋼線からなり、母材および熱接合部を有し、
    前記二相系ステンレス鋼線の化学組成は、質量%で、
    C:0.06%以下、
    Si:1.0%以下、
    Mn:0.01~5.5%、
    P:0.03%以下、
    S:0.01%以下、
    Ni:1.5~8.0%、
    Cr:20.0~28.0%、
    Mo:0.05~4.5%、
    N:0.06~0.35%、
    Cu:0.05~1.5%、
    Ti:0~1.0%、
    Nb:0~1.0%、
    Al:0~0.10%、
    B:0~0.003%、
    V:0~1.0%、
    Sn:0~1.0%、
    Co:0~0.5%、
    W:0~0.5%、
    Ca:0~0.05%、
    Mg:0~0.1%、
    Zr:0~0.5%、
    REM:0~0.1%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(i)式で表されるMd30の値が-230~90℃であり、
    前記リンクの線径dは、3.0~19.0mmであり、
    前記母材におけるフェライト相の体積率が、35.0~65.0%であり、
    前記熱接合部におけるフェライト相の体積率が、35.0~80.0%であり、
    前記熱接合部の幅Lが下記(ii)式を満足し、
    前記母材の硬さと前記熱接合部の最小硬さの差が、HV0.3で130以下である、チェーン。
    Md30(℃)=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo-68Nb ・・・(i)
    1.0≦L(mm)≦d-2.0 ・・・(ii)
    但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとし、上記式中の各記号は、以下により定義される。
    L(mm):熱接合部の幅
    d(mm):リンク線径
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