JP7348720B2 - 伝動機構 - Google Patents

Description

本発明は、複数の歯が形成されたスプロケットと、前記スプロケットが取り付けられるシャフトと、前記スプロケットにかけまわされるチェーンとを有する伝動機構に関するものである。

回転を確実に伝達する伝動機構として、本体の周面に複数の歯が形成されたスプロケットにチェーンを掛け回す伝動機構が慣用されている。
スプロケットの歯がチェーンと噛み合うことによって、複数のスプロケットの間で、タイミングと回転力が確実に伝えられるが、噛み合いに伴って騒音や振動が発生することは避けられない。
回転に伴って周期的に負荷トルクが変動する伝動機構の場合、負荷トルクの周期変動に同期させて張力変動を軽減するように、複数の歯を各歯が等間隔でチェーンと噛み合う位相をゼロとした場合、正側及び負側に交互に位相が変動する位相変動パターンを形成するように配置することで、負荷トルク変動に対応した張力変動の影響を軽減し、騒音や振動を抑制したスプロケットが公知である（例えば、特許文献１等参照）。

特開２００９－１５６３２０号公報

公知のスプロケットでは、張力変動が軽減されることでチェーンの振動による騒音を抑制することは可能であるが、負荷トルク変動が周期的であることから、その周期に対応した次数音の発生は不可避であった。
また、負荷トルク変動の位相がずれた場合や、スプロケットの回転数とチェーンの固有振動数との関係で共振した場合には、逆に張力変動が増大したり、騒音や振動が増加する可能性があった。
また、チェーン張力が小さく負荷トルクが小さい場合や、張力の影響を受けずに噛み合っている領域では、スプロケットの複数の歯が位相変動パターンを形成するように配置されていることで、スプロケットの形状が逆にチェーンの張力変動や振動や騒音の要因になる虞もあった。

本発明は、これらの問題点を解決するものであり、負荷トルク変動に対応した張力変動の影響を軽減し、騒音や振動を抑制しつつ、チェーン張力が小さく負荷トルクが小さい場合や、張力の影響を受けずに噛み合っている領域でも張力変動の増大、騒音や振動を抑制する伝動機構を提供することを目的とするものである。

本発明に係る伝動機構は、複数の歯が形成されたスプロケットと、前記スプロケットが取り付けられるシャフトと、前記スプロケットにかけまわされるチェーンとを有する伝動機構であって、前記スプロケットは、隣接する前記歯の間において、チェーンが無負荷で着座した際の無負荷着座点の半径方向の位置が、円周方向で変化するように設けられ、前記無負荷着座点の半径方向の位置は、角度位置に応じて増減する変動パターンを有し、前記変動パターンは、増減変動が複数回繰り返され、前記増減変動の周期が、周方向に大から小または小から大に連続して変化する変動パターンを有することにより、前記課題を解決するものである。

本請求項１に係る伝動機構によれば、隣接する歯の間において、チェーンが無負荷で着座した際の無負荷着座点の半径方向の位置が、円周方向で変化するように設けられ、複数の無負荷着座点の半径方向の位置は、角度位置に応じて増減する変動パターンを有することにより、無負荷着座点の半径方向の位置に応じて負荷トルクに応じて実際の着座点が変化し、噛み合ったチェーンのピッチラインが変化する。
このピッチラインの変化は、負荷トルクの大きくなるほど顕著となることから、トルク変動に動的に対応して張力変動の影響を軽減し、騒音や振動を抑制することができる。
また、無負荷着座点の半径方向の位置は、角度位置に応じて増減する変動パターンを有することで、同じ負荷トルクでもピッチラインの変化を変動させることが可能となり、スプロケットの回転数とチェーンの固有振動数との関係で共振することが抑制され、張力変動が増大したり、振動や騒音が増加することを抑制することができる。
また、変動パターンは、増減変動が複数回繰り返され、増減変動の周期が、周方向に大から小または小から大に連続して変化するように設定されたことにより、負荷トルクの変動周期と変動パターンの増減変動の周期の位相のずれるタイミングを円滑に変化させることができ、さらに次数音の発生を抑制することができる。

本請求項２に記載の構成によれば、無負荷着座点が、隣接する前記歯の間の各歯底であることにより、ブシュチェーン、ローラチェーンあるいはプレート歯の先端が着座するサイレントチェーン等の使用する際に好適である。
本請求項３に記載の構成によれば、変動パターンは、増減変動が複数回繰り返され、増減変動の周期が、主たるトルク変動の周期と同じ部分を含むことにより、主たる騒音や振動の原因となるトルク変動に対する影響を効果的に軽減することが可能となる。
本請求項４に記載の構成によれば、無負荷着座点は、角度位相が円周方向に連続的に変化するように設けられたことにより、より効果的に噛合いタイミングを分散させることができ、次数音を低減することが可能となる。
本請求項５に記載の構成によれば、無負荷着座点の角度位相の変化と半径方向の位置の変動パターンは、チェーンが前記複数の無負荷着座点に着座した際に、チェーンのピッチと一致するように設定されたことにより、チェーン張力が小さく負荷トルクが小さい場合や、張力の影響を受けずに噛み合っている領域で着座位置が安定し、スプロケットが要因となる張力変化や振動、騒音をさらに抑制することができる。

本発明の一実施形態に係る伝動機構のスプロケットの側面説明図。 本発明の一実施形態に係る伝動機構のスプロケットの複数の歯底の半径方向の位置の変動パターン、及び、角度位相の変化の説明図。

本発明の伝動機構は、複数の歯が形成されたスプロケットと、前記スプロケットが取り付けられるシャフトと、前記スプロケットにかけまわされるチェーンとを有する伝動機構であって、前記スプロケットは、隣接する前記歯の間歯の間において、チェーンが無負荷で着座した際の無負荷着座点の半径方向の位置が、円周方向で変化するように設けられ、前記無負荷着座点の半径方向の位置は、角度位置に応じて増減する変動パターンを有し、前記変動パターンは、増減変動が複数回繰り返され、前記増減変動の周期が、周方向に大から小または小から大に連続して変化する変動パターンを有するものであれば、その具体的な構成はいかなるものであってもよい。
スプロケットに掛け回されるチェーンは、サイレントチェーン、ローラチェーン、ブシュチェーン等いかなるものであってもよく、また、スプロケットの歯と噛み合う構造のものであれば、タイミングベルト等の可撓性伝動部材であってもよい。

本発明の一実施形態である伝動機構のスプロケット１００について、図面に基づいて説明する。
図１に示すように、スプロケット１００は、チェーン、本実施形態ではローラチェーンのローラＲと噛み合う複数の歯１０１が形成されており、隣接する歯の間には歯底１０２が形成されている。
チェーンを無負荷状態でスプロケット１００に噛み合わせた場合、チェーンのローラＲは、歯底１０２に着座する。

一般的なスプロケットにおいては、歯底１０２はスプロケットの回転中心を中心とした歯底円Ｄ上に存在するが、本発明では、複数の歯底１０２の半径方向の位置が角度位置に応じて増減する変動パターンを有しており、図１に示すように、各歯底１０２は、歯底円Ｄから半径方向に離れる歯底ずらし量（ｄ２、ｄ３、ｄ４・・・）を有したものを含んでいる。
歯底ずらし量（ｄ２、ｄ３、ｄ４・・・）の角度位置に応じて増減する変動パターンは、図２に示すように、増減変動が複数回繰り返され、増減変動の周期が周方向に大から小に連続して変化するように設定されている。

また本実施形態では、歯底ずらし量（ｄ２、ｄ３、ｄ４・・・）の角度位置に応じて増減する変動パターンによって、隣り合う歯底１０２の位置がそれぞれわずか半径方向に異なるものとなり、チェーンのローラＲが複数の歯底に着座した際に、チェーンのローラＲのピッチＰと一致しないこととなるため、図２に示すように、各歯底１０２は、位相ずらし量（θ２、θ３、θ４・・・）を有して角度位相が円周方向に連続的に変化するように設定することで、隣り合う歯底１０２の距離が調整され、チェーンのローラＲが複数の歯底に着座した際に、チェーンのローラＲのピッチＰと一致するように設定されている。

以上のように構成された、スプロケット１００の作用について説明する。
前述したように、無負荷時には、チェーンのローラＲはスプロケット１００に歯底１０２に着座し、また、負荷が小さい場合もチェーンの各歯底１０２が等ピッチで設けられているため、ローラＲはスプロケット１００に歯底１０２に極めて近い場所に着座した状態で噛み合うため、チェーンの回転ムラが減り伝達効率を上げることができるとともに、スプロケット１００が要因となる張力変化や振動、騒音を抑制することができる。

チェーン張力が大きくなると、ローラＲは無負荷時の着座点である歯底１０２ではなく、歯底１０２から離れた場所に着座することでトルクを伝達することとなるため、チェーンがスプロケット１００の外周方向に浮いた状態となる。
本発明のスプロケットでは、各歯底１０２は、歯底円Ｄから半径方向に離れる歯底ずらし量（ｄ２、ｄ３、ｄ４・・・）を有したものを含むことで、負荷時のチェーンの外周方向への浮き量を変化させることで、噛合い時のピッチを変化させたものと同様に次数音低減を図ることができる。

また、歯底ずらし量（ｄ２、ｄ３、ｄ４・・・）を角度位置に応じて徐々に変化し、周方向に大から小または小から大に連続して変化する変動パターンを有するようにすることで、噛合い時のピッチをチェーンの張力変動に合わせて変えたものと同様に張力低減を図ることができ、変動パターンが主たるトルク変動の波長と同じ部分を含むようすることで、エンジン等のあらかじめトルク変動要因が決まっている用途で特に効果を奏する。

なお、上述の説明では、歯底１０２をローラチェーンのローラＲの着座位置であるものとしたが、サイレントチェーンにおけるプレートの歯先が無負荷の場合スプロケット１００の歯底１０２に着座するものであってもよい。
また、無負荷の場合にサイレントチェーンにおけるプレートの内股あるいは外股がスプロケットの歯の間の無負荷着座点に着座する場合、当該無負荷着座点が前述した歯底と同様に配置されていればよい。

１００ ・・・ スプロケット
１０１ ・・・ 歯
１０２ ・・・ 歯底（無負荷着座点）
Ｒ ・・・ ローラ
Ｐ ・・・ ピッチ
Ｄ ・・・ 歯底円
ｄ ・・・ 歯底円からの半径方向の距離（歯底ずらし量）
θ ・・・ 歯底の角度位相の偏位（位相ずらし量）

Claims (5)

1. 複数の歯が形成されたスプロケットと、前記スプロケットが取り付けられるシャフトと、前記スプロケットにかけまわされるチェーンとを有する伝動機構であって、
   前記スプロケットは、隣接する前記歯の間において、チェーンが無負荷で着座した際の無負荷着座点の半径方向の位置が、円周方向で変化するように形成され、
   前記無負荷着座点の半径方向の位置は、角度位置に応じて増減する変動パターンを有し、
   前記変動パターンは、増減変動が複数回繰り返され、
   前記増減変動の周期が、周方向に大から小または小から大に連続して変化する変動パターンを有することを特徴とする伝動機構。
2. 前記無負荷着座点が、隣接する前記歯の間の各歯底であることを特徴とする請求項１に記載の伝動機構。
3. 前記変動パターンは、増減変動が複数回繰り返され、
   前記増減変動の周期が、主たるトルク変動の周期と同じ部分を含むことを特徴とする請求項１または請求項２に記載の伝動機構。
4. 前記無負荷着座点は、角度位相が円周方向に連続的に変化するように設けられたことを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれかに記載の伝動機構。
5. 前記無負荷着座点の前記角度位相の変化と前記半径方向の位置の変動パターンは、チェーンが前記無負荷着座点に着座した際に、チェーンのピッチと一致するように設定されたことを特徴とする請求項４に記載の伝動機構。

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