JP7347769B1 - 油脂組成物、油脂の改質剤、揚げ物食品の製造方法、および再生油脂組成物の製造方法 - Google Patents

油脂組成物、油脂の改質剤、揚げ物食品の製造方法、および再生油脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新たな酸化を防止した油脂組成物や、揚げ物食品の製造方法、油脂の改質剤、再生油脂組成物の製造方法を提供する。【解決手段】フルボ酸を含有する、油脂組成物。前記フルボ酸濃度は、1mg/L以上とすることができる。また、揚げ物用とすることもできる。また、前記油脂組成物を用いて食品を揚げる工程を有する、揚げ物食品の製造方法。また、油脂に、フルボ酸を含む改質剤またはフルボ酸を混合することで前記油脂を還元して再生する工程を有する、再生油脂組成物の製造方法。また、フルボ酸を含有する、油脂の改質剤。【選択図】なし

Description

本発明は、油脂組成物に関する。また、本発明は、揚げ物食品の製造方法に関する。また、本発明は、再生油脂組成物の製造方法に関する。また、本発明は、油脂の改質剤に関する。
油脂は、高級脂肪酸のグリセリン-エステルである。たんぱく質、糖質、脂質は、三大栄養素であり、生命の維持に必須かつ重要な栄養素である。ヒトが摂取する脂質の多くは、油脂のトリアシルグリセロールである。
油脂は、それ自体を含む食品から摂取することや、調味オイルなどとして使用することがある。また、焼く、揚げる、炒めるなどの調理においても広く利用されている。油脂は、日常生活で必須のものである。しかし、油脂は、常温で空気と接触していると自動酸化することが知られている。この油脂の自動酸化は、臭いの劣化や、食味の劣化の原因となっている。このため、油脂の酸化を防止する手法が各種検討されている。
また、油脂は加熱をすると加熱臭を発し、この加熱臭が雰囲気中に充満すると、目の痛みや油酔いなどを引き起こし、作業効率の低下を招くことから、特許文献1、2は、加熱臭の低減化について、リパーゼを油脂と分散、接触させる方法を提案している。
また、食用油脂に乳化剤を配合して油脂組成物を調製することも種々試みられており、特許文献3~5は、有機酸モノグリセリドおよびポリグリセリン脂肪酸エステルを添加してなる揚げ物調理用油脂組成物、液状油脂に4.0重量%以下の乳化剤を添加する揚げ物調製用油脂組成物、香辛料抽出物と脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、有機酸モノグリセリドを添加する揚げ物用油脂組成物などを提案している。
また、特許文献6は、乳化剤を食用油脂に添加してなる所定の性状値を有する油脂組成物を用いることにより、揚げ物製造時の着色、加熱臭を抑制する方法を提案している。
特開平11-127884号公報 特開2000-50893号公報 特開平9-74999号公報 特開平7-16052号公報 特開平6-113742号公報 特開2002-84970号公報
前述の特許文献1~6のように様々な油脂の酸化による劣化を防止する技術が提案されているが、油脂は様々な用途で使用されることから、その選択肢はより多い方がよく、新たなものも求められている。また、油脂を再生することで、再利用することも求められている。
かかる状況下、本発明は、新たな酸化を防止した油脂組成物や、揚げ物食品の製造方法、油脂の改質剤、再生油脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> フルボ酸を含有する、油脂組成物。
<2> 前記フルボ酸濃度が、1mg/L以上である、前記<1>に記載の油脂組成物。
<3> 揚げ物用である前記<1>または<2>に記載の油脂組成物。
<4> 前記フルボ酸濃度が、100mg/L以上であり、使用時に油脂と混合して用いられるものである、前記<1>~<3>のいずれかに記載の油脂組成物。
<5> 前記<1>~<4>のいずれかに記載の油脂組成物を用いて食品を揚げる工程を有する、揚げ物食品の製造方法。
<6> 油脂に、フルボ酸を含む改質剤またはフルボ酸を混合することで前記油脂を還元して再生する工程を有する、再生油脂組成物の製造方法。
<7> フルボ酸を含有する、油脂の改質剤。
本発明の油脂組成物は、保管時や使用時に、酸化による劣化が防止される。この酸化の防止は、揚げ物油などとして使用するときの加熱による酸化に対しても有効であり、揚げ物食品の劣化を防止できる。また、本発明の油脂の改質剤は、酸化された食用油脂を還元して再利用できる再生油脂組成物の製造に利用することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
[本発明の油脂組成物]
本発明の油脂組成物は、フルボ酸を含有する。本発明の油脂組成物は、保管時や使用時の油脂の酸化が防止される。
[本発明の揚げ物食品の製造方法]
本発明の揚げ物食品の製造方法は、本発明の油脂組成物を用いて食品を揚げる工程を有する。この製造方法で製造された揚げ物食品は、食味がよく、一般的な油脂組成物で製造したものよりも酸化しにくい。
[本発明の油脂の改質剤]
本発明の油脂の改質剤は、フルボ酸を含有する。この改質剤は、使用済みなどの酸化した油脂に混合することで、その酸化されていた状態を還元して、再利用できる再生油脂組成物の製造に利用することができる。なお、この改質対象となる油脂は、油脂単独のものでも油脂組成物に含まれる油脂でもよい。
[本発明の再生油脂組成物の製造方法]
本発明の再生油脂組成物の製造方法は、油脂に、フルボ酸を含む改質剤またはフルボ酸を混合することで前記油脂を還元して再生する工程を有する。この製造方法により、使用済みなどの酸化されていた油脂を還元して再利用できる再生油脂組成物を得ることができる。なお、この改質対象となる油脂は、油脂単独のものでも、油脂組成物に含まれる油脂でもよい。
本願において、本発明の油脂組成物は、本発明の揚げ物食品の製造方法に使用することができる。また、本発明の油脂の改質剤は、本発明の油脂組成物を参照して調製することができる。また、本発明の油脂の改質剤は、本発明の再生油脂組成物の製造方法に使用することができる。よって、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
油脂は、空気や、熱、光、クロロフィル、金属との酸化反応などを促進要因として酸化して、酸化により劣化する場合がある。劣化した油脂は、過酸化物であるフリーラジカルの生成や、アルデヒド、ケトンなどの有害成分が生成する可能性があることも問題視されている。
本発明者は、油脂の酸化による劣化の問題を解決するにあたり、フルボ酸の利用を検討した。その結果、フルボ酸を利用することで、油脂の酸化による劣化を防止することができることを実験的にも確認した。
また、さらに油脂との関係を検討した結果、本発明者は、空気と接触したり、加熱などで加速されて、酸化劣化した、いわゆる使用済みのような食用油脂であっても、フルボ酸を混合することで、酸化されている油脂を還元して、再利用もできることや再生油脂組成物とできることを見出した。
[フルボ酸]
フルボ酸は、フェノール及び/又はフェノール露出基のある化合物を含む代謝産物を、有機物等と反応させることで生じる腐植物質(特に腐植前駆物質)の内、酸およびアルカリへの溶解性からフミン酸と区別されるものの、様々な構造を有する有機物等の混合物である。
[腐植物質]
腐植物質は、生物の死後、生物体有機物が微生物的・化学的作用を受けて崩壊した「化学構造が特定されない有機物(非生体有機物)」の総称と言われている。この腐植物質についても、機能性を示すものと、機能性を示さないものとがあることが経験的に知られており、これは、その自然界の有機物である生物体有機物が、土へ還ろうとするときの中間生成物が含まれるか否かの影響が大きいものと考えられる。この中間生成物を含むとき、すなわち機能性を示す腐植物質については、腐植前駆物質と呼ばれることがある。(内水護「自然と輪廻 土・自然・人間・社会 ベーシック文明論」18-28頁,漫画社,1986)
ここで腐植前駆物質や腐植物質(腐植物)には、その成分の腐植化度合(重縮合反応化度合)として、ヒュミンやフルボ酸、フミン酸等が含まれていることが知られている。そして、一般的な腐植物質において、フルボ酸とフミン酸との比率は2:8程度の重量比で含まれている。本発明においては、このフルボ酸を利用する。
なお、本願におけるフルボ酸およびフミン酸は、日本腐植物質学会の属する国際腐植物質学会(IHSS)の分類に基づき、生物体有機物が微生物的・化学的作用を受けて崩壊して生じる化学構造が特定されていない有機物(非生体有機物)である腐植物のうち、アルカリ・酸に対する溶解性での分類を行う。すなわち、フルボ酸は、アルカリに可溶であり、かつ、酸に可溶な成分である。一方、フミン酸は、アルカリに可溶であるが、酸に不溶な成分である。なお、ヒュミンは、アルカリに不溶であり、かつ、酸に不溶な成分である。
[フルボ酸濃度]
本発明の油脂組成物のフルボ酸の濃度は、1mg/L以上であることが好ましい。このような量のフルボ酸濃度として使用することで、より安定して使用時や保管時の油脂組成物の劣化を防止することができる。油脂組成物のフルボ酸濃度の下限は、2mg/L以上や、3mg/L以上、5mg/L以上としてもよい。さらに、より優れた効果を得るために、油脂組成物のフルボ酸濃度の下限は、10mg/L以上や、15mg/L以上としてもよい。
本発明の油脂組成物のフルボ酸の濃度は、特に上限を設けなくてもよい。特に、後述もするように、使用時に油脂組成物と混合して使用するように、高濃度でフルボ酸を含む、希釈用の原液やマスターオイルのような状態としておいてもよい。一方で、フルボ酸は必ずしも油脂組成物に溶解性が高いものではなく、使用時の油脂は前述したように微量の濃度でも効果を奏することから、フルボ酸の濃度を10,000mg/L以下(10g/L以下)や、5,000mg/L以下、2,000mg/L以下のような上限を設けて調製してもよい。
フルボ酸濃度は、本発明の油脂組成物の調製時の油脂組成物との混合比率から管理することができる。また、必要に応じて、以下のような手法でその濃度を測定してもよい。
[フルボ酸濃度・腐植化度の測定例]
フルボ酸含有液等に含まれているフルボ酸の程度は、フルボ酸が混合物質であり、かつ他の有機物の有無の影響も大きいため具体的な成分ごとの濃度で規定することが適切ではなく、具体的な数値では規定しにくい場合がある。
フルボ酸抽出液より、国際腐植物質学会(IHSS)の方法に従い疎水性様物質を分離・精製し、この物質が日本腐植物質学会(JHSS)より頒布されている標準フルボ酸と類似した物理化学的特性(吸収、FTIR、3D蛍光スペクトル、固体NMR等)をもつことが確認されている。
このフルボ酸は、その指紋的特性として、3D蛍光スペクトルの励起波長(Ex)310nm近傍、蛍光波長(Em)410nm付近に蛍光ピークを示す。
このフルボ酸の指紋的特性を利用して、簡易的に溶存有機物溶液のフルボ酸濃度を算出する。そのため、一次加工した腐植前駆物質の抽出液をIHSS法により分離・精製したフルボ酸(BF)を用いて、濃度10mg/L~100mg/Lのフルボ酸溶液を調製する。10μg/L硫酸キニーネのEx350nm/Em455nmにおける蛍光強度に対するフルボ酸のEx310nm/Em410nmにおける蛍光の相対強度とフルボ酸濃度の関係を検量線として、任意の溶存有機物溶液に対しては適度に希釈あるいは濃縮して、フルボ酸濃度を算出する。例えば、現在販売されているフルボ酸液(商品名「リードアップ」(株式会社T&G))のフルボ酸含有量は約1000ppmと評価されている。
また、そのフルボ酸の品質である腐植化度の指標として、3D蛍光スペクトルのピークの蛍光強度(FI)とその励起波長に対応する吸光度(Abs)の比、FI/Absを評価することも有効である。この量は、見かけの量子収率QYappを表しており、フルボ酸の構成部分構造の疎水性多環芳香族成分の成長度に依存している。本発明に用いるフルボ酸(BF)のQYappは、JHSSから頒布されている標準試料・段戸フルボ酸のQYappに比べ、この標準試料よりもQYappが高いほうが好ましく、標準試料よりも2倍以上QYappが高いほうがより好ましい。
なお、一般的な汚水等の有機性物質含有液の腐植化が進まない段階では、QYapp値はほとんど0に近い。なお、QYapp値は腐植化度に関するフルボ酸の品質の指標であるとともに、抗酸化性の活性にも相関する。
一方、フミン酸の含有については、フミン酸を特定する精製や分析を行ってその濃度を基に判断することができる。この判断を簡易的に行う場合、前述したフルボ酸の測定同様、3D蛍光スペクトルの特性により確認できる。フミン酸の場合、Ex285nm/Em545nm、Ex360nm/Em545nm、Ex445nm/Em540nmの3ヵ所にピークが検出される。本発明に用いるフルボ酸含有液には、フミン酸に相当するピークは確認されていない。なお、本発明に用いるフルボ酸については、特許第6026631号公報や特開2021-37454号公報に開示の技術も参照して、利用することができる。
[油脂組成物]
油脂組成物は、油脂を含む組成物である。また、食用油脂は、食用とされている油脂である。油脂は、植物性油脂や動物性油脂のいずれを対象とすることもできる。本発明は、特に食用油脂に適しており、特に、調理用などで多量に使用され、常温で流動性が高い液状のものが好ましい。
植物性油脂は、種子油や、胚芽油、果実油などを用いることができる。種子油は、大豆油や、菜種油(キャノーラ油)、ひまわり油、ごま油、綿実油、パーム油、グレープシードオイル、亜麻仁油、えごま油、ピーナッツ油などを用いることができる。胚芽油は、コーン油や、米油、小麦胚芽油、大豆胚芽油などを用いることができる。
動物性油脂は、動物脂や、魚油などを用いることができる。動物脂は、ラードや、ヘット、鶏油、バター、牛脂、豚脂などを用いることができる。魚油や水産油は、各種魚類や水産動物などから得たものを用いることができ、イワシや、サバ、スケソウダラ等を煮詰め、その煮汁から分離したものなどを用いることができる。
[揚げ物用の油脂組成物]
本発明の油脂組成物は、揚げ物用の油脂組成物とすることが好ましい。揚げ物の油脂組成物は、その調理手法の性質からも、飲食店や食堂、家庭などでも、比較的長い時間、加熱状態で、多量の食品が追加されながら利用される。特に、加工量が多い食堂などでは、食用油脂を数時間や数日などのより長時間にわたって劣化することなく利用できることは、食品ロスにも貢献できる。
[揚げ物食品]
揚げ物食品(揚げ物)は、高温の多量の油脂(食用油脂)で食品を加熱調理した食品である。高温の多量の油脂を用いることから、食品にも使用した油脂の影響が残りやすい。調理法によって、様々な名称や、食品、前処理、調理時間などで行われるが、例えば、揚げ方や料理として、素揚げや、から揚げ、天ぷら、フライ、カツ、コロッケ、揚げ菓子、フリッター、即席麺などがあげられる。本発明の油脂組成物を用いて製造されるこれらの揚げ物食品は、劣化の影響を大きく低減できる。
[混合用油脂組成物]
本発明の油脂組成物は、予め、高濃度のフルボ酸を含む油脂組成物を調製しておき、これを混合用油脂組成物と位置付けて利用してもよい。すなわち、この混合用油脂組成物は、フルボ酸濃度が、10mg/L以上や、100mg/L以上であり、使用時に油脂と混合して用いられるものとすることができる。本発明の油脂組成物は、保管時や調理などでそのまま使用するとき、その目安としては、フルボ酸濃度が1mg/L~500mg/L程度を目安とすることができる。このため、10倍希釈用であれば、例えば、フルボ酸濃度が10mg/L~5,000mg/Lのようにしておくこともできる。また、20倍希釈用であれば、例えば、フルボ酸濃度が20mg/L~10,000mg/Lのようにしておくこともできる。また、100倍希釈用であれば、例えば、フルボ酸濃度が100mg/L~50,000mg/Lのようにしておくこともできる。そして、その希釈倍率に合わせて、油脂組成物と混合して利用することができる。この混合用油脂組成物も、油脂組成物との混合性を考慮して、予め油脂組成物と混合しておいて調製できる。なお、混合用油脂組成物のフルボ酸を含有する油脂組成物と、使用時の希釈に用いる油脂とは、同じ種類の油脂でもよいし、異なる種類の混合油脂でもよい。
[油脂組成物の指標]
本発明の油脂組成物の評価として、酸価(AV)や、過酸化物価(POV)、極性化合物(PC)、カルボニル価(COV)、アニシジン価(AnV)、チオバルビツール酸化(TBA)、ヨウ素価(IV)、脂肪酸組成、三次元蛍光スペクトルなどを指標とすることができる。これらの指標が、フルボ酸を含まないときの油脂の指標と比較して評価することができる。また、単に調製時の状態を指標としてもよいし、保管時や使用時のこれらの変化の指標としてもよい。
本発明の油脂組成物は、油脂に、フルボ酸を混合して溶解や分散させることで製造することができる。フルボ酸は、疎水性部分も有するため、フルボ酸の粉末やフルボ酸含有液を濃縮した液状物を、油脂と混合して、十分に撹拌等することで、フルボ酸を含有する油脂組成物を得ることができる。この混合は、油脂と高純度のフルボ酸粉末などを所定の量で混合して、その容器を振ることや、撹拌機で攪拌混合して調製できる。また、油脂が、特に動物性油脂に代表されるように、常温で固形など流動性が低いものの場合は、適宜、加温して流動性が高い状態で混合してもよい。
このように、本発明の油脂組成物は、フルボ酸により酸化しにくい油脂組成物を提供するものである。これは、家庭用に用いたとき交換や廃棄しないで利用できる期間が長い油脂組成物を提供することができる。また、食用などの業務用に用いたとき交換頻度を下げて、廃棄量の大幅な低減ができる油脂組成物を提供することができる。また、劣化した油脂組成物の再生にも寄与できるものが得られる。さらには、本発明の油脂組成物を用いて調理した揚げ物や、フライ製品のフリーラジカルなどの生成も従来の油脂と比べて大幅に抑制できる。
[油脂の改質]
本発明は、油脂の改質剤や、再生油脂組成物の製造方法のように、油脂の改質にも利用することができる。油脂は、開封後、そのまま空気と接触する可能性がある状態で保管することがある。また、長時間、揚げ物用のように加熱状態などのまま利用することもある。また、揚げ物などに使用した後に、回収して、適宜冷まして、再利用することもある。例えば、廃油は、食品衛生法で規制されるように酸価値が上昇して酸化の進んだ揚げ物などに使用した油である。廃油は、例えば、揚げ物などに使い終わった油であり、この廃油は、天かすなどの食品残渣が含まれている場合があるが、これらを濾すなどして、再利用することがある。これらの油脂は、酸化が進んで劣化している場合がある。
しかし、フルボ酸を含有する、油脂の改質剤を用いることで、酸化されていた油脂を還元して再利用に適した再生油脂組成物とすることができる。
この本発明の油脂組成物の改質剤は、本発明の油脂組成物に準じるものとして調製することができる。特に、希釈して用いるための組成としている、混合用油脂組成物に準じるものとすることができる。保管時や調理などで使用させるとき、その目安としては、フルボ酸濃度が1mg/L~500mg/L程度を目安とすることができる。このため、10倍希釈用であれば、例えば、フルボ酸濃度が10mg/L~5,000mg/Lのようにしておくこともできる。また、20倍希釈用であれば、例えば、フルボ酸濃度が20mg/L~10,000mg/Lのようにしておくこともできる。また、100倍希釈用であれば、例えば、フルボ酸濃度が100mg/L~50,000mg/Lのようにしておくこともできる。そして、その希釈倍率に合わせて、油脂組成物と混合して利用することができる。この改質剤も、油脂組成物との混合性を考慮して、予め油脂組成物と混合しておいて調製できる。また、フルボ酸を、直接、酸化した油脂組成物に混合して改質することもできる。
また、この本発明の改質剤やフルボ酸を用いて、油脂に、フルボ酸を含むものである本発明の改質剤を混合することでその油脂を還元して再生する工程を有する、再生油脂組成物の製造方法とすることができる。なお、この改質対象の油脂は、油脂単独や、各主成分を含む油脂組成物の油脂も含む。
再生油脂組成物は、酸化劣化などした状態から還元されて再生された油脂組成物である。この調製は、常温などで、再生対象の劣化などした油脂と、本発明の改質剤を混合するものである。混合後、静置しておくことで、改質剤に含まれるフルボ酸により油脂が還元される。この改質剤の混合は、フルボ酸を1mg/L以上や、3mg/L以上程度、より好ましくは、10mg/L以上含むように、混合する。
このように本発明によれば、フルボ酸を利用して、油脂の酸化劣化防止や、還元して再利用、油脂組成物を用いた加工食品の製造などに寄与することができる。さらには、次のような利点を有する。本発明は、様々な油脂組成物に適用することができる。油脂組成物として長期保管や、加熱しても酸化しにくくなり、持続性が高まる。酸化しにくくなることで身体に対して有害となる物質の生成を抑制できる。酸化した油脂に混合して、還元力が働き酸化していない状態に戻り再使用できる状態となる。揚げ物などの調理品の残り臭いを抑制できる。油脂組成物の抗酸化、還元の働きで、揚げ物などの調理品に吸収された油脂も酸化されにくく、酸化物質が減少し、身体に悪影響を及ぼす酸化物質も生成しにくくなる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、フルボ酸を混合する影響として、以下の試験を行った。それぞれの試験について、後述する。
試験(1)油脂組成物に対するフルボ酸混合の影響評価
試験(2)フルボ酸含有の油脂組成物を用いた加熱試験評価
試験(3)フルボ酸含有の油脂組成物を用いた揚げ物の製造評価
試験(4)使用済み油脂組成物に対するフルボ酸を混合したときの影響評価
試験(1)[食用油脂に対するフルボ酸混合の影響評価]
開封直後の新鮮な食用油脂に、フルボ酸を混合したときの食用油脂組成物の組成等への影響を評価した。
[評価項目]
・ヨウ素価(IV):一般財団法人日本食品分析センターにて、WIJS法により測定した。
・脂肪酸組成:一般財団法人日本食品分析センターにて、ガスクロマトグラフ法(水素炎イオン化検出器FID)により測定した。
[試験品等]
・食用油脂(1):市販のキャノーラ油(J-オイルミルズ社製「さらさらキャノーラ油」)を用いた。
・フルボ酸(1):フルボ酸精製粉末として、リードアップ製精製フルボ酸粉末(T&G製「リードアップ」を用いて国際腐植物質学会の定量法を用いて調製)を用いた。
[参考例1]
開封直後の、新鮮な食用油脂(1)(キャノーラ油)を参考例1として、ヨウ素価、脂肪酸組成を測定した。
[実施例1]
食用油脂(1)に、食用油脂1Lあたりフルボ酸(1)を300mg混合して、フルボ酸濃度300mg/Lの食用油脂組成物を調製した。この食用油脂組成物を実施例1として、ヨウ素価、脂肪酸組成を測定した。
表1に、参考例1と実施例1の評価結果を示す。フルボ酸を混合しても、新鮮なキャノーラ油のヨウ素価や、脂肪酸組成と同等のものであり、新鮮な食用油脂の過剰な物性変化は生じないことが確認された。
試験(2)フルボ酸含有の食用油脂を用いた加熱試験評価
フルボ酸を含有する食用油脂組成物を加熱したときの酸価を評価した。
試験(2)-1 フルボ酸含有の食用油脂の加熱試験
キャノーラ油(菜種油)に、リードアップの凍結乾燥物である白色粉末を添加して、加熱による熱酸化を想定して、加熱前後の酸価の変化等を評価した。
[試験品等]
・食用油脂(1):市販のキャノーラ油(J-オイルミルズ社製「さらさらキャノーラ油」)を用いた。
・フルボ酸(2):フルボ酸を含有する粉末として、リードアップ(T&G製)の凍結乾燥物を用いた。
[調整条件]
[実施例2-1]食用油脂(1)に、フルボ酸(2)の凍結乾燥物を、フルボ酸含有量が、1mg/mL(1,000mg/L)となるように混合した。フラスコで、190℃で1時間スターラーで撹拌しながら、油浴して、フルボ酸を含む食用油脂組成物を調製した。
[参考例2-1]食用油脂(1)を参考用油脂として用いた。
[評価手法]酸価
本評価手法は、油脂中の遊離脂肪酸(RCOOH)の量を測定するものであり、油脂1g中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のミリグラム数を表す。
ROOH+KOH → RCOOK+H2
酸価が大きいほど脂が劣化していることを表し、以下のようにあらわすことができる。
酸価0~2未満:油の劣化はほとんどみられない。
酸価2~3未満:劣化しかけている。
酸価3~4未満:かなり劣化している。食べない方が良い。
酸価4~:明らかに劣化している。中毒の危険がある。
[実験操作]試験経時変化による酸価の確認
・試料を推定酸価に対応する酸価の採取量に応じて量りとる。ここで菜種油の酸価は2.0以下とされているため、試料採取量を10gとする。
・中性溶剤(エタノール:ジエチルエーテル=1:1)100mLを加えて、試料が完全に溶けるまで十分に振る。
・0.1mol/L水酸化カリウム標準液で滴定し、指示薬(フェノールフタレイン)の変色が30秒続いたときを、中和の終点と定める。
・以下の式(式1-1)に従い、酸化を計算する。
酸価=5.611*A*F/B (式1-1)
上記(式1-1)において、
A:0.1mol/L水酸化リウム標準液使用量(mL)
F:0.1mol/L水酸化カリウム標準液のファクター
B:試料採取量(g)
[加熱条件]
加熱条件として、約20mLの油脂を、フライパンで180℃までコンロで加熱して、180℃到達後1時間維持し、その後、常温で放冷するのを、1回の加熱とした。この加熱の前後について、以下の試験を行って、評価用サンプルとした。試験結果を下表に示す。
0回:加熱前の油脂。
1回:加熱条件の加熱を1回行った油脂。
2回:加熱条件の加熱を2回行った油脂。
この評価結果から、フルボ酸を含有する実施例2-1の油脂は、参考例2-1の油脂よりも、酸価が低く、加熱に伴う酸化が抑制されていることが確認された。
試験(3)フルボ酸含有の食用油脂を用いた揚げ物の製造評価
昼食、夜食等を提供する社員食堂で、フルボ酸含有油脂組成物(1)、(2)の効果を評価する試験を行った。この食堂は、各食事の時間帯に合わせて、おおよそ、9:00~12:00(昼食用)と、18:00~21:00(夜食用)に調理を行う食堂である。
[試験品等]
・食用油脂(1):市販のキャノーラ油(J-オイルミルズ社製「さらさらキャノーラ油」)を用いた。
・フルボ酸(1):フルボ酸精製粉末として、リードアップ製精製フルボ酸粉末(T&G製「リードアップ」を用いて国際腐植物質学会の定量法を用いて調製)を用いた。
・フルボ酸含有油脂組成物(1):フルボ酸(1)を食用油脂(1)に溶解させて、フルボ酸濃度1,000mg/Lのものを調製した。
・フルボ酸含有油脂組成物(2):フルボ酸(1)を食用油脂(1)に溶解させて、フルボ酸濃度300mg/Lのものを調製した。
[調理試験]
フライヤー容量30Lの装置で、試験期間中、1日当たり22.4~64.9kg(平均約41kg)の揚げ物を調理した。
食材は、その日の献立や注文などに応じて適宜変更され、例えば、ポテトや、ポークハム、白身竜田揚げ、肉団子、ヒレカツ、エビフライ、メンチカツ、白身フィーレ、かにコロッケ、チキンカツ、揚げシュウマイ、エビフリッター、チキンがらめ、白身パン粉、春巻き、串カツ、から揚げ、デリ揚げ、ちくわ天、天かす、とんかつ、チキンナゲット、鶏天ぷら、白身えらい、鶏竜田揚げ、白身フライ、イカフライ、ヒレとんかつ、ハムカツ、イカかつなどである。
調理開始の30分前に添加して加熱した。調理終了後に、消費した油量に合わせて、食用油脂(1)を追加して、翌日の調理開始時に30Lを維持するものとした。追加する油量は、調理量などに応じて変化するが、1日当たり概ね2~6L(平均約4L)であった。
調理終了後は、網などを使用して揚げカスを取り除き、沈殿したかすは再利用しないようにした。また、加熱停止後は、フライヤーに蓋をして光や空気を遮断した。また、調理は、平日(月曜~金曜)に5日連続して行い、土曜・日曜は、調理を行わなかった。以下の調理日数は、実際に調理を行った平日の回数を数えた延べ日数である。
[評価]
・酸価(AV価):東洋濾紙株式会社「AV-CHECK」を用いて、同製品のカラーチャートと比較して評価した。
・過酸化物価(POV):一般財団法人日本食品分析センターにて、酢酸クロロホルム法にて分析した。
・TBA価:一般財団法人日本食品分析センターにて、水蒸気蒸留法にて分析した。
[参考例3-1]食用油脂(1)による調理
食用油脂(1)を用いて、従来通り、調理を行った。調理終了後に、AV価を測定した。
食用油脂(1)は、新品状態では、AV価0であった。
調理1~2日目は、AV価0であった。
調理3~6日目は、AV価0.5であった。
調理7~8日目は、AV価1.0であった。
調理9~15日目は、AV価1.5であった。
調理16日目で、AV価2.0となり、油の外観も低下していたため、揚げ物油としての利用を終了した。
[実施例3-1]フルボ酸含有油脂組成物(1)の利用
食用油脂(1)30Lに、フルボ酸含有油脂組成物(1)90mLを混合して、調理開始時のフライヤーを準備して、調理を開始した。この調製した食用油脂組成物の実験開始時のフルボ酸濃度は約3mg/Lである。調理終了後に、AV価を測定した。
調理開始後9日目でAV価が1.5に上昇したため、10日目以降は、消費した油量に応じて、調理後に、フルボ酸含有油脂組成物(1)を、1日当たり30~55mL追加で添加した。
調理開始時の食用油脂組成物は、新品状態では、AV価0であった。
調理1~4日目は、AV価0であった。
調理5~6日目は、AV価0.5であった。
調理7~8日目は、AV価1.0であった。
調理9~18日目は、AV価1.2~1.5であった。
調理19日目で、AV価2.0となったため、揚げ物油としての利用を終了した。なお、この油脂の外観は透明感があり良好な状態であった。
参考例3-1は、調理16日でAV価2.0となったが、フルボ酸含有油脂組成物(1)を用いたこの実施例3-1は、調理19日でAV価2.0となり、廃油目安となるまでの日数が3日ほど延びることが確認された。
[実施例3-2]フルボ酸含有油脂組成物(2)の利用
食用油脂(1)30Lに、フルボ酸含有油脂組成物(2)340mLを混合して、調理開始時のフライヤーを準備して、調理を開始した。この調製した食用油脂組成物の実験開始時のフルボ酸濃度は約3mg/Lである。調理終了後に、AV価を測定した。消費した油量に応じて、調理後に、フルボ酸含有油脂組成物(2)を、1日当たり30~300mL(平均84.7mL/日)追加で添加した。
調理開始時の食用油脂組成物は、新品状態では、AV価0であった。
調理1~3日目は、AV価0であった。
調理4~6日目は、AV価0.5であった。
調理7~9日目は、AV価1.0であった。
調理10~14日目は、AV価1.2~1.8であった。
調理15日目で、AV価は2.0となったが、フルボ酸含有油脂組成物(2)300mLを混合してその還元効果を確認した。その結果、AV価1.8まで低下したため、AV価2.0は翌日にAV価が低下を確認しながら利用した。
調理19日目で、調理後AV価2.5となったため、廃油とするものとして、揚げ物油としての利用を終了した。
試験開始から5日目の食用油脂(AV価0.5)と、試験開始から15日目の食用油脂(AV価2.0)を用いて調理した揚げ食品をそれぞれ調理後常温で3時間静置し、その後冷凍保存したものを用いて、衣に含まれる油を遠心分離して抽出して、その抽出油のPOV、TBA価を評価した。
5日の食品は、POV:1.4meq/kgであり、TBA価:3nmol/gであった。
15日の食品は、POV:2.4meq/kgであり、TBA価:5nmol/gであった。
いずれも、風味の劣化や、酸敗臭が懸念される指標とされている値よりもはるかに低く、食品が良好な状態であることが、これらの測定値からも確認された。
[実施例3-3]フルボ酸含有油脂組成物(1)の利用
食用油脂(1)30Lに、フルボ酸含有油脂組成物(1)500mLを混合して、調理開始時のフライヤーを準備して、調理を開始した。この調製した食用油脂の実験開始時のフルボ酸濃度は約16.7mg/Lである。各日の調理終了後に、AV価を測定した。消費した油量に応じて、調理後に、フルボ酸含有油脂(1)を、毎週金曜日に1回500mL追加で添加した。
調理開始時の食用油脂組成物は、新品状態では、AV価0であった。
調理1~4日目は、AV価0であった。
調理5~7日目は、AV価0.5であった。
調理8~11日目は、AV価0.8~1.0であった。
調理12~19日目は、AV価1.2~1.8であった。
調理20~27日目は、AV価2.0~2.2であった。
調理28日目にAV価は2.5となったが、フルボ酸含有油脂(1)500mLを混合してその還元効果を確認した。その結果、AV価2.0まで低下したため、AV価の低下を確認しながら利用した。
調理30日目で、調理後AV価2.5となり、フルボ酸含有油脂(1)500mLを混合しても、AV価が2.5のままだったため、廃油とするものとして、揚げ物油としての利用を終了した。
なお、30日時点でも、一般的な廃油となる状態よりも、油脂の外観は透明感がありきれいで、着色も少なかった。
試験(4)使用済み食用油脂に対するフルボ酸を混合したときの影響評価
揚げ物に用いた後のキャノーラ油の廃油に、フルボ酸を混合することで、還元して再生油脂組成物の調製を検討した。
[試験品等]
・食用油脂組成物(1´):フルボ酸を用いていない食用油脂にて揚げ物に用いたAV価2.5の油脂(廃油)を用いた。これは、参考例3-1に準じて、さらに時間経過して、AV価2.5となった油脂である。
・フルボ酸(1):フルボ酸精製粉末として、リードアップ製精製フルボ酸粉末(T&G製「リードアップ」を用いて国際腐植物質学会の定量法を用いて調製)を用いた。
・フルボ酸含有油脂組成物:食用油脂(キャノーラ油)1Lに、フルボ酸(1)を300mg含有させた食用油脂を、フルボ酸含有油脂組成物として使用した。
・AV価:柴田化学株式会社製AV試験紙を用いて標準カラーチャートと比較して評価した。
廃油として、食用油脂組成物(1´)を用いて、これに、フルボ酸含有油脂組成物を混合して、表3の濃度となるように添加したときの影響を評価した。AV試験紙で、酸化の程度であるAV価を評価した結果を表3に示す。フルボ酸含有油脂を廃油に混合することで、AV価が大きく低下して、すなわち酸化していた状態を還元して、再生できることが確認できた。
本発明は、油脂組成物の酸化防止や改質に利用することができ、産業上有用である。

Claims (6)

  1. フルボ酸を3mg/L以上含有し、液状である、食用の油脂組成物。(マイナスイオンを生成する微量放射性レア・アース鉱物を含有するものである場合を除く。)
  2. 揚げ物用である請求項に記載の油脂組成物。
  3. 前記フルボ酸濃度が、100mg/L以上であり、使用時に油脂と混合して用いられるものである、請求項に記載の油脂組成物。
  4. 請求項1または2に記載の油脂組成物を用いて食品を揚げる工程を有する、揚げ物食品の製造方法。
  5. フルボ酸を10mg/L以上と、食用油脂とを含有する、液状の油脂の改質剤。
  6. 請求項5に記載の改質剤を、油脂に混合することで前記フルボ酸濃度を3mg/L以上として、前記油脂を還元して再生する工程を有する、再生油脂組成物の製造方法。
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