JP7346797B2 - エピスルフィド組成物、硬化物、及び光学材料 - Google Patents

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Description

本開示は、エピスルフィド組成物、硬化物、及び光学材料に関する。
プラスチックレンズは、無機レンズに比べて軽量で割れ難く、染色が可能であるため、近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の用途に急速に普及してきている。
プラスチックレンズに代表される樹脂製の光学材料のうち、エピスルフィド化合物を重合させて得られる光学材料は、高い屈折率を有することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002-194083号公報
しかしながら、モノマーとしてのエピスルフィド化合物(例えば、特許文献1に記載されたエピスルフィド化合物)は、重合速度の制御に関して改善の余地があった。
エピスルフィド化合物の重合が過度に進行する場合に、エピスルフィド化合物に対し、何らかの添加剤を加えて重合速度を制御するということが考えられる。
しかし、エピスルフィド化合物に対する添加剤の溶解性が低い場合には、添加剤の使用量が制限されるため、重合速度の制御が不十分となり得るという問題がある。
他方、エピスルフィド化合物に対して添加剤を加えた場合、エピスルフィド化合物の重合によって得られる樹脂の特性が低下する場合(例えば、樹脂の色調の変化、濁りの発生等)がある。このため、エピスルフィド化合物に対して添加剤を加える場合、樹脂の特性の低下を抑制することも要求される。
本開示は以上の実情に鑑みてなされたものである。
本開示の目的は、エピスルフィド化合物の重合速度の制御性に優れ、かつ、エピスルフィド化合物の重合によって得られる樹脂の特性の低下を抑制できるエピスルフィド組成物、上記エピスルフィド組成物の硬化物、及び、上記硬化物を含む光学材料を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物と、水酸基を含むラジカル捕捉剤と、を含有するエピスルフィド組成物。
<2> 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物が、エピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含む化合物を含む<1>に記載のエピスルフィド組成物。
<3> 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物が、下記式(1)で表される化合物を含む<1>又は<2>に記載のエピスルフィド組成物。
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、mは、0~3の整数であり、nは、2~4の整数である。
nが2である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基、スルフィド結合、又はジスルフィド結合である。
nが3又は4である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基である。
複数存在するR~R及びmの各々は、同一であっても異なっていてもよい。
<4> 前記式(1)中、前記nが2であり、前記Lがジスルフィド結合である<3>に記載のエピスルフィド組成物。
<5> 前記水酸基を含むラジカル捕捉剤が、更に、ベンゼン環及びエピスルフィド環の少なくとも一方を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<6> 前記水酸基を含むラジカル捕捉剤が、フェノール系ラジカル捕捉剤を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<7> 前記水酸基を含むラジカル捕捉剤が、1つの水酸基とエピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含むラジカル捕捉剤を含む<1>~<6>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<8> 前記水酸基を含むラジカル捕捉剤の含有量が、前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物の含有量に対し、10モルppm以上である<1>~<7>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<9> 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物の含有量が、エピスルフィド組成物の全量に対し、90質量%以上である<1>~<8>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<10> 更に、チオール化合物を含有する<1>~<9>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<11> 更に、重合触媒を含有する<1>~<10>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<12> 光学材料の製造に用いられる<1>~<11>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<13> <1>~<12>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物の硬化物。
<14> <13>に記載の硬化物を含む光学材料。
本開示によれば、エピスルフィド化合物の重合速度の制御性に優れ、かつ、エピスルフィド化合物の重合によって得られる樹脂の特性の低下を抑制できるエピスルフィド組成物、上記エピスルフィド組成物の硬化物、及び、上記硬化物を含む光学材料が提供される。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
〔エピスルフィド組成物〕
本開示のエピスルフィド組成物は、エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物(以下、「特定エピスルフィド化合物」ともいう)と、水酸基を含むラジカル捕捉剤(以下、「特定ラジカル捕捉剤」ともいう)と、を含有する。
本開示のエピスルフィド組成物は、特定エピスルフィド化合物の重合速度の制御性(以下、「重合速度制御性」ともいう)に優れる。更に、本開示のエピスルフィド組成物によれば、特定エピスルフィド化合物の重合によって得られる樹脂の特性の低下を抑制できる。
本開示において、「特定エピスルフィド化合物の重合速度」との用語の概念には、特定エピスルフィド化合物を単独重合させる場合の重合速度だけでなく、特定エピスルフィド化合物と他のモノマー(例えば、後述のチオール化合物。以下同じ。)とを共重合させる場合の重合速度も包含される。
また、本開示において、「特定エピスルフィド化合物の重合」との用語の概念には、特定エピスルフィド化合物の単独重合だけでなく、特定エピスルフィド化合物と他のモノマーとの共重合も包含される。
特定エピスルフィド化合物の重合速度制御性に優れるという効果は、特定ラジカル捕捉剤によるラジカル捕捉機能によって発現される効果である。
特に、特定ラジカル捕捉剤は、特定エピスルフィド化合物に対する溶解性に優れる。このため、本開示のエピスルフィド組成物には、水酸基を含まないラジカル捕捉剤のみを用いる場合と比較して、より多くの量のラジカル捕捉剤を含有させることができる。従って、本開示のエピスルフィド組成物では、水酸基を含まないラジカル捕捉剤のみを用いる場合と比較して、重合速度制御性に優れる。
更に、特定ラジカル捕捉剤は、水酸基を含まないラジカル捕捉剤(例えば、N-オキシル基を含むラジカル捕捉剤(例えば、後述の比較例におけるTEMPO))と比較して、特定エピスルフィド化合物の重合によって得られる樹脂の特性に対する影響が少ない。このため、本開示のエピスルフィド組成物によれば、水酸基を含まないラジカル捕捉剤のみを用いる場合と比較して、特定エピスルフィド化合物の重合によって得られる樹脂の特性の低下を抑制できる。
以下、本開示のエピスルフィド組成物に含有され得る各成分について説明する。
<特定エピスルフィド化合物>
本開示のエピスルフィド組成物は、特定エピスルフィド化合物を含有する。
特定エピスルフィド化合物は、エピスルフィド環を1つ以上含み、かつ、水酸基を含まない化合物である。
本開示のエピスルフィド組成物に含有される特定エピスルフィド化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
特定エピスルフィド化合物は、エピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含む化合物(以下、「化合物E1」ともいう)を含むことが好ましい。
本開示において、「ジスルフィド結合」との用語は、「-S-S-」で表される結合を意味する。
本開示において、「スルフィド結合」との用語は、「-S-」で表される結合(但し、エピスルフィド環中に含まれる「-S-」で表される結合及ジスルフィド結合中に含まれる「-S-」で表される結合を除く)を意味する。
補足すると、本開示では、エピスルフィド環及びジスルフィド結合を、それぞれ、一体の構造として取り扱い、エピスルフィド環中に含まれる「-S-」で表される結合及ジスルフィド結合中に含まれる「-S-」で表される結合のことを「スルフィド結合」と称することはしない。
特定エピスルフィド化合物(例えば化合物E1)の分子量は、好ましくは1000以下であり、より好ましくは800以下であり、更に好ましくは500以下であり、更に好ましくは300以下である。
エピスルフィド化合物の分子量の下限は、例えば100であり、好ましくは130であり、更に好ましくは150である。
特定エピスルフィド化合物(例えば化合物E1)中のエピスルフィド環の数は、好ましくは2つ以上であり、より好ましくは2つ~4つであり、更に好ましくは2つである。
特定エピスルフィド化合物は、下記式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
下記式(1)で表される化合物は、化合物E1の好ましい態様である。
特定エピスルフィド化合物の全量中に占める、式(1)で表される化合物の割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは60質量%~100質量%であり、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、mは、0~3の整数であり、nは、2~4の整数である。
nが2である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基、スルフィド結合、又はジスルフィド結合である。
nが3又は4である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基である。
複数存在するR~R及びmの各々は、同一であっても異なっていてもよい。
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基である。
水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基における置換基としては、ハロゲン原子、チオール基(即ち、メルカプト基)、アルコキシ基、アルキルチオ基等が挙げられる。
水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基の炭素数は、置換基を有する場合には置換基の炭素数も含めた総炭素数として、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、更に好ましくは1~3であり、更に好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1である。
~Rの各々で表される「水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基」として、好ましくは炭素数1~6のアルキル基(即ち、無置換のアルキル基)であり、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基又はエチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
式(1)中、R~Rの各々は、水素原子であることが特に好ましい。
式(1)中、mは、0~3の整数である。
式(1)中のmは、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1であり、更に好ましくは1である。
式(1)中、nは、2~4の整数である。
式(1)中のnは、好ましくは2である。
式(1)中、nが2である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価(即ち、2価)の連結基、スルフィド結合、又はジスルフィド結合である。
式(1)中、nが3又は4である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価(即ち、3価又は4価)の連結基である。
スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基における炭化水素基としては、鎖状脂肪族基であっても、環状脂肪族基であっても、芳香族基であっても、これらのうちの2種以上を組み合わせた基であってもよい。
また、上記n価の連結基は、炭化水素基を、1つのみ含んでもよいし、2つ以上含んでもよい。
また、上記n価の連結基は、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方を、1つのみ含んでもよいし、2つ以上含んでもよい。
また、上記n価の連結基は、1つ以上の含硫黄ヘテロ環構造を含んでいてもよい。
上記n価の連結基における炭素数(即ち、炭素原子数)としては、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましい。
上記n価の連結基における硫黄数(即ち、硫黄原子数)としては、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましい。
以下、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基の具体例を示す。
ただし、上記n価の連結基は、以下の具体例には限定されない。
まず、スルフィド結合を含み、ジスルフィド結合及び水酸基を含まないn価の連結基の具体例を以下に示す。以下の具体例において、*は、結合位置を表す。
スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基の具体例としては、上述した、「スルフィド結合を含み、ジスルフィド結合及び水酸基を含まないn価の連結基」の具体例の各々において、少なくとも1つのスルフィド結合(-S-)を、ジスルフィド結合(-S-S-)に置き換えた連結基も挙げられる。
式(1)で表される化合物の分子量は、好ましくは1000以下であり、より好ましくは800以下であり、更に好ましくは500以下であり、更に好ましくは300以下である。
式(1)で表される化合物の分子量の下限は、例えば60であり、好ましくは100であり、更に好ましくは130である。
式(1)で表される化合物の好ましい態様は、式(1)中、nが2であり、Lがスルフィド結合(-S-)又はジスルフィド結合(-S-S-)である態様である。
式(1)で表される化合物の中でも好ましい化合物としては、式(1)中、nが2であり、Lがジスルフィド結合(-S-S-)である化合物(以下、「化合物(1A)」ともいう)が挙げられる。
この態様の具体例として、例えば、
ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド(以下、「ETDS」ともいう)、
ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、
ビス(3,4-エピチオブチル)ジスルフィド、
ビス(4,5-エピチオペンチル)ジスルフィド、
等が挙げられ、
特に好ましくはビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド(ETDS)である。
式(1)で表される化合物の中でも好ましい化合物としては、式(1)中、nが2であり、Lがスルフィド結合(-S-)である化合物(以下、「化合物(1B)」ともいう)も挙げられる。
この態様の具体例として、例えば、
ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、
ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、
ビス(3,4-エピチオブチル)スルフィド、
ビス(4,5-エピチオペンチル)スルフィド、
等が挙げられ、
特に好ましくはビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィドである。
本開示の一態様に係る組成物におけるエピスルフィド化合物は、化合物(1A)及び化合物(1B)の少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
この場合、本開示の一態様に係る組成物に含まれるエピスルフィド化合物の全量中に占める、化合物(1A)及び化合物(1B)の合計の割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは60質量%~100質量%であり、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
特定エピスルフィド化合物(例えば式(1)で表される化合物)の具体例としては、上述した化合物(1A)及び化合物(1B)の具体例以外にも、以下の具体例が挙げられる。
但し、特定エピスルフィド化合物は、以下の具体例には限定されない。
エピスルフィド環を2つ以上含み、かつ、鎖状脂肪族構造を含むエピスルフィド化合物として、
ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、
1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、
等が挙げられる。
エピスルフィド環を2つ以上含み、かつ、環状脂肪族構造又は含硫黄ヘテロ環構造を含むエピスルフィド化合物として、
1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、
1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、
等が挙げられる。
エピスルフィド環を2つ以上含み、かつ、芳香環構造を含むエピスルフィド化合物として、
1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、
1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、
等が挙げられる。
特定エピスルフィド化合物としては、上述した具体例の各々において、少なくとも1つのスルフィド結合(-S-)を、ジスルフィド結合(-S-S-)に置き換えた化合物も挙げられる。
特定エピスルフィド化合物としては、エピスルフィド環を1つのみ含む化合物として、エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド、3-メルカプトプロピレンスルフィド、4-メルカプトブテンスルフィド、等も挙げられる。
特定エピスルフィド化合物については、特開2002-194083号の段落0014~0023及び0043~0065を参照してもよい。
特定エピスルフィド化合物の含有量は、エピスルフィド組成物の全量に対し、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
エピスルフィド組成物の全量に対する特定エピスルフィド化合物の含有量の上限は、他の成分の含有量に応じて適宜選択される。エピスルフィド組成物の全量に対する特定エピスルフィド化合物の含有量の上限としては、例えば、99質量%、98質量%、95質量%等が挙げられる。
<特定ラジカル捕捉剤>
本開示のエピスルフィド組成物は、特定ラジカル捕捉剤を含有する。
特定ラジカル捕捉剤は、水酸基を含むラジカル捕捉剤である。
前述したとおり、水酸基を有する特定ラジカル捕捉剤は、ラジカルを捕捉する機能だけでなく、特定エピスルフィド化合物に対する溶解性を確保する機能も有する。
本開示のエピスルフィド組成物に含有される特定ラジカル捕捉剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
特定ラジカル捕捉剤の分子量には特に制限はないが、好ましくは1000以下であり、より好ましくは500以下である。
特定ラジカル捕捉剤の分子量の下限は、例えば94である。
特定ラジカル捕捉剤は、水酸基を含み、ラジカル捕捉機能を有する化合物であれば特に制限はない。
特定エピスルフィド化合物に対する溶解性をより向上させる観点から、特定ラジカル捕捉剤は、環構造を含むことが好ましく、ベンゼン環及びエピスルフィド環の少なくとも一方を含むことがより好ましい。
本開示のエピスルフィド組成物の効果がより効果的に奏される観点から、特定ラジカル捕捉剤は、以下で説明する、フェノール系ラジカル捕捉剤及びエピスルフィド系ラジカル捕捉剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。
この場合、特定ラジカル捕捉剤中に占める、フェノール系ラジカル捕捉剤及びエピスルフィド系ラジカル捕捉剤の合計の割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは60質量%~100質量%であり、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
特定ラジカル捕捉剤は、フェノール系ラジカル捕捉剤を含むことが好ましい。フェノール系ラジカル補足剤は、特定エピスルフィド化合物に対する溶解性が高いため、高いラジカル捕捉能を有する。
フェノール系酸化防止剤としては、フェノール、ヒドロキノン、2-メトキシヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(以下、「BHT」ともいう)等が挙げられる。
特定ラジカル捕捉剤は、1つの水酸基とエピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含むラジカル捕捉剤(以下、「エピスルフィド系ラジカル捕捉剤」ともいう)を含むことも好ましい。エピスルフィド系ラジカル捕捉剤は、特定エピスルフィド化合物に対する溶解性が高いため、高いラジカル捕捉能を有する。
エピスルフィド系ラジカル捕捉剤としては、特定エピスルフィド化合物(例えば、式(1)で表される化合物)における1つの水素原子を水酸基に置き換えた化合物を用いることができる。
特定ラジカル捕捉剤に含まれるエピスルフィド環の数は、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。
特定ラジカル捕捉剤がスルフィド結合を含む場合、特定ラジカル捕捉剤に含まれるスルフィド結合の数は、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。
特定ラジカル捕捉剤がジスルフィド結合を含む場合、特定ラジカル捕捉剤に含まれるジスルフィド結合の数は、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。
エピスルフィド系ラジカル捕捉剤として、好ましくは下記式(C1)で表される化合物である。
式(C1)中、R1c~R5cは、それぞれ独立に、水素原子、又は、水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、mcは、0~3の整数であり、ncは、2~4の整数であり、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方、炭化水素基、及び1つの水酸基を含むn価の連結基である。
複数存在するR1c~R5c及びmcの各々は、同一であっても異なっていてもよい。
式(C1)中、R1c~R5c、mc、及びncの各々は、式(1)中の、R~R、m、及びnの各々と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(C1)中、Lは、1つの水酸基を含むことを除けば、式(1)中のLで表される「スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基」と同義である。
エピスルフィド系ラジカル捕捉剤として、更に好ましくは下記化合物(C1-1)又は下記化合物(C1-2)であり、更に好ましくは下記化合物(C1-1)である。
本開示のエピスルフィド組成物において、特定エピスルフィド化合物の含有量に対する特定ラジカル捕捉剤の含有量には特に制限はなく、目的とする重合速度制御性の程度(即ち、重合速度を制御する度合い)に応じて適宜調整される。
より優れた重合速度制御性を得る観点から、特定エピスルフィド化合物の含有量に対する特定ラジカル捕捉剤の含有量は、好ましくは10モルppm以上であり、より好ましくは100モルppm以上であり、更に好ましくは300モルppm以上である。
特定エピスルフィド化合物の含有量に対する特定ラジカル捕捉剤の含有量の上限にも特に制限はないが、得られる樹脂の物性をより良好に保つ観点から、好ましくは10000モルppm以下であり、より好ましくは5000モルppm以下であり、更に好ましくは1000モルppm以下である。
<チオール化合物>
本開示のエピスルフィド組成物は、更に、チオール化合物を含むことが好ましい。
本開示のエピスルフィド組成物が、更にチオール化合物を含む場合には、エピスルフィド組成物中の特定エピスルフィド化合物及びチオール化合物を重合させて樹脂(即ち、硬化物)を得ることができる。得られる樹脂は、耐熱性、機械的特性、光学特性等により優れる場合がある。
本開示のエピスルフィド組成物がチオール化合物を含む場合、含まれるチオール化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
チオール化合物としては、脂肪族チオール、芳香族チオール等が挙げられる。
脂肪族チオールとしては、
ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトチオグリコレート)、
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、
トリメチロ-ルプロパントリス(2-メルカプトチオグリコレート)、
トリメチロ-ルプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、
2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、
2,5-ビス[(2-メルカプトエチル)チオメチル]-1,4-ジチアン、
1,3-シクロヘキサンジチオール、
1,4-シクロヘキサンジチオール、
ビス(メルカプトメチル)スルフィド、
ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、
ビス(メルカプトエチル)スルフィド、
ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び、
テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン
からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
但し、脂肪族チオールは、これらの具体例には限定されない。
芳香族チオールとしては、
ベンジルチオール、
キシリレンジチオール、
1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、
1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン
2,5-トルエンジチオール、
3,4-トルエンジチオール、
チオフェノール、
1,2-ジメルカプトベンゼン、
1,3-ジメルカプトベンゼン、
1,4-ジメルカプトベンゼン、及び、
1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン
からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
但し、芳香族チオールは、これらの具体例には限定されない。
チオール化合物としては、チオール基(即ちメルカプト基)を2つ以上有する化合物(以下、「ポリチオール化合物」ともいう)が好ましい。
また、本開示のエピスルフィド組成物がチオール化合物を含む場合の上記チオール化合物は、脂肪族ポリチオール(即ち、ポリチオール化合物である脂肪族チオール)を含むことが好ましい。
この場合、チオール化合物の全量中に占める脂肪族ポリチオールの割合は、好ましくは50質量%であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
上記脂肪族チオールの割合の上限には特に制限はない。上記脂肪族チオールの割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよいし、99質量%以下であってもよいし、95質量%以下であってもよい。
チオール化合物は、
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンからなる群から選択される少なくとも1種(以下、「ポリチオールA」ともいう)を含むことがより好ましい。
この場合、チオール化合物の全量中に占めるポリチオールAの割合は、好ましくは50質量%であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
上記ポリチオールAの割合の上限には特に制限はない。上記ポリチオールAの割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよいし、99質量%以下であってもよいし、95質量%以下であってもよい。
チオール化合物は、
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンからなる群から選択される少なくとも1種(以下、「ポリチオールA1」ともいう)を含むことがより好ましい。
この場合、チオール化合物の全量中に占めるポリチオールA1の割合は、好ましくは50質量%であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
上記ポリチオールA1の割合の上限には特に制限はない。上記ポリチオールA1の割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよいし、99質量%以下であってもよいし、95質量%以下であってもよい。
本開示のエピスルフィド組成物がチオール化合物を含む場合、チオール化合物の含有量は、特定エピスルフィド化合物の全量に対し、好ましくは1質量%~50質量%であり、より好ましくは2質量%~30質量%であり、更に好ましくは3質量%~20質量%であり、更に好ましくは5質量%~15質量%である。
チオール化合物については、国際公開2018/079829号の段落0039を参照してもよい。
<重合触媒>
本開示のエピスルフィド組成物は、更に、重合触媒を含むことが好ましい。
この場合、エピスルフィド組成物に含まれる重合触媒は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
重合触媒としては、3級アミン化合物、ホスフィン化合物、ルイス酸、ラジカル重合触媒、カチオン重合触媒、等が挙げられる。
重合触媒としては、例えば、特開2002-194083号公報の段落0029~0033の記載を参照できる。
重合触媒として、好ましくは、3級アミン化合物又はホスフィン化合物である。
3級アミン化合物としては、
トリエチルアミン、
トリn-ブチルアミン、
トリn-ヘキシルアミン、
N,N-ジイソプロピルエチルアミン、
トリエチレンジアミン、
トリフェニルアミン、
N,N-ジメチルエタノールアミン、
N,N-ジエチルエタノールアミン、
N,N-ジブチルエタノールアミン、
トリエタノールアミン、
N-エチルジエタノールアミン、
N,N-ジメチルベンジルアミン、
N,N-ジエチルベンジルアミン、
トリベンジルアミン、
N-メチルジベンジルアミン、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、
N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、
N,N-ジエチルシクロヘキシルアミン、
N,N-ジシクロヘキシルエチルアミン、
N,N-ジメチルブチルアミン、
N,N-ジシクロヘキシルブチルアミン、
N-メチルモルホリン、
N-イソプロピルモルホリン、
ピリジン、
キノリン、
N,N-ジメチルアニリン、
N,N-ジエチルアニリン、
α-ピコリン、
β-ピコリン、
γ-ピコリン、
2,2’-ビピリジル、
1,4-ジメチルピペラジン、
テトラメチルエチレンジアミン、
ヘキサメチレンテトラミン、
1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、
2,4,6-トリス(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、等が挙げられる。
ホスフィン化合物としては、
トリメチルホスフィン、
トリエチルホスフィン、
トリn-プロピルホスフィン、
トリイソプロピルホスフィン、
トリn-ブチルホスフィン、
トリフェニルホスフィン、
トリベンジルホスフィン、
1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、
1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、
等が挙げられる。
本開示のエピスルフィド組成物が重合触媒を含む場合、重合触媒の含有量は、エピスルフィド組成物の全量に対し、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.01質量%~2質量%であり、更に好ましくは0.03質量%~1質量%である。
<その他の成分>
本開示のエピスルフィド組成物は、上述した成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、エポキシ化合物、アルコール化合物(例えばポリオール化合物)、メルカプト有機酸、樹脂(例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂等)、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、内部離型剤等が挙げられる。
その他の成分としては、公知のものを用いることができる。
その他の成分については、例えば、特開2002-194083号公報を適宜参照できる。
本開示のエピスルフィド組成物の用途には特に制限はない。
本開示のエピスルフィド組成物は、高屈折率を有し得るエピスルフィド化合物の硬化物を製造できるので、例えば、光学材料の製造に好適に用いられる。光学材料については後述する。
〔硬化物〕
本開示の硬化物は、本開示のエピスルフィド組成物の硬化物である。
本開示の硬化物は、例えば、本開示のエピスルフィド組成物中のモノマー(例えば、特定エピスルフィド化合物単独、エピスルフィド化合物と他のモノマーとの組み合わせ、等)を重合させることにより、本開示のエピスルフィド組成物を硬化させて得られる。この場合の本開示の硬化物は、本開示のエピスルフィド組成物中のモノマーが重合して得られた樹脂を含む。
本開示のエピスルフィド組成物中のモノマーを重合させる方法(即ち、本開示の硬化物を製造する方法)には特に制限はない。
本開示のエピスルフィド組成物中のモノマーを重合させる方法として、例えば、注型重合が挙げられる。
注型重合では、はじめに、ガスケット又はテープ等で保持された成型モールド間に、本開示のエピスルフィド組成物を注入する。この際、必要に応じ、脱泡処理、濾過処理等を行ってもよい。
次に、成型モールド間に注入された組成物中のモノマーを重合させることにより、成型モールド間で組成物を硬化させて硬化物を得る。次いで、硬化物を成型モールドから外し、硬化物を得る。
上記モノマーの重合は、本開示のエピスルフィド組成物を加熱することによって行ってもよい。この加熱は、例えば、オーブン中、水中等で加熱対象物を加熱する機構を備えた加熱装置を用いて行うことができる。
本開示のエピスルフィド組成物中のモノマーを重合させるための重合条件(例えば、重合温度、重合時間等)は、組成物の組成、組成物中のモノマーの種類及び使用量、組成物中の重合触媒の種類及び使用量、モールドの形状、等を考慮し、適宜設定される。
重合温度として、例えば、-50℃~150℃、10℃~150℃、等が挙げられる。
重合時間として、例えば、1時間~200時間、1時間~80時間、等が挙げられる。
本開示の硬化物は、モノマーの重合後、アニール等の処理が施されて得られたものであってもよい。
アニールの温度としては、50℃~150℃、90℃~140℃、100℃~130℃、等が挙げられる。
本開示の硬化物は、エピスルフィド組成物の硬化物であることから、高屈折率を有し得る。
本開示の硬化物の屈折率(nd)は、好ましくは1.71以上であり、より好ましくは1.72以上であり、更に好ましくは1.73以上である。
また、注型重合時の成形モールドを変えることにより、様々な形状の硬化物を得ることができる。
従って、本開示の硬化物は、例えば;眼鏡レンズ、カメラレンズ、発光ダイオード(LED)等の光学材料の素材;透明樹脂部材の素材;等として好適に用いることができる。
〔光学材料〕
本開示の光学材料は、本開示の硬化物を含む。
本開示の光学材料は、本開示の硬化物からなるものであってもよいし、本開示の硬化物とその他の要素とを含んでいてもよい。
その他の要素としては、その他の部材、本開示の硬化物に対して設けられたコーティング層、等が挙げられる。
本開示の光学材料は、エピスルフィド組成物の硬化物を含むことから、高屈折率を有し得る。
本開示の光学材料の屈折率(nd)は、好ましくは1.71以上であり、より好ましくは1.72以上であり、更に好ましくは1.73以上である。
本開示の光学材料としては、眼鏡レンズ、カメラレンズ、偏光レンズ、発光ダイオード(LED)等が挙げられる。
-眼鏡レンズ-
以下、本開示の光学材料の一例として、眼鏡レンズについて説明する。
眼鏡レンズは、所望とするレンズ形状に成型された本開示の硬化物を含む。
眼鏡レンズは、好ましくは、硬化物の片面又は両面に設けられたコーティング層を更に含む。
コーティング層として、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して用いることもできる。
硬化物の両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
コーティング層の成分は、目的に応じて適宜選択できる。
コーティング層の成分としては、例えば、樹脂(例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、等)、赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、フォトクロ化合物、染料、顔料、帯電防止剤等が挙げられる。
眼鏡レンズ及びコーティング層については、例えば、特開2002-194083号公報、国際公開第2017/047745号、等の公知文献の記載を適宜参照できる。
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
〔実施例1〕
<組成物Aの作製>
特定エピスルフィド化合物としての純度96.8質量%のビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド(ETDS)(100g;0.46mol)に、ラジカル捕捉剤としてのフェノール(14.3mg;0.000152mol)を加えて混合し、完全に溶解させた。得られた溶液を、孔径3μmのテフロンフィルターによってろ過することにより、エピスルフィド組成物としての組成物Aを得た。
<組成物Bの作製>
上記組成物A(60g)に、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(0.012g)〔重合触媒〕と、
N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン(0.060g)〔重合触媒〕と、
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを主成分(詳細には、混合物S1全体に対して80質量%)とする混合物S1(6.0g)〔チオール化合物の混合物〕と、
を加え、20℃で15分間攪拌することにより、エピスルフィド組成物としての組成物Bを得た。
<重合速度制御性の評価>
上記組成物B(10g)をガラス製の容器に入れ、容器中の組成物Bに記録計付き温度計を差し込んだ。この状態で、上記容器をオーブンに入れ、オーブン内温度30℃にて15時間保温することにより、組成物B中のモノマー(EDTS及び混合物S1)の重合を行った。
上記重合の間(即ち、15時間)、組成物Bの内温を記録した。
内温の記録結果に基づき、上記重合の開始から内温が最高到達温度に達するまでの時間(h)を求めた。ここで、組成物Bの内温は、重合が開始されると上昇し、やがて下がるので、重合時間30時間における内温のピークトップ温度(即ち、温度が下がり始める温度)を、最高到達温度とした。
重合の開始から内温が最高到達温度に達するまでの時間(h)に基づき、重合速度制御性を評価した。
結果を表1に示す。
この評価では、重合の開始から内温が最高到達温度に達するまでの時間(h)が長い程、重合速度制御性に優れることを意味する。
<平板レンズの作製>
以下のようにして、組成物Bの硬化物として、平板レンズを作製した。
テープで固定された一対のガラスモールド間に、組成物Bを注入した。次に、組成物Bが注入された一対のガラスモールドをオーブンに入れ、オーブン内温度30℃にて15時間保温し、次いで、オーブン内温度が10時間かけて80℃に到達するように除々に加温した。次いで、オーブン内温度80℃にて2時間保温した。以上の過程により、組成物Bにおけるモノマー(EDTS及び混合物S1)を重合させ、一対のガラスモールド間で樹脂成型体(即ち、組成物Bの硬化物)を形成させた。
上記2時間の保温後、オーブン内を冷却し、冷却後、オーブンから一対のガラスモールドを取り出し、次いで一対のガラスモールドから樹脂成型体を外し、樹脂成型体を得た。得られた樹脂成型体に対し、120℃で3時間のアニールを施すことにより、厚さ9mm、直径75mmの円形の平板レンズを得た。
<平板レンズのイエローインデックス値(Y.I.値)の測定>
樹脂の特性の指標の一つとして、ミノルタ社製色彩色差計「CR-400」を用い、上記で得られた平板レンズのイエローインデックス値(Y.I.値)を測定した。
結果を表1に示す。
Y.I.値が小さい程、平板レンズの黄色味が低減されている(即ち、樹脂の特性に優れている)。
<平板レンズの失透度の測定>
上記で得られた平板レンズに対し、光源(ハヤシレピック社製Luminar Ace LA-150A)からの光を透過させた。平板レンズを透過した光の画像を画像処理装置(宇部情報システム社製)に取り込み、取り込んだ画像に対して濃淡処理を行った。処理後の画像の濃淡の度合いを画素毎に数値化し、各画素の濃淡の度合いの数値の平均値を取得し、平板レンズの失透度を求めた。
得られた平板レンズの失透度について、比較例1における平板レンズの失透度を100とした場合の相対値を算出し、得られた相対値を「失透度(相対値)」とした。
結果を表1に示す。
失透度が小さい程、樹脂(ここでは平板レンズ)の透明性が損なわれる度合いが少ない(即ち、樹脂の特性に優れている)。
〔実施例2~5、比較例2〕
ラジカル捕捉剤の種類及び量(特定エピスルフィド化合物に対する量)を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
-表1中の略語の説明-
・TEMPO … 2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン1-オキシル(N-オキシル系ラジカル捕捉剤)。水酸基を含まない比較用ラジカル捕捉剤。
・BHT … 2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(フェノール系ラジカル捕捉剤)
・(C1-1) … エピスルフィド系ラジカル捕捉剤(即ち、1つの水酸基とエピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含むラジカル捕捉剤)の具体例である前述の化合物(C1-1)。
〔比較例3〕
ラジカル捕捉剤の種類を、表1に示すようにTEMPOに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
表1に示すように、比較例3では、特定エピスルフィド化合物に対して330モルppmのTEMPOを溶解させることができず、重合速度制御性、Y.I.値、及び失透度を評価することができなかった。
〔比較例1〕
ラジカル捕捉剤を用いなかった(詳細には、組成物Aに代えてEDTS単独を用いた)こと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
表1に示すように、特定エピスルフィド化合物(即ち、エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物)と、特定ラジカル捕捉剤(即ち、水酸基を含むラジカル捕捉剤)と、を含有するエピスルフィド組成物(詳細には、組成物A及び組成物B)を用いた実施例1~5では、比較例1(ラジカル捕捉剤無し)と比較して、重合速度の制御性に優れていた。
更に、実施例1~5及び比較例1に示すように、実施例1~5では、特定ラジカル捕捉剤を添加したことによる樹脂の特性の低下(具体的には、Y.I.値及び失透度の上昇)が抑制されていた。
実施例1~5に対し、比較例3では、水酸基を含まない比較用ラジカル捕捉剤であるTEMPOは、特定エピスルフィド化合物に対して330モルppmの量を溶解させることができなかった。
また、特定エピスルフィド化合物に対して33モルppmの量のTEMPOを用いた比較例2では、特定エピスルフィド化合物に対して溶解させることができたものの、実施例1~5と比較して、重合速度の制御性に劣っていた。更に、この比較例2では、実施例1~5と比較して、樹脂の特性が低下した(具体的には、Y.I.値及び失透度が上昇した)。

Claims (12)

  1. エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物と、水酸基を含むラジカル捕捉剤と、を含有し、
    前記水酸基を含むラジカル捕捉剤が、下記式(C1)で表される化合物であるエピスルフィド組成物。


    式(C1)中、R 1c ~R 5c は、それぞれ独立に、水素原子、又は、水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、mcは、0~3の整数であり、ncは、2~4の整数であり、L は、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方、炭化水素基、及び1つの水酸基を含むnc価の連結基である。
    複数存在するR 1c ~R 5c 及びmcの各々は、同一であっても異なっていてもよい。
  2. 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物が、エピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含む化合物を含む請求項1に記載のエピスルフィド組成物。
  3. エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物と、水酸基を含むラジカル捕捉剤と、を含有し、
    前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物が、エピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含む化合物を含み、
    前記水酸基を含むラジカル捕捉剤が、フェノール系ラジカル捕捉剤を含み、
    前記フェノール系ラジカル捕捉剤の分子量が94以上140以下であるエピスルフィド組成物。
  4. 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物が、下記式(1)で表される化合物を含む請求項1請求項3のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。


    〔式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、mは、0~3の整数であり、nは、2~4の整数である。
    nが2である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基、スルフィド結合、又はジスルフィド結合である。
    nが3又は4である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基である。
    複数存在するR~R及びmの各々は、同一であっても異なっていてもよい。〕
  5. 前記式(1)中、前記nが2であり、前記Lがジスルフィド結合である請求項に記載のエピスルフィド組成物。
  6. 前記水酸基を含むラジカル捕捉剤の含有量が、前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物の含有量に対し、10モルppm以上である請求項1~請求項のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
  7. 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物の含有量が、エピスルフィド組成物の全量に対し、90質量%以上である請求項1~請求項のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
  8. 更に、チオール化合物を含有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
  9. 更に、重合触媒を含有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
  10. 光学材料の製造に用いられる請求項1~請求項のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
  11. 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物の硬化物。
  12. 請求項11に記載の硬化物を含む光学材料。
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