JP7346797B2 - エピスルフィド組成物、硬化物、及び光学材料 - Google Patents
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Description
プラスチックレンズに代表される樹脂製の光学材料のうち、エピスルフィド化合物を重合させて得られる光学材料は、高い屈折率を有することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、エピスルフィド化合物に対する添加剤の溶解性が低い場合には、添加剤の使用量が制限されるため、重合速度の制御が不十分となり得るという問題がある。
本開示の目的は、エピスルフィド化合物の重合速度の制御性に優れ、かつ、エピスルフィド化合物の重合によって得られる樹脂の特性の低下を抑制できるエピスルフィド組成物、上記エピスルフィド組成物の硬化物、及び、上記硬化物を含む光学材料を提供することである。
<1> エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物と、水酸基を含むラジカル捕捉剤と、を含有するエピスルフィド組成物。
<2> 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物が、エピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含む化合物を含む<1>に記載のエピスルフィド組成物。
<3> 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物が、下記式(1)で表される化合物を含む<1>又は<2>に記載のエピスルフィド組成物。
nが2である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基、スルフィド結合、又はジスルフィド結合である。
nが3又は4である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基である。
複数存在するR1~R5及びmの各々は、同一であっても異なっていてもよい。
<5> 前記水酸基を含むラジカル捕捉剤が、更に、ベンゼン環及びエピスルフィド環の少なくとも一方を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<6> 前記水酸基を含むラジカル捕捉剤が、フェノール系ラジカル捕捉剤を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<7> 前記水酸基を含むラジカル捕捉剤が、1つの水酸基とエピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含むラジカル捕捉剤を含む<1>~<6>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<8> 前記水酸基を含むラジカル捕捉剤の含有量が、前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物の含有量に対し、10モルppm以上である<1>~<7>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<9> 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物の含有量が、エピスルフィド組成物の全量に対し、90質量%以上である<1>~<8>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<10> 更に、チオール化合物を含有する<1>~<9>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<11> 更に、重合触媒を含有する<1>~<10>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<12> 光学材料の製造に用いられる<1>~<11>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物。
<13> <1>~<12>のいずれか1つに記載のエピスルフィド組成物の硬化物。
<14> <13>に記載の硬化物を含む光学材料。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示のエピスルフィド組成物は、エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物(以下、「特定エピスルフィド化合物」ともいう)と、水酸基を含むラジカル捕捉剤(以下、「特定ラジカル捕捉剤」ともいう)と、を含有する。
また、本開示において、「特定エピスルフィド化合物の重合」との用語の概念には、特定エピスルフィド化合物の単独重合だけでなく、特定エピスルフィド化合物と他のモノマーとの共重合も包含される。
特に、特定ラジカル捕捉剤は、特定エピスルフィド化合物に対する溶解性に優れる。このため、本開示のエピスルフィド組成物には、水酸基を含まないラジカル捕捉剤のみを用いる場合と比較して、より多くの量のラジカル捕捉剤を含有させることができる。従って、本開示のエピスルフィド組成物では、水酸基を含まないラジカル捕捉剤のみを用いる場合と比較して、重合速度制御性に優れる。
更に、特定ラジカル捕捉剤は、水酸基を含まないラジカル捕捉剤(例えば、N-オキシル基を含むラジカル捕捉剤(例えば、後述の比較例におけるTEMPO))と比較して、特定エピスルフィド化合物の重合によって得られる樹脂の特性に対する影響が少ない。このため、本開示のエピスルフィド組成物によれば、水酸基を含まないラジカル捕捉剤のみを用いる場合と比較して、特定エピスルフィド化合物の重合によって得られる樹脂の特性の低下を抑制できる。
本開示のエピスルフィド組成物は、特定エピスルフィド化合物を含有する。
特定エピスルフィド化合物は、エピスルフィド環を1つ以上含み、かつ、水酸基を含まない化合物である。
本開示のエピスルフィド組成物に含有される特定エピスルフィド化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本開示において、「スルフィド結合」との用語は、「-S-」で表される結合(但し、エピスルフィド環中に含まれる「-S-」で表される結合及ジスルフィド結合中に含まれる「-S-」で表される結合を除く)を意味する。
補足すると、本開示では、エピスルフィド環及びジスルフィド結合を、それぞれ、一体の構造として取り扱い、エピスルフィド環中に含まれる「-S-」で表される結合及ジスルフィド結合中に含まれる「-S-」で表される結合のことを「スルフィド結合」と称することはしない。
エピスルフィド化合物の分子量の下限は、例えば100であり、好ましくは130であり、更に好ましくは150である。
下記式(1)で表される化合物は、化合物E1の好ましい態様である。
特定エピスルフィド化合物の全量中に占める、式(1)で表される化合物の割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは60質量%~100質量%であり、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
nが2である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基、スルフィド結合、又はジスルフィド結合である。
nが3又は4である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基である。
複数存在するR1~R5及びmの各々は、同一であっても異なっていてもよい。
水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基における置換基としては、ハロゲン原子、チオール基(即ち、メルカプト基)、アルコキシ基、アルキルチオ基等が挙げられる。
水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基の炭素数は、置換基を有する場合には置換基の炭素数も含めた総炭素数として、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、更に好ましくは1~3であり、更に好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1である。
R1~R5の各々で表される「水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基」として、好ましくは炭素数1~6のアルキル基(即ち、無置換のアルキル基)であり、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基又はエチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
式(1)中、R1~R5の各々は、水素原子であることが特に好ましい。
式(1)中のmは、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1であり、更に好ましくは1である。
式(1)中のnは、好ましくは2である。
また、上記n価の連結基は、炭化水素基を、1つのみ含んでもよいし、2つ以上含んでもよい。
また、上記n価の連結基は、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方を、1つのみ含んでもよいし、2つ以上含んでもよい。
また、上記n価の連結基は、1つ以上の含硫黄ヘテロ環構造を含んでいてもよい。
上記n価の連結基における硫黄数(即ち、硫黄原子数)としては、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましい。
ただし、上記n価の連結基は、以下の具体例には限定されない。
式(1)で表される化合物の分子量の下限は、例えば60であり、好ましくは100であり、更に好ましくは130である。
この態様の具体例として、例えば、
ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド(以下、「ETDS」ともいう)、
ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、
ビス(3,4-エピチオブチル)ジスルフィド、
ビス(4,5-エピチオペンチル)ジスルフィド、
等が挙げられ、
特に好ましくはビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド(ETDS)である。
この態様の具体例として、例えば、
ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、
ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、
ビス(3,4-エピチオブチル)スルフィド、
ビス(4,5-エピチオペンチル)スルフィド、
等が挙げられ、
特に好ましくはビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィドである。
この場合、本開示の一態様に係る組成物に含まれるエピスルフィド化合物の全量中に占める、化合物(1A)及び化合物(1B)の合計の割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは60質量%~100質量%であり、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
但し、特定エピスルフィド化合物は、以下の具体例には限定されない。
ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、
1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、
等が挙げられる。
1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、
1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、
等が挙げられる。
1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、
1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、
等が挙げられる。
エピスルフィド組成物の全量に対する特定エピスルフィド化合物の含有量の上限は、他の成分の含有量に応じて適宜選択される。エピスルフィド組成物の全量に対する特定エピスルフィド化合物の含有量の上限としては、例えば、99質量%、98質量%、95質量%等が挙げられる。
本開示のエピスルフィド組成物は、特定ラジカル捕捉剤を含有する。
特定ラジカル捕捉剤は、水酸基を含むラジカル捕捉剤である。
前述したとおり、水酸基を有する特定ラジカル捕捉剤は、ラジカルを捕捉する機能だけでなく、特定エピスルフィド化合物に対する溶解性を確保する機能も有する。
本開示のエピスルフィド組成物に含有される特定ラジカル捕捉剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
特定ラジカル捕捉剤の分子量の下限は、例えば94である。
特定エピスルフィド化合物に対する溶解性をより向上させる観点から、特定ラジカル捕捉剤は、環構造を含むことが好ましく、ベンゼン環及びエピスルフィド環の少なくとも一方を含むことがより好ましい。
この場合、特定ラジカル捕捉剤中に占める、フェノール系ラジカル捕捉剤及びエピスルフィド系ラジカル捕捉剤の合計の割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは60質量%~100質量%であり、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
フェノール系酸化防止剤としては、フェノール、ヒドロキノン、2-メトキシヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(以下、「BHT」ともいう)等が挙げられる。
エピスルフィド系ラジカル捕捉剤としては、特定エピスルフィド化合物(例えば、式(1)で表される化合物)における1つの水素原子を水酸基に置き換えた化合物を用いることができる。
特定ラジカル捕捉剤がスルフィド結合を含む場合、特定ラジカル捕捉剤に含まれるスルフィド結合の数は、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。
特定ラジカル捕捉剤がジスルフィド結合を含む場合、特定ラジカル捕捉剤に含まれるジスルフィド結合の数は、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。
複数存在するR1c~R5c及びmcの各々は、同一であっても異なっていてもよい。
式(C1)中、Lcは、1つの水酸基を含むことを除けば、式(1)中のLで表される「スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基」と同義である。
より優れた重合速度制御性を得る観点から、特定エピスルフィド化合物の含有量に対する特定ラジカル捕捉剤の含有量は、好ましくは10モルppm以上であり、より好ましくは100モルppm以上であり、更に好ましくは300モルppm以上である。
特定エピスルフィド化合物の含有量に対する特定ラジカル捕捉剤の含有量の上限にも特に制限はないが、得られる樹脂の物性をより良好に保つ観点から、好ましくは10000モルppm以下であり、より好ましくは5000モルppm以下であり、更に好ましくは1000モルppm以下である。
本開示のエピスルフィド組成物は、更に、チオール化合物を含むことが好ましい。
本開示のエピスルフィド組成物が、更にチオール化合物を含む場合には、エピスルフィド組成物中の特定エピスルフィド化合物及びチオール化合物を重合させて樹脂(即ち、硬化物)を得ることができる。得られる樹脂は、耐熱性、機械的特性、光学特性等により優れる場合がある。
本開示のエピスルフィド組成物がチオール化合物を含む場合、含まれるチオール化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトチオグリコレート)、
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、
トリメチロ-ルプロパントリス(2-メルカプトチオグリコレート)、
トリメチロ-ルプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、
2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、
2,5-ビス[(2-メルカプトエチル)チオメチル]-1,4-ジチアン、
1,3-シクロヘキサンジチオール、
1,4-シクロヘキサンジチオール、
ビス(メルカプトメチル)スルフィド、
ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、
ビス(メルカプトエチル)スルフィド、
ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び、
テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン
からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
但し、脂肪族チオールは、これらの具体例には限定されない。
ベンジルチオール、
キシリレンジチオール、
1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、
1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン
2,5-トルエンジチオール、
3,4-トルエンジチオール、
チオフェノール、
1,2-ジメルカプトベンゼン、
1,3-ジメルカプトベンゼン、
1,4-ジメルカプトベンゼン、及び、
1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン
からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
但し、芳香族チオールは、これらの具体例には限定されない。
この場合、チオール化合物の全量中に占める脂肪族ポリチオールの割合は、好ましくは50質量%であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
上記脂肪族チオールの割合の上限には特に制限はない。上記脂肪族チオールの割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよいし、99質量%以下であってもよいし、95質量%以下であってもよい。
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンからなる群から選択される少なくとも1種(以下、「ポリチオールA」ともいう)を含むことがより好ましい。
この場合、チオール化合物の全量中に占めるポリチオールAの割合は、好ましくは50質量%であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
上記ポリチオールAの割合の上限には特に制限はない。上記ポリチオールAの割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよいし、99質量%以下であってもよいし、95質量%以下であってもよい。
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンからなる群から選択される少なくとも1種(以下、「ポリチオールA1」ともいう)を含むことがより好ましい。
この場合、チオール化合物の全量中に占めるポリチオールA1の割合は、好ましくは50質量%であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
上記ポリチオールA1の割合の上限には特に制限はない。上記ポリチオールA1の割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよいし、99質量%以下であってもよいし、95質量%以下であってもよい。
本開示のエピスルフィド組成物は、更に、重合触媒を含むことが好ましい。
この場合、エピスルフィド組成物に含まれる重合触媒は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
重合触媒としては、例えば、特開2002-194083号公報の段落0029~0033の記載を参照できる。
3級アミン化合物としては、
トリエチルアミン、
トリn-ブチルアミン、
トリn-ヘキシルアミン、
N,N-ジイソプロピルエチルアミン、
トリエチレンジアミン、
トリフェニルアミン、
N,N-ジメチルエタノールアミン、
N,N-ジエチルエタノールアミン、
N,N-ジブチルエタノールアミン、
トリエタノールアミン、
N-エチルジエタノールアミン、
N,N-ジメチルベンジルアミン、
N,N-ジエチルベンジルアミン、
トリベンジルアミン、
N-メチルジベンジルアミン、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、
N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、
N,N-ジエチルシクロヘキシルアミン、
N,N-ジシクロヘキシルエチルアミン、
N,N-ジメチルブチルアミン、
N,N-ジシクロヘキシルブチルアミン、
N-メチルモルホリン、
N-イソプロピルモルホリン、
ピリジン、
キノリン、
N,N-ジメチルアニリン、
N,N-ジエチルアニリン、
α-ピコリン、
β-ピコリン、
γ-ピコリン、
2,2’-ビピリジル、
1,4-ジメチルピペラジン、
テトラメチルエチレンジアミン、
ヘキサメチレンテトラミン、
1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、
2,4,6-トリス(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、等が挙げられる。
トリメチルホスフィン、
トリエチルホスフィン、
トリn-プロピルホスフィン、
トリイソプロピルホスフィン、
トリn-ブチルホスフィン、
トリフェニルホスフィン、
トリベンジルホスフィン、
1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、
1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、
等が挙げられる。
本開示のエピスルフィド組成物は、上述した成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、エポキシ化合物、アルコール化合物(例えばポリオール化合物)、メルカプト有機酸、樹脂(例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂等)、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、内部離型剤等が挙げられる。
その他の成分としては、公知のものを用いることができる。
その他の成分については、例えば、特開2002-194083号公報を適宜参照できる。
本開示のエピスルフィド組成物は、高屈折率を有し得るエピスルフィド化合物の硬化物を製造できるので、例えば、光学材料の製造に好適に用いられる。光学材料については後述する。
本開示の硬化物は、本開示のエピスルフィド組成物の硬化物である。
本開示の硬化物は、例えば、本開示のエピスルフィド組成物中のモノマー(例えば、特定エピスルフィド化合物単独、エピスルフィド化合物と他のモノマーとの組み合わせ、等)を重合させることにより、本開示のエピスルフィド組成物を硬化させて得られる。この場合の本開示の硬化物は、本開示のエピスルフィド組成物中のモノマーが重合して得られた樹脂を含む。
本開示のエピスルフィド組成物中のモノマーを重合させる方法として、例えば、注型重合が挙げられる。
注型重合では、はじめに、ガスケット又はテープ等で保持された成型モールド間に、本開示のエピスルフィド組成物を注入する。この際、必要に応じ、脱泡処理、濾過処理等を行ってもよい。
次に、成型モールド間に注入された組成物中のモノマーを重合させることにより、成型モールド間で組成物を硬化させて硬化物を得る。次いで、硬化物を成型モールドから外し、硬化物を得る。
上記モノマーの重合は、本開示のエピスルフィド組成物を加熱することによって行ってもよい。この加熱は、例えば、オーブン中、水中等で加熱対象物を加熱する機構を備えた加熱装置を用いて行うことができる。
重合温度として、例えば、-50℃~150℃、10℃~150℃、等が挙げられる。
重合時間として、例えば、1時間~200時間、1時間~80時間、等が挙げられる。
アニールの温度としては、50℃~150℃、90℃~140℃、100℃~130℃、等が挙げられる。
本開示の硬化物の屈折率(nd)は、好ましくは1.71以上であり、より好ましくは1.72以上であり、更に好ましくは1.73以上である。
従って、本開示の硬化物は、例えば;眼鏡レンズ、カメラレンズ、発光ダイオード(LED)等の光学材料の素材;透明樹脂部材の素材;等として好適に用いることができる。
本開示の光学材料は、本開示の硬化物を含む。
本開示の光学材料は、本開示の硬化物からなるものであってもよいし、本開示の硬化物とその他の要素とを含んでいてもよい。
その他の要素としては、その他の部材、本開示の硬化物に対して設けられたコーティング層、等が挙げられる。
本開示の光学材料の屈折率(nd)は、好ましくは1.71以上であり、より好ましくは1.72以上であり、更に好ましくは1.73以上である。
以下、本開示の光学材料の一例として、眼鏡レンズについて説明する。
眼鏡レンズは、所望とするレンズ形状に成型された本開示の硬化物を含む。
眼鏡レンズは、好ましくは、硬化物の片面又は両面に設けられたコーティング層を更に含む。
硬化物の両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
コーティング層の成分としては、例えば、樹脂(例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、等)、赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、フォトクロ化合物、染料、顔料、帯電防止剤等が挙げられる。
<組成物Aの作製>
特定エピスルフィド化合物としての純度96.8質量%のビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド(ETDS)(100g;0.46mol)に、ラジカル捕捉剤としてのフェノール(14.3mg;0.000152mol)を加えて混合し、完全に溶解させた。得られた溶液を、孔径3μmのテフロンフィルターによってろ過することにより、エピスルフィド組成物としての組成物Aを得た。
上記組成物A(60g)に、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(0.012g)〔重合触媒〕と、
N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン(0.060g)〔重合触媒〕と、
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを主成分(詳細には、混合物S1全体に対して80質量%)とする混合物S1(6.0g)〔チオール化合物の混合物〕と、
を加え、20℃で15分間攪拌することにより、エピスルフィド組成物としての組成物Bを得た。
上記組成物B(10g)をガラス製の容器に入れ、容器中の組成物Bに記録計付き温度計を差し込んだ。この状態で、上記容器をオーブンに入れ、オーブン内温度30℃にて15時間保温することにより、組成物B中のモノマー(EDTS及び混合物S1)の重合を行った。
上記重合の間(即ち、15時間)、組成物Bの内温を記録した。
内温の記録結果に基づき、上記重合の開始から内温が最高到達温度に達するまでの時間(h)を求めた。ここで、組成物Bの内温は、重合が開始されると上昇し、やがて下がるので、重合時間30時間における内温のピークトップ温度(即ち、温度が下がり始める温度)を、最高到達温度とした。
重合の開始から内温が最高到達温度に達するまでの時間(h)に基づき、重合速度制御性を評価した。
結果を表1に示す。
この評価では、重合の開始から内温が最高到達温度に達するまでの時間(h)が長い程、重合速度制御性に優れることを意味する。
以下のようにして、組成物Bの硬化物として、平板レンズを作製した。
テープで固定された一対のガラスモールド間に、組成物Bを注入した。次に、組成物Bが注入された一対のガラスモールドをオーブンに入れ、オーブン内温度30℃にて15時間保温し、次いで、オーブン内温度が10時間かけて80℃に到達するように除々に加温した。次いで、オーブン内温度80℃にて2時間保温した。以上の過程により、組成物Bにおけるモノマー(EDTS及び混合物S1)を重合させ、一対のガラスモールド間で樹脂成型体(即ち、組成物Bの硬化物)を形成させた。
上記2時間の保温後、オーブン内を冷却し、冷却後、オーブンから一対のガラスモールドを取り出し、次いで一対のガラスモールドから樹脂成型体を外し、樹脂成型体を得た。得られた樹脂成型体に対し、120℃で3時間のアニールを施すことにより、厚さ9mm、直径75mmの円形の平板レンズを得た。
樹脂の特性の指標の一つとして、ミノルタ社製色彩色差計「CR-400」を用い、上記で得られた平板レンズのイエローインデックス値(Y.I.値)を測定した。
結果を表1に示す。
Y.I.値が小さい程、平板レンズの黄色味が低減されている(即ち、樹脂の特性に優れている)。
上記で得られた平板レンズに対し、光源(ハヤシレピック社製Luminar Ace LA-150A)からの光を透過させた。平板レンズを透過した光の画像を画像処理装置(宇部情報システム社製)に取り込み、取り込んだ画像に対して濃淡処理を行った。処理後の画像の濃淡の度合いを画素毎に数値化し、各画素の濃淡の度合いの数値の平均値を取得し、平板レンズの失透度を求めた。
得られた平板レンズの失透度について、比較例1における平板レンズの失透度を100とした場合の相対値を算出し、得られた相対値を「失透度(相対値)」とした。
結果を表1に示す。
失透度が小さい程、樹脂(ここでは平板レンズ)の透明性が損なわれる度合いが少ない(即ち、樹脂の特性に優れている)。
ラジカル捕捉剤の種類及び量(特定エピスルフィド化合物に対する量)を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
・TEMPO … 2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン1-オキシル(N-オキシル系ラジカル捕捉剤)。水酸基を含まない比較用ラジカル捕捉剤。
・BHT … 2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(フェノール系ラジカル捕捉剤)
・(C1-1) … エピスルフィド系ラジカル捕捉剤(即ち、1つの水酸基とエピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含むラジカル捕捉剤)の具体例である前述の化合物(C1-1)。
ラジカル捕捉剤の種類を、表1に示すようにTEMPOに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
表1に示すように、比較例3では、特定エピスルフィド化合物に対して330モルppmのTEMPOを溶解させることができず、重合速度制御性、Y.I.値、及び失透度を評価することができなかった。
ラジカル捕捉剤を用いなかった(詳細には、組成物Aに代えてEDTS単独を用いた)こと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
更に、実施例1~5及び比較例1に示すように、実施例1~5では、特定ラジカル捕捉剤を添加したことによる樹脂の特性の低下(具体的には、Y.I.値及び失透度の上昇)が抑制されていた。
実施例1~5に対し、比較例3では、水酸基を含まない比較用ラジカル捕捉剤であるTEMPOは、特定エピスルフィド化合物に対して330モルppmの量を溶解させることができなかった。
また、特定エピスルフィド化合物に対して33モルppmの量のTEMPOを用いた比較例2では、特定エピスルフィド化合物に対して溶解させることができたものの、実施例1~5と比較して、重合速度の制御性に劣っていた。更に、この比較例2では、実施例1~5と比較して、樹脂の特性が低下した(具体的には、Y.I.値及び失透度が上昇した)。
Claims (12)
- エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物と、水酸基を含むラジカル捕捉剤と、を含有し、
前記水酸基を含むラジカル捕捉剤が、下記式(C1)で表される化合物であるエピスルフィド組成物。
式(C1)中、R 1c ~R 5c は、それぞれ独立に、水素原子、又は、水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、mcは、0~3の整数であり、ncは、2~4の整数であり、L c は、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方、炭化水素基、及び1つの水酸基を含むnc価の連結基である。
複数存在するR 1c ~R 5c 及びmcの各々は、同一であっても異なっていてもよい。
- 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物が、エピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含む化合物を含む請求項1に記載のエピスルフィド組成物。
- エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物と、水酸基を含むラジカル捕捉剤と、を含有し、
前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物が、エピスルフィド環とスルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方とを含む化合物を含み、
前記水酸基を含むラジカル捕捉剤が、フェノール系ラジカル捕捉剤を含み、
前記フェノール系ラジカル捕捉剤の分子量が94以上140以下であるエピスルフィド組成物。 - 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物が、下記式(1)で表される化合物を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
〔式(1)中、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、水酸基以外の置換基によって置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、mは、0~3の整数であり、nは、2~4の整数である。
nが2である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基、スルフィド結合、又はジスルフィド結合である。
nが3又は4である場合、Lは、スルフィド結合及びジスルフィド結合の少なくとも一方と炭化水素基とを含み且つ水酸基を含まないn価の連結基である。
複数存在するR1~R5及びmの各々は、同一であっても異なっていてもよい。〕 - 前記式(1)中、前記nが2であり、前記Lがジスルフィド結合である請求項4に記載のエピスルフィド組成物。
- 前記水酸基を含むラジカル捕捉剤の含有量が、前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物の含有量に対し、10モルppm以上である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
- 前記エピスルフィド環を含み水酸基を含まないエピスルフィド化合物の含有量が、エピスルフィド組成物の全量に対し、90質量%以上である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
- 更に、チオール化合物を含有する請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
- 更に、重合触媒を含有する請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
- 光学材料の製造に用いられる請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物。
- 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のエピスルフィド組成物の硬化物。
- 請求項11に記載の硬化物を含む光学材料。
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