各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。また、本明細書における「上」「下」の用語は図面における上下を示す。これらの方向を示す用語は説明の便宜上のものであり、各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。
図1には、本発明の実施形態に係る車載用電力変換装置1の構成が示されている。車載用電力変換装置1は、力率改善スイッチング回路10、リレースイッチ14、トランス16、主機スイッチング回路24、および補機スイッチング回路28を備えている。主機スイッチング回路24は、トランス16の第1プライマリ巻線18に接続されている。補機スイッチング回路28は、トランス16のセカンダリ巻線22に接続されている。力率改善スイッチング回路10は、リレースイッチ14を介してトランス16の第2プライマリ巻線20に接続されている。リレースイッチ14がオンのときに力率改善スイッチング回路10は、第2プライマリ巻線20に接続され、リレースイッチ14がオフのときに力率改善スイッチング回路10は、第2プライマリ巻線20から切り離される。
第2プライマリ巻線20の中途点にはタップが設けられている。第2プライマリ巻線20の中途点は、第2プライマリ巻線20を形成する導線の中途の点をいう。中途点に設けられるタップは、第2プライマリ巻線20を形成する導線の中点に設けられるセンタータップであってもよい。図1では、第2プライマリ巻線20が形成するインダクタ(第1プライマリ巻線18およびセカンダリ巻線22を仮に取り除いた場合のインダクタ)がインダクタL1およびL2として明記されている。インダクタL1およびL2は結合していてもよい。主機スイッチング回路24には主機電池26が接続され、補機スイッチング回路28には補機電池30および補機回路32が接続されている。補機回路32には、オーディオ機器、室内灯、空調装置等のアクセサリ機器が含まれている。
主機電池26は、駆動用のモータジェネレータに電力を供給すると共に、モータジェネレータの回生電力によって充電される。補機電池30は補機回路32に電力を供給する。
車載用電力変換装置1は、外部接続モードおよび独立電力変換モードのいずれかのモードで動作する。外部接続モードは、車載用電力変換装置1とは別に設けられた交流電力源40によって、停車時に主機電池26に電力を供給すると共に、補機電池30および補機回路32の少なくとも一方(以下、補機負荷34という)に電力を供給する動作モードである。交流電力源40は、例えば、電力供給事業者が提供する電力システムや、自動車のサービスステーションに設置された外部充電装置であってよい。独立電力変換モードは、主機電池26から補機負荷34に電力を供給する動作モードである。
外部接続モードでは、図1に示されているように力率改善スイッチング回路10に交流電力源40が接続される。この際、交流電力源40の一端は、第2プライマリ巻線20のタップに接続され、他端は力率改善スイッチング回路10に接続される。また、リレースイッチ14がオンになって力率改善スイッチング回路10が第2プライマリ巻線20に接続される。力率改善スイッチング回路10は、交流電力源40から交流電力を取得し、その交流電力をトランス16を介して主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28に伝送する。主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28は、力率改善スイッチング回路10からトランス16を介して取得された電力を、それぞれ、主機電池26および補機電池30に供給し、これらの電池を充電する。また、補機スイッチング回路28は、力率改善スイッチング回路10からトランス16を介して取得された電力を補機回路32に供給してもよい。
力率改善スイッチング回路10には、例えば、特許文献2に示されている力率改善回路が用いられる。また、主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28には、例えば、特許文献2に示されている電圧コンバータ回路が用いられる。力率改善スイッチング回路10は、交流電力源40が出力する交流電力を直流電力に変換して自らの中間コンデンサ12に供給し、中間コンデンサ12を充電する。これと共に中間コンデンサ12の出力電圧を交流電圧に変換し、トランス16を介して主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28に電力を供給する。力率改善スイッチング回路10は、交流電力源40から力率改善スイッチング回路10に流れる電流の時間波形をスイッチングし、力率改善スイッチング回路10に流れる電流の時間波形を、交流電力源40から出力される交流電圧の時間波形に近似させまたは一致させる。これによって、交流電力源40から力率改善スイッチング回路10に出力される交流電力の力率が向上する。
このような力率改善動作のため、力率改善スイッチング回路10が備える基準スイッチング素子のデューティ比は、交流電力源40から出力される交流電圧の時間波形に応じて変動する。ここで、基準スイッチング素子とは、スイッチング回路に含まれる複数のスイッチング素子のうち、そのスイッチング回路のスイッチングタイミングを公称的に規定するスイッチング素子をいう。例えば、特許文献1および2における基準スイッチング素子は、ハーフブリッジを構成する2つのスイッチング素子のうち低電位側のスイッチング素子であり、回路図において下側に描かれたスイッチング素子である。また、デューティ比は、スイッチング素子がオンオフする1周期に対する、スイッチング素子がオンになる時間の比率として定義される。第2プライマリ巻線20の両端には、基準スイッチング素子のデューティ比に応じた時間波形を有する交流電圧が現れる。
力率改善スイッチング回路10から主機スイッチング回路24に電力を伝送し、その電力を調整するため、力率改善スイッチング回路10が備える基準スイッチング素子と、主機スイッチング回路24が備える基準スイッチング素子は同一のデューティ比でスイッチングを行う。同様に、力率改善スイッチング回路10から補機スイッチング回路28に電力を伝送し、その電力を調整するため、力率改善スイッチング回路10が備える基準スイッチング素子と、補機スイッチング回路28が備えるスイッチング素子は同一のデューティ比で動作する。
また、力率改善スイッチング回路10をスイッチングする位相と、主機スイッチング回路24をスイッチングする位相との差を調整することで、力率改善スイッチング回路10から主機スイッチング回路24に伝送される電力が調整される。同様に、力率改善スイッチング回路10をスイッチングする位相と、補機スイッチング回路28をスイッチングする位相との差を調整することで、力率改善スイッチング回路10から補機スイッチング回路28に伝送される電力が調整される。
独立電力変換モードでは、図2に示されているように力率改善スイッチング回路10から交流電力源40が取り外され、リレースイッチ14がオフになって力率改善スイッチング回路10が第2プライマリ巻線20から切り離される。また、力率改善スイッチング回路10のスイッチングは停止される。これによって力率改善スイッチング回路10から主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28の両者に供給する電力が遮断される。独立電力変換モードでは、主機スイッチング回路24は主機電池26から電力を取得し、補機スイッチング回路28に伝送する。補機スイッチング回路28は補機負荷34に電力を供給する。
車載用電力変換装置1は、主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28のスイッチングによって、主機電池26から補機負荷34に電力を供給する。主機スイッチング回路24から補機スイッチング回路28に電力を伝送し、その電力を調整するため、主機スイッチング回路24が備える基準スイッチング素子と、補機スイッチング回路28が備える基準スイッチング素子は同一のデューティ比でスイッチングを行う。独立電力変換モードにおけるデューティ比は、0.4以上0.6以下であり、好ましくは0.5である。
また、主機スイッチング回路24をスイッチングする位相と、補機スイッチング回路28をスイッチングする位相との差を調整することで、主機スイッチング回路24から補機スイッチング回路28に伝送される電力が調整される。
上記のように、力率改善スイッチング回路10が備える基準スイッチング素子のデューティ比は、交流電力源40から出力される電力の力率を調整するため、交流電力源40から出力される交流電圧の時間波形に応じて変動する。したがって、主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28のそれぞれが備える基準スイッチング素子のデューティ比もまた、交流電力源40から出力される交流電圧の時間波形に応じて変動する。
そして、力率改善スイッチング回路10、主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28のそれぞれにおける基準スイッチング素子以外のスイッチング素子もまた、交流電力源40から出力される交流電圧の時間波形に応じて変動する。
一般に、スイッチング素子の損失は、デューティ比が0.5のときに極小となる。また、トランスによって結合された複数のスイッチング回路では、デューティ比が0.5のときにトランスの巻線に流れる電流の大きさが小さくなる。しかし、外部接続モードでは、力率改善スイッチング回路10、主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28のそれぞれが備えるスイッチング素子のデューティ比が一定でないため、スイッチング素子およびトランス16における損失が大きくなってしまうことがある。そこで、本実施形態に係る車載用電力変換装置1では、以下に説明するモード切り換え動作を実行する。
モード切り換え動作では、次の(i)~(v)の条件の下で車載用電力変換装置1が動作する。
(i)外部接続モードで動作しているときには、補機スイッチング回路28から補機負荷34に出力される補機出力電力が所定範囲内に制限される。本実施形態では、補機出力電力がリミット値以下に制限される。
(ii)補機出力電力がリミット値以下に制限されたことによって補機回路32へ供給される電力が不足する分は、補機電池30が出力する。
(iii)補機回路32へ供給される電力の不足分を補機電池30が出力することで、補機電池30の出力電圧が下限値を超える値から、下限値以下の値となったときには、動作モードが外部接続モードから独立電力変換モードに切り換えられる。
(iv)独立電力変換モードでは、主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28のスイッチング素子のデューティ比は、0.4以上0.6以下であり、好ましくは0.5である。独立電力変換モードにおいてデューティ比は一定であってよい。
(v)独立電力変換モードでの動作によって、主機電池26から補機電池30に電力が供給される。これによって、補機電池30の出力電圧が基準値未満の値から、基準値以上の値となったときには、動作モードが独立電力変換モードから外部接続モードに切り換えられる。
このような動作によれば、外部接続モードで動作しているときには補機出力電力がリミット値以下に制限される。したがって、各スイッチング回路のスイッチング素子のデューティ比が0.5から外れた1または0に近い値であっても、各スイッチング素子およびトランス16における電力損失が抑制される。
そして、補機回路32に大きい電力が供給されるときには、補機電池30から補機回路32に電力が供給され、補機電池30の出力電圧が下限値以下まで低下すると共に、動作モードが外部接続モードから独立電力変換モードに切り換えられる。独立電力変換モードでは、主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28のスイッチング素子のデューティ比は0.5またはそれに近い値であるため、各スイッチング素子における電力損失が抑制される。したがって、補機回路電力の広い範囲に亘って、各スイッチング回路およびトランス16における電力損失が抑制される。
図3(a)~(f)には、モード切り換え動作のタイミングチャートの例が示されている。図3(a)には、交流電力源40から車載用電力変換装置1への入力電力が示されている。図3(b)には、主機スイッチング回路24が主機電池26に出力する主機出力電力が示されている。図3(c)には、補機回路32が消費する補機回路電力が示されている。図3(d)には、補機スイッチング回路28が補機負荷34に出力する補機出力電力が示されている。図3(e)には、補機電池30の出力電力が示されている。図3(f)には、補機電池30の出力電圧が示されている。
搭載先の電動自動車はマイルーム機能を実行する。マイルーム機能とは、電動自動車が停車しているときに、所定のリミット値を超える電力を補機回路32に供給することが許容される機能をいう。
時刻t0から時刻t1までの間では、車載用電力変換装置1は外部接続モードで動作しており、交流電力源40から主機電池26および補機回路32に電力が供給される。図3(b)に示されているように、主機スイッチング回路24は、主機電池26に主機定格値の電力を出力する。図3(c)および(d)に示されているように、補機スイッチング回路28は、リミット値以下の電力を補機回路32に出力する。図3(e)に示されているように、時刻t0から時刻t1までの間では補機電池30の出力電力は0である。
図3(c)に示されているように、時刻t1から時刻t3にかけて補機回路電力が増加し、時刻t7まで補機回路電力は補機定格値を維持する。時刻t7から時刻t9にかけて補機回路電力が減少し、時刻t7より後であり時刻t9より前の時刻t8には、補機回路電力はリミット値に至る。
時刻t1と時刻t3との間の時刻t2に補機回路電力がリミット値を超えると、図3(d)に示されているように補機出力電力がリミット値に制限される。補機出力電力がリミット値に制限されたことに伴って、図3(e)に示されているように、時刻t2以降は、補機電池30から補機回路32に不足分の電力が出力される。
これによって、図3(f)に示されているように、時刻t2以降は補機電池30の出力電圧が低下する。時刻t4に補機電池30の出力電圧が下限値以下となると、車載用電力変換装置1の動作モードは、外部接続モードから独立電力変換モードに切り換わる。これによって、図3(a)に示されているように、時刻t4には交流電力源40から車載用電力変換装置1への入力電力が0となる。
なお、図3(a)、(b)および(d)に示されているように、時刻t1から時刻t4の間では、主機電池26に供給される主機出力電力が、入力電力のうち補機負荷34に供給される分だけ減少している。
時刻t4から時刻t10までの間、車載用電力変換装置1は、独立電力変換モードで動作する。図3(a)に示されているように、この時間帯では交流電力源40から車載用電力変換装置1への入力電力が0となる。主機スイッチング回路24から補機スイッチング回路28に電力が供給され、図3(b)に示されているように主機出力電力は負の値となる。図3(f)に示されているように、時刻t5から時刻t10の間、主機電池26から補機電池30に供給された電力によって補機電池30の出力電圧が上昇する。補機電池30の出力電圧が基準値に達すると、車載用電力変換装置1の動作モードは、独立電力変換モードから外部接続モードに切り換わる。
なお、図3(d)に示されているように、補機スイッチング回路28が補機負荷34に出力する補機出力電力は、時刻t4にリミット値を超えて時刻t5に補機定格値に達し、補機出力電力は時刻t7まで補機定格値を維持する。時刻t7から時刻t9にかけて補機出力電力が減少し、時刻t7より後であり時刻t9より前の時刻t8には、補機出力電力はリミット値に至る。
図3(c)に示されているように、補機回路電力がリミット値を超えた時刻t2から、補機回路電力がリミット値以下となった時刻t8までの時間帯がマイルーム機能がオンである時間帯である。時刻t2より前の時間帯および時刻t8より後の時間帯は、マイルーム機能がオフの時間帯である。
図4には、車載用電力変換装置1の回路構成の例が示されている。力率改善スイッチング回路10は、フィルタコンデンサCf、ハーフブリッジU、ハーフブリッジV、ダイオードD1、ダイオードD2および中間コンデンサ12を備えている。ハーフブリッジUは、スイッチング素子S1の一端と、スイッチング素子S2の一端とを共通に接続したものである。スイッチング素子S1の両端には、スイッチング素子S2との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S2の両端には、スイッチング素子S1との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S1およびS2としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。この場合、スイッチング素子S1としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S2としてのIGBTのコレクタとが接続される。
同様に、ハーフブリッジVは、スイッチング素子S3の一端と、スイッチング素子S4の一端とを共通に接続したものである。スイッチング素子S3の両端には、スイッチング素子S4との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S4の両端には、スイッチング素子S3との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S3およびS4としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S3としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S4としてのIGBTのコレクタとが接続される。
スイッチング素子S1およびS2の接続点と、スイッチング素子S3およびS4の接続点との間には、リレースイッチ14を介して第2プライマリ巻線20が接続されている。第2プライマリ巻線20のセンタータップは電源入力端子42-2に接続されている。
ハーフブリッジUおよびVは並列接続され、フルブリッジを構成している。すなわち、スイッチング素子S1のスイッチング素子S2側とは反対側の端子(図の上側の端子)と、スイッチング素子S3のスイッチング素子S4側とは反対側の端子(図の上側の端子)とが接続されている。また、スイッチング素子S2のスイッチング素子S1側とは反対側の端子(図の下側の端子)と、スイッチング素子S4のスイッチング素子S3側とは反対側の端子(図の下側の端子)とが接続されている。
ダイオードD1のアノードはダイオードD2のカソードに接続されている。ダイオードD1のカソードは、ハーフブリッジUおよびVの上側の端子に接続され、ダイオードD2のアノードは、ハーフブリッジUおよびVの下側の端子に接続されている。ダイオードD1およびD2の接続点は、電源入力端子42-1に接続されている。
スイッチング素子S1、スイッチング素子S3、およびダイオードD1の接続点と、スイッチング素子S2、スイッチング素子S4、およびダイオードD2の接続点との間には、中間コンデンサ12が接続されている。
第2プライマリ巻線20は、自己インダクタとしての第1インダクタL1、自己インダクタとしての第2インダクタL2、および相互インダクタMを直列接続したもので表される。相互インダクタMの一端とスイッチング素子S1およびS2の接続点との間には第1インダクタL1が接続され、相互インダクタMの他端とスイッチング素子S3およびS4の接続点との間には第2インダクタL2が接続されている。第1インダクタL1と第2インダクタL2は磁気的に結合してもよい。また、電源入力端子42-2とセンタータップとの間にもインダクタ(リアクトル)が接続されてもよい。
電源入力端子42-1と電源入力端子42-2との間には、フィルタコンデンサCfが接続されている。また、電源入力端子42-1と電源入力端子42-2との間には交流電力源40が接続されている。交流電力源40が商用電源である場合には、電源入力端子42-1および42-2は商用電源用のコネクタに接続される。また、電源入力端子42-1および42-2にはケーブルを介して電源用プラグが接続され、その電源用プラグがACアウトレットに差し込まれてもよい。
外部接続モードにおける力率改善スイッチング回路10の動作について説明する。交流電力源40は、電源入力端子42-1および42-2に入力交流電圧Vacを出力する。フィルタコンデンサCfは、力率改善スイッチング回路10で発生し、交流電力源40側に流出する高周波電流を抑制する。
制御部38は、制御信号Cn1~Cn4をそれぞれスイッチング素子S1~S4に出力し、スイッチング素子S1~S4をオンオフ制御する。制御信号Cniがハイであるときは、スイッチング素子Siはオンとなり、制御信号Cniがローであるときは、スイッチング素子Siはオフとなる。ただし、iは1~4のうちいずれかの整数である。制御信号Cn2は制御信号Cn1に対してハイおよびローを反転したものであり、制御信号Cn4は、制御信号Cn3に対してハイおよびローを反転したものである。また、制御信号Cn3およびCn4は、それぞれ、制御信号Cn1およびCn2に対して位相が180°遅れている。
これによって、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S2は、交互にオンオフする。すなわち、スイッチング素子S1がオフからオンになったときは、スイッチング素子S2はオンからオフになり、スイッチング素子S1がオンからオフになったときは、スイッチング素子S2は、オフからオンになる。同様に、スイッチング素子S3およびスイッチング素子S4は交互にオンオフする。スイッチング素子S1およびS2のオンオフの位相に対し、スイッチング素子S3およびS4のオンオフの位相は180°遅れる。
制御部38は、中間コンデンサ12の端子間電圧とその目標値との差異、交流電力源40と電源入力端子42-2との間の経路を流れる入力電流iL、および交流電力源40が出力する入力交流電圧Vacに応じて、制御信号Cn1~Cn4のデューティ比(時比率)を変化させる。これによって、電源入力端子42-1および42-2に流れる電流の時間波形を入力交流電圧Vacの時間波形に近似させ、または一致させると共に、電源入力端子42-1および42-2に流れる電流の位相を入力交流電圧Vacの位相に近似させ、または一致させる。
本実施形態においては、力率改善スイッチング回路10に含まれるスイッチング素子S1~S4のうちのスイッチング素子S2が基準スイッチング素子である。
次に、主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28の構成について説明する。主機スイッチング回路24は、ハーフブリッジW、ハーフブリッジX、およびコンデンサC1を備えている。ハーフブリッジWは、スイッチング素子S5の一端と、スイッチング素子S6一端とを接続したものである。スイッチング素子S5の両端には、スイッチング素子S6との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S6の両端には、スイッチング素子S5との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S5およびS6としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S5としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S6としてのIGBTのコレクタとが接続される。
同様に、ハーフブリッジXは、スイッチング素子S7の一端と、スイッチング素子S8の一端とを接続したものである。スイッチング素子S7の両端には、スイッチング素子S8との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S8の両端には、スイッチング素子S7との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S7およびS8としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S7としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S8としてのIGBTのコレクタとが接続される。
スイッチング素子S5およびS6の接続点と、スイッチング素子S7およびS8の接続点との間には第1プライマリ巻線18が接続されている。
ハーフブリッジWおよびXは並列接続され、フルブリッジを構成している。すなわち、スイッチング素子S5の上側の端子とスイッチング素子S7の上側の端子とが接続され、スイッチング素子S6の下側の端子とスイッチング素子S8の下側の端子とが接続されている。ハーフブリッジWおよびXの上側の端子と、ハーフブリッジWおよびXの下側の端子との間には、コンデンサC1が接続されている。また、ハーフブリッジWおよびXの上側の端子には正極端子42Pが接続され、ハーフブリッジWおよびXの下側の端子には負極端子42Nが接続されている。さらに、正極端子42Pと負極端子42Nとの間には主機電池26が接続されている。
補機スイッチング回路28は、主機スイッチング回路24と同様の構成を有している。補機スイッチング回路28は、ハーフブリッジα、ハーフブリッジβ、およびコンデンサC2を備えている。補機スイッチング回路28におけるハーフブリッジα、ハーフブリッジβ、およびコンデンサC2は、それぞれ、主機スイッチング回路24における、ハーフブリッジW、ハーフブリッジX、およびコンデンサC1に対応する。ハーフブリッジαが備えるスイッチング素子S9およびS10は、それぞれ、ハーフブリッジWが備えるスイッチング素子S5およびS6に対応する。ハーフブリッジβが備えるスイッチング素子S11およびS12は、それぞれ、ハーフブリッジXが備えるスイッチング素子S7およびS8に対応する。
スイッチング素子S9およびS10の接続点と、スイッチング素子S11およびS12の接続点との間にはセカンダリ巻線22が接続されている。また、ハーフブリッジαおよびβの上側の端子には正極端子44Pが接続され、ハーフブリッジαおよびβの下側の端子には負極端子44Nが接続されている。さらに、正極端子44Pと負極端子44Nとの間には補機電池30および補機回路32が並列に接続されている。
本実施形態においては、補機スイッチング回路28に含まれるスイッチング素子S5~S8のうちのスイッチング素子S6が基準スイッチング素子であり、補機スイッチング回路28に含まれるスイッチング素子S9~S12のうちのスイッチング素子S10が基準スイッチング素子である。
外部接続モードにおける主機スイッチング回路24の動作について説明する。力率改善スイッチング回路10から第2プライマリ巻線20に印加された電圧に応じて第1プライマリ巻線18に電圧が発生し、第1プライマリ巻線18に発生した電圧がスイッチング素子S5およびS6の接続点と、スイッチング素子S7およびS8の接続点との間に印加される。
制御部38は、制御信号Cn5~Cn8をそれぞれスイッチング素子S5~S8に出力し、スイッチング素子S5~S8をオンオフ制御する。制御信号Cniがハイであるときは、スイッチング素子Siはオンとなり、制御信号Cniがローであるときは、スイッチング素子Siはオフとなる。ただし、iは5~8のうちいずれかの整数である。制御信号Cn6は制御信号Cn5に対してハイおよびローを反転させたものであり、制御信号Cn8は、制御信号Cn7に対してハイおよびローを反転させたものである。また、制御信号Cn7およびCn8は、それぞれ、制御信号Cn5およびCn6に対して位相が180°遅れている。
これによってスイッチング素子S5およびS6は交互にオンオフし、スイッチング素子S7およびS8は交互にオンオフする。スイッチング素子S5およびS6のオンオフの位相に対し、スイッチング素子S7およびS8のオンオフの位相は180°遅れる。制御部38は、主機スイッチング回路24のデューティ比を、力率改善スイッチング回路10のデューティ比に一致させる。
制御部38は、コンデンサC1の端子間電圧とその目標値との差異に応じて、主機スイッチング回路24をスイッチングする位相と、力率改善スイッチング回路10をスイッチングする位相との差異を調整する。
外部接続モードにおける補機スイッチング回路28の動作は、主機スイッチング回路24の動作と同様である。力率改善スイッチング回路10から第2プライマリ巻線20に印加された電圧に応じてセカンダリ巻線22に電圧が発生し、セカンダリ巻線22に発生した電圧がスイッチング素子S9およびS10の接続点と、スイッチング素子S11およびS12の接続点との間に印加される。
制御部38は、制御信号Cn9~Cn12をそれぞれスイッチング素子S9~S12に出力し、スイッチング素子S9~S12をオンオフ制御する。制御部38は、コンデンサC2の端子間電圧とその目標値との差異に応じて、補機スイッチング回路28をスイッチングする位相と、力率改善スイッチング回路10をスイッチングする位相との差異を調整する。
独立電力変換モードでは、リレースイッチ14がオフになって力率改善スイッチング回路10が第2プライマリ巻線20から切り離される。力率改善スイッチング回路10のスイッチングは停止される。車載用電力変換装置1は、主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28のスイッチングによって、主機電池26から補機負荷34に電力を供給する。例えば制御部38は、コンデンサC2の端子間電圧と、その目標値との差異に応じて、主機スイッチング回路24をスイッチングする位相と、補機スイッチング回路28をスイッチングする位相との差を調整する。
車載用電力変換装置1では、セカンダリ巻線22に対する第1プライマリ巻線18の巻線比と、補機電池30に対する主機電池26の出力電圧比を同一としてよい。このような設計の下で、独立電力変換モードにおいて、主機スイッチング回路24および補機スイッチング回路28が備える各スイッチング素子のデューティ比を0.5とすることで、スイッチング損失等に起因する電力損失が抑制される。上記のように、電動自動車では主機電池26の出力電圧の方が、補機電池30の出力電圧よりも大きい。本実施形態に係る車載用電力変換装置1によれば、必ずしも第1プライマリ巻線18の巻き数を増加させなくとも、セカンダリ巻線22に対する第1プライマリ巻線18の端子間電圧比を大きくすることができる。これによって、第1プライマリ巻線18における損失が抑制されると共に、主機スイッチング回路24から補機スイッチング回路28に電力が伝送される際の損失が抑制される。