<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1の概略構成を示す模式図である。図2は、図1のA方向からの矢視図である。図1、2に示すz軸方向は、化学蓄熱反応器1の軸心C1に沿う方向を示す。x軸とy軸とは、z軸に垂直な平面上において、互いに直交する方向を示す。化学蓄熱反応器1は、化学蓄熱材11から反応媒体の脱離によって外部の高熱を蓄熱したり、化学蓄熱材11と反応媒体との結合によって生成した熱を外部に放出したりする。化学蓄熱反応器1は、化学蓄熱材11と、反応容器20と、ろう材31、32と、を備える。
化学蓄熱材11は、例えば、アルカリ土類金属の酸化物の一つである酸化カルシウムの成形体である。化学蓄熱材11は、酸化カルシウムの粒状物を、例えば、粘土鉱物などのバインダと混練し焼成することで所定の形状となるように成形されている。本実施形態では、化学蓄熱材11は、円柱形状を有する。化学蓄熱材11は、式(1)に示す脱水反応によって、反応媒体である水が脱離することで蓄熱し、式(2)に示す水和反応によって水が結合することで発熱するものであり、蓄熱と発熱とを可逆的に繰り返すことが可能である。なお、式(1)のQ1は、脱水反応における蓄熱量を示し、式(2)のQ2は、水和反応における発熱量を示す。
Ca(OH)2 +Q1 →CaO + H2O ・・・(1)
CaO + H2O →Ca(OH)2 +Q2 ・・・(2)
反応容器20は、略円柱形状の部材であり、収容部材21と、蓋部材23と、筒状部材25と、を有する。反応容器20は、内側に、化学蓄熱材11を封入することが可能である。収容部材21と、蓋部材23と、筒状部材25とは、いずれも、ステンレスから形成されている。収容部材21と、蓋部材23と、筒状部材25のそれぞれは、特許請求の範囲の「部材」に相当する。
収容部材21は、凹形状を有しており、内側に、化学蓄熱材11を収容可能な円柱形状の空間20aを有する。収容部材21のz軸方向のプラス側には、空間20aに連通する開口22を有する端部21aが形成されている。
蓋部材23は、円形形状を有する板状部材である。蓋部材23は、収容部材21の端部21aの内側に配置されている。本実施形態では、蓋部材23の外径D23は、収容部材21の開口22の内径D22よりやや小さい(図2参照)。このため、蓋部材23が収容部材21の端部21aの内側に配置されると、収容部材21の端部21aと蓋部材23との間には、隙間G22が形成される。蓋部材23は、略中央に、蓋部材23をz軸方向に貫通する貫通孔24が形成されている。
筒状部材25は、略中央に、筒状部材25をz軸方向に貫通する貫通孔26が形成されている。筒状部材25は、z軸方向のマイナス側の端部25aが、蓋部材23の貫通孔24に挿入されている。本実施形態では、筒状部材25の端部25aの外径D25は、蓋部材23の貫通孔24の内径D24よりやや小さい(図2参照)。これにより、筒状部材25の端部25aを蓋部材23の貫通孔24に挿入すると、筒状部材25の端部25aと蓋部材23との間には、隙間G24が形成される。
ろう材31は、収容部材21の端部21aと蓋部材23との間に配置されており、収容部材21と蓋部材23とを接合する。ろう材31は、収容部材21の端部21aと蓋部材23との間において、反応容器20の全周にわたって形成されている。本実施形態では、ろう材31は、リンを含んでいる。
図3は、ろう材31の形状を説明する第1の図であって、図1のB部拡大図である。ろう材31は、収容部材21の端部21aと蓋部材23の外周部23aとの間に配置されるろう付部31aと、端部21aのz軸方向のプラス側の端面21b上に形成される残存部31bと、を有する。ろう付部31aは、収容部材21と蓋部材23との間で長尺状に形成されており、収容部材21と蓋部材23とをろう付する。残存部31bは、ろう付部31aのz軸方向のプラス側に接続しており、端面21bに沿って、長尺状に形成されて、蓋部材23から離れる方向に延伸している。このように、ろう付部31aの延伸方向(z軸方向)と、残存部31bの延伸方向(z軸の略垂直な方向)とは異なっており、図3に示す断面でのろう材31は、略L字状を有している。本実施形態では、端面21b上での残存部31bの長さL31は、20mm以下となっている。
ろう材32は、蓋部材23と筒状部材25との間に配置されており、蓋部材23と筒状部材25とを接合する。ろう材32は、蓋部材23と筒状部材25との間において、反応容器20の全周にわたって形成されている。本実施形態では、ろう材32は、リンを含んでいる。
図4は、ろう材32の形状を説明する第2の図であって、図1のC部拡大図である。ろう材32は、蓋部材23の内周部23bと筒状部材25の端部25aとの間に配置されるろう付部32aと、内周部23bのz軸方向のプラス側の端面23c上に形成される残存部32bと、を有する。ろう付部32aは、蓋部材23と筒状部材25との間で長尺状に形成されており、蓋部材23と筒状部材25とをろう付する。残存部32bは、ろう付部32aのz軸方向のプラス側に接続しており、端面23cに沿って、長尺状に形成されて、筒状部材25から離れる方向に延伸している。このように、ろう付部32aの延伸方向(z軸方向)と、残存部32bの延伸方向(z軸の略垂直な方向)とは異なっており、図4に示す断面でのろう材32は、略L字状を有している。本実施形態では、端面23c上での残存部32bの長さL32は、20mm以下となっている。
次に、化学蓄熱反応器1の製造方法を説明する。化学蓄熱反応器1が製造されるとき、最初に、収容部材21の空間20aに、熱分解されることで化学蓄熱材11となる材料の成形体(以下、「熱処理成形体」という)が挿入される。ここで、熱分解されることで化学蓄熱材11となる材料とは、例えば、炭酸カルシウムなどの反応媒体との反応性が比較的低いカルシウム化合物である。熱処理成形体を空間20aに挿入したのち、収容部材21の開口22に、蓋部材23を組み付け、収容部材21に組付けられた蓋部材23の貫通孔24に、筒状部材25を組み付ける。このようにして、収容部材21と、蓋部材23と、筒状部材25とが組付けられた時点では、収容部材21と蓋部材23、および、蓋部材23と筒状部材25とはまだ接合されていない。このため、収容部材21と蓋部材23との間には隙間G22が形成されており、蓋部材23と筒状部材25との間には隙間G24が形成されている。熱分解されることで化学蓄熱材11となる材料は、特許請求の範囲の「熱処理材」に相当する。
図5は、化学蓄熱反応器1の製造方法を説明する模式図である。図6は、ろう材を塗布する位置を説明する第1の図である。収容部材21に組付けられた蓋部材23に筒状部材25が組付けられた後、ろう材31となるろう材(以下、「溶融前ろう材」という)31cが収容部材21の全周にわたって塗布される(図5参照)。溶融前ろう材31cは、図6に示すように、収容部材21のz軸方向のプラス側の端面21bにおいて、蓋部材23寄りに塗布される。具体的には、溶融前ろう材31cは、端面21bの内側の端21cから20mm以内に塗布されることが望ましい。溶融前ろう材31cが塗布される位置は、ろう材31の残存部31bの位置と重なる。溶融前ろう材31cは、このように、収容部材21の端部21aにおいて、熱処理成形体が収容されている側(収容部材21の空間20a側)とは反対側に塗布される。
図7は、ろう材を塗布する位置を説明する第2の図である。収容部材21に組付けられた蓋部材23に筒状部材25が組付けられた後、ろう材32となる溶融前ろう材32cを蓋部材23の内周側の全周にわたって塗布される(図5参照)。溶融前ろう材32cは、図7に示すように、蓋部材23のz軸方向のプラス側の端面23cにおいて、筒状部材25寄りに塗布される。具体的には、溶融前ろう材32cは、端面23cの内側の端23dから20mm以内に塗布されることが望ましい。溶融前ろう材32cが塗布される位置は、ろう材32の残存部32bの位置と重なる。溶融前ろう材32cは、このように、蓋部材23の内周部23bにおいて、熱処理成形体が収容されている側(収容部材21の空間20a側)とは反対側に塗布される。
図8は、化学蓄熱反応器1を製造するときの温度条件を説明する模式図である。溶融前ろう材31c、32cのそれぞれを収容部材21と蓋部材23とのそれぞれに塗布したのち、熱処理成形体が収容されている、収容部材21と蓋部材23と筒状部材25とを組み合わせた容器を加熱する(加熱工程)。本実施形態では、加熱工程において、容器は、3段階に分けて連続的に温度が上昇していくように加熱される。具体的には、図8に示すように、最初に、容器の温度が温度T1となるように加熱される。温度T1は、溶融前ろう材31c、32cに含まれるバインダを揮発させることができる温度であり、例えば、600℃である。
一定の時間、温度T1で温度を安定させたのち、次に、容器の温度が、温度T1より高い温度T2となるように加熱される。温度T2は、熱処理成形体に含まれるカルシウム化合物が熱分解し、酸化カルシウムとなるための温度である。例えば、熱処理成形体に含まれるカルシウム化合物が炭酸カルシウムの場合、960℃となる。これにより、熱処理成形体は、熱分解されることで、化学蓄熱材11が生成される。
一定の時間、温度T2で温度を安定させたのち、次に、容器の温度が、温度T2より高い温度T3となるように加熱される。温度T3は、溶融前ろう材31c、32cが溶融する融点であって、化学蓄熱材11の耐熱温度(図7に示す温度T4)よりも低い温度である。例えば、温度T3は、980℃であり、耐熱温度T4は、1080℃である。これにより、収容部材21と蓋部材23とのそれぞれに塗布されている溶融前ろう材31c、32cが溶融する。溶融した溶融前ろう材31cの一部は、収容部材21の端面21bに沿って、収容部材21の端部21aと蓋部材23の外周部23aとの間に流れ込み、凝固する。これにより、収容部材21と蓋部材23とは、ろう材31によって接合される。端部21aと外周部23aとの間に流れ込んだ溶融前ろう材31c(ろう材31a)を除く溶融前ろう材31cの一部は、収容部材21の端面21bに残り、ろう材31の残存部31bとなる。すなわち、残存部31bは、溶融前ろう材31cの一部が残ったものである。
また、溶融した溶融前ろう材32cの一部は、蓋部材23の端面23cに沿って、蓋部材23の内周部23bと筒状部材25の端部25aとの間に流れ込み、凝固する。これにより、蓋部材23と筒状部材25とは、ろう材32によって接合される。内周部23bと端部25aとの間に流れ込んだ溶融前ろう材32c(ろう材32a)を除く溶融前ろう材32cの一部は、蓋部材23の端面23cに残り、ろう材32の残存部32bとなる。すなわち、残存部32bは、溶融前ろう材32cの一部が残ったものである。本実施形態の化学蓄熱反応器1の製造方法では、図8に示すように加熱することで、完成する。
次に、化学蓄熱反応器1の作用について説明する。化学蓄熱反応器1が外部の高温熱源の熱を蓄熱するとき、化学蓄熱材11には、反応容器20を介して熱が伝わる。化学蓄熱材11に熱が伝わると、式(1)で示した脱水反応によって蓄熱されるとともに、水蒸気が発生する。化学蓄熱材11で発生した水蒸気は、反応容器20の空間20aから筒状部材25の貫通孔26を通って、化学蓄熱反応器1の外部に排出される。
化学蓄熱反応器1を放熱させるとき、図示しない蒸気発生装置が供給する水蒸気を、筒状部材25の貫通孔26を介して、反応容器20の空間20aに流入させる。反応容器20の空間20aに流入した水蒸気は、化学蓄熱材11と接触する。水蒸気と接触した化学蓄熱材11は、式(2)による水和反応によって発熱する。化学蓄熱材11で発生した熱は、反応容器20を介して、図示しない外部の受熱体に供給される。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器1によれば、化学蓄熱材11を収容する反応容器20は、ろう材31、32によって接合される収容部材21と蓋部材23と筒状部材25から形成されている。ろう材31、32は、熱処理成形体の熱分解温度より高い融点を有しており、ろう材31、32と熱処理成形体とを比べると、一緒に加熱されることによって、先に熱処理成形体の熱分解が進行し、その後、ろう材31、32が溶融する。このことから、化学蓄熱反応器1を製造するとき、ろう材31、32によって接合される前の収容部材21と蓋部材23と筒状部材25とを組み合わせた容器の内部に、熱処理成形体を挿入し、溶融前ろう材31c、32cを収容部材21や蓋部材23などの外側に塗布する。次に、容器全体を加熱することで、先に、熱分解によって熱処理成形体を熱分解し、化学蓄熱材11とする。このときに発生するガスは、収容部材21と蓋部材23との間や、蓋部材23と筒状部材25との間などを通って容器の外部に排出されるため、溶融前ろう材31c、32cに接触することが抑制される。これにより、熱処理成形体が熱分解するときに発生するガスによって、溶融前ろう材31c、32cが劣化することを抑制することができる。さらに、容器全体を加熱することで溶融する溶融前ろう材31c、32cを用いて部材どうしをろう付することで、化学蓄熱材11が密閉された反応容器20が形成される。したがって、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が密閉された化学蓄熱反応器1を製造することができるため、製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、ろう材31、32は、L字状に形成されている。化学蓄熱反応器1を製造するとき、隙間G22、G24は、熱処理成形体が熱分解されるときに発生するガスの通り道となる。これにより、収容部材21や蓋部材23の外側に配置される溶融前ろう材31c、32cとガスとの接触が抑制されるため、ガスによる溶融前ろう材31c、32cの劣化を抑制することができる。したがって、一度の加熱によって、化学蓄熱材11が収容された容器を形成する収容部材21と蓋部材23と筒状部材25とを確実に接合することができるため、化学蓄熱反応器1の製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、ろう材31、32は、残存部31b、32bの長さが20mm以内となっている。残存部31b、32bは、化学蓄熱反応器1を製造するときに、溶融前ろう材31c、32cを収容部材21や蓋部材23の外側に配置した名残であり、化学蓄熱反応器1を製造するときに、この位置に溶融前ろう材31c、32cを配置することで、溶融したときに隙間G22、G24に溶融前ろう材31c、32cが流れ込みやすくなる。これにより、一度の加熱によって、化学蓄熱材11が収容された容器を形成する収容部材21と蓋部材23と筒状部材25とを確実に接合することができるため、化学蓄熱反応器1の製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、ろう材31、32の融点は、化学蓄熱材11の耐熱温度より低い。これにより、ろう材31、32によって収容部材21と蓋部材23となどを接合させるとき、化学蓄熱材11が焼きしまることで化学蓄熱材11の反応性が低下することを抑制することができる。したがって、化学蓄熱反応器1の蓄熱性能の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、複数の部材のそれぞれは、ステンレスから形成されている。これにより、反応容器20の耐熱温度は比較的高くなるため、反応容器20の使用可能温度を高く設定することができ、より高温の熱源の熱を蓄えることができる。したがって、化学蓄熱反応器1の蓄熱性能の向上することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、ろう材31、32は、リンを含んでいる。これにより、ろう材31、32の濡れ性が比較的高くなるため、化学蓄熱反応器1を製造するとき、収容部材21や蓋部材23の外側に配置される溶融前ろう材31c、32cは、溶融によって隙間G22、G24に流れ込みやすくなる。したがって、化学蓄熱材11が収容された複数の部材を確実に接合することができる。また、濡れ性が比較的高くなることによって、リンを含まないろう材に比べて、隙間G22、G24から比較的離れた位置に溶融前ろう材31c、32cを配置することができるため、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスとの接触が抑制される。これにより、一度の加熱によって、化学蓄熱材11が収容された複数の部材を確実に接合することができるため、化学蓄熱反応器1の製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態の反応容器20は、収容部材21と蓋部材23とを接合するろう材31は、収容部材21における外側の端面21bに固定されており、熱処理成形体の熱分解温度より高い融点を有している。これにより、化学蓄熱材11が収容された反応容器20を製造するとき、熱処理成形体を収容する容器を加熱することで、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスによるろう材31の劣化を抑制しつつ、反応容器20を形成することができる。したがって、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が収容された化学蓄熱反応器1を製造することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1の製造方法では、最初に、ろう材31、32によって接合される前の複数の部材を組み合わせた容器の内部に、熱処理成形体を挿入し、溶融前ろう材31c、32cを収容部材21や蓋部材23の外側に塗布する。次に、加熱工程において、全体を加熱する。このとき、加熱工程の最初において、温度T2となるように容器を加熱し、熱処理成形体を熱分解することで化学蓄熱材11を生成する。このときに発生するガスは、複数の部材の間を通って容器の外部に排出されるため、溶融前ろう材31c、32cに接触することを抑制することができる。これにより、成形前処理体が熱分解するときに発生するガスによって、溶融前ろう材31c、32cが劣化することを抑制することができる。次に、容器全体を温度T2よりも温度T3に加熱することで、溶融前ろう材31c、32cを溶融し、部材どうしをろう付することで、反応容器20を形成する。これにより、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が収容された化学蓄熱反応器1を製造することができるため、製造時間を短縮することができる。
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態の化学蓄熱反応器のろう材の形状を説明する図である。第2実施形態の化学蓄熱反応器2は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1(図1)と比較すると、ろう材の形状が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器2は、化学蓄熱材11と、反応容器20と、ろう材31、33と、を備える。ろう材33は、蓋部材23と筒状部材25との間に配置されており、第1実施形態の化学蓄熱反応器1が備えるろう材32の代わりに、蓋部材23と筒状部材25とを接合する。本実施形態では、ろう材33は、蓋部材23と筒状部材25の間において、反応容器20の全周にわたって形成されている。本実施形態では、ろう材33は、リンを含んでいる。
ろう材33は、蓋部材23の内周部23bと筒状部材25の端部25aとの間に配置されるろう付部32aと、筒状部材25の外表面25b上に形成される残存部33bと、を有する。残存部33bは、ろう付部32aのz軸方向のプラス側に接続しており、外表面25bに沿って、蓋部材23から離れる方向、すなわち、z軸のプラス方向に延伸している。本実施形態では、蓋部材23の内周部23bの端面23cからの高さL33は、20mm以下となっている。
図10は、第2実施形態の化学蓄熱反応器2の製造方法を説明する模式図である。第2実施形態の化学蓄熱反応器2の製造方法では、ろう材33となる溶融前ろう材33cを筒状部材25の外表面25bの全周にわたって塗布される。溶融前ろう材33cは、図10に示すように、筒状部材25の外表面25bにおいて、蓋部材23寄りに塗布される。具体的には、溶融前ろう材33cは、蓋部材23の内周部23bの端面23cから20mm以内に塗布されることが望ましい。溶融前ろう材33cが塗布される位置は、ろう材33の残存部33bの位置と重なっており、残存部33bは、溶融前ろう材33cの一部が残ったものである。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器2によれば、ろう材33の残存部33bは、筒状部材25の外表面25b上において、蓋部材23から離れる方向に延伸するように形成されている。これにより、化学蓄熱反応器2を製造するとき、熱処理成形体が熱分解するときに発生するガスが溶融前ろう材33cに接触しにくくなるため、ろう材33が劣化することを抑制することができる。したがって、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が収容された化学蓄熱反応器1を製造することができるため、製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器2の製造方法では、容器が加熱されることで溶融前ろう材33cが溶融すると、重力によってz軸のマイナス方向に向かって落下する。これにより、溶融前ろう材33cが蓋部材23の内周部23bと筒状部材25の端部25aとの間に流れ込みやすくなるため、一度の加熱によって、蓋部材23と筒状部材25とを確実に接合することができる。
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態の化学蓄熱反応器のろう材の形状を説明する図である。第3実施形態の化学蓄熱反応器3は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1(図1)と比較すると、開口部の形状が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器3は、化学蓄熱材11と、反応容器40と、ろう材31、32、34と、を備える。反応容器40は、略円柱形状の部材であり、収容部材21と、蓋部材23と、筒状部材45と、を有する。反応容器40は、内側に、化学蓄熱材11を封入することが可能である。筒状部材45は、特許請求の範囲の「部材」に相当する。
筒状部材45は、図11に示すように、化学蓄熱反応器3の軸心C3に沿うように配置されている筒状の部材である。筒状部材45は、蓋部材23の貫通孔24に挿通されて、反応容器40に収容されている化学蓄熱材11をz軸方向に貫いている。筒状部材45は、突出部45aと、内部流路形成部45bと、を有する。突出部45aは、蓋部材23から反応容器20の外側に突出している。内部流路形成部45bは、反応容器40に収容されている化学蓄熱材11の内部に配置されている。筒状部材45は、筒状部材45をz軸方向に貫通する貫通孔46と、内部流路形成部45bに形成される複数の貫通孔47を有する。貫通孔47は、貫通孔46と化学蓄熱材11の内部とを連通している。
内部流路形成部45bは、z軸方向のマイナス側の端部45cが、収容部材21の底部27に形成されている貫通孔28に挿入されている。本実施形態では、筒状部材45の端部45cの外径は、底部27の貫通孔28の内径よりやや小さい。このため、底部27の内周面27aと筒状部材45の端部45cとの間には、隙間G28が形成される。
ろう材34は、収容部材21の底部27と筒状部材45の内部流路形成部45bとの間に配置されており、収容部材21と筒状部材45とを接合する。ろう材34は、収容部材21と筒状部材45との間において、反応容器20の全周にわたって形成されている。本実施形態では、ろう材34は、リンを含んでいる。
図12は、ろう材34の形状を説明する図であって、図11のD部拡大図である。ろう材34は、底部27の内周面27aと筒状部材45の端部45cとの間に配置されるろう付部34aと、底部27のz軸方向のマイナス側の端面27b上に形成される残存部34bと、を有する。ろう付部34aは、収容部材21と筒状部材45との間で長尺状に形成されており、収容部材21と筒状部材45をろう付する。残存部34bは、ろう付部34aのz軸方向のマイナス側に接続しており、端面27bに沿って、長尺状に形成されて、筒状部材45から離れる方向に延伸している。このように、ろう付部34aの延伸方向(z軸方向)と、残存部34bの延伸方向(z軸の略垂直な方向)とは異なっており、図12に示す断面図でのろう材34は、略L字状を有している。本実施形態では、端面27b上での残存部34bの長さL34が、20mm以下となっている。
図13は、第3実施形態の化学蓄熱反応器3の製造方法を説明する模式図である。第3実施形態の化学蓄熱反応器3の製造方法では、ろう材34となる溶融前ろう材34cが、底部27の端面27b上に、筒状部材45の全周に沿うように塗布される。溶融前ろう材34cは、図13に示すように、底部27の端面27bにおいて、筒状部材45寄りに塗布される。具体的には、溶融前ろう材34cは、端面27bの内側の端27cから20mm以内に塗布されることが望ましい。溶融前ろう材34cが塗布される位置は、ろう材34の残存部34bの位置と重なる。すなわち、残存部34bは、溶融前ろう材34cの一部が残ったものである。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器3によれば、ろう材34の残存部34bは、収容部材21の底部27の端面27b上において、筒状部材45から離れる方向に延伸するように形成されている。これにより、化学蓄熱反応器3を製造するとき、熱処理成形体が熱分解するときに発生するガスが溶融前ろう材34cに接触しにくくなるため、ろう材34が劣化することを抑制することができる。したがって、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が収容された化学蓄熱反応器3を製造することができるため、製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器3によれば、反応容器20は、化学蓄熱材11が収容される空間20aと外側とを連通する筒状部材45を備えている。筒状部材45は、化学蓄熱材11の内部と連通しており、化学蓄熱材11の水蒸気が流れるように形成されている。化学蓄熱反応器3を製造するとき、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスは、筒状部材45を通って複数の部材からなる容器の外部に排出される。これにより、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスと複数の部材を接合する前の溶融前ろう材31c、32c、34cとの接触が抑制されるため、ガスとの接触によるろう材31、32、34の劣化がさらに抑制される。したがって、一度の加熱によって、化学蓄熱材11が収容された複数の部材を確実に接合することができるため、化学蓄熱反応器3の製造時間を短縮することができる。
<第4実施形態>
図14は、第4実施形態の化学蓄熱反応器のろう材の形状を説明する図である。第4実施形態の化学蓄熱反応器4は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1(図1)と比較すると、蓋部材の形状が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器4は、化学蓄熱材11と、反応容器20と、ろう材31、35と、を備える。ろう材35は、蓋部材23と筒状部材25との間に配置されており、第1実施形態の化学蓄熱反応器1が備えるろう材32の代わりに、蓋部材23と筒状部材25とを接合する。本実施形態では、ろう材35は、蓋部材23と筒状部材25の間において、反応容器20の全周にわたって形成されている。本実施形態では、ろう材35は、リンを含んでいる。
化学蓄熱反応器4が備える蓋部材23は、内周部23bに、筒状部材25の端部25aに対向する内周面23eと端面23cとを接続する傾斜面23fを有する。傾斜面23fは、図14に示すように、化学蓄熱反応器4の軸心C4を含む断面において、直線形状を有しており、傾斜面23fの延長線VL4が、化学蓄熱反応器4の軸心C4に対して90度とは異なる角度で交差するように形成されている。内周部23bの内周面23eと筒状部材25の端部25aとの間には、隙間G24が形成されている。
ろう材35は、蓋部材23の内周部23bと筒状部材25の端部25aとの間に配置されるろう付部35aと、傾斜面23f上に形成される残存部35bと、を有する。ろう付部35aは、内周面23eと筒状部材25とをろう付する。残存部35bは、ろう付部35aのz軸方向のプラス側に接続しており、傾斜面23f上に形成されている。残存部35bは、傾斜面23fと筒状部材25を接合する。残存部35bは、ろう材35となる溶融前ろう材の一部が残ったものである。
化学蓄熱反応器4を製造するとき、ろう材35となる溶融前ろう材は、傾斜面23fに塗布される。加熱工程において、溶融前ろう材が溶融すると、溶融した溶融前ろう材の一部は、傾斜面23fの傾斜を利用して内周面23eと筒状部材25との間に流れ込む。内周面23eと筒状部材25との間に流れ込んだ溶融前ろう材は、内周面23eと筒状部材25とを接合し、傾斜面23fに残った溶融前ろう材は、傾斜面23fと筒状部材25とを接合する。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器4によれば、ろう材35の残存部35bは、蓋部材23の傾斜面23fに沿って形成されている。傾斜面23fは、z軸のプラス方向に向かうにしたがって、筒状部材25から離れるように形成されている。これにより、化学蓄熱反応器4を製造するとき、熱処理成形体が熱分解するときに発生するガスが溶融前ろう材に接触しにくくなるため、ろう材35が劣化することを抑制することができる。したがって、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が収容された化学蓄熱反応器4を製造することができるため、製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器4では、蓋部材23と筒状部材25とを接合する部分に、傾斜面23fが形成されている。このような形状の場合でも、溶融前ろう材を接合する部材の間に流し込むことで、接合することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器4の製造方法では、容器が加熱されることで溶融前ろう材が溶融すると、傾斜面23fの傾斜に沿ってz軸のマイナス方向に向かって落下する。これにより、溶融前ろう材が蓋部材23の内周部23bと筒状部材25の端部25aとの間に流れ込みやすくなるため、一度の加熱によって、蓋部材23と筒状部材25とを確実に接合することができる。
<第5実施形態>
図15は、第5実施形態の化学蓄熱反応器のろう材の形状を説明する図である。第5実施形態の化学蓄熱反応器5は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1(図1)と比較すると、収容部材の形状が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器5は、化学蓄熱材11と、反応容器20と、ろう材31、36と、を備える。ろう材36は、収容部材21と蓋部材23との間に配置されており、第1実施形態の化学蓄熱反応器1のろう材31の代わりに、収容部材21と蓋部材23とを接合する。本実施形態では、ろう材36は、収容部材21と蓋部材23の間において、反応容器20の全周にわたって形成されている。本実施形態では、ろう材36は、リンを含んでいる。
化学蓄熱反応器5が備える収容部材21は、環形状の端部21aの内側に、凹み21dを有する。収容部材21と蓋部材23とを組み合わせるとき、凹み21dには、蓋部材23の外周部23aが位置し、凹み21dを形成する内周面21eと、蓋部材23の外周面23gとが対向する。凹み21dの内周面21eと蓋部材23の外周面23gとの間には、隙間G22が形成されている(図15参照)。
ろう材36は、凹み21dの内周面21eと蓋部材23の外周面23gとの間に配置されるろう付部36aと、蓋部材23の端面23c上に形成される残存部36bと、を有する。ろう付部36aは、収容部材21と蓋部材23との間で長尺状に形成されており、収容部材21と蓋部材23とをろう付する。残存部36bは、ろう付部36aのz軸方向のプラス側に接続しており、蓋部材23の端面23cに沿って、長尺状に形成されて、収容部材21の端部21aから離れる方向に延伸している。このように、ろう付部36aの延伸方向(z軸方向)と、残存部36bの延伸方向(z軸の略垂直な方向)とは異なっており、図15に示す断面でのろう材36は、略L字状を有している。
化学蓄熱反応器5を製造するとき、ろう材36となる溶融前ろう材は、端面23cに塗布される。加熱工程において、溶融前ろう材が溶融すると、溶融した溶融前ろう材の一部は、収容部材21と蓋部材23との間に流れ込む。収容部材21と蓋部材23との間に流れ込んだ溶融前ろう材は、収容部材21と蓋部材23とを接合する。収容部材21と蓋部材23との間に流れ込まなかった溶融前ろう材は、端面23c上において、残存部36bとなる。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器5によれば、ろう材36の残存部36bは、蓋部材23の端面23c上に形成されている。これにより、化学蓄熱反応器5を製造するとき、熱処理成形体が熱分解するときに発生するガスが溶融前ろう材に接触しにくくなるため、ろう材36が劣化することを抑制することができる。したがって、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が収容された化学蓄熱反応器5を製造することができるため、製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器5では、収容部材21と蓋部材23とを接合する部分に、凹み21dが形成されている。このような形状の場合でも、溶融前ろう材を接合する部材の間に流し込むことで、接合することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器5の製造方法では、容器が加熱されることで溶融前ろう材が溶融すると、凹み21dの内周面21eと蓋部材23の外周面23gとの間に流れ込む。このとき、溶融前ろう材が多い場合、内周面21eと外周面23gとの間を通り過ぎるおそれがある。化学蓄熱反応器5では、内周面21eと外周面23gとの間を通り過ぎたろう材を、凹み21dのz軸方向のマイナス側の端面で受け止めることができるため、溶融したろう材が化学蓄熱材11にかかることを抑制することができる。
<第6実施形態>
図16は、第6実施形態の化学蓄熱反応器のろう材の形状を説明する図である。第6実施形態の化学蓄熱反応器6は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1(図1)と比較すると、蓋部材の形状が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器6は、化学蓄熱材11と、反応容器20と、ろう材31、37と、を備える。ろう材37は、蓋部材23と筒状部材25との間に配置されており、第1実施形態の化学蓄熱反応器1のろう材32の代わりに、蓋部材23と筒状部材25とを接合する。本実施形態では、ろう材37は、蓋部材23と筒状部材25の間において、反応容器20の全周にわたって形成されている。本実施形態では、ろう材37は、リンを含んでいる。
化学蓄熱反応器6が備える蓋部材23は、内周部23bに、内周面23eと端面23cとを接続する傾斜面23hを有する。傾斜面23hは、図16に示すように、化学蓄熱反応器6の軸心C6を含む断面において、曲線形状を有している。内周部23bの内周面23eと筒状部材25の端部25aとの間には、隙間G24が形成されている。
ろう材37は、蓋部材23の内周部23bと筒状部材25の端部25aとの間に配置されるろう付部37aと、傾斜面23h上に形成される残存部37bと、を有する。ろう付部37aは、内周面23eと筒状部材25とをろう付する。残存部37bは、ろう付部37aのz軸方向のプラス側に接続しており、傾斜面23h上に形成されている。残存部37bは、傾斜面23hと筒状部材25とを接合する。
化学蓄熱反応器6を製造するとき、ろう材37となる溶融前ろう材は、傾斜面23hに塗布される。加熱工程において、溶融前ろう材が溶融すると、溶融したろう材の一部は、傾斜面23hの傾斜を利用して内周面23eと筒状部材25との間に流れ込む。内周面23eと筒状部材25との間に流れ込んだ溶融前ろう材は、内周面23eと筒状部材25を接合するろう付部37aとなり、傾斜面23hに残った溶融前ろう材は、傾斜面23hと筒状部材25を接合する残存部37bとなる。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器6によれば、ろう材37の残存部37bは、蓋部材23の傾斜面23hに沿って形成されている。傾斜面23hは、z軸のプラス方向に向かうにしたがって、筒状部材25から離れるように形成されている。これにより、化学蓄熱反応器6を製造するとき、熱処理成形体が熱分解するときに発生するガスが溶融前ろう材に接触しにくくなるため、ろう材37が劣化することを抑制することができる。したがって、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が収容された化学蓄熱反応器6を製造することができるため、製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器6では、蓋部材23と筒状部材25とを接合する部分に、曲面形状の傾斜面23hが形成されている。このような形状の場合でも、溶融前ろう材を接合する部材の間に流し込むことで、接合することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器6の製造方法では、容器が加熱されることで溶融前ろう材が溶融すると、傾斜面23hの傾斜に沿ってz軸のマイナス方向に向かって落下する。これにより、溶融前ろう材が蓋部材23の内周部23bと筒状部材25の端部25aとの間に流れ込みやすくなるため、一度の加熱によって、蓋部材23と筒状部材25とを確実に接合することができる。
<第7実施形態>
図17は、第7実施形態の化学蓄熱反応器のろう材の形状を説明する図である。第7実施形態の化学蓄熱反応器7は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1(図1)と比較すると、収容部材の形状および蓋部材の形状が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器7は、化学蓄熱材11と、反応容器20と、ろう材31、38と、を備える。ろう材38は、収容部材21と蓋部材23との間に配置されており、第1実施形態の化学蓄熱反応器1のろう材31の代わりに、収容部材21と蓋部材23とを接合する。本実施形態では、ろう材38は、収容部材21と蓋部材23の間において、反応容器20の全周にわたって形成されている。本実施形態では、ろう材38は、リンを含んでいる。
化学蓄熱反応器7が備える収容部材21は、環形状の端部21aの内側に、蓋部材23の外周部23aに形成されている外周面23gと対向する内周面21fと、端面21bと内周面21fとを接続する接続面21gを有する。接続面21gは、化学蓄熱反応器7の軸心を含む断面において、曲線形状を有している(化学蓄熱反応器7の軸心を含む断面を示す図17参照)。
化学蓄熱反応器7が備える蓋部材23は、外周部23aに、外周面23gと端面23cとを接続する接続面23iを有する。接続面23iは、図17に示すように、化学蓄熱反応器7の軸心を含む断面において、曲線形状を有している。本実施形態では、収容部材21の内周面21fと蓋部材23の外周面23gとの間には、隙間G22が形成されている。
ろう材38は、収容部材21の内周面21fと蓋部材23の外周面23gとの間に形成されるろう付部38aと、収容部材21の接続面21gと蓋部材23の接続面23iとの間に形成される残存部38bとを有する。ろう付部38aは、内周面21fと外周面23gをろう付する。残存部38bは、ろう付部38aのz軸方向のプラス側に接続しており、図17に示すように、2つの接続面21g、23i上のそれぞれに形成されている。残存部38bは、接続面21gと接続面23iとを接合する。
化学蓄熱反応器7を製造するとき、ろう材38となる溶融前ろう材は、接続面21gまたは接続面23iに塗布される。加熱工程において、溶融前ろう材が溶融すると、溶融した溶融前ろう材の一部は、内周面21eと外周面23gとの間に流れ込む。内周面21eと外周面23gとの間に流れ込んだ溶融前ろう材は、収容部材21と蓋部材23とを接合するろう付部38aとなり、内周面21eと外周面23gとの間に流れ込まなかった溶融前ろう材は、接続面21gと接続面23iとを接合する残存部38bとなる。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器7によれば、ろう材38の残存部38bは、収容部材21の接続面21g上と蓋部材23の接続面23i上とのそれぞれに形成されている。これにより、化学蓄熱反応器7を製造するとき、熱処理成形体が熱分解するときに発生するガスが溶融前ろう材に接触しにくくなるため、ろう材38が劣化することを抑制することができる。したがって、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が収容された化学蓄熱反応器7を製造することができるため、製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器7では、収容部材21と蓋部材23とを接合する部分に、曲面形状の接続面21g、23iが形成されている。このような形状の場合でも、溶融前ろう材を接合する部材の間に流し込むことで、接合することができる。
<第8実施形態>
図18は、第8実施形態の化学蓄熱反応器の製造方法を説明する模式図である。第8実施形態の化学蓄熱反応器1の製造方法は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1の製造方法と比較すると、反応容器に塗布される溶融前ろう材の位置および数が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器1を製造するとき、ろう材31となる複数の溶融前ろう材31dは、収容部材21の端部21aと蓋部材23の外周部23aとの間に配置される。具体的には、8個の溶融前ろう材31dは、図18に示すように、等間隔で、反応容器20の周方向に並ぶように配置される。これにより、隣り合う溶融前ろう材31dの間には、反応容器20の空間20aと外側とを連通する連通路Cp22が複数形成される。なお、図18では、収容部材21、蓋部材23、筒状部材25、および、溶融前ろう材31d、32cの位置関係がわかるように、便宜的に、これらの構成要素にハッチングを施している。
化学蓄熱反応器1を製造するとき、加熱工程において、容器の温度が温度T2となるように加熱されるとき、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスは、連通路Cp22を通って、反応容器20の外部に排出される。その後、容器の温度が温度T3となるように加熱されるとき、溶融した溶融前ろう材31dが、収容部材21の端部21aと蓋部材23の外周部23aとの間で、反応容器20の周方向に広がることで、収容部材21と蓋部材23とを反応容器20の全周で接合することができる。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器1の製造方法によれば、収容部材21の端部21aと蓋部材23の外周部23aとの間に、複数の溶融前ろう材31dを並べる。これにより、加熱工程において、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスを、連通路Cp22を介して反応容器20の外部に排出したのち、収容部材21と蓋部材23とをろう付することができる。これにより、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が収容された化学蓄熱反応器1を製造することができるため、製造時間を短縮することができる。
<第9実施形態>
図19は、第9実施形態の化学蓄熱反応器の製造方法を説明する模式図である。第9実施形態の化学蓄熱反応器1の製造方法は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1の製造方法と比較すると、反応容器に塗布されるろう材の位置および数が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器1を製造するとき、ろう材31となる複数の溶融前ろう材31eは、収容部材21の端部21aと蓋部材23の外周部23aとの間に配置される。具体的には、2個の溶融前ろう材31dは、図19に示すように、化学蓄熱反応器1の軸心C1を挟むように配置される。2個の溶融前ろう材31dの間には、反応容器20の空間20aと外側とを連通する連通路Cp22が形成される。なお、図19では、収容部材21、蓋部材23、筒状部材25、および、溶融前ろう材31e、32cの位置関係がわかるように、便宜的に、これらの構成要素にハッチングを施している。
化学蓄熱反応器1を製造するとき、加熱工程において、容器の温度が温度T2となるように加熱されるとき、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスは、連通路Cp22を通って、反応容器20の外部に排出される。その後、容器の温度が温度T3となるように加熱されるとき、溶融した溶融前ろう材31eが、収容部材21の端部21aと蓋部材23の外周部23aとの間で、反応容器20の周方向に広がることで、収容部材21と蓋部材23とを反応容器20の全周で接合することができる。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器1の製造方法によれば、収容部材21の端部21aと蓋部材23の外周部23aとの間に、複数の溶融前ろう材31eを並べる。これにより、加熱工程において、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスを、連通路Cp22を介して反応容器20の外部に排出したのち、収容部材21と蓋部材23とをろう付することができる。これにより、一度の加熱によって、反応容器20に化学蓄熱材11が収容された化学蓄熱反応器1を製造することができるため、製造時間を短縮することができる。
<第10実施形態>
図20は、第10実施形態の化学蓄熱反応器の概略構成を示す模式図である。図21は、本実施形態の化学蓄熱反応器の断面図である。第10実施形態の化学蓄熱反応器8は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1と比較すると、反応容器の内部にスペーサを備える点が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器8は、化学蓄熱材11と、反応容器20と、ろう材31、32と、スペーサ50と、を備える。スペーサ50は、熱伝導性が高い金属から形成されている網目状の部材であって、化学蓄熱材11を囲むように形成されている。
スペーサ50は、上部51aと、底部51bと、筒状部51cと、を備える。上部51aは、化学蓄熱材11の上部11aと蓋部材23との間に配置されており、略円形形状を有する。上部51aは、化学蓄熱材11の上部11aと蓋部材23とに接触し、上部11aと蓋部材23との間に、気体が流通可能な内部流路52aを形成する。底部51bは、化学蓄熱材11の底部11bと収容部材21の底部27との間に配置されており、略円形形状を有する。底部51bは、化学蓄熱材11の底部11bと収容部材21の底部27とに接触し、底部11bと底部27との間に、気体が流通可能な内部流路52bを形成する。筒状部51cは、化学蓄熱材11の外周部11cと収容部材21の筒状部29との間に配置されている筒形状の部位である。筒状部51cは、化学蓄熱材11の外周部11cと収容部材21の筒状部29とに接触し、外周部11cと筒状部29との間に、気体が流通可能な内部流路52cを形成する。内部流路52a、52b、52cのそれぞれには、化学蓄熱反応器8を製造するときに熱処理成形体の熱分解によって発生するガスや、化学蓄熱反応器8において蓄熱と放熱とを繰り返すときに、水蒸気が流れる。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器8によれば、反応容器20は、化学蓄熱材11が収容される空間20aと外側とを連通する筒状部材25を備えている。また、反応容器20の内側には、化学蓄熱材11の周囲に内部流路52a、52b、52cを形成するスペーサ50が設けられている。これにより、化学蓄熱反応器8を製造するとき、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスは、内部流路52a、52b、52cと筒状部材25を通って複数の部材からなる容器の外部に排出される。これにより、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスと溶融前ろう材31c、32c(図20参照)との接触が抑制されるため、ガスとの接触によるろう材31、32の劣化が抑制される。したがって、一度の加熱によって、化学蓄熱材11が収容された複数の部材を確実に接合することができるため、化学蓄熱反応器8の製造時間を短縮することができる。
<第11実施形態>
図22は、第11実施形態の化学蓄熱反応器の概略構成を示す模式図である。図23は、本実施形態の化学蓄熱反応器の断面図である。第11実施形態の化学蓄熱反応器9は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1と比較すると、1つの反応容器に複数の化学蓄熱材が収容されている点が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器9は、複数の化学蓄熱材11と、反応容器20と、ろう材31、32と、複数のフィルタ12と、を備える。フィルタ12は、化学蓄熱材11を囲むように形成されている網目状の部材である。フィルタ12は、熱伝導性が高い金属から形成されており、両端に開口が形成されている筒形状を有している。フィルタ12は、1つの反応容器20に収容される複数の化学蓄熱材11のそれぞれの外側に取り付けられている。
本実施形態では、反応容器20には、1つの化学蓄熱材11と1つのフィルタ12とを組み合わせたユニット13が7個収容されている。7個のユニット13は、図23に示すように、x軸方向に沿って、2個のユニット13が並べられている列と、3個のユニット13が並べられている列と、2個のユニット13が並べられている列とが、y軸方向に沿って並べて配置されている。これにより、隣接するユニット13の間や、ユニット13と収容部材21の内周面21hとの間には、気体が流通可能な内部流路20bが形成される。内部流路20bには、化学蓄熱反応器9を製造するときに熱処理成形体の加熱によって発生するガスや、化学蓄熱反応器9において蓄熱と放熱とを繰り返すときに、水蒸気が流れる。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器9によれば、反応容器20には、化学蓄熱材11とフィルタ12とを組み合わせたユニット13が7個収容されており、隣接するユニット13の間やユニット13と収容部材21の内周面21hとの間には、内部流路20bが形成される。これにより、化学蓄熱反応器9を製造するとき、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスは、内部流路20bと筒状部材25を通って複数の部材からなる容器の外部に排出される。これにより、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスと溶融前ろう材31c、32c(図22参照)との接触が抑制されるため、ガスとの接触によるろう材31、32の劣化が抑制される。したがって、一度の加熱によって、化学蓄熱材11が収容された複数の部材を確実に接合することができるため、化学蓄熱反応器9の製造時間を短縮することができる。
<第12実施形態>
図24は、第12実施形態の化学蓄熱反応器の概略構成を示す模式図である。図25は、本実施形態の化学蓄熱反応器の断面図である。第12実施形態の化学蓄熱反応器10は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1と比較すると、反応容器の内部に複数の化学蓄熱材を拘束する拘束部材を備える点が異なる。
本実施形態の化学蓄熱反応器10は、複数の化学蓄熱材11と、反応容器20と、ろう材31、32と、拘束部材14と、を備える。拘束部材14は、反応容器20の内側に配置されている。拘束部材14には、複数の化学蓄熱材11のそれぞれを挿入可能な穴14aが形成されている。拘束部材14は、円柱形状を有しており、外径が収容部材21の内径とほぼ同じになるように形成されている。これにより、拘束部材14は、複数の穴14aのそれぞれに複数の化学蓄熱材11を挿入された状態で収容部材21に収容されると、収容部材21に対する化学蓄熱材11の位置を固定することができる。
拘束部材14は、熱伝導性が高い金属の繊維から形成されている多孔質体であり、内部に、気体が流通可能な内部流路を有する。この内部流路は、化学蓄熱反応器10を製造するときに熱処理成形体の加熱によって発生するガスや、化学蓄熱反応器10において蓄熱と放熱とを繰り返すための水蒸気が流れる。なお、拘束部材14を形成する材料は、金属材料に限らず、カーボン、アルミナやSiCなどのセラミック、シリカ、樹脂などの非金属材料などが含まれていてもよい。
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器10によれば、反応容器20には、複数の化学蓄熱材11が挿入された拘束部材14が収容されている。拘束部材14は、多孔質体であるため、化学蓄熱反応器10を製造するとき、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスを、自身の細孔を介して複数の部材からなる容器の外部に排出することができる。これにより、熱処理成形体の熱分解によって発生するガスと溶融前ろう材31c、32c(図24参照)との接触が抑制されるため、ガスとの接触によるろう材31、32の劣化が抑制される。したがって、一度の加熱によって、化学蓄熱材11が収容された複数の部材を確実に接合することができるため、化学蓄熱反応器10の製造時間を短縮することができる。
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
[変形例1]
上述の実施形態では、化学蓄熱材は、酸化カルシウムであるとし、反応媒体を水であるとした。化学蓄熱材と、反応媒体との組み合わせはこれに限定されない。反応媒体と結合することで発熱し、前記反応媒体が脱離することで蓄熱する材料であればよい。また、熱分解によって酸化カルシウムとなる材料(熱処理材)を炭酸カルシウムであるとしたが、熱処理材はこれに限定されない。熱分解によって化学蓄熱材になる材料であればよい。
[変形例2]
第1実施形態では、ろう材31の残存部31bの長さL31は、20mm以内であるとし、ろう材32の残存部32bの長さL32は、20mm以内であるとした。第2実施形態では、ろう材33の残存部33bの長さL33は、20mm以内であるとした。第3実施形態では、ろう材34の残存部34bの長さL34は、20mm以内であるとした。しかしながら、ろう材の残存部の長さは、これに限定されず、20mmより長くてもよい。
[変形例3]
上述の実施形態では、化学蓄熱反応器の製造方法において、ろう材を溶融させる温度T3は、化学蓄熱材11の耐熱温度T4よりも低いとした。しかしながら、温度T3は、耐熱温度T4以上であってもよい。ろう材を溶融させる温度T3を化学蓄熱材11の耐熱温度T4より低くすることで、化学蓄熱材11の焼きしまりを抑制することができるため、化学蓄熱材11の反応性の低下を抑制することができる。
[変形例4]
上述の実施形態では、収容部材21などの反応容器20、40を形成する部材は、ステンレスから形成されるとした。反応容器20、40を形成する部材は、ステンレス以外の材料から形成されていてもよい。また、ろう材31は、リンを含むとしたが、リンを含んでいなくてもよい。
[変形例5]
上述の実施形態では、ろう材31となる溶融前ろう材31cは、収容部材21の全周にわたって塗布されるとした。収容部材21と蓋部材23とを接合するために収容部材21の端部21aと蓋部材23の外周部23aとの間に流れ込む溶融前ろう材が塗布される場所は、これに限定されない。
図26は、ろう材を塗布する位置の第1の変形例を説明する図である。図26に示すように、収容部材21と蓋部材23とを接合するための溶融前ろう材は、収容部材21の端面21bと、蓋部材23の端面23cとの両方に塗布してもよい。これにより、溶融前ろう材は、収容部材21の端部21aと蓋部材23の外周部23aとの間にさらに流れ込みやすくなるため、収容部材21と蓋部材23とを確実に接合することができる。また、蓋部材23の端面23c上にのみ塗布してもよいし、収容部材21の端面21bおよび蓋部材23の端面23cの少なくとも一方の複数個所に塗布してもよい。
[変形例6]
上述の実施形態では、ろう材32となる溶融前ろう材32cは、蓋部材23の内周側の全周にわたって塗布されるとした。蓋部材23と筒状部材25、45とを接合するために蓋部材23の内周部23bと筒状部材25、45との間に流れ込む溶融前ろう材が塗布される場所は、これに限定されない。
図27は、ろう材を塗布する位置の第2の変形例を説明する図である。図27に示すように、蓋部材23と筒状部材25とを接合するための溶融前ろう材は、蓋部材23の端面23cと筒状部材25の外表面25bの両方に塗布してもよい。これにより、溶融前ろう材は、蓋部材23の内周部23bと筒状部材25との間にさらに流れ込みやすくなるため、蓋部材23と筒状部材25とを確実に接合することができる。また、蓋部材23の端面23cおよび筒状部材25の外表面25bの少なくとも一方の複数個所に塗布してもよい。
[変形例7]
上述の実施形態では、ろう材34となる溶融前ろう材34cは、底部27の端面27b上に、筒状部材45の全周に沿うように塗布されるとした。底部27と筒状部材45とを接合するために底部27の内周面27aと筒状部材45との間に流れ込む溶融前ろう材が塗布される場所は、これに限定されない。
図28は、ろう材を塗布する位置の第3の変形例を説明する図である。図28に示すように、収容部材21の底部27と筒状部材45とを接合するための溶融前ろう材は、底部27の端面27bと筒状部材45のz軸方向のマイナス側の端面45dの両方に塗布してもよい。これにより、溶融前ろう材は、収容部材21の底部27と筒状部材45との間にさらに流れ込みやすくなるため、収容部材21と筒状部材45とを確実に接合することができる。また、底部27の端面27bおよび筒状部材45の端面45dの少なくとも一方の複数個所に塗布してもよい。
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。