JP7339895B2 - 浚渫方法 - Google Patents

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Description

本発明は、湖沼や池などの閉鎖性水域から放射性物質で汚染された汚染泥土を除去するのに用いられる浚渫方法に関する。
2011年3月の福島第一原子力発電所の事故により拡散した放射性セシウムによる土壌汚染の対策が急がれている。
湖沼や池などの閉鎖した水域では、降雨などにより流入した放射性セシウムを吸着した土壌が水底に集積して放射性セシウムの高濃度化が生じていることから、特に早急な対策が求められている。このような閉鎖性水域が農業用のため池である場合には耕作地を再汚染し、一方、閉鎖性水域が漁場である場合には水産物の汚染を招くからである。
閉鎖性水域の水底面での泥土の汚染度は、表層において高く深層において低くなるので、水底面表層において、数cm~十数cmの深さの泥土を浚い取ることで、汚染された泥土を相当量除去することができる。
従来において、水底面の泥土を浚い取るための浚渫装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
この浚渫装置は、スクリューやウォータージェット等の推進手段で移動する台船上に配置されるものであり、台船を移動させることで浚渫を行うものとなっている。
特開2008-31745号公報
ここで、水底面の汚染泥土を浚い取る場合に最も注意するべきことは、汚染泥土を巻き上げないようにすることである。すなわち、水底面に沈静化している放射性セシウムを水中に拡散させないようにすることである。
ところが、上記した浚渫装置を用いた従来の浚渫方法では、台船の推進手段を作動させることで浚渫装置を移動させるようにしているので、例えば、浅い池の汚染泥土の浚渫を行う場合には、水底面の泥土を浚い取ることはできても、推進手段の作動によって水底面の泥土を巻き上げ兼ねないという懸念があり、この懸念を如何にして払拭するかが従来の課題となっていた。
本発明は、上記した従来の課題に着目して成されたもので、池等の閉鎖性水域の水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げることなく浚い取ることが可能である浚渫方法を提供することを目的としている。
上記した目的を達成するために、本願請求項1に係る発明は、フロート上に渡されたレール間に設けられる水窓から水底面に渡した吸上パイプに接続された泥等吸引機能を有する浚渫籠を前記レールに対して水平・垂直に繰り返し移動させながら前記水窓に略対応する水底面の泥等の浚渫をする浚渫方法であって、前記浚渫籠をレールに対して水平方向に移動させながら前記水窓の一方の略端部に至るまで順ルートの浚渫を行う順ルート浚渫ステップと、前記水窓の一方の略端部にまで至った浚渫籠を水底面から引き上げる第一引上げステップと、第一引上げステップにて引き上げられた浚渫籠を移動後に水底面に下ろす第一引下しステップと、前記浚渫籠が水底面に着底後、浚渫籠をレールに対して水平方向に移動させながら前記順ルートに隣接する追加ルートの浚渫を行う追加ルート浚渫ステップと、からなる構成としている。
また、本願請求項2に係る発明において、順ルート浚渫ステップの順ルートにおける浚渫籠の水平方向移動と、追加ルート浚渫ステップの追加ルートにおける浚渫籠の水平方向移動とは同じ方向の移動である構成としている。
さらに、本願請求項3に係る発明において、前記同じ方向の移動とは、水底面の上り坂を上る方向の移動である構成としている。
さらにまた、本願請求項4に係る発明は、前記浚渫籠をレールに対して水平方向に移動させながら前記水窓の一方の略端部に至るまで追加ルートの浚渫を行う前記追加ルート浚渫ステップの後に、前記水窓の一方の略端部にまで至った浚渫籠を水底面から引き上げる第二引上げステップと、第二引上げステップにて引き上げられた浚渫籠を移動後に水底面に下ろす第二引下しステップと、をさらに有する構成としている。
さらにまた、本願請求項5に係る発明は、順ルート浚渫ステップ、第一引上げステップと、第一引下しステップと、追加ルート浚渫ステップと、第二引上げステップと、第二引下しステップと、を繰り返す繰返ステップをさらに有する構成としている。
さらにまた、本願請求項6に係る発明は、順ルート浚渫ステップの順ルートにおける浚渫籠の水平方向移動と、追加ルート浚渫ステップの追加ルートにおける浚渫籠の水平方向移動とは逆の方向の移動であり、前記第一引上げステップの後であって、前記第一引下しステップの前に、第一引上げステップにて引き上げた前記浚渫籠の前後方向を交代する第一前後方向交代ステップと、をさらに有する構成としている。
さらにまた、本願請求項7に係る発明は、前記浚渫籠をレールに対して水平方向に移動させながら前記水窓の他方の略端部に至るまで逆方向の追加ルートの浚渫を行う前記追加ルート浚渫ステップの後に、前記水窓の他方の略端部にまで至った浚渫籠を水底面から引き上げる第二引上げステップと、引き上げた状態で前記浚渫籠の前後方向を交代する第二前後方向交代ステップと、第二前後方向交代ステップで前後方向が交代した浚渫籠を移動後に水底面に下ろす第二引下しステップと、をさらに有する構成としている。
さらにまた、本願請求項8に係る発明は、順ルート浚渫ステップ、第一引上げステップと、第一前後方向交代ステップと、第一引下しステップと、追加ルート浚渫ステップと、第二引上げステップと、第二前後方向交代ステップと、第二引下しステップと、を繰り返す繰返ステップをさらに有する構成としている。
さらにまた、本願請求項9に係る発明は、順ルート浚渫ステップでの帯状浚渫領域と、追加ルート浚渫ステップでの帯状浚渫領域との各側縁部同士が重複する重複領域が形成されるように浚渫を行う重複浚渫サブステップを有する構成としている。
さらにまた、本願請求項10に係る発明は、繰返ステップによって前記フロートの水窓に略対応する水底面の泥等の浚渫が完了した後に、該浚渫が完了した浚渫完了水底面に隣接する水底面の浚渫が可能な位置に前記フロートを移動させるフロート移動ステップをさらに有する構成としている。
さらにまた、本願請求項11に係る発明は、前記第一引上げステップの後であって、前記第一引下しステップの前に、前記浚渫籠を引き上げた状態で浚渫籠に引っかかり又は、浚渫籠内に滞留する滞留物を浚渫籠から除去する滞留物除去ステップをさらに有する構成としている。
さらにまた、本願請求項12に係る発明は、前記第一引上げステップの後であって、前記第一引下しステップの前に、前記浚渫籠に接続された前記吸上パイプのつなぎ直しをするつなぎ直しステップをさらに有する構成としている。
さらにまた、本願請求項13に係る発明は、フロート上に渡されたレール間に設けられる水窓から水底面に渡した吸上パイプに接続された泥等吸引機能を有する浚渫籠を前記レールに対して水平・垂直に繰り返し移動させながら前記水窓に略対応する水底面の泥等の浚渫をする浚渫方法であって、一の水窓にて最初に浚渫籠を水底に下ろす位置は、その水窓下の水底面で最深領域である構成としている。
本発明に係る浚渫方法では、池等の閉鎖性水域の水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げることなく浚い取ることが可能である。
本発明に係る浚渫方法で用いる浚渫装置の一構成例を示す図 実施形態1の浚渫方法における処理フローの一例を示す図 図2の処理フローに対応する浚渫籠の動きを示す動作図 実施形態2の浚渫方法における処理フローの一例を示す図 図4の処理フローに対応する浚渫籠の動きを示す動作軌跡図 実施形態3の浚渫方法における処理フローの一例を示す図 図6の処理フローに対応する浚渫籠の動きを示す動作軌跡図 実施形態4の浚渫方法における処理フローの一例を示す図 図8の処理フローに対応する浚渫籠の動きを示す動作図 実施形態5の浚渫方法における処理フローの一例を示す図 図10の処理フローに対応する浚渫籠の動きを示す動作軌跡図 実施形態6の浚渫方法における処理フローの一例を示す図 図12の処理フローに対応する浚渫籠の動きを示す動作軌跡図 実施形態7の浚渫方法における処理フローの一例を示す図 図14の処理フローに対応するフロートの移動の一例を示す概要図 実施形態8の浚渫方法に係る滞留物除去作業で用いる接続分離機構の構成図及び動作図 実施形態8の浚渫方法における滞留物除去ステップを含む処理フローの一例を示す図 実施形態9の浚渫方法に係るパイプつなぎ直し要領を示す動作図 実施形態9の浚渫方法におけるつなぎ直しステップを含む処理フローの一例を示す図 実施形態10の浚渫方法における浚渫籠の浚渫開始状況の一例を示す図
以下、本発明に係る浚渫方法の実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態と請求項との相互の関係は以下のとおりであり、実施形態1は主に請求項1~3,9に対応する。実施形態2は主に請求項4に対応し、実施形態3は主に請求項5に対応する。実施形態4は主に請求項6,9に対応する。実施形態5は主に請求項7に対応し、実施形態6は主に請求項8に対応する。実施形態7は主に請求項10に対応する。実施形態8は主に請求項11に対応し、実施形態9は主に請求項12に対応する。実施形態10は主に請求項13に対応する。なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施し得る。
<実施形態1>
<概要>
本実施形態は、池等の閉鎖性水域において、フロート上に渡されたレール間に設けられる水窓から水底面に渡した泥等吸引機能を有する浚渫籠によって、水底面の放射性物質で汚染された泥等を浚い取る浚渫方法に関する。
とくに、順ルート及び追加ルートに沿って順次浚渫する浚渫籠の順ルートから追加ルートへの移動に際して、浚渫籠を一旦引き上げることを特徴としている。
また、本実施形態では、順ルート及び追加ルートにおいて、浚渫籠の水平方向への移動が互いに同じ方向の移動であり、さらに、この浚渫籠の移動が水底面の上り坂を上る方向の移動であることを特徴としている。
このように、浚渫籠を一旦引き上げることで、浚渫籠の浚渫方向とは異なる方向(横切る方向)への移動時において、浚渫籠が水底面を擦ることがなくなるので、水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げることを回避できるという効果を奏する。
加えて、順ルート及び追加ルートにおいて、いずれも浚渫籠を水底面の上り坂を上る方向に移動させて浚渫することで、一旦浚った泥土が浚渫籠から零れ落ちることを回避できるという効果を奏する。
<構成>
図1に示すように、本実施形態に係る浚渫方法に用いる浚渫装置0100は、ロ字状を成して中央部分が水底面Bを臨めるように水窓0102として形成されたフロート0101と、このフロート0101の互いに対向する二辺の上に敷かれたレール0103,0103と、水底面Bに堆積した放射性物質で汚染された泥土を浚い取る浚渫部0110を備えている。フロート0101は、図示しないロープ等の固定部材により池等の閉鎖性水域の水際に固定されるようになっている。
浚渫部0110は、レール0103,0103上にそれぞれ配置される脚0121,0121及びこれらの脚0121,0121間に架け渡された架設プレート0122から成るベース0120を具備している。このベース0120の脚0121,0121の各下端には、車輪0123,0123がそれぞれ配置してあり、これによりレール0103,0103間に跨るベース0120がレール0103,0103に沿って移動することができるようになっている。
つまり、ベース0120の架設プレート0122は、フロート0101の水窓0102上をレール0103,0103に沿って移動するものとなっている。
また、浚渫部0110は、操作棒0111及び浚渫籠0112を具備している。
この場合、ベース0120の架設プレート0122には、上下方向に貫通する溝0122aが長手方向に沿って設けあり、操作棒0111は、このベース0122の溝0122aに回転自在に挿通してある。そして、操作棒0111は、ベース0122の溝0122aに沿って移動自在で且つ溝0122aに対して上下方向に移動自在となっている。
一方、浚渫籠0112は浚渫口0112aを有し、この浚渫口0112aを横方向で開口させた状態で操作棒0111の下端部に取り付けられている。つまり、この浚渫装置0100では、フロート0101に対して、浚渫部0110のベース0120及び操作棒0111を介して浚渫籠0112を水平方向及び垂直方向に繰り返し移動させることで、フロート0101の水窓0102にほぼ対応する水底面Bの泥等の浚渫を行うようになっている。
この実施形態において、ベース0122の溝0122aから上方に位置する操作棒0111の上端部側には、適宜位置で固定可能な爪付きリング0113が嵌め込んであり、この爪付きリング0113は、ベース0122の溝0122aの溝縁に掛止する大きさを成している。この爪付きリング0113は、操作棒0111のベース0122の溝0122aからの抜け落ちを防いでいると共に、操作棒0111上の位置及び操作棒0111に対する固定角度を変えることで、浚渫籠0112の垂直方向位置の調節及び垂直方向に対する角度調整を可能としている。
また、この浚渫部0110では、浚渫籠0112に吸上パイプ0105を介して吸引機構付きのタンク0106を接続することで、浚渫籠0112に泥等吸引機能を持たせるようにしており、浚渫籠0112によって浚い取った放射性物質等を含む汚染泥土をタンク0106に貯めるようにしている。
この吸上パイプ0105は、タンク0106脇に設置されたパイプ置き台0108上にコイル状に束ねて置かれており、このコイル状の束の上側から順次引き出されて、フロート0101の水窓0102を通して水中に導かれるようになっている。
この際、パイプ置き台0108から閉鎖性水域の水際にかけて複数のパイプ受け0109が設けられており、パイプ置き台0108から引き出された吸上パイプ0105が、池等の閉鎖性水域の水際や水底面に触れて放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることがないようにしている。
このタンク0106は、貯蔵する汚染泥土の放射性物質による放射能漏れを防ぎ得る構成であれば、形状や材質は特に限定されない。また、タンク0106は、池等の閉鎖性水域の水際に設置することが好ましいが、設置場所も特に限定されない。
このタンク0106には、浚渫籠0112及び吸上パイプ0105を通して放射性物質を含む汚染泥土や汚染土砂のみならず付近の濁水も取り込まれて貯蔵されるため、濁水をそのまま取り込もうとするとタンク0106を大型化したりタンクを多数用意したりする必要がある。
そこで、好ましくは、例えば、沈降分離装置でタンクを構成する。この場合には、吸上パイプ0105を介してタンク0106に汚染泥土や汚染土砂とともに導入した濁水に凝集剤を添加し、そのうえでろ過して放射性物質のフロックを沈降させて濃縮するので、濁水の減容化が図られる。したがって、タンクのコンパクト化や、タンク数の抑制を実現することができる。
<処理の流れ>
図2は実施形態1における浚渫方法の処理の流れの一例を示す図である。本実施形態に係る浚渫方法は、「順ルート浚渫ステップ」(S0201)と、第一引上げステップ」(S0202)と、「第一ルート移動ステップ」(S0203)と、「第一引下しステップ」(S0204)と、「重複浚渫サブステップ」(S0225)を含む「追加ルート浚渫ステップ」(S0205)からなる。本実施形態に係る浚渫方法は、起伏のある水底面を浚渫する場合に適した浚渫方法であり、順ルート及び追加ルートにおいて、いずれも上り坂を上る方向に浚渫籠を移動させて浚渫するようにしている。以下、各ステップにおいて詳細に説明する。
まず、「順ルート浚渫ステップ」(S0201)を実行するのに先立って、放射性物質で汚染された池等の閉鎖性水域に浚渫装置0100のフロート0101を浮かべて固定する。この際、浚渫部0110の浚渫籠0112による浚渫が上り坂を上る方向に成されるように浚渫装置0100のフロート0101を固定する。
固定の仕方としては、例えば、閉鎖性水域の空中に固定部材としての図示しないロープを懸架して、このロープを用いて浚渫装置0100のフロート0101を固定することが好ましい。
何故なら、微粒子である放射性物質は、そのほとんどが水底面Bの粘土層及びシルト(一般に粒径約4μm以上0.06mm未満)層の層間において、粘土に強く吸着された状態で存在しているので、フロート0101を浮かべて固定するに際して、例えば、杭等の固定部材を水底面Bに打ち込むと、放射性物質を吸着した粘土及びシルトが水中に拡散して、放射能汚染がさらに拡大してしまう虞があるからである。
このようにして、浚渫装置0100のフロート0101を固定した後、浚渫部0110の浚渫籠0112を操作棒0111とともに降下させて、浚渫籠0112を閉鎖性水域の水底面Bに着底させるのに続いて、「順ルート浚渫ステップ」(S0201)を実行する。
この「順ルート浚渫ステップ」(S0201)では、浚渫部0110の浚渫籠0112をベース0120及び操作棒0111を介してフロート0101のレール0103,0103に沿って移動させながら(図1に二点鎖線で示す状態から実線で示す状態を経て移動させながら)、フロート0101の水窓0102の略端部(水窓0102にほぼ対応する水底面Bの略端部)に至るまでの順ルートRf1における泥等の浚渫を行う。
すなわち、この「順ルート浚渫ステップ」(S0201)において、浚渫部の浚渫籠は、図3(a)に実線で示すように、水底面Bの上り坂の低位置から移動を開始し、破線で示す順ルートRf1を上る方向(図示矢印方向)へ移動しつつ泥等の浚渫を行う。
この際、浚渫部の浚渫籠0312は、ベースの脚の各下端に配置した車輪によって、レールに沿って移動するようにしているので、スクリューのような動力を用いて浚渫籠0312を移動させる場合と比較して、水底面Bの放射性物質を吸着した粘土及びシルトの巻き上げが少なく抑えられることとなる。
次に、浚渫部の浚渫籠0312が水底面Bの順ルートRf1の略端部(上り坂の高位置)に到達した時点で、「第一引上げステップ」(S0202)を実行する。
すなわち、この「第一引上げステップ」(S0202)において、図3(a)に一点鎖線で示すように、水底面Bの上り坂の高位置にまで至った順ルートRf1上の浚渫籠0312を操作棒0311とともに矢印方向に移動させて、浚渫籠0312を水底面Bから引き上げる。
次いで、浚渫部の浚渫籠0312を水底面Bから所定距離だけ離間させた後、「第一ルート移動ステップ」(S0203)を実行する。
すなわち、この「第一ルート移動ステップ」(S0203)において、順ルートRf1上の図3(b)に一点鎖線で示す浚渫部の浚渫籠0312を矢印方向に移動させて、図3(b)に二点鎖線で示すように、順ルートRf1に隣接する追加ルートである細線で示す追加順ルートRf2上に位置させる。この際、追加順ルートRf2の浚渫開始位置は、順ルートRf1の浚渫開始位置と同じく水底面Bの上り坂の低位置である。
このように浚渫部の浚渫籠0312を追加順ルートRf2上に移動させた後、「第一引下しステップ」(S0204)を実行する。
すなわち、この「第一引下しステップ」(S0204)において、追加順ルートRf2上に移動した図3(b)に二点鎖線で示す浚渫部の浚渫籠0312を操作棒0311とともに矢印方向に移動させて、水底面Bの追加順ルートRf2上に下ろす。
次いで、浚渫部の浚渫籠0312を水底面Bの追加順ルートRf2に着底させるのに続いて、「追加ルート浚渫ステップ」(S0205)を実行する。
すなわち、この「追加ルート浚渫ステップ」(S0205)において、図3(c)に示すように、水底面Bの追加順ルートRf2上に着底した浚渫部の浚渫籠0312をベース及び操作棒0311を介して矢印方向に移動させながら、フロートの水窓にほぼ対応する水底面Bの略端部(上り坂の高位置)に至るまでの追加順ルートRf2における泥等の浚渫を行う。
この際も、順ルートRf1の浚渫と同様に、ベースの脚の各下端に配置した車輪によって、浚渫部の浚渫籠0312をレールに沿って移動させるようにしているので、スクリューのような動力を用いていない分だけ、水底面Bの放射性物質を吸着した粘土及びシルトの巻き上げが少なく抑えられることとなる。
なお、「追加ルート浚渫ステップ」(S0205)では、「重複浚渫サブステップ」(S0225)が併せて実行される。
すなわち、この「重複浚渫サブステップ」(S0225)において、図3(c)に示すように、「順ルート浚渫ステップ」(S0201)により浚渫を行う帯状浚渫領域である順ルートRf1と、「追加ルート浚渫ステップ」(S0205)により浚渫を行う帯状浚渫領域である追加順ルートRf2との各側縁部(浚渫方向に対して左右の側部)同士が重複する重複領域Wが形成されるように浚渫を行う。
本実施形態の浚渫方法では、「順ルート浚渫ステップ」(S0201)及び「追加ルート浚渫ステップ」(S0205)の各ステップの実行により、池等の閉鎖性水域における水底面の浚渫を効率よく行い得ることとなる。
加えて、「順ルート浚渫ステップ」(S0201)から「追加ルート浚渫ステップ」(S0205)への移行に際して、浚渫部の浚渫籠を一旦引上げて水底面から離間させたうえで、順ルートRf1から追加ルートである追加順ルートRf2への移動を行うようにしているので、浚渫籠を水底面に接触させることなく移動させ得ることとなり、水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げることを回避できる。
また、本実施形態の浚渫方法では、「順ルート浚渫ステップ」(S0201)における順ルートRf1の浚渫及び「追加ルート浚渫ステップ」(S0205)における追加順ルートRf2の浚渫がいずれも水底面の上り坂を上る方向に浚渫籠を移動させることで行われるようにしているので、一旦浚った泥土の浚渫籠からの零れ落ちを阻止し得ることとなる。
さらに、本実施形態の浚渫方法では、「順ルート浚渫ステップ」(S0201)における順ルートRf1と、「追加ルート浚渫ステップ」(S0205)における追加順ルートRf2との各側縁部同士を重複させることで、重複領域Wが形成されるようにしているので、浚渫部の浚渫籠の側部付近における浚渫漏れを防ぎ得ることとなる。
なお、本実施形態の浚渫方法における「順ルート浚渫ステップ」(S0201)と、「第一引上げステップ」(S0202)と、「第一ルート移動ステップ」(S0203)と、「第一引下しステップ」(S0204)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S0205)を繰り返し行って、フロートの水窓下に位置する池等の閉鎖性水域における水底面B全体の浚渫を行うようにしてもよい(実施形態2,3において詳細に説明する)。
<効果>
本実施形態の浚渫方法を実施することにより、池等の閉鎖性水域における水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることなく浚い取ることが可能である。
また、本実施形態の浚渫方法では、順ルート浚渫ステップにおける順ルートの浚渫及び追加ルート浚渫ステップにおける追加順ルートの浚渫がいずれも水底面の上り坂を上る方向に浚渫籠を移動させることで行われるようにしているので、起伏のある水底面を浚渫する場合において、一旦浚った泥土が浚渫籠から零れ落ちることを回避できるという効果を奏する。
さらに、本実施形態の浚渫方法では、順ルート浚渫ステップによる順ルートと、追加ルート浚渫ステップによる追加順ルートとの各側縁部同士を重複させることで、重複領域が形成されるようにしているので、浚渫部の浚渫籠の側部付近における浚渫漏れを防ぐことができるという効果を奏する。
<実施形態2>(新たに追加した上り坂の実施形態です)
<概要>
本実施形態の浚渫方法は、実施形態1の追加ルート浚渫ステップに引き続いて、再度、浚渫籠を引き上げつつ浚渫籠を追加の順ルートに隣接する順ルート(先の順ルートとは異なる順ルート)に移動させることを特徴としている。
また、本実施形態の浚渫方法は、本実施形態1と同様に、順ルート及び追加ルートにおいて、浚渫籠の水平方向への移動が互いに同じ方向の移動であり、さらに、この浚渫籠の移動が水底面の上り坂を上る方向の移動であることを特徴としている。
このように、本実施形態の浚渫方法では、実施形態1の浚渫方法による処理で浚渫した第一エリアの追加の順ルートから、この第一エリアに隣接する第二エリアの順ルートへ浚渫籠を移動させる際に、浚渫籠を再度引き上げるようにしているので、浚渫籠が水底面を擦ることがなくなって、水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げることを回避できるという効果を奏する。
加えて、本実施形態の浚渫方法も、順ルート及び追加ルートにおいて、いずれも浚渫籠を水底面の上り坂を上る方向に移動させて浚渫することで、一旦浚った泥土が浚渫籠から零れ落ちることを回避できるという効果を奏する。
<構成>
本実施形態に係る浚渫方法に用いる浚渫装置の構成は、実施形態1の浚渫方法に用いる浚渫装置0100と同じなので、説明を省略する。
<処理の流れ>
図4は実施形態2における浚渫方法の処理の流れの一例を示す図である。本実施形態の浚渫方法は、「順ルート浚渫ステップ」(S0401)と、「第一引上げステップ」(S0402)と、「第一ルート移動ステップ」(S0403)と、「第一引下しステップ」(S0404)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S0405)と、「第二引上げステップ」(S0412)と、「第二ルート移動ステップ」(S0413)と、「第二引下しステップ」(S0414)と、からなる。S0401からS0405までの各ステップは、実施形態1において説明したものと同様であるので、以下ではこれまでに説明していない第二引上げステップ以降の各ステップについて説明する。
図5は、図4の処理フローに対応する浚渫籠の動き(軌跡)を示しており、図5における符号T501~T505は、「順ルート浚渫ステップ」(S0401)から「追加ルート浚渫ステップ」(S0405)までの各ステップに対応した浚渫籠の軌跡である。
浚渫部の浚渫籠が、軌跡T501~T505を経て水底面Bにおける第一エリアA51(図5における二点鎖線の間の領域)の追加ルートである追加順ルートRf2の略端部に到達した時点で、「第二引上げステップ」(S0412)を実行する。
すなわち、この「第二引上げステップ」(S0412)において、水底面Bの上り坂の高位置(フロートの水窓の略端部)にまで至った追加順ルートRf2上の浚渫籠を矢印方向に移動させて、浚渫籠を水底面Bから引き上げる(軌跡T512)。
次いで、浚渫部の浚渫籠を水底面Bから所定距離だけ離間させた後、第二ルート移動ステップ」(S0413)を実行する。
すなわち、この「第二ルート移動ステップ」(S0413)において、浚渫部の浚渫籠を矢印方向に移動させて、第一エリアA51の図示右側に隣接する第二エリアA52の順ルートRf3上に位置させる(軌跡T513)。この際、第二エリアA52の順ルートRf3の浚渫開始位置も、順ルートRf1,追加順ルートRf2の各浚渫開始位置と同じく水底面Bの上り坂の低位置である。
このようにして浚渫部の浚渫籠を第二エリアA52の順ルートRf3上に移動させた後、「第二引下しステップ」(S0414)を実行する。
すなわち、この「第二引下しステップ」(S0414)において、第二エリアA52の順ルートRf3上に移動した浚渫部の浚渫籠を矢印方向に移動させて、水底面Bにおける第二エリアA52の順ルートRf3上に下ろす(軌跡T514)。
本実施形態の浚渫方法にあっても、実施形態1の浚渫方法と同様に、ベースの脚の各下端に配置した車輪によって、浚渫部の浚渫籠をレールに沿って移動させるようにしているので、スクリューのような動力を用いていない分だけ、水底面Bの放射性物質を吸着した粘土及びシルトの巻き上げが少なく抑えられ、順ルート浚渫ステップ及び追加ルート浚渫ステップの各ステップの実行により、池等の閉鎖性水域における水底面の浚渫を効率よく行い得ることとなる。
加えて、第一エリアA51の追加順ルートRf2から第二エリアA52の順ルートRf3への浚渫部の移動に際して、浚渫部の浚渫籠を一旦引上げて水底面Bから離間させるようにしているので、浚渫籠を水底面Bに接触させることなく、移動させ得ることとなり、水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げることを回避できる。
また、本実施形態の浚渫方法においても、第一エリアA51の浚渫に続いて行う第二エリアA52の順ルートRf3の浚渫開始位置を、順ルートRf1,追加順ルートRf2の各浚渫開始位置と同じく水底面Bの上り坂の低位置としているので、一旦浚った泥土の浚渫籠からの零れ落ちを阻止し得ることとなる。
なお、本実施形態の浚渫方法における「第二引下しステップ」(S0414)による浚渫籠の水底面Bへの着底に続いて、「順ルート浚渫ステップ」(S0401)と、「第一引上げステップ」(S0402)と、「第一ルート移動ステップ」(S0403)と、「第一引下しステップ」(S0404)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S0405)と、「第二引上げステップ」(S0412)と、「第二ルート移動ステップ」(S0413)と、「第二引下しステップ」(S0414)を繰り返し行って、フロートの水窓下に位置する池等の閉鎖性水域における水底面B全体の浚渫を行うようにしてもよい(実施形態3において詳細に説明する)。
<効果>
本実施形態の浚渫方法を実施することにより、池等の閉鎖性水域における水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることなく浚い取ることが可能である。
また、本実施形態の浚渫方法においても、順ルート浚渫ステップにおける順ルートの浚渫及び追加ルート浚渫ステップにおける追加順ルートに続く浚渫が、いずれも水底面の上り坂を上る方向に浚渫籠を移動させることで行われるようにしているので、起伏のある水底面を浚渫する場合において、一旦浚った泥土が浚渫籠から零れ落ちることを回避できるという効果を奏する。
<実施形態3>
<概要>
本実施形態の浚渫方法は、実施形態1の浚渫方法の処理及び実施形態2の浚渫方法の処理を繰り返し行うことを特徴としている。
このように、本実施形態の浚渫方法では、実施形態1の浚渫方法の処理及び実施形態2の浚渫方法の処理を繰り返し行うようにしているので、池等の閉鎖性水域におけるフロートの水窓に略対応する水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることなく、まんべんなく浚渫することができるという効果を奏する。
加えて、本実施形態の浚渫方法も、水底面の上り坂を上る方向に浚渫籠を移動させる浚渫作業を繰り返し行うようにすることで、一旦浚った泥土が浚渫籠から零れ落ちることを回避しつつまんべんなく浚渫することができという効果を奏する。
<構成>
本実施形態に係る浚渫方法に用いる浚渫装置の構成も、実施形態1の浚渫方法に用いる浚渫装置0100と同じなので、説明を省略する。
<処理の流れ>
図6は実施形態3における浚渫方法の処理の流れの一例を示す図である。本実施形態の浚渫方法は、「順ルート浚渫ステップ」(S0601)と、「第一引上げステップ」(S0602)と、「第一ルート移動ステップ」(S0603)と、「第一引下しステップ」(S0604)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S0605)と、「第二引上げステップ」(S0612)と、「第二ルート移動ステップ」(S0613)と、「第二引下しステップ」(S0614)と、「順ルート浚渫ステップ」(S0601)から「第二引下しステップ」(S0614)までの各ステップを繰り返す「繰返ステップ」(S0615)とからなる。S0601からS0614までの各ステップは、実施形態1及び実施形態2において説明したものと同様であるので、以下ではこれまでに説明していない繰返ステップについて説明する。
「繰返ステップ」(S0615)において、「順ルート浚渫ステップ」(S0601)から「第二引下しステップ」(S0614)までの各ステップを繰り返すことによって、池等の閉鎖性水域におけるフロートの水窓に略対応する水底面Bに堆積した放射性物質で汚染された泥土をまんべんなく浚渫する。
図7は、図6の処理フローに対応する浚渫籠の動き(軌跡)を示しており、図7における符号T701~T714は、「順ルート浚渫ステップ」(S0601)から「第二引下しステップ」(S0614)までの各ステップに対応した浚渫籠の軌跡である。
図7に示すように、「順ルート浚渫ステップ」(S0601)から「第二引下しステップ」(S0614)までの1回目の各処理では、水底面Bの第一エリアA71の浚渫がなされる。そして、繰返ステップによって、順ルート浚渫ステップ」(S0601)から「第二引下しステップ」(S0614)までの各処理をさらに2回繰り返すことにより(第一エリア761に隣接する第二エリアA72の浚渫及び第二エリアA72に隣接する第三エリアA73の浚渫を行うことにより)、水底面Bの第一エリアA71~第三エリアA73の全体をまんべんなく浚渫することが可能となる。
なお、図7に示す例では、3回目の第三エリアA73の浚渫において、順ルート浚渫ステップによる浚渫(順ルートRf5の浚渫)のみを行っている。また、池等の水面に障害物(岩等)が存在する場合には、その部分を避けて順ルート浚渫ステップと追加ルート浚渫ステップが行われる。
上記第一エリアA71~第三エリアA73の浚渫において、浚渫部の浚渫籠の側部付近では、一度の浚渫で泥等を十分に浚い取ることができない場合があるので、繰り返し行う順ルートRf1~Rf5は、各々の一部を重ねることが好ましい。すなわち、順ルートRf1~Rf5の各側部を隣接する順ルートRfの側部に重ねることが好ましい。
<効果>
本実施形態の浚渫方法では、池等の閉鎖性水域におけるフロートの水窓に略対応する水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることなく、まんべんなく浚渫することが可能となる。
また、本実施形態の浚渫方法においても、順ルート浚渫ステップにおける順ルートの浚渫及び追加ルート浚渫ステップにおける追加順ルートに続く浚渫が、いずれも水底面の上り坂を上る方向に浚渫籠を移動させることで行われるようにしているので、起伏のある水底面を浚渫する場合において、一旦浚った泥土が浚渫籠から零れ落ちることを回避できるという効果を奏する。
<実施形態4>
<概要>
本実施形態も、池等の閉鎖性水域において、フロート上に渡されたレール間に設けられる水窓から水底面に渡した泥等吸引機能を有する浚渫籠によって、水底面の放射性物質で汚染された泥等を浚い取る浚渫方法に関する。
とくに、順ルート浚渫ステップの順ルートにおける浚渫籠の水平方向移動と、追加ルート浚渫ステップの追加ルートにおける浚渫籠の水平方向移動とが逆の方向の移動である場合において、順ルート及び追加ルートに沿って順次浚渫する浚渫籠の前後方向の交代及び順ルートから追加ルートへの移動に際して、浚渫籠を一旦引き上げることを特徴としている。
このように、浚渫籠を一旦引き上げることで、浚渫籠の方向転換時及び浚渫方向とは異なる方向(横切る方向)への移動時において、浚渫籠が水底面を擦ることがなくなるので、水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げることを回避できるという効果を奏する。
<構成>
本実施形態に係る浚渫方法に用いる浚渫装置の構成は、実施形態1の浚渫方法に用いる浚渫装置0100と同じなので、説明を省略する。
<処理の流れ>
図8は実施形態4における浚渫方法の処理の流れの一例を示す図である。本実施形態の浚渫方法は、「順ルート浚渫ステップ」(S0801)と、「第一引上げステップ」(S0802)と、「第一前後方向交代ステップ」(S0803)と、「第一ルート移動ステップ」(S0804)と、「第一引下しステップ」(S0805)と、「重複浚渫サブステップ」(S0825)を含む「追加ルート浚渫ステップ」(S0806)からなる。以下、各ステップにおいて詳細に説明する。
実施形態1における浚渫方法と同様にして、浚渫装置のフロートを固定した後、浚渫部の浚渫籠を操作棒とともに降下させて、浚渫籠を閉鎖性水域の水底面Bに着底させるのに続いて、「順ルート浚渫ステップ」(S0801)を実行する。
すなわち、この「順ルート浚渫ステップ」(S0801)において、浚渫部の浚渫籠をベース及び操作棒を介してフロートのレールに沿って移動させながら、フロートの水窓の略端部(水窓にほぼ対応する水底面Bの略端部)に至るまでの順ルートにおける泥等の浚渫を行う。
この際、浚渫部の浚渫籠は、ベースの脚の各下端に配置した車輪によって、レールに沿って移動するようにしているので、スクリューのような動力を用いて浚渫籠を移動させる場合と比較して、水底面Bの放射性物質を吸着した粘土及びシルトの巻き上げが少なく抑えられることとなる。
次に、浚渫部の浚渫籠が水底面Bの略端部に到達した時点で、「第一引上げステップ」(S0802)を実行する。
すなわち、この「第一引上げステップ」(S0802)において、図9(a)に示すように、フロートの水窓の略端部(水底面Bの略端部)にまで至った順ルートRf上の浚渫籠0912を操作棒0911とともに矢印方向に移動させて、浚渫籠0912を水底面Bから引き上げる。
次いで、浚渫部の浚渫籠0912を水底面Bから所定距離だけ離間させた後、「第一前後方向交代ステップ」(S0803)を実行する。
すなわち、この「第一前後方向交代ステップ」(S0803)において、図9(b)に示すように、水底面Bから所定距離だけ引き上げた状態の浚渫籠0912を操作棒0911とともに矢印方向(又は反矢印方向)に180°回転させて、前後方向を交代する。
そして、このようにして浚渫部の浚渫籠0912の前後方向を代えた後、「第一ルート移動ステップ」(S0804)を実行する。
すなわち、この「第一ルート移動ステップ」(S0804)において、図9(c)に示すように、浚渫部の浚渫籠0912を操作棒0911とともに矢印方向に移動させて、順ルートRfに隣接する追加ルートである逆ルートRr上に位置させる。
次に、浚渫部の浚渫籠0912を逆ルートRr上に移動させた後、「第一引下しステップ」(S0805)を実行する。
すなわち、この「第一引下しステップ」(S0805)において、図9(d)に示すように、逆ルートRr上に移動した浚渫部の浚渫籠0912を操作棒0911とともに矢印方向に移動させて、水底面Bの逆ルートRr上に下ろす。
次いで、浚渫部の浚渫籠0912を水底面Bに着底させるのに続いて、「追加ルート浚渫ステップ」(S0806)を実行する。
すなわち、この「追加ルート浚渫ステップ」(S0806)において、図9(e)に示すように、水底面Bの逆ルートRr上に着底した浚渫部の浚渫籠0912をベース及び操作棒0911を介して矢印方向に移動させながら、図9(f)に示すように、フロートの水窓にほぼ対応する水底面Bの略端部に至るまでの逆ルートRrにおける泥等の浚渫を行う。
この際も、順ルートRfの浚渫と同様に、ベースの脚の各下端に配置した車輪によって、浚渫部の浚渫籠0912をレールに沿って移動させるようにしているので、スクリューのような動力を用いていない分だけ、水底面Bの放射性物質を吸着した粘土及びシルトの巻き上げが少なく抑えられることとなる。
なお、「追加ルート浚渫ステップ」(S0806)では、「重複浚渫サブステップ」(S0825)が併せて実行される。
すなわち、この「重複浚渫サブステップ」(S0825)において、図9(e),(f)に示すように、「順ルート浚渫ステップ」(S0801)により浚渫を行う帯状浚渫領域である順ルートRfと、「追加ルート浚渫ステップ」(S0806)により浚渫を行う帯状浚渫領域である逆ルートRrとの各側縁部(浚渫方向に対して左右の側部)同士が重複する重複領域Wが形成されるように浚渫を行う。
本実施形態の浚渫方法では、順ルート浚渫ステップ及び追加ルート浚渫ステップの各ステップの実行により、池等の閉鎖性水域における水底面の浚渫を効率よく行い得ることとなる。
加えて、順ルート浚渫ステップから追加ルート浚渫ステップへの移行に際して、浚渫部の浚渫籠を一旦引上げて水底面から離間させたうえで、浚渫籠の前後方向の交代及び順ルートから追加ルートである逆ルートへの移動を行うようにしているので、浚渫籠を水底面に接触させることなく、方向転換及び移動を行い得ることとなり、水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げることを回避できる。
また、本実施形態の浚渫方法では、「順ルート浚渫ステップ」(S0801)における順ルートRfと、「追加ルート浚渫ステップ」(S0806)における追加ルートである逆ルートRrとの各側縁部同士を重複させることで、重複領域Wが形成されるようにしているので、浚渫部の浚渫籠の側部付近における浚渫漏れを防ぎ得ることとなる。
なお、本実施形態の浚渫方法における「順ルート浚渫ステップ」(S0801)と、「第一引上げステップ」(S0802)と、「第一前後方向交代ステップ」(S0803)と、「第一ルート移動ステップ」(S0804)と、「第一引下しステップ」(S0805)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S0806)を繰り返し行って、フロートの水窓下に位置する池等の閉鎖性水域における水底面B全体の浚渫を行うようにしてもよい(実施形態5,6において詳細に説明する)。
また、「第一前後方向交代ステップ」(S0803)及び「第一ルート移動ステップ」(S0804)は、相互に順序を変更して実行してもよい。
<効果>
本実施形態の浚渫方法を実施することにより、池等の閉鎖性水域における水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることなく浚い取ることが可能である。
また、本実施形態の浚渫方法では、順ルート浚渫ステップによる順ルートと、追加ルート浚渫ステップによるに追加ルートである逆ルートとの各側縁部同士を重複させることで、重複領域が形成されるようにしているので、浚渫部の浚渫籠の側部付近における浚渫漏れを防ぐことができるという効果を奏する。
<実施形態5>
<概要>
本実施形態の浚渫方法は、実施形態4の追加ルート浚渫ステップに引き続いて、再度、浚渫籠を引き上げつつ、浚渫籠の前後方向を交代すると共に、浚渫籠を逆ルートに隣接する順ルート(先の順ルートとは異なる順ルート)に移動させることを特徴としている。
このように、本実施形態の浚渫方法では、実施形態4の浚渫方法による処理で浚渫した第一エリアの逆ルートから、この第一エリアに隣接する第二エリアの順ルートへ浚渫籠を移動させる際に、浚渫籠を再度引き上げるようにしているので、浚渫籠が水底面を擦ることがなくなって、水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げることを回避できるという効果を奏する。
<構成>
本実施形態に係る浚渫方法に用いる浚渫装置の構成は、実施形態1の浚渫方法に用いる浚渫装置0100と同じなので、説明を省略する。
<処理の流れ>
図10は実施形態5における浚渫方法の処理の流れの一例を示す図である。本実施形態の浚渫方法は、「順ルート浚渫ステップ」(S1001)と、「第一引上げステップ」(S1002)と、「第一前後方向交代ステップ」(S1003)と、「第一ルート移動ステップ」(S1004)と、「第一引下しステップ」(S1005)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S1006)と、「第二引上げステップ」(S1012)と、「第二前後方向交代ステップ」(S1013)と、「第二ルート移動ステップ」(S1014)と、「第二引下しステップ」(S1015)と、からなる。S1001からS1006までの各ステップは、実施形態4において説明したものと同様であるので、以下ではこれまでに説明していない第二引上げステップ以降の各ステップについて説明する。
図11は、図10の処理フローに対応する浚渫籠の動き(軌跡)を示しており、図11における符号T1~T6は、「順ルート浚渫ステップ」(S1001)から「追加ルート浚渫ステップ」(S1006)までの各ステップに対応した浚渫籠の軌跡である。
浚渫部の浚渫籠が、軌跡T1~T6を経て水底面Bにおける第一エリアA111(図11における二点鎖線の間の領域)の追加ルートである逆ルートRrの略端部に到達した時点で、「第二引上げステップ」(S1012)を実行する。
すなわち、この「第二引上げステップ」(S1012)において、フロートの水窓の略端部(水底面Bの略端部)にまで至った逆ルートRr上の浚渫籠を矢印方向に移動させて、浚渫籠を水底面Bから引き上げる(軌跡T12)。
次いで、浚渫部の浚渫籠を水底面Bから所定距離だけ離間させた後、「第二前後方向交代ステップ」(S1013)を実行する。
すなわち、この「第一前後方向交代ステップ」(S1013)において、水底面Bから所定距離だけ引き上げた状態の浚渫籠を矢印方向(又は反矢印方向)に180°回転させて、前後方向を交代する(軌跡T13)。
そして、このようにして浚渫部の浚渫籠の前後方向を代えた後、「第二ルート移動ステップ」(S1014)を実行する。
すなわち、この「第二ルート移動ステップ」(S1014)において、浚渫部の浚渫籠を矢印方向に移動させて、第一エリアA111の図示左側に隣接する第二エリアA112の順ルートRf上に位置させる(軌跡T14)。
このようにして浚渫部の浚渫籠を順ルートRf上に移動させた後、「第二引下しステップ」(S1015)を実行する。
すなわち、この「第二引下しステップ」(S1015)において、順ルートRf上に移動した浚渫部の浚渫籠を矢印方向に移動させて、水底面Bにおける第二エリアA112の順ルートRf上に下ろす(軌跡T15)。
本実施形態の浚渫方法にあっても、実施形態4の浚渫方法と同様に、ベースの脚の各下端に配置した車輪によって、浚渫部の浚渫籠をレールに沿って移動させるようにしているので、スクリューのような動力を用いていない分だけ、水底面Bの放射性物質を吸着した粘土及びシルトの巻き上げが少なく抑えられ、順ルート浚渫ステップ及び追加ルート浚渫ステップの各ステップの実行により、池等の閉鎖性水域における水底面の浚渫を効率よく行い得ることとなる。
加えて、第一エリアA111の逆ルートRrから第二エリアA112の順ルートRfへの浚渫部の移動に際して、浚渫部の浚渫籠を一旦引上げて水底面Bから離間させるようにしているので、浚渫籠を水底面Bに接触させることなく、方向転換及び移動を行い得ることとなり、水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げることを回避できる。
なお、本実施形態の浚渫方法における「第二引下しステップ」(S1015)による浚渫籠の水底面Bへの着底に続いて、「順ルート浚渫ステップ」(S1001)と、「第一引上げステップ」(S1002)と、「第一前後方向交代ステップ」(S1003)と、「第一ルート移動ステップ」(S1004)と、「第一引下しステップ」(S1005)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S1006)と、「第二引上げステップ」(S1012)と、「第二前後方向交代ステップ」(S1013)と、「第二ルート移動ステップ」(S1014)と、「第二引下しステップ」(S1015)を繰り返し行って、フロートの水窓下に位置する池等の閉鎖性水域における水底面B全体の浚渫を行うようにしてもよい(実施形態6において詳細に説明する)。
また、「第一前後方向交代ステップ」(S1003)及び「第一ルート移動ステップ」(S1004)は、相互に順序を変更して実行してもよく、さらに、「第二前後方向交代ステップ」(S1013)及び「第二ルート移動ステップ」(S1014)も、相互に順序を変更して実行してもよい。
<効果>
本実施形態の浚渫方法を実施することにより、池等の閉鎖性水域における水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることなく浚い取ることが可能である。
<実施形態6>
<概要>
本実施形態の浚渫方法は、実施形態4の浚渫方法の処理及び実施形態5の浚渫方法の処理を繰り返し行うことを特徴としている。
このように、本実施形態の浚渫方法では、実施形態4の浚渫方法の処理及び実施形態5の浚渫方法の処理を繰り返し行うようにしているので、池等の閉鎖性水域におけるフロートの水窓に略対応する水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることなく、まんべんなく浚渫することができるという効果を奏する。
<構成>
本実施形態に係る浚渫方法に用いる浚渫装置の構成も、実施形態1の浚渫方法に用いる浚渫装置0100と同じなので、説明を省略する。
<処理の流れ>
図12は実施形態6における浚渫方法の処理の流れの一例を示す図である。本実施形態の浚渫方法は、「順ルート浚渫ステップ」(S1201)と、「第一引上げステップ」(S1202)と、「第一前後方向交代ステップ」(S1203)と、「第一ルート移動ステップ」(S1204)と、「第一引下しステップ」(S1205)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S1206)と、「第二引上げステップ」(S1212)と、「第二前後方向交代ステップ」(S1213)と、「第二ルート移動ステップ」(S1214)と、「第二引下しステップ」(S1215)と、「順ルート浚渫ステップ」(S1201)から「第二引下しステップ」(S1215)までの各ステップを繰り返す「繰返ステップ」(S1216)とからなる。S1201からS1215までの各ステップは、実施形態4及び実施形態5において説明したものと同様であるので、以下ではこれまでに説明していない繰返ステップについて説明する。
「繰返ステップ」(S1216)において、「順ルート浚渫ステップ」(S1201)から「第二引下しステップ」(S1215)までの各ステップを繰り返すことによって、池等の閉鎖性水域におけるフロートの水窓に略対応する水底面Bに堆積した放射性物質で汚染された泥土をまんべんなく浚渫する。
図13は、図12の処理フローに対応する浚渫籠の動き(軌跡)を示しており、図13における符号T1~T16は、「順ルート浚渫ステップ」(S1201)から「繰返ステップ」(S1216)までの各ステップに対応した浚渫籠の軌跡である。
図12に示すように、「順ルート浚渫ステップ」(S1201)から「第二引下しステップ」(S1215)までの1回目の各処理では、水底面Bの第一エリアA131の浚渫がなされる。そして、繰返ステップによって、順ルート浚渫ステップ」(S1201)から「第二引下しステップ」(S1215)までの各処理をさらに2回繰り返すことにより(第一エリアA131の図示左側に隣接する第二エリアA132の浚渫及び第二エリアA132に隣接する第三エリアA133の浚渫を行うことにより)、水底面Bの第一エリアA131~第三エリアA133の全体をまんべんなく浚渫することが可能となる。
この際、第一エリアA131~第三エリアA133において、浚渫部の浚渫籠の側部付近では、一度の浚渫で泥等を十分に浚い取ることができない場合があるので、互いに隣接する順ルートRf及び逆ルートRrは、各々の一部を重ねることが好ましい。すなわち、順ルートRfの側部を隣接する逆ルートRrの側部に重ねることが好ましい。
なお、順ルート浚渫ステップにて水底面B全体の浚渫が完了した場合には、追加ルート浚渫ステップを行わずに浚渫を完了してもよい。図13に示す例において、4度目の繰り返し浚渫では順ルート浚渫ステップによる浚渫のみを行っている。また、池等の水面に障害物(岩等)が存在する場合には、その部分を避けて順ルート浚渫ステップと追加ルート浚渫ステップが行われる。
<効果>
本実施形態の浚渫方法では、池等の閉鎖性水域におけるフロートの水窓に略対応する水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることなく、まんべんなく浚渫することが可能となる。
<実施形態7>
<概要>
本実施形態の浚渫方法は、基本的には実施形態3,6と同様であるが、繰返ステップによってフロートの水窓に略対応する水底面の泥等の浚渫が完了した後に、浚渫が完了した浚渫完了水底面に隣接する水底面の浚渫が可能な位置にフロートを移動させることを特徴としている。
このように、本実施形態の浚渫方法では、面積が大きい池等の閉鎖性水域であったとしても、この閉鎖性水域の底全体を浚渫することが可能となるという効果を奏する。
<構成>
本実施形態に係る浚渫方法に用いる浚渫装置の構成も、実施形態1の浚渫方法に用いる浚渫装置0100と同じなので、説明を省略する。
<処理の流れ>
図14は実施形態7の浚渫方法の処理の流れの一例を示す図である。本実施形態の浚渫方法は、「順ルート浚渫ステップ」(S1401)と、「第一引上げステップ」(S1402)と、「第一前後方向交代ステップ」(S1403)と、「第一ルート移動ステップ」(S1404)と、「第一引下しステップ」(S1405)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S1406)と、「第二引上げステップ」(S1412)と、「第二前後方向交代ステップ」(S1413)と、「第二ルート移動ステップ」(S1414)と、「第二引下しステップ」(S1415)と、「繰返ステップ」(S1416)と、「フロート移動ステップ」(S1417)からなる。S1401からS1416までの各ステップは、実施形態6において説明したものと同様であるので、以下ではこれまでに説明していないフロート移動ステップについて説明する。
「フロート移動ステップ」(S1417)では、「繰返ステップ」(S1416)によってフロートの水窓に略対応する水底面の泥等の浚渫が完了した後において、固定を解除したフロートを浚渫が完了した浚渫完了水底面に隣接する水底面の浚渫が可能な位置に移動させる。
この「フロート移動ステップ」(S1417)において重要な点は、フロートを移動させるに際して、池等の水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を水中に巻き上げないようにする点である。そこで、フロートを移動させるには、例えば、フロートに架け渡したロープを用いて移動させることが好ましい。
図15は、フロート移動ステップの一例を示す概要図である。なお、説明しやすいように、浚渫装置の水窓1502及び水底BT以外の構成要素については図示していない。
まず、図15における(A)の位置の水窓1502に略対応する水底面の泥等の浚渫が完了した後に、フロート移動ステップにより、浚渫が完了した浚渫完了水底面に隣接する水底面の浚渫が可能な位置に水窓1502が配置されるように、例えば、水窓1502が図15における(B)の位置に配置されるようにフロートを移動させて再度浚渫を行う。
次いで、図15における(B)の位置の水窓1502に略対応する水底面の泥等の浚渫が完了した後に、再度、フロート移動ステップにより、浚渫が完了した浚渫完了水底面に隣接する水底面の浚渫が可能な位置(図15における(C)の位置)に水窓1502が配置されるようにフロートを移動させて再度浚渫を行う。
さらに、図15における(C)の位置の水窓1502に略対応する水底面の泥等の浚渫が完了した後に、再度、フロート移動ステップにより、浚渫がすでに完了している(A)の位置における浚渫完了水底面の図示上側に隣接する水底面の浚渫が可能な位置(図15における(D)の位置)に水窓1502が配置されるようにフロートを移動させて再度浚渫を行い、これらの工程を繰り返し行うことにより、面積が大きい池等の閉鎖性水域であったとしても、この閉鎖性水域の底全体に蓄積した放射性物質を浚渫することが可能となる。
この際、図15の(A)~(D)の各位置において、水窓1502の一部が隣接する位置に重なるようにして浚渫を行うことが好ましい。例えば、(A)の位置において水窓1502下の浚渫が完了した後に、(B)の位置(或いは(D)の位置)にて浚渫を行う際に、既に(A)の位置において水窓1502下の浚渫が完了した領域の一部について、再度(B)の位置(或いは(D)の位置)でも浚渫を行うことが好ましい。このようにすることで、実施形態6においても説明したように、浚渫籠の側部付近の浚渫漏れを防ぐことができる。
<効果>
本実施形態の浚渫方法では、面積が大きい池等の閉鎖性水域であったとしても、底に蓄積した放射性物質を巻き上げることなく、この閉鎖性水域の底全体を浚渫することが可能となる。
<実施形態8>
<概要>
本実施形態の浚渫方法は、基本的には実施形態4と同様であるが、第一引上げステップと第一引下しステップとの間において、浚渫籠内に引っかかったり滞留したりする滞留物を引き上げた状態の浚渫籠から除去することを特徴としている。
このように、本実施形態の浚渫方法では、浚渫籠内に滞留物が引っかかったり滞留したりしても、第一引上げステップから第一引下しステップに至るまでの間に、引き上げた状態の浚渫籠から滞留物を除去するようにしているので、浚渫籠内を空にして浚渫を開始できる分だけ、浚渫率を常に高く維持することが可能であるという効果を奏する。
<構成>
図16に部分的に示すように、本実施形態に係る浚渫方法に用いる浚渫装置において、浚渫部の浚渫籠1612を支持する操作棒1611が、浚渫籠1612の近傍位置に配置した接続分離機構1650により、ベースの溝に挿通した本体部分1611aから浚渫籠1612が取り付けられた下端側部分1611bを分離することができるようになっている。
この操作棒1611の接続分離機構1650による分離は、操作棒1611によって浚渫籠1612を引き上げて、フロートの水窓から操作棒1611の接続分離機構1650及び浚渫籠1612を露出させた状態で、浚渫部のベース周辺で行われる。
<処理の流れ>
図17は実施形態8の浚渫方法における浚渫方法の処理の流れの一例を示す図である。本実施形態の浚渫方法は、「順ルート浚渫ステップ」(S1701)と、「第一引上げステップ」(S1702)と、「滞留物除去ステップ」(S1713)と、「第一前後方向交代ステップ」(S1703)と、「第一ルート移動ステップ」(S1704)と、「第一引下しステップ」(S1705)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S17506)と、からなる。S1713以外のS1701からS1706までの各ステップは、実施形態4において説明したものと同様であるので、以下ではこれまでに説明していない滞留物除去ステップについて説明する。
「第一引上げステップ」(S1702)を実行して、浚渫部の浚渫籠1612を水底面から所定距離だけ離間させるのに続いて、操作棒1611によって浚渫籠1612をさらに引き上げて、フロートの水窓から操作棒1611の接続分離機構1650及び浚渫籠1612を露出させた後、「滞留物除去ステップ」(S1713)を実行する。
すなわち、「滞留物除去ステップ」(S1713)において、フロートの水窓から露出している図16(a)左側に示す状態の操作棒1611の接続分離機構1650を分離操作して、図16(a)右側に示すように、操作棒1611を本体部分1611aと浚渫籠1612が取り付けられた下端側部分1611bとに分離する。これに続いて、図16(b)左側に示す状態の操作棒1611の下端側部分1611bとともに浚渫籠1612を傾けて、図16(b)右側に示すように、浚渫籠1612内に引っかかったり滞留したりする滞留物Dを除去して、別途設けた滞留物缶Kに収容する。
本実施形態の浚渫方法を実施することにより、池等の閉鎖性水域における水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることなく浚い取ることが可能であるのに加えて、浚渫籠内に滞留物が引っかかったり滞留したりした滞留物を除去して浚渫を行うので、浚渫率を常に高く維持することが可能である。
<実施形態9>
<概要>
本実施形態の浚渫方法も、基本的には実施形態4と同様であるが、第一引上げステップと第一引下しステップとの間において、浚渫籠に接続された吸上パイプのつなぎ直しをすることを特徴としている。
このように、本実施形態の浚渫方法では、浚渫籠に接続された吸上パイプ内に滞留物が滞留したりしても、第一引上げステップから第一引下しステップに至るまでの間に、引き上げた状態の浚渫籠に接続された吸上パイプから滞留物を除去するようにしているので、浚渫率を常に高く維持することが可能であるという効果を奏する。
<構成>
図18に部分的に示すように、本実施形態に係る浚渫方法に用いる浚渫装置において、浚渫部の浚渫籠1812に接続する吸上パイプ1805が、浚渫籠1812の近傍位置に配置した接続分離機構1850により、タンクに接続した本体部分1805aから浚渫籠1812が取り付けられた下端側1805bを分離することができるようになっている。
この吸上パイプ1805の接続分離機構1850による分離は、操作棒1811によって浚渫籠1812を引き上げて、フロートの水窓から吸上パイプ1805の接続分離機構1850及び浚渫籠1812を露出させた状態で、浚渫部のベース周辺で行われる。
<処理の流れ>
図19は実施形態9の浚渫方法における処理の流れの一例を示す図である。本実施形態の浚渫方法は、「順ルート浚渫ステップ」(S1901)と、「第一引上げステップ」(S1902)と、「滞留物除去ステップ」(S1913)と、「つなぎ直しステップ」(S1914)と、「第一前後方向交代ステップ」(S1903)と、「第一ルート移動ステップ」(S1904)と、「第一引下しステップ」(S1905)と、「追加ルート浚渫ステップ」(S1906)と、からなる。S1914以外のS1901からS1906までの各ステップは、実施形態8において説明したものと同様であるので、以下ではこれまでに説明していないつなぎ直しステップについて説明する。
浚渫部の浚渫籠1812を引き上げて、フロートの水窓から操作棒1811の接続分離機構及び浚渫籠1812を露出させて「滞留物除去ステップ」(S1913)を実行した後、「つなぎ直しステップ」(S1914)を実行する。
すなわち、「つなぎ直しステップ」(S1914)において、フロートの水窓から露出している図18左側に示す状態の吸上パイプ1805の接続分離機構1850を分離操作して、図18右側に示すように、吸上パイプ1805を本体部分1805aと浚渫籠1812が取り付けられた下端側部分1805bとに分離する。これに続いて、吸上パイプ1805の本体部分1805a及び下端側部分1805bの双方から流れ出る吸上パイプ1805内の滞留物を除去した後、接続分離機構1850を接続操作して、吸上パイプ1805の本体部分1805a及び下端側部分1805bをつなぎ直す。
本実施形態の浚渫方法を実施することにより、池等の閉鎖性水域における水底面に堆積した放射性物質で汚染された泥土を巻き上げることなく浚い取ることが可能であるのに加えて、吸上パイプ内に滞留した滞留物を除去して浚渫を行うので、浚渫率を常に高く維持することが可能である。
<実施形態10>
<概要>
本実施形態の浚渫方法は、基本的には実施形態1~9と同様であるが、一の水窓にて最初に浚渫籠を水底面に下ろす位置は、その水窓下の水底面で最深領域であることを特徴としている。
このように、本実施形態の浚渫方法では、水窓下の水底面における最深領域から浚渫を開始するので、水底面における高い位置から浚渫を開始する場合と比べて、浚い取った放射性物質で汚染された泥土が浚渫籠から零れ落ちる量を少なく抑えることができるという効果を奏する。
<構成>
本実施形態に係る浚渫方法に用いる浚渫装置の構成も、実施形態1の浚渫方法に用いる浚渫装置0100と同じなので、説明を省略する。
<処理の流れ>
本実施形態に係る浚渫方法では、浚渫を開始するにあたって、まず、池等の閉鎖性水域の水底面の状況を調査する。
次いで、この調査によって判明した水底面の高低状況に基づいて、設置したフロートの水窓にて最初に浚渫籠を下ろす位置を決定する。
この決定に従って、図20に示すように、操作棒2011とともに浚渫籠2012を水窓下の水底面Bにおける最深領域BLに下ろして、水底面Bの高領域BUに向けて上り斜面に沿って浚渫を開始する。
この浚渫処理において、浚渫籠2012の泥土等の取入れ口が常に水底面Bの上り斜面に向くことになるので、水底面Bの高領域BUから下り斜面に沿って浚渫を行う場合と比べて、浚い取った放射性物質で汚染された泥土が浚渫籠から零れ落ち難い。
<効果>
本実施形態の浚渫方法では、水窓下の水底面における最深領域から上り斜面に沿って浚渫を行うので、水底面の高領域から下り斜面に沿って浚渫する場合と比較して、浚い取った放射性物質で汚染された泥土が浚渫籠から零れ落ちる量を少なく抑え得ることとなり、その結果、浚渫の高効率化を実現することが可能となる。
0100 浚渫装置
0101 フロート
0102 水窓
0103 レール
0105 吸上パイプ
0110 浚渫部
0111 操作棒
0112 浚渫籠
B 水底面
RF 順ルート
Rf1 順ルート
Rr 逆ルート(追加ルート)

Claims (13)

  1. フロート上に渡されたレール間に設けられる水窓から水底面に渡した吸上パイプに接続された泥等吸引機能を有する浚渫籠を前記レールに対して水平・垂直に繰り返し移動させながら前記水窓に略対応する水底面の泥等の浚渫をする浚渫方法であって、
    前記浚渫籠をレールに対して水平方向に移動させながら前記水窓の一方の略端部に至るまで順ルートの浚渫を行う順ルート浚渫ステップと、
    前記水窓の一方の略端部にまで至った浚渫籠を水底面から引き上げる第一引上げステップと、
    第一引上げステップにて引き上げられた浚渫籠を移動後に水底面に下ろす第一引下しステップと、
    前記浚渫籠が水底面に着底後、浚渫籠をレールに対して水平方向に移動させながら前記順ルートに隣接する追加ルートの浚渫を行う追加ルート浚渫ステップと、
    からなる浚渫方法。
  2. 順ルート浚渫ステップの順ルートにおける浚渫籠の水平方向移動と、追加ルート浚渫ステップの追加ルートにおける浚渫籠の水平方向移動とは同じ方向の移動である請求項1に記載の浚渫方法。
  3. 前記同じ方向の移動とは、水底面の上り坂を上る方向の移動である請求項2に記載の浚渫方法。


  4. 前記浚渫籠をレールに対して水平方向に移動させながら前記水窓の一方の略端部に至るまで追加ルートの浚渫を行う前記追加ルート浚渫ステップの後に、
    前記水窓の一方の略端部にまで至った浚渫籠を水底面から引き上げる第二引上げステップと、
    第二引上げステップにて引き上げられた浚渫籠を移動後に水底面に下ろす第二引下しステップと、
    をさらに有する請求項2又は3に記載の浚渫方法。
  5. 順ルート浚渫ステップ、第一引上げステップと、第一引下しステップと、追加ルート浚渫ステップと、第二引上げステップと、第二引下しステップと、を繰り返す繰返ステップをさらに有する請求項4に記載の浚渫方法。
  6. 順ルート浚渫ステップの順ルートにおける浚渫籠の水平方向移動と、追加ルート浚渫ステップの追加ルートにおける浚渫籠の水平方向移動とは逆の方向の移動であり、前記第一引上げステップの後であって、前記第一引下しステップの前に、第一引上げステップにて引き上げた前記浚渫籠の前後方向を交代する第一前後方向交代ステップと、をさらに有する請求項1に記載の浚渫方法。
  7. 前記浚渫籠をレールに対して水平方向に移動させながら前記水窓の他方の略端部に至るまで逆方向の追加ルートの浚渫を行う前記追加ルート浚渫ステップの後に、
    前記水窓の他方の略端部にまで至った浚渫籠を水底面から引き上げる第二引上げステップと、
    引き上げた状態で前記浚渫籠の前後方向を交代する第二前後方向交代ステップと、
    第二前後方向交代ステップで前後方向が交代した浚渫籠を移動後に水底面に下ろす第二引下しステップと、
    をさらに有する請求項6に記載の浚渫方法。
  8. 順ルート浚渫ステップ、第一引上げステップと、第一前後方向交代ステップと、第一引下しステップと、追加ルート浚渫ステップと、第二引上げステップと、第二前後方向交代ステップと、第二引下しステップと、を繰り返す繰返ステップをさらに有する請求項7に記載の浚渫方法。
  9. 順ルート浚渫ステップでの帯状浚渫領域と、追加ルート浚渫ステップでの帯状浚渫領域との各側縁部同士が重複する重複領域が形成されるように浚渫を行う重複浚渫サブステップを有する請求項1から請求項8のいずれか一に記載の浚渫方法。
  10. 繰返ステップによって前記フロートの水窓に略対応する水底面の泥等の浚渫が完了した後に、該浚渫が完了した浚渫完了水底面に隣接する水底面の浚渫が可能な位置に前記フロートを移動させるフロート移動ステップをさらに有する請求項5,8,9に記載の浚渫方法。
  11. 前記第一引上げステップの後であって、前記第一引下しステップの前に、前記浚渫籠を引き上げた状態で浚渫籠に引っかかり又は、浚渫籠内に滞留する滞留物を浚渫籠から除去する滞留物除去ステップをさらに有する請求項1から請求項10のいずれか一に記載の浚渫方法。
  12. 前記第一引上げステップの後であって、前記第一引下しステップの前に、前記浚渫籠に接続された前記吸上パイプのつなぎ直しをするつなぎ直しステップをさらに有する請求項1から請求項11のいずれか一に記載の浚渫方法。
  13. フロート上に渡されたレール間に設けられる水窓から水底面に渡した吸上パイプに接続された泥等吸引機能を有する浚渫籠を前記レールに対して水平・垂直に繰り返し移動させながら前記水窓に略対応する水底面の泥等の浚渫をする浚渫方法であって、
    一の水窓にて最初に浚渫籠を水底面に下ろす位置は、その水窓下の水底面で最深領域である請求項1から請求項12のいずれか一に記載の浚渫方法。
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