以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る電動車両を示すブロック図である。
実施形態1の電動車両1は、例えばHEVであり、駆動輪11と、駆動輪11を駆動する内燃機関14及び走行モータ12と、走行モータ12を駆動するインバータ13と、走行用の電力を蓄積する主バッテリ21と、走行モータ12以外の電気機器(32、41~46)と、電気機器への電力が伝送される電源ラインLpwと、電気機器(32、41~46)を駆動する電力を蓄積する第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24と、主バッテリ21の電力を変換して電気機器用の電源ラインLpwに電力を供給するDC/DCコンバータ22と、搭乗者が操作可能な操作部31と、を備える。
電源ラインLpwの電力で駆動する電気機器としては、ISG(Integrated Starter Generator)41、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ42、スタータ43、補機44、アクセサリ機器45、制御系レギュレータ46及び制御部32等が含まれる。ISG41は、例えばエンジン走行の加速中などに電気的な駆動により駆動輪11の動力を付加してトルクを増加する機能(トルクアシスト)、並びに、アイドリングストップ後に内燃機関14を始動する機能を有する。PTCヒータ42は、1つ又は複数のヒータユニットを含み、車室の暖房、シートの加熱及び主バッテリ21の加熱などを行う。スタータ43は、電気的な駆動により大きな動力を発生させて冷えた状態の内燃機関14を始動する。補機44は、例えば燃料噴射装置など内燃機関14の稼働に必要な付属機器である。アクセサリ機器45は、車内照明、オーディオ及びナビゲーション装置などである。制御系レギュレータ46は、12V系の電圧を制御系の電圧に変換する。制御部32は、制御系の電圧を受けて動作し、電動車両1の各部を制御する。なお、電気機器は、これらに限られず、様々な機器が含まれてもよい。
操作部31は、運転操作を受けるハンドル及びペダル等の運転操作部に加え、暖房のスイッチ、シートの加熱スイッチ、アクセサリ機器を駆動するためのスイッチなど、搭乗者が電気機器の駆動要求を入力する操作部を含む。
主バッテリ21は、例えば、ニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池などであり、走行モータ12を駆動する高い電圧を出力する。主バッテリ21はリレー27を介して電動車両1のシステムに接続されている。リレー27は、制御部32が電源ラインLpwの電力を用いて切り替える。
第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24は、例えば鉛蓄電池であり、主バッテリ21の出力電圧よりも低い電圧(例えば12V)を出力する。第1機器バッテリ23には、第1機器バッテリ23の充放電電流、電圧、温度等の状態を検出する検出部23dが付加され、検出部23dから制御部32へこれらの状態情報が送られる。第2機器バッテリ24にも同様の検出部24dが付加され、これらの状態情報が制御部32へ送られる。
第2機器バッテリ24は、第1機器バッテリ23のバックアップ電源としての機能を有し、電源ラインLpwにスイッチ部26を介して接続される。スイッチ部26は、第2機器バッテリ24から電源ラインLpwへ電流を流す方向に接続されたダイオードD1と、ダイオードD1に並列接続されたスイッチ素子(例えば半導体スイッチ)とを有する。ダイオードD1は、電力伝送用のダイオード素子であってもよいし、半導体スイッチの寄生ダイオードであってもよい。このようなスイッチ部26によれば、予期せずに、DC/DCコンバータ22の出力及び第1機器バッテリ23の出力が低下した場合に、ダイオードD1を介して第2機器バッテリ24から電源ラインLpwへ電流を流すことができる。また、制御上、第2機器バッテリ24から電源ラインLpwへ放電させる場合には、制御部32がスイッチSW1をオンにする。これにより、低い損失で電流を流すことができる。さらに、電源ラインLpwの電圧が高い状態で、制御部32がスイッチSW1をオンにすることで、第2機器バッテリ24を充電することができる。
DC/DCコンバータ22は、主バッテリ21の電圧を低い電圧(例えば12V)に変換し、電源ラインLpwへ出力する。DC/DCコンバータ22は、所定の出力能力を有し、電流が制限電流を超えると、出力電圧が低下する。DC/DCコンバータ22は、ブースト機能を有し、例えば制御部32の制御(モード切替信号の出力)により、DC/DCコンバータ22をDCブーストモードに切り変えることで、DC/DCコンバータ22の出力能力を一時的に向上させることができる。DCブーストモード中は、平常モード中よりも制限電流が大きく設定される。DCブーストモードは規定の時間しか継続できない。この時間を「継続可能時間」と呼ぶ。さらに、DCブーストモードを終了して平常モードに戻った後、再度、DCブーストモードに移行できるまで、規定の待機期間を開ける必要がある。この待機時間中を、「DCブーストモード禁止期間」と呼ぶ。この禁止期間以外は、DCブーストモードへの移行可能期間となる。DC/DCコンバータ22は、出力電流などの状態情報を制御部32に送信するように構成されてもよい。
制御部32は、1つ又は複数のECU(Electronic Control Unit)を含み、電動車両1の各部を制御する。複数のECUを有する場合、複数のECUは通信により連携して電動車両1を制御する。制御部32は、操作部31を介して搭乗者の運転操作の信号を入力し、運転操作に応じて補機44又はインバータ13等を制御する。これにより、電動車両1の走行が実現される。電動車両1の走行中には、例えばISG41によるトルクのアシスト要求、ISG41による内燃機関14の始動要求など、走行状態に応じて、制御部32内で電気機器の駆動要求が生じる場合がある。さらに、搭乗者が操作部31を操作することで、例えばアクセサリ機器45の駆動要求、PTCヒータ42の駆動要求など、電気機器の駆動要求が生じることがある。これらの駆動要求は、制御部32へ送られる。制御部32は、続いて説明する駆動制御処理を実行しており、この処理の中で各電気機器の駆動要求の対処を行う。
<駆動制御処理>
以下では、電源ラインLpwの電力で動作する電気機器を、負荷、定常負荷及び非定常負荷と呼ぶ。定常負荷は、電動車両1の動作中に常時動作している電気機器を意味し、制御系の電気機器など電動車両1の走行に必須の電気機器を含む。非定常負荷は、搭乗者の駆動要求又は制御部32の内部で発生する駆動要求に基づいて非定常的に動作する電気機器を意味する。負荷は、定常負荷と非定常負荷との総称である。さらに以下では、制御部32が、電源ラインLpwに入出力される電流の値に基づいて制御処理を行う例を説明する。しかし、説明中の電流は電力と読み替えてもよい。
負荷の動作が重なって電力が足りなくなると、電源ラインLpwの電圧が低下する。電源ラインLpwの電圧が、走行に必須な定常負荷の下限電圧を下回ってしまうと、必須の定常負荷が停止又はリセットされてしまい、電動車両1の正常な動作が得られなくなる。例えば、電源ラインLpwが下限電圧を下回ってしまうと、制御系レギュレータ46が生成する制御系の電圧が低下し、走行に必須の定常負荷(例えば制御部32)が停止又はリセットされてしまう。そこで、制御部32は、電源ラインLpwの電圧が下限電圧よりも低下しないよう、負荷の駆動を制限する駆動制御処理を実行する。
まず、図2を参照して駆動制御処理の概要を説明する。図2は、実施形態1の駆動制御処理の一例を示すタイミングチャートである。
図2に示すように、電動車両1が起動した後、電源ラインLpwには、常時、定常負荷の消費電流が流れる。さらに、電動車両1の動作中、非定常負荷の駆動が追加されると、消費電流が増加する。DC/DCコンバータ22の供給可能電流は、平常モードで最大電流I_dcであり、DCブーストモードで最大電流I_bdcである。
非定常負荷の駆動要求が生じたとき、制御部32は、仮に非定常負荷を駆動した場合の総消費電流を予測する。制御部32は、予め、駆動時における各定常負荷の消費電流値が登録された制御データを持ち、これらと現在の負荷の消費電流値とから、総消費電流を予測することができる。
図2のタイミングR1では、非定常負荷Aの駆動要求が生じている。ここでは、総消費電流の予測値が、DC/DCコンバータ22の最大電流I_dcを超えていない。この場合、制御部32は、そのまま非定常負荷Aの駆動を開始する。非定常負荷Aが駆動した後、電源ラインLpwの電流は、DC/DCコンバータ22により全て供給され、第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24の放電は生じない。
図2のタイミングR2では、非定常負荷Bの駆動要求が生じている。ここでは、総消費電流の予測値が、DC/DCコンバータ22の最大電流I_dcを超える一方、ブースモードの最大電流I_bdcより低い。この場合、制御部32は、DCブーストモードの禁止期間でないか判別し、禁止期間でなければ、非定常負荷Bを駆動する前に、DC/DCコンバータ22をDCブーストモードに移行させる(「先読みDCブーストモード」と呼ぶ)。これにより、DC/DCコンバータ22の最大電流I_bdcが上昇する。そして、制御部32は、非定常負荷Bの駆動を開始する。これらの期間、電源ラインLpwの電流は、DC/DCコンバータ22により全て供給され、第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24の放電は生じない。
図2のタイミングR3では、非定常負荷Cの駆動要求が生じている。ここでは、総消費電流の予想値が、DCブーストモード時の最大電流I_bdcを超えている。この場合、制御部32は、非定常負荷Cの駆動要求を拒否し、非定常負荷Cを駆動しない。この場合でも、電源ラインLpwを介して消費される電流は、DC/DCコンバータ22から全て供給されているので、第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24の放電は生じない。なお、駆動要求を拒否する場合には、制御部32は、搭乗者に対して、対象の非定常負荷を駆動できない旨の通知情報を出力するようにしてもよい。
DCブーストモードは、継続可能時間が規定されている。図2のタイミングt1は、継続可能時間に達するタイミングである。制御部32は、継続可能時間に達するよりも少し前のタイミングt2で、負荷の総消費電流が、平常時のDC/DCコンバータ22の最大電流I_dcを超えないか判別する。そして、超えていると判別されたら、先ず、制御部32は、非定常負荷のいずれかを停止させる(「DCブーストモード終了前の先読み停止」と呼ぶ)。そして、次に、制御部32は、DCブーストモードの継続可能時間に達したタイミングt1で、DCブーストモードを終了し、DC/DCコンバータ22を平常モードへ戻す。これらの期間、電源ラインLpwの電流は、DC/DCコンバータ22により全て供給され、第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24の放電は生じない。
図2には示されないが、DCブーストモード禁止期間T1に、非定常負荷の駆動要求があって、総消費電流の予想値が、平常時の最大電流I_dcを超える場合には、制御部32は、非定常負荷の駆動要求を拒否する。すなわち、駆動要求があっても非定常負荷が動作しない。したがって、これらの期間にも、電源ラインLpwの電流は、DC/DCコンバータ22により全て供給され、第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24の放電は生じない。
<比較例>
次に、図3を参照して比較例の駆動制御処理を説明する。図3は、比較例の駆動制御処理の一例を示すタイミングチャートである。比較例は、負荷の総消費電流がDC/DCコンバータ22の最大電流I_dcを超えた場合に、DC/DCコンバータ22をDCブーストモードに切り替える制御例を示す。さらに、比較例は、機器バッテリとして第1機器バッテリ23のみを有し、第1機器バッテリ23から一定時間以上の放電がなされた場合に、一部の非定常負荷を停止させる制御例を示す。
このような制御処理であっても、図3の期間T11に示すように、DCブーストモードにより、DC/DCコンバータ22の定常時の最大電流I_dcを超える非定常負荷の駆動を実現できる。さらに、タイミングt12、t13に示すように、第1機器バッテリ23から一定時間の放電があると、制御部32が一部の非定常負荷を停止するので、第1機器バッテリ23の放電が継続してしまうことを回避できる。
しかし、比較例の駆動制御処理では、図3のタイミングt11に示すように、総消費電流が大きくなってからDCブーストモードへ移行しているため、DCブーストモードへ移行するまでの短い期間T11aに、第1機器バッテリ23の放電が生じる。さらに、図3のタイミングt12、t13に示すように、第1機器バッテリ23の放電が生じてから、非定常負荷を停止させているので、期間T11b、T11cに、第1機器バッテリ23からの電流消費が生じる。このように、比較例の駆動制御処理では、頻繁に第1機器バッテリ23の放電が生じる。
第1機器バッテリ23の内部抵抗は、電動車両1が所定時間以上休止し、その後に電動車両1が起動したときなど、バッテリの状態が安定している状態で計測できる。さらに、電動車両1の起動後、第1機器バッテリ23が放電及び充電されると、その内部抵抗は、当初に計測計算された値から変化する。さらに、第1機器バッテリ23の放電又は充電が頻繁に行われる期間では、第1機器バッテリ23の状態が安定せず、内部抵抗を計測することが困難となる。
このため、比較例の駆動制御処理では、頻繁な放電によって、早い段階から、第1機器バッテリ23の内部抵抗が不明になる。そして、図3の期間T11a~T11cなど、第1機器バッテリ23から放電がなされる際に、第1機器バッテリ23の内部抵抗が非常に大きな値に変化している場合も生じえる。このような場合、予期せずに、放電によって電源ラインLpwの電圧が下限電圧よりも低下する恐れがある。
上述したように、実施形態1の駆動制御処理では、非定常負荷の駆動により、第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24の放電が生じないので、比較例のように、電源ラインLpwの電圧が下限電圧よりも低下してしまうことを信頼性高く抑制することができる。
<駆動制御処理の詳細な手順>
続いて、実施形態1の駆動制御処理の詳細な手順を説明する。図4及び図5は、実施形態1の駆動制御処理を示すフローチャートである。図4の処理部G1では、総消費電流の予測に基づき先読みしてDCブーストモードへの移行を実行させる処理(図2の「先読みDCブーストモード」を参照)が行われる。図5の処理部G2では、総消費電流に基づくDCブーストモードの終了処理が行われる。図5の処理部G3では、継続時間に基づくDCブーストモードの終了処理(図2の「DCブーストモード終了前の先読み停止」を参照)が行われる。
実施形態1の駆動制御処理においては、制御部32が、処理部G1~G4の条件判別を繰り返し、いずれかの条件を満たした場合に、該当する処理部G1~G4の実体的なステップを実行する。なお、非定常負荷の停止要求に対しては、図4及び図5の駆動制御処理と並行して実行される他の制御処理において、非定常負荷の停止制御が行われる。
ステップS1では、制御部32は、非定常負荷の駆動要求があるか否かを判別する。駆動要求には、例えば制御部32内で自発的に生じる駆動要求と、搭乗者の操作に基づく駆動要求とが含まれる。駆動要求が無ければ、制御部32は、処理をステップS12へ移行する。
一方、駆動要求があると、制御部32は、駆動要求された非定常負荷の消費電流I_addを制御データ又はマップデータから取得し(ステップS2)、これを、現在の総消費電流に加算して、駆動要求に応じた場合の総消費電流を予測する(ステップS3)。現在の総消費電流は、DC/DCコンバータ22の出力電流の計測値、第1機器バッテリ23の放電電流又は充電電流の計測値、並びに、第2機器バッテリ24の放電電流又は充電電流の計測値に基づいて取得できる。あるいは、制御部32が、予め、制御データとして、各負荷の消費電流値のデータを持ち、この制御データに基づいて現在の総消費電流を取得してもよい。あるいは、外部環境又は電動車両1の状態に応じて、負荷の消費電流が変わる場合には、制御部32は、予め、各環境及び各状態に応じた消費電流値のマップデータを持ち、マップデータから現在駆動されている負荷の総消費電流を取得してもよい。
次に、制御部32は、予測された総消費電流が、DC/DCコンバータ22の平常モードの最大電流I_dcより少ないか判別する(ステップS4)。そして、判別結果がYESであれば、制御部32は、駆動要求を許可し、対象の非定常負荷の駆動を開始する(ステップS5)。
一方、ステップS4の判別の結果がNOであれば、制御部32は、現在、DCブーストモード禁止期間であるか判別する(ステップS6)。すなわち、制御部32は、前回のDCブーストモードの終了時から、規定された待機時間を経過しているか判別する。そして、DCブーストモード禁止期間でなければ、制御部32は、予測された総消費電流が、DCブーストモードのDC/DCコンバータ22の最大電流I_bdcよりも低いか判別し(ステップS7)、低ければ、DC/DCコンバータ22をDCブーストモードへ移行させ(ステップS8)、DCブーストモード時間(DCブーストモードの継続時間)の計測を開始する(ステップS9)。DCブーストモード時間の計測は、DCブーストモードが継続可能時間を超えないように制御するためのものである。そして、制御部32は、処理をステップS5に進めて、駆動要求された非定常負荷の駆動を開始する。ステップS6~S9、S5により、図2の「先読みDCブーストモード」が実現される。
一方、ステップS6の判別結果がDCブーストモード禁止期間でないか、あるいは、ステップS7の判別結果がNOの場合には、制御部32は、非定常負荷の駆動要求を拒否、すなわち、非定常負荷を駆動せず(ステップS10)、搭乗者に非定常負荷を駆動できない旨の通知情報を出力する(ステップS11)。そして、制御部32は、処理をステップS12に進める。
ステップS12では、制御部32は、現在、DCブーストモード中か否かを判別し、DCブーストモード中でなければ処理をステップS1に戻す。一方、DCブーストモード中であれば、制御部32は、現在の総消費電流がDC/DCコンバータ22の平常モードの最大電流I_dcより低いか判別する(ステップS13)。別の制御処理に基づき非定常負荷が停止された場合、ステップS13の判別結果がYESになる場合がある。そして、YESの場合、制御部32は、DC/DCコンバータ22を平常モードに戻し(ステップS14)さらに、DCブーストモード時間の計測を終了し(ステップS15)、処理をステップS16に進める。一方、ステップS13の判別結果がNOであれば、制御部32は、そのまま、処理をステップS16に進める。
ステップS16では、制御部32は、DCブーストモード時間が継続可能時間に達したか判別する。そして、達していれば、制御部32は、DC/DCコンバータ22を平常モードに戻し(ステップS17)、さらに、DCブーストモード時間の計測を終了し(ステップS18)、処理をステップS19に進める。一方、ステップS16の判別結果がNOであれば、制御部32は、そのまま、処理をステップS19に進める。
ステップS19では、制御部32は、DCブーストモード時間が継続可能時間からマージンを差し引いた値に達したか判別する。そして、達していれば、制御部32は、例えば最後に駆動した非定常負荷など、一部の非定常負荷を停止し(ステップS20)、処理をステップS1に戻す。一方、ステップS19の判別結果がNOであれば、制御部32は、そのまま処理をステップS1に戻す。なお、ステップS20で、一部の非定常負荷を停止する場合には、予め状況に応じた非定常負荷の駆動優先度を決めておき、現在の状況で優先度の低い非定常負荷を停止させるようにしてもよい。ステップS19、S20により、図2の「DCブーストモード終了前の先読み停止」が実現される。
このような駆動制御処理により、DC/DCコンバータ22の出力に基づいて、最大限の負荷を駆動することができ、かつ、第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24の放電を抑制することができる。
以上のように、本実施形態1の電動車両1によれば、DC/DCコンバータ22のブースト機能を用いることで、DC/DCコンバータ22の最大電流を一時的に上昇させて、多くの非定常負荷の駆動要求に応じることができる。さらに、先読みDCブーストモード(図2)の処理、並びに、DCブーストモード終了前の先読み停止(図2)の処理により、DCブーストモードを開始又は終了する際にも、第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24の放電が生じない。したがって、電源ラインLpwの電圧が下限電圧よりも低下してしまうことを信頼性高く抑制することができる。
(実施形態2)
図6は、実施形態2の駆動制御処理の一例を示すタイミングチャートである。
実施形態2の電動車両1は、駆動制御処理の一部が実施形態1と異なり、その他は実施形態1と同様である。以下、主に実施形態1と異なる要素について詳細に説明する。
実施形態2の駆動制御処理では、バッテリブーストの機能が追加されている。バッテリブーストとは、電源ラインLpwの総消費電流が増して、DC/DCコンバータ22の出力能力が限界に達した場合に、第2機器バッテリ24の放電により負荷に電流を供給する機能である(図6の期間T21を参照)。制御部32は、第2機器バッテリ24の内部抵抗が確定している場合に、バッテリブーストを発動可能とし、第2機器バッテリ24の内部抵抗が不確定の場合に、バッテリブーストを発動不可とする。
バッテリブーストの発動は、制御部32が、非定常負荷の駆動要求を許可し、当該非定常負荷の駆動を開始することで、電源ラインLpwの総消費電流が、DC/DCコンバータ22の最大電流I_dc又はI_bdcを超えることで実現される。図6では、非定常負荷Cの駆動開始により、総消費電流が最大電流I_bdcを超えることで、バッテリブーストが発動されている。具体的には、非定常負荷の駆動により、DC/DCコンバータ22の出力能力が限界に達すると、電源ラインLpwの電圧が低下する。そして、電源ラインLpwの電圧が、第2機器バッテリ24の電圧よりも所定量以上低くなることで、第2機器バッテリ24から放電され、すなわちバッテリブーストが発動される。
バッテリブースト中、制御部32は、スイッチ部26のスイッチSW1をオンに切り替える制御を行ってもよいし、行わなくてもよい。スイッチSW1をオンに切り替えることで、スイッチ部26における損失及び電圧降下を低減できる。スイッチSW1をオンに切り替えない場合でも、損失及び電圧降下が生じるが、ダイオードD1を介して第2機器バッテリ24から電源ラインLpwへ電流を送ることができる。
バッテリブーストは、第2機器バッテリ24の内部抵抗が確定していることを条件に発動可能とされる。第2機器バッテリ24の内部抵抗は、電動車両1の起動直後(第2機器バッテリ24の状態が安定する期間、休止した後の起動直後)には正確に求めることができ、内部抵抗が確定している。第2機器バッテリ24の内部抵抗が確定した後、第2機器バッテリ24の放電又は充電がなければ、内部抵抗は変化しないか、あるいは、温度変化等に起因する予測可能な変化に留まる。このため、放電又は充電がなければ、第2機器バッテリ24の正確な内部抵抗が求めることができ、内部抵抗が確定している。一方、第2機器バッテリ24の放電又は充電が行われた場合には、再度、第2機器バッテリ24の状態を安定させた後、所定の計測を行わないと正確な内部抵抗が得られず、内部抵抗は不確定となる。
したがって、制御部32は、電動車両1の起動後、1回もバッテリブーストが発動されていなければ、第2機器バッテリ24の内部抵抗が確定しているとして、バッテリブースト可能を示す制御データ(例えばバッテリブースト可能フラグ=“1”)を保持する。一方、制御部32は、バッテリブーストを1回発動した後は、第2機器バッテリ24の内部抵抗が不確定であるものとし、バッテリブースト不可を示す制御データ(例えばバッテリブースト可能フラグ=“0”)を保持する。
なお、制御部32は、非定常負荷の駆動要求に基づき、バッテリブーストの発動と、DC/DCコンバータ22のDCブーストモードへの移行との両方が可能な場合には、DCブーストモードへの移行を優先させる。図6のタイミングR2では、非定常負荷Bの駆動要求があり、DCブーストモードへの移行が可能であるため、バッテリブーストは発動されず、DC/DCコンバータ22がDCブーストモードへ移行されている。また、図6のタイミングR3では、DCブーストモード中に非定常負荷Cの駆動要求が生じたため、バッテリブーストが発動されている。なお、DCブーストモード禁止期間T24に、DC/DCコンバータ22の出力能力を超える非定常負荷の駆動要求が生じたときにも、バッテリブーストが発動されてもよい。
バッテリブーストを発動する際、制御部32は、第2機器バッテリ24の内部抵抗に基づいて、電源ラインLpwの電圧が下限電圧を下回らないように、非定常負荷を駆動制御する。この制御のため、まず、制御部32には、予め下限電圧にマージンを加えた放電終止電圧が設定される。そして、第2機器バッテリ24の内部抵抗から、制御部32は、第2機器バッテリ24の出力電圧が放電終止電圧に達する出力電流を、出力可能電流I_bbatとして計算する。そして、制御部32は、DC/DCコンバータ22の最大電流I_dc又はI_bdcに、第2機器バッテリ24の出力可能電流I_bbatを加えた電流を上限電流とし、上限電流を超えない範囲で非定常負荷の駆動要求を許可し、上限電流を超える非定常負荷の駆動要求を拒否する。
また、バッテリブーストの期間が比較的に長い場合、あるいは、非定常負荷の消費電流が変動する場合には、制御部32は、電源ラインLpwの電圧が、放電終止電圧よりも余裕分高く設定された閾値Vthに達したときに、バッテリブーストが終了するように制御する。すなわち、バッテリブースト中、制御部32は、電源ラインLpwの電圧を監視し、電圧が閾値Vthを下回ったことに基づき、一部の非定常負荷を停止させ、バッテリブーストを終了する。
しかし、電源ラインLpwの電圧が閾値に達してから一部の非定常負荷を停止するまでにはタイムラグが生じる。したがって、予期せずに、第1機器バッテリ23の内部抵抗が非常に大きくなっていると、タイムラグの間の放電により、電源ラインLpwの電圧が大きく低下する恐れがある。そこで、このような電圧の低下があっても、電源ラインLpwの電圧が下限電圧を下回らないように、非定常負荷を停止する電圧の閾値を大きな値に設定することも検討できる。しかし、このように閾値を設定した場合、第1機器バッテリ23の内部抵抗が小さい場合には、第1機器バッテリ23の出力電圧が大きい段階で、非定常負荷が停止されることになり、第1機器バッテリ23の出力電流を有効に活用することができない。この場合、非定常負荷が早期に停止されてしまい、搭乗者の利便性が低下するという欠点、あるいは、電動車両1のスムースな走行に支障をきたすという欠点が生じる。
そこで、本実施形態では、制御部32は、第2機器バッテリ24の内部抵抗に基づき、内部抵抗が低ければ、閾値Vthとして放電終止電圧に小さな余裕分を加算した値を設定し、内部抵抗が高ければ、閾値Vthとして放電終止電圧に大きな余裕分を加算した値を設定する。このような閾値Vthの設定により、内部抵抗が低いときでも高いときでも、制御部32は、電源ラインLpwの電圧が放電終止電圧の近傍でバッテリブーストが終了するように制御することができる。
<駆動制御処理の詳細な手順>
続いて、フローチャートに基づいて実施形態2の駆動制御処理の詳細な手順を説明する。図7~図10は、実施形態2の駆動制御処理を示すフローチャートである。フローチャートにおいて処理部J1では、総消費電流の予測と状態判別に基づく先読みによるブースト処理が実行される。ここでは、DC/DCコンバータ22のDCブーストモードへの移行と、バッテリブーストの発動との両方を総称してブースト処理と呼んでいる。処理部J2では、総消費電流に基づくブースト処理の終了処理が行われる。処理部J3では、電圧監視に基づくバッテリブーストの終了処理が行われる。処理部J4では、継続時間に基づくDCブーストモードの終了処理が行われる。処理部J5では、DCブーストモードの終了前に先読みして非定常負荷を停止する処理が行われる。実施形態2の駆動制御処理においては、実施形態1の駆動制御処理と同一のステップが含まれる。同一のステップについては、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
実施形態2の駆動制御処理においては、制御部32が、処理部J1~J5の条件判別を繰り返し、いずれかの条件を満たしている場合に、該当する処理部J1~J5の実体的なステップを実行する。なお、非定常負荷の停止要求に対しては、図7~図10の駆動制御処理と並行して実行される他の制御処理において、非定常負荷を停止する制御が行われる。
駆動制御処理の開始時、制御部32は、第2機器バッテリ24の内部抵抗の値に基づいて、第2機器バッテリ24の出力電圧が放電終止電圧に達する電流を、第2機器バッテリ24の出力可能電流I_bbatとして計算する(ステップS31)。そして、制御部32は、処理をステップS1以降のループ処理へ移行する。なお、環境温度等により内部抵抗が変化する場合には、制御部32は、ステップS1以降のループ処理の中で、毎ループ、出力可能電流I_bbatを計算するようにしてもよい。
ステップS1~S11は、実施形態1の駆動制御処理のステップと同様である。ただし、ステップS7において、予測された総消費電流が、DC/DCコンバータ22のDCブーストモード時の最大電流I_bdcよりも大きいと判別された場合には、制御部32は、さらに、予測された総消費電流が、「最大電流I_bdc+バッテリブーストの出力可能電流I_bbat」よりも大きいか判別する(ステップS41)。そして、ステップS41の判別結果がNOであれば、制御部32は、ステップS10で非定常負荷の駆動要求を拒否する。
一方、ステップS41の判別結果がYESであれば、制御部32は、バッテリブースト可能フラグの値が“1”で、バッテリブーストが可能であるか判別する(ステップS42)。バッテリブースト可能フラグは、電動車両1の起動時に“1”にされ、その後、バッテリブーストが実行された場合に “0”に更新される。ステップS42の判別結果がNOであれば、制御部32は、ステップS10で非定常負荷の駆動要求を拒否する。
一方、ステップS42の判別結果がYESであれば、制御部32は、DC/DCコンバータ22をDCブーストモードに移行し(ステップS43)、DCブーストモード時間の計測を開始し(ステップS44)、スイッチSW1をオンにしてバッテリブーストを開始する(ステップS45)。そして、制御部32は、処理をステップS5へ進める。実際は、ステップS5で、駆動要求された非定常負荷が駆動されることで、第2機器バッテリ24の放電(バッテリブースト)が開始される。
なお、図8の駆動制御処理では、DC/DCコンバータ22のDCブーストモード禁止期間と判別された場合(ステップS6のYES)には、バッテリブーストが開始されない制御内容としている。しかし、この場合においてDC/DCコンバータ22が平常モードのままバッテリブーストが開始される制御内容が採用されてもよい。
処理部J2において、制御部32は、先ず、現在の総消費電流が、DC/DCコンバータ22の平常モードの最大電流I_dcより小さくなったか判別する(ステップS51)。別の制御処理に基づき非定常負荷が停止された場合、ステップS51の判別結果がYESになる場合がある。そして、YESの場合、制御部32は、現在がバッテリブースト中か判別し(ステップS52)、バッテリブースト中であれば、スイッチSW1をオフにしてバッテリブーストを終了し(ステップS53)、バッテリブースト可能フラグの値を“0”に設定する(ステップS54)。なお、第2機器バッテリ24の放電(バッテリブースト)は、非定常負荷が停止されたことで終了される。加えて、制御部32は、現在がDCブーストモード中であるか判別し(ステップS55)、DCブーストモード中であれば、DC/DCコンバータ22を平常モードへ戻し(ステップS56)、DCブーストモード時間の計測を終了し(ステップS57)、処理を次に進める。
処理部J2おいて、ステップS51の判別結果がNOであれば、次に、制御部32は、現在の総消費電流が、DC/DCコンバータ22のDCブーストモード時の最大電流I_bdcより小さくなったか判別する(ステップS58)。別の制御処理に基づき非定常負荷が停止された場合、ステップS58の判別結果がYESになる場合がある。そして、YESの場合、制御部32は、現在がバッテリブースト中か判別し(ステップS59)、バッテリブースト中であればスイッチSW1をオフにしてバッテリブーストを終了し(ステップS60)、バッテリブースト可能フラグの値を“0”に設定し(ステップS61)、処理を次に進める。なお、第2機器バッテリ24の放電(バッテリブースト)は、非定常負荷が停止されたことで終了される。
処理部J3では、制御部32は、現在がバッテリブースト中で、第2機器バッテリ24の出力電圧が、放電終止電圧に余裕分δVを加えた閾値Vthに達したか判別する(ステップS71、S72)。ここで、制御部32は、第2機器バッテリ24の内部抵抗に応じて余裕分δVの調整を行ってもよい。例えば、制御部32は、第2機器バッテリ24の内部抵抗が低ければ、閾値Vthとして放電終止電圧に小さな余裕分δVを加算した値を設定し、内部抵抗が高ければ、閾値Vthとして放電終止電圧に大きな余裕分δVを加算した値を設定する。
判別の結果、ステップS71、S72のいずれかがNOであれば、制御部32は、そのまま処理を次に進める。一方、両方の判別結果がYESであれば、制御部32は、最後に駆動した非定常負荷を停止させ(ステップS73)、スイッチSW1をオフにしてバッテリブーストを終了する(ステップS74)。さらに、制御部32は、バッテリブースト可能フラグの値を“0”に設定し(ステップS75)、処理を次に進める。
バッテリブーストが比較的に長く続く場合、あるいは、バッテリブースト中に非定常負荷の消費電流が変化する場合、何ら制御を行わないと、第2機器バッテリ24の出力電圧が低下して放電終止電圧を下回る可能性がある。そこで、処理部J3により、制御部32は、第2機器バッテリ24の出力電圧を監視し、放電終止電圧を下回らないように制御している。また、第2機器バッテリ24の出力電圧が閾値Vthに達してから、非定常負荷の停止までにはタイムラグがあり、第2機器バッテリ24の内部抵抗が大きいと、この間に第2機器バッテリ24の出力電圧が大きく低下してしまう。しかし、ステップS72の閾値Vthは、第2機器バッテリ24の内部抵抗に応じて余裕分δVが調整されている。したがって、内部抵抗が大きくて、タイムラグで出力電圧が比較的に大きく低下するときには、閾値Vthと放電終止電圧との差が大きくされることで、第2機器バッテリ24の放電が停止するときに、出力電圧が放電終止電圧の近傍になるように制御される。逆に、内部抵抗が小さくて、タイムラグで出力電圧が大きく低下しないときには、閾値Vthと放電終止電圧との差が小さくされることで、第2機器バッテリ24の放電が停止するときに、出力電圧が放電終止電圧の近傍になるように制御される。このような制御により、バッテリブーストにより第2機器バッテリ24の出力を放電終止電圧の近傍まで有効に活用し、バッテリブーストを終了することができる。
続く処理部J4、J5は、実施形態1の処理部G3、G4と同様である。
以上のように、実施形態2の電動車両1によれば、第2機器バッテリ24の内部抵抗が確定している場合にバッテリブースト可能とする。これにより、負荷の総消費電流がDC/DCコンバータ22の最大電流よりも大きくなる場合でも、非定常負荷の駆動要求を許可し、バッテリブーストにより非定常負荷を駆動することができる。さらに、このとき、第2機器バッテリ24の内部抵抗が確定しているので、内部抵抗を考慮した制御により、高い信頼性を持って第2機器バッテリ24の出力電圧が放電終止電圧を下回らないように非定常負荷の駆動制御を実現できる。これにより、搭乗者の利便性が低下することを抑制でき、また、電動車両のスムースな走行に支障をきたすことを抑制しつつ、電源ラインLpwの電圧が下限電圧を下回ってしまうことを高い信頼性を持って抑制できる。
加えて、実施形態2の電動車両1によれば、第2機器バッテリ24の内部抵抗が不確定の場合にバッテリブースト不可とする。これにより、負荷の総消費電流がDC/DCコンバータ22の最大電流よりも大きくなる場合に、非定常負荷の駆動要求が拒否されて、第2機器バッテリ24の放電が生じない。したがって、第2機器バッテリ24の内部抵抗が予期せずに大きくなっていて、放電により電源ラインLpwの電圧が下限電圧を下回ってしまうことを抑制できる。
さらに、実施形態2の電動車両1によれば、第2機器バッテリ24の内部抵抗が確定していてバッテリブーストを発動する場合には、内部抵抗に基づき、電源ラインLpwの電圧が下限電圧を下回らないように、非定常負荷が駆動制御される。具体的には、下限電圧にマージンを加えた放電終止電圧が設定され、制御部32は、内部抵抗から放電終止電圧となる電流を出力可能電流I_bbatとして計算し、出力可能電流I_bbatで消費電流が賄える場合に、非定常負荷の駆動要求を許可する。あるいは、制御部32は、バッテリブースト中に電源ラインLpwの電圧を監視し、この電圧が閾値Vthに達したら非定常負荷を停止させてバッテリブーストを終了する。さらに、制御部32は、閾値Vthと放電終止電圧との差を内部抵抗に基づいて変化させる。これにより、バッテリブーストを途中で終了させる場合でも、内部抵抗が小さいときと大きいときとで、電源ラインLpwの電圧が放電終止電圧の近傍となったときに、バッテリブーストを終了させることができる。
さらに、実施形態2の電動車両1によれば、バッテリブースト時には、制御部32がスイッチSW1をオンに切り替える。これにより、第2機器バッテリ24の放電電流で非定常負荷を駆動する際に、スイッチ部26で生じる損失を低減できる。
さらに、実施形態2の電動車両1によれば、DC/DCコンバータ22をDCブーストモードへ移行させることで、DC/DCコンバータ22の出力能力を一時的に上昇させて、多くの非定常負荷の駆動要求に応じることができる。さらに、先読みDCブーストモードの処理及びDCブーストモード終了前の先読み停止の処理により、DCブースモードに移行するときと終了するときとで、第1機器バッテリ23及び第2機器バッテリ24の放電が生じない。したがって、第2機器バッテリ24が頻繁に放電して内部抵抗が不確定になってしまい、バッテリブーストが有効に活用できなくなることを抑制できる。
さらに、実施形態2の電動車両1によれば、DC/DCコンバータ22のDCブーストモードへの移行が可能であり、かつ、バッテリブーストも可能である場合には、DCブースモードへの移行を優先させる。バッテリブーストは電源ラインLpwの電圧を低下させるため、電源ラインLpwの電圧が下限電圧以下になることは抑制されていても、その可能性は完全にゼロではない。したがって、DCブーストモードへの移行を優先させることで、バッテリブーストの発動回数を減らすことができ、より高い信頼性を持って電源ラインLpwの電圧が下限電圧を下回ることを抑制できる。
(実施形態3)
図11は、実施形態3の駆動制御処理の一部を示すフローチャートである。
実施形態3の電動車両は、実施形態2の駆動制御処理に、図11のステップが追加される以外、実施形態2の電動車両と同様である。以下、主に追加された処理について詳細に説明する。
上述した実施形態2では、バッテリブーストを1回発動させると、その後、バッテリブースト可能フラグが“0”にセットされ、バッテリブーストが不可とされた。そして、第2機器バッテリ24の状態が安定する時間以上、電動車両1が休止した後に、再度、電動車両1が起動された場合に、再びバッテリブーストが発動可能となった。
一方、実施形態3の電動車両では、バッテリブーストが発動されると(ステップM1)、その後、制御部32は、負荷の駆動が少ないときに、スイッチSW1をオンにすることで、DC/DCコンバータ22の電力により第2機器バッテリ24を充電する(ステップM2)。なお、ステップM2の充電の処理は省略されてもよい。
次に、制御部32は、負荷の駆動が少ないときに、スイッチSW1をオフに維持したまま、DC/DCコンバータ22の出力電圧を少し上昇させる(ステップM3)。DC/DCコンバータ22の出力電圧は、制御部32からDC/DCコンバータ22へ出力電圧の設定値を送ることで実現できる。すると、第2機器バッテリ24と電源ラインLpwとの間にスイッチ部26が介在され、スイッチ部26から第2機器バッテリ24側が低い電圧に維持されることで、第2機器バッテリ24の充電及び放電が停止された状態になる。制御部32は、この状態を、第2機器バッテリ24の状態が安定する時間(例えば5分間)維持する。そして、第2機器バッテリ24の状態が安定したら、検出部24dからの状態情報に基づいて、第2機器バッテリ24の内部抵抗を計測する(ステップM4)。そして、内部抵抗が計測されたら、制御部32は、この計測値により内部抵抗の値を確定させて、バッテリブースト可能フラグを“1”に再セットする。これにより、図7~図10に示した駆動制御処理において、再び、バッテリブーストの発動が可能にされる。
なお、ステップM3で、第2機器バッテリ24の充放電をゼロに制御している期間に、非定常負荷の駆動要求があって、DC/DCコンバータ22の出力電圧が低下する場合がある。このような場合、制御部32は、そのときのステップM3の処理を失敗として、再び、負荷の駆動が少なくなったときに、ステップM3、M4の処理を再試行してもよい。
また、第2機器バッテリ24の状態を安定させるステップM2の処理が不十分な場合でも、ステップM4の内部抵抗の計測処理を、期間を開けて複数回行い、計測値が飽和している場合に、その計測値を内部抵抗の確定値としてもよい。このように、電動車両1の動作中に第2機器バッテリ24の内部抵抗を正確に計測できれば、どのような方法が採用されてもよい。
以上のように、実施形態3の電動車両1によれば、バッテリブーストが発動された後、制御部32は、第2機器バッテリ24の充放電が無い期間に第2機器バッテリ24の内部抵抗を計測し、内部抵抗の値を確定する。したがって、電動車両1の動作中に、複数回のバッテリブーストが可能となる。
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、第1機器バッテリ及び第2機器バッテリとして、鉛蓄電池を適用した例を示したが、第1機器バッテリ、第2機器バッテリ又はこれら両方は、例えば12V系のリチウムイオン二次電池など、他の種類の二次電池であってもよい。また、上記実施形態では、制御部32が、電気機器の駆動、非駆動、停止の3種類の制御により、電源ラインLpwの総消費電流を切り替える例を示した。しかし、例えば、駆動電力が複数段階に切り替え可能な電気機器を対象とする場合には、制御部が、駆動電力を複数段階に切り替える制御を併用して、電源ラインLpwの総消費電流を切り替えるようにしてもよい。また、上記実施形態では、DC/DCコンバータがブースト機能を有する場合について説明したが、DC/DCコンバータはブースト機能を有さない構成であってもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。