JP7339656B2 - X線遮蔽ガラス及びガラス部品 - Google Patents
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Description
B2O3:15~25質量%、
La2O3:7~50質量%、
Gd2O3:7~50質量%、
WO3:10~25質量%、
SiO2:0~7質量%、
ZrO2:0~10質量%、
Nb2O5:0~8質量%、
Ta2O5:0~10質量%、
Bi2O3:0~5質量%、
CeO2:0~3質量%、及び
Sb2O3:0~1質量%
を含有する組成を有し、
ZnOを含有せず、
La2O3及びGd2O3の合計含有量が45~65質量%であり、
厚み3mmとした当該ガラスにおいて、X線管の管電圧60kVのX線透過率が0.0050%以下であり、且つ、X線管の管電圧100kVのX線透過率が0.1500%以下である、ことを特徴とする。かかるX線遮蔽ガラスは、管電圧が150kV以下のX線に対して高い遮蔽能力を有する。
以下、本発明の一実施形態のX線遮蔽ガラス(以下、「本実施形態のガラス」と称することがある。)を具体的に説明する。本実施形態のガラスは、組成の要件として、
B2O3:15~25質量%、
La2O3:7~50質量%、
Gd2O3:7~50質量%、
WO3:10~25質量%、
SiO2:0~7質量%、
ZrO2:0~10質量%、
Nb2O5:0~8質量%、
Ta2O5:0~10質量%、
Bi2O3:0~5質量%、
CeO2:0~3質量%、及び
Sb2O3:0~1質量%
を含有する組成を有し、
ZnOを含有せず、
La2O3及びGd2O3の合計含有量が45~65質量%である、ことを一特徴とする。また、本実施形態のガラスは、特性の要件として、厚み3mmとした当該ガラスにおいて、X線管の管電圧60kVのX線透過率が0.0050%以下であり、且つ、X線管の管電圧100kVのX線透過率が0.1500%以下である、ことを一特徴とする。
B2O3は、ガラス形成を可能にする酸化物であり、La2O3、Gd2O3等の希土類酸化物を多量に含有する本実施形態のガラスにおいて、失透がなく透明性の高いガラスを得るのに重要な必須成分である。ここで、B2O3の含有量が15質量%未満であると、ガラスの安定性が十分に向上せず、ガラス化しない。一方、B2O3の含有量が25質量%を超えると、ガラスの化学耐久性が低下するとともに、X線遮蔽性能の向上に寄与する成分の割合が低くなって、X線遮蔽性能が十分に向上しない。よって、本実施形態のガラスにおいては、B2O3の含有量を15~25質量%の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるB2O3の含有量は、16質量%以上であることが好ましく、また、24質量%以下であることが好ましい。
La2O3は、ガラスの密度を大きくし、ガラスに高いX線遮蔽能力を付与することができる、本発明の目的を達成するのに重要な必須成分である。また、La2O3は、ガラスの化学的耐久性を向上させる効果を有する。ここで、La2O3の含有量が7質量%未満であると、ガラスのX線遮蔽能力を十分に高めることができない。一方、La2O3の含有量が50質量%を超えると、放射線エネルギー帯の吸収端の影響が大きく作用するため、X線遮蔽能力が悪化する。よって、本実施形態のガラスにおいては、La2O3の含有量を7~50質量%の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるLa2O3の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、また、49質量%以下であることが好ましい。
Gd2O3は、La2O3と同様、ガラスの密度を大きくし、ガラスに高いX線遮蔽能力を付与することができる、本発明の目的を達成するのに重要な必須成分である。また、Gd2O3は、La2O3と同様、ガラスの化学的耐久性を向上させる効果を有する。ここで、Gd2O3の含有量が7質量%未満であると、ガラスのX線遮蔽能力を十分に高めることができない。一方、Gd2O3の含有量が50質量%を超えると、放射線エネルギー帯の吸収端の影響が大きく作用するため、X線遮蔽能力が悪くなる。よって、本実施形態のガラスにおいては、Gd2O3の含有量を7~50質量%の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるGd2O3の含有量は、8質量%以上であることが好ましく、また、48質量%以下であることが好ましい。
上述の通り、La2O3及びGd2O3はいずれも、ガラスの密度を大きくし、ガラスに高いX線遮蔽能力を付与することができる成分であるが、それぞれの成分を単独で用いるよりも、それぞれある程度の量を併用することで、ガラスのX線遮蔽能力及び耐失透性を効果的に向上させることができる。本実施形態のガラスにおいては、このような効果的な向上を得る観点から、La2O3及びGd2O3の合計含有量を45~65質量%の範囲とした。また、本実施形態のガラスにおけるLa2O3及びGd2O3の合計含有量は、50質量%以上であることが好ましく、また、62質量%以下であることが好ましい。
WO3は、管電圧が150kV以下のX線に対する遮蔽能力を高めることができる、本発明の目的を達成するのに重要な必須成分である。また、WO3は、ガラスの安定性及び化学耐久性を向上させるのに大きな効果がある。ここで、WO3の含有量が10質量%未満であると、管電圧が150kV以下のX線に対する遮蔽能力を十分に高めることができない。一方、WO3の含有量が25質量%を超えると、かえってガラスの安定性が低下し、ガラス化しなくなる。よって、本実施形態のガラスにおいては、WO3の含有量を10~25質量%の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるWO3の含有量は、24質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のガラスは、モル%で、La2O3、Gd2O3及びWO3の合計含有量が36モル%以上であることが好ましい。上記合計含有量が36モル%以上であれば、X線遮蔽性能の向上に寄与するLa2O3、Gd2O3及びWO3の質量比及びモル比の両方の割合が十分に高く、ガラスのX線遮蔽能力を一層向上させることができる。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるLa2O3、Gd2O3及びWO3の合計含有量は、36.5モル%以上であることがより好ましい。
SiO2は、ガラス形成を可能にする酸化物であり、また、失透に対する安定性を向上させ、ガラスの化学的耐久性を改善させることができる成分である。しかしながら、SiO2の含有量が7質量%を超えると、熔融性が悪化し、未熔物が生じ易くなる。よって、本実施形態のガラスにおいては、SiO2の含有量を0~7質量%の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるSiO2の含有量は、6質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、本実施形態のガラスにおけるSiO2の含有量は、ガラスの熔融性、安定性及び化学的耐久性を向上させる観点から、0質量%超であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。
ZrO2は、X線遮蔽能力及び化学的耐久性の向上に効果があるため、本実施形態のガラスに用いることができる成分である。しかしながら、ZrO2の含有量が10質量%を超えると、失透に対する安定性が悪化する虞がある。よって、本実施形態のガラスにおいては、ZrO2の含有量を0~10質量%の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるZrO2の含有量は、9質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。また、本実施形態のガラスにおけるZrO2の含有量は、X線遮蔽能力及び化学的耐久性をより向上させる観点から、0質量%超であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。
Nb2O5は、X線遮蔽性能の向上に効果があるため、本実施形態のガラスに用いることができる成分である。しかしながら、Nb2O5の含有量が8質量%を超えると、失透に対する安定性が悪化する虞がある。よって、本実施形態のガラスにおいては、Nb2O5の含有量を0~8質量%の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるNb2O5の含有量は、7質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。また、本実施形態のガラスにおけるNb2O5の含有量は、X線遮蔽能力をより向上させる観点から、0質量%超であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。
Ta2O5は、X線遮蔽性能の向上に効果があるため、本実施形態のガラスに用いることができる成分である。しかしながら、Ta2O5は、非常に高価な原料であることから、多量の使用に適さない。よって、本実施形態のガラスにおいては、Ta2O5の含有量を0~10質量%の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるTa2O5の含有量は、8質量%以下であることが好ましい。
Bi2O3は、特に管電圧100kV超えのX線に対して高い遮蔽効果があるため、本実施形態のガラスに用いることができる成分である。しかしながら、Bi2O3を多量に用いたとしても、管電圧が150kV以下のX線に対する遮蔽能力については大きな向上がみられない。また、Bi2O3の含有量が5質量%を超えると、紫外域~可視域の光の透過率が低下する。よって、本実施形態のガラスにおいては、Bi2O3の含有量を0~5質量%の範囲とした。
CeO2は、X線照射によるガラス着色の低減に効果があるため、本実施形態のガラスに用いることができる成分である。しかしながら、CeO2を多量に用いると、ガラスの紫外域~可視域での吸収端が長波長側にシフトし、可視光透過性の低下をもたらす。よって、本実施形態のガラスにおいては、CeO2の含有量を0~3質量%の範囲とした。
Sb2O3は、ガラス熔融の際の脱泡を目的として用いることができる成分である。本実施形態のガラスにおいては、必要最小限の量で脱泡効果を得る観点から、Sb2O3の含有量を0~1質量%の範囲とした。
本実施形態のガラスは、目的を外れない限り、上述した成分以外のその他の成分、例えば、CsO2、SrO、BaO、Y2O3、Yb2O3などを適宜含有することができる。
なお、本明細書において「実質的に含有しない」とは、当該成分が不純物として不可避的に混入する、具体的には、当該成分が0.2質量%以下の割合で含有する場合を包含するものとする。
なお、本明細書において「上述した成分のみからなる」とは、当該成分以外の不純物成分が不可避的に混入する、具体的には、不純物成分の割合が0.2質量%以下である場合を包含するものとする。
なお、ガラスの密度は、例えば、ガラスに含有させる成分の種類及び/又は含有量を適宜調節することにより調整することができる。また、密度が5.00g/cm3以上であるガラスは、通常は、上述したガラス組成の要件を満たすことで得られる。
上述した密度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、X線管の管電圧60kVのX線透過率及びX線管の管電圧100kVのX線透過率は、例えば、ガラスに含有させる成分の種類及び/又は含有量を適宜調節することにより調整することができる。また、X線管の管電圧60kVのX線透過率が0.0050%以下であり、且つ、X線管の管電圧100kVのX線透過率が0.1500%以下であるガラスは、通常は、上述したガラス組成の要件を満たすことで得られる。特に、X線管の管電圧60kVのX線透過率が0.0050%以下であり、且つ、X線管の管電圧100kVのX線透過率が0.1500%以下であるガラスは、上述したガラス組成の要件を満たす上、La2O3、Gd2O3及びWO3の合計含有量を36モル%以上とすることで、より確実に得られる。
上述したX線透過率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
上述した可視光透過率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、ガラスの屈折率は、例えば、ガラスに含有させる成分の種類及び/又は含有量を適宜調節することにより調整することができる。また、屈折率(nd)が1.855以下であるガラスは、通常は、上述したガラス組成の要件を満たすことで得られる。
上述した屈折率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
次に、本実施形態のガラスの製造方法について説明する。
ここで、本実施形態のガラスは、上述した組成の要件及び特性の要件を満足していればよく、その製造方法については特に限定されることなく、従来の製造方法に従って製造することができる。
例えば、まず、本実施形態のガラスに含まれ得る各成分の原料として、各種酸化物を所定の割合で秤量し、十分混合したものを調合原料とする。次いで、この調合原料を、当該原料と反応性のない熔融容器(例えば貴金属製の坩堝)に投入して、電気炉にて1100~1500℃に加熱して熔融する。その際、適時撹拌することで、清澄・均質化を図る。次いで、適当な温度に予熱しておいた金型内に鋳込んだ後、徐冷して歪みを取り除くことで、本実施形態のガラスを得ることができる。
本発明の一実施形態のガラス部品(以下、「本実施形態のガラス部品」と称することがある。)は、上述したX線遮蔽ガラスを素材として用いたことを特徴とする。別の言い方をすると、本実施形態のガラス部品は、上述したX線遮蔽ガラスを備えることを特徴とする。本実施形態のガラス部品は、上述したX線遮蔽ガラスを素材として用いているため、管電圧が150kV以下のX線に対して高い遮蔽能力を有する。
表1及び表2に記載の組成における各成分の原料として、各々相当する酸化物を使用し、所望の割合となるよう秤量して、十分混合したものを調合原料とした。次に、調合原料を白金製の坩堝に投入し、電気炉にて1100~1500℃の温度で数時間熔融しながら、白金製の撹拌棒で適時撹拌することで、均質化を図り、清澄させた。その後、適当な温度に予熱しておいた金型に鋳込み、徐冷することにより、透明で均質なガラスを得た(但し、比較例5及び比較例8においては、ガラスが得られなかった)。
X線をガラスに入射させた場合、当該X線の一部はガラスに吸収され、残りは透過して出射するが、X線透過率は、入射X線の強度に対する出射X線の強度の割合として算出した。より具体的には、Tuckerらの式により入射X線スペクトルを算出し、次に、測定物(ガラス)を構成する元素の質量%及び密度の情報を元に、各エネルギー毎の減弱係数を、NIST(National Institute of Standards and Technology)に示されるデータを参考にして算出した。算出した入射X線スペクトルのうち測定物を透過したX線を透過X線としたとき、(透過X線/入射X線)×100をX線透過率(%)として定義した。
なお、X線透過率の算出では、厚み3mmに加工したガラスを用いることとし、また、X線管の管電圧60kV及び100kVのX線を用いて、それぞれの透過率を算出した。
ガラスの密度は、ミラージュ貿易株式会社製「ED-120T」を用い、「JIS Z 8807:2012 固体の密度及び比重の測定方法」に準拠して測定した。
ガラスの屈折率(nd)は、カルニュー光学工業株式会社製「KPR-2000」を用い、「JIS B 7071-2:2018 光学ガラスの屈折率測定方法-第2部:Vブロック法」に準拠して測定した。
ガラスの可視光透過率は、得られたガラスを厚さ10mmの対面平行研磨品に加工し、株式会社日立製作所製「U-4100」を用いて、日本光学硝子工業会規格の「JOGIS 02-2003 光学ガラスの着色度の測定方法」に準拠して測定した。但し、本開示においては、着色度ではなく透過率を示した。具体的には、JIS Z 8722に準拠し、200~800nmの分光透過率を測定し、400nmにおける透過率及び550nmにおける透過率をそれぞれ求めた。これらの透過率の値が大きいほど、可視光透過性が高いことを示す。
比較例5においては、ガラス化しなかった。これは、B2O3の含有量が少なすぎたこと、及びSiO2の含有量が多すぎたこと等に因るものと考えられる。
比較例6のガラスは、X線管の管電圧100kVでのX線透過率が0.1500%を超えていた。これは、La2O3の含有量が多すぎた(且つ、Gd2O3の含有量が少なすぎた)ことで、La2O3の放射線エネルギー帯の吸収端の影響が大きく作用したこと等に因るものと考えられる。
比較例8においては、ガラス化しなかった。これは、WO3の含有量が多すぎたこと等に因るものと考えられる。
比較例9のガラスは、X線管の管電圧60kVでのX線透過率が0.0050%を超え、管電圧100kVでのX線透過率が0.1500%を超えていた。これは、WO3の含有量が少なすぎたこと等に因るものと考えられる。
Claims (5)
- Pbを含有しないX線遮蔽ガラスであって、
B2O3:15~25質量%、
La2O3:7~50質量%、
Gd2O3:7~50質量%、
WO3:10~25質量%、
SiO2:0~7質量%、
ZrO2:0~10質量%、
Nb2O5:0~8質量%、
Ta2O5:0~10質量%、
Bi2O3:0~5質量%、
CeO2:0~3質量%、及び
Sb2O3:0~1質量%
を含有する組成を有し、
ZnOを含有せず、
La2O3及びGd2O3の合計含有量が45~65質量%であり、
厚み3mmとした当該ガラスにおいて、X線管の管電圧60kVのX線透過率が0.0050%以下であり、且つ、X線管の管電圧100kVのX線透過率が0.1500%以下である、ことを特徴とする、X線遮蔽ガラス。 - 密度が5.00g/cm3以上である、請求項1に記載のX線遮蔽ガラス。
- 屈折率(nd)が1.855以下である、請求項1又は2に記載のX線遮蔽ガラス。
- モル%で、La2O3、Gd2O3及びWO3の合計含有量が36モル%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のX線遮蔽ガラス。
- 請求項1~4のいずれかに記載のX線遮蔽ガラスを素材として用いたことを特徴とする、ガラス部品。
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