JP7338828B2 - 認知機能向上用組成物 - Google Patents

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本発明は、認知機能の向上、維持および/または改善に用いるための組成物に関する。
認知機能の向上、維持、改善は、若年層から老年層まで幅広い世代で求められている。記憶力や学習能力の向上、維持、改善は、受験、資格試験等に備えて勉強する学生や社会人だけではなく、日々の仕事や生活を行う上でも重要である。また、老年層では記憶力の低下、集中力の低下は生活の質に関わるため、認知機能の低下を予防し、これを向上、維持、改善させることが求められている。
さらに、老年期においては、老化に伴う認知機能の低下を引き起こす精神疾患の増加が高齢者の増加とともに社会問題となっている。認知機能の低下を引き起こす疾患としては、アルツハイマー病に代表される認知症だけではなく、うつ病、せん妄等の精神疾患も報告されている(非特許文献1)。
ところで、茶類は製法により緑茶等の不発酵茶と紅茶や烏龍茶等の発酵茶の主に2種類に分けられる。発酵過程では、生の茶葉の中に存在するグリコシダーゼ等の酵素反応により揮発性の香気成分が生成するため、発酵茶では、不発酵茶に含まれる香気成分に加えて新たな香気成分が種類、量ともに膨大に生じる。茶の香りは茶の品質や嗜好を左右するため製品化にあたり重要である一方で、茶の香気成分には抗ストレス作用等の健康機能が知られている(特許文献1)。
国際公開第2005/011718号
田中稔久、武田雅俊(2011)日本臨床、増刊号、52~56頁
本発明者らは、今般、紅茶香気成分が、認知機能を向上、維持および/または改善し得ることを見出した。本発明者らはまた、紅茶香気成分が交感神経活動を亢進して脳を活性化し、認知機能を向上、維持および/または改善することを見出した。本発明者らはさらに、紅茶香気成分とホエイ酵素分解物を併用することで、認知機能の向上、維持および/または改善効果をより高められることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
すなわち、本発明は認知機能を向上、維持および/または改善する組成物および用剤を提供することを目的とする。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]紅茶香気成分を有効成分として含んでなる、認知機能の向上、維持および/または改善に用いるための組成物(本明細書において「本発明の組成物」ということがある)並びに認知機能の向上剤、維持剤および改善剤(本明細書において「本発明の用剤」ということがある)。
[2]認知機能が、記憶機能である、上記[1]に記載の組成物および用剤。
[3]記憶機能が、長期記憶機能である、上記[2]に記載の組成物および用剤。
[4]認知機能が、注意機能である、上記[1]に記載の組成物および用剤。
[5]認知機能が、記憶獲得機能および/または記憶定着機能である、上記[1]に記載の組成物および用剤。
[6]紅茶香気成分が、ゲラニオール、リナロールオキシドおよび2-フェニルエタノールからなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の組成物および用剤。
[7]健常者に用いるための、上記[1]~[6]のいずれかに記載の組成物および用剤。
[8]認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患または症状の治療、予防または改善に用いるための、上記[1]~[7]のいずれかに記載の組成物および用剤。
[9]気道を介した吸入用組成物である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の組成物および用剤。
[10]食品または経口製剤の形態である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の組成物および用剤。
[11]乳タンパク質酵素分解物を有効成分としてさらに含んでなる、上記[10]に記載の組成物。
[12]乳タンパク質酵素分解物またはそれを含有する組成物と組み合わせて使用するための、上記[10]に記載の組成物。
本発明によれば、認知機能を向上、維持および/または改善しうる紅茶香気成分を含有する組成物が提供される。本発明の有効成分である紅茶香気成分は、ヒトが食品として長年摂取してきた紅茶由来の成分であることから、本発明はヒトを含む哺乳類に安全な機能性素材として利用できる点で有利である。
A:例1における対照および紅茶香料呈示による海馬歯状回領域におけるリン酸化CREBの免疫組織化学的染色画像である。B:同一視野面積における、対照呈示に対する紅茶香料呈示の染色細胞面積の比を表したグラフである。平均±標準偏差で表記した。***はp<0.001(t検定 vs.対照群)を示す。 例2における紅茶香料添加による脳組織のモノアミン産生を表したグラフである(A:セロトニン、B:ノルエピネフリン、C:ドーパミン、D:ジヒドロキシフェニル酢酸、E:3-メトキシチラミン、F:ホモバニリン酸)。平均±標準偏差で表記した。***はp<0.001(ANOVA Dunnett’s検定 vs.対照群)を示す。 例4におけるマウスの新奇物体認識試験の概要を示した図である。 例4におけるマウスの新奇物体探索の時間率(Discrimination index)を表した図である(A:紅茶香料、B:各化合物、C:5成分混合物)。平均±標準誤差で表記した。*はp<0.05(Dunnett’s検定 vs.対照群)を示す。 例4におけるマウスの非新奇物体探索と新奇物体探索のそれぞれの探索時間割合を表した図である(A:紅茶香料、B:各化合物、C:5成分混合物)。平均±標準誤差で表記した。*はp<0.05(t検定 vs.非新奇物体検索の探索時間割合)を示す。 例5におけるマウスの新奇物体探索の時間率(Discrimination index)を表した図である(A:ゲラニオール、B:ゲラニオール、C:リナロールオキシド、D:2-フェニルエタノール)。平均±標準誤差で表記した。***はp<0.001、*はp<0.05(Dunnett’s検定 vs.対照群)を示す。 香気成分の呈示タイミングについてマウスの新奇物体探索の時間率(Discrimination index)を表した図である(例6)。**はp<0.01(Dunnett’s検定 vs.対照群)を示す。 香気成分の呈示タイミングについてマウスの新奇物体探索の時間率(Discrimination index)を表した図である(例7)。 認知機能に対する香気成分とホエイ酵素分解物の併用効果についてマウスの新奇物体探索の時間率(Discrimination index)を表した図である(例8)。**はp<0.01、*はp<0.05(Dunnett’s検定 vs.対照群)を示す。 認知機能に対する香気成分とホエイ酵素分解物の併用効果についてマウスの新奇物体探索の時間率(Discrimination index)を表した図である(例9)。**はp<0.01、*はp<0.05(Dunnett’s検定 vs.対照群)を示す。 例10で実施した試験における試験香料吸入と瞳孔反射測定の流れについて示した図である。 例10で実施した自律神経反応評価試験における相対CR値(%)の測定結果を示した図である。白抜きバーが対照香料、黒色バーが被験香料を示す。対照香料の値を100として表示した。*はp<0.05、**はp<0.01(1標本t検定 vs.対照群)を示す。 例10で実施した自律神経反応評価試験における相対VD値(%)の測定結果を示した図である。白抜きバーが対照香料、黒色バーが被験香料を示す。対照香料の値を100として表示した。*はp<0.05、**はp<0.01(1標本t検定 vs.対照群)を示す。
発明の具体的説明
本発明において、「紅茶香気成分」とは、紅茶葉に含まれる香りを有する成分、すなわち、紅茶葉に含まれる香気成分を意味する(以下、「本発明の紅茶香気成分」ということがある)。本発明の紅茶香気成分としては、例えば、紅茶葉それ自体に含まれる香気成分であっても、紅茶葉を抽出処理に付することにより得られる紅茶抽出物に含まれる香気成分であってもよい。本発明の紅茶香気成分はまた、紅茶抽出物の形態で組成物に配合することができる。紅茶抽出物としては、紅茶飲料や紅茶香料の製造原料として用いられている紅茶葉からの抽出液およびその加工品類(例えば、濃縮液体エキス、粉末エキス等)が挙げられる。
本発明の紅茶香気成分は、1種類の香気成分であってもよく、2種以上の香気成分の組み合わせであってもよい。本発明の紅茶香気成分を構成する成分としては、例えば、リナロール、ゲラニオール、ベンジルアルコール、リナロールオキシド、2-フェニルエタノールが挙げられる。また、本発明の組成物は、紅茶香気成分としてゲラニオール、リナロールオキシドおよび2-フェニルエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の紅茶香気成分は合成物であっても天然物であってもよく、市販品を用いてもよい。本発明の紅茶香気成分が天然物である場合には、公知の手法に従って紅茶香気成分を紅茶葉から抽出し(ヘッドスペース法により収集し、溶媒に溶解させたものを含む)、場合によっては所望の成分を精製または粗精製したもの、すなわち、紅茶葉からの抽出液およびその加工品を使用することができる。紅茶葉からの抽出液およびその加工品は、市販されている紅茶飲料の製造原料(例えば、紅茶抽出液、紅茶香料)を用いてもよい。
本発明において「紅茶葉」とは、ツバキ科の常緑樹である茶樹(Camellia sinensis var.)の芽、葉または茎を萎凋させ、揉捻を行い、発酵させた後に乾燥させたものを意味する。本発明で用いられる紅茶葉は、茶期や、茶葉の形状、産地、品種や種類および等級等は特に限定されず、一般に飲用で市販されている乾燥茶葉を使用することができる。茶葉の種類は、好ましくは、スリランカ産茶葉(例えば、ウバ、ディンブラ、キャンディ、ラトナプラ、ギャル、ルフナ)、インド産茶葉(例えば、アッサム、ダージリン、ニルギリ)、ケニア、キーマン、ジャワであり、より好ましくは、ダージリン、ディンブラである。これらは1種類を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の組成物および用剤は、本発明の紅茶香気成分を単独で使用することができ、あるいは、他の成分と混合して使用することもできる。本発明の組成物および用剤における本発明の紅茶香気成分の配合量は、その目的、用途、形態、剤型、症状、年齢等に応じて任意に定めることができ、本発明はこれに限定されないが、全体量に対して、0.001~10質量%(好ましくは0.01~1質量%)の含量で配合することができる。本発明においては、本発明の用剤を本発明の紅茶香気成分からなるものとし、本発明の組成物を本発明の紅茶香気成分と他の成分とを含んでなるものとすることができる。
本発明の組成物中の紅茶香気成分含有量はガスクロマトグラフィー質量分析法により測定することができ、例えば、後記実施例(例3)に記載された手順に従って測定することができる。
後記実施例に記載されるように、紅茶香気成分は記憶機能をはじめとする認知機能の向上、維持および/または改善効果を有する。従って、紅茶香気成分は認知機能の向上、維持および/または改善のための組成物の有効成分として使用することができるとともに、認知機能の向上方法、認知機能の維持方法および認知機能の改善方法に使用することができる。また、紅茶香気成分は認知機能の向上剤、認知機能の維持剤および認知機能の改善剤の有効成分として使用することができる。本発明において「認知機能」(cognitive function)とは、知覚から判断に至るすべての情報処理の過程を包括する概念であり、この過程には記憶機能(記憶獲得機能、記憶定着機能、記憶想起機能および記憶再生機能を含む)、注意機能および判断機能等の様々な高次脳機能が関与する。すなわち、本発明において「認知機能」はこれらの高次脳機能を含む意味で用いられる。
本発明において「認知機能の向上」とは、例えば、認知機能を現状より高めることを含む。また、「認知機能の維持」とは、例えば、認知機能の低下を予防することを含む。さらに、「認知機能の改善」とは、例えば、いったん低下した認知機能や低下の兆しがある症状を回復させることを含む。認知機能の向上、維持および/または改善は、認知機能の増強や、認知機能の低下抑制を含む意味で用いられる。
本発明において、認知機能の向上、維持および/または改善は、認知機能に関与する高次脳機能を指標にして評価することができる。認知機能に関与する高次脳機能を評価するモデル動物試験は公知であり、例えば、高次脳機能の一つである記憶機能を評価する新奇物体認識試験(後記例4~9参照)により、認知機能の向上、維持および/または改善を評価することができる。
本発明において「記憶機能」とは、空間認知機能、作業記憶機能、ワーキングメモリー機能、エピソード機能、視覚記憶機能、学習機能を含む機能をいい、中長期的な記憶機能を含む意味で用いられる。ワーキングメモリーには、言語のワーキングメモリー、作業のワーキングメモリーおよび空間のワーキングメモリーが含まれる。本発明において記憶機能は、好ましくは長期記憶機能である。
本発明において「記憶機能の向上」とは、例えば、記憶機能を現状より高めることや、中長期的な記憶の定着を促進、ひいては脳の発育を促進させることを含む。また、「記憶機能の維持」とは、例えば、記憶機能の低下を予防することを含む。さらに、「記憶機能の改善」とは、例えば、いったん低下した記憶機能や低下の兆しがある症状を回復させることを含む。記憶機能の向上、維持および/または改善としては、記憶機能の増強や、記憶機能の低下抑制が挙げられる。
本発明において「注意機能」とは、情報の一部に注意を向けたり、対象を変えたり、同時に複数の対象に注意を配分することを含む意味で用いられる。すなわち、「注意機能」は、選択機能(外界から入ってくる様々な情報から特定のものに対して注意を向ける機能)、維持機能(一度向けた注意を一定の時間、維持する機能)、転換機能(一度向けた注意をその他のものへと移す機能)、配分機能(複数の作業を同時に行う場合に注意をうまく振り分ける機能)を含む。注意機能は集中力と言い換えることもできる。
本発明において「注意機能の向上」とは、例えば、注意機能を現状より高めることを含む。また、「注意機能の維持」とは、例えば、注意機能の低下を予防することを含む。さらに、「注意機能の改善」とは、例えば、いったん低下した注意機能や低下の兆しがある症状を回復させることを含む。注意機能の向上、維持および/または改善としては、注意機能の増強や、注意機能の低下抑制が挙げられる。
本発明において「判断機能」とは、いくつかの認知機能が統合された機能であり、物体の状態や形状を把握する空間認識、自分の今の状況を判断する見当識、物事をグループに分けて思考するグルーピング等、日常生活において求められる状況判断、意思決定が含まれる機能を意味する。
本発明において「判断機能の向上」とは、例えば、判断機能を現状より高めることを含む。また、「判断機能の維持」とは、例えば、判断機能の低下を予防することを含む。さらに、「判断機能の改善」とは、例えば、いったん低下した判断機能や低下の兆しがある症状を回復させることを含む。判断機能の向上、維持および/または改善としては、判断機能の増強や、判断機能の低下抑制が挙げられる。
本発明においては、また、認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患および症状の治療、予防または改善(好ましくは記憶機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患および症状の治療、予防または改善)に紅茶香気成分を使用することができる。従って、本発明によれば、紅茶香気成分を有効成分として含んでなる、認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患および症状の治療、予防または改善に用いるための組成物と、紅茶香気成分を有効成分として含んでなる、認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患および症状の治療剤、予防剤および改善剤が提供される。
認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患および症状としては、例えば、記憶障害(記憶を思い出すことができない、新たなことを覚えることができないという症状)、見当識障害(時間・場所・人物の失見当)、認知機能障害(計算能力の低下・判断力低下・失語・失認・失行・実行機能障害)が挙げられる。
本発明の認知機能の向上、維持および/または改善に用いるための組成物並びに本発明の認知機能の向上剤、維持剤および/または改善剤と、本発明の治療剤、予防剤および改善剤は、芳香料、化粧料、食品、医薬品、医薬部外品、飼料(ペットフード含む)等の形態で提供することができ、下記の記載に従って実施することができる。
本発明の組成物および用剤は、対象に気道を介して吸入させることができる。ここで、気道を介した吸入とは、上気道のうち特に鼻腔を介した吸入である。また、対象はヒトを含む哺乳動物であり、ヒトは健常者を含む。本発明の紅茶香気成分を鼻腔を介して対象に吸入させることにより嗅覚が刺激され、認知機能の向上、維持および/または改善効果が得られる。
本発明の組成物および用剤を気道を介して吸入させる場合には、気道を介した吸入に適した形態とすることができる。例えば、本発明の紅茶香気成分は芳香料に含有させ、該芳香料の使用により対象に吸入させることができるため、芳香料または芳香組成物として処方することができる。芳香料としては、例えば、アロマオイル、アロマキャンドル、ルームフレグランス、カーフレグランス、お香が挙げられる。本発明においては、本発明の紅茶香気成分をエタノール、油等の溶媒で希釈し、ディフューザー(芳香拡散器)を用いて霧化させて対象に吸入させることが好ましく、本発明の紅茶香気成分はディフューザーでの使用に適した芳香料として処方することができる。
本発明の紅茶香気成分はまた、化粧料に含有させ、該化粧料の使用により対象に吸入させることができるため、化粧料または化粧組成物として処方することもできる。化粧料としては、例えば、パルファム、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン等の香水;乳液、クリーム、化粧水、美容液、ボディーローション、ボディーパウダー、アロマオイル等のスキンケア化粧料;ヘアクリーム、リンス、コンディショナー、整髪料等の頭髪化粧料;ボディーソープ、シャンプー、リンスインシャンプー、洗顔料、ハンドソープ、石鹸等の洗浄料;衣類消臭剤、糊付け剤、静電気防止剤、柔軟剤等の洗濯仕上げ剤;衣類消臭剤、糊付け剤、静電気防止剤が挙げられる。本発明の紅茶香気成分を含有する芳香料および化粧料並びに芳香組成物および化粧組成物は公知の方法に従って調製することができる。
本発明の組成物および用剤を芳香料または化粧料として提供する場合には、吸入による嗅覚刺激を通じて認知機能の向上、維持および/または改善効果が奏されるような量で本発明の紅茶香気成分を配合することができる。芳香料および化粧料中の本発明の紅茶香気成分の含有量は、認知機能の向上、維持および/または改善効果が得られるように適宜決定することができ、その場合には、後述する紅茶香気成分の用量、芳香料および化粧料の種類、芳香料については拡散に必要な量、化粧料については1回当たりの通常使用量および適用部位、適用温度等を考慮することができる。例えば、本発明の組成物および用剤をディフューザー用の芳香料として提供する場合、該芳香料中の本発明の紅茶香気成分の含有量は、0.000001~1質量%(好ましくは0.00001~0.1質量%、より好ましくは0.0001~0.01質量%)とすることができる。また、本発明の組成物および用剤をスキンケア化粧料として提供する場合、該化粧料中の本発明の紅茶香気成分の含有量は、0.001~1.0質量%(好ましくは0.01~0.5質量%)とすることができる。
本発明においては、本発明の紅茶香気成分を所定の用量で対象に吸入させることにより、認知機能を向上、維持および/または改善することができる。以下の記載により限定されるものではないが、一例を挙げれば、流動パラフィンに0.00001~0.1質量%の濃度で溶解させた本発明の紅茶香気成分を、0.011mの室内(広さ0.076m)において、室温(23℃、湿度55±5%)下、ディフューザーで揮散させたときに吸入する紅茶香気成分に相当する量を、対象に1回当たり10秒以上、好ましくは1分以上、さらに好ましくは5分以上吸入させることができる。吸入時間の上限は特に限定されないが、例えば、30分または1時間とすることができる。
本発明の組成物および用剤はまた、対象に経口摂取または経口投与することができる。前述の通り、本発明の紅茶香気成分は、鼻腔を介した嗅覚刺激により認知機能の向上、維持および/または改善効果を発揮するが、本発明の紅茶香気成分は、経口摂取または経口投与によりその一部が口腔および咽頭を通じて鼻腔内に拡散し、嗅覚が刺激されるため、本発明においては、紅茶香気成分の経口摂取または経口投与によっても認知機能の向上、維持および/または改善を図ることができる。ここで、対象はヒトを含む哺乳動物であり、ヒトは健常者を含む。
本発明の組成物および用剤は経口摂取または経口投与に適した形態で提供することができ、そのような形態の例としては食品や経口製剤が挙げられる。ここで「食品」とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、病者用食品)を含む意味で用いられる。「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料の形態であっても、半液体やゲル状の形態であっても、固形状の形態であってもよい。本発明の組成物および製剤は、本発明の紅茶香気成分を口腔および咽頭を通じて容易に鼻腔内に拡散させるために、口腔内で咀嚼される食品(例えば、チューインガム)、口腔内で咀嚼される製剤(例えば、チュアブルタブレット)、口腔内で滞留する食品(例えば、キャンディ、グミ、清涼菓子)、口腔内で滞留する製剤(例えば、トローチ)、菓子(例えば、ゼリー)および飲料(例えば、紅茶飲料、乳入り飲料、乳発酵飲料、エナジードリンク、スポーツドリンク)の形態で提供することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
本発明の組成物および用剤を食品または経口製剤として提供する場合には、本発明の有効成分である紅茶香気成分が口腔および咽頭を通じて鼻腔内に拡散し、嗅覚が刺激され、認知機能の向上、維持および/または改善効果が奏されるような量で紅茶香気成分を含有させる(例えば、配合する)ことができる。本発明の紅茶香気成分の含有量は、食品および経口製剤の種類、1回当たりの通常摂取量、口腔内での滞留時間、摂取時の温度、製剤の表面積、形状等を考慮して決定することができる。例えば、本発明の組成物および用剤をチュアブルタブレットとして提供する場合、成人への1回投与が予定されているチュアブルタブレット中の本発明の紅茶香気成分の含有量は、0.01~10.0質量%(好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%)とすることができる。本発明の組成物および用剤をチュアブルタブレットとして提供する場合には、紅茶香気成分以外に、賦形剤、結合剤、増粘剤、甘味料、酸味料、香料、着色料、保存剤、安定化剤、乳化剤、抗酸化剤、コーティング剤等から選択される1種または2種以上の成分を配合し、常法により製造することができる。また、本発明の組成物および用剤を飲料として提供する場合、成人の1回摂取が予定されている飲料(例えば、500mL)中の本発明の紅茶香気成分の含有量は0.001~1質量%(好ましくは0.01~0.5質量%)とすることができる。本発明の組成物および用剤を飲料として提供する場合には、紅茶香気成分を原料に含有させる(例えば、配合する)こと以外は、通常の飲料の製造手順に従って製造することができる。
本発明の組成物および用剤は認知機能のうち記憶機能の向上、維持および/または改善のために用いることができる。この場合、本発明の組成物および用剤は、記憶行動時(記憶の獲得・定着時)および記憶呼び出し行動時(記憶の想起・再生時)のいずれかまたは両方の時点で吸入、摂取または投与することができ、好ましくは記憶行動時に吸入、摂取または投与することができる。吸入、摂取または投与のタイミングについては、記憶行動時および記憶呼び出し行動時のいずれかまたは両方の時点で、その行動と同時またはその行動の直前とすることができ、好ましくはその行動の直前とすることができる。
本発明の組成物および用剤は、他の成分や素材と併用することに、制限はない。例えば、認知機能の向上、維持および/または改善効果が期待できる成分や素材と併用することで、認知機能の向上、維持および/または改善の効果や、認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患および症状の治療、予防または改善等の効果をさらに高めることができる。認知機能の向上、維持および/または改善効果が期待できる成分としては、乳タンパク質酵素分解物が挙げられる。すなわち、本発明によれば、紅茶香気成分と、乳タンパク質酵素分解物とを有効成分として含んでなる、認知機能の向上、維持および/または改善に用いるための組成物および認知機能の向上、維持および/または改善剤が提供される。本発明によればまた、乳タンパク質酵素分解物またはそれを含有する組成物と組み合わせて使用するための、本発明の組成物および用剤が提供される。
本発明の組成物および用剤の有効成分である乳タンパク質酵素分解物(以下、「本発明の乳タンパク質分解物」ということがある)は、乳タンパク質の酵素分解物である限り特に限定されない。乳タンパク質としては、全乳、粉乳、カゼインまたはホエイを用いることができ、好ましくはホエイである。ここで、「ホエイ」とは、乳清、乳漿またはホエーともいい、乳から乳脂肪分やカゼイン等を除いた水溶液を意味する。ホエイはβ-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、血清アルブミン、免疫グロブリン等から構成される。本発明で使用するホエイの由来動植物は問わないが、牛乳由来ホエイを用いることが好ましい。本発明の乳タンパク質分解物は、好ましくはホエイタンパク質酵素分解物(以下、単に「ホエイ酵素分解物」あるいは「ホエイ分解物」ということがある)である。
本発明の組成物および用剤における本発明の乳タンパク質分解物の含有量(固形分換算)は、その目的、用途、形態、剤型、症状、年齢等に応じて任意に定めることができ、本発明はこれに限定されないが、例えば、全体量に対して、0.001~99質量%(好ましくは0.01~95質量%)とすることができる。
本発明の乳タンパク質分解物(特に、ホエイ分解物)は、好ましくはGTWY(配列番号1)のアミノ酸配列を有するペプチドおよびWYのアミノ酸配列を有するペプチド(以下、「本発明のペプチド」ということがある)を含有してなるものを使用することができる。ここで、「アミノ酸配列を有するペプチド」とは、該アミノ酸配列により配列が特定されたペプチドを意味する。
本発明の乳タンパク質分解物(特に、ホエイ分解物)中のテトラペプチドGTWYの含有量(固形分換算)は、例えば、0.001~10質量%(好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~1質量%)であり、ジペプチドWYの含有量(固形分換算)は、例えば、0.0005~5質量%(好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.03~0.3質量%)である。
本発明の組成物および用剤における乳タンパク質分解物(特に、ホエイ分解物;固形分換算)の含有量は、その目的、用途、形態、剤型、症状、体重等に応じて任意に定めることができ、本発明はこれに限定されないが、例えば、全体量に対して、0.001~50質量%(好ましくは0.01~10質量%)とすることができる。
本発明の乳タンパク質分解物(特に、本発明のペプチドを含有する乳タンパク質分解物)の製造方法は公知であり、例えば、国際公開公報第2017/086303号の記載に従って製造することができる。あるいは、市販されているホエイ分解物(例えば、HW-3(雪印メグミルク社製))を本発明の乳タンパク質分解物として用いてもよい。
本発明のペプチドを含有する乳タンパク質分解物は、例えば、原料タンパク質にタンパク質分解酵素を含む酵素製剤を作用させることにより製造することができる。
原料としてホエイタンパク質を用いる場合、酵素反応に供されるホエイタンパク質の濃度は、タンパク質が溶解し得る限り限定されないが、ゲル化や凝集を抑制し、濃縮の手間を省く観点から、1~30w/v%とすることが好ましく、より好ましくは1~20w/v%であり、さらに好ましくは5~15w/v%である。
原料タンパク質が乳清や乳漿のような水溶液の場合、そのままで、あるいは濃縮または希釈して酵素反応に供すればよく、必要に応じpH調整等をすることができる。原料タンパク質が紛体等の固形物の場合、酵素反応が進行する限りいずれの水系溶媒に溶解させてもかまわないが、食品としての利用を考慮し、水または食品添加物グレードの緩衝液に溶解させることが好ましい。酵素反応で生じたアミノ酸により反応液のpHが変化しないようにするため緩衝液を使用することが好ましい。緩衝液の種類は任意であり、その後の利用や風味・味覚・ミネラル量を考慮して決定すればよいが、反応液のpHを4~9、好ましくは5~8、より好ましくは7~8に維持できるような組成が好ましい。最も好ましくはリン酸カリウム緩衝液である。緩衝液の濃度は緩衝効果が得られる範囲であれば任意であるが、風味・味覚・ミネラル量を考慮すると、0.01~0.5Mとすることができ、好ましくは0.05~0.2Mであり、より好ましくは約0.1Mである。
酵素はタンパク質分解酵素を含む酵素剤であればいずれも使用できるが、中性プロテアーゼを含む酵素製剤であることが好ましく、1種類またはそれ以上を組合せて使用することができる。酵素製剤は、たとえばバチルス・サブティリス、アスペルギルス・オリゼ、アルペルギルス・メレウス等の微生物を由来としたものを使用することができ、このうちアスペルギルス・オリゼ由来の酵素製剤とアルペルギルス・メレウス由来の酵素製剤が好ましく、より好ましくはアルペルギルス・メレウス由来の酵素製剤である。
本発明では市販の酵素製剤を使用することができ、例えば、天野エンザイム社、新日本化学工業社、DSM社、ダニスコ社、ノボザイム社、HBI社等から酵素製剤を入手可能である。酵素製剤の添加量は任意であるが、適度な加水分解反応速度と、コストを考慮すると、例えば、0.01~5w/v%、好ましくは0.05~4w/v%、より好ましくは0.1~0.5w/v%とすることができる。
酵素反応温度と酵素反応時間は原料タンパク質の加水分解が十分になされ、酵素分解物の品質が保たれるように設定することができる。すなわち、酵素反応温度は、例えば、30~70℃とすることができ、好ましくは40~70℃であり、より好ましくは45~65℃である。また、酵素反応時間は1~12時間とすることができ、好ましくは2~10時間であり、より好ましくは4~5時間である。なお、反応温度と反応時間は本発明のペプチドの生成量を確認しながら適宜調整することができる。
酵素反応は温度を上昇させながら行うこともできる。例えば、30℃から75℃にまで4~10時間かけて上昇させながら反応させることができる。好ましくは、35℃から75℃まで5~8時間かけて上昇させながら反応させることができ、より好ましくは35℃から75℃まで6~8時間かけて反応させることができる。温度上昇スピードは任意であるが、45℃から55℃の間での保持時間を長めにし(5~7時間)、その後60℃まですみやかに上昇させた後に60℃から75℃の間で長めに(たとえば1~3時間)保持することが好ましい。最も好ましいのは50℃で酵素を投入し、5~7時間保持後、任意の速度で昇温させ、60~65℃あるいは65~75℃の目標温度で1~3時間保持する方法である。
反応に際しては反応効率の観点から反応液を撹拌することが好ましい。基質が酵素とよく接するように、液撹拌速度は速い方がよいが、速すぎると反応液が飛び散る恐れがあるため、例えば、100~500rpmとすることができ、好ましくは200~400rpmであり、より好ましくは約250rpmである。
所望のペプチドが得られたら反応液は酵素反応を停止工程に付すことが好ましい。酵素反応停止工程では、反応液を高温にしたり、キレート剤を添加して酵素の化学構造を変化させたりする方法や、膜処理により酵素を除去する方法を採用することができる。好ましい手法は高温による失活処理である。該方法は80~90℃で5~30分、好ましくは80~90℃で20~30分間保持することで実施することができる。また、後述の濃縮工程で高温になる場合には、濃縮工程を兼ねて行うことができる。
酵素反応工程および酵素反応停止工程を経た反応液(乳タンパク質分解物)は、さらに殺菌工程に付してもよい。殺菌工程としては、例えば、後述の膜処理工程や高温殺菌工程が挙げられる。加熱殺菌工程は酵素反応停止工程を兼ねることもでき、製造工程の簡略化の点で有利である。
酵素反応工程および酵素反応停止工程を経た反応液(乳タンパク質分解物)は、さらに精製工程に付してもよい。精製工程としてはたとえば膜処理工程が挙げられ、好ましい膜処理は限外ろ過である。限外ろ過の分画分子量としては3~100kDaのものが好ましく、5~50kDaがより好ましい。精製工程を実施すると、実施しなかった場合と比較してペプチド組成物の風味を改善することができる点で有利である。また、精製工程は酵素反応停止工程および殺菌工程を兼ねることもでき、製造工程の簡略化の点でも有利である。
酵素反応工程および酵素反応停止工程を経た反応液(乳タンパク質分解物)は、保管や運搬の観点からさらに濃縮工程に付してもよい。濃縮工程は任意の方法を選択することができるが、減圧濃縮、凍結乾燥および噴霧乾燥(スプレードライ)、膜処理による濃縮(例えば、逆浸透膜を用いる方法)による方法が好ましく、より好ましくは凍結乾燥および噴霧乾燥である。濃縮を大量かつ効率的に実施する観点から噴霧乾燥が特に好ましい。
本発明のペプチドの含有量の測定は、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC/MS/MS)により実施することができる。当業者であればその条件設定は容易に行うことができ、測定の際に標準ペプチドとしてLC/MS/MS測定用の純度のものを使用することはいうまでもないが、例えば、SIGMA ALDRICH社製AQUAペプチドを使用することができる。
本発明において認知機能の向上、維持および改善を目的とした本発明の乳タンパク質分解物の成人1日当たりの摂取量および投与量(固形分換算)は、例えば、0.01~100g(好ましくは0.1~10g)である。認知機能の向上、維持および改善を目的とした本発明のペプチドの成人1日当たりの摂取量および投与量(固形分換算)は、例えば、0.01~100mg(好ましくは0.1~10mg)である。
本発明の食品には認知機能の向上、維持および/または改善効果を有する旨の表示が付されてもよい。この場合、消費者に理解しやすい表示とするため本発明の食品には以下の一部または全部の表示が付されてもよい。なお、本発明において「認知機能の向上、維持および/または改善」が以下の表示を含む意味で用いられることはいうまでもない。
・記憶力を持続する、高める、向上させる、改善する、増強する、サポートする、維持する
・認知機能を持続する、高める、向上させる、改善する、増強する、サポートする、維持する
・記憶力の維持に役立つ、低下を防止する
・集中力を持続する、高める、向上させる、改善する、増強する、サポートする、維持する
・うっかりを防止する、物忘れを防止する
・記憶の定着を向上させる、記憶の精度を高める
・加齢に伴う記憶の低下を抑制する
本発明の別の面によれば、有効量の紅茶香気成分を哺乳動物に気道を介して吸入させるか、あるいは、有効量の紅茶香気成分を哺乳動物に摂取させるか、または投与することを含んでなる、認知機能の向上、維持および/または改善方法が提供される。本発明の方法は、本発明の組成物および用剤に関する記載に従って実施することができる。
本発明の別の面によればまた、有効量の紅茶香気成分を哺乳動物に気道を介して吸入させるか、あるいは、有効量の紅茶香気成分を哺乳動物に摂取させるか、または投与することを含んでなる、認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患または症状の治療、予防または改善方法が提供される。本発明の治療、予防または改善方法は、本発明の組成物および用剤に関する記載に従って実施することができる。
本発明の方法はヒトを含む哺乳動物における使用であってもよく、治療的使用と非治療的使用のいずれもが意図される。本明細書において、「非治療的」とはヒトを手術、治療または診断する行為(すなわち、ヒトに対する医療行為)を含まないことを意味し、具体的には、医師または医師の指示を受けた者がヒトに対して手術、治療または診断を行う方法を含まないことを意味する。
本発明のさらに別の面によれば、認知機能向上剤、維持剤および/または改善剤の製造のための紅茶香気成分の使用と、認知機能向上剤、維持剤および/または改善剤としての紅茶香気成分の使用が提供される。本発明によればまた、認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患または症状の治療剤、予防剤または改善剤の製造のための、紅茶香気成分の使用と、認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患または症状の治療剤、予防剤または改善剤としての、紅茶香気成分の使用が提供される。本発明の使用は、本発明の組成物および用剤に関する記載に従って実施することができる。
本発明のさらにまた別の面によれば、認知機能の向上、維持および/または改善に用いるための紅茶香気成分と、認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患または症状の治療、予防または改善に用いるための紅茶香気成分が提供される。上記の紅茶香気成分は、本発明の組成物および用剤に関する記載に従って実施することができる。
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
例1:記憶増強に対する紅茶香料の効果
(1)試験成分の調製
紅茶香料は、ディンブラ紅茶葉から常法に従って香気成分を抽出して紅茶香料(溶媒:エタノール)を調製し、これを試験成分とした(以下、例2~5において同じ)。また、対照成分としてMilliQ水を用いた。濾紙(Whatman社製、定性濾紙グレード1、2cm×2cm、以下同じ)1枚あたり100μLの試験成分または対照成分を吸収させ、これを6枚ずつ作製した。
(2)試験方法
10週齢雄のC57BL/6マウス(オリエンタル酵母工業社)を1ケージ(縦18.2cm、横26cm、高さ12.8cm)に1匹ずつ飼育して3時間馴化し、実験群と対照群(各群3匹)に分けた。実験群のマウス1匹あたり上記(1)で作製した試験成分(紅茶香料溶液)を吸収させた濾紙2枚を、また、対照群のマウス1匹あたり対照成分(MilliQ水)を吸収させた濾紙2枚をケージの床において、それぞれ30分間呈示した。該濾紙の呈示開始から1.5時間後に4%パラホルムアルデヒドで還流固定を行い、脳を摘出した。次いで、30%スクロースに置換した後、OTCコンパウンドに脳を包埋し、ミクロトーム(Leica CM3050、Leica社製)を用いて1匹の脳あたり厚さ30μmの切片を作製した。
試験成分(紅茶香料)による記憶増強効果を調べるため、一次抗体としてリン酸化CREB(pCREB)抗体(cell signaling technology社製)、二次抗体としてヒストファインシンプルステインマウスMAX-PO(R)ウサギ第一抗体(ニチレイバイオ社製)を用いて、得られた切片に免疫組織化学的染色を行った。次いで、3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)(SIGMA社製)を用いて切片を発色させた後、スライドガラスに封入した。切片の組織画像を撮影し、画像解析ソフトImageJを用いて、同一視野面積における、リン酸化CREB染色細胞面積を算出し、対照成分呈示に対する試験成分呈示のリン酸化CREB発現細胞面積の比を算出した。なお、リン酸化されたCREBは、記憶関連遺伝子の転写因子として機能し、長期記憶ならびに短期記憶を制御することが知られている(Suzuki A et al., J Neurosci., 31(24):8786-802(2011))。
(3)結果
結果を図1に示す。
図1Aの結果から、紅茶香料を呈示した実験群では、海馬歯状回領域でのリン酸化CREBの発現(黒矢頭で表示)が確認された。一方、対照群ではリン酸化CREBの発現(同領域を白矢頭で表示)はほとんど認められなかった。また、図1Bの結果から、紅茶香料(ディンブラ紅茶葉抽出物香料)を呈示した実験群では、海馬歯状回領域でのリン酸化CREBの発現面積が対照群に比べて約2倍となり有意に上昇することから、紅茶香料は嗅覚刺激により記憶増強効果を有することが示された。
例2:脳組織のモノアミン産生に対する紅茶香料の効果
(1)試験方法
11週齢雄のICRマウス(日本チャールズリバー社)5匹を用いた。マウスを断頭し、脳をすばやく摘出し、2mMとなるように4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)(GIBCO社製)を加えて冷却したハンクス平衡塩溶液(HBSS)(GIBCO社製)に入れた。Neo-Linear Slicer-MT(堂阪EM社製)を用いて、海馬を含有する脳スライスを作製した。5匹のマウスから厚さ300μmの矢状脳スライスを作製し、1試験区あたり脳スライス4枚を用いて4反復のデータを取得した。また、試験成分として、上記例1(1)で調製した紅茶香料溶液を用いた。具体的には、紅茶香料溶液濃度が0%(非添加)、0.001%、0.01%または0.1%となるよう2mM HEPESを含むHBSSに添加することにより、対照区(非添加)および3試験区の紅茶香料サンプルを調製し、37℃で保温した。脳スライス1枚あたり500μLの紅茶香料サンプルを添加し、30分後に100μLの紅茶香料サンプルを回収した(回収サンプル)。各回収サンプルを除タンパク処理した後、HPLC-ECDシステム(700series、エイコム社製)を用いてセロトニン(5-HT)、ドーパミン(DA)、ドーパミンから合成されるノルエピネフリン(NE)並びにドーパミン代謝物であるジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)、3-メトキシチラミン(3-MT)およびホモバニリン酸(HVA)の濃度を測定した。なお、セロトニン、ドーパミンおよびノルエピネフリンはモノアミン神経系の神経伝達物質であり、セロトニンは脳機能において様々な機能に関与し(Adv.Pharmacol.,68:167-197(2013))、ドーパミンは認知機能、記憶機能といった高次脳機能に関与し(日生誌,65(4-5):113-129(2003))、ノルエピネフリンは注意機能、記憶・学習機能等に関与する(総合リハ,25(11):1229-1236(1997))。
(2)結果
結果を図2に示す。
図2の結果から、紅茶香料サンプルの添加(刺激)によって脳スライスから産生されるセロトニン、ドーパミン、3-メトキシチラミンおよびホモバニリン酸が紅茶香料濃度依存的に増加することが確認されたことから、ドーパミンの産生とともにその代謝も増強しており、産生されたドーパミンは機能的に作用していることが示された。
(3)考察
本例から、紅茶香料またはその構成成分が脳内に移行し薬理効果を発揮している可能性が示された。ここで、紅茶成分やその構成化合物が脳内で薬理効果を発揮するという報告はないが、他の化合物では嗅覚刺激を介して該化合物が脳内で薬理効果を発揮するとの報告がある(例えば、臨床神経生理学,42(4):87-99(2014))。従って、本発明の紅茶香気成分による薬理効果(認知機能向上等)については、紅茶香料やそれを構成する化合物が脳内に移行することによって発揮される機序も含まれると考えられた。本発明の紅茶香気成分による薬理効果の機序が化合物の直接の脳内移行によるものに起因することを前提とすると、本発明の紅茶香気成分による薬理効果の発揮は、経口摂取等により体内に取り込まれてから血流を介しまたは何らかのシグナル伝達を介して発揮される薬理作用よりも即効性があるものと考えられる。従って、本発明の紅茶香気成分は、即効性を有する点で有利であるといえる。
例3:紅茶香料の成分分析
(1)分析方法
上記例1(1)で調製した紅茶香料溶液について、以下の条件にてガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を行い、紅茶香料に含まれる各種成分の含有量を測定した。分析に際して使用した標準品は、リナロール(東京化成工業社製、以下同じ)、ゲラニオール(シグマアルドリッチ社製、以下同じ)、ベンジルアルコール(シグマアルドリッチ社製、以下同じ)、リナロールオキシド(東京化成工業社製、以下同じ)および2-フェニルエタノール(東京化成工業社製、以下同じ)の純品を用いた。
[GC-MS条件]
装置(リナロールオキシド以外の分析):7890A/5875C inertXL(Agilent Technologies社製)
装置(リナロールオキシドの分析):7890A/5975C inertXL(Agilent Technologies社製)
カラム(リナロールオキシド以外の分析):DB-WAX UI(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm、Agilent Technologies社製)
カラム(リナロールオキシドの分析):DB-WAX(長さ30m、内径0.25mm、
膜厚0.25μm、Agilent Technologies社製)
注入量:1μL
注入口温度:150℃
カラム槽昇温:60℃(1分間)→15℃/分→220℃
ヘリウムガス流量:1mL/分
(2)結果
結果を表1に示す。
Figure 0007338828000001
得られたクロマトグラム(データ示さず)から、検出されたフラグメントイオン(m/z)は、リナロールが136、121、ゲラニオールが123、93、ベンジルアルコールが108、79、リナロールオキシドが111、94、2-フェニルエタノールが122、91であった。また、表1の結果から、上記例1(1)で調製した紅茶香料には、紅茶の主要な香気成分として知られる2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、リナロールオキシドが特に多く含まれていることが確認された。
例4:認知機能に対する香気成分の効果(1)
(1)認知機能の評価方法(新奇物体認識試験)
マウス等の齧歯類は、新奇物体と認識すると探索欲求からこれに接近し、形状の確認、匂いを嗅ぐ等の探索行動を行う。このとき、記憶している物体に対しては探索行動をとらないか、もしくは新奇物体と比較して探索行動の時間(探索時間)が短くなる。新奇物体認識試験はこの性質を利用するものであり、記憶状態を評価することができる。本実施例では新奇物体認識試験により各種成分の記憶への影響について評価を行った。
ここで、新奇物体認識試験は、物体の形状を24時間後、どの程度記憶しているかを判定し、記憶状態(記憶の保持)を検討する試験である。本実施例で行った試験の概要は図3に示される通りである。
試験は以下の通り実施した。すなわち、ゴルフボール程度の大きさの2つの同じ形の積み木Xを、容器(縦38.5cm、横38.5cm、高さ40cm)の隣り合った角から4cmずつ中央へ離れた場所に設置した。マウスをこの容器に入れて、10分間自由探索を行わせて終了後にマウスを飼育ケージへ戻した。これを「獲得試行」とした。
同じマウスを獲得試行から24時間後に、24時間前に呈示した二つの積み木Xのうち一つをゴルフボールY(新奇物体)に置換した容器に再度入れて、5分間自由探索を行わせて非新奇物体Xと新奇物体Yに対する各探索時間を測定した。これを「テスト試行」とした。
マウスは、獲得試行とテスト試行との間隔が短い場合、テスト試行時において非新奇物体(積み木X)に比べて新奇物体(ゴルフボールY)に対する探索時間が長くなり、この嗜好性は獲得試行とテスト試行との間隔の拡大に伴って減弱することが知られている。そのため、新奇物体に対する探索行動の変化は「獲得試行時の物体の形状の記憶」を反映していると一般的に考えられている。
新奇物体Yに対する探索時間Nと非新奇物体Xに対する探索時間Fとの違いに基づき、記憶の保持を評価した。具体的には、下記式(1)により新奇物体探索の時間率であるDiscrimination index(DI)を算出した。
Figure 0007338828000002
Discrimination indexが高いほど、獲得試行時の物体の形状を記憶していることとなり、長期記憶が維持されていると評価することができる。
また、テスト試行時の非新奇物体に対する探索時間Fまたは新奇物体に対する探索時間Nの探索時間割合(%)を下記式(2)および(3)から算出した。
Figure 0007338828000003
Figure 0007338828000004
非新奇物体に対する探索時間割合(式(2))が高いほど認知機能が低い、すなわち、記憶の獲得・定着および想起・再生力が低いと評価することができ、新奇物体に対する探索時間割合(式(3))が高いほど認知機能が高い、すなわち、記憶の獲得・定着および想起・再生力が高いと評価することができる。
(2)香気成分の呈示方法
ア 準備
6週齢雄のCD-1マウス(日本SLC社)を24時間馴化し、実験群と対照群(各群10匹)に分けた。香気成分として上記例1(1)と同様にして調製した紅茶香料溶液(試験成分)、ゲラニオール(和光純薬工業社製、以下同じ)、リナロールオキシド(東京化学工業社製、以下同じ)、2-フェニルエタノール(和光純薬工業社製、以下同じ)、または5成分混合物(ゲラニオール、リナロールオキシド、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール(和光純薬工業社製、以下同じ)、リナロール(和光純薬工業社製、以下同じ)を含む混合物)を表2に示す濃度となるよう流動パラフィン(和光純薬工業社製、以下同じ)で希釈して調製し、対照溶液は何も溶解させない流動パラフィンを対照溶液とした。試験成分溶液または対照溶液を満たした試験管内に濾紙(Whatman社製、ガラス繊維濾紙、グレードGF/B、φ25 mm)を浸して溶液を吸収させた。次いで、濾紙をディフューザー(クリアフォレストエアリーフ、ミクニ社製)に装着し、香気成分呈示に用いるケージ(縦22.5cm、横33.8cm、高さ14cm、以下「香気成分呈示用ケージ」と記載することがある。)内にセットした。なお、5成分混合物は、各成分の流動パラフィン中の濃度を表2に示す濃度となるように5成分を混合して調製した。
イ 各個体への香気成分の呈示
各個体への香気成分の呈示および試行は、室温およそ23℃、湿度およそ55.5±5%に調整された室内で行った。獲得試行の直前にマウス1匹を香気成分呈示用ケージに入れ(試験開始)、ケージ内で5分間自由探索させることにより香気成分を呈示(1回目の香気成分呈示)した。直後にケージ外で獲得試行を行った。試験開始から24時間後にマウス1匹を再度香気成分呈示用ケージに入れ、ケージ内で5分間自由探索させることにより香気成分を呈示した(2回目の香気成分呈示)。直後にケージ外でテスト試行を行った。上記1回目の香気成分呈示~テスト試行の手順による試験を各個体に対して行った。なお、2回の香気成分呈示において、ディフューザーの稼働は、香気成分呈示用ケージへのマウスの入室と同時に開始し、マウスの退室と同時に終了させた。
Figure 0007338828000005
(3)結果
結果を図4および図5に示す。
図4の結果から、紅茶香料、ゲラニオール、リナロールオキシド、2-フェニルエタノールおよび5成分混合物をそれぞれ呈示した群においてDiscrimination indexが高くなる傾向が認められた。これら香気成分の呈示によって、獲得試行時の物体の形状の記憶が保持されていること、すなわち、長期記憶が増強されたことが示された。また、図5の結果から、紅茶香料、ゲラニオール、リナロールオキシド、2-フェニルエタノールまたは5成分混合物を呈示した群では、対照群に比べて新奇物体に対する探索時間割合が増加する傾向が認められた。これらの結果は、紅茶香料、ゲラニオール、リナロールオキシド、2-フェニルエタノールおよび5成分混合物をそれぞれ呈示した群において、これら香気成分の吸入によって記憶の獲得・定着および想起・再生力が向上した結果であるとともに、物体の認識に関する注意能力や新奇物体に対応する判断力が向上した結果であるとも考えられた。
例5:認知機能に対する香気成分の効果(2)
(1)認知機能の評価方法(新奇物体認識試験)
認知機能は、上記例4(1)に記載の方法に従って評価した。
(2)香気成分の呈示方法
5週齢のICRマウス(日本チャールズリーバー社)を1ケージ(大きさは例5と同じ)に5匹ずつ飼育して1週間馴化した。香気成分としてゲラニオールは0%(V/V)(対照)、0.0001%(V/V)、0.001%(V/V)、0.01%(V/V)(以上、「低濃度ゲラニオール試験」という)、0%(V/V)(対照)、0.01%(V/V)、0.03%(V/V)、0.1%(V/V)、0.3%(V/V)、リナロールオキシドまたは2-フェニルエタノールをそれぞれ0%(V/V)(対照)、0.01%(V/V)、0.03%(V/V)、0.1%(V/V)、0.3%(V/V)となるように調製した。香気成分呈示用ケージの大きさを13.6cm、横20.8cm、高さ11.5cm、獲得試行前の香気成分の呈示時間を10分間とした以外は、上記例4(2)に記載の方法に従って行った。なお、ゲラニオール試験群は各群15匹とし、低濃度ゲラニオール試験、リナロールオキシド試験群および2-フェニルエタノール試験群は各群10匹とした。
(3)結果
結果を図6に示す。
図6の結果から、ゲラニオール、リナロールオキシドまたは2-フェニルエタノールを呈示した群において対照を呈示した群よりもDiscrimination indexが高くなる傾向が認められた。これら香気成分の吸入によって、獲得試行時の物体の形状の記憶が保持されていること、すなわち、長期記憶が増強されたことが示された。
例6:香気成分の呈示タイミングと認知機能に対する効果(1)
本実施例では新奇物体認識試験により、香気成分の呈示タイミングと記憶機能の関係性を評価した。
(1)認知機能の評価方法(新奇物体認識試験)
認知機能は、上記例4(1)に記載の方法に従って評価した。
(2)香気成分の呈示方法
香気成分の呈示方法は、上記例5(2)に記載の方法に従って行った。香気成分としてゲラニオールを0%(V/V)(対照)、0.001%(V/V)となるように調製した。香気成分の呈示タイミングは下記の4パターンとし、各群10匹とした。なお、香気成分として対照を呈示したものを「香気成分呈示:なし」と記載した(以下、同じ)。
対照群 獲得試行前香気成分呈示:なし、テスト試行前香気成分呈示:なし
試験群1 獲得試行前香気成分呈示:なし、テスト試行前香気成分呈示:あり
試験群2 獲得試行前香気成分呈示:あり、テスト試行前香気成分呈示:なし
試験群3 獲得試行前香気成分呈示:あり、テスト試行前香気成分呈示:あり
(3)結果
結果を図7に示す。図7の結果から、獲得試行前のみ香気成分を呈示した試験群2では、対照群に比べて有意にDiscrimination indexが高くなり、獲得試行前・テスト試行前どちらも呈示した試験群3と同程度であることが確認された。テスト試行前のみ香気成分を呈示した試験群1では、対照群に比べて有意な差はなかった。
例7:香気成分の呈示タイミングと認知機能に対する効果(2)
本実施例では新奇物体認識試験により、香気成分の呈示タイミングと記憶機能の関係性を評価した。
(1)認知機能の評価方法(新奇物体認識試験)
認知機能は、上記例4(1)に記載の方法に従って評価した。
(2)香気成分の呈示方法
香気成分の呈示方法は、テスト試行前の香気成分の呈示時間を10分間とした以外は、上記例5(2)に記載の方法に従って行った。香気成分としてゲラニオールを0%(V/V)(対照)、0.001%(V/V)となるように調製した。香気成分の呈示タイミングは下記の2パターンとし、各群10匹とした。
対照群 獲得試行前香気成分呈示:なし、テスト試行前香気成分呈示:なし
試験群 獲得試行前香気成分呈示:なし、テスト試行前香気成分呈示:あり
(3)結果
結果を図8に示す。図8の結果から、対照群とテスト施行前のみ香気成分を呈示した試験群のDiscrimination indexは同程度であった。
(4)考察
上記例6と例7の結果から、香気成分の吸入によりDiscrimination indexが増加するメカニズムは、プルースト効果(ある特定の匂いを嗅ぐことで、過去の関連する記憶が誘発される現象)ではなく、獲得施行前の香気成分の吸入によって、物体の形状の記憶が定着し、長期記憶が増強されたこと(すなわち、記憶獲得機能および/または記憶定着機能)に起因することが示唆された。よって、紅茶香気成分は認知機能の向上において、記憶行動時のみの吸入で薬理効果を発揮できるといえる。
例8:認知機能に対する香気成分とホエイ酵素分解物の併用効果(1)
本試験では、特定の香気成分を呈示することと認知機能改善用組成物の摂取を併用したときの記憶機能に対する影響を評価した。
(1)ホエイ酵素分解物の認知機能への効果
乳清(ホエイ)に含まれるタンパク質を、特定の微生物由来酵素で処理することにより産生される特定アミノ酸配列を有するペプチドに、認知機能改善効果があることが報告されている(Ano et al., Neurobiology of Aging, 72(2018)23-31および国際公開第2017/086303号)。
(2)認知機能の評価方法(新奇物体認識試験)
認知機能は、上記例4(1)に記載の方法に従って評価した。
(3)ホエイ酵素分解物の投与方法
ホエイ酵素分解物(HW-3、雪印メグミルク社)を0.5mg/mLとなるように蒸留水に懸濁した。蒸留水(対照)またはホエイ酵素分解物懸濁液を、1日1回、3日間(試験の前日、試験当日の獲得試行・テスト施行のそれぞれ1時間前)、10mL/kgでマウスに強制経口投与した。なお、本ホエイ酵素分解物を国際公開第2017/086303号に記載のLC/MS/MS法で分析したところ、テトラペプチドGTWYは1.61mg/g、ジペプチドWYは0.65mg/g含まれていた。
(4)香気成分の呈示方法
香気成分の呈示方法は、上記例5(2)に記載の方法に従って行った。香気成分としてゲラニオールを0%(V/V)(対照)、0.0001%(V/V)、となるように調製した。
本試験例において、ホエイ酵素分解物の投与と香気成分の呈示は下記の4パターンとし、試験群は各群10匹とした。
対照群 香気成分呈示:なし、ホエイ酵素分解物投与:なし
試験群1 香気成分呈示:なし、ホエイ酵素分解物投与:あり
試験群2 香気成分呈示:あり、ホエイ酵素分解物投与:なし
試験群3 香気成分呈示:あり、ホエイ酵素分解物投与:あり
(5)結果
結果を図9に示す。図9の結果から、対照群と比較して、ホエイ酵素分解物の経口投与のみを行った試験群1と、香気成分の呈示のみを行った試験群2では、P<0.05で有意にDiscrimination indexが高く、併用した試験群3では、さらにDiscrimination indexが高くなることが確認された。よって、ホエイ酵素分解物摂取のみ、または、香気成分の吸入のみによって長期記憶の増強効果が得られることが示された。また、香気成分の吸入とホエイ酵素分解物摂取の併用は、長期記憶の増強に対して、併用効果を有することが示された。
例9:認知機能に対する香気成分とホエイ酵素分解物の併用効果(2)
本試験では、特定の香気成分を呈示することと認知機能改善用組成物の摂取を併用したときの記憶機能に対する影響を評価した。
(1)認知機能の評価方法(新奇物体認識試験)
認知機能は、上記例4(1)に記載の方法に従って評価した。
(2)ホエイ酵素分解物の投与方法
ホエイ酵素分解物の投与方法は、上記例8(3)に記載の方法に従って行った。
(3)香気成分の呈示方法
香気成分の呈示方法は、上記例5(2)に記載の方法に従って行った。香気成分としてゲラニオールを0%(V/V)(対照)、0.00001%(V/V)、0.0001%(V/V)となるように調製した。
本試験例において、ホエイ酵素分解物の投与と香気成分の呈示は下記の6パターンとし、試験群は各群8匹とした。
対照群 香気成分呈示:なし、ホエイ酵素分解物投与:なし
試験群1 香気成分呈示:なし、ホエイ酵素分解物投与:あり
試験群2 香気成分呈示:あり(0.00001%)、ホエイ酵素分解物投与:なし
試験群3 香気成分呈示:あり(0.00001%)、ホエイ酵素分解物投与:あり
試験群4 香気成分呈示:あり(0.0001%)、ホエイ酵素分解物投与:なし
試験群5 香気成分呈示:あり(0.0001%)、ホエイ酵素分解物投与:あり
(4)結果
結果を図10に示す。図10の結果から、対照群と比較して、ホエイ酵素分解物の経口投与のみを行った試験群1と、ゲラニオール0.00001%(V/V)の呈示のみを行った試験群2に比べて、ホエイ酵素分解物とゲラニオール0.00001%(V/V)を併用した試験群3では、Discrimination indexが高くなることが確認された。また、ゲラニオール0.0001%(V/V)に関する試験群4および5においても同様の結果が得られた。よって、香気成分の吸入とホエイ酵素分解物の摂取を組み合わせることによって長期記憶が増強することが確認された。
(5)考察
上記例8と例9の結果から、香気成分の吸入とホエイ酵素分解物の摂取は長期記憶の増強に対して、併用効果を持つことが示された。この結果から、ホエイ酵素分解物を含む食品や経口製剤へのゲラニオールの賦香や、ゲラニオール含有の食品とホエイ酵素分解物含有の食品や経口製剤との併用により、記憶機能の向上効果がさらに高まるといえる。
例10:紅茶香料が認知機能に及ぼす効果の検証
(1)試験の概要
本試験は単盲検試験とし、被験香料または対照香料を鼻から吸入させた時の認知機能を評価した。ここで、交感神経機能の亢進により認知機能に影響を及ぼすことが知られていることから(Journal of Physiology,454:373-87,1992、Applied Psychophysiology Biofeedback,37(4):219-27,2017)、認知機能の評価は自律神経系を評価することにより行った。具体的には、20歳以上65歳以下の健康な男女に、被験香料として紅茶香料またはその構成成分である化合物1種類を含む香料を、対照香料として蒸留水をそれぞれ吸入させて自律神経反応を評価した。
(2)被験者
25歳以上51歳以下の健康な男女7名(男性5名、女性2名)を被験者とし、後述のスケジュールによりすべての被験者にすべての試験香料に対する試験を行った。
(3)試験方法
試験方法の概略として、試験スケジュールを表3に示した(○印は試験を実施したことを示す)。試験日1に対照香料吸入時の自律神経反応評価と、いずれかの被験香料吸入時の自律神経反応評価を行った。試験日2以降も被験香料を替えて同じ評価を行い、試験日4までにすべての被験香料が評価できるようにした。なお、試験は1日以上間隔を空けて行い試験日が連続しないようにした。また、自律神経反応の評価は後述のように瞳孔反応を測定することにより行った。
Figure 0007338828000006
(4)試験香料の吸入
ア 試験香料の吸入方法
2cm×2cmにカットしたろ紙(Kimberly-Clark製wiper 33330)に試験香料 0.05mLを染み込ませてアロマディフューザー(ミクニ社製FAD01)にセットした。アロマディフューザーは被験者の鼻から約10cm離した位置に設置し、揮散する香気成分を鼻から吸入させた。各試験香料の吸入時間は1分間とした。なお、ろ紙は被験者毎に交換した。
イ 試験香料の組成
試験香料の処方は表4に示される通りであった。対照香料以外は50%含水エタノールを溶媒とする香料である。なお、紅茶香料はディンブラ紅茶葉から常法に従って抽出して製造したものであり、紅茶香料中の主要な香気成分として知られる成分の含有量は例3に記載の方法で定量し、表中に記載した。
Figure 0007338828000007
(5)測定
ア 測定項目
所定の可視光の刺激に対する瞳孔の反応について、縮瞳相とその後の散瞳相を自動的に測定・解析し、縮瞳率CR(contraction rate of pupils:瞳孔横径変化量/最大瞳孔横径×100)と最大散瞳速度VD(maximum velocity of mydriasis:散瞳速度の最高値)を求めた。前者は副交感神経活動の指標として、後者は交感神経活動の指標として汎用されるものである。いずれも、値の増加が神経活動の亢進と評価される。
イ 光瞳孔反応の測定方法
測定は瞳孔の日内変動の影響を避けるため、一定の時刻(午前9時から12時)に行った。また、他の因子の自律神経系への影響を避けるため、測定の前2時間は飲食、特にカフェインを含む飲食品の摂取を禁止した。測定は暗室内で行い、測定・解析には瞳孔記録計(イリスコーダデュアルC10641、浜松ホトニクス社製)を使用した。
被験者は座位とし、光瞳孔反応の測定は5分間の暗順応を行った後に行った。1日の測定の流れを図11に示す。
(i)ブランク測定2回、対照香料吸入中2回、休憩5分、対照香料の吸入中2回の測定を行った。ブランク値は、瞳孔反射の個人差・日間差を補正して相対値を算出するために測定した(後記「(6)評価と解析」参照。)。
(ii)対照香料での測定終了後、5分間の休憩をさせ、同様の測定をいずれかの被験香料についても行った。
(iii)上記(3)で述べたように、(i)および(ii)の測定を試験日1から試験日4に行うことで、被験者全員にすべての被験香料についての評価を受けさせた。なお、(i)および(ii)により、被験者1名1日あたり12回の測定が行われた。
(6)評価と解析
上述のように、対光反射測定で得られた縮瞳率CRを副交感神経活動の指標として、最大散瞳速度VDを交感神経活動の指標として評価した。ブランクでの測定値と試験香料の測定値から相対値(相対CRまたは相対VD)を算出した。算出は下記式(4)および式(5)により行った。そして、被験者毎に同一試験日における対照香料と被験香料の相対値を得、被験者全員の値を1標本t検定で比較することにより、被験香料の効果を評価した。
Figure 0007338828000008
Figure 0007338828000009
(7)結果
結果を表5と、図12および13に示す。
Figure 0007338828000010
紅茶香料試験区は副交感神経活動の指標である相対CR(%)が低下し、交感神経活動の指標である相対VD(%)が上昇したことから、紅茶香気成分の吸入は自律神経活動に対し交感神経優位に作用することが示された。2-フェニルエタノールまたはゲラニオールを呈示した試験区においても相対CR(%)が低下したため、交感神経優位に作用する可能性が示唆された。2-フェニルエタノールおよびゲラニオールは紅茶香料の主要成分であり、自律神経活動に対する作用も紅茶香料と類似の傾向を示したことから、紅茶香気の交感神経亢進作用に寄与する成分であると考えられた。
(8)結論
紅茶香料、2-フェニルエタノール、ゲラニオールを単一もしくは組み合わせて鼻から吸入することにより、自律神経活動に作用し、交感神経活動が亢進することが確認された。交感神経活動を優位にする香りが脳を活性化し認知機能の改善に寄与することが報告されている(新島,自律神経,45(5),178-184(2008)、永井,日本看護研究学会雑誌,23(4),11-17(2000)、Jimbo D, et al.; Psychogeriatrics, 9:173-179(2009))ことから、紅茶香料、2-フェニルエタノール、ゲラニオールを単一もしくは組み合わせについても、交感神経活動を亢進して脳を活性化し、認知機能を改善すると考えられた。

Claims (10)

  1. リナロールおよび/またはリナロールオキシドを有効成分として含んでなる、認知機能の向上、維持および/または改善に用いるための、気道を介した吸入用組成物であって、有効成分が嗅覚刺激を介して認知機能を向上、維持および/または改善し、前記認知機能が長期記憶機能、注意機能、記憶獲得機能および/または記憶定着機能である、組成物。
  2. 有効成分がリナロールオキシドである、請求項1に記載の組成物。
  3. 健常者に用いるための、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 認知機能の向上、維持および/または改善により治療、予防または改善しうる疾患または症状の治療、予防または改善に用いるための、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 食品または経口製剤と併用するものである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 食品または経口製剤が乳タンパク質酵素分解物を含んでなる、請求項に記載の組成物。
  7. リナロールオキシドを有効成分として含んでなる、認知機能の向上、維持および/または改善に用いるための組成物であって、前記認知機能が注意機能であり、前記組成物が食品または経口製剤であり、摂取または投与により有効成分が口腔および咽頭を通じて鼻腔内に拡散し、それにより嗅覚を刺激する、組成物。
  8. リナロールを有効成分として含んでなる、認知機能の向上、維持および/または改善に用いるための組成物であって、前記認知機能が注意機能であり、前記組成物が食品または経口製剤であり、摂取または投与により有効成分が口腔および咽頭を通じて鼻腔内に拡散し、それにより嗅覚を刺激する、組成物。
  9. 乳タンパク質酵素分解物またはそれを含有する組成物と組み合わせて使用するための、請求項7または8に記載の組成物。
  10. 認知機能の向上、維持および/または改善に用いるための組成物の製造のためのリナロールオキシドの使用であって、前記認知機能が長期記憶機能、注意機能、記憶獲得機能および/または記憶定着機能であり、前記組成物が食品または経口製剤である、使用。
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