JP7338590B2 - 電縫鋼管の異形断面鋼管製造用素材としての使用 - Google Patents
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εmax=t/(2R+t)×100(%)…(1)
C :0.05~0.20%、
Si:0.01~1.0%、
Mn:0.1~2.5%、
P :0.1%以下、
S :0.01%以下、
Al:0.01~0.10%、
Ti:0.010~0.20%、
Nb:0.010~0.10%、
N :0.0005~0.0050%、
Cr:0.05~0.30%、および
Mo:0.05~0.30%、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
主相としてのフェライト相と、第2相としてのベイナイトを含み、
前記フェライト相に含まれるTi系炭化物の最大粒径が30nm以下であり、
前記フェライト相に含まれるNb系炭化物の最大粒径が30nm以下であり、かつ、
ベイナイトの面積率が10%以上、40%未満である微細組織を有し、
引張強さが780MPa以上であり、
フェライト相とベイナイト相のビッカース硬さの差ΔHVが40以下である、電縫鋼管。
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
W :0.5%以下、
V :0.5%以下、および
REM:0.02%以下からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む、上記1に記載の電縫鋼管。
まず、本発明の電縫鋼管の成分組成について説明する。特に断らない限り、各成分の含有量を表す「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、鋼管の強度を向上させる作用を有する元素である。キャビンフレームなどに求められる強度(硬さ)を確保するためには、C含有量を0.05%以上とする必要がある。そのため、C含有量は0.05%以上とする。一方、C含有量が0.20%を超えると、加工性や低温靱性が劣化する。そのため、C含有量は0.20%以下、好ましくは0.15%以下とする。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶強化元素としても作用する元素である。前記効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。そのため、Si含有量は0.01%以上とする。一方、1.0%を超えて含有すると、電縫溶接性が低下する。そのため、Si含有量は1.0%以下、好ましくは0.5%以下とする。
Mnは、固溶して鋼の強度向上に寄与するとともに、鋼の焼入れ性を向上させる元素である。キャビンフレームに求められる強度(硬さ)を確保するためには、0.1%以上の含有を必要とする。そのため、Mn含有量は0.1%以上、好ましくは0.5%以上とする。一方、2.5%を超えて含有すると、靭性が低下することに加え、焼割れの危険が増大する。そのため、Mn含有量は2.5%以下、好ましくは2.0%以下とする。
Pは、不純物として鋼中に含まれる元素であり、粒界等に偏析し、耐溶接割れ性および靭性を低下させる。そのため、キャビンフレームとして用いるためにはP含有量を0.1%以下に低減する必要がある。そのため、P含有量は0.1%以下、好ましくは0.05%以下とする。一方、耐溶接割れ性および靭性を向上させるという観点からは、P含有量は低ければ低いほどよい。そのため、P含有量の下限は特に限定されず、0%であってよい。
Sは、鋼中では硫化物系介在物として存在し、熱間加工性、靭性を低下させる元素である。キャビンフレームとして用いるためにはS含有量を0.01%以下に低減する必要がある。そのため、S含有量は0.01%以下、好ましくは0.005%以下とする。
Alは、脱酸剤として作用するとともに、Nと結合しAlNとして析出し、強度を高める効果を有する。前記効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。そのため、Al含有量は0.01%以上とする。一方、0.10%を超えて多量に含有すると、酸化物系介在物量が増加し、加工性が低下する。そのため、Al含有量は0.10%以下、好ましくは0.05%以下とする。
Tiは、鋼中のCと結合してTiCを形成し、該TiCが主相であるフェライト中に微細分散することによってフェライト相のビッカース硬さが上昇する。したがって、Tiを添加することにより、フェライト相とベイナイト相のビッカース硬さの差を小さくし、局部延性能を高めることができる。しかし、Ti含有量が0.010%未満では前記作用が十分に発揮されない。そのため、Ti含有量は0.010%以上とする。一方、Ti含有量が0.20%を超えると鋼の加工性および靭性が低下する。そのため、Ti含有量は0.20%以下、好ましくは0.15%以下とする。
Nbは、Tiと同様、鋼中のCと結合してNbCを形成し、該NbCが主相であるフェライト中に微細分散することによってフェライト相のビッカース硬さが上昇する。したがって、Nbを添加することにより、フェライト相とベイナイト相のビッカース硬さの差を小さくし、局部延性能を高めることができる。前記効果を発揮するためには、0.010%以上の含有を必要とする。そのため、Nb含有量は0.010%以上とする。一方、Nb含有量が0.10%を超えると、添加効果が飽和して含有量に見合う効果が得られないため、経済的に不利となる。そのため、Nb含有量は0.10%以下、好ましくは0.05%以下とする。
Nは、不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼中の窒化物形成元素と結合し、結晶粒の粗大化の抑制、さらには焼戻後の強度増加に寄与する。前記効果を得るために、N含有量は0.0005%以上、好ましくは0.0010%以上とする。一方、0.0050%を超える含有は、溶接部の靭性を低下させる。そのため、N含有量は0.0050%以下、好ましくは0.004%以下とする。
Crは、固溶して鋼の強度向上に寄与する元素である。また、Crは熱処理軟化抵抗を向上させる作用を有しているため、Crを添加することにより、キャビンフレームを周辺部品と大入熱溶接する際のHAZ軟化を抑制することができる。これらの効果を発揮するには、0.05%以上の含有が必要である。そのため、Cr含有量は0.05%以上、好ましくは0.10%以上でとする。一方、Cr含有量が0.30%を超えると、酸化物が形成されやすくなり、電縫溶接部にCr酸化物が残存して溶接品質が低下する。そのため、Cr含有量は0.30%以下、好ましくは0.20%以下とする。
Moは、固溶して鋼の強度向上に寄与する元素である。また、Moは、Crと同様に熱処理軟化抵抗を向上させる作用を有しているため、Moを添加することにより、キャビンフレームを周辺部品と大入熱溶接する際のHAZ軟化を抑制することができる。これらの効果を発揮するには、0.05%以上の含有が必要である。そのため、Mo含有量は0.05%以上、好ましくは0.10%以上とする。一方、Moは高価な元素であり、過度な添加はコスト上昇につながる。また、過度にMoを添加してもその効果は飽和する。そのため、Mo含有量は0.30%以下、好ましくは0.20%以下とする。
Cuは、焼入れ性を向上させるとともに、耐食性を向上させる作用を有する元素である。しかし、Cuは高価な合金元素であるため、Cu含有量が1.0%を超えると材料コストの高騰を招く。そのため、Cu含有量は1.0%以下、好ましくは0.50%以下とする。一方、Cu含有量の下限はとくに限定されないが、Cuの添加効果を高めるという観点からは、Cuを添加する場合、Cu含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
Niは、Cuと同様、焼入れ性を向上させるとともに、耐食性を向上させる作用を有する元素である。しかし、Niは高価な合金元素であるため、Ni含有量が1.0%を超えると材料コストの高騰を招く。そのため、Ni含有量は1.0%以下、好ましくは0.50%以下とする。一方、Ni含有量の下限はとくに限定されないが、Niの添加効果を高めるという観点からは、Niを添加する場合、Ni含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
Wは、Nbと同様に、微細な炭化物を形成して強度(硬さ)の増加に寄与する元素である。しかし、W含有量が0.5%を超えると、添加効果が飽和して含有量に見合う効果が得られないため、経済的に不利となる。そのため、W含有量は0.5%以下、好ましくは0.3%以下とする。一方、W含有量の下限はとくに限定されないが、Wの添加効果を高めるという観点からは、Wを添加する場合、W含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
Vは、NbおよびWと同様に、微細な炭化物を形成して強度(硬さ)の増加に寄与する元素である。しかし、V含有量が0.5%を超えると、添加効果が飽和して含有量に見合う効果が得られないため、経済的に不利となる。そのため、V含有量は0.5%以下、好ましくは0.3%以下とする。一方、V含有量の下限はとくに限定されないが、Vの添加効果を高めるという観点からは、Vを添加する場合、V含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
REM(希土類金属)は、硫化物系介在物の形態を微細な略球形の介在物に制御する作用を有する元素である。しかし、REM含有量が0.02%を超えると、疲労き裂の起点となる介在物の量が過剰となるため、かえって耐腐食疲労特性が低下する。そのため、REM含有量は0.02%以下、好ましくは0.01%以下とする。一方、REM含有量の下限はとくに限定されないが、REMの添加効果を高めるという観点からは、REMを添加する場合、REM含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
本発明の電縫鋼管は、主相としてのフェライト相と、第2相としてのベイナイトを含み、前記フェライト相に含まれるTi系炭化物の最大粒径が30nm以下であり、前記フェライト相に含まれるNb系炭化物の最大粒径が30nm以下であり、かつ、ベイナイトの面積率が10%以上、40%未満である微細組織を有する。以下、上記微細組織の限定理由について説明する。
Nb系炭化物の最大粒径:30nm以下
本発明においては、主相としてのフェライト中を強化するために、前記フェライト中にTi系炭化物およびNb系炭化物を析出させる。しかし、炭化物による強化効果は、該炭化物が可動転位の移動を阻害する、いわゆるピン止め効果に基づいており、ピン止め効果を発揮させるためには炭化物が微細である必要がある。そこで、前記Ti系炭化物およびNb系炭化物の最大粒径を、それぞれ30nm以下とする。軟質なフェライト中に微細な炭化物を分散させて強化することで、フェライト相とベイナイト相の硬さの差が小さくなり、その結果、フェライト相とベイナイト相の界面での剥離が防止され、局部延性能が向上する。
ベイナイトの面積率が低いと、相対的にフェライトの面積率が高くなる。フェライト面積率が高すぎると、フェライト中に析出している炭化物の粗大化に起因する溶接時の強度低下が顕著となる。そこで、溶接時の強度低下を防止するために、ベイナイト面積率を10%以上とする。一方、ベイナイトの面積率が40%以上であると、加工性が低下し、厳しい加工に対応できなくなる。そのため、ベイナイト相の面積率を40%未満とする。
作業者保護および軽量化の観点から、電縫鋼管の強度を向上させることが重要である。そこで、本発明では電縫鋼管の引張強さ(TS)を780MPa以上とする。一方、引張強さの上限は特に限定されないが、過度な強度上昇は加工性を低下させる。そのため、引張強さを1180MPa以下とすることが好ましい。
フェライト相とベイナイト相のビッカース硬さの差ΔHVが40以下であれば、密着扁平加工のような延性限界に近い厳しい加工でも割れの発生を防止できる。そのため、ΔHVを40以下とする。組織の均一性を高め、主相と第二相の硬さの差を極力小さくすることが局部延性能を向上させることになるので、ΔHVは小さい方が好ましく、下限については特に限定されない。
次に、本発明の電縫鋼管の製造方法の一例について説明する。上述した微細組織および機械的特性を有する電縫鋼管を得るには、鋼管の素材となる熱延鋼板の製造条件が重要である。特に、微細な析出物を効果的に析出させて主相のフェライト相を強化するためには、以下の条件にて熱間鋼板を製造する必要がある。
まず、熱間圧延に先だって、上述した成分組成を有する鋼スラブをスラブ加熱温度まで加熱する。その際、前記スラブ加熱温度が低いと、鋼中のTiやNbなどの析出物を十分に溶解させることがでないため、最終的に得られる熱延鋼板中に、強化に有効な微細析出物を形成することができない。そのため、スラブ加熱温度は1100℃以上とする必要がある。一方、スラブ加熱温度が1300℃を超えると、炭化物が粗大となることに加え、結晶粒が著しく粗大化し、靱性が低下する。そのため、スラブ加熱温度は1300℃以下とする必要がある。
前記仕上圧延における仕上圧延終了温度は、被圧延材である鋼のAr3点以上とする必要がある。仕上圧延終了温度がAr3点未満である場合、仕上圧延がフェライトとオーステナイトの二相域で行われるため、著しく粗大な結晶粒と微細な結晶粒とが混在する混粒組織となる。そしてその結果、引張特性にバラツキが生じ、最終的に得られる鋼管の加工性、加工精度が低下する。また、鋼板表面に肌荒れが生じ、外観品質が劣化する。一方、仕上圧延終了温度が950℃を超えると、炭化物が粗大となることに加え、表面肌が劣化して製品の外観性を損ねる。そのため、仕上圧延終了温度は950℃以下とする。
熱間圧延により得られた熱延鋼板は、次いでコイル状へ巻取られる。前記巻取の際の巻取温度が500℃未満であると、Ti、Nbなどの元素の析出が進行せず、主相を十分に強化することができない。一方、巻取温度が700℃を超えると、析出物が粗大化し、かえって強化効果が低下する。したがって、巻取温度は500℃以上、700℃以下とする。
得られた電縫鋼管の円周方向断面(10断面)をナイタール腐食した後、光学顕微鏡にて倍率400倍で観察した。次いで、観察された10断面の画像を画像解析してそれぞれの断面におけるフェライト面積率を算出し、平均値を求めた。
得られた電縫鋼管の円周方向断面を、透過型顕微鏡(TEM)を用いて倍率20~50万倍で観察し、析出物の定性分析を行い、Ti系炭化物およびNb系炭化物を同定した。次いで、画像解析によりTi系炭化物およびNb系炭化物それぞれの粒径を算出し、Ti系炭化物の最大粒径およびNb系炭化物の最大粒径を求めた。
ベイナイト面積率は、パイプの円周方向断面(10断面)をナイタール腐食した後、光学顕微鏡にて倍率400倍で観察し、画像解析によりベイナイトの面積率を測定し、平均値を求めた。
得られた電縫鋼管から、引張方向が管長手方向となるように、管状試験片(JIS11号試験片)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を行い、引張特性(降伏強度YS、引張強さTS、および伸びEl)を求めた。
得られた電縫鋼管におけるフェライト相およびベイナイト相のビッカース硬さを測定した。ビッカース硬さの測定に当たっては、まず、硬さの測定に影響が出ない程度に希釈したナイタール腐食液で管円周方向断面を腐食させ、管円周方向断面における微細組織を現出させた。その後、マイクロビッカース硬度計を用いてフェライト相とベイナイト相それぞれのビッカース硬さを、荷重0.5kgで測定した。測定は10点ずつ行い、それらの平均値の差をΔHVとした。
電縫鋼管の局部延性能を評価するために、以下の手順で限界歪εmaxを測定した。得られた電縫鋼管のそれぞれに対し、図1に示すように曲げ加工を施し、割れが発生する直前の内側曲げ半径R(mm)を測定した。前記曲げ半径Rと管厚t(mm)から、下記(1)式を用いて、割れが発生する直前の曲げ外側における限界歪εmax(%)を求めた。
εmax=t/(2R+t)×100(%)…(1)
電縫鋼管の耐溶接熱影響部軟化特性を評価するために、以下の手順でアーク溶接を行い、溶接熱影響部における最低ビッカース硬さを測定した。
・溶接ワイヤ:590MPa級ソリッドワイヤ
・シールドガス:Ar+20%CO2
・シールドガス流量:20L/min
・溶接電流:90A
・溶接電圧:20V
・溶接速度:300mm/min(入熱:3.6kJ/cm)
Claims (2)
- 電縫鋼管の異形断面鋼管製造用素材としての使用であって、
前記電縫鋼管は、
質量%で、
C :0.05~0.20%、
Si:0.01~1.0%、
Mn:0.1~2.5%、
P :0.1%以下、
S :0.01%以下、
Al:0.01~0.10%、
Ti:0.010~0.20%、
Nb:0.010~0.10%、
N :0.0005~0.0050%、
Cr:0.05~0.30%、および
Mo:0.05~0.30%、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
微細組織全体の中で最大の面積率を有する相と定義される主相としてのフェライト相と、第2相としてのベイナイトを含み、
前記フェライト相に含まれるTi系炭化物の、前記電縫鋼管の円周方向断面における最大粒径が30nm以下であり、
前記フェライト相に含まれるNb系炭化物の、前記電縫鋼管の円周方向断面における最大粒径が30nm以下であり、かつ、
前記電縫鋼管の円周方向断面におけるベイナイトの平均面積率が10%以上、40%未満である微細組織を有し、
引張強さが780MPa以上であり、
管厚が3mm以上であり、
フェライト相とベイナイト相のビッカース硬さの差ΔHVが40以下である、電縫鋼管の異形断面鋼管製造用素材としての使用。 - 前記成分組成が、質量%で、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
W :0.3%以下、
V :0.3%以下、および
REM:0.02%以下からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の電縫鋼管の異形断面鋼管製造用素材としての使用。
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