以下、本発明に係る制御回路を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る制御回路は、電力変換器としての3相インバータに適用される。本実施形態において、インバータを備える制御システムは、車両に搭載される。
図1に示すように、移動体としての車両10には、制御システムが搭載されている。本実施形態において、制御システムは、1モータ2クラッチのシステムである。制御システムは、車両10の走行動力源として、回転電機11及び内燃機関12を備えている。また、制御システムは、第1クラッチ13、第2クラッチ14、変速装置15、デファレンシャルギア16及び車輪17を備えている。変速装置15は、例えばCVTである。本実施形態では、回転電機11として、同期機が用いられており、より具体的には、永久磁石同期機が用いられている。なお、本実施形態において、第2クラッチ14が「切替部」に相当する。
回転電機11を構成するロータの回転軸11aには、第1クラッチ13を介して内燃機関12の出力軸12a(例えばクランク軸)が接続されている。第1クラッチ13が制御されることにより、出力軸12aと、回転軸11aとの間が動力伝達状態又は動力遮断状態のいずれかに切り替えられる。第1クラッチ13は、車両10に備えられた上位ECU110により制御される。
回転軸11aには、第2クラッチ14を介して変速装置15の第1回転軸15aが接続されている。変速装置15の第2回転軸15bには、デファレンシャルギア16を介して車輪17(駆動輪)が接続されている。変速装置15において、第1回転軸15aの回転速度と第2回転軸15bの回転速度との比率である変速比は、上位ECU110により目標変速比に制御される。第2クラッチ14が制御されることにより、駆動軸としての第1回転軸15aと回転軸11aとの間が動力伝達状態又は動力遮断状態のいずれかに切り替えられる。第2クラッチ14は、上位ECU110により制御される。
図1及び図2に示すように、制御システムは、インバータ18を備えている。インバータ18は、スイッチングデバイス部19を備えている。スイッチングデバイス部19は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。各相において、上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点には、導電部材CM(例えばバスバー)を介して、回転電機11の巻線11bの第1端が接続されている。各相巻線11bの第2端は、中性点で接続されている。各相巻線11bは、電気角で互いに120°ずらされて配置されている。ちなみに、本実施形態では、各スイッチSWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的には、IGBTが用いられている。上,下アームスイッチSWH,SWLには、フリーホイールダイオードである上,下アームダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。
各上アームスイッチSWHの高電位側端子であるコレクタには、高電位側電気経路22Hを介して、高圧電源30の正極端子が接続されている。各下アームスイッチSWLの低電位側端子であるエミッタには、低電位側電気経路22Lを介して、高圧電源30の負極端子が接続されている。本実施形態において、高圧電源30は、2次電池であり、その出力電圧(定格電圧)が例えば百V以上である。
高電位側電気経路22Hには、第1遮断スイッチ23aが設けられ、低電位側電気経路22Lには、第2遮断スイッチ23bが設けられている。本実施形態において、各スイッチ23a,23bはリレーである。
インバータ18は、「蓄電部」としての平滑コンデンサ24を備えている。平滑コンデンサ24は、高電位側電気経路22Hのうち第1遮断スイッチ23aよりもスイッチングデバイス部19側と、低電位側電気経路22Lのうち第2遮断スイッチ23bよりもスイッチングデバイス部19側とを電気的に接続している。
制御システムは、車載電気機器25を備えている。電気機器25は、例えば、電動コンプレッサ及びDCDCコンバータのうち少なくとも一方を含む。電動コンプレッサは、車室内空調装置を構成し、車載冷凍サイクルの冷媒を循環させるべく、高圧電源30から給電されて駆動される。DCDCコンバータは、高圧電源30の出力電圧を降圧して車載低圧負荷に供給する。低圧負荷は、図3に示す低圧電源31を含む。本実施形態において、低圧電源31は、その出力電圧(定格電圧)が高圧電源30の出力電圧(定格電圧)よりも低い電圧(例えば12V)の2次電池であり、例えば鉛蓄電池である。
インバータ18は、放電抵抗体26及び放電スイッチ27を備えている。放電スイッチ27は、放電抵抗体26に直列接続されている。放電スイッチ27及び放電抵抗体26の直列接続体は、高電位側電気経路22Hのうち第1遮断スイッチ23aよりもスイッチングデバイス部19側と、低電位側電気経路22Lのうち第2遮断スイッチ23bよりもスイッチングデバイス部19側とを電気的に接続している。本実施形態において、放電スイッチ27は、NチャネルMOSFETであり、インバータ18が備える制御回路50に備えられている。
図3に示すように、制御システムは、始動スイッチ28を備えている。始動スイッチ28は、例えばイグニッションスイッチ又はプッシュ式のスタートスイッチであり、車両10のユーザにより操作される。
図1及び図2に示すように、制御システムは、相電流センサ40、角度センサ41及び温度センサ42を備えている。相電流センサ40は、導電部材CMに設けられ、回転電機11に流れる各相電流のうち、少なくとも2相分の電流に応じた電流信号を出力する。角度センサ41は、回転電機11の電気角に応じた角度信号を出力する。角度センサ41は、例えば、レゾルバ、エンコーダ又は磁気抵抗効果素子を有するMRセンサであり、本実施形態ではレゾルバである。温度センサ42は、回転電機11の構成部品等、制御システムの構成部品の温度に応じた温度信号を出力する。
図3を用いて、制御回路50の構成について説明する。制御回路50は、入力回路61、中間電源回路62及び第1~第5低圧電源回路63~67を備えている。入力回路61には、ヒューズ32及び電源スイッチ33を介して低圧電源31の正極端子が接続されている。低圧電源31の負極端子には、接地部位としてのグランドが接続されている。
上位ECU110は、始動スイッチ28がオン状態に切り替えられたと判定した場合、電源スイッチ33をオン状態に切り替える。これにより、低圧電源31から制御回路50への給電が開始される。一方、上位ECU110は、始動スイッチ28がオフ状態に切り替えられたと判定した場合、電源スイッチ33をオフ状態に切り替える。具体的には、上位ECU110は、始動スイッチ28がオフ状態に切り替えられたと判定した場合、所定の終了シーケンス処理の後、電源スイッチ33をオフ状態に切り替える。これにより、低圧電源31から制御回路50への給電が停止される。
中間電源回路62は、入力回路61の出力電圧VBを降圧することにより、中間電圧Vm(例えば6V)を生成する。第1低圧電源回路63は、中間電源回路62の出力電圧Vmを降圧することにより、第1電圧V1r(例えば5V)を生成する。第2低圧電源回路64は、第1低圧電源回路63から出力された第1電圧V1rを降圧することにより、第2電圧V2r(例えば3.3V)を生成する。第3低圧電源回路65は、第1低圧電源回路63から出力された第1電圧V1rを降圧することにより、第3電圧V3rを生成する。本実施形態において、第3電圧V3rは、第2電圧V2rよりも低い電圧(例えば1.2V)とされている。
第4低圧電源回路66は、入力回路61の出力電圧VBを降圧することにより、第4電圧V4r(例えば5V)を生成する。本実施形態において、第4電圧V4rは、第1電圧V1rと同じ値である。第5低圧電源回路67は、入力回路61の出力電圧VBを昇圧することにより、第5電圧V5r(例えば30V)を生成する。入力回路61及び各電源回路62~67は、制御回路50の低圧領域に設けられている。
相電流センサ40には、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給される。これにより、相電流センサ40は、相電流に応じた電流信号を出力できるようになっている。電流信号は、制御回路50が備える電流インターフェース部70を介してマイコン60に入力される。マイコン60は、入力された電流信号に基づいて、相電流を算出する。
制御回路50は、励磁回路71、FBインターフェース部72及びレゾルバデジタルコンバータ73を備えている。励磁回路71は、第5低圧電源回路67の第5電圧V5rが供給されることにより動作可能に構成されている。励磁回路71は、角度センサ41を構成するレゾルバステータに正弦波状の励磁信号を供給する。レゾルバステータから出力された角度信号は、FBインターフェース部72を介してレゾルバデジタルコンバータ73に入力される。FBインターフェース部72及びレゾルバデジタルコンバータ73は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。レゾルバデジタルコンバータ73は、FBインターフェース部72からの角度信号に基づいて、回転電機11の電気角を算出する。算出された電気角は、マイコン60に入力される。マイコン60は、入力された電気角に基づいて、回転電機11の電気角速度ωeを算出する。
制御回路50は、温度インターフェース部74を備えている。温度センサ42から出力された温度信号は、温度インターフェース部74を介してマイコン60に入力される。温度インターフェース部74は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。マイコン60は、入力された温度信号に基づいて、温度センサ42の検出対象の温度を算出する。
制御回路50は、第1,第2CANトランシーバ75,76を備えている。第1,第2CANトランシーバ75,76は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。マイコン60は、第1,第2CANトランシーバ75,76及び第1,第2CANバス43,44を介した情報のやり取りを行う。
なお、電流インターフェース部70、励磁回路71、FBインターフェース部72、レゾルバデジタルコンバータ73、温度インターフェース部74及び第1,第2CANトランシーバ75,76は、制御回路50の低圧領域に設けられている。
マイコン60は、低圧領域に設けられ、CPUと、それ以外の周辺回路とを備えている。周辺回路には、例えば、外部と信号をやり取りするための入出力部と、AD変換部とが含まれている。マイコン60には、第1低圧電源回路63の第1電圧V1r、第2低圧電源回路64の第2電圧V2r及び第3低圧電源回路65の第3電圧V3rが供給される。
制御回路50は、電圧センサ77、過電圧検出部78及び状態判定部79を備えている。電圧センサ77は、高電位側電気経路22H及び低電位側電気経路22Lに電気的に接続され、入力回路61の出力電圧VB及び第5低圧電源回路67の第5電圧V5rが供給されることにより動作可能に構成されている。電圧センサ77は、平滑コンデンサ24の端子電圧に応じた電圧信号を出力する。電圧センサ77から出力された電圧信号は、マイコン60及び過電圧検出部78に入力される。
過電圧検出部78は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。過電圧検出部78は、入力された電圧信号に基づいて算出した平滑コンデンサ24の端子電圧がその上限電圧を超えているか否かを判定する。過電圧検出部78は、その端子電圧が上限電圧を超えていると判定した場合、マイコン60及び状態判定部79に対して過電圧信号を出力する。
状態判定部79は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。また、本実施形態において、状態判定部79は、ロジック回路で構成されている。電圧センサ77、過電圧検出部78及び状態判定部79は、制御回路50の低圧領域に設けられている。
マイコン60は、回転電機11の制御量をその指令値に制御すべく、スイッチングデバイス部19の各スイッチSWH,SWLに対するスイッチング指令を生成するスイッチング指令生成部として機能する。制御量は、例えばトルクである。マイコン60は、各センサ40~42,77の出力信号等に基づいて、スイッチング指令を生成する。なお、マイコン60は、各相において、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとが交互にオンされるようなスイッチング指令を生成する。
また、マイコン60は、第1,第2クラッチ13,14の制御指令と、第1,第2遮断スイッチ23a,23bの制御指令とを上位ECU110に出力する。ちなみに、マイコン60は、上位ECU110を介さず、第1,第2クラッチ13,14及び第1,第2遮断スイッチ23a,23bに対して制御指令を直接出力できるようにされていてもよい。
制御回路50は、絶縁電源80、上アームドライバ81及び下アームドライバ82を備えている。本実施形態において、上アームドライバ81は、各上アームスイッチSWHに対応して個別に設けられ、下アームドライバ82は、各下アームスイッチSWLに対応して個別に設けられている。このため、ドライバ81,82は合わせて6つ設けられている。
絶縁電源80は、入力回路61から供給された電圧に基づいて、上アームドライバ81に供給する上アーム駆動電圧VdHと、下アームドライバ82に供給する下アーム駆動電圧VdLとを生成して出力する。絶縁電源80及び各ドライバ81,82は、制御回路50において、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。具体的には、絶縁電源80は、3相の上アームドライバ81それぞれに対して個別に設けられた上アーム絶縁電源と、3相の下アームドライバ82に共通の下アーム絶縁電源とを備えている。本実施形態では、各上アーム絶縁電源と下アーム絶縁電源とが共通の電源制御部により制御される。なお、下アーム絶縁電源は、3相の下アームドライバ82それぞれに対して個別に設けられていてもよい。
続いて、図4を用いて、上,下アームドライバ81,82について説明する。
上アームドライバ81は、スイッチ駆動部としての上アーム駆動部81aと、上アーム絶縁伝達部81bとを備えている。上アーム駆動部81aは、高圧領域に設けられている。上アーム絶縁伝達部81bは、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。上アーム絶縁伝達部81bは、低圧領域及び高圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、マイコン60から出力されたスイッチング指令を上アーム駆動部81aに伝達する。上アーム絶縁伝達部81bは、例えば、フォトカプラ又は磁気カプラである。
上アームドライバ81のうち、上アーム駆動部81a、及び上アーム絶縁伝達部81bの高圧領域側の構成等は、絶縁電源80の上アーム駆動電圧VdHが供給されることにより動作可能に構成されている。上アームドライバ81のうち、上アーム絶縁伝達部81bの低圧領域側の構成等は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。
上アーム駆動部81aは、入力されたスイッチング指令がオン指令である場合、上アームスイッチSWHのゲートに充電電流を供給する。これにより、上アームスイッチSWHのゲート電圧が閾値電圧Vth以上となり、上アームスイッチSWHがオンされる。一方、上アーム駆動部81aは、入力されたスイッチング指令がオフ指令である場合、上アームスイッチSWHのゲートからエミッタ側へと放電電流を流す。これにより、上アームスイッチSWHのゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、上アームスイッチSWHがオフされる。
上アーム駆動部81aは、上アームスイッチSWHに異常が発生している旨の情報であるフェール信号Sgfailと、上アームスイッチSWHの温度Tswdの情報とを、上アーム絶縁伝達部81bを介してマイコン60に伝達する。上アームスイッチSWHの異常には、過熱異常、過電圧異常及び過電流異常の少なくとも1つが含まれる。
上アームドライバ81は、上アームスイッチSWHに対する最終的なスイッチング指令SWMоnを、上アーム絶縁伝達部81bを介してマイコン60に伝達する。ここで、最終的なスイッチング指令は、マイコン60から上アーム絶縁伝達部81bを介して上アーム駆動部81aに伝達されたスイッチング指令と、状態判定部79から上アーム絶縁伝達部81bを介して上アーム駆動部81aに伝達されたシャットダウン指令CmdSDNとの論理演算値である。マイコン60からスイッチング指令としてオン指令が出力される場合、シャットダウン指令CmdSDNが出力されているか否かにかかわらず、最終的なスイッチング指令SWMоnがオン指令とされる。マイコン60からスイッチング指令としてオフ指令が出力される場合、シャットダウン指令CmdSDNが出力されているか否かにかかわらず、最終的なスイッチング指令SWMоnがオフ指令とされる。
下アームドライバ82は、スイッチ駆動部としての下アーム駆動部82aと、下アーム絶縁伝達部82bとを備えている。本実施形態において、各ドライバ81,82の構成は基本的には同じである。このため、以下では、下アームドライバ82の詳細な説明を適宜省略する。
下アームドライバ82のうち、下アーム駆動部82a、及び下アーム絶縁伝達部82bの高圧領域側の構成等は、絶縁電源80の下アーム駆動電圧VdLが供給されることにより動作可能に構成されている。下アームドライバ82のうち、下アーム絶縁伝達部82bの低圧領域側の構成等は、第1低圧電源回路63の第1電圧V1rが供給されることにより動作可能に構成されている。
下アーム駆動部82aは、入力されたスイッチング指令がオン指令である場合、下アームスイッチSWLのゲートに充電電流を供給する。これにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧が閾値電圧Vth以上となり、下アームスイッチSWLがオンされる。一方、下アーム駆動部82aは、入力されたスイッチング指令がオフ指令である場合、下アームスイッチSWLのゲートからエミッタ側へと放電電流を流す。これにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、下アームスイッチSWLがオフされる。
下アーム駆動部82aは、下アームスイッチSWLに異常が発生している旨の情報であるフェール信号Sgfailと、下アームスイッチSWLの温度Tswdの情報とを、下アーム絶縁伝達部82bを介してマイコン60に伝達する。下アームスイッチSWLの異常には、過熱異常、過電圧異常及び過電流異常の少なくとも1つが含まれる。
下アームドライバ82は、下アームスイッチSWLに対する最終的なスイッチング指令SWMоnを、下アーム絶縁伝達部82bを介してマイコン60に伝達する。ここで、最終的なスイッチング指令は、マイコン60から下アーム絶縁伝達部82bを介して下アーム駆動部82aに伝達されたスイッチング指令と、状態判定部79から下アーム絶縁伝達部82bを介して下アーム駆動部82aに伝達されたシャットダウン指令CmdSDNとの論理演算値である。
図3の説明に戻り、制御回路50は、フェール検知部83を備えている。フェール検知部83は、低圧領域に設けられ、各ドライバ81,82からのフェール信号Sgfailが入力されるようになっている。フェール検知部83は、各ドライバ81,82のいずれかからフェール信号Sgfailが入力された場合、異常信号をマイコン60及び状態判定部79に出力する。マイコン60に入力された異常信号は、マイコン60が備える記憶部としてのメモリ60aに記憶される。メモリ60aは、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。
制御回路50は、低圧側ASC指令部84、監視部85、OR回路86及び電源停止部87を備えている。低圧側ASC指令部84、監視部85、OR回路86及び電源停止部87は、低圧領域に設けられている。監視部85は、入力回路61の出力電圧VBが供給されることにより動作可能に構成され、電源停止部87は、第4低圧電源回路66の第4電圧V4rが供給されることにより動作可能に構成されている。
低圧側ASC指令部84は、状態判定部79から低圧側ASC指令CmdASCが入力された場合、3相分の下アームドライバ82に入力されるスイッチング指令を、マイコン60から出力されるスイッチング指令にかかわらず強制的にオン指令にする。
図3及び図4を用いて、制御回路50のうち高圧領域の構成について説明する。
制御回路50は、異常用電源90と、高圧側ASC指令部91とを備えている。異常用電源90は、平滑コンデンサ24の出力電圧VHが供給されることにより異常用駆動電圧Vepsを生成する。異常用電源90として、種々の電源を用いることができ、例えばスイッチング電源を用いることができる。異常用電源90の入力側には、平滑コンデンサ24の高電位側が接続されている。異常用電源90の出力側から出力される異常用駆動電圧Vepsがその目標電圧に制御される。
制御回路50は、通常用電源経路92、通常用ダイオード93、異常用電源経路94及び異常用ダイオード95を備えている。通常用電源経路92は、絶縁電源80の出力側と下アーム駆動部82aとを接続し、下アーム駆動電圧VdLを下アーム駆動部82aに供給する。通常用ダイオード93は、アノードが絶縁電源80の出力側に接続された状態で、通常用電源経路92の中間位置に設けられている。
通常用電源経路92のうち通常用ダイオード93よりも下アーム駆動部82a側と、異常用電源90の出力側とは、異常用電源経路94により接続されている。異常用ダイオード95は、アノードが異常用電源90の出力側に接続された状態で、異常用電源経路94に設けられている。異常用電源経路94は、異常用駆動電圧Vepsを下アーム駆動部82aに供給する。
高圧側ASC指令部91には、通常用電源経路92を介して絶縁電源80の下アーム駆動電圧VdLが供給されるようになっている。高圧側ASC指令部91は、高圧側ASC指令SgASCを下アーム駆動部82aに対して出力する。
続いて、図5を用いて、OR回路86、電源停止部87及びその周辺構成について説明する。OR回路86は、第1~第4抵抗体86a~86d及び第1,第2スイッチ86e,86fを備えている。第1抵抗体86aの第1端には、マイコン60と、第2抵抗体86bの第1端とが接続されている。第2抵抗体86bの第2端は、グランドに接続されている。第1抵抗体86aの第2端には、第3抵抗体86cを介して監視部85に接続されている。
第4抵抗体86dの第1端には、第4低圧電源回路66が接続され、第4抵抗体86dの第2端には、第1スイッチ86eを介してグランドが接続されている。第1スイッチ86eのベースには監視部85からの第1判定信号Sg1が供給される。第1抵抗体86aの第2端には、第2スイッチ86fを介してグランドが接続されている。第2スイッチ86fのベースには、第4抵抗体86dと第1スイッチ86eとの接続点が接続されている。
マイコン60は、自己監視機能を有している。マイコン60は、自身に異常が発生していないと判定した場合、第2判定信号Sg2の論理をHにする。この場合、OR回路86の出力信号である異常通知信号FMCUの論理がHになる。一方、マイコン60は、自身に異常が発生していると判定した場合、第2判定信号Sg2の論理をLにする。この場合、異常通知信号FMCUの論理がLになる。
監視部85は、マイコン60に異常が発生しているか否かを監視する機能を有し、例えば、ウォッチドックカウンタ(WDC)又はファンクションウォッチドックカウンタ(F-WDC)で構成されている。監視部85は、マイコン60に異常が発生していないと判定した場合、第1判定信号Sg1の論理をLにする。この場合、第1,第2スイッチ86e,86fがオフ状態に維持され、異常通知信号FMCUの論理がHになる。一方、監視部85は、マイコン60に異常が発生していると判定した場合、第1判定信号Sg1の論理をHにする。この場合、第1,第2スイッチ86e,86fがオン状態に切り替えられ、異常通知信号FMCUの論理がLにされる。
異常通知信号FMCUは、電源停止部87に入力される。電源停止部87は、異常検知回路87aと、切替スイッチ87bとを備えている。切替スイッチ87bの第1端には、グランドが接続され、切替スイッチ87bの第2端には、制御回路50が備える第1,第2分圧抵抗体96a,96bの接続点が接続されている。第1,第2分圧抵抗体96a,96bの直列接続体の第1端には、入力回路61が接続され、この直列接続体の第2端には、グランドが接続されている。第1,第2分圧抵抗体96a,96bの接続点には、絶縁電源80のUVLO端子が接続されている。絶縁電源80の制御部は、この接続点に入力される電圧である判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回ったと判定した場合、絶縁電源80を停止させる低電圧誤動作防止処理を実施する。一方、絶縁電源80の制御部は、入力された判定電圧Vjinが、低電圧閾値VUVLOよりも高い解除閾値(<VB)を超えたと判定した場合、低電圧誤動作防止処理を停止し、絶縁電源80の動作を再開させる。
異常検知回路87aは、第4低圧電源回路66の第4電圧V4rが供給されることにより動作可能に構成されている。異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がHであると判定した場合、切替スイッチ87bをオフ状態にする。この場合、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLO以上とされる。一方、異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がLであると判定した場合、切替スイッチ87bをオン状態にする。この場合、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLO未満となり、低電圧誤動作防止処理が実施される。この処理が実施されると、絶縁電源80は停止され、上アーム駆動電圧VdH及び下アーム駆動電圧VdLは0Vに向かって徐々に低下し始める。
本実施形態では、従来ではシャットダウン状態となるような制御回路50内の異常が発生した場合であっても、3相短絡制御(ASC:Active Short Circuit)が実施可能となっている。シャットダウン状態とは、3相分の上,下アームスイッチSWH,SWLがオフ状態になることである。ここで、制御回路50内の異常には、マイコン60の異常と、中間電源回路62及び第1~第3低圧電源回路63~65の少なくとも1つの異常と、マイコン60から上,下アームドライバ81,82へとスイッチング指令を正常に伝達できなくなる異常と、絶縁電源80から電圧を出力できなくなる異常とが含まれる。絶縁電源80から電圧を出力できなくなる異常には、絶縁電源80の異常と、低圧電源31から絶縁電源80に給電できなくなる異常とが含まれる。ここで、低圧電源31から絶縁電源80に給電できなくなる異常は、例えば、入力回路61等、低圧電源31から絶縁電源80までの電気経路が断線することで発生する。また、下アームドライバ82を例に説明すると、スイッチング指令を正常に伝達できなくなる異常には、マイコン60から下アーム絶縁伝達部82bまでの信号経路が断線する異常が含まれる。なお、上述した異常は、例えば車両の衝突により発生する。
図6を用いて、制御回路50内に異常が発生した場合に実施される3相短絡制御について説明する。
ステップS10では、電源停止部87の異常検知回路87aは、入力される異常通知信号FMCUの論理がLであるか否かを判定する。マイコン60から出力される第2判定信号Sg2の論理がLの場合、又は監視部85から出力される第1判定信号Sg1の論理がHの場合、異常通知信号FMCUの論理がLとなる。中間電源回路62やマイコン60の電源となる第1~第3低圧電源回路63~65に異常が発生した場合にも、マイコン60から出力される第2判定信号Sg2の論理がLとなる。
異常検知回路87aは、異常通知信号FMCUの論理がLであると判定した場合、切替スイッチ87bをオン状態に切り替える。これにより、絶縁電源80のUVLO端子に入力される判定電圧Vjinがグランド電位である0Vに向かって低下する。
ステップS11では、絶縁電源80の制御部は、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回るまで待機する。制御部は、判定電圧Vjinが低電圧閾値VUVLOを下回ったと判定した場合、ステップS12において、低電圧誤動作防止処理を行い、絶縁電源80を停止させる。これにより、絶縁電源80から出力される上,下アーム駆動電圧VdH,VdLは0Vに向かって低下し始める。
ステップS13では、高圧側ASC指令部91は、絶縁電源80から出力される下アーム駆動電圧VdLを検出し、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、異常用電源90に対して起動を指示する。これにより、ステップS14において、異常用電源90から異常用駆動電圧Vepsが出力され始める。
具体的には、高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過してから異常用電源90の起動を指示する。これは、上下アーム短絡の発生を防止するためである。
例えば、高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、検出した下アーム駆動電圧VdLが所定電圧Vpを下回ったと判定した場合に異常用電源90の起動を指示してもよい。ここで、所定電圧Vpは、上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過したことを判定できる値に設定され、例えば、上記閾値電圧Vthと同じ値又は閾値電圧Vth未満の値に設定されていればよい。
また、例えば、高圧側ASC指令部91は、検出した下アーム駆動電圧VdLが低下し始めてから所定期間経過したタイミングで異常用電源90の起動を指示してもよい。ここで、上記所定期間は、上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過したことを判定できる値に設定されていればよい。
その後、ステップS15において、高圧側ASC指令部91は、高圧側ASC指令SgASCを下アーム駆動部82aに対して出力する。これにより、ステップS16において、下アーム駆動部82aは、3相分の下アームスイッチSWLをオン状態にする。つまり、3相分の「オン側スイッチ」としての下アームスイッチSWLがオン状態にされ、3相分の「オフ側スイッチ」としての上アームスイッチSWHがオフ状態にされる3相短絡制御が実行される。
図7を用いて、図6の処理についてさらに説明する。図7(a)はマイコン60の異常の有無の推移を示し、図7(b)は監視部85から出力される第1判定信号Sg1の推移を示し、図7(c)は異常通知信号FMCUの推移を示し、図7(d)は絶縁電源80の動作状態の推移を示す。図7(e),(f)は絶縁電源80から出力される上,下アーム駆動電圧VdH,VdLの推移を示し、図7(g)は異常用電源90の動作状態の推移を示し、図7(h)は高圧側ASC指令部91から出力される高圧側ASC指令SgASCの推移を示し、図7(i)は各相の下アームスイッチSWLの駆動状態の推移を示す。
時刻t1において、マイコン60の異常が発生する。このため、時刻t2において、監視部85から出力される第1判定信号Sg1の論理がHに反転し、時刻t3において、異常通知信号FMCUの論理がLに反転する。その結果、切替スイッチ87bがオン状態に切り替えられ、絶縁電源80の低電圧誤動作防止処理が実施される。これにより、時刻t4において、絶縁電源80が停止され、上,下アーム駆動電圧VdH,VdLが低下し始める。
下アーム駆動電圧VdLが低下し始めた後、時刻t4から上アームスイッチSWHがオフ状態になるまでの十分な期間が経過した時刻t5において、高圧側ASC指令部91により異常用電源90の起動が指示される。これにより、異常用電源90から異常用駆動電圧Vepsが出力され始める。ここで、十分な期間が経過したか否かは、上述したように、例えば、検出された下アーム駆動電圧VdLが所定電圧Vpを下回ったか否か、又は下アーム駆動電圧VdLが低下し始めてから所定期間経過したか否かで判定されればよい。その後、時刻t6において、高圧側ASC指令部91から下アーム駆動部82aへと高圧側ASC指令SgASCが出力され、時刻t7において、下アーム駆動部82aにより3相分の下アームスイッチSWLがオン状態にされる。
なお、低圧電源31に異常が発生したり、入力回路61に異常が発生したり、低圧電源31と制御回路50とを電気的に接続する給電経路が断線したり、絶縁電源80に異常が発生したりする場合にも、ステップS11~S16の処理により、3相短絡制御が実行される。つまり、この場合、低電圧誤動作防止処理により絶縁電源80が停止され、上,下アーム駆動電圧VdH,VdLが0Vに向かって低下し、3相短絡制御が実行される。
また、過電圧異常が発生した場合にも、3相短絡制御が実行される。詳しくは、状態判定部79は、過電圧検出部78から過電圧信号が入力されたか否かを判定する。状態判定部79は、過電圧信号が入力されたと判定した場合、低圧側ASC指令部84に対して低圧側ASC指令CmdASCを出力する。
低圧側ASC指令部84は、低圧側ASC指令CmdASCが入力された場合、3相分の上アームドライバ81に入力されるスイッチング指令を、マイコン60から出力されるスイッチング指令にかかわらず強制的にオフ指令にするシャットダウン指令CmdSDNを出力する。また、低圧側ASC指令部84は、3相分の下アームドライバ82に入力されるスイッチング指令を、マイコン60から出力されるスイッチング指令にかかわらず強制的にオン指令にする。これにより、3相短絡制御が実行される。
また、以下に説明する場合にも、マイコン60により3相短絡制御が実行される。詳しくは、マイコン60は、フェール検知部83からの異常信号SgFに基づいて、各上,下アームスイッチSWH,SWLのいずれかに異常が発生しているか否かを判定する。マイコン60は、異常が発生していると判定した場合、各上,下アームスイッチSWH,SWLのうち、いずれの相及びいずれのアームのスイッチに異常が発生したかを特定し、また、その異常がオープン異常又はショート異常のいずれであるかを特定する。
マイコン60は、上,下アームのうち、一方のアームの少なくとも1つのスイッチにショート異常が発生したと判定した場合、上,下アームのうち、ショート異常が発生したアームの3相分のスイッチに対するスイッチング指令としてオン指令を出力し、他のアームの3相分のスイッチに対するスイッチング指令としてオフ指令を出力する。これにより、3相短絡制御が実行される。一方、マイコン60は、上,下アームのうち、一方のアームの少なくとも1つのスイッチにオープン異常が発生したと判定した場合、上,下アームのうち、オープン異常が発生したアームとは別のアームの3相分のスイッチに対してオン指令を出力し、他のアームの3相分のスイッチに対してオフ指令を出力する。これにより、3相短絡制御が実行される。
ちなみに、本実施形態において、マイコン60及び監視部85が「異常時制御部」に相当する。
先の図3の説明に戻り、制御回路50は、放電処理部100を備えている。放電処理部100は、制御回路50の高圧領域に設けられ、放電スイッチ27の駆動による平滑コンデンサ24の放電制御を実行するための構成である。放電処理部100は、マイコン60からの放電指令CmdADが入力されたと判定した場合、放電スイッチ27を駆動して平滑コンデンサ24の放電制御を行う。
続いて、図8を用いて、3相短絡制御を正常に実行できるか否かを判定するチェック処理について説明する。本実施形態において、チェック処理は、マイコン60により実行される。
ステップS20では、制御システムの停止指示がなされたか否かを判定する。本実施形態では、始動スイッチ28がオフ状態にされたと上位ECU110が判定した場合、その判定結果がマイコン60に入力されたことをもって停止指示がなされたと判定する。
ステップS20において停止指示がなされたと判定した場合には、所定の終了シーケンスの一部として、ステップS21~S30においてチェックを行う。詳しくは、ステップS21では、第1クラッチ13により回転軸11aと出力軸12aとの間を動力遮断状態にする指令を上位ECU110に対して出力する。また、第2クラッチ14により回転軸11aと第1回転軸15aとの間を動力遮断状態にする指令を上位ECU110に対して出力する。これにより、回転軸11aから出力軸12aへの動力伝達と、回転軸11aから第1回転軸15aへの動力伝達とが防止される。
続くステップS22では、回転軸11aが回転して、かつ、巻線11bの線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になっている状態で、3相分の上アームドライバ81に対して上アームスイッチSWHのオフ指令を出力し、3相分の下アームドライバ82に対して下アームスイッチSWLのオン指令を出力する。
回転軸11aが回転して、かつ、線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になっているとの条件は、後述するステップS23において、3相短絡制御を正常に実行できるか否かの判定精度を高めるためのものである。
つまり、線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になるように回転軸11aが回転している場合において、シャットダウン制御が行われるときは巻線11b及び平滑コンデンサ24を含む閉回路に電流が流れないのに対し、3相短絡制御が行われるときは巻線11b及び下アームスイッチSWLを含む閉回路に循環電流が流れる。一方、回転軸11aが回転していない場合は、シャットダウン制御が行われるとき及び3相短絡制御が行われるときそれぞれにおいて電流が流れない。つまり、回転軸11aが回転していない場合は、シャットダウン制御が行われるときの電流流通状態と、3相短絡制御が行われるときの電流流通状態とが同じになるため、これら電流流通状態に基づいて下アームスイッチSWLがオン状態になっているか否かを判別することができない。そこで、電流流通状態に基づく判定精度を高めるために、回転軸11aが回転して、かつ、線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になっているとの条件が設定される。
ここで、ステップS22を開始する場合において、巻線11bの線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdcを上回っているとき、線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になるまで回転軸11aの回転速度Nrを低下させるように上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング制御を行えばよい。そして、このスイッチング制御の後、3相分の上アームドライバ81に対してオフ指令を出力し、3相分の下アームドライバ82に対してオン指令を出力すればよい。
また、ステップS22を開始する場合において、回転軸11aが回転していないとき、線間電圧Vdemfを平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下にするとの条件を満たしつつ、回転軸11aの回転速度Nrを上昇させるように上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング制御を行えばよい。そして、このスイッチング制御の後、3相分の上アームドライバ81に対してオフ指令を出力し、3相分の下アームドライバ82に対してオン指令を出力すればよい。
以上説明した回転軸11aの回転速度Nrの制御により、3相短絡制御のチェック処理に要する時間を短縮できる。この際、第1クラッチ13により回転軸11aと出力軸12aとの間が動力遮断状態とされているため、回転軸11aに作用する負荷を低減できる。その結果、線間電圧Vdemfを平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下にしつつ回転軸11aを回転させている状態を迅速に実現でき、3相短絡制御のチェック処理に要する時間の短縮効果をさらに高めることができる。
なお、ステップS22を開始する場合において、巻線11bの線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下にされつつ回転軸11aが回転しているとき、スイッチング制御を行うことなく、3相分の上アームドライバ81に対してオフ指令を出力し、3相分の下アームドライバ82に対してオン指令を出力すればよい。
また、ステップS22で用いられる線間電圧Vdemfは、例えば、電気角速度ωeを入力として、「Vdemf=K×ωe」に基づいて推定されればよい。Kは、定数であり、ロータの磁極の磁束量φから定まる値である。また、ステップS22で用いられる平滑コンデンサ24の端子電圧Vdcは、例えば、電圧センサ77の電圧信号に基づいて算出された値、又は高圧電源30の端子電圧の正常値が取り得る範囲の最小値であって予め定められた固定値であればよい。
また、線間電圧Vdemfを検出するセンサが制御システムに備えられる場合、検出された線間電圧がステップS22で用いられればよい。
また、ステップS22を開始する場合において、線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdcを上回っているとき、回転軸11aの回転速度を低下させるようにスイッチング制御を行うことなく、スイッチング制御を停止した状態で、線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になるまで待機してもよい。
続くステップS23では、相電流センサ40から電流インターフェース部70を介して入力された電流信号に基づいて相電流を算出する。そして、算出した相電流に基づいて相電流が流れていると判定した場合、上アームスイッチSWHがオン状態になってかつ下アームスイッチSWLがオフ状態になり、3相短絡制御を正常に実行できると判定する。ここでは、例えば、相電流の変動周期が回転速度に応じた変動周期になっていることをもって、3相短絡制御を正常に実行できると判定してもよい。一方、算出した相電流が0である、つまり相電流が流れていないと判定した場合、3相短絡制御を正常に実行できないと判定する。
巻線11bの線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になっている場合において、3相短絡制御が実行されていなければ、巻線11b、導電部材CM及び下アームスイッチSWLを含む閉回路に電流が流れない。一方、線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になっている場合において、3相短絡制御が正常に実行されていると、巻線11b、導電部材CM及び下アームスイッチSWLを含む閉回路に電流が流れる。この点に鑑み、ステップS23の処理が設けられている。
続くステップS24では、ステップS23において3相短絡制御を正常に実行できると判定したか否かを判定する。3相短絡制御を正常に実行できると判定した場合には、ステップS26に進む。一方、3相短絡制御を正常に実行できないと判定した場合には、ステップS25に進み、正常に実行できない旨の情報をメモリ60aに記憶する。その後、ステップS26に進む。
ステップS26では、回転軸11aが回転して、かつ、巻線11bの線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になっている状態で、OR回路86から出力される異常通知信号FMCUの論理を意図的にLにする処理を行う。具体的には、第2判定信号Sg2の論理をLにする処理、又は第1判定信号Sg1の論理をLにする指令を監視部85に対して出力する処理を行う。なお、例えば、ステップS24において正常に実行できないと判定された場合、マイコン60が故障している可能性があるため、マイコン60の指令によらず、監視部85が自発的に第1判定信号Sg1の論理をLにする処理を行ってもよい。
ここで、ステップS26を開始する場合において、巻線11bの線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdcを上回っているとき、ステップS22の処理と同様に、線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になるまで回転軸11aの回転速度Nrを低下させるように上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング制御を行えばよい。そして、このスイッチング制御の後、異常通知信号FMCUの論理をLにする処理を行えばよい。
また、ステップS26を開始する場合において、回転軸11aが回転していないとき、ステップS22の処理と同様に、線間電圧Vdemfを平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下にするとの条件を満たしつつ、回転軸11aの回転速度Nrを上昇させるように上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング制御を行えばよい。そして、このスイッチング制御の後、異常通知信号FMCUの論理をLにする処理を行えばよい。
以上説明した回転軸11aの回転速度の制御により、3相短絡制御のチェック処理に要する時間を短縮できる。
なお、ステップS26で用いられる線間電圧Vdemf及び平滑コンデンサ24の端子電圧Vdcは、例えば、ステップS22で説明したものと同様のものを用いることができる。
続くステップS27では、相電流センサ40から電流インターフェース部70を介して入力された電流信号に基づいて相電流を算出する。そして、算出した相電流に基づいて相電流が流れていると判定した場合、3相短絡制御を正常に実行できると判定する。一方、算出した相電流が0である、つまり相電流が流れていないと判定した場合、3相短絡制御を正常に実行できないと判定する。
続くステップS28では、ステップS27において3相短絡制御を正常に実行できると判定したか否かを判定する。3相短絡制御を正常に実行できると判定した場合には、ステップS30に進む。一方、3相短絡制御を正常に実行できないと判定した場合には、ステップS29に進み、正常に実行できない旨の情報をメモリ60aに記憶する。その後、ステップS30に進む。
続くステップS30では、第1クラッチ13により回転軸11aと出力軸12aとの間を動力伝達状態にする指令を上位ECU110に対して出力する。また、第2クラッチ14により回転軸11aと第1回転軸15aとの間を動力伝達状態にする指令を上位ECU110に対して出力する。これにより、回転軸11aと出力軸12aとの間の動力伝達と、回転軸11aと第1回転軸15aとの間の動力伝達とが可能とされる。
続くステップS31では、第1,第2遮断スイッチ23a,23bのオフ指令を上位ECU110に対して出力する。これにより、第1,第2遮断スイッチ23a,23bがオフ状態に切り替えられ、高圧電源30と平滑コンデンサ24との間が電気的に遮断される。
続くステップS32では、平滑コンデンサ24の放電処理を行う。具体的には、放電処理部100に対して放電指令CmdADを出力する。これにより、放電スイッチ27は、継続して又は断続的にオン状態にされ、放電抵抗体26に平滑コンデンサ24の放電電流が流れる。その結果、平滑コンデンサ24の端子電圧が0に向かって低下する。
ちなみに、本実施形態において、ステップS21~S24,S26~S28の処理が「チェック部」に相当する。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
マイコン60は、回転軸11aを回転させて、かつ、第2クラッチ14により回転軸11aと第1回転軸15aとの間を動力遮断状態にした状態で、3相短絡制御のチェック処理を行う。このため、この処理の実行によって回転電機11にトルクが発生した場合であっても、発生したトルクが車輪17に伝わることを防止できる。これにより、3相短絡制御のチェック処理の実行が車両10の挙動に及ぼす影響を抑制することができる。
マイコン60は、回転軸11aが回転して、かつ、巻線11bの線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になる状態を上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング制御により実現する。これにより、その後、3相分の上アームドライバ81に対してオフ指令を出力し、3相分の下アームドライバ82に対してオン指令を出力するまでの時間を短縮できる。また、その後、OR回路86から出力される異常通知信号FMCUの論理をLにするまでの時間を短縮できる。これにより、3相短絡制御のチェック処理に要する時間を短縮でき、ひいては終了シーケンスに要する時間を短縮できる。
マイコン60は、巻線11bの線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になっている状態で3相短絡制御のチェック処理を行う。これにより、電力回生の発生を防止でき、平滑コンデンサ24、スイッチングデバイス部19及び電気機器25を保護することができる。
マイコン60は、回転軸11aが回転して、かつ、線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdc以下になっている状態において、相電流センサ40の検出値に基づいて相電流が流れていると判定した場合、3相短絡制御を正常に実行できると判定する。このように、相電流センサ40の検出値を用いることにより、正常に実行できることを的確に判定できる。
マイコン60は、ステップS31において第1,第2遮断スイッチ23a,23bをオフ状態に切り替えるに先立ち、3相短絡制御のチェック処理を行う。これにより、ステップS22,S26において回転軸11aの回転速度を上昇させる必要がある場合、高圧電源30を電力供給源として回転速度Nrを的確に上昇させることができる。
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・図8のステップS21において、第1クラッチ13により回転軸11aと出力軸12aとの間を動力遮断状態にする指令を上位ECU110に対して出力しなくてもよい。
・図8のステップS22,S26において、線間電圧Vdemfが平滑コンデンサ24の端子電圧Vdcよりも高くなっていてもよい。この場合、ステップS23,S27の処理を、例えば以下に説明する処理とすればよい。
マイコン60は、上アームスイッチSWHに対する最終的なスイッチング指令SWMоnがオフ指令であると判定して、かつ、下アームスイッチSWLに対する最終的なスイッチング指令SWMоnがオン指令であると判定した場合、3相短絡制御を正常に実行できると判定する。
・図8に示す処理において、ステップS21の処理の後、ステップS26~S29の処理群が実行された後にステップS22~S25の処理群が実行されてもよい。また、ステップS22~S25の処理群、及びステップS26~S29の処理群のうち、いずれかの処理群のみが実行されてもよい。
・制御システムの起動指示がなされた直後に3相短絡制御のチェック処理が実行されてもよい。ここでは、マイコン60は、例えば、始動スイッチ28がオン状態にされたと上位ECU110が判定した場合、その判定結果がマイコン60に入力されたことをもって起動指示がなされたと判定すればよい。また、制御システムの起動指示後、制御システムの停止が指示される前までの期間において、3相短絡制御のチェック処理が実行されてもよい。
・移動体としては、車両に限らず、例えば、図9に示すように、飛行動力源となる回転電機11を備える航空機200であってもよい。なお、図9において、先の図1等に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
航空機200は、回転電機11、インバータ18、高圧電源30、クラッチ210、駆動軸210a及びプロペラ220を備えている。なお、図9では、第1,第2遮断スイッチ23a,23b及び上位ECU110等の図示を省略している。
回転電機11の回転軸11aには、クラッチ210を介して駆動軸210aが接続され、駆動軸210aにはプロペラ220が接続されている。クラッチ210が制御されることにより、駆動軸210aと回転軸11aとの間が動力伝達状態又は動力遮断状態のいずれかに切り替えられる。動力伝達状態とされることにより、駆動軸210aは、航空機200を飛行させるために回転させられる。制御回路50を構成するマイコン60は、クラッチ210の制御を上位ECU110に指示可能とされている。
以上説明した航空機200に対しても、先の図8と同様の処理を適用することができる。
また、移動体としては、航空機に限らず、例えば船舶であってもよい。この場合、先の図9を参照すると、回転電機11は船舶の航行動力源となり、駆動軸210aは、スクリューに接続されるとともに、船舶を航行させるために回転させられる。
・車両としては、1モータ2クラッチの制御システムを備えるものに限らない。
・電流センサとしては、例えば、高電位側電気経路22Hと上アームスイッチSWHの高電位側端子との間に設けられるシャント抵抗を備えるセンサ、又は低電位側電気経路22Lと下アームスイッチSWLの低電位側端子との間に設けられるシャント抵抗を備えるセンサであってもよい。
また、電流センサとしては、オン状態にされている上,下アームスイッチSWH,SWLの電圧降下量に基づいて電流を検出するセンサであってもよい。
・駆動軸とロータの回転軸との間を動力伝達状態又は動力遮断状態のいずれかに切り替える構成であれば、クラッチ以外の構成であってもよい。
・放電スイッチ27及び放電処理部100が制御回路50に備えられていなくてもよい。
・第1,第2遮断スイッチ23a,23bのうちいずれかが設けられていなくてもよい。
・第1,第2遮断スイッチ23a,23bがインバータ18に備えられていてもよい。
・第1,第2遮断スイッチ23a,23bは、リレーに限らず、例えば半導体スイッチング素子であってもよい。
・各ドライバ81,82として、低圧領域及び高圧領域の境界を跨がず、高圧領域のみに設けられるドライバが用いられてもよい。
・マイコン60及び高圧側ASC指令部91が実行を指示する3相短絡制御として、3相分の上アームスイッチSWHをオン状態にし、3相分の下アームスイッチSWLをオフ状態にする制御が用いられてもよい。この場合、異常用電源90は、3相分の上アーム駆動部81aそれぞれに対して個別に備えられればよい。
・先の図1に示す構成において、平滑コンデンサ24と第1,第2遮断スイッチ23a,23bとの間に昇圧コンバータが備えられていてもよい。
・スイッチングデバイス部を構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばボディダイオードを内蔵するNチャネルMOSFETであってもよい。
・スイッチングデバイス部を構成する各相各アームのスイッチとしては、互いに並列接続された2つ以上のスイッチであってもよい。この場合、互いに並列接続されたスイッチの組み合わせとしては、例えば、SiCのスイッチング素子及びSiのスイッチング素子の組み合わせ、又はIGBT及びMOSFETの組み合わせであってもよい。
・回転電機の制御量としては、トルクに限らず、例えば、回転電機のロータの回転速度であってもよい。
・回転電機としては、1つの巻線群を備えるものに限らず、複数の巻線群を備えるものであってもよい。例えば、2つの巻線群を有する場合、回転電機は6相のものとなる。また、回転電機としては、例えば9相のものであってもよい。
・回転電機としては、永久磁石同期機に限らず、例えば巻線界磁型同期機であってもよい。また、回転電機としては、同期機に限らず、例えば誘導機であってもよい。
・回転電機としては、移動体の走行動力源として用いられるものに限らず、電動パワーステアリング装置や空調用電動コンプレッサを構成する電動機等、他の用途に用いられるものであってもよい。
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。