JP7338269B2 - パターン膜、パターン膜の形成方法、インプリントモールドの製造方法、およびパターン構造体の製造方法 - Google Patents

パターン膜、パターン膜の形成方法、インプリントモールドの製造方法、およびパターン構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、パターン膜、パターン膜の形成方法、インプリントモールドの製造方法、およびパターン構造体の製造方法に関する。
パターン膜については、微細化、形状の多様化、大面積化、サイズの制御性など多種多様な要求がある。このためパターン膜の製造方法に関しては、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を用いたリソグラフィ法、自己組織化による相分離構造を利用したパターン形成方法(以下において、「自己組織化パターン形成方法」という。)など、様々な技術が知られている。
自己組織化とは、外的要因からの制御のみに起因せず、自発的に組織や構造を構築する現象を指し、例えば、ある性質を有する単量体化合物とそれと性質の異なる単量体化合物とが共重合してなるブロック共重合体や、ポリマーブレンドを用いた自己組織化による超微細パターンの形成方法などが知られている(例えば、特許文献1又は2を参照)。
従来の自己組織化パターン形成方法は、例えばガイドパターンを予め基板上に設けるなど工程が多く、プロセスの簡略化が課題の一つである。また、従来の自己組織化パターン形成方法は、パターンの形状やサイズの適応可能範囲が狭く、例えば、数百μm以上の線幅又は数百μm以上の高低差を有するパターン膜を形成することは困難である。
特開2009-260330号公報 特開2016-197176号公報
未開拓の技術領域を切り開くためには、特殊な構造を有する新規なパターン膜の開発や、任意の形状、構造又はサイズを有するパターン膜を、高い自由度をもって簡便に提供することが可能な新たなパターン形成方法を開発することが望まれる。
本発明は、このような事情に鑑み、特殊な構造を有するパターン膜を提供すること、及び、特殊な構造を有するパターン膜を簡便に製造することを可能とするパターン膜の形成方法を提供することを目的とする。
本発明の第1側面によると、
1つまたは複数の第1領域と、1つまたは複数の第2領域と、1つまたは複数の第3領域とを少なくとも含み、
上記1つまたは複数の第1領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第1パターンからなり、上記1つまたは複数の第2領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第2パターンからなり、上記1つまたは複数の第3領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第3パターンからなり、
上記1つまたは複数の第1領域に占める上記第1パターンの凸部/凹部の面積比XA1/XB1、上記1つまたは複数の第2領域に占める上記第2パターンの凸部/凹部の面積比XA2/XB2、上記1つまたは複数の第3領域に占める上記第3パターンの凸部/凹部の面積比XA3/XB3は、下記式(I)の関係を満たし、
上記第1パターンの凸部の側壁の傾きY、上記第2パターンの凸部の側壁の傾きY、及び上記第3パターンの凸部の側壁の傾きYは、下記式(II)及び式(III)の関係を満たすパターン膜が提供される。
A1/XB1 < XA2/XB2 < XA3/XB3 (I)
< Y (II)
< Y (III)
本発明の第2側面によると、
1つまたは複数の第1領域と、1つまたは複数の第2領域と、1つまたは複数の第3領域とを少なくとも含み、上記1つまたは複数の第1領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第1パターンからなり、上記1つまたは複数の第2領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第2パターンからなり、上記1つまたは複数の第3領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第3パターンからなるパターン膜であって、上記1つまたは複数の第1領域に占める上記第1パターンの凸部/凹部の面積比XA1/XB1、上記1つまたは複数の第2領域に占める上記第2パターンの凸部/凹部の面積比XA2/XB2、上記1つまたは複数の第3領域に占める上記第3パターンの凸部/凹部の面積比XA3/XB3は、下記式(I)の関係を満たし、上記第1パターンの凸部の側壁の傾きY、上記第2パターンの凸部の側壁の傾きY、及び上記第3パターンの凸部の側壁の傾きYは、下記式(II)及び式(III)の関係を満たすパターン膜の製造方法であり、
基材上に、活性エネルギー線の照射により硬化する第1液体を含む分散粒子と、上記活性エネルギー線の照射により硬化しない第2液体を含む分散媒とを含むエマルジョンからなる膜を形成することと、
上記膜に上記活性エネルギー線を、上記第1領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA1/XB1、上記第2領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA2/XB2、上記第3領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA3/XB3となるようパターン状に照射して、上記活性エネルギー線を照射した露光部で上記第1液体を硬化させることと、
上記活性エネルギー線の照射後に、上記膜から上記第2液体の少なくとも一部を除去することと、
上記第2液体の少なくとも一部を除去した上記膜が含んでいる未硬化の上記第1液体を硬化させることと
を含むパターン膜の形成方法が提供される。
A1/XB1 < XA2/XB2 < XA3/XB3 (I)
< Y (II)
< Y (III)
本発明の第3側面によると、
1つまたは複数の第1領域と、1つまたは複数の第2領域と、1つまたは複数の第3領域とを少なくとも含み、上記1つまたは複数の第1領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第1パターンからなり、上記1つまたは複数の第2領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第2パターンからなり、上記1つまたは複数の第3領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第3パターンからなるパターン膜であって、上記1つまたは複数の第1領域に占める上記第1パターンの凸部/凹部の面積比XA1/XB1、上記1つまたは複数の第2領域に占める上記第2パターンの凸部/凹部の面積比XA2/XB2、上記1つまたは複数の第3領域に占める上記第3パターンの凸部/凹部の面積比XA3/XB3は、下記式(I)の関係を満たし、上記第1パターンの凸部の側壁の傾きY、上記第2パターンの凸部の側壁の傾きY、及び上記第3パターンの凸部の側壁の傾きYは、下記式(II)及び式(III)の関係を満たすパターン膜の製造方法であり、
基材上に、活性エネルギー線の照射により硬化する第1液体を含む分散粒子と、上記活性エネルギー線の照射により硬化しない第2液体を含む分散媒とを含むエマルジョンからなる膜を形成することと、
上記膜に上記活性エネルギー線を、上記第1領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA1/XB1、上記第2領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA2/XB2、上記第3領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA3/XB3となるようパターン状に照射して、上記活性エネルギー線を照射した露光部に、上記分散粒子の硬化物からなる粒状層を形成することと、
上記活性エネルギー線の照射後に、上記膜から上記第2液体の少なくとも一部を除去して、未硬化の上記第1液体の少なくとも一部を、上記活性エネルギー線を照射していない領域から上記粒状層へと移動させることと、
上記第2液体の少なくとも一部を除去した上記膜が含んでいる未硬化の上記第1液体を硬化させることと
を含むパターン膜の形成方法が提供される。
A1/XB1 < XA2/XB2 < XA3/XB3 (I)
< Y (II)
< Y (III)
本発明の第4側面によると、第2又は第3側面に係るパターン膜の製造方法を含むインプリントモールドの製造方法が提供される。
本発明の第5側面によると、第2又は第3側面に係るパターン膜の製造方法を含むパターン構造体の製造方法が提供される。
本発明によれば、新規なパターン膜、及び、新規なパターン膜を簡便に製造することを可能とする新規なパターン膜の形成方法が提供される。
エマルジョンからなる膜が基材上に形成された状態の一例を概略的に示す断面図。 紫外線のパターン照射により、紫外線を照射した領域に、分散粒子の硬化物からなる粒状層が形成された状態の一例を概略的に示す断面図。 膜からの第2液体の除去を開始することにより、非照射領域において分散粒子の合一が起こった状態の一例を概略的に示す断面図。 非照射領域において分散粒子の合一が更に進行し、分散粒子の合一体が、分散粒子の硬化物からなる粒状層に浸透し、拡散していく状態の一例を概略的に示す断面図。 第2液体の除去が完了し、分散粒子の合一体が粒状層に完全に移動した状態の一例を概略的に示す断面図。 紫外線の全面照射により、未硬化の第1液体を硬化させた状態の一例を概略的に示す断面図。 エマルジョンの光学顕微鏡写真。 エマルジョンの粒度分布を示すグラフ。 エマルジョンを液溜めセルに充填した状態を示す写真。 液溜めセルの上にスペーサを介してメタルマスクを設置した状態を示す写真。 メタルマスク上から紫外線の平行光を照射した状態を示す写真。 露光終了直後の膜の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して1分後の膜の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して5分後の膜の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して10分後の膜の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して15分後の膜の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して20分後の膜の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して30分後の膜の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して45分後の膜の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して1分後に全面露光を施し、続いて残留分散媒を除去することにより得た試料の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して5分後に全面露光を施し、続いて残留分散媒を除去することにより得た試料の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して10分後に全面露光を施し、続いて残留分散媒を除去することにより得た試料の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して15分後に全面露光を施し、続いて残留分散媒を除去することにより得た試料の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して20分後に全面露光を施し、続いて残留分散媒を除去することにより得た試料の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して30分後に全面露光を施し、続いて残留分散媒を除去することにより得た試料の状態を示す写真。 露光後にエマルジョンの室温乾燥を開始して45分後に全面露光を施し、続いて残留分散媒を除去することにより得た試料の状態を示す写真。 図10Aの試料(乾燥膜)上にアルミ蒸着を施した後、その立体形状を計測した画像を示す図。 図10Bの試料(乾燥膜)上にアルミ蒸着を施した後、その立体形状を計測した画像を示す図。 図10Cの試料(乾燥膜)上にアルミ蒸着を施した後、その立体形状を計測した画像を示す図。 図10Dの試料(乾燥膜)上にアルミ蒸着を施した後、その立体形状を計測した画像を示す図。 図10Eの試料(乾燥膜)上にアルミ蒸着を施した後、その立体形状を計測した画像を示す図。 図10Fの試料(乾燥膜)上にアルミ蒸着を施した後、その立体形状を計測した画像を示す図。 図10Gの試料(乾燥膜)上にアルミ蒸着を施した後、その立体形状を計測した画像を示す図。 エマルジョンの乾燥時間と、照射領域と非照射領域との高低差との関係を示すグラフ。 露光直後の膜の状態を示す写真。 エマルジョンのホットプレート乾燥を開始して2分後の膜の状態を示す写真。 エマルジョンのホットプレート乾燥を開始して2分30秒後の膜の状態を示す写真。 エマルジョンのホットプレート乾燥を開始して2分40秒後の膜の状態を示す写真。 エマルジョンのホットプレート乾燥を開始して3分30秒後の膜の状態を示す写真。 エマルジョンのホットプレート乾燥を開始して5分後の膜の状態を示す写真。 平均粒径Dが異なる3種のエマルジョンの粒度分布を示すグラフ。 L/S比が0.33~3の範囲内にある、実験に供したラインアンドスペースパターン群を概略的に示す図。 凹凸パターンにおける凸部の側壁の傾きを説明するための図。 L/S比と凸部(ライン)の側壁の傾きとの関係の一形態を示すグラフ。 L/S比と凸部(ライン)の側壁の傾きとの関係の他の形態を示すグラフ。 L/S比と凸部(ライン)の側壁の傾きとの関係の他の形態を示すグラフ。 L/S比と凸部(ライン)の側壁の傾きとの関係の他の形態を示すグラフ。 L/S比が0.33のラインアンドスペースパターンにおける、凸部(ライン)の側壁近傍の透過照明下での光学顕微鏡写真。 L/S比が0.33のラインアンドスペースパターンにおける、凸部(ライン)の側壁近傍の透過照明下での光学顕微鏡写真。 L/S比が1のラインアンドスペースパターンにおける、凸部(ライン)の側壁近傍の透過照明下での光学顕微鏡写真。 L/S比が1のラインアンドスペースパターンにおける、凸部(ライン)の側壁近傍の透過照明下での光学顕微鏡写真。 L/S比が3のラインアンドスペースパターンにおける、凸部(ライン)の側壁近傍の透過照明下での光学顕微鏡写真。 L/S比が3のラインアンドスペースパターンにおける、凸部(ライン)の側壁近傍の透過照明下での光学顕微鏡写真。 L/S比が異なる3種のパターンのそれぞれを、平均粒径が異なる3種のエマルジョンを用いて形成した各パターンの顕微鏡写真であって、各パターンにおける凸部(ライン)の側壁近傍の左上方からの反射照明下での顕微鏡写真。 第1液体を含む分散粒子(エマルジョン液滴)の重合熱による液膜内対流の発生を時系列で示す写真。 第1液体を含む分散粒子(エマルジョン液滴)の重合熱による液膜内対流の発生のメカニズムを説明するための模式図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態に係るパターン膜は、1つまたは複数の第1領域と、1つまたは複数の第2領域と、1つまたは複数の第3領域とを少なくとも含む。上記1つまたは複数の第1領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第1パターンからなり、上記1つまたは複数の第2領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第2パターンからなり、上記1つまたは複数の第3領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第3パターンからなる。
上記1つまたは複数の第1領域に占める上記第1パターンの凸部/凹部の面積比XA1/XB1、上記1つまたは複数の第2領域に占める上記第2パターンの凸部/凹部の面積比XA2/XB2、上記1つまたは複数の第3領域に占める上記第3パターンの凸部/凹部の面積比XA3/XB3は、下記式(I)の関係を満たす。更に、上記第1パターンの凸部の側壁の傾きY、上記第2パターンの凸部の側壁の傾きY、及び上記第3パターンの凸部の側壁の傾きYは、下記式(II)及び式(III)の関係を満たす。
A1/XB1 < XA2/XB2 < XA3/XB3 (I)
< Y (II)
< Y (III)
すなわち、本実施形態に係るパターン膜は、凸部/凹部の面積比が互いに異なる第1パターン、第2パターン及び第3パターン(以下において、「3種の凹凸パターン」ともいう。)を含み、これら3種の凹凸パターンが凸部/凹部の面積比について式(I)の関係を満たし、且つ、3種の凹凸パターンにおける凸部の側壁の傾きが、式(II)及び式(III)の関係を満たす特殊な構造を有する。この特殊な構造は、具体的には、凹凸パターンにおける凸部/凹部の面積比が最も小さくパターン密度が小さい第1パターンと、凸部/凹部の面積比が最も大きくパターン密度が大きい第3パターンに対し、凸部/凹部の面積比が第1パターンと第2パターンの間にある第2パターンにおいて、凸部の側壁の傾き(Y)が最も大きい構造である。
ここで、凸部と凹部からなる凹凸パターンは、特に限定されるものではなく、例えば、ラインアンドスペースパターンのような形状の周期的な構造パターンを採用することができる。3種の凹凸パターンがラインアンドスペースパターンである場合、第1パターンのライン/スペース比であるL/S、第2パターンのライン/スペース比であるL/S、第3パターンのライン/スペース比であるL/Sは、下記式(Ia)の関係を満たす。
/S< L/S< L/S (Ia)
また、凸部の側壁の傾き(Y)とは、パターン膜が形成される基材に対する凸部の側壁の傾きであり、側壁角度(基材と凸部の側壁とがなす角度)が鋭角側の傾きを意味する。本実施形態では、凸部の側壁の傾きの最大値(以下において、「最大傾き」という。)の平均を、凸部の側壁の傾きとする。ここで凸部の側壁の最大傾きは、凹凸パターンの断面プロファイルから得られる微分波形に基づき求めることができる。詳細は後述するが、図16の(a)に示す凹凸パターンの断面プロファイルを微分処理して得られる同図の(b)に示す微分波形のピークから、凸部の側壁の最大傾きを求めることができる。
上述した通り、第2パターンは、3種の凹凸パターンの中で、凸部/凹部の面積比が中間にあり、且つ、凸部の側壁の傾きが最大の凹凸パターンである。第2パターンは、一形態において、凸部/凹部の面積比(XA2/XB2)が、1/9<XA2/XB2<9/1であってよく、1/3<XA2/XB2<3/1であってよく、1/1.5<XA2/XB2<1.5/1であってよい。
3種の凹凸パターンがラインアンドスペースパターンである場合、第2パターンは、3種のラインアンドスペースパターンの中で、ライン/スペース比が中間にあり、且つ、ライン部の側壁の傾きが最大のパターンである。第2パターンは、一形態において、ライン/スペース比であるL/Sが、1/3<L/S<3/1であってよく、1/2<L/S<2/1であってよく、1/1.5<L/S<1.5/1であってよい。
本実施形態に係るパターン膜の特殊な構造は、その形成方法と密接な関連性があるため、以下に本実施形態に係るパターン膜の形成方法について説明する。
ここでは、パターン形成用組成物としてエマルジョンを使用し、エマルジョンの自己組織化による相分離構造を利用してパターン膜を形成する方法について説明する。
まず、本実施形態に係るパターン膜の形成方法が含む基本的な工程について、メカニズムと共に説明する。各工程の理解を助けるために、各工程における膜の状態の一例を図1乃至図6に示し、これら図面を以下の説明で参照する。
<エマルジョンの調製>
先ず、活性エネルギー線の照射により硬化する第1液体を含む分散粒子と、活性エネルギー線の照射により硬化しない第2液体を含む分散媒とを含むエマルジョンを調製する。
エマルジョンは、水中油型(O/W型)エマルジョンであってもよいし、油中水型(W/O型)エマルジョンであってもよい。
分散粒子は、活性エネルギー線の照射により硬化する第1液体を含む。活性エネルギー線としては、例えば、可視光、紫外線、電子線、及びX線が挙げられる。第1液体としては、例えば、アクリル系モノマー若しくはオリゴマー、メタクリル系モノマー若しくはオリゴマー、エポキシ系モノマー若しくはオリゴマー、又はそれらの1以上を含んだ混合物を用いることができる。第1液体としては、選択肢が広いことや物性調整の自由度が大きいことなどの利点から、アクリル系モノマー若しくはオリゴマー、又は、メタクリル系モノマー若しくはオリゴマーを用いることが好適である。第1液体としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレートなどを用いることができる。第1液体中にモノマー及びオリゴマーが占める割合は、例えば30乃至100質量%である。
なお、活性エネルギー線の照射により硬化する液体は、親油性であるもののほうが、親水性であるものよりも種類が多い。従って、O/W型エマルジョンのほうが、W/O型エマルジョンよりも材料選択の自由度が高い。
分散媒は、活性エネルギー線の照射により硬化しない第2液体を含む。第1液体が親油性である場合、第2液体は、親水性液体、例えば水、メタノールやエタノールなどの低級アルコール、又はそれらの混合物とすることができる。他方、第1液体が親水性液体である場合、第2液体は、親油性液体、例えばイソパラフィン系溶剤やミネラルスピリットなどとすることができる。
分散粒子のサイズは、形成すべきパターンサイズにも依存するが、0.5μm乃至0.5mmの平均粒径を有することが好ましい。ここで、「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法に従った粒度分布測定によって得られる重量平均径である。分散粒子が上記サイズを有すると、後の工程で、未硬化の第1液体を粒子間の隙間へ効率良く浸透させることができる。
また、エマルジョン中に分散粒子が占める割合は、好ましくは25質量%以上である。分散粒子がエマルジョン中で上記割合を占めると、活性エネルギー線を照射した領域の温度を、重合熱を有効に利用して上昇させることによって、第1液体を含む分散粒子の分散状態を不安定化させると同時に凝集層を形成させることができる。また、エマルジョン中に分散粒子が占める割合の上限は、エマルジョンの転相が生じない範囲であればよく、特に限定するものではない。一例によれば、この割合は70質量%以下である。
第1液体は、光重合開始剤を更に含んでいてもよい。光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤を用いることができる。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。第1液体は、光重合開始剤を、モノマー及びオリゴマーの合計量100質量部に対して、例えば0.1乃至10質量部の量で含むことができる。
エマルジョンが例えばO/W型である場合、分散粒子は、第1液体に加えて、ハイドロホーブを含んでいてもよい。ハイドロホーブとしては、例えば、セチルアルコールなど水への溶解性が低い高級アルコール、ヘキサデカン、炭化水素鎖の分子量が比較的大きいラウリルメタクリレートやステアリルメタクリレートなどの重合性モノマー、疎水性色素、ポリメチルメタクリレートやポリスチレンなどの高分子等が挙げられる。ハイドロホーブは、エマルジョンを安定化する役割を果たす。ハイドロホーブは、100質量部の第1液体に対して、例えば0.1乃至10質量部の量で含むことができる。
分散媒は、界面活性剤を更に含んでいてもよい。界面活性剤としては、例えば、乳化重合の用途で市販されているものを使用することができる。界面活性剤としては、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホサクシネート型界面活性剤を使用することができる。エマルジョンは、界面活性剤を、エマルジョンの総質量に対して、例えば0.1乃至5.0質量%の量で含むことができる。
O/W型エマルジョンの場合、エマルジョン化と分散粒子の安定性とを確保するために、分散媒は、界面活性剤を含むことが一般的である。また、O/W型エマルジョンは、エマルジョンの長期保存安定性を改善するために、分散媒中に水溶性の高分子やセルロースナノファイバ等を含むこともできる。更に必要に応じて、O/W型エマルジョンは、分散媒中に粘度調整剤や消泡剤を含むこともできる。
一方、W/O型エマルジョンの場合、安定なエマルジョンを調製するために、分散媒は、適した親水親油バランス(HLB)価を有するノニオン系界面活性剤や高分子系の分散安定剤を含むことができる。必要に応じて、W/O型エマルジョンは、分散媒中にイオン性の界面活性剤を含むことも有効である。
エマルジョンは、公知の乳化・分散技術、例えば、ペイントシェイカー、超音波ホモジナイザ、コロイドミル、ホモジナイザ、及び膜乳化法などを利用することで調製することができる。
<膜の形成>
次に、上記エマルジョンからなる膜を基材上に形成する。以下、「エマルジョンからなる膜」を液膜ともいう。具体的には、上記エマルジョンを基材上に塗布することにより液膜を基材上に形成することができる。基材としては、任意の基材を使用することができ、例えばフィルムやシートなどを使用することができる。
塗布方法は、特に限定されないが、液膜の厚みに応じて適切な塗布方法、例えば、ダイコート、コンマコート、又はカーテンコートを選択することができる。液膜の厚みは、例えば10乃至3000μmとすることができる。また、少量のエマルジョンを塗布して小さい面積の液膜を形成する場合には、必要に応じてディスペンサなどを利用することもできる。
図1は、エマルジョンからなる膜が基材上に形成された状態の一例を概略的に示している。図1において、基材1の上に、分散粒子21aと分散媒22とから構成されるエマルジョンからなる膜2aが形成されている。
<活性エネルギー線の照射>
次に、形成されたエマルジョンからなる膜に活性エネルギー線をパターン状に照射する。活性エネルギー線としては、上記の通り、例えば、可視光、紫外線、電子線、X線などが挙げられる。パターン照射は、例えば、マスクなどを介して活性エネルギー線を場所選択的に照射することや、レーザー光を位置選択的に照射することにより実施することができる。
本実施形態に係るパターン膜の形成においては、後述するように、エマルジョンからなる膜に対し、1つまたは複数の第1領域に占める露光部/未露光部の面積比XA1/XB1、1つまたは複数の第2領域に占める露光部/未露光部の面積比XA2/XB2、及び、1つまたは複数の第3領域に占める露光部/未露光部の面積比XA3/XB3が、式(I)の関係を満たすよう活性エネルギー線を選択的にパターン照射する。
A1/XB1 < XA2/XB2 < XA3/XB3 (I)
活性エネルギー線のパターン照射により、活性エネルギー線が照射された領域(以下、照射領域又は露光部ともいう)では、分散粒子に含まれる第1液体が重合により硬化する。これにより、分散粒子の硬化物からなる粒状層を形成することができる。
図2は、紫外線(UV)のパターン照射により、紫外線を照射した領域(露光部)に、分散粒子の硬化物からなる粒状層が形成された状態の一例を概略的に示している。図2に示すように、紫外線が照射された領域では、分散粒子21aに含まれる第1液体が重合により硬化して、分散粒子21aは、分散粒子の硬化物21b1になる。分散粒子の硬化物21b1は凝集して積層し、結果として、分散粒子の硬化物21b1からなる粒状層21bが形成される。紫外線が照射された領域において、分散媒22に含まれる第2液体は硬化しないため、分散媒22は粒状層21b内に、具体的には、硬化物21b1間の隙間に存在する。一方、図2において、紫外線が照射されなかった領域(以下、非照射領域又は未露光部ともいう)において、分散粒子21aに含まれる第1液体は未硬化のままである。
照射領域における硬化物21b1の凝集メカニズムについて、本発明者は、この理由を以下のように考えている。
活性エネルギー線の照射により、分散粒子21aは重合発熱し、これにより照射領域の温度が上昇する。この温度上昇により、分散粒子21a表面に吸着して分散粒子21aを分散安定化させていた界面活性剤が脱着する。これにより、重合が進行した分散粒子21aの表面電位が低下する。その結果、分散粒子21a又はその硬化物21b1の分散が不安定となり、粒子の凝集が促進される。また、粒子が凝集し、粒子同士が接触する過程において、粒子間で重合架橋を生じる可能性もある。
また、この凝集は、重合発熱による温度上昇によって脱離した界面活性剤が粒子に再吸着する前に完了する。これにより、凝集した粒子は、再分散されずにその凝集状態を維持する。
照射領域における硬化物21b1の凝集は、予め分散媒中に架橋剤を配合しておくことで促進してもよい。こうすると、活性エネルギー線照射時に、粒子間での架橋形成を生じ易くなり、その結果、粒子の凝集が促進される。
<第2液体の除去>
活性エネルギー線の照射後に、膜から第2液体の少なくとも一部を除去する。この工程では、第2液体の少なくとも一部を除去すればよいが、第2液体の全てを除去してもよい。第2液体の除去は、例えば、膜を乾燥させることにより実施することができる。乾燥は、第2液体が、液膜を形成した直後の第2液体の量の30質量%以下の量になるまで行うことが好ましく、5質量%以下の量になるまで行うことがより好ましい。第2液体の除去は、膜を室温に放置することにより実施してもよいが、膜を加熱乾燥させることにより実施することが好ましい。加熱乾燥は、例えば、膜を40乃至100℃の範囲内の温度で0.1乃至1時間に亘って加熱することにより行うことができる。第2液体の除去により、未硬化の第1液体の少なくとも一部を、活性エネルギー線を照射していない領域から、分散粒子の硬化物からなる粒状層へと移動させることができる。
この工程では、第2液体の除去により、未硬化の第1液体の少なくとも一部を、非照射領域(未露光部)から分散粒子の硬化物からなる粒状層へと移動させる。非照射領域から粒状層への未硬化の第1液体の移動は、その全てが粒状層へと移動するように行ってもよく、その一部のみが粒状層へ移動するように行ってもよい。
なお、この方法では、活性エネルギー線の照射後に現像工程、即ち、未硬化の第1液体の現像液を用いた除去は行う必要はない。
図3乃至図5は、第2液体の除去により起こる膜の状態変化の一例を概略的に示している。図3は、膜からの第2液体の除去を開始することにより、非照射領域において分散粒子の合一が起こり、分散粒子の合一体21a’が形成される状態の一例を概略的に示している。図4は、非照射領域において分散粒子の合一が更に進行し、分散粒子の合一体21a’が、分散粒子の硬化物21b1からなる粒状層21bに浸透し、拡散していく状態の一例を概略的に示している。図5は、第2液体の除去が完了し、分散粒子の合一体21a’が粒状層21bに完全に移動した状態の一例を概略的に示している。
分散媒22に含まれる第2液体の一部を膜2aから除去すると、図3に示すように、照射領域では、粒状層21b内の粒子間の隙間を満たしていた第2液体が減少し、非照射領域では、第2液体が減少するとともに、分散粒子21aの合一が起こり、それらの合一体21a’が形成される。そして、図4に示すように、これら合一体21a’を形成している未硬化の第1液体は、粒状層21b内の隙間へ浸透し、粒状層21b内へ拡散する。この浸透及び拡散は、毛細管力により進行すると考えられる。第2液体の除去が完了すると、非照射領域から粒状層21bへの未硬化の第1液体の移動は完了する。その結果、例えば、図5に示す構造が得られる。なお、膜から第2液体を完全に除去すると、膜中に残留している液体は、例えば、分散粒子21a又はそれらの合一体21a’を構成している未硬化の第1液体のみになる。
<パターンの定着>
最後に、第2液体を除去した膜が含んでいる未硬化の第1液体を硬化させる。未硬化の第1液体の硬化は、例えば、活性エネルギー線を膜全体に照射することにより行うことができる。これにより、パターン膜が形成される。
図6は、紫外線の全面照射により、未硬化の第1液体を硬化させた状態の一例を概略的に示している。図6に示すように、紫外線を膜全体に照射すると、未硬化の第1液体は、重合により硬化する。その結果、重合相21b2が形成される。また、粒状層21bを構成している硬化物21b1では、紫外線照射により更なる重合が進行する。これにより、分散粒子の硬化物21b1と重合相21b2とからなるパターン膜2bが形成される。
上述の通り、未硬化の第1液体の硬化は、非照射領域に存在している未硬化の第1液体の全てが、この領域から粒状層へと移動した後に行うことができる。或いは、未硬化の第1液体の硬化は、非照射領域に存在している未硬化の第1液体の一部のみが、この領域から粒状層へと移動したときに行うこともできる。例えば、活性エネルギー線の膜全体への照射を、膜から第2液体を完全に除去する前(即ち、非照射領域の第1液体が粒状層に浸透し、粒状層内へと拡散していく途中の段階、例えば図4の段階)に行ってもよい。こうすると、非照射領域に厚さを有し、照射領域が非照射領域よりも厚いパターン膜を得ることができる。
本実施形態に係るパターン膜の形成方法は、上述した基本的な工程を含む形態に対し、エマルジョンからなる膜への活性エネルギー線の照射において、1つまたは複数の第1領域に占める露光部/未露光部の面積比XA1/XB1、1つまたは複数の第2領域に占める露光部/未露光部の面積比XA2/XB2、1つまたは複数の第3領域に占める露光部/未露光部の面積比XA3/XB3が、下記式(I)の関係を満たすよう選択的にパターン照射するものである。
A1/XB1 < XA2/XB2 < XA3/XB3 (I)
この方法により得られるパターン膜において、1つまたは複数の第1領域に存在する第1パターン、1つまたは複数の第2領域に存在する第2パターン、および、1つまたは複数の第3領域に存在する第3パターンは、各々の凹凸パターンにおける凸部の側壁の傾きY、Y及びYが、下記式(II)及び式(III)の関係を満たす。
< Y (II)
< Y (III)
すなわち、この方法により、3種の凹凸パターンにおける凸部/凹部の面積比に関し、凸部/凹部の面積比が最も小さくパターン密度が小さい第1パターンと、凸部/凹部の面積比が最も大きくパターン密度が大きい第3パターンとの間に凸部/凹部の面積比がある第2パターンにおいて、凸部の側壁の傾きが最も大きいという特殊な構造を有するパターン膜が得られる。
本実施形態に係るパターン膜がこのような特殊な構造を有する理由として、本発明者は、エマルジョン液滴(第1液体を含む分散粒子)の活性エネルギー線照射プロセスにおける照射領域での動的挙動、並びに、乾燥プロセスにおける非照射領域での動的挙動に主たる要因があると考えている。すなわち、露光部/未露光部の面積比XA1/XB1が小さい第1領域を占める第1パターンでは、露光部に形成される粒状層の面積率が小さいため、非照射領域(未露光部)で合一した未硬化のエマルジョン液滴を、照射領域(露光部)の粒状層が吸収しきれず、過剰分が凸部の側壁側に留まる。これが硬化し側壁側にクリアな硬化樹脂層が形成される。一方、露光部/未露光部の面積比XA3/XB3が大きい第3領域を占める第3パターンでは、露光部に形成される粒状層の面積率が大きいため、照射領域(露光部)におけるエマルジョン液滴の重合時の発熱量が多い。これが原因となり比較的大きい液膜内対流が生じると考えられる。この対流に乗って一部の硬化したエマルジョン液滴が粒状層の外に移動し、側壁側に堆積層を形成する。これに対し、露光部/未露光部の面積比XA2/XB2が中間の第2パターンでは、側壁側に上記のような硬化樹脂層や堆積層が形成されることが少ないため、その凸部の側壁の傾きYは、第1パターンにおける凸部の側壁の傾きYや第3パターンにおける凸部の側壁の傾きYに比べ大きくなるものと考えられる。詳細については後掲の[実施例]における<結果と考察>の項を参照されたい。
<効果>
上記方法は、エマルジョンの膜に対して、活性エネルギー線をパターン照射し、その後、第2液体を除去するだけで、パターンを自発的(自己組織化的)に形成することができる。上記方法は、ガイドパターンを予め基材上に設ける必要はないし、現像工程も必要としない。従って、上記方法は簡便な方法である。
また、従来技術により実現できるパターンサイズは、例えば、数nm乃至数百μmの線幅や数nm乃至数百μmの高低差であったところ、上記方法によれば、幅広い範囲のパターンサイズを実現可能である。例えば、上記方法によると、線幅や高低差が大きいパターン膜、例えば、マイクロオーダーからミリオーダーまでの線幅やマイクロオーダーからミリオーダーまでの高低差を有するパターン膜を形成することが可能である。一例によれば、上記方法によると、線幅が10μm乃至5mmの範囲内にあるパターン膜や高低差が10μm乃至2mmの範囲内にあるパターン膜を形成することができる。
更に、上記方法は、パターンの形やサイズの制御性に優れ、種々の形やサイズのパターン膜を形成することが可能である。
更に、上記方法は、インプリントモールドの製造方法に利用することができる。ここで、インプリントモールドの製造方法とは、本実施形態に係るパターン膜の形成方法により製造されるパターン膜を使用する限り特に限定されるものではない。また、上記方法は、多種多様なパターン構造体の製造に利用することができる。ここで、パターン構造体の製造方法とは、本実施形態に係るパターン膜の形成方法により製造されるパターン膜を使用する限り特に限定されるものではない。
本実施形態に係るパターン膜は、特殊な構造を有し、更に上記の通り、マイクロオーダーからミリオーダーまでの線幅やマイクロオーダーからミリオーダーまでの高低差を有するパターン膜であり得るため、広範な技術分野での利用や、未開拓の技術領域での利用が期待できる。
以下に例1~例3を用いて本実施形態を更に詳しく説明する。本実施形態における自己組織化によるパターン膜形成のメカニズムをより分かりやすく説明するために、例1及び例2は、上述した基本的な工程を含むパターン形成方法に関する。
<エマルジョンの調製>
[例1]
以下の材料を用いてO/W型エマルジョンを調製した。
モノマー又はオリゴマー:トリメチロールプロパントリアクリレート
光重合開始剤:α-ヒドロキシケトン(BASF社製IRGACURE(登録商標)184)
界面活性剤:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業製サンモリン(登録商標)OT-70)
第2液体:水
先ず、界面活性剤2.60gを第2液体90mL中に溶解させた。次いで、この溶液中に、トリメチロールプロパントリアクリレート75mLに光重合開始剤3.75gを予め溶解させることにより調製した第1液体を軽くプロペラ攪拌しながら滴下し、粗い粒度の液滴分散液を調製した。この液滴分散液から20mLを採取し、容量50mLの褐色バイアル瓶に移した。次に、この液滴分散液を封入した褐色バイアル瓶を浅田鉄工社製ペイントシェイカーPC1171に装着し、30秒間の振とうを加えることで乳化処理を施した。これによって、粒度分布(平均粒径:87.3μm)を持つエマルジョンを得た。粒度分布は、日機装社製の粒度分布計測装置Microtrac MT3300EXIIに、同じく日機装社製の液循環ポンプMicrotrac USVRを装着した計測システムで重量平均径を測定した。得られたエマルジョンは、エマルジョン液滴(第1液体を含む分散粒子)と、第2液体を含む分散媒とから構成される。作製したエマルジョンの光学顕微鏡写真を図7に、粒度分布を図8に示す。
<膜の形成>
顕微鏡用スライドグラスの表面に対して、その長辺方向に沿って、幅20mm、厚み80μmのスリーエム社製マスキングテープを5層貼り付け、その中心部を長方形状に切り抜き、これにより、深さ400μm、面積10mm×30mmの液溜めを有するセル(以下、液溜めセルという)を作製した。
次に、マイクロピペットによって112μLのエマルジョンを採取し、これを液溜めセルに展開、充填することで、比重を考慮した計算値としての厚みが約375μmのエマルジョンからなる膜(即ち液膜)を作製した。エマルジョンを液溜めセルに充填した状態を示す写真を図9Aに示す。
<紫外線の照射>
上記液膜上に、厚み0.25mmで2mmピッチのストライプ状開口を有する銅製マスクを、厚み1mmのアルミ製スペーサを介して液面と接触しないように設置した。銅製マスクを設置した状態を示す写真を図9Bに示す。次に、UV平行光露光機(SAN-EI ELECTRONIC社製 UVC-2502S)を使用して、照度4.6mW/cmの紫外線をマスク上から8秒間照射することで、液膜に積算光量36.8mJ/cmの露光を与えた。液膜に紫外線を照射した状態を示す写真を図9Cに示す。これにより、紫外線を照射した領域で、第1液体を重合させて、分散粒子の硬化物からなる粒状層を形成した。
<膜の乾燥>
次いで、紫外線露光後の膜に対して、室温下で45分間の自然乾燥(23℃、57%RH)を行った。乾燥過程の膜の状態を示す写真を図9D乃至9Kに示す。露光直後には、すでに照射領域に凝集パターンが形成され(図9D参照)、乾燥の進行に伴い、非照射領域において未硬化のエマルジョン液滴が合一し、破壊されつつ、照射領域における粒状層(硬化したエマルジョン液滴の凝集層)に浸透・吸収されていく様子がわかる(図9E乃至9K参照)。非照射領域において未硬化のエマルジョン液滴が、乾燥の進行に伴い合一し、大きい液滴に変化していることは、図9D及び図9Iからわかる。これにより、紫外線を照射しなかった領域で、未重合の第1液体を含む分散粒子の合一を進行させると共に、分散粒子の合一体を粒状層へ移動させて、凹凸パターンを形成した。
さらに、乾燥による凹凸パターンの形成過程を定量的に把握するために、乾燥の経過時間ごとに積算光量36.8mJ/cmの紫外線の全面露光を加えることで、非照射領域における未硬化のエマルジョン液滴にも硬化処理を施し、その時点での液膜内の凹凸構造を固定した。続いて、まだ残留している分散媒の水(第2液体)を2時間の室温乾燥で除去することによって、乾燥経過時間の異なる凹凸パターン試料を作製した。最後に、仮定着として積算光量138mJ/cmの紫外線を全面露光した。その凹凸パターン試料の写真を図10A乃至10Gに示す。
図10A乃至10Gに示す試料における照射領域と非照射領域との高低差を計測するために、試料表面に日本電子社製の真空蒸着機VC-500Pを用いて、厚み約800Åのアルミ蒸着を施した後、キーエンス社製のワンショット3D形状測定機VR3100を使用して立体形状を計測した。その画像を図11A乃至11Gに示す。図11A乃至11Gに示す画像は、膜の深さ方向に3倍引き伸ばして立体感を強調したものである。また、照射領域と非照射領域との高低差の計測値のn=5平均値を図12に示す。図12の結果より、露光直後にパターンが現れ、乾燥1分経過の初期段階で約200μmの高低差があり、乾燥の進行とともに、さらに高低差が大きくなっていき、45分経過時点で約400μmの高低差が得られた。尚、乾燥5分経過の時点で若干高低差が小さくなっているが、これは、照射領域において重合発熱によって生じた液膜内での浮力による上昇流れに引き込まれる形で、一旦、照射領域の縁に集まった非照射領域のエマルジョン液滴の一部が、露光終了と共にもとの非照射領域に落ち込んでくるためである。
<パターンの定着>
最後に、パターン形成が完了した膜に対して、積算光量276mJ/cmの紫外線を全面露光した。これによりパターンを定着させた。n=5平均値としてのパターン膜の線幅は2.46mmであり、高低差は390μmであった。
[例2]
エマルジョンの調製や膜の形成、紫外線の照射方法や条件などは例1と同様とし、乾燥条件のみを変更してパターンを作製した。
パターン露光直後の液溜めセルを、100℃に加熱したホットプレート上にスペーサを使用して空中に1mm浮かせた状態で加熱乾燥した。経過時間ごとの液膜の変化を示す写真を図13A乃至13Fに示す。約5分で乾燥が完了し、実施例1と同様のパターンが形成され、n=5平均値での高低差が397μm、線幅が2.28mmであった。加熱により水の蒸発が早まると同時に、非照射領域における未硬化のエマルジョン液滴の粘度が下がることによって、照射領域の粒状層への浸透吸収速度が上がることでパターン形成が早く完了する。
[例3]
<エマルジョンの調製>
下記材料を用いてO/W型エマルジョンを調製した。以下に説明するように、乳化分散処理方法を変更することにより、平均粒径が異なる3種のエマルジョンを調製した。
トリメチロールプロパントリアクリレート:ライトアクリレートTMP-A(共栄社化学株式会社)
光重合開始剤:Lunacure200(DKSHジャパン株式会社)
界面活性剤:サンモリンOT-70<86.7%水溶液>(三洋化成株式会社)
第2液体:水(蒸留水)
容量50mlの褐色バイアル瓶に、光重合開始剤(Lunacure200)0.375g、界面活性剤(サンモリンOT-70)0.259g、およびトリメチロールプロパントリアクリレート(ライトアクリレートTMP-A)7.5gをこの順序で仕込み、ボールミルロール上で回転混合処理を行った。次いで蒸留水9gを加えることにより、エマルジョンの前駆体となる混合液を得た。
平均粒径が異なるエマルジョンを調製するために、得られた混合液のそれぞれに対し異なる乳化分散処理を施した。但し、この中の一種は例1のエマルジョンを流用した。次いで、バイアル瓶の回転混合を2時間行うことにより、平均粒径が異なる3種のエマルジョンを用意した。下記表1に、乳化分散方法及び条件と、エマルジョンの平均粒径を示す。また、図14に3種のエマルジョンの粒度分布を示す。粒度分布及び平均粒径は、例1と同じ方法及び条件で測定した。得られたエマルジョンは、第1液体を含む分散粒子(エマルジョン液滴)と、第2液体を含む分散媒とから構成される。
<膜の形成>
顕微鏡用スライドグラス(MATSUNAMI MICRO SLIDE GLASS 76mm×26mm 厚み0.8~1.0mm 白縁磨No.1)の表面に対して、その長辺方向に沿って、幅20mm、厚み80μmのスリーエム社製マスキングテープを5層貼り付け、その中心部を長方形状に切り抜き、これにより、深さ400μm、面積10mm×30mmの液溜めを有するセル(以下、液溜めセルという)を作製した。
次に、マイクロピペットによって112μLのエマルジョンを採取し、これを液溜めセルに展開、充填することで、比重を考慮した計算値としての厚みが約375μmのエマルジョンからなる膜(即ち液膜)を作製した。エマルジョンを液溜めセルに充填した状態については図9Aを参照されたい。
<紫外線の照射>
マスクとして、図15に示す#1~#9のラインアンドスペースパターン(以下において、L&Sパターンともいう。)を形成することができる、ストライプ状開口部を有する9個の銅製マスク(厚み0.25μm)を準備した。所望とするL&Sパターンを形成するためにこれらの中から選択した銅製マスクを、厚み1mmのアルミ製スペーサを介して液面と接触しないように設置した。銅製マスクを設置した状態については図9Bを参照されたい。次に、UV平行光露光機(SAN-EI ELECTRONIC社製 UVC-2502S)を使用して、照度4.6mW/cmの紫外線をマスク上から8秒間照射することで、液膜に積算光量36.8mJ/cmの露光を与えた。液膜に紫外線を照射した状態については図9Cを参照されたい。これにより、紫外線を照射した領域で、第1液体を重合させて、分散粒子の硬化物からなる粒状層を形成した。
<膜の乾燥>
次いで、紫外線露光後の膜に対して、室温下で90分間の自然乾燥(20℃、58%RH)を行い、分散媒の水を除去した。乾燥過程の膜の状態については図9D乃至9Kを参照されたい。露光直後には、すでに照射領域に凝集パターンが形成された(図9D参照)。乾燥の進行に伴い、非照射領域において未硬化のエマルジョン液滴が合一し、破壊されつつ、照射領域における粒状層(硬化したエマルジョン液滴の凝集層)に浸透し、吸収された(図9E乃至9K参照)。これにより、紫外線を照射しなかった領域で、未重合の第1液体を含む分散粒子の合一が進行すると共に、分散粒子の合一体が粒状層へ移動して、凹凸パターンが形成された。
<パターンの定着>
次に、パターン形成が完了した膜に対して、積算光量414mJ/cm(4.6mW/cmx90s)の紫外線を全面露光した。これによりパターンを定着させた。
<凹凸パターンの凸部の側壁の傾き(Y)の測定>
凸部の側壁の傾きは、上述の通り、側壁の最大傾きの平均であり、側壁の最大傾きは、凹凸パターンの断面プロファイルから得られる微分波形に基づき求めることができる。上掲で得られた各L&Sパターンについて、以下に説明する方法でライン部の側壁の傾きを測定した。
まず、凹凸パターンが形成された試料の厚み方向の断面プロファイルを計測する。断面プロファイルを得るために、試料表面に対して真空蒸着機(VC-500P(日本電子株式会社))を用いて厚み約800nmのアルミ蒸着を施し、次いで3D形状測定機(VR3100(株式会社キーエンス))を使用して図16(a)に示す凹凸形状プロファイルを得た。この凹凸パターンの断面プロファイルデータを微分することにより図16(b)に示す微分波形を得た。この微分波形のピーク値を凹凸パターンの凸部の側壁の最大傾きとして測定し、その平均値を凸部の側壁の傾き(Y)とした。
凸部の側壁の傾き(Y)=
凸部の側壁の最大傾きの平均=(Σf’(x)max+|Σf’(x)min)|/(Nmax+Nmin)
N;測定データ数
<結果と考察>
(1)図15に示すL&Sパターンの中から、ライン幅が2mmのパターン#6、#5及び#4を用いて考察する。図17A、図17Bおよび図17Cは、これらパターンにおけるライン/スペース比と凸部(ライン)の側壁の傾きとの関係を示すグラフであり、それぞれ平均粒径が107.9μm、87.3μm、14.9μmのエマルジョンを使用したパターンに関するグラフである。パターン#6、#5および#4は、それぞれライン/スペース(L/S)比が0.66、1、2である。各グラフにおいて、3種のパターンの中でL/S比が中間であるパターン#5(L/S=1)が、凸部の側壁の傾きが最大を示している。図17A、図17Bおよび図17Cの対比から、この傾向(特徴)は、平均粒径によらず同様であることがわかる。
(2)図15に示すL&Sパターンの中から、パターン#3、#5及び#7を用いて考察する。図17Dは、これらパターンにおけるライン/スペース比と凸部(ライン)側壁の傾きとの関係を示すグラフであり、平均粒径が87.3μmのエマルジョンを使用したパターンのグラフである。パターン#3、#5及び#7は、それぞれL/S比が0.33、1、3である。3種のパターンの中でL/S比が中間であるパターン#5(L/S=1)が、凸部の側壁の傾きが最大を示している。これは、図17A、図17Bおよび図17Cに示されるグラフと同様の傾向(特徴)である。
(3)上記(2)で考察したパターン#3、#5及び#7について、光学顕微鏡写真(OLYMPUS BX51)を用いてその断面構造を考察する。図18A及び図18Bは、パターン#3(L/S比=0.33、平均粒径87.3μm)における凸部(ライン)の側壁近傍の透過照明下での光学顕微鏡写真である。双方は同じ試料の写真であるが、図18Aは露光部にあたる中心側(L1)に焦点を置いた写真であり、図18Bは未露光部にあたる側壁側(L2)に焦点を置いた写真である。図19A及び図19Bは、パターン#5(L/S比=1、平均粒径87.3μm)における凸部(ライン)の側壁近傍の透過照明下での光学顕微鏡写真である。同様に、双方は同じ試料の写真であるが、図19Aは露光部にあたる中心側に焦点を置いた写真であり、図19Bは未露光部にあたる側壁側に焦点を置いた写真である。図20A及び図20Bは、パターン#7(L/S比=3、平均粒径87.3μm)における凸部(ライン)の側壁近傍の透過照明下での光学顕微鏡写真である。同様に、双方は同じ試料の写真であるが、図20Aは露光部にあたる中心側(L1)に焦点を置いた写真であり、図20Bは未露光部にあたる側壁側(L2)に焦点を置いた写真である。
図18Aおよび図18Bに示されるように、パターン#3(L/S比=0.33)の顕微鏡写真において、側壁側(L2)に、中心側(L1)の粒状層(紫外線照射領域の粒状層であり、以下において「パターン層」ともいう。)とは異なったクリアな樹脂層が存在するのが確認できる。このクリアな樹脂層は、非照射領域において、乾燥の進行に伴い合一した未硬化のエマルジョン液滴由来の硬化樹脂層である。これに対し、図20Aおよび図20Bに示されるように、パターン#7(L/S比=3)の顕微鏡写真において、側壁側(L2)に、中心側(L1)のパターン層とは異なった粒子の堆積層が存在するのが確認できる。この側壁側の堆積層は、紫外線照射領域で重合し硬化したエマルジョン液滴が移動し、側壁側に堆積することにより形成されたものである。一方、図19Aおよび図19Bに示されるように、パターン#5(L/S比=1)の顕微鏡写真においては、パターン#3及び#7にみられるような側壁側の層は確認されない。このような側壁側における合一した未硬化のエマルジョン液滴由来の硬化樹脂層、もしくは、紫外線照射領域で重合し硬化したエマルジョン液滴が移動し堆積してなる堆積層の有無が、凸部の側壁部の傾きを決定する要因になっていると推測される。そのメカニズムについて、本発明者は、以下のように考えている。
すなわち、L/S比=0.33のL&Sパターン(♯3)では、パターン層(粒状層)の面積率が小さく、非照射領域で合一した未硬化のエマルジョン液滴をパターン層が吸収しきれず、過剰分が側壁側に留まり硬化したものと推測される。一方、L/S比=3のL&Sパターン(♯7)では、パターン層(粒状層)の面積率が大きいため、エマルジョン液滴の重合時の発熱量が多い。これが原因となり比較的大きい液膜内対流が生じると考えられる。この対流に乗って一部の硬化したエマルジョン液滴がパターン部の外に移動し、側壁側に堆積層を形成すると推察できる。
(4)図21の中段に示される3枚の顕微鏡写真は、上記(3)で言及した図18A、図18B、図19A、図19B、図20A、および図20Bに示される写真の低倍率写真である。具体的には、パターン#3、#5および#7(L/S比=0.33、1、3;平均粒径87.3μm)の凸部における側壁近傍の、反射照明下での顕微鏡写真である。同図の上段に示される3枚の顕微鏡写真は、平均粒径87.3μmのエマルジョンを平均粒径107.9μmのエマルジョンに変更して形成したパターン#3、#5および#7の側壁近傍の、反射照明下での顕微鏡写真である。下段に示される3枚の顕微鏡写真は、平均粒径87.3μmのエマルジョンを平均粒径14.9μmのエマルジョンに変更して形成したパターン#3、#5および#7の側壁近傍の、反射照明下での顕微鏡写真である。これら図21に示された顕微鏡写真から、上掲の(3)において確認された特徴、すなわち、凸部における側壁近傍の構造とL/S比との特定の関係が、平均粒子径が異なるエマルジョンを用いて形成されたパターンにおいても同様であることが確認された。
(5)エマルジョン液滴の重合熱による液膜内対流の発生について
上掲の(3)で言及したエマルジョン液滴の重合熱による液膜内対流の発生について、以下に説明する。図22は、エマルジョン液滴の重合熱による液膜内対流の発生を時系列で示す写真であり、図23はそのメカニズムを説明するための模式図である。
エマルジョンとしては、上掲の例3で調製した3種のエマルジョンの中から、乳化分散方法として間欠ハンドシェイク(10回)を採用し、更にエマルジョン液滴に青色の着色剤を添加したものを用いた。
2枚のスライドガラスの間にスペーサを介在させてなる液溜めセルに、エマルジョン液をマイクロピペットを用いて充填し、7分間静置した。この7分間の静置時間は、エマルジョンを少し沈降させ、上澄み層を設けることにより液の動きを観察しやすくするためである。次に、幅1mmのスリットを設けた銅板(厚み0.25mm)マスクの直上からUV-LEDで露光(UV(λ=365nm)照度:0.8mW/cm、総露光時間:57秒(露光量558.6mJ/cm))した。露光開始からの過程を、セルの側面(光学台と並行の方向)よりマイクロスコープ(L-816ズームレンズ(HOZAN)にL-835USBカメラ(HOZAN)を装着)で動画撮影した。液の動きを動画から切り取った写真が図22である。図22に基づき、エマルジョン液滴の重合熱による液膜内流動現象およびエマルジョン液滴の凝集挙動を図23にイラストとしてまとめた。以下、図23を基に本発明者が推測するメカニズムを説明する。
[(A)紫外線(UV)照射開始から3秒経過]
紫外線照射部(露光部)のエマルジョン重合発熱起因の浮力による上昇流れaと、液表面SURの部分的な温度上昇による露光部と未露光部の表面張力差が起因と考えられる流れ(表面張力流)bの発生が見られる。
[(B)4~6秒経過]
エマルジョンの重合発熱で浮力による上昇流aが継続し、この上昇流に乗ったエマルジョン沈降境界面の盛り上がりが液面に到達するタイミングで、露光部と未露光部の温度差起因による大きい表面張力流bが液面を伝うように未露光部方向に発生する。この過程で露光部(重合凝集進行域)cのエマルジョン液滴の凝集も同時に進行する。
[(C)7秒経過]
さらに露光を継続すると、露光部cのエマルジョン重合粒子の凝集が完了し、“1次重合凝集固定域”dの上昇が止まる。このように露光部の動きは凝集固定化することで止まり、温度は下がっていく。しかし重合熱は未露光周辺部へ伝達しているため、1次重合凝集固定域dの周辺部に存在する未硬化のエマルジョン液滴には、液表面SURに向かう自然対流eが継続する。
[(D)8秒経過~]
1次重合凝集固定域dの周辺部に発生する上昇流(自然対流e)に乗った未硬化エマルジョン液滴が液表面SUR付近に達し、一部がUV露光域に被ることで、1次重合凝集固定域dの上部外周において、新たに“2次重合凝集固定域”fが積み上がる。一方、未硬化域(非照射部)への流れbも発生し続け、この段階では上昇流(自然対流e)と表面張力流bの複合による対流gによって、未硬化部へエマルジョン液滴が移動する。この流れによって未硬化部へ移動するエマルジョン液滴は、表面付近でUV硬化したものと未硬化の状態のまま運ばれるものとの混合となっているものと考えられる。この流れに含まれる硬化エマルジョン液滴の未露光部への堆積が、上述した側壁部における堆積層を形成するものと推察する。
[(E)紫外線(UV)照射停止から58秒経過]
露光を止めると追加の重合発熱が発生しなくなるので、重合熱による浮力で持ち上がっていた重合凝集固定域が冷えて沈み込む(h)。これと並行して重合発熱凝集部の外周部で上昇を続けていた未硬化エマルジョン液滴も沈降していく動きiが観察された。
1…基材、2a…膜、2b…パターン膜、21a…分散粒子、21a’…分散粒子の合一体、21b…粒状層、21b1…分散粒子の硬化物、21b2…重合相、22…分散媒。

Claims (12)

  1. 1つまたは複数の第1領域と、1つまたは複数の第2領域と、1つまたは複数の第3領域とを少なくとも含み、
    前記1つまたは複数の第1領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第1パターンからなり、前記1つまたは複数の第2領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第2パターンからなり、前記1つまたは複数の第3領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第3パターンからなり、
    前記1つまたは複数の第1領域に占める前記第1パターンの凸部/凹部の面積比XA1/XB1、前記1つまたは複数の第2領域に占める前記第2パターンの凸部/凹部の面積比XA2/XB2、前記1つまたは複数の第3領域に占める前記第3パターンの凸部/凹部の面積比XA3/XB3は、下記式(I)の関係を満たし、
    前記第1パターンの凸部の側壁の傾きY、前記第2パターンの凸部の側壁の傾きY、及び前記第3パターンの凸部の側壁の傾きYは、下記式(II)及び式(III)の関係を満たすパターン膜であり、
    活性エネルギー線の照射により硬化する第1液体を含む分散粒子と、前記活性エネルギー線の照射により硬化しない第2液体を含む分散媒とを含むエマルジョンからなる膜の活性エネルギー線照射による硬化膜であるパターン膜
    A1/XB1 < XA2/XB2 < XA3/XB3 (I)
    < Y (II)
    < Y (III)
  2. 前記第1パターン、前記第2パターン及び前記第3パターンはそれぞれラインアンドスペースパターンであり、前記第1パターンのライン/スペース比であるL/S、前記第2パターンのライン/スペース比であるL/S、前記第3パターンのライン/スペース比であるL/Sは、下記式(Ia)の関係を満たし、且つ、前記第2パターンのライン/スペース比であるL/Sは、1/3<L/S<3/1である、請求項に記載のパターン膜。
    /S< L/S< L/S (Ia)
  3. 1つまたは複数の第1領域と、1つまたは複数の第2領域と、1つまたは複数の第3領域とを少なくとも含み、前記1つまたは複数の第1領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第1パターンからなり、前記1つまたは複数の第2領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第2パターンからなり、前記1つまたは複数の第3領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第3パターンからなるパターン膜であって、前記1つまたは複数の第1領域に占める前記第1パターンの凸部/凹部の面積比XA1/XB1、前記1つまたは複数の第2領域に占める前記第2パターンの凸部/凹部の面積比XA2/XB2、前記1つまたは複数の第3領域に占める前記第3パターンの凸部/凹部の面積比XA3/XB3は、下記式(I)の関係を満たし、前記第1パターンの凸部の側壁の傾きY、前記第2パターンの凸部の側壁の傾きY、及び前記第3パターンの凸部の側壁の傾きYは、下記式(II)及び式(III)の関係を満たすパターン膜の製造方法であり、
    基材上に、活性エネルギー線の照射により硬化する第1液体を含む分散粒子と、前記活性エネルギー線の照射により硬化しない第2液体を含む分散媒とを含むエマルジョンからなる膜を形成することと、
    前記膜に前記活性エネルギー線を、前記第1領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA1/XB1、前記第2領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA2/XB2、前記第3領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA3/XB3となるようパターン状に照射して、前記活性エネルギー線を照射した露光部で前記第1液体を硬化させることと、
    前記活性エネルギー線の照射後に、前記膜から前記第2液体の少なくとも一部を除去することと、
    前記第2液体の少なくとも一部を除去した前記膜が含んでいる未硬化の前記第1液体を硬化させることと
    を含むパターン膜の形成方法。
    A1/XB1 < XA2/XB2 < XA3/XB3 (I)
    < Y (II)
    < Y (III)
  4. 1つまたは複数の第1領域と、1つまたは複数の第2領域と、1つまたは複数の第3領域とを少なくとも含み、前記1つまたは複数の第1領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第1パターンからなり、前記1つまたは複数の第2領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第2パターンからなり、前記1つまたは複数の第3領域のそれぞれは、凸部と凹部からなる第3パターンからなるパターン膜であって、前記1つまたは複数の第1領域に占める前記第1パターンの凸部/凹部の面積比XA1/XB1、前記1つまたは複数の第2領域に占める前記第2パターンの凸部/凹部の面積比XA2/XB2、前記1つまたは複数の第3領域に占める前記第3パターンの凸部/凹部の面積比XA3/XB3は、下記式(I)の関係を満たし、前記第1パターンの凸部の側壁の傾きY、前記第2パターンの凸部の側壁の傾きY、及び前記第3パターンの凸部の側壁の傾きYは、下記式(II)及び式(III)の関係を満たすパターン膜の製造方法であり、
    基材上に、活性エネルギー線の照射により硬化する第1液体を含む分散粒子と、前記活性エネルギー線の照射により硬化しない第2液体を含む分散媒とを含むエマルジョンからなる膜を形成することと、
    前記膜に前記活性エネルギー線を、前記第1領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA1/XB1、前記第2領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA2/XB2、前記第3領域に占める露光部/未露光部の面積比がXA3/XB3となるようパターン状に照射して、前記活性エネルギー線を照射した露光部に、前記分散粒子の硬化物からなる粒状層を形成することと、
    前記活性エネルギー線の照射後に、前記膜から前記第2液体の少なくとも一部を除去して、未硬化の前記第1液体の少なくとも一部を、前記活性エネルギー線を照射していない領域から前記粒状層へと移動させることと、
    前記第2液体の少なくとも一部を除去した前記膜が含んでいる未硬化の前記第1液体を硬化させることと
    を含むパターン膜の形成方法。
    A1/XB1 < XA2/XB2 < XA3/XB3 (I)
    < Y (II)
    < Y (III)
  5. 前記活性エネルギー線を照射していない未露光部に存在している未硬化の前記第1液体の一部のみが、この未露光部から前記粒状層へと移動したときに、前記膜が含んでいる未硬化の前記第1液体を硬化させる、請求項に記載の方法。
  6. 前記第1パターン、前記第2パターン及び前記第3パターンはそれぞれラインアンドスペースパターンであり、前記第1パターンのライン/スペース比であるL/S、前記第2パターンのライン/スペース比であるL/S、前記第3パターンのライン/スペース比であるL/Sは、下記式(Ia)の関係を満たし、且つ、前記第2パターンのライン/スペース比であるL/Sが、1/3<L/S<3/1である、請求項3乃至5の何れか1項に記載の方法。
    /S< L/S< L/S (Ia)
  7. 前記膜から前記第2液体を完全に除去する前に、前記膜が含んでいる未硬化の前記第1液体を硬化させることを含む、請求項乃至の何れか1項に記載の方法。
  8. 前記分散媒は界面活性剤を更に含む、請求項乃至の何れか1項に記載の方法。
  9. 前記エマルジョンは水中油型エマルジョンである、請求項乃至の何れか1項に記載の方法。
  10. 前記分散粒子はハイドロホーブを更に含む請求項に記載の方法。
  11. 請求項10の何れか1項に記載のパターン膜の形成方法を含むインプリントモールドの製造方法。
  12. 請求項10の何れか1項に記載のパターン膜の形成方法を含むパターン構造体の製造方法。
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