JP7338128B2 - 癌診断における放射性標識プロガストリン - Google Patents

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Description

癌は多面的な疾患であり、一群の細胞が制御されない増殖、隣接組織へ侵入し破壊する浸潤、また時にはリンパまたは血液を介した体内の他の場所への転移または広がりを見せる。癌のこれら3つの悪性の特性が、当該癌を浸潤や転移のない良性腫瘍と違わせる。
外科手術、放射線療法、化学療法、ターゲット療法および免疫療法を含む、各種の癌を治療するために現在用いられている方法が複数ある。奏功した癌療法は、原発腫瘍および臨床的に明らかなまたは微視的ないずれにせよあらゆる転移に向けられる。
治療すべき癌の種類を可能な限り早期に特定することは、患者にとって重要である。早期病期で診断された癌は、良好に治療される可能性がより高い。癌が広がれば、有効な治療がより困難になり、通常、生存の見込みははるかに低い。そのため、進行性の癌の拡張を防止するために、重要で積極的な治療プロトコールを即座に使用する時期を知ることが不可欠である。
近年、固形腫瘍に関する治療選択は、腫瘍病期分類に基づくものであり、これは通常、AJCC(米国がん合同委員会)の腫瘍/所属リンパ節/遠隔転移(TNM)試験を用いて実施される。この試験および病期分類システムは、患者において固形癌が診断された病期に関するいくつかの有益な情報を提供するが、それは正確ではなく、また十分でないというのが共通の認識である。特に、これは固形腫瘍に制限される。
最も重要なことには、TNM試験は、腫瘍進行の最も早期の病期を特定できない。これら早期病期は、治療法にとって最も有望な窓をもたらす。その進行のごく初期に癌を検出することで、副作用の少ない、効率的なターゲット療法が可能となる。そのため、全集団のスクリーニングの一部として、あり得る最も早い病期で患者を特定することが重要である。したがって、地域社会において早期に癌が特定できるようになり、より早い介入と管理により死亡率および当該疾患の苦痛を低減することができる。
プロガストリンの検出に基づく診断試験が、近年、出願人により開発された。選択された抗体を用いて、種々の種類の癌および様々な病期である患者の血液中のプロガストリンを検出するELISAアッセイを設定した。CancerReadの名称で上市されているこの試験は、特に、早期病期を含めて種々の種類の癌を検出するのに有効である(国際公開第2017/114973号)。特に、CancerRead試験は、早期病期の腫瘍に対して高い感度および特異度を示す。
しかしながら、血液中のプロガストリンのレベルは、早期の癌スクリーニングにとって信頼できるバイオマーカーであるにもかかわらず、それは癌の原発部位に関する情報を何も与えない。
そのため、あり得る最も早期の病期において適切な療法を提供できるように、イン・ビボ(in vivo)での癌の特定を可能にする試薬が真に要望されている。
本発明は、患者における癌を画像化するためのプロガストリン誘導体に関する。
第一の側面においては、本発明は、化合物またはその薬学的に許容される塩に関し、前記化合物は:
プロガストリン部分、および
キレート化部分
を含み、
前記キレート化部分は、任意に、放射性同位体と結合する。
好ましい態様においては、プロガストリン部分とキレート化部分とが、共有結合している。この態様によれば、本化合物はコンジュゲートである。
この発明の化合物は、それらが、イン・ビボで癌細胞と結合でき、それにより当該癌の画像化が可能になるので、特に有用である。これは特に、癌の局在を特定するのに有利である。特に、単一光子放射断層撮影(SPECT)およびポジトロン断層法(PET)等の様々な技術を介して、放射性標識プロガストリンは流れの可視化のために用いられる。
本明細書においては、「プロガストリン」により、哺乳動物のプロガストリンペプチドを指す。プロガストリンは、ガストリン遺伝子の一次翻訳産物であるプレプロガストリンである101個のアミノ酸ペプチド(アミノ酸配列リファレンス:AAB19304.1)から、はじめの21個のアミノ酸(シグナルペプチド)の切断によって形成される。プロガストリンの80個のアミノ酸鎖は、いくつかの生物学的活性ガストリンホルモン形態へと切断および修飾酵素によってさらに処理される:プロガストリンのアミノ酸38~71を含むガストリン34(G34)およびグリシン伸長ガストリン34(G34-Gly)、並びにプロガストリンのアミノ酸55~71を含むガストリン17(G17)およびグリシン伸長ガストリン17(G17-Gly)。
好ましい態様においては、プロガストリン誘導体は、ヒトプロガストリンの誘導体である。より好ましくは、「ヒトプロガストリン」の表現は、配列番号1の配列のヒトプロガストリンを指す。ヒトプロガストリンは、特に、N末端およびC末端ドメインを含み、これら両方は、上記に記載した生物学的活性ガストリンホルモン形態の中に存在しない。好ましくは、前記N末端ドメインの配列は配列番号2で表される。別の好ましい態様においては、前記C末端ドメインの配列は配列番号3で表される。
ガストリン細胞は自然にプロガストリンを産生し、それは成熟してガストリンになる。消化中に、細胞から、95%のプロガストリンがガストリンとして放出される。非常に少量のプロガストリンが、プロガストリンとして放出される。ゆえに、消化中を除いて、健常なヒトは、その血中にプロガストリンを有していない。
一方、病的状態において、プロガストリンは初期マーカーとなる。腫瘍細胞においては、プロガストリンはガストリンに成熟せず、結果的に、腫瘍性細胞から放出される。プロガストリンは、自己分泌、パラ分泌または内分泌により(Dimaline&Varro,J Physiol 592(Pt.14):2951-2958,2014)、腫瘍形成を促進することが可能であり(例えば、胃癌[Burkitt et al.,World J Gastroenterol.15(1):1-16,2009,国際公開第2017/114975号]、大腸癌[Watson et al.,J Cancer.87(5):567-573,2002]、膵癌[Harris et al.,Cancer Res.64(16):5624-5631,2004,国際公開第2011/083091]、卵巣癌[国際公開第2017/114972号]、前立腺癌[国際公開第2018/178352]、食道癌[国際公開第2017/114976]および肺癌[国際公開第2018/178354])、これはまた、これら刺激因子を発現する癌における好ましい抗腫瘍ターゲットとしてプロガストリンを正当化してきた(例えば、国際公開第2011/045080号、国際公開第2011/083088号、国際公開第2011/116954号、国際公開第2012/013609号、国際公開第2011/083090号、国際公開第2011/083091号、国際公開第2017/114975号、国際公開第2017/114976号、国際公開第2017/114972号、国際公開第2018/178364号を参照)。この過程は、消化とは独立している。
本明細書で使用する場合、「キレート化部分」または「キレート化剤」または「キレート剤」は、これら放射性同位体のいずれかをキレート化することが可能である化合物を指す。キレート化部分で、水溶液からの対応する遊離の放射性同位体を隔離し、それにより当該同位体を特定の生物学的用途に用いることが可能となる。好ましくは、前記キレート化部分は、二官能性キレート剤である。本明細書で使用する場合、「二官能性キレート剤」または「二官能性キレート化剤」は、金属結合性部分の機能と化学反応性の高い官能基とを有する化合物を指す。
いくつかの二官能性キレート剤が、当技術分野で公知である。実にたくさんの二官能性キレート剤が市販されており、通例、PET造影剤として用いられてきた。この構造および物理的性質は、二官能性キレート剤間で異なる。当業者であれば、用いられる放射性同位体を特に考慮しながら、プロガストリン部分とともに用いるのに最も適した二官能性キレート剤を選択するだろう(例えば、Cutler et al.,Chem Rev.113(2):858-883,2013;Price&Orvig,Chem.Soc.Rev.43(1):260-290,2013;Tornesello et al.,Molecules 22:E1282,2017;Brandt et al.,J Nucl Med 59(10):1500-1506,2018;Morais&Ma,Drug Discovery Today:Technologies,2018,DOI:10.1016/j.ddtec.2018.10.002を参照のこと)。
二官能性キレート化剤の例としては、表1に挙げられる。
Figure 0007338128000001
Figure 0007338128000002
すなわち、二官能性キレート剤は、好ましくは、NODAGA、NOTA、DOTA、DOTA-NHS、p-SCN-Bn-NOTA、p-SCN-Bn-PCTA、p-SCN-Bn-オキソ-DO3A、デスフェリオキサミン-p-SCN、DTPAおよびTETAの一覧から選択される。
通常、DOTA、NOTAおよびNOGADAは、二官能性キレート剤に、特に68Ga標識のために用いられる。すなわち、DOTA、NOTAおよびNOGADA等の周知のキレート剤を用いることで、生体分子の速くかつ定量的な68Ga放射性標識が達成可能である。
特に、キレート化剤、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、(またはその修飾された誘導体)は、ガリウムを結合する優れた配位子であり、DOTA-ペプチドは急速かつ効率的に高い特異活性で68Gaで標識されることが示されている(Velikyan,Molecules,20:12913-12943,2015)。同様に、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびその誘導体が、広く使用されてきた。例えば、MX-DTPAまたはチウキセタンとしても知られる1B4M-DTPAは、111Inまたは90Yで放射性標識するためにゼヴァリンのキレート化剤成分として開発された(Brechbiel,Q J Nucl Med Mol Imaging.52(2):166-173,2008)。
NOTA(,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)は、通常、Ga3+のキレート化の「ゴールドスタンダード」であると考えられており、好ましい放射性標識条件(RT、30~60分)と優れたイン・ビボ安定性を有する。確かに、NOTAおよび誘導体は、68Gaと、および64Cuと非常に安定した錯体を形成することが周知である。
NOTAの誘導体、特にNODAGA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-二酢酸)は、DOTAのものよりも68Gaイオンのキレート化により適していることがわかっている。NODAGAは、68Ga標識および64Cu標識に、その68Gaおよび64Cuキレートの高親水性とイン・ビボ安定とに起因して、特に有用である。臨床試験により、[68Ga]NODAGAを含有する放射性トレーサーが、患者において薬物関連の悪影響なく良好な耐性があることが実証された(例えば、Haubner et al.,Eur J Nucl Med Mol Imaging 43:2005-2013,2016;Kumar et al.,J Nucl Med 57(suppl.2):1171,2016;Ben Azzouna et al.,Endocrine Abstracts 47:OC4,2016を参照)。確かに、[68Ga]NODAGAは、イン・ビボでの腫瘍の画像化に特に好適であるようである(例えば、Oxboel et al.,Nucl Med Biol.41(3):259-267,2014;Kumar et al.,J Nucl Med 57(suppl.2):675,2016;Kumar et al.,J Nucl Med 57(suppl.2):1171,2016;Kumar et al.,J Nucl Med 57(suppl.2):1298,2016;Tornesello et al.,Molecules 22:E1282,2017を参照)。NODAGAは、NODAGA-NHSエステルとして様々な供給元より市販されており、プロガストリン部分のアミンに対する簡単な生体共役反応を可能にする。
好ましくは、キレート化剤はDOPA、NOTAおよびNODAGAから選択される。最も好ましくは、キレート化剤はNODAGAである。
本明細書で用いる場合、「放射性同位体」は、安定でない原子核を有して、安定形へのその崩壊中に放射線を発する化学元素のある形態である。放射性同位体は、医療の診断、治療および研究で重要な用途がある。本化合物の放射性同位体は、好ましくは、68Ga、64Cu、89Zr、186/188Re、90Y、177Lu、153Sm、213Bi、225Ac、111In、99mTc、123Iまたは223Raからなる一覧から選択される。これら放射性同位体は、その半減期が長く、大きさが小さいことで特に有利であり、このため特にPET/SPECTイメージングに好適である。より好ましくは、放射性同位体は68Gaまたは64Cuである。さらにより好ましくは、前記放射性同位体は68Gaである。
他のPETベースの放射性核種よりも68Gaが有利であることとしては、特に、オンサイトのサイクロンとは独立の、インハウスのジェネレータからのその利用可能性が挙げられる(Shukla&Mittal,J Postgrad Med Edu Res 47(1):74-76,2013)。そのため、市販の68Ge/68Gaジェネレータにより高い費用効果で連続的に生成することが可能であり、例えば18Fの生成に必要なサイクロトロンにPET中心を近接させる必要性を緩和する。放射性核種の崩壊モードにより、結果的に高品質のポジトロン断層法(PET)画像を生じ、精密な定量化を可能にする。さらに、68Gaの物理的半減期が短いことで(t1/2=68分)、改善された線量測定と繰り返しの画像化が可能になり、これら薬剤を臨床用途にとって理想的にさせている。特にこの半減期により、患者の被曝を軽減した状態で投与後すぐに画像化し易くなる。小さい化合物、生物学的マクロ分子並びにナノおよびマイクロ粒子は、68Gaでうまく標識されて、得られた薬剤は、有望な、前臨床的および臨床的な画像化性能を証明した(例えば、Beylergil et al.,Nucl Med Commun.34(12):1157-1165,2013を参照)。
この開示の他の態様は、先の態様のいずれかに記載した化合物の薬学的に許容される塩を含む。本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される塩」は、開示される化合物の誘導体であって、その親化合物が非毒性のその酸性または塩基の塩で修飾されている、開示される化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、アミン等の塩基性残基の無機塩または有機酸塩;カルボン酸等の酸性残基のアルカリ塩または有機塩等が挙げられるが、これに限定されない。薬学的に許容される塩には、例えば非毒性の無機酸または有機酸から生成した親化合物の、従来の非毒性の塩または第四級アンモニウム塩を含む。例えば、従来の非毒性酸性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等の無機酸由来のもの;および酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、有毒な(malefic)酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、nは0~4を表すものであるHOOC-(CH2)-COOH等の有機酸から調製される塩が含まれる。本開示の薬学的に許容される塩には、従来の化学的方法による塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から合成することが可能である。概して、こうした塩は、これら化合物の遊離酸の形態を理論量の適切な塩基(例えば、Na、Ca、MgまたはKの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等)と反応することによって、あるいはこれら化合物の遊離塩基の形態を理論量の適切な酸と反応することによって、調製可能である。こうした反応は、典型的には、水中または有機溶媒中または2つの混合液中で実行される。概して、実行可能な場合には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水系溶媒を用いる。さらなる好適な塩の一覧は、例えばレミントン 医薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第17版、Mack Publishing COMPANY、ペンシルバニア州イーストン、第1418頁(1985年)で見ることができる。
別の側面においては、本発明は、発明の化合物の調製方法を提供する。
前記方法は:
a)アミン反応性キレート化部分を、プロガストリン部分とコンジュゲートする工程、および
b)プロガストリンとキレート剤とのコンジュゲートを回収する工程
を含む。
本明細書に記載の放射性同位体に対するアミン反応性キレート構造は、市販されており、例えば、DOTA-NHS、NOTA-NHSおよびNODAGA-NHSエステル等である。好ましくは、当該アミン反応性キレート化部分は、NODAGA-NHSエステルである。当業者にとっては、NHSエステル(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)は、N末端における、且つ、プロガストリン残基のリシン(Lys、K)アミノ酸残基の側鎖内の、一級アミンと反応することとなることは周知であるため、ここでは詳述する必要はない。
好ましくは、本発明の化合物の調製方法は:
c)プロガストリンとキレート剤とのコンジュゲートを相補的な放射性同位体とインキュベートし、
それによって本発明の化合物を生成する工程をさらに含む。
別の側面においては、本発明は、1以上の細胞、器官または組織の画像化方法であって、画像化に好適な金属同位体を含む効果量の化合物を、当該細胞に曝露させるか若しくは有機体に投与することによって1以上の細胞、器官または組織の画像化方法を提供する。画像化することは、当業者に公知である任意の好適な技術、特にPETまたはSPECTによって実行することが可能である。
SPECTおよびPETは、代謝過程の場所をつき止めるために用いられる機能的画像化技術である。サイクロトロンまたはジェネレータのいずれかから生じた放射性核種は、PET放射性トレーサーを形成する生物活性分子と結合する。SPECT/PETイメージング研究で近年用いられている同位体は、魅力的であり、かつ、より良好に18Fに代わる可能性がある。68Ga、64Cu、89Zr、186/188Re、90Y、177Lu、153Sm、213Bi、225Ac、または223Raが、それらの軽金属的性質とキレート化剤に結合する能力とに起因して、PETイメージングで評価される利用可能な同位体である。
ポジトロン断層法(PET)は、体内における機能的過程の三次元画像を生成する、核医学機能的画像診断技術である。PETを、代謝過程の場所をつき止めるために用いる。サイクロトロンまたはジェネレータのいずれかから生じた陽電子放出放射性核種は、例えば本明細書に記載の化合物等である、PET放射性トレーサーを形成する生物活性分子と結合する。次いでPET放射性トレーサーを、注入、経口摂取または吸入によって患者に導入する。このシステムは、放射性核種(トレーサー)によって間接的に放射されるガンマ線の対を検出するものであり、これは、放射性トレーサーで、体内に導入される。次いで、体内におけるトレーサー濃度の三次元画像が、コンピュータ解析によって作成される。近年のPET-CTスキャナーにおいては、三次元画像化はしばしば、同じマシンにおける、同じセッション中に患者に対して実行されるCTのX線スキャンの助力により達成される。PET放射性トレーサーが投与されると、患者は、短距離を横断した後で電子と結合する陽電子からの崩壊事象を結果として生じる放射性核種崩壊として生成される、事象のガンマ線であって、反対方向に移動する2511keVの光子、を検出器が登録できるように位置決めされる。検出器の電子機器は、放射された2つの光子が、両側で検出され、同時に呼び出されることによって、同じ崩壊事象から発生するはずであるような方法で同調される。これら一致させた放射は、一連の応答に割り当てられ、次いで崩壊事象の位置を特定するための標準断層撮影法を用いて再構成される。非常に高速のシンチレーターによる、PET画像再構成における近年の「飛行時間」情報を用いることで、一連の応答に沿った崩壊事象の起源が、改善された精度で検出される。
PETスキャニングで用いられる放射性核種は、典型的には、例えば11C(約20分)、13N(約10分)、15O(約2分)、18F(約110分)または82Rb(約1.27分)等の短半減期をもつ同位体である。上記した放射性同位体、すなわち68Ga、64Cu、89Zr、186/188Re、90Y、177Lu、153Sm、213Bi、225Acまたは223Raからなる一覧は、概して、PETにも用いられる。この点において、上記したように、68Gaは特に、半減期が68分であることから有利である。これら放射性核種は、グルコース(またはグルコースアナログ)、水若しくはアンモニア等の体により通常用いられる化合物内に、あるいは、プロガストリンを含む、受容体または他の部位に結合する分子内に、組み込まれる。こうした標識された化合物は、放射性トレーサーとして知られる。PET技術を用いて、生存するヒト(および多数の他の種も同様に)において任意の化合物の生物学的経路を追跡することが可能であるが、ただし、それはPET同位体で放射性標識することが可能である。特に、以下に記載するように、PET技術を用いて、例えば本明細書に記載の化合物等である、癌性細胞に対して特異的に結合する放射性標識したプローブの画像化によって、生存するヒトにおける癌を検出することが可能である。
大多数の陽電子放出放射性同位体が短半減期であることに起因して、従来から、PETイメージング設備に近接したサイクロトロンを用いて放射性トレーサーを生成してきた。フッ素-18は、フッ素-18で標識された放射性トレーサーを施設外の場所で商業的に製造し、イメージング施設に輸送することが可能であるのに十分長い半減期を有する。一方、68Gaは、ジェネレータで生成することが可能であることにより、サイクロトロンが必要なくなる(Velikyan,Molecules 20:12913-12943,2015)。さらに、ガリウム-68の半減期は、18Fの半減期に近く、この放射性核種をPETイメージングに特に有用であるようにさせている。
単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)は、PETと同様の核医学画像診断技術である。それはまた放射能標識されたトレーサーを使用しており、ガンマ線の検出に基づく。PETと対照的に、SPECTで用いられる放射活性標識は、直接測定されるガンマ線を発する。
本発明の態様には、1以上の細胞、器官または組織の画像化方法であって、画像化に好適な同位体標識を伴う効果量の化合物を、細胞に曝露させるかまたは対象に投与することを含む上記方法において使用するための本発明の化合物を含む。一部の態様においては、上記1以上の器官若しくは組織には、前立腺組織、腎組織、脳組織、血管組織または腫瘍組織が含まれる。この細胞、器官または組織は、生体内で、全身画像化または手術中画像化のいずれかにより画像化してもよく、あるいは、画像化のために生体から切除してもよい。
別の態様においては、画像化方法は、癌、腫瘍または新生物の画像化に好適である。本明細書で用いる場合、「癌」の語は、典型的には調節不能な細胞増殖によって特徴付けられる、哺乳動物における生理的状態を指すまたは記述する。本明細書で用いる場合、「癌」および「癌性の」の語は、疾患の全ての病期を包含することを意味する。本明細書で用いる場合、「癌」は、生物における障害細胞の望ましくない増殖、浸潤およびある条件下の転移により生じる任意の悪性腫瘍である。癌を生じる細胞は、遺伝的に損傷しており、通常、細胞分裂、細胞遊走挙動、分化状態および/または細胞死機構を制御する能力を失っている。大部分の癌は腫瘍を形成するが、白血病のような一部の造血性癌は形成しない。癌は通常原発部位で形成し、原発性癌を生じる。局所的にまたは体内の離れた部分に広がる癌は転移と呼ぶ。
そのため、本明細書で用いる場合、「癌」は、良性の癌と悪性の癌との両方を含み得る。本明細書で用いる場合、「癌」はまた、原発性癌と転移性癌との両方を含み得る。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性腫瘍が挙げられるが、これに限定されない。より詳細には、本発明による癌は、扁平上皮癌(例えば、上皮性扁平上皮癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌を含む肺癌、中咽頭癌、上咽頭癌、喉頭癌、腹膜の癌、食道癌、肝細胞癌、消化器癌および胃腸間質性癌を含む胃部または胃の癌、膵癌、神経膠芽腫、脳癌、神経系癌、子宮頚癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、尿路癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌または腎臓癌、前立腺癌、胆嚢癌、外陰癌、精巣癌、甲状腺癌、カポジ肉腫、肝癌、肛門癌、陰茎癌、非黒色腫皮膚癌、メラノーマ、皮膚メラノーマ、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端部黒子黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫(ホジキンリンパ腫;例えば低悪性度/濾胞性の非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球型(SL)NHL;中悪性度/濾胞性のNHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度非切れ込み小細胞NHL;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫; AIDS関連リンパ腫;および、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ性白血病(ALL);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病(CML);急性骨髄芽球性白血病(AML);および、移植後リンパ球増加症(PTLD)のみならず、母斑症関連の異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するもの等)、メイグス症候群、口唇および口腔癌を含む脳並びに頭頚部癌、並びに、関連の転移を含む群から選択される。
好ましい態様においては、前記癌は、肺癌、口唇および口腔癌、中咽頭癌、上咽頭癌、喉頭癌、前立腺癌、食道癌、胆嚢癌、肝癌、肝細胞癌、消化器癌および胃腸間質性癌を含む胃部または胃の癌、膵癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、腎癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、肝細胞腫、肝癌、肛門癌、甲状腺癌、非黒色腫皮膚癌、皮膚メラノーマ、脳癌、神経系癌、精巣癌、子宮頚癌、子宮癌、子宮内膜癌、卵巣癌、または乳癌である。
より好ましい態様においては、前記癌は、食道癌、肝癌、肝細胞癌、消化器癌および胃腸間質性癌を含む胃部または胃の癌、膵癌、ホジキンリンパ腫、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、肝細胞腫、肝癌、肛門癌、非黒色腫皮膚癌、皮膚メラノーマ、子宮頚癌、子宮癌、子宮内膜癌、卵巣癌、または乳癌である。
本発明者は、本明細書に記載の放射性標識化合物は、PETまたはSPECT等のオートラジオグラフィー技術または分子画像化の治療法を用いた、イン・ビトロ(in vitro)およびイン・ビボで癌を探索するために用いることが可能であることを見出した。プロガストリン部分は、癌細胞に特異的に結合するので、放射性同位体により発せられる信号は、癌細胞の局在を示す。
別の側面によれば、必要であることを認識している対象における1以上の癌の細胞、器官または組織の画像化方法であって:
a)本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与すること、および、
b)イン・ビボでのPETまたはSPECTイメージングによって前記化合物を検出すること
を含む、上記方法を提供する。
本発明の化合物はまた、患者において癌を診断するために有用である。この側面によれば、本発明は、患者における癌を診断する方法を提供するものであって、前記方法は:
a)本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与する工程、
b)イン・ビボでのPETまたはSPECTイメージングによって前記化合物を検出する工程、および
c)工程b)の検出に基づいて、癌を診断する工程を含む。
本プロガストリン誘導体は、癌細胞のみに結合する。そのため、PETまたはSPECTイメージングにおいて検出されるあらゆる信号は、癌細胞が存在することを示している。本放射性標識化合物の感度を理由に、患者の体内の癌性細胞を特定し、それにより癌を診断することが可能である。さらに、癌の種類は、原発性癌の局在から容易に推定することが可能である。
別の側面によれば、本発明は、患者における癌の予後の方法に関するものであって、前記方法は:
a)本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与する工程、
b)イン・ビボでのPETまたはSPECTイメージングによって前記化合物を検出する工程、および
c)工程c)の検出に基づいて、癌の予後を判断する工程
を含む。
本明細書において用いる場合、「予後」は、疾患からの回復し易さまたは疾患の蓋然性が高い進展または結果の予測を意味する。例えば、工程b)で検出した信号が大きいほど、患者の体内における腫瘍は大きく、予後は悪い。
さらに別の側面においては、本発明は、必要とする対象における癌の局在の決定方法であって:
a)本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与すること、および
b)イン・ビボでのPETまたはSPECTイメージングによって前記化合物を検出すること
を含む、上記方法を提供する。
この発明はまた、最も早期の病期(段階)で癌の局在を特定することができるようになるということが、当業者にとって直ちに明らかであるだろう。特に、本発明は、小さすぎて他の方法では検出できない癌の部位を特定するのに特に有用である。これ特に、患者が癌を有するという唯一の兆候がバイオマーカーの分析に由来する場合に有利である。例えば、抗プロガストリン抗体に関与し、かつその検出に基づくアッセイは、何らかの症状がない場合であっても癌の危険性を特定することを可能にする(例えば、国際公開第2017/114973号を参照)。
特定の態様によれば、必要とする対象における癌の局在の決定方法は:
a)前記対象の試料中のプロガストリンのレベルを決定する工程、および
b)本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与する工程、
c)イン・ビボでのPETまたはSPECTイメージングによって前記化合物を検出する工程
を含む。
本方法におけるプロガストリンの濃度の決定は、生化学分野の当業者によって公知である任意の技術によって実行される。
好ましくは、試料中のプロガストリンのレベルを決定することは、前記試料をプロガストリン結合分子と接触することと、前記プロガストリン結合分子のプロガストリンへの結合を測定することとを含む。
タンパク質レベルで発現レベルを測定する場合、特に、例えば抗体等の特異的プロガストリン結合分子を用いて、特に、特異的抗体での免疫沈降法、ウェスタンブロット、ELISAまたはELISPOT、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、放射性免疫検定法(RIA)、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法(IF)、免疫組織化学と合わせた抗体マイクロアレイまたは組織マイクロアレイが後に続く、ビオチン標識または他の均等な技術を用いて染色する細胞膜等の周知技術を用いて、実行され得る。他の好適な技術は、単一または多重の励起波長を用いて、電気化学的方法(ボルタメトリーおよび電流測定技術)、原子間力顕微鏡、および例えば多極性共鳴分光法である高周波法、共焦点および非共焦点の、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、および複屈折率または屈折率の検出(例えば、表面プラズモン共鳴、エリプソメトリ、共振ミラー法、回折格子結合器の導波路法または干渉法)、細胞ELISA、フローサイトメトリ、放射性同位体の磁気共鳴画像法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析(SDS-PAGE);HPLC-質量分光法;液体クロマトグラフィー/質量分析法/質量分析法(LC-MS/MS))等である適応された光学的方法のいずれかを利用した、FRETまたはBRET、シングルセル顕微鏡法または組織化学法を含む。これらの技術は全て、当技術分野で周知であり、ここでさらに詳細に説明する必要はない。これら様々な技術を用いて、プロガストリンのレベルを測定することが可能である。
前記方法は、特に、免疫検出に基づく方法、ウェスタンブロットに基づく方法、質量分析法に基づく方法、クロマトグラフィーに基づく方法、およびフローサイトメトリに基づく方法のうちから選択できる。アッセイを実行するための任意の好適な手段は発明の範囲内に含まれるが、FACS、ELISA、RIA、ウェスタンブロットおよびIHC等の方法は、特に、この発明の方法を実行するのに有用である。
プロガストリンのレベルが0pMを上回れば、対象は癌を有するということがこれまでに示された(例えば、国際公開第2017/114973を参照)。
好ましい態様によれば、この方法は:
a)前記対象の試料中のプロガストリンのレベルを測定する工程、
b)工程a)のレベルが0pMより高いかを決定する工程と、
c)本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与する工程、および
d)イン・ビボでのPETまたはSPECTイメージングによって前記化合物を検出する工程
を含む。
本明細書においては、「プロガストリン結合分子」は、プロガストリンと結合するが、ガストリン-17(G17)、ガストリン-34(G34)、グリシン伸長ガストリン-17(G17-Gly)またはグリシン伸長ガストリン-34(G34-Gly)とは結合しない任意の分子を指す。本発明のプロガストリン結合分子は、例えば抗体分子または受容体分子等の任意のプロガストリン結合分子であり得る。好ましくは、プロガストリン結合分子は、抗プロガストリン抗体またはその抗原結合断片である。この方法の特定の態様によれば、プロガストリンのレベルは、1以上の抗プロガストリン抗体を用いて決定する。この態様によれば、プロガストリンのレベルは、1以上の抗プロガストリン抗体を前記対象の試料と接触することによって決定される。
前記抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。好ましくは、本方法のモノクローナル抗プロガストリン抗体は、国際公開第2017/114973号に開示されるモノクローナル抗hPG抗体のうちのいずれかである。
癌が固形癌である場合、「生体試料」には、本明細書で用いる場合、試験対象の患者の固形癌試料も含まれる。こうした固形癌試料により、当業者が、任意のタイプの、この発明のバイオマーカーのレベルの測定を実行できるようになる。一部の場合において、この発明の方法は、患者から固形癌試料を得る前工程をさらに含んでもよい。「固形癌試料」は、腫瘍組織試料を指す。また癌患者において、腫瘍の部位である組織は、非腫瘍の健常組織をさらに含む。そのため、「癌試料」は、患者から得られた腫瘍組織に限定するべきでない。前記「癌試料」は、外科的切除療法により得られた生体試料または試料であってもよい。
生体試料は、典型的には、真核生物から、最も好ましくは、哺乳動物または鳥、爬虫類または魚から得られる。確かに、本明細書に記載の方法に供され得る「対象」は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、子ブタ、ブタ、ヒツジおよびサルを含む哺乳動物、または鳥、爬虫類、または魚のうちのいずれかであり得る。好ましくは、対象はヒトであり、ヒト対象は、「患者」とわかっていてもよい。
「生体試料を得ること」は、この発明に記載の方法において用いるための生体試料を取得することを意味する。ほとんどの場合、これは、動物から細胞の試料を取り出すことによってなされることとなるが、予め単離した細胞(例えば、別の人物によって、別の時点に、および/または別の目的のために、単離されたもの)を用いることにより、または、イン・ビボで本発明の方法を実行することによって達成することも可能である。治療歴または結果歴を有する保存記録用細胞は、特に有用となる。
この試料は、取得して、必要であれば、当業者にとって公知の方法に従って調製してもよい。特に、試料が空腹時の対象から得られるべきであることは、当技術分野において周知である。
プロガストリン濃度の決定は、既知の量の試料中におけるプロガストリンの量を決定することに関する。プロガストリン濃度は、例えば、比率または割合(パーセンテージ)として、基準試料に対して相対的に表すことができる。この濃度はまた、前記濃度の決定のために用いられる方法に応じて、信号の強度または局在として表してもよい。好ましくは、試料中のある化合物の濃度は、前記試料中における関連する化合物の総濃度を正規化した後で表されるものであり、例えば、タンパク質のレベルまたは濃度は、試料中のタンパク質の総濃度を正規化した後で表される。
癌患者に対して指示される処置は、癌の種類に依存することとなる。患者における前記癌の局在に基づいて癌の種類を特定することが可能であるため、本発明は特に、この点において、有利である。患者に適切な療法を施すことが可能であるため、当該患者の予後は改善される。本明細書に記載の化合物は、当該化合物により最も早期の病期における癌の画像化および特定が可能になることから、特に有用である。特に、当該化合物の使用を、上記したようにプロガストリンのレベルを測定することと組み合せる場合に、本化合物は、症状が何もない場合であっても癌の画像化および特定を可能にする。これは、前記癌が患者の体内において離れた部位に転移してしまう前に前記癌を可視化することが可能であることから、癌の原発部位を特定するのに特に有用である。
発明の側面によれば、必要とする対象における癌の原発部位を特定する方法を提供する。この方法は、本明細書に記載の方法によって癌の局在を決定する工程と、癌によって影響を受ける器官を特定する工程とを含む。ある態様においては、この方法は、前記患者の前記器官の試料のイン・ビトロにおける組織学的検討をさらに含む。
本発明の別の側面は、本明細書に記載の化合物を含む、組成物、特に医薬組成物に関する。
本明細書において論じる化合物は、診断的または画像化による治療方法において使用するための、様々な組成物へと配合することが可能である。この組成物(例えば、医薬組成物)は、キットとして組み立てることが可能である。
概して、医薬組成物は、効果量(例えば、薬学的な効果量、または検出可能な効果量)の上記に記載した化合物を含む。
本開示の組成物は、この発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物として、調製可能である。「薬学的に許容される担体」は、生物学的に望まれないものではないまたはそれ以外の望まれないものではない物質を意味し、すなわちこの物質は、何らかの望まれない生物学的作用を引き起こすことなくあるいは物質が含有される医薬組成物の他の組成物のいずれかと有害な方法で相互作用することなく対象に投与することができる。この担体は、当業者に周知であるように、当然、あらゆる活性成分の分解を最小化し、かつ、対象におけるあらゆる有害な副作用を最小化するように選択されるものである。薬学的に許容される担体、および他の医薬組成物の成分の議論に関しては、例えば、医薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第18版、Mack Publishing COMPANY、1990年、を参照されたい。一部の好適な薬学的な担体は、当業者にとって明らかであるであろうし、また例えば、水(滅菌水および/または脱イオン水を含む)、好適な緩衝液(例えば、PBS)、生理食塩水、細胞培養培地(例えば、DMEM)、人工脳脊髄液等を含むこととなる。
この開示の医薬組成物またはキットは、化合物に加えて、他の医薬品を含有することが可能である。他の薬剤は、同時にまたは連続してのいずれかで、患者の治療中の任意の好適な時間に、投与することが可能である。
当業者は、特定の製剤は、用いられる特定の試薬および選択される投与経路に一部依存することとなることを認識するであろう。したがって、多種多様な本開示の組成物の好適な製剤が存在する。
当業者は、特定の用途に基づいて、近い将来、好適または適切な製剤を選択する、適合する、または開発することが可能であるということを認識するであろう。この開示の組成物の投与量を、単位剤形に入れることが可能である。本明細書において用いる場合、「単位剤形」の語は、動物(例えば、ヒト)対象のためのまとまった用量として好適である物理的に不連続な単位を指し、所定量の本発明の薬剤を単独でまたは他の治療薬と組み合わせて含有する各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体またはビヒクルと関連して、所望の効果を生じるのに十分である量で計算される。
当業者は、個々の患者における薬剤の所望の効果量または効果濃度を達成するために、適切な用量、スケジュールおよび使用される組成物の正しい製剤の投与方法を容易に決定することが可能である。本発明の文脈において、特にヒトである動物に投与される、本明細書に記載の組成物の1回量は、妥当な期間にわたって個体において少なくとも検出量の診断応答を生じるのに十分であるべきである。所望の効果を達成するために用いられる1回量は、投与する特定の試薬の力価、宿主における薬剤と関連する薬理動態、感染した個体の疾患状態の重症度、対象に施す他の薬物治療等を含む、様々な因子によって決定されることとなる。1回量のサイズはまた、用いられる特定の薬剤、またはその組成物に加わり得る何らかの有害な副作用の存在によって決定されることとなる。通常、できる限り、有害な副作用を最小限に維持することが望ましい。生物活性物質の1回量は変動することとなり、特定の薬剤ごとの好適な量は、当業者にとって明らかであるだろう。
医薬組成物または放射性医薬組成物は、非経口的に、すなわち注入(注射)によって投与され得、最も好ましくは水溶液である。こうした組成物は、緩衝剤;薬学的に許容される可溶化剤(例えば、プルロニック、Tweenまたはリン脂質等であるシクロデキストリンまたは界面活性剤);薬学的に許容される安定剤または抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、ゲンチシン酸、またはパラアミノ安息香酸)等であるさらなる原材料を任意に含有することができる。本明細書に記載の化合物が、放射性医薬組成物として提供される場合、前記化合物の調製方法は、放射性医薬組成物を取得するために必要な工程、例えば、有機溶媒の除去、生体適合性緩衝剤および任意の随意のさらなる原材料の添加、をさらに含んでもよい。非経口投与のため、放射性医薬組成物が無菌であり非発熱性であることを確実にするための工程もまた、行う必要がある。こうした工程は、当業者にとって周知である。
この開示の他の態様は、本明細書で開示する化合物またはその薬学的に許容される塩を含むキットを提供する。この開示のある態様においては、上記キットは、薬学的に許容される担体および本明細書で開示する化合物、またはその薬学的に許容される塩を有する包装された医薬組成物を提供する。この開示の一部の態様においては、包装された医薬組成物は、放射性核種と組み合わせることによる、本明細書で開示される化合物を生成するのに必要である反応前駆体、またはその薬学的に許容される塩を含むこととなる。本開示により提供される他の包装された医薬組成物は、供給された前駆体から、本明細書に開示する化合物またはその薬学的に許容される塩を調製するための説明書、細胞または組織を造影するために組成物を使用するための説明書、特に癌を造影するために組成物を使用するための説明書、のうちの少なくとも1つを含む表示をさらに含む。
本開示の特定の態様においては、本キットは、薬学的に許容される担体と組み合せた、約1mCiから約30mCiの上記した放射性核種標識造影剤を含有する。造影剤および担体は、溶液形態または凍結乾燥形態で提供してもよい。キットの造影剤および担体が凍結乾燥形態である場合、キットは、例えば水、生理食塩水、緩衝生理食塩水等の無菌かつ生理学的に許容される再構成溶媒を任意に含有してもよい。キットは、本明細書に記載の化合物を溶液形態または凍結乾燥形態で提供することができ、またこの開示のキットのこれら構成要素は、NaCl、ケイ酸塩、リン酸緩衝剤、アスコルビン酸、ゲンチシン酸等の安定剤を任意に含有してもよい。キットの構成要素のさらなる安定は、この態様において、例えば耐酸化性形態で還元剤を提供することによって、提供される。こうした安定剤および安定化方法の決定および最適化は、十分、本技術分野の技術のレベルの範囲内である。
「薬学的に許容される担体」は、無菌、p[Eta]、等張性、安定性等を参酌した、生体適合性の溶液を指し、また任意のかつ全ての溶媒、希釈剤(滅菌生理食塩水、塩化ナトリウム注射剤、リンガゲル液、ブドウ糖注射剤、ブドウ糖および塩化ナトリウム注射剤、乳酸加リンゲル液、および他の緩衝水溶液を含む)、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤等を含むことが可能である。薬学的に許容される担体はまた、当業者にとって周知である安定剤、防腐剤、抗酸化剤、若しくは他の添加剤、またはこの技術分野で公知の他のビヒクルを含有してもよい。
この発明の態様の特徴は、下記の実施例の以下の発明の詳細な説明からさらに明らかになることとなる。
図1は、PET/CTにおける定量化したROIの三次元図である。腫瘍(赤)、肝臓(青)、腎臓(緑)、心臓(水色)、筋肉(黄)および脳(桃色)を表す。 図2は、68Ga-NODAGA-プロガストリン注入後の異なる時点における、C1S3マウスのダイナミックPET/CTの矢状図である。 図3は、PETの2時間中の、定量化した各器官における68Ga-NODAGA-プロガストリンの平均生体内分布である。値は%ID/g+標準偏差で表す。(A)すべての定量化された領域の動態、(B)筋肉、脳および腫瘍に限定された動態。 図4は、腫瘍および筋肉で測定された、%ID/gでの68Ga-NODAGA-ペプチド1の量(A)並びにPET/CT取得の2時間後の各マウスの筋肉に対する腫瘍の比(B)である。
ペプチド結合
キレート剤は、0.2M炭酸水素ナトリウム溶液中10mg/mLの濃度で、pH=9で調製される。次いで、10当量のキレート剤を、プロガストリンの分注に加える。共役結合反応を、37℃で2時間行う。最終生成物の精製は、AMICONフィルターで行う。これらフィルターを通して、過剰な未反応キレート剤が除去される。共役ペプチドが得られ、これをNODAGA-プロガストリンと呼ぶ。
動物モデル
結腸直腸癌細胞株T84を解凍後にT75フラスコ内で培養して4代継代し、マウスでの異種移植前に最適な増殖速度を再開させた。用いた培養液は、Glutamax+10%ウシ胎仔血清および1%の抗生剤(ストレプトマイシン、ペニシリン)を含むDMEM-F12であった。マウスでの異種移植のため、細胞培養を80%のコンフルエンスで停止し、1.10細胞/100μlの濃度にするために、細胞を血清およびマトリゲルを含まないDMEM-F12溶液中に1:1の割合で取り出す。
マウスはイソフルランで速やかに麻酔し、肩甲骨の間の皮下領域に100μlのT84(1.10細胞/100μl)を注入する。動物を、目覚め次第すぐに動物のケージに戻し、腫瘍増殖が実験に十分になるまで、安定した室温内に置く。
放射性標識および画像化
100μLの2M酢酸アンモニウム溶液をNODAGA-プロガストリン(50μLのPBS中で可溶化した10μg)の分注に加える。次いで、IRE Elitジェネレータからの500μLのガリウム-68溶出物、[68Ga]GaCl3を、先に調製した溶液に加える。全体を、10分間室温でインキュベートする。最終pHは4.8である。放射化学純度は、90%(n=3)より高く、また薄層クロマトグラフィー(移動相:0.1Mクエン酸ナトリウム、pH=5)で決定する。2μLの10M水酸化ナトリウムを、最終混合物に加え、pHを中和する。調製したこの溶液を、生体内分布およびPET/CTイメージング試験に用いる。
動物を置いてガス麻酔(イソフルランを誘導用に3%で、マスク維持用に1.5~2%で)で眠らせる。尾静脈をカテーテル処置する(27Gカテーテル)。マウスは、2時間の動態(ダイナミクス)に関して、3.5±0.6MBqのボーラスで放射性トレーサー注入を受ける(表2)。
全てのPET/CTイメージングは、ナノPET/CT(登録商標)カメラ(ハンガリー国、Mediso社)で行う。
動物は、3×3で造影する。NODAGA-プロガストリンの生体内分布動態の画像を得るために、スキャナー(35kVp、プロジェクションあたり450msの曝露時間)と組み合わせた2時間のダイナミックPET画像(400~600keVエネルギーウィンドウ)を、マウス全身(10cmウィンドウ)にわたって実行する。PET取得は、放射性トレーサー注入開始10秒前に開始し、注入ピークが取得できるようにする。取得したPET画像は次いで、解剖上のシフト、減衰補正および時分割を用いて再構成する。この時分割は、以下のとおりである:10’’、1’’、1’、5’、10’、20’、40’、1時間、1時間20’、1時間20’、1時間40’および2時間。
PET/CTの三次元画像の事後解析は、VivoQuant3.5ソフトウェア(米国、Invicro社)で行った。動態のため、6箇所の関心領域(ROI)をスキャナー上で離調し、次いで定量化のためにPET画像に移す。定量化される器官は、肝臓、腎臓、心臓、脳、腫瘍および筋肉である(図3)。定量化の結果は、組織の1グラム当たりの注入した用量のパーセンテージ(%ID/g)としてまたは腫瘍/筋肉**比としてのいずれかで表される。
%ID/g=ROIにおいて算出された活性(MBq)/(注入活性(MBq)×組織の体積(ml))×100
**筋肉は、放射性トレーサーの非特異的な固定における対照領域とみなされる。
結果
全体で、NODAGA-プロガストリンの生体内分布の動態は、異所性腫瘍T84を100および600mmの間(表2におけるPET/CT取得)に発達させた合計5匹のマウスにおいて観察および定量された。
Figure 0007338128000003
マウスの腫瘍体積は、CT画像で測定した(表3)。
Figure 0007338128000004
図1は、マウスにおける2時間のPETイメージング中のこのトレーサーのバイオアロケーション(生体配置)を示す。各関心領域の%ID/gでの平均定量化値を算出し、図2に表した。
予測されたように、肝臓および腎臓の排出器官において高い濃度を観察し、また上記トレーサーを特異的に固定しない筋肉または脳においてははるかに低いレベルの活性を観察した。さらに興味深いことには、5匹のマウスのなかで腫瘍/筋肉比が1から4の格付けのマウスにおいて、腫瘍での活性レベルは、筋肉のものより高い(図3)。
結論
放射性標識したプロガストリンペプチドは、このモデルにおいて腫瘍に組み込まれるということを結論付けることができる。

Claims (18)

  1. 化合物またはその薬学的に許容される塩であって、前記化合物は、
    配列番号1のプロガストリン部分、および
    キレート化部分
    を含み、
    前記キレート化部分は、放射性同位体と結合
    前記プロガストリン部分及び前記キレート化部分は、共有結合している、
    前記化合物またはその薬学的に許容される塩。
  2. 前記キレート化部分が、二官能性キレート剤である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
  3. 前記二官能性キレート剤が、NODAGA、NOTA、DOTA、DOTA-NHS、p-SCN-Bn-NOTA、p-SCN-Bn-PCTA、p-SCN-Bn-オキソ-DO3A、デスフェリオキサミン-p-SCN、DTPAおよびTETAの一覧から選択される、請求項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
  4. 前記二官能性キレート剤が、NODAGA、NOTAまたはDOTAである、請求項2または3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
  5. 前記二官能性キレート剤が、NODAGAである、請求項2から4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
  6. 前記放射性同位体が、68Ga、64Cu、89Zr、186188Re、90Y、177Lu、153Sm、213Bi、225Ac、111In、99mTc、123Iまたは223Raからなる一覧から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
  7. 前記放射性同位体が、68Gaまたは64Cuである、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
  8. 前記放射性同位体が、68Gaである、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
  9. 請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の調製方法であって:
    a)アミン反応性キレート化部分を、前記プロガストリン部分とコンジュゲートする工程、および
    b)プロガストリンとキレート剤とのコンジュゲートを回収する工程
    を含む、方法。
  10. 前記アミン反応性キレート化部分が、DOTA-NHS、NOTA-NHSまたはNODAGA-NHSエステルである、請求項に記載の方法。
  11. 前記アミン反応性キレート化部分が、NODAGA-NHSエステルである、請求項9または10に記載の方法。
  12. c)プロガストリンとキレート剤とのコンジュゲートを相補的な放射性同位体とインキュベートし、
    それによって請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を生成する工程をさらに含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 対象における1以上の癌の細胞、器官または組織の画像化のための医薬組成物であって請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、
    前記医薬組成物は、前記対象に投与され、イン・ビボでのPETまたはSPECTイメージングによって検出される、医薬組成物
  14. 対象における癌の局在決定するための医薬組成物であって請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、
    前記医薬組成物は、前記対象に投与され、イン・ビボでのPETまたはSPECTイメージングによって検出される医薬組成物
  15. 前記医薬組成物の投与前に、前記対象から得られた試料中のプロガストリンのレベル決定される、請求項14に記載の医薬組成物
  16. プロガストリンのレベル、抗プロガストリン抗体により決定される、請求項15に記載の医薬組成物
  17. 請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
  18. 請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、キット。
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