以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
<車両の構成>
図1~図3を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100が搭載される車両1の構成について説明する。
なお、以下で説明する車両1は、本発明に係る制御装置が搭載される車両の一例に過ぎず、本発明に係る制御装置が搭載される車両は、後述するように、車両1に特に限定されない。
図1は、制御装置100が搭載される車両1の概略構成を示す模式図である。図1に示されるように、車両1は、駆動用モータ21と、インバータ22と、バッテリ23と、ブレーキ装置31と、液圧制御ユニット32と、マスタシリンダ33と、アクセルペダル41と、ブレーキペダル42と、動力伝達系51と、車輪52と、ステアリングホイール53と、アクセル開度センサ61と、ブレーキセンサ62と、パワーステアリング機構71と、ナビゲーション装置81と、車速センサ91と、車両位置センサ92と、制御装置100とを備える。
車両1は、駆動用モータ21のみを駆動源として備え、駆動用モータ21から出力される動力を用いて走行する電気車両である。
車両1の運転モードは、手動運転モードと自動運転モードとの間で切り替え可能となっている。手動運転モードは、ドライバの運転操作(つまり、加減速操作および操舵操作)に応じて車両1の加減速度および操舵角が制御される運転モードである。自動運転モードは、ドライバの運転操作によらずに車両1の加減速度および操舵角が自動で制御される運転モードである。
駆動用モータ21は、車両1の車輪52に伝達される動力を出力するモータであり、例えば、三相交流式のモータである。駆動用モータ21は、インバータ22を介してバッテリ23と接続されており、バッテリ23の電力を用いて駆動されて動力を出力する。
なお、駆動用モータ21は、車両1の減速時に回生駆動されて車輪52の運動エネルギを用いて発電可能なモータジェネレータであってもよい。この場合、駆動用モータ21により発電される電力は、インバータ22を介してバッテリ23へ供給される。それにより、バッテリ23が駆動用モータ21により発電される電力によって充電される。
駆動用モータ21の出力軸は、動力伝達系51を介して車輪52と接続されており、駆動用モータ21から出力される動力は、動力伝達系51を介して車輪52に伝達される。
なお、車両1において、駆動用モータ21から出力される動力が伝達される駆動輪は、前輪であってもよく、後輪であってもよい。また、動力伝達系51の出力側から出力される動力は、図示しないプロペラシャフトを介して前輪および後輪の双方へ伝達されてもよい。
インバータ22は、双方向の電力変換を行う電力変換装置である。例えば、インバータ22は、三相ブリッジ回路を含む。インバータ22は、バッテリ23から供給される直流電力を交流電力に変換して駆動用モータ21に供給可能である。また、インバータ22は、駆動用モータ21により発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ23に供給可能である。
バッテリ23は、電力を充放電可能な電池である。バッテリ23として、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池または鉛蓄電池が用いられるが、これら以外の電池が用いられてもよい。バッテリ23は、駆動用モータ21に供給される電力を蓄電する。
マスタシリンダ33は、倍力装置(図示省略)を介してブレーキペダル42と接続されており、ブレーキペダル42の操作量であるブレーキ操作量に応じて、油圧を発生させる。マスタシリンダ33は、液圧制御ユニット32を介して、各車輪52にそれぞれ設けられるブレーキ装置31と接続されている。マスタシリンダ33によって発生した油圧は、液圧制御ユニット32を介して各ブレーキ装置31へ供給される。
ブレーキ装置31は、油圧を用いて車輪52に制動力を付与する。各車輪52に対して各ブレーキ装置31により付与される制動力の合計が、車両1に付与される制動力となる。
ブレーキ装置31は、例えば、ブレーキパッドおよびホイールシリンダを含むブレーキキャリパ(図示省略)を有する。ブレーキパッドは、例えば、車輪52と一体として回転するブレーキディスクの両側面にそれぞれ対向して一対設けられる。ホイールシリンダは、ブレーキキャリパ内に形成され、ホイールシリンダ内にはピストンが摺動可能に設けられる。ピストンの先端部はブレーキパッドと対向して設けられ、ピストンの摺動に伴ってブレーキパッドがブレーキディスクの各側面へ向けて移動するようになっている。マスタシリンダ33によって発生した油圧は、ブレーキ装置31のホイールシリンダへ供給される。それにより、ブレーキキャリパ内のピストンおよびブレーキパッドが移動することによって、ブレーキディスクの両側面が一対のブレーキパッドにより挟まれ、車輪52に制動力が付与される。
液圧制御ユニット32は、各ブレーキ装置31へ供給される油圧(つまり、各ブレーキ装置31のブレーキ液圧)を調整可能である。具体的には、液圧制御ユニット32は、ポンプおよび制御弁等の装置を有しており、これらの装置の動作が制御されることにより、各ブレーキ装置31のブレーキ液圧が制御される。それにより、各車輪52に付与される制動力が制御される。液圧制御ユニット32は各ブレーキ装置31へ供給される油圧を個別に調整可能であってもよい。また、ブレーキ系統は、2系統であってもよい。
アクセルペダル41は、ドライバによるアクセル操作を受け付ける。アクセル操作は、具体的には、アクセルペダル41を踏み込む操作である。
ブレーキペダル42は、ドライバによるブレーキ操作を受け付ける。ブレーキ操作は、具体的には、ブレーキペダル42を踏み込む操作である。
アクセル開度センサ61は、ドライバによるアクセルペダル41の操作量であるアクセル開度を検出し、検出結果を制御装置100に出力する。
ブレーキセンサ62は、ドライバによるブレーキペダル42の操作量であるブレーキ操作量を検出し、検出結果を制御装置100に出力する。
パワーステアリング機構71は、ドライバのステアリングホイール53を用いた操舵操作を補助する。例えば、パワーステアリング機構71は、ステアリングホイール53を回動させる動力を出力可能な電動モータを有している。この場合、ドライバの操舵操作の補助は、当該電動モータを駆動させることによって実現される。なお、後述するように、自動運転モードにおいて、パワーステアリング機構71を利用して車両1の操舵角の制御が行われる。
ナビゲーション装置81は、ユーザによる入力操作に応じて車両1の現在地点(つまり、車両1が現在位置する地点)からユーザが所望する目的地までのルートを案内する装置である。ナビゲーション装置81は、案内の対象となる走行ルート(つまり、車両1の現在地点から目的地までのルートとしてユーザにより設定されたルート)を示す情報を制御装置100に出力する。また、ナビゲーション装置81は、情報を視覚的に表示する機能を有し、ルート案内に関する各種情報(例えば、車両1の現在地点、案内の対象となる走行ルート、目的地の位置、車両1の現在地点から目的地までの走行ルート上での距離および目的地までの到達時間等)を表示する。ナビゲーション装置81は、例えば、後述する車両位置センサ92による検出結果を用いて車両1の現在地点を取得することができる。
車速センサ91は、車両1の速度である車速を検出し、検出結果を制御装置100に出力する。
車両位置センサ92は、車両1の位置を検出し、検出結果を制御装置100に出力する。具体的には、車両位置センサ92は、車両1が現在位置する地点である現在地点を検出することができる。例えば、車両位置センサ92は、GPS(Global Positioning System)信号を取得すること等によって車両1の位置を特定することができる。
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等を含む。
図2は、制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。例えば、図2に示されるように、制御装置100は、取得部110と、制御部120と、決定部130とを有する。
取得部110は、制御部120および決定部130が行う処理において用いられる各種情報を取得し、制御部120および決定部130へ出力する。例えば、取得部110は、アクセル開度センサ61、ブレーキセンサ62、ナビゲーション装置81、車速センサ91および車両位置センサ92から出力される各種情報を取得する。
制御部120は、車両1内の各装置の動作を制御する。例えば、制御部120は、モータ制御部121と、ブレーキ制御部122と、操舵制御部123とを含む。
モータ制御部121は、駆動用モータ21の動作を制御する。具体的には、モータ制御部121は、インバータ22のスイッチング素子の動作を制御することによって、バッテリ23と駆動用モータ21との間の電力の供給を制御する。それにより、モータ制御部121は、駆動用モータ21による動力の生成および発電を制御することができる。
ブレーキ制御部122は、ブレーキ装置31の動作を制御する。具体的には、ブレーキ制御部122は、液圧制御ユニット32の動作を制御することによって、各車輪52に対して設けられている各ブレーキ装置31のブレーキ液圧を制御する。それにより、ブレーキ制御部122は、車両1に付与される制動力を制御することができる。
操舵制御部123は、パワーステアリング機構71の動作を制御する。具体的には、操舵制御部123は、パワーステアリング機構71の電動モータの出力を制御することによって、当該電動モータによりステアリングホイール53に付与されるトルクを制御することができる。
上述したように、車両1の運転モードは、手動運転モードと自動運転モードとの間で切り替え可能となっている。例えば、車両1には、手動運転モードと自動運転モードとのいずれを実行させるかを選択するための入力装置(例えば、スイッチまたはボタン等)が設けられており、ドライバは、当該入力装置を操作することにより、手動運転モードまたは自動運転モードを選択することができる。なお、自動運転モード中にドライバによりブレーキ操作等の特定の操作が行われた場合には、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えが行われるようになっていてもよい。制御部120は、運転モードに応じて、車両1の加減速度および操舵角を制御する。
手動運転モードでは、制御部120は、車両1の加減速度がドライバによる加減速操作(つまり、アクセル操作およびブレーキ操作)に応じた加減速度となるように、各装置を制御する。具体的には、制御部120は、車両1に付与される駆動力がアクセル開度に応じた駆動力となるように、駆動用モータ21の動作を制御する。それにより、車両1の加速度をドライバによるアクセル操作に応じて制御することができる。また、制御部120は、車両1に付与される制動力がブレーキ操作量に応じた制動力となるように、ブレーキ装置31の動作を制御する。それにより、車両1の減速度をドライバによるブレーキ操作に応じて制御することができる。また、制御部120は、ドライバによる操舵操作が行われている時に、ステアリングホイール53の回動方向と一致する方向のトルクがステアリングホイール53に付与されるようにパワーステアリング機構71の動作を制御する。それにより、ドライバの操舵操作が補助される。
自動運転モードでは、制御部120は、車両1が目標経路に沿って自動で走行するように、各装置を制御する。目標経路としては、例えば、ナビゲーション装置81においてユーザによる入力操作に応じて設定されている走行ルートが用いられる。具体的には、制御部120は、自動運転モードにおいて、車両1の操舵角が後述する決定部130により決定される目標操舵角θtになるように、パワーステアリング機構71の動作を制御する。また、制御部120は、例えば、車両1の車速が設定速度に維持されるように、車両1の加減速度を制御する。なお、車両1の前方を走行する先行車が存在する場合、制御部120は、車両1と先行車との車間距離が設定距離に維持されるように、車両1の加減速度を制御することが好ましい。
決定部130は、自動運転モードにおける操舵角の制御(以下、操舵制御とも呼ぶ)において用いられる上述した目標操舵角θtを決定し、当該目標操舵角θtを制御部120に出力する。
制御装置100は、上述したように、車両1に搭載される各装置と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
なお、本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により部分的に分割されてもよく、複数の機能が1つの制御装置によって実現されてもよい。制御装置100が有する機能が複数の制御装置により部分的に分割される場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
ここで、図3を参照して、比較例における目標操舵角θtの決定処理を説明した後に、本実施形態に係る制御装置100の決定部130による目標操舵角θtの決定処理の概略について説明する。
図3は、目標経路9および当該目標経路9上に設定される基準目標地点203の一例を示す模式図である。なお、図3は、車両1の現在の進行方向をY方向とし、Y方向に直交する方向をX方向として示されている。
比較例では、基準目標地点203と現在地点201とを通り、現在地点201において車両1の現在の進行方向(つまり、Y方向)に沿った接線を有する基準円弧303を特定し、基準円弧303上を車両1に走行させる場合の操舵角を目標操舵角θtとして決定する。ゆえに、車両1は、自動運転モードにおいて、基準円弧303上を走行するように制御される。
ここで、基準目標地点203が現在地点201から過度に近い場合、目標操舵角θtが目標経路9における曲率の変化に応じて変化しやすくなる。ゆえに、例えば、目標経路9上に急カーブがある場合等において、目標操舵角θtが急激に変化してしまい、車両1の挙動が不安定となる場合がある。よって、基準目標地点203は、目標操舵角θtの急激な変化が抑制される程度に現在地点201から遠くに設定される。しかしながら、基準目標地点203がそのように設定される結果として、実際の車両1の走行経路が目標経路9に対して乖離しやすくなってしまう。
一方、本実施形態に係る制御装置100では、決定部130は、基準目標地点203の他に当該基準目標地点203より手前(つまり、車両1に近い側)に位置する1つまたは複数の副目標地点205を目標経路9上に設定する。具体的には、図3に示される例では、副目標地点205a,205b,205cの3つの副目標地点205が設定されている。
そして、決定部130は、基準円弧303上を車両1に走行させる場合の操舵角である基準操舵角θ3の他に、副目標地点205と現在地点201とを通り、現在地点201において車両1の現在の進行方向に沿った接線を有する副円弧305上を車両1に走行させる場合の操舵角である副操舵角θ5を決定する。具体的には、図3に示される例では、各副目標地点205a,205b,205cと対応する各副円弧305a,305b,305cのそれぞれに対して副操舵角θ5が決定される。決定部130は、副操舵角θ5に応じて基準操舵角θ3を調整(具体的には、基準操舵角θ3が小さくなるように調整)することにより得られる操舵角を目標操舵角θtとして決定する。
本実施形態では、車両1の進行に伴って随時、上記のように基準操舵角θ3が副操舵角θ5に応じて調整されることによって目標操舵角θtが決定されるので、実際の車両1の走行経路を目標経路9に近づけることができる。それにより、目標経路9に対する走行経路の乖離を抑制しつつ、車両1を目標経路9に沿って走行させることが可能となる。なお、自動運転モード中に制御装置100により行われる操舵制御に関する処理(特に、決定部130により行われる目標操舵角θtの決定処理)の詳細については、後述する。
<制御装置の動作>
続いて、図4を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100の動作について説明する。具体的には、以下では、上記で参照した図3を適宜参照して、自動運転モード中の操舵制御に関する処理の詳細について説明する。
図4は、制御装置100が行う自動運転モード中の操舵制御に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。具体的には、図4に示される制御フローは、運転モードが自動運転モードとなっている間、予め設定された時間間隔で繰り返し実行される。
図4に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS501において、制御装置100は、車両1の前方に目標経路9が存在するか否かを判定する。車両1の前方に目標経路9が存在すると判定された場合(ステップS501/YES)、ステップS502に進む。一方、車両1の前方に目標経路9が存在しないと判定された場合(ステップS501/NO)、図4に示される制御フローは終了する。
ステップS501でYESと判定された場合、ステップS502において、決定部130は、基準目標地点203および副目標地点205を設定する。
上述したように、目標操舵角θtを決定するための基準操舵角θ3は、基準目標地点203と現在地点201とを通る基準円弧303に基づいて決定される。また、基準目標地点203が現在地点201から過度に近い場合、基準操舵角θ3が急激に変化しやすくなるので、目標操舵角θtも急激に変化しやすくなる。それにより、車両1の挙動が不安定になりやすくなる。ゆえに、決定部130は、具体的には、目標操舵角θtの急激な変化が抑制される程度に現在地点201から遠い位置に、基準目標地点203を設定する。
例えば、決定部130は、目標経路9上で現在地点201から最も近い地点209(図3を参照)から目標経路9を現在の車速で基準走行時間(例えば、1.5s等)だけ走行した場合に到達する地点を基準目標地点203として設定する。
また、例えば、決定部130は、地点209から目標経路9を現在の車速で上記基準走行時間よりも短い走行時間だけ走行した場合に到達する地点を副目標地点205として設定する。なお、副目標地点205の数は、図3に示される例のように複数であってもよく、1つであってもよい。また、複数の副目標地点205が設定される場合において、副目標地点205の数は3以外であってもよい。
図3に示される例で基準走行時間が1.5sである場合、決定部130は、例えば、副目標地点205aと対応する走行時間を0.6sとし,副目標地点205bと対応する走行時間を0.8sとし、副目標地点205cと対応する走行時間を1.2sとする。なお、この場合、基準目標地点203および副目標地点205a,205b,205cにおける隣り合う地点間の間隔は等間隔にはならないが、決定部130は、基準目標地点203および副目標地点205a,205b,205cを等間隔になるように設定してもよい。
次に、ステップS503において、決定部130は、基準円弧303および副円弧305を特定する。
上述したように、基準円弧303は、基準目標地点203と現在地点201とを通り、現在地点201において車両1の現在の進行方向(例えば、図3に示される例ではY方向)に沿った接線を有する円弧である。また、副円弧305は、副目標地点205と現在地点201とを通り、現在地点201において車両1の現在の進行方向(例えば、図3に示される例ではY方向)に沿った接線を有する円弧である。
図3に示される例のように複数の副目標地点205が設定される場合、決定部130は、複数の副目標地点205にそれぞれ対応する副円弧305を特定する。具体的には、図3に示される例では、決定部130は、副目標地点205aと現在地点201とを通る副円弧305a、副目標地点205bと現在地点201とを通る副円弧305b、および、副目標地点205cと現在地点201とを通る副円弧305cを特定する。
次に、ステップS504において、決定部130は、基準操舵角θ3および副操舵角θ5を決定する。
上述したように、基準操舵角θ3は、基準円弧303上を車両1に走行させる場合の操舵角である。決定部130は、具体的には、基準円弧303の半径および車速に基づいて、基準操舵角θ3を決定する。ここで、車速が大きいほど基準操舵角θ3を大きな値に決定することが好ましい。また、副操舵角θ5は、副円弧305上を車両1に走行させる場合の操舵角である。決定部130は、具体的には、副円弧305の半径および車速に基づいて、副操舵角θ5を決定する。ここで、車速が大きいほど副操舵角θ5を大きな値に決定することが好ましい。
図3に示される例のように複数の副目標地点205が設定される場合、決定部130は、複数の副目標地点205にそれぞれ対応する副操舵角θ5を決定する。具体的には、図3に示される例では、決定部130は、副円弧305a上を車両1に走行させる場合の操舵角を副目標地点205aに対応する副操舵角θ5aとして決定し、副円弧305b上を車両1に走行させる場合の操舵角を副目標地点205bに対応する副操舵角θ5bとして決定し、副円弧305c上を車両1に走行させる場合の操舵角を副目標地点205cに対応する副操舵角θ5cとして決定する。
例えば、図3に示される例では、各円弧の曲率は、副円弧305a、副円弧305b、副円弧305c、基準円弧303の順に大きくなる。ゆえに、各操舵角の大きさは、副操舵角θ5a、副操舵角θ5b、副操舵角θ5c、基準操舵角θ3の順に大きくなる。
次に、ステップS505において、決定部130は、基準操舵角θ3の調整における各副操舵角θ5の重みの比率を決定する。
後述するように、図4に示される制御フローでは、目標操舵角θtの決定において、決定部130は、複数の副操舵角θ5に応じて基準操舵角θ3を調整(具体的には、重み付け平均)する。基準操舵角θ3の調整における各副操舵角θ5の重みは、基準操舵角θ3の調整に各副操舵角θ5が寄与する程度に相当する。例えば、基準操舵角θ3の調整で重み付け平均が行われる場合において、各副操舵角θ5に乗じられる係数が各副操舵角θ5の重みに相当する。
図3に示される例では、決定部130は、例えば、基準操舵角θ3の調整における複数の副操舵角θ5a,θ5b,θ5cの各々の重みを、複数の副目標地点205a,205b,205cの各々と基準円弧303との距離D1,D2,D3に応じて変化させる。具体的には、決定部130は、副目標地点205と基準円弧303との距離が長いほど、当該副目標地点205と対応する副操舵角θ5の重みを重くする。
ここで、副目標地点205bと基準円弧303との距離D2、副目標地点205aと基準円弧303との距離D1、および、副目標地点205cと基準円弧303との距離D3は、この順に小さくなっている。ゆえに、決定部130は、基準操舵角θ3の調整における各副操舵角θ5の重みの比率を、副操舵角θ5b、副操舵角θ5a、副操舵角θ5cの順に小さくなるように決定する。例えば、基準操舵角θ3の調整における副操舵角θ5a,θ5b,θ5cの重みの比率を、距離D1:距離D2:距離D3に決定する。
基準操舵角θ3の調整では、現在地点201に近い側の副目標地点205(例えば、副目標地点205a)の重みを重くするほど、基準操舵角θ3を小さくなるように調整する程度が大きくなるので、実際の車両1の走行経路を目標経路9に近づける効果が大きくなるが、目標操舵角θtの変化を抑制し車両1の挙動を安定化させる効果は小さくなる。一方、現在地点201から遠い側の副目標地点205(例えば、副目標地点205c)の重みを重くするほど、基準操舵角θ3を小さくなるように調整する程度が小さくなるので、目標操舵角θtの変化を抑制し車両1の挙動を安定化させる効果が大きくなるが、実際の車両1の走行経路を目標経路9に近づける効果は小さくなる。つまり、実際の車両1の走行経路を目標経路9に近づける効果と、目標操舵角θtの変化を抑制し車両1の挙動を安定化させる効果とは、トレードオフの関係にある。また、これらの効果の程度は、各副操舵角θ5の重みの比率に応じて変化する。
ゆえに、上記のように複数の副操舵角θ5a,θ5b,θ5cに応じて基準操舵角θ3を調整することによって、上記のトレードオフの関係にある両効果を適切に両立させることができるので、車両1の挙動を適切に安定化させつつ、目標経路9に対する走行経路の乖離を抑制することができる。特に、上記のように各副操舵角θ5の重みを距離D1,D2,D3に応じて変化させることによって、車両1の挙動を適切に安定化させつつ、目標経路9に対する走行経路の乖離をより効果的に抑制することができる。
次に、ステップS506において、決定部130は、目標操舵角θtを決定する。
図3に示される例では、決定部130は、複数の副操舵角θ5a,θ5b,θ5cに応じて基準操舵角θ3を調整することにより得られる操舵角を目標操舵角θtとして決定する。具体的には、決定部130は、基準操舵角θ3の調整において、基準操舵角θ3および複数の副操舵角θ5a,θ5b,θ5cを重み付け平均する。
例えば、ステップS505で基準操舵角θ3の調整における副操舵角θ5a,θ5b,θ5cの重みの比率が距離D1:距離D2:距離D3に決定された場合、目標操舵角θtは、以下の式(1)を用いて表される。
θt=θ3×k+θ5a×(D1/(D1+D2+D3))×(1-k)+θ5b×(D2/(D1+D2+D3))×(1-k)+θ5c×(D3/(D1+D2+D3))×(1-k) ・・・(1)
なお、式(1)のkは、目標操舵角θtの決定に基準操舵角θ3が寄与する程度を示す定数であり、例えば、0.5等に設定される。例えば、距離D1が0.3mであり、距離D2が0.6mであり、距離D3が0.1mであり、副操舵角θ5aが30°であり、副操舵角θ5bが40°であり、副操舵角θ5cが50°であり、基準操舵角θ3が60°であり、kが0.5である場合、これらの数値を式(1)に代入することにより、目標操舵角θtは49°に決定される。
次に、ステップS507において、制御部120は、車両1の操舵角を目標操舵角θtに制御し、図4に示される制御フローは終了する。
なお、上記では、基準操舵角θ3の調整における複数の副操舵角θ5a,θ5b,θ5cの各々の重みを距離D1,D2,D3に応じて変化させる例を説明したが、決定部130は、各副操舵角θ5の重みを他のパラメータに応じて変化させてもよい。
例えば、決定部130は、各副操舵角θ5の重みを車両1の走行路の摩擦係数に応じて変化させてもよい。なお、走行路の摩擦係数を示す情報は、例えば、走行路の摩擦係数を検出可能なセンサを利用する方法や車両1の外部装置から受信する方法等によって取得され得る。具体的には、決定部130は、走行路の摩擦係数が低いほど、現在地点201から遠い側の副目標地点205(例えば、副目標地点205c)の重みを重くする。それにより、目標操舵角θtの変化を抑制し車両1の挙動を安定化させる効果が大きくなる。例えば、走行路が濡れている場合や凍結している場合に当該走行路の摩擦係数が低くなる。ここで、走行路の摩擦係数が低いほど車両1の挙動は不安定になりやすい。ゆえに、各副操舵角θ5の重みを車両1の走行路の摩擦係数に応じて変化させることにより、車両1の挙動が不安定になることを適切に抑制することができる。
また、例えば、決定部130は、各副操舵角θ5の重みを車両1の走行路の幅に応じて変化させてもよい。なお、走行路の幅を示す情報は、例えば、ナビゲーション装置81に記憶されている地図データを利用すること等によって取得され得る。具体的には、決定部130は、走行路の幅が狭いほど、現在地点201に近い側の副目標地点205(例えば、副目標地点205a)の重みを重くする。それにより、実際の車両1の走行経路を目標経路9に近づける効果が大きくなる。ここで、走行路の幅が狭いほど車両1が車線から逸脱しやすくなる。ゆえに、各副操舵角θ5の重みを車両1の走行路の幅に応じて変化させることにより、車両1が車線から逸脱することを適切に抑制することができる。
また、例えば、決定部130は、各副操舵角θ5の重みを対向車の有無に応じて変化させてもよい。なお、対向車の有無を示す情報は、例えば、車両1の前方を撮像し、得られる画像に対して画像処理を施すことにより対向車の有無を検出可能なセンサを利用すること等によって取得され得る。具体的には、決定部130は、対向車が存在する場合、対向車が存在しない場合と比べて、現在地点201に近い側の副目標地点205(例えば、副目標地点205a)の重みを重くする。それにより、実際の車両1の走行経路を目標経路9に近づける効果が大きくなる。ここで、対向車が存在する場合、車両1の車線からの逸脱を抑制する必要性が高くなる。ゆえに、各副操舵角θ5の重みを対向車の有無に応じて変化させることにより、車両1が車線から逸脱することを適切に抑制することができる。
また、例えば、決定部130は、各副操舵角θ5の重みを車両1における乗員(具体的には、ドライバを含む乗員)の有無に応じて変化させてもよい。なお、車両1における乗員の有無を示す情報は、例えば、車両1の車室内を撮像し、得られる画像に対して画像処理を施すことにより乗員の有無を検出可能なセンサを利用すること等によって取得され得る。具体的には、決定部130は、乗員が存在しない場合、乗員が存在する場合と比べて、現在地点201に近い側の副目標地点205(例えば、副目標地点205a)の重みを重くする。それにより、実際の車両1の走行経路を目標経路9に近づける効果が大きくなる。ここで、乗員が存在しない場合、車両1の挙動が不安定になることにより乗員に与えられる違和感を低減する必要性がなくなる。ゆえに、各副操舵角θ5の重みを車両1における乗員の有無に応じて変化させることにより、目標経路9に対する走行経路の乖離をより効果的に抑制することができる。
なお、上記では、基準操舵角θ3の調整において、基準操舵角θ3および複数の副操舵角θ5a,θ5b,θ5cを重み付け平均する例を説明したが、決定部130は、基準操舵角θ3を他の方法で調整してもよい。
例えば、決定部130は、基準操舵角θ3および複数の副操舵角θ5a,θ5b,θ5cを単純平均することにより得られる操舵角を目標操舵角θtとして決定してもよい。また、例えば、決定部130は、複数の副操舵角θ5a,θ5b,θ5cのうち最も小さい副操舵角θ5と基準操舵角θ3とを単純平均することにより得られる操舵角を目標操舵角θtとして決定してもよい。また、例えば、決定部130は、複数の副目標地点205a,205b,205cのうち基準円弧303との距離が最も長い副目標地点205と対応する副操舵角θ5と基準操舵角θ3とを単純平均することにより得られる操舵角を目標操舵角θtとして決定してもよい。
<制御装置の効果>
続いて、本発明の実施形態に係る制御装置100の効果について説明する。
本実施形態に係る制御装置100では、決定部130は、車両1の目標経路9上の基準目標地点203と現在地点201とを通り、現在地点201において車両1の現在の進行方向に沿った接線を有する基準円弧303上を車両1に走行させる場合の操舵角である基準操舵角θ3を決定する。また、決定部130は、目標経路9上で基準目標地点203より手前に位置する副目標地点205と現在地点201とを通り、現在地点201において車両1の現在の進行方向に沿った接線を有する副円弧305上を車両1に走行させる場合の操舵角である副操舵角θ5を決定する。そして、決定部130は、副操舵角θ5に応じて基準操舵角θ3を調整することにより得られる操舵角を目標操舵角θtとして決定する。また、制御部120は、車両1の操舵角を目標操舵角θtに制御する。それにより、基準操舵角θ3より小さい操舵角を目標操舵角θtとして決定することができるので、実際の車両1の走行経路を目標経路9に近づけることができる。ゆえに、目標経路9に対する走行経路の乖離を抑制しつつ、車両1を目標経路9に沿って走行させることができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、決定部130は、目標経路9上の複数の副目標地点205にそれぞれ対応する複数の副操舵角θ5を決定し、複数の副操舵角θ5に応じて基準操舵角θ3を調整することが好ましい。それにより、車両1の挙動を適切に安定化させつつ、目標経路9に対する走行経路の乖離を抑制することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、決定部130は、基準操舵角θ3の調整において、基準操舵角θ3および複数の副操舵角θ5を重み付け平均することが好ましい。それにより、複数の副操舵角θ5のうち最小の副操舵角θ5と基準操舵角θ3との間の操舵角に目標操舵角θtを決定することができる。ゆえに、車両1の挙動を適切に安定化させつつ、目標経路9に対する走行経路の乖離を抑制することを適切に実現することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、決定部130は、基準操舵角θ3の調整における複数の副操舵角θ5の各々の重みを、複数の副目標地点205の各々と基準円弧303との距離に応じて変化させることが好ましい。それにより、車両1の挙動を適切に安定化させつつ、目標経路9に対する走行経路の乖離をより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、決定部130は、基準操舵角θ3の調整における複数の副操舵角θ5の各々の重みを、車両1の走行路の摩擦係数に応じて変化させることが好ましい。ここで、上述したように、走行路の摩擦係数が低いほど車両1の挙動は不安定になりやすい。ゆえに、複数の副操舵角θ5の各々の重みを走行路の摩擦係数に応じて変化させることにより、車両1の挙動が不安定になることを適切に抑制することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、決定部130は、基準操舵角θ3の調整における複数の副操舵角θ5の各々の重みを、車両1の走行路の幅に応じて変化させることが好ましい。ここで、上述したように、走行路の幅が狭いほど車両1が車線から逸脱しやすくなる。ゆえに、複数の副操舵角θ5の各々の重みを車両1の走行路の幅に応じて変化させることにより、車両1が車線から逸脱することを適切に抑制することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、決定部130は、基準操舵角θ3の調整における複数の副操舵角θ5の各々の重みを、対向車の有無に応じて変化させることが好ましい。ここで、上述したように、対向車が存在する場合、車両1の車線からの逸脱を抑制する必要性が高くなる。ゆえに、複数の副操舵角θ5の各々の重みを対向車の有無に応じて変化させることにより、車両1が車線から逸脱することを適切に抑制することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、決定部130は、基準操舵角θ3の調整における複数の副操舵角θ5の各々の重みを、車両1における乗員の有無に応じて変化させることが好ましい。ここで、上述したように、乗員が存在しない場合、車両1の挙動が不安定になることにより乗員に与えられる違和感を低減する必要性がなくなる。ゆえに、複数の副操舵角θ5の各々の重みを車両1における乗員の有無に応じて変化させることにより、目標経路9に対する走行経路の乖離をより効果的に抑制することができる。
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
例えば、上記では、図1を参照して、車両1の構成について説明したが、本発明に係る車両の構成は、このような例に限定されない。本発明に係る車両は、例えば、図1に示される車両1に対して一部の構成要素の削除、追加または変更を加えたものであってもよい。例えば、本発明に係る車両は、各車輪に対してそれぞれ駆動用モータが設けられる(つまり、4つの駆動用モータが設けられる)車両であってもよい。また、例えば、本発明に係る車両は、駆動源として駆動用モータに加えてエンジンを備えるハイブリッド車両であってもよい。また、例えば、本発明に係る車両は、駆動源として駆動用モータを備えずに、エンジンのみを備えるエンジン車であってもよい。
また、例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。