JP7332879B2 - チタン板のプレス用金型及びチタン板のプレス成形方法 - Google Patents
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Description
この種のプレート式熱交換器は、波状に成形された複数のプレートが積層されて構成されている。伝熱効率を向上させるため、プレートの表面を凹凸形状にするためのプレス成形を行う。近年、より一層の伝熱効率向上のため、板厚の薄肉化、また表面凹凸形状の複雑化等のニーズにより、前記プレス成形時の局部的なくびれあるいは割れ防止の観点から、より成形性の優れたものが要求されるようになっている。また、チタンは、他の金属に対して凝着しやすい性質を有しており、プレス成形の際にチタン板に焼付痕が発生するおそれがあることから、金型との凝着を防止する必要もある。更には、金型の摩耗を抑制して金型寿命を向上させることも望まれている。
また、ミルボンドで代表される有機系の潤滑皮膜をチタン板の表面に形成させたのち、更に潤滑油を塗布した状態でプレス成形を行う方法もある。しかし、この方法では、ミルボンド溶液を塗布・乾燥させて潤滑皮膜を形成する必要があり、多数の工程が必要になり、生産性が低い。また、ミルボンド等の有機系の潤滑皮膜では、剥離したプレスかすが、プレス加工後の押し込み欠陥となり、加工後の成形品の外観品質を損なう場合がある。
本発明の要旨は以下の通りである。
基材と、前記基材の表面に形成された表面処理皮膜とを備え、
前記基材は、質量%で、
C:1.00~2.30%、
Si:0.10~0.60%、
Mn:0.20~0.80%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Cr:4.80~13.00%を含有し、
残部が鉄及び不純物からなる組成を有する鋼材からなり、
前記表面処理皮膜は、
前記基材上に形成された、Niを含有する第1めっき層を備え、
前記第1めっき層は、P:3.0~7.0質量%、B:0.5~3.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなるNi-P-Bめっき層に、0.5~3質量%のh-BN粒子が含有されてなり、ビッカース硬さが700~1100の範囲であり、
前記表面処理皮膜は、更に、前記第1めっき層と前記基材との間に、Niを含有する第2めっき層を備え、
前記第2めっき層は、P:3.0~10.0質量%、B:0.5~3.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなり、ビッカース硬さが700~800のNi-B-Pめっき層であることを特徴とする
チタン板のプレス用金型。
(2) 前記第1めっき層のビッカース硬さが800超~1100の範囲である(1)に記載のチタン板のプレス用金型。
(3) 前記第1めっき層のビッカース硬さが700~800の範囲である(1)に記載のチタン板のプレス用金型。
(4) 前記基材と、前記第1めっき層または前記第2めっき層との間に、厚み0.1~1μmの電気Niめっき層が形成されている(1)乃至(3)の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
(5) 前記第1めっき層の厚みが1~10μmの範囲である(1)乃至(4)の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
(6) 前記第2めっき層の厚みが1~2μmの範囲である(1)乃至(5)の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
(7) 前記基材のビッカース硬さが550~650である(1)乃至(6)の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
(8) 前記基材の表面に窒化層が形成されている、(1)乃至(7)の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
(9) 前記窒化層の厚さが0.5μm~50μmである、(8)に記載のチタン板のプレス用金型。
(10) 前記窒化層の平均窒素濃度が、0.10~1.0質量%である、(8)または(9)に記載のチタン板のプレス用金型。
(11) 前記窒化層における窒素の濃度分布が、前記窒化層表層から深さ方向に向かって減少する濃度勾配を有する、(8)乃至(10)の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
(12) 前記基材が、さらに、質量%で、
Mo:0.70~1.20%、
V:0.15~1.00%、
W:0.60~0.80%
の1種または2種以上を含有する、(1)乃至(11)の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
(13) 前記基材がパンチ及びダイである、(1)乃至(12)の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
(14) (1)~(13)の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型を用いて、チタン板をプレス成形する、チタン板のプレス成形方法。
(15) 前記チタン板をプレス成形する際、チタン板の変形状態として平面ひずみ状態を含む、(14)に記載のチタン板のプレス成形方法。
なお、本実施形態は、本発明のチタン板用のプレス金型及びチタン板のプレス成形方法の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り本発明を限定するものではない。
図1及び図2に示すように、プレート式熱交換器は、波状に成形されたプレートが板厚方向に重ね合わされて構成されている。波状のプレートが重ねられることによって、各プレートの間に流体が流通する流路が形成される。各流路に高温の流体及び低温の流体が流れることにより、プレートを介して各流体の間で熱交換が行われる。プレートは、耐食性に優れるチタン板で構成されている。
α型チタン合金としては、例えば高耐食性合金(ASTM Grade 7、11、16、26、13、30、33あるいはこれらに対応するJIS種や更に種々の元素を少量含有させたチタン材)、Ti-0.5Cu、Ti-1.0Cu、Ti-1.0Cu-0.5Nb、Ti-1.0Cu-1.0Sn-0.3Si-0.25Nb、Ti-0.5Al-0.45Si、Ti-0.9Al-0.35Si、Ti-3Al-2.5V、Ti-5Al-2.5Sn、Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo、Ti-6Al-2.75Sn-4Zr-0.4Mo-0.45Siなどがある。
第1めっき層は、P:3.0~7.0質量%、B:0.5~3質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなるNi-P-Bめっき層に、0.5~3質量%のh-BN粒子が含有されてなる。第1めっき層のビッカース硬さは700~1100の範囲である。
第1めっき層の厚みは、1~10μmの範囲であってもよい。また、第2めっき層の厚みは、1~2μmの範囲であってもよい。
第2めっき層は、B:0.3~3.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなり、ビッカース硬さが700~820のNi-Bめっき層であってもよい。
また、第2めっき層は、B:0.3~3.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなり、ビッカース硬さが900~1100のNi-Bめっき層であってもよい。
また、第2めっき層は、P:3.0~10.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなり、ビッカース硬さが700~1100のNi-P層めっきであってもよい。
また、第2めっき層は、P:3.0~10.0質量%、B:0.5~3.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなり、ビッカース硬さが900~1100のNi-B-Pめっき層であってもよい。
また、第2めっき層は、P:3.0~10.0質量%、B:0.5~3.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなり、ビッカース硬さが700~800のNi-B-Pめっき層であってもよい。
基材に窒化層を形成する場合の窒化層の厚さは、0.5μm~50μmであってもよい。
窒化層の平均窒素濃度は0.10~1.0質量%であってもよい。窒化層における窒素の濃度分布は、窒化層表層から深さ方向に向かって減少する濃度勾配を有していてもよい。
まず、本実施形態の基材の成分組成に関し、各元素の限定理由について詳述する。なお、以下の説明においては、特に指定の無い限り、「%」は質量%を表すものとする。また、以下に示す基本成分及び選択元素の残部は、鉄及び不純物からなる。
Cは、炭化物の形成および基材の硬さの確保に必要な元素である。また、Cr、Mo、V等と結合して硬い炭化物を形成するので、焼入れ焼き戻し硬さを高め、耐摩耗性を構成させる元素として重要である。そのため、本実施形態ではCを1.00%以上含有させる。硬さの確保の観点から、1.40%以上含有させることが好ましい。
一方、C含有量が2.30%を超えると、靱性を著しく劣化させる。そこで、本実施形態では、C含有量は2.30%以下と限定する。なお、靭性確保の観点から、C含有量の上限は、2.20%であることが好ましく、2.00%以下であることがさらに好ましい。
Siは、脱酸剤として含有される。また、Siは、高温焼戻し中の軟化抵抗性を高める作用があるため含有される。これらの観点から、Siは0.10%以上含有させる。一方、Si含有量が0.60%を超えると、熱間加工性や靱性を低下させるほか、非金属介在物が増加するおそれがある。そのため、Si含有量は0.60%以下とする。なお、基材の靭性確保の観点から、Si含有量の上限は0.50%であることが好ましい。
Mnは、Siと同様に脱酸効果のある元素であり、焼入れ性を向上させると同時に、残留オーステナイトを増加させる元素である。この観点から、Mnは0.20%以上含有させる。なお、基材の硬度確保の観点から、0.30以上含有させることが好ましい。なお、靭性とのバランスを考慮し、本実施形態ではMn量の上限を0.80%以下とする。好ましくは、0.60%以下である。
(S:硫黄) 0.030%以下
P,Sともに、鋼中に存在しない方が好ましい不純物元素である。このことから、P,Sともに、その含有量を0.030%以下に制限する。好ましくは、0.020%以下に制限する。
Crは、Cと結合して炭化物を形成することにより、基材の耐摩耗性を向上させる需要な元素である。Cr量は4.80%以上とし、好ましくは8.00%以上、さらに好ましくは11.00%以上とする。一方、Crを過剰に含有させると、粗大な炭化物の生成によって靭性が劣化するおそれがあるので、Cr量の上限を13.00%以下とする。なお、好ましくは12.50%以下である。
Moは、焼戻し軟化抵抗性を向上させるとともに、炭化物の形成により基材に耐摩耗性を付与する効果も有する。これらの観点から、Moは0.70%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.80%以上である。
一方、Moを過剰に含有すると基材の靱性を劣化させるおそれがある。このことから、Moは1.20%以下含有させることが好ましく、より好ましくは1.10%以下である。
Vは、基材の焼入れ性向上、焼戻し軟化抑制さらには炭化物の微細化に有効である。そのため、Vは0.15%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.20%以上である。
一方、Vを過剰に含有すると、冷間加工性を阻害するおそれがあるため、Vは1.00%以下含有させることが好ましく、より好ましくは0.50%以下である。
Wは、Vと同様に、基材の焼入れ性向上、焼戻し軟化抑制さらには炭化物の微細化に有効である。そのため、Wは0.60%以上含有させることが好ましい。一方、Wを過剰に含有すると、冷間加工性を阻害するおそれがあるため、Wは0.80%以下含有させることが好ましい。
上記成分組成を有するような基材の硬度は、ビッカース硬さで約550~650程度である。つまり、上記基材上に皮膜等を形成せず、基材ままの状態でチタン板をプレス成形した場合、基材自体の硬度は確保できていることから耐摩耗性に関しては比較的良好な結果が得られるが、耐凝着性に関しては、チタン板の材料が基材に焼付いてしまう場合があり、プレス用金型に多数の疵が生じてしまうおそれがある。
これらのことから、第2めっき層の厚みは1μm~2μmにすることが好ましい。第2めっき層の厚みの好ましい範囲は1.2~1.8μmである。
基材と表面処理皮膜との密着性を高めるためには、窒化層の厚みを0.5μm以上確保することが好ましい。より好ましくは1μm以上である。一方、窒化層の厚みを過度に厚くしすぎることは、プラズマ窒化処理に要する時間が長くなり生産性を低下させるほか、製造コストも高くなる。また、窒化層の厚みを過度に厚くすると、基材の表面粗度が大きくなってしまい、表面処理皮膜の成膜前に基材表面を研磨する必要が生じる。これらの観点から、窒化層の厚みは50μm以下とすることが好ましい。
窒化層中の窒素濃度が低すぎると、強度向上の効果が小さく、十分な耐摩耗性が得られないおそれがあるため、窒化層中の平均窒素濃度は0.10質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは、0.20%以上である。
一方、窒化層中の窒素濃度が高すぎると、窒化層表面が脆化する傾向となりやすく、割れが生じるおそれがある。このことから、窒化層中の平均窒素濃度は1.0質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.40%以下である。
基材内部で強度格差が生じることは、表面処理皮膜と基材との密着性、及び強度の観点から好ましくない。従って、基材内部の強度の格差、すなわち基材の深さ方向に沿った強度勾配は緩やかにすることが好ましい。そのためには、窒化層内の窒素の濃度分布を、窒化層表層から基材側に向かって減少するような濃度勾配となるよう制御することが好ましい。
電気Niめっき層を形成することで、基材表面の不動態被膜を除去でき、基材に対する表面処理皮膜の密着性をより高めることができる。
第2めっき層は、無電解めっき法により形成する。めっき浴は、次の3つのうちのいずれかのめっき浴がよい。すなわち、Pを3.0~10.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなるNi-Pめっき層を形成可能なめっき浴か、Bを0.3~3.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなるNi-Bめっき層を形成可能なめっき浴か、または、Pを3.0~10.0質量%、Bを0.3~3.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなるNi-B-Pめっき層を形成可能なめっき浴とする。
第1めっき層は、無電解めっき法により形成する。第2めっき層を形成した場合は、第2めっき層の上に第1めっき層を形成することが好ましい。また、第2めっき層を形成しない場合は、基材上に第1めっき層を形成することが好ましい。
まず、プレス用金型のダイ及びパンチの基材としてJIS G 4404にて規定されている工具鋼SKD11(C,Si,Mn,Cr,Mo,V,P,S,残部鉄及び不純物を本発明の範囲で含む鋼)を採用し、所定の形状に成形後、焼入れ及び焼戻し処理を行った。次に、電気めっき法により厚さ0.2μmのNi電気めっき層を形成した。
プレス用金型のダイ及びパンチの基材としてJIS G 4404にて規定されている工具鋼SKD11(C,Si,Mn,Cr,Mo,V,P,S,残部鉄及び不純物を本発明の範囲で含む鋼)を採用し、焼入れ及び焼戻し処理を行った。次に、電気めっき法により厚さ0.2μmのNi電気めっき層を形成した。
プレス用金型のダイ及びパンチの基材としてJIS G 4404にて規定されている工具鋼SKD11(C,Si,Mn,Cr,Mo,V,P,S,残部鉄及び不純物を本発明の範囲で含む鋼)を採用し、焼入れ及び焼戻し処理を行った。次に、電気めっき法により厚さ0.2μmのNi電気めっき層を形成した。
プレス用金型のダイ及びパンチの基材としてJIS G 4404にて規定されている工具鋼SKD11(C,Si,Mn,Cr,Mo,V,P,S,残部鉄及び不純物を本発明の範囲で含む鋼)を採用し、焼入れ及び焼戻し処理を行った。
プレス用金型のダイ及びパンチの基材としてJIS G 4404にて規定されている工具鋼SKD11(C,Si,Mn,Cr,Mo,V,P,S,残部鉄及び不純物を本発明の範囲で含む鋼)を採用し、焼入れ及び焼戻し処理を行った。次に、プラズマ窒化処理により表面に窒化層を形成した後、電気めっき法により厚さ0.2μmのNi電気めっき層を形成した。
第1めっき層として、P及びBを含むNi-B-Pめっき層からなる第1めっき層を形成した以外は、比較例1、2と同様にして、比較例3、4の成形ロールを製造した。比較例4について、熱処理温度300℃、熱処理時間1時間の条件で熱処理を行った。比較例3は熱処理を行わなかった。
プレス用金型のダイ及びパンチの基材としてJIS G 4404にて規定されている工具鋼SKD11(C,Si,Mn,Cr,Mo,V,P,S,残部鉄及び不純物を本発明の範囲で含む鋼)を採用し、焼入れ及び焼戻し処理を行った。次に、プラズマ窒化処理により表面に窒化層を形成した後、電気めっき法により厚さ0.2μmのNi電気めっき層を形成した。
(成形性)
実施例1~10及び比較例1~5のダイ及びパンチを用いて、チタン板をプレス成形することにより、プレス成形性を評価した。
図7に、試験に用いたプレス用金型の断面模式図を示す。図7に示すプレス用金型は、パンチ21と、ダイ22と、しわ押さえパッド23とから構成された。パンチ21には、3つの突起部21aを等間隔に設けた。また、ダイ22には2つの突起部22a、22aを設けた。ダイ21及びパンチ22における突起部先端は、断面視した場合に曲率半径3.0mmの曲面とされた。パンチ21の突起部21a及びダイ22の突起部22aは、パンチ21が下死点に下降したときに各突起部21a、22a同士の隙間が1.5mmになるように位置決めされた。パンチ21の図中幅方向の寸法は36mmであり、パンチ21及びダイ22のそれぞれの突起部の高さは10mmであった。ダイ22の外周部の上方には、しわ押さえパッド23を配置した。ダイ22には、パンチ21を囲むように材料の流入防止ビード22bを設けた。これにより、成形加工を受けたチタン板は、平面ひずみ状態となる。
チタン板は、JIS1種のチタンからなるチタン板を用いた。実施例1~10のプレス用金型を用いた場合は、チタン板に防錆油(商品名:ノックスラスト、パーカー興産株式会社製)のみを潤滑剤として塗布し、プレス成形した。また、比較例1~5のプレス用金型を用いた場合は、ミルボンドによって表面処理したチタン板に、実施例1~10と同じ潤滑剤を塗布して、プレス成形した。プレス成形によって、チタン板を図2に示すような波形状に成形加工した。このとき、波の振幅が狙い値で2.5mmになるようにポンチ21を押し込んだ。
板厚の最小値は、実施例1で0.38mm、比較例1で0.37mmとなり、両者に大きな差はなかった。
このように、実施例1~10のプレス用金型を用いてプレス成形したチタン板は、ミルボンドの処理を行わないものであったが、比較例1~5と同様に割れを生じさせることなく、狙い通りの形状に成形が可能となった。
また、JIS Z 2247に規定するエリクセン試験のパンチに本発明の金型を適用して耐久試験を行った。すなわち、パンチの基材の形状をJIS Z 2247に規定された形状にしたこと以外は上記実施例1~10と同様にして、エリクセン試験用のパンチを製造した。そして、厚み0.5mmのJIS1種のチタン板を試験片とし、試験片に貫通割れが発生するまでパンチを押し込んだ。これを200回繰り返した。その結果、実施例1~10のパンチは、パンチの表面に形成された第1めっき層の膜厚がやや薄くなったものの、第1めっき層そのものが剥がれることがなく、耐久性は良好だった。一方、比較例1~5のパンチは、第1めっき層の摩耗が激しく、プレス割れや焼付痕が発生した。
図8には、横軸をプレスの成形時の押し込み量とし、縦軸を荷重とした場合の、押し込み量と荷重との関係を示すグラフである。
Claims (15)
- チタン板のプレス成形加工に用いるプレス用金型であって、
基材と、前記基材の表面に形成された表面処理皮膜とを備え、
前記基材は、質量%で、
C:1.00~2.30%、
Si:0.10~0.60%、
Mn:0.20~0.80%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Cr:4.80~13.00%を含有し、
残部が鉄及び不純物からなる組成を有する鋼材からなり、
前記表面処理皮膜は、
前記基材上に形成された、Niを含有する第1めっき層を備え、
前記第1めっき層は、P:3.0~7.0質量%、B:0.5~3.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなるNi-P-Bめっき層に、0.5~3質量%のh-BN粒子が含有されてなり、ビッカース硬さが700~1100の範囲であり、
前記表面処理皮膜は、更に、前記第1めっき層と前記基材との間に、Niを含有する第2めっき層を備え、
前記第2めっき層は、P:3.0~10.0質量%、B:0.5~3.0質量%を含有し、残部がNi及び不純物からなり、ビッカース硬さが700~800のNi-B-Pめっき層であることを特徴とする
チタン板のプレス用金型。 - 前記第1めっき層のビッカース硬さが800超~1100の範囲である請求項1に記載のチタン板のプレス用金型。
- 前記第1めっき層のビッカース硬さが700~800の範囲である請求項1に記載のチタン板のプレス用金型。
- 前記基材と、前記第1めっき層または前記第2めっき層との間に、厚み0.1~1μmの電気Niめっき層が形成されている請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
- 前記第1めっき層の厚みが1~10μmの範囲である請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
- 前記第2めっき層の厚みが1~2μmの範囲である請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
- 前記基材のビッカース硬さが550~650である請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
- 前記基材の表面に窒化層が形成されている、請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
- 前記窒化層の厚さが0.5μm~50μmである、請求項8に記載のチタン板のプレス用金型。
- 前記窒化層の平均窒素濃度が、0.10~1.0質量%である、請求項8または請求項9に記載のチタン板のプレス用金型。
- 前記窒化層における窒素の濃度分布が、前記窒化層表層から深さ方向に向かって減少する濃度勾配を有する、請求項8乃至請求項10の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
- 前記基材が、さらに、質量%で、
Mo:0.70~1.20%、
V:0.15~1.00%、
W:0.60~0.80%
の1種または2種以上を含有する、請求項1乃至請求項11の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。 - 前記基材がパンチ及びダイである、請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型。
- 請求項1~13の何れか一項に記載のチタン板のプレス用金型を用いて、チタン板をプレス成形する、チタン板のプレス成形方法。
- 前記チタン板をプレス成形する際、チタン板の変形状態として平面ひずみ状態を含む、請求項14に記載のチタン板のプレス成形方法。
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