以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る信号処理システムの概略を示した図である。図1に示すように、信号処理システムは、発信機1、導電性繊維を織りこんだ布2、複数個のセンサユニット3、受信機4を備える。発信機1は、導電部である繊維22により受信機4と電気的に接続される。複数個のセンサユニット3も、それぞれが繊維22により電気的に接続される。
発信機1は、発振周波数f0の搬送波N1を生成する。搬送波N1は、音声、映像、データ等の個別の情報を重畳させて伝送するための信号である。実施形態では、搬送波N1は、複数のセンサユニット3のそれぞれから出力された出力波DP(搬送波を変調する信号)を重畳させて繊維2を伝送する。
発信機1は、生成した搬送波N1を抵抗R0を介して繊維22に発信する。また、発信機1は、生成した搬送波N1を受信機4に発信する。なお、搬送波N1は、説明の都合上矩形波であるとして説明する。
布2は、繊維21と繊維22で形成される。繊維21は、例えばポリエステル等の繊維で形成される。繊維22は、金属状の糸等の電気を通す導電性繊維である。布2は、繊維21と繊維22が、それぞれ格子状に織り込んで形成される。図1において、横に織り込まれた繊維22Aと、縦に織り込まれた繊維22Bは、交点22Pにおいて互いに接触している。そのため、繊維22Aと繊維22Bは、互いに導通しており、電気的に繋がっている。発信機1は、繊維22Aのうちの一つである繊維22A1と電気的に接続している。また、受信機4は、繊維22Aのうちの一つである繊維22A3と電気的に接続している。すなわち、発信機1と受信機4は、1本の導電体で接続されているに等しい。なお、繊維22は、導電性を有する物体であれば、金属以外の物体であってもよいし、導電性を有する物体が混入された物体であってもよい。なお、実施形態では、繊維22は、布2の表側と裏側の両側に露出するように折り込まれている。
複数個のセンサユニット3は、それぞれ繊維22に接続されている。実施形態では、センサユニット3-1、センサユニット3-2、…、センサユニット3-NのN個のセンサユニット3がそれぞれ繊維22に接続される。具体的には、センサユニット3-1は繊維22B1と電気的に接続される。センサユニット3-2は繊維22B2と電気的に接続される。センサユニット3-Nは繊維22BNと接続される。センサユニット3-1~センサユニット3-Nは、どの繊維22と接続されていてもよい。なお、以降センサユニット3-1~センサユニット3-Nを総称する場合はセンサユニット3という。すなわち、発信機1とセンサユニット3は、1本の導電体で接続されているに等しい。また、受信機4とセンサユニット3は、1本の導電体で接続されているに等しい。なお、センサ3Aは、センサユニット3とセンサ素子51とを合わせたものである。
センサユニット3は、発振部31、整流部32、変調用トランジスタ33を備える。また、センサユニット3は、センサ素子51を接続する。センサ素子51は、抵抗性または容量性の素子である。センサ素子51は、例えば周囲の温度、湿度、輝度等の検知対象の状態を検知する。また、センサ素子51は、例えば人の心拍を検知する。また、センサ素子51は、例えば荷重を検知する。センサ素子51は、検知対象の状態を検知した場合と検知していない場合とで、内部抵抗の抵抗値が異なる。また、センサ素子51は、検知した検知対象の状態の変化に応じて内部抵抗の抵抗値が変化する。例えば、センサ素子51が検知した検知対象が温度である場合、検知した温度が10度である場合と30度である場合とで内部抵抗の抵抗値が異なる。そのため、センサ素子51は、検知対象の状態に応じた出力となる。
発振部31は、内部に抵抗31R、コンデンサ31C、増幅器等を備える。発振部31は、抵抗31Rの抵抗値と、コンデンサ31Cの容量と、センサ素子51の内部抵抗に応じた固有の周波数で発振する。そして、各センサユニット3に内蔵された発振部31は、それぞれ異なる周波数で発振する。
整流部32は、繊維22内を伝導する搬送波N1を入力して整流および平滑し、直流電圧を生成して端子34に印加する。整流部32が印加した直流電圧は、発振部31等の駆動電源、すなわちセンサユニット3が駆動するための電源となる。
変調用トランジスタ33は、例えばCMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor)型トランジスタで構成される。変調用トランジスタ33は、発振部31から発信される発振波DRがゲートに入力される。すなわち、変調用トランジスタ33は、発振部31から発信される発振波DRに応じてオン、オフの動作を行う。換言すると、変調用トランジスタ33は、発振部31から出力される発振波DRの発振周波数に応動してオン、オフを繰り返すスイッチとして機能する。この変調用トランジスタ33がオン、オフする周波数は、搬送波N1の発振周波数より低い。また、センサユニット3-1における変調用トランジスタ33がオン、オフする周波数、センサユニット3-2における変調用トランジスタ33がオン、オフする周波数、…、センサユニット3-Nにおける変調用トランジスタ33がオン、オフする周波数は、互いにすべて異なる周波数となるよう、発振部31における抵抗31Rの抵抗値とコンデンサ31Cの容量が調整されている。
変調用トランジスタ33がオフ状態の場合には、繊維22を伝導する搬送波N1は発信機1が生成した搬送波N1の振幅を維持する。しかしながら、変調用トランジスタ33がオン状態の場合には、繊維22を伝導する搬送波N1は、発信機1が生成した振幅から変化する。すなわち、変調用トランジスタ33がオン状態の場合には、繊維22を伝導する搬送波N1の振幅は、変調用トランジスタ33によって搬送波N1の振幅より小さく変調される。これを振幅変調という。すなわち、変調用トランジスタ33は、搬送波N1を変調した変調波N2を生成させる。
また、例えば、センサユニット3-1の変調用トランジスタ33のみがオン状態の場合は、センサユニット3-1は繊維22B1と接続されているため、繊維22を伝送される搬送波N1は、センサユニット3-1の変調用トランジスタ33によって変調される。また、センサユニット3-1の変調用トランジスタ33に加えてセンサユニット3-2の変調用トランジスタ33もオン状態の場合には、繊維22を伝送される搬送波N1は、センサユニット3-1の変調用トランジスタ33およびセンサユニット3-2の変調用トランジスタ33によって変調される。センサユニット3-1の変調用トランジスタ33およびセンサユニット3-2の変調用トランジスタ33によって変調された変調波N2は、センサユニット3-1の変調用トランジスタ33によって変調された変調波N2より大きく変調される。すなわち、センサユニット3-1の変調用トランジスタ33およびセンサユニット3-2の変調用トランジスタ33によって変調された変調波N2の振幅は、センサユニット3-1の変調用トランジスタ33によって変調された変調波N2の振幅より小さい。換言すると、同時にオン状態となる変調用トランジスタ33の数が多くなるほど、搬送波N1はより振幅が小さくなるように変調される。
受信機4は、変調波N2を復調して復調波SG(センサごとの信号)を取り出す。復調とは、変調波N2に重畳された低周波の信号を取り出すことをいう。実施形態では、高周波の搬送波N1に、発振波DRに基づいてオン、オフされた変調用トランジスタ33から出力される低周波の出力波DPが重畳されて変調された変調波N2から、発振部31から発信された発振波DRに相当する復調波SGを取り出すことを復調いう。なお、出力波DPは、発振波DRに基づいて変調用トランジスタ33がオン、オフしたときの変調用トランジスタ33のドレイン端子から繊維22に出力される信号であり、発振波DRと同一の発振周波数を有する。
受信機4は、包括線検波機41、ローパスフィルタ(以降「LPF」と省略する)42、複数個のバンドパスフィルタ(以降「BPF」と省略する)43を備える。複数個のBPF43は、それぞれ異なる周波数帯域の情報のみを取り出す。包括線検波機41の出力はLPF42と電気的に接続される。また、LPF42の出力は複数のBPF43と電気的に接続される。
包括線検波機41は、公知の回路構成であり、入力された変調波N2から当該変調波N2の包括線波Pを抽出する。包括線検波機41は、発信機1および繊維22と接続される。包括線検波機41は、発信機1から搬送波N1を入力する。また、包括線検波機41は、繊維22A3から変調波N2を入力する。包括線検波機41は、入力された変調波N2に基づいて、当該変調波N2に係る包括線波Pを抽出する。
抽出された包括線波Pは周波数f0が2倍化された高周波成分を含む。LPF42は、包括線検波機41から出力された包括線波Pを入力する。LPF42は、入力された包括線波Pから周波数がf0の2倍の高周波成分を取り除く。
複数のBPF43は、変調波N2を復調して、変調波N2からそれぞれ異なる周波数帯域の復調波SGを取り出す。複数のBPF43は、それぞれ、センサユニット3-1で生成される発振波DR1に対応した復調波SG1のみを取り出すBPF、センサユニット3-2で生成される発振波DR2に対応した復調波SG2のみを取り出すBPF、・・・、センサユニット3-Nで生成される発振波DRNに対応した復調波SGNのみを取り出すBPFの、計N個のBPFである。
ここからは、発信機1が生成した搬送波N1を繊維22に発信し、発信された搬送波N1が複数のセンサユニット3(具体的には変調用トランジスタ33)から出力される出力波DPに基づいて変調(振幅変調)され、受信機4が変調された変調波N2を復調するまでの工程について説明する。図2は、発信機1、センサユニット3、繊維22、受信機4でそれぞれ出力される信号を示すタイミングチャートである。なお、図2では、センサユニット3-1とセンサユニット3-2の2個のセンサユニット3から出力波DPが出力されるとして以降説明する。
発信機1は、所定の発振周波数の搬送波N1を繊維22に発信する。搬送波N1の発振周波数はf0である。また、センサユニット3-1の発振部31は、発振波DR1(端子35における波形)を生成する。発振波DR1の発振周波数はf1であり、搬送波N1の発振周波数f0より低い。また、センサユニット3-2の発振部31からは、発振波DR2(端子35における波形)を生成する。発振波DR2の発振周波数はf2であり、発振周波数f0および発振周波数f1より低い。すなわち、発振周波数f0>発振周波数f1>発振周波数f2である。次に、複数のセンサユニット3がそれぞれ生成した発振波DRに基づく出力波DPをそれぞれ繊維22に出力して搬送波N1に重畳させた変調波N2を生成する。以下、具体的に説明する。
センサユニット3-1の変調用トランジスタ33およびセンサユニット3-2の変調用トランジスタ33がいずれもオフの場合は、繊維22を伝導する搬送波N1は変調されない。時刻t1になると、センサユニット3-1で生成された発振波DR1に基づいて搬送波N1を変調する。すなわち、時刻t1になると、発振波DR1に基づいてセンサユニット3-1の変調用トランジスタ33がオン状態となる。すると、センサユニット3-1から発振波DR1に対応した出力波DP1がローレベル(以降「Lレベル」という)で繊維22に出力され、搬送波N1は振幅が減少するように変調される。続いて時刻t2になると、センサユニット3-2で生成された発振波DR2に基づいて、変調された搬送波N1をさらに変調する。すなわち、時刻t2になると、発振波DR2に基づいてセンサユニット3-2の変調用トランジスタ33がオン状態となる。すると、センサユニット3-2から発振波DR2に対応した出力波DP2がLレベルで出力され、搬送波N1はさらに振幅が減少し、振幅が最小となるように変調される。
次に時刻t3になると、センサユニット3-1で生成された発振波DR1に基づいて変調された搬送波N1を変調する。すなわち、時刻t3になると、発振波DR1に基づいてセンサユニット3-1の変調用トランジスタ33がオフ状態となる。すると、センサユニット3-1から発振波DR1に対応した出力波DP1がハイレベル(以降「Hレベル」という)で出力され、センサユニット3-1による搬送波N1の変調は解除され、搬送波N1は、振幅が最小の状態から振幅が減少状態にもどるように変調される。次に時刻t4になると、センサユニット3-1で生成された発振波DR1に基づいて搬送波N1を変調する。すなわち、時刻t4になると、発振波DR1に基づいてセンサユニット3-1の変調用トランジスタ33が再びオン状態となる。すると、センサユニット3-1から発振波DR1に対応した出力波DP1がLレベルで出力され、搬送波N1はさらに振幅が減少する(振幅が最小となる)ように変調される。次に時刻t5になると、センサユニット3-1で生成された発振波DR1に基づいて搬送波N1を変調する。すなわち、時刻t5になると、発振波DR1に基づいてセンサユニット3-1の変調用トランジスタ33が再びオフ状態となる。すると、センサユニット3-1から発振波DR1に対応した信号の出力がHレベルで出力され、センサユニット3-1による搬送波N1の変調は解除され、振幅が減少状態にもどる。
次に時刻t6になると、センサユニット3-2で生成された発振波DR2に基づいて搬送波N1を変調する。すなわち、時刻t6になると、発振波DR2に基づいてセンサユニット3-2の変調用トランジスタ33がオフ状態となる。すると、センサユニット3-2から発振波DR2に対応した信号の出力がHレベルで出力され、センサユニット3-2による搬送波N1の変調は解除される。
次に、時刻t7になると、センサユニット3-1で生成された発振波DR1に基づいて搬送波N1を変調する。すなわち、時刻t7になると、発振波DR1に基づいてセンサユニット3-1の変調用トランジスタ33がオン状態となる。すると、センサユニット3-1から発振波DR1に対応した信号がLレベルで出力され、搬送波N1は振幅が減少する(振幅が減少する)ように変調される。次に時刻t8になると、センサユニット3-1で生成された発振波DR1に基づいて搬送波N1を変調する。すなわち、時刻t8になると、センサユニット3-1で生成された発振波DR1に基づいて搬送波N1を変調する。具体的には、時刻t8になると、発振波DR1に基づいてセンサユニット3-1の変調用トランジスタ33がオフ状態となる。すると、センサユニット3-1から発振波DR1に対応した信号の出力がHレベルで出力され、センサユニット3-1による搬送波N1の変調は解除される。
時刻t9以降は、センサユニット3-1およびセンサユニット3-2は、時刻t1~時刻t8の動作を繰り返す。このようなセンサユニット3-1およびセンサユニット3-2の動作に伴って搬送波N1が変調された信号が変調波N2である。変調波N2は、受信機4の包括線検波機41に入力される信号である。
受信機4は、繊維22から入力された変調波N2(変調された搬送波N1)を復調して復調波SGを取り出す。すなわち、包括線検波機41は、変調波N2を包括線検波して包括線波Pを生成する。包括線波Pは、変調波N2の振幅が減少すると立ち下がり、変調波N2の振幅が増加すると立ち上がる波形である。この包括線波Pには、周波数がf0の2倍の高周波成分が重畳されている。続いて、LPF42によって包括線波Pに重畳されている高周波成分を取り除き、BPF43によって復調波SG1と復調波SG2を取り出す。
復調波SG1は、センサユニット3-1に対応したBPF43から取り出される。復調波SG1は、包括線波Pが立ち上がった後の最初の立ち下りで立ち下り、包括線波Pが立ち下がった後の最初の立ち上がりで立ち上がる波形である。復調波SG1は、発振波DR1の波形を上下反転させた、発振波DR1と同一周波数(f1)の波形である。
復調波SG2は、センサユニット3-2に対応したBPF43から取り出される。復調波SG2は、包括線波Pの連続する2回目の立ち下りで立ち下り、包括線波Pの連続する2回目の立ち上がりで立ち上がる波形である。復調波SG2は、発振波DR2の波形を上下反転させた、発振波DR2と同一周波数(f2)の波形である。
このように、実施形態では、発信機1が繊維22に搬送波N1を発信し、複数のセンサで生成された発振波DRに基づく出力波DPを繊維22に出力して、繊維22に伝導された搬送波N1を変調波N2に変調し、受信機4が、変調波N2を復調して復調波SGを取り出す。そのため、発信機1および受信機4と複数のセンサユニット3とをいずれも繊維22で接続すればよく、発信機および受信機と複数のセンサとの接続が煩雑になることはない。
続いて、変調用トランジスタ33のオン、オフに伴って搬送波N1が変調波N2に変調される原理について説明する。図3は、変調用トランジスタ33のオン、オフを示す図である。なお、発信機1と繊維22の間には抵抗R0を挿入し、変調用トランジスタ33は、ドレイン端子(端子36)が繊維22と電気的に接続され、変調用トランジスタ33とグラウンドレベルとの間には抵抗RLが挿入されている。
図3(a)は、変調用トランジスタ33がオンしている状態を示す。端子35にHレベルの発振波DRが出力される(すなわち、変調用トランジスタ33のゲート端子にHレベルの発振波DRが入力される)と、変調用トランジスタ33はオン状態となる。変調用トランジスタ33がオン状態となると、変調用トランジスタ33のドレイン端子-ソース端子間が導通して電流が流れ、変調用トランジスタ33のドレイン端子は、電位が低い出力波DPを繊維22に出力する。
図3(b)は、変調用トランジスタ33がオフしている状態を示す。端子35にLレベルの発振波が出力される(すなわち、変調用トランジスタ33のゲート端子にLレベルの発振波が入力される)と、変調用トランジスタ33はオフ状態となる。変調用トランジスタ33がオフ状態となると、変調用トランジスタ33のドレイン端子-ソース端子間に流れる電流が遮断され、変調用トランジスタ33のドレイン端子は、電位が高い出力波DPを繊維22に出力する。
図4は、センサユニット3-1において、発振波DR1に基づいて、変調用トランジスタ33のドレイン端子から繊維22に出力された出力波DPによって、搬送波N1を変調した変調波N2を示すタイミングチャートである。発振波DR1が図4のように発振した場合の搬送波N1の変調波N2への変化について説明する。発振波DR1がLレベルの状態(すなわち、時刻t22-時刻t23、時刻t24-時刻t25、時刻t26-時刻t27、時刻t28-時刻t29、時刻t30-時刻t31の間)では、変調用トランジスタ33がオフしている。この状態での変調波N2の振幅は、搬送波N1の振幅と同じ振幅である。これに対して、発振波DR1がHレベルの状態(すなわち、時刻t21-時刻t22、時刻t23-時刻t24、時刻t25-時刻t26、時刻t27-時刻t28、時刻t29-時刻t30、時刻t31-時刻t32の間)では、変調用トランジスタ33がオンしている。この状態では、変調波N2の振幅は、変調波N2の振幅=搬送波N1の振幅・抵抗RLの抵抗値/(抵抗R0の抵抗値+抵抗RLの抵抗値)に従い減少する。
図4には示していないが、図4の変調波N2に対して、さらにセンサユニット3-2における発振波DR2に基づく出力波DP2が出力された場合は、図4に示す搬送波N1はさらに変調され、搬送波N1の振幅は、上式に基づいてさらに減少する。
図5は、受信機4が受信し、包括線検波した包括線波Pから復調波SGを取り出すまでの各信号をスペクトル解析した図である。図5(a)は、搬送波N1をスペクトル解析した図である。図5(a)に示すように、搬送波N1は、横軸における周波数f0の位置に、縦軸方向に搬送波N1の振幅の大きさ分の長さの矢印で表される。また、図5(b)は、搬送波N1に加え、センサユニット3-1から出力される出力波DP1とセンサユニット3-2から出力される出力波DP2をスペクトル解析した図である。出力波DP1の波形は、図5(b)に示すように、搬送波N1のスペクトル波形を中心として、搬送波N1の波形から出力波DP1の周波数f1分両側に離れた位置に表わされる。出力波DP2の波形は、図5(b)に示すように、搬送波N1のスペクトル波形を中心として、搬送波N1の波形から出力波DP2の周波数f2分両側に離れた位置に表わされる。
図5(c)は、包括線波Pから、周波数がf0の2倍となった高周波成分をLPF42で取り去った図である。図5(d)は、図5(c)の波形から、それぞれのBPF43によって復調波SG1(発振波DR1に相当する)と復調波SG2(発振波DR2に相当する)の波形を復調する図である。
ここからは、上述の信号処理システムを、布2を使用して形成された服Fに適用した例について説明する。図6は、繊維22が編み込まれた布2を使用した服Fに実施形態に係る信号処理システムを適用した例を示す図である。図6に示すように、服Fには、発信機1、複数(実施形態ではセンサユニット3-1、センサユニット3-2、センサユニット3-3の3個)のセンサユニット3、受信機4が取り付けられている。
センサユニット3は、それぞれ繊維22と接続される。センサユニット3-1は、服Fの周囲の温度を測定するセンサユニット3である。センサユニット3-1は、繊維22に接続されて服Fの表側(外側)に取り付けられている。センサユニット3-2は、服Fの周囲の湿度を測定するセンサユニット3である。センサユニット3-2は、服Fの表側に取り付けられている。センサユニット3-3は、服Fを着用した人の心拍を測定するセンサユニット3である。センサユニット3-3は、服Fの裏側(内側)に取り付けられている。発信機1と受信機4は、服Fの適切な場所(例えばポケットの中)に取り付けられる。
発信機1は、繊維22に接続されて服Fに取り付けられる。発信機1は、繊維22に搬送波N1を発信する。各センサユニット3は、搬送波N1を受信してセンサユニット3を起動するための直流電圧を生成する。センサユニット3は、測定した検知対象の状態に基づいた周波数の出力波DPを出力する。出力された出力波DPに基づいて、搬送波N1に重畳され搬送波N1は変調波N2に変調される。
受信機4は、繊維22に接続されて服Fに取り付けられる。受信機4は変調波N2を受信する。包括線検波機41は、受信した変調波N2を包括線検波して包括線波Pを生成する。LPF42は、生成した包括線波Pから周波数f0の2倍の高周波成分を取り除く。そしてBPF43が、各センサユニット3が検知した検知対象の状態に基づいた復調波SGを取り出す。受信機4は、取り出された復調波SGを、情報を収集する外部装置(例えばスマートフォン)に無線で送信する。外部装置または当該外部装置を操作する人は、受信した人の周囲の温度、湿度、人の心拍の情報に基づいて、例えば当該人の健康状態(例えば、熱中症に罹る可能性)を判断することができる。
このように、服Fに信号処理システムを適用した場合に、信号処理システムは、繊維22に接続された複数のセンサユニット3から受信機4に出力される、温度、湿度、心拍に係る出力波DPに基づいて搬送波N1を変調波N2に変調し、受信機4が変調波N2を復調して温度、湿度、心拍に係る復調波SGを復調することができる。
ここからは、上述の信号処理システムを、布2で形成された車Cの座席シートSに適用した例について説明する。図7は、繊維22が編み込まれた布2を使用した座席シートSに実施形態に係る信号処理システムを適用した例を示す図である。図7に示すように、座席シートSには、発信機1、複数(実施形態ではセンサユニット3-1、センサユニット3-2、センサユニット3-3の3個)のセンサユニット3、受信機4が取り付けられている。
センサユニット3は、繊維22と接続される。センサユニット3-1は、座席シートSの周囲の温度を測定するセンサユニット3である。センサユニット3-1は、座席シートSに取り付けられている。センサユニット3-2は、座席シートSの周囲の湿度を測定するセンサユニット3である。センサユニット3-2は、座席シートSに取り付けられている。センサユニット3-3は、座席シートSにかけられている荷重を検知する荷重センサを備えたセンサユニット3である。
発信機1は、繊維22に接続されて座席シートSに取り付けられる。発信機1は、繊維22に搬送波N1を発信する。各センサユニット3は、搬送波N1を受信してセンサユニット3を起動するための直流電圧を生成する。センサユニット3は、座席シートSの周囲の気温と湿度を測定する。また、センサユニット3は、座席シートSに所定以上の荷重が罹っているかを測定する。各センサユニット3は、測定した検知対象の状態に基づいた周波数の出力波DPを出力する。出力された出力波DPは、搬送波N1に重畳され搬送波N1は変調波N2に変調される。
受信機4は、繊維22に接続されて座席シートSに取り付けられる。変調波N2は受信機4が受信する。包括線検波機41は、受信した変調波N2を包括線検波して包括線波Pを生成する。LPF42は、包括線波Pから周波数f0の2倍の高周波成分を取り除く。そしてBPF43が、各センサユニット3が検知した検知対象の状態に基づいた復調波SGを取り出す。受信機4は、復調された復調波SGを、情報を収集する外部装置(例えばスマートフォン)に無線で送信する。外部装置または当該外部装置を操作する人は、受信した周囲の温度、湿度、座席シートSにかけられている荷重の情報に基づいて、例えば座席シートSに人が着席しているかを判断することができる。例えば、50kgの荷重が罹っている場合、温度と湿度が低い場合は、座席シートSには荷物が置かれていると判断する。また、例えば、50kgの荷重が罹っている場合、温度と湿度が所定値以上である場合は、座席シートSには人が着席していると判断する。
このように、座席シートSに信号処理システムを適用した場合に、信号処理システムは、繊維22に接続された複数のセンサユニット3から出力される、温度、湿度、かかっている荷重に係る出力波DPに基づいて搬送波N1を変調し、受信機4が変調波N2を復調して温度、湿度、荷重に係る復調波SGを復調することができる。
以上説明したように、実施形態の信号処理システムは、繊維22を備え導電性を有する布2と、繊維22と接続されて布2に取り付けられ、所定の発振周波数の搬送波N1を繊維22に発信する発信機1と、繊維22と接続されて布2に取り付けられ、検知対象の状態に応じて搬送波N1を変調する信号を出力する複数のセンサ3Aと、繊維22と接続されて布2に取り付けられ、変調された搬送波N1を復調してセンサ3Aごとの信号を取り出す受信機4と、を備える。そのため、繊維22を介して複数のセンサ3Aと受信機4とのデータのやり取りをすることができるので、センサ3Aごとに、受信機4とのデータのやり取りをするための導線を設ける必要がないので、受信機4と複数のセンサとの接続が煩雑にならない。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、実施形態では、布2を、繊維21と繊維22で構成されるとして説明した。しかしながらこれに限らず、布2は、繊維21と、繊維21上に印刷された導電性を有するインクで形成された格子状のパターンであってもよい。この場合、パターンが繊維22の役目を果たす。また、繊維22は、繊維21で形成された布2の表面に導電性を有するアルミ箔等の薄箔を張り付けて形成してもよい。この場合、薄箔が繊維22の役目を果たす。
また、実施形態では、布2は、繊維21と繊維22で構成されていると説明した。しかしながらこれに限らず、布2は、繊維22のみで構成されていてもよい。
また、実施形態では、繊維22は布2の表裏の両側に形成されるとした。しかしながらこれに限らず、繊維22は、布2の表側のみ、あるいは裏側のみに形成されてもよい。
また、実施形態では、搬送波N1、変調波N2および発振波DRを矩形波として説明した。しかしながらこれに限らず、搬送波N1、変調波N2および発振波DRは正弦波であってもよい。