以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる治療計画装置及び臨床モデル比較方法を説明する。
本実施形態に係る分析モデルは、患者の臨床に関する患者情報に基づいて当該臨床による結果情報を数学的に算出する数学的モデルである。本実施形態に係る数学的モデルは、実際の患者情報に基づいて将来の結果を予測する予測モデルを含む。本実施形態に係る数学的モデルは、将来の結果を予測する予測モデルだけでなく、過去から未来に亘り実際に計測されていない情報を予測(又は分析)するモデルをも包含する。本実施形態に臨床は、検査、診断、治療及び経過観察のうちの何れか一つを含む医療行為である。
本実施形態に係る検査は、血液検査装置や免疫検査装置、心電計、血圧計等の生体計測機器を用いた検査を指す。例えば、検査に関する数学的モデルは、心電図波形と他の生体計測機器による計測結果(例えば、血圧値や血液成分値)とを入力患者情報として心臓機能の異常の有無を判定する。本実施形態による数学的モデルは、心電図波形の計測期間内に電図波形の異常が検知できない場合であっても、当該計測期間外において心電図波形の異常が生じる可能性を予測することができる。
本実施形態に係る診断は、X線コンピュータ断層撮影装置やX線診断装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、核医学診断装置等の医用画像診断装置を用いた診断を指す。例えば、診断に関する数学的モデルは、医用画像を入力患者情報として画像診断結果を出力する。
本実施形態に係る治療は、放射線治療装置を用いた放射線治療を指す。放射線治療に関する数学的モデルについては、後で詳細に説明する。
本実施形態に係る経過観察は、検査、診断及び治療等の医療行為後における、医療行為を施した部位の経過に対する観察を指す。経過観察に関する数学的モデルは、例えば、医用画像を入力患者情報として癌等の病変の再発の有無を出力する。
以下、本実施形態に係る数学的モデルについて、放射線治療の治療経過を予測する予測モデルを具体例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態に係る治療計画装置100の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る治療計画装置100は、演算回路1、数学的モデルデータベース2、患者情報データベース3、参照傾向情報データベース4、画像処理回路5、通信インタフェース6、ディスプレイ7、入力インタフェース8及び主記憶回路9を有する。演算回路1、数学的モデルデータベース2、患者情報データベース3、参照傾向情報データベース4、画像処理回路5、通信インタフェース6、ディスプレイ7、入力インタフェース8及び主記憶回路9は、互いにバスを介して通信可能に接続されている。
演算回路1は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。演算回路1は、主記憶回路9に記憶された臨床モデル比較プログラムを実行することにより、数学的モデル取得機能11、分析結果算出機能12、指標算出機能13、比較対象設定機能14、検証画面生成機能15及び参照傾向情報記録機能16を実現する。数学的モデル取得機能11、分析結果算出機能12、指標算出機能13、比較対象設定機能14、検証画面生成機能15及び参照傾向情報記録機能各々は、臨床モデル比較プログラムのモジュールに対応する。また、演算回路1は、主記憶回路9に記憶されたモデル更新プログラムを実行することにより数学的モデル更新機能17を実現する。また、演算回路1は、主記憶回路9に記憶された治療計画プログラムを実行することにより治療計画機能18を実現する。なお、演算回路1は、上記機能を実現可能なASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、SPLD(Simple Programmable Logic Device)により実現されても良い。
数学的モデル取得機能11において演算回路1は、比較対象である対の数学的モデルを数学的モデルデータベース2から取得する。本実施形態に係る数学的モデルは、一例として、放射線治療の治療経過を予測するための数学的モデルである。予測対象としての治療経過は、具体的には、放射線照射後の腫瘍のレスポンスや副作用の有無である。腫瘍のレスポンスは、例えば、腫瘍の完治確率により示される。副作用の有無は、例えば、体重減少の有無により示される。比較対象である対の数学的モデルは、比較対象になり得る如何なるものであっても良い。対の一方の数学的モデルを第1の数学的モデル、他方の数学的モデルを第2の数学的モデルと呼ぶことにする。
数学的モデルデータベース2は、複数の数学的モデルを記憶するデータベースである。具体的には、数学的モデルデータベース2は、数学的モデルの基本情報(以下、モデル基本情報と呼ぶ)と数学的モデルの詳細情報(以下、モデル詳細情報と呼ぶ)とを記憶する。
図2は、モデル基本情報のテーブル(以下、モデル基本情報テーブルと呼ぶ)を示す図である。図2に示すように、モデル基本情報は、モデルID、アルゴリズム、モデル名、現バージョン及び旧バージョンの項目を有する。モデルIDは、当該数学的モデルに割り当てられた識別子である。アルゴリズムは、当該数学的モデルのアルゴリズムの種類である。本実施形態に係る数学的モデルの検証のためのアルゴリズムとしては、決定木(Decision Tree)や回帰木(Regression Tree)等の如何なるアルゴリズムにも適用可能である。他のアルゴリズムとしては、例えば、ロジステック回帰やニューラルネットワークが挙げられる。モデル名は、当該数学的モデルの名称、換言すれば、分析対象の治療経過項目の名称である。例えば、モデル名としては、放射線照射後の患者の体重減少の有無を予測する体重減少(Weight Loss)や放射線照射後の腫瘍の縮小の度合いを予測する腫瘍反応(Tumor Response)等が挙げられる。現バージョンは、当該数学的モデルの現在のバージョンである。旧バージョンは、当該数学的モデルの更新前のバージョンである。例えば、モデルID「002」の数学的モデルは、アルゴリズムが「決定木」であり、モデル名が「体重減少」であり、現バージョンが「2.0」であり、旧バージョンが「1.0」である。なお、モデルID「001」及び「004」のように、旧バージョンが「-」の数学的モデルは、現バージョンが「1.0」、すなわち、初期バージョンの数学的モデルである事を示す。モデル基本情報テーブルは、数学的モデルデータベース2により管理される。
図3は、モデル詳細情報のテーブル(以下、モデル詳細情報テーブルと呼ぶ)を示す図である。図3に示すように、モデル詳細情報は、パラメータID、モデルID、パラメータ名、演算子、値、偽分岐、真分岐、真分岐確信度及び偽分岐確信度の項目を有する。なお、図3のモデル詳細情報は、決定木を用いた数学的モデルの詳細情報の一例である。なお、モデル詳細情報テーブルは、決定木を用いた数学的モデルに限定されず、ロジステック回帰やニューラルネットワーク等を用いた数学的モデルにも適用可能であり、その数学的モデルに応じたテーブル構造を有する。
パラメータIDは、当該数学的モデルを構成する各パラメータに割り当てられた識別子である。パラメータ名は、当該パラメータの名称である。演算子は、分岐の条件式を構成する演算子であり、パラメータ値と条件値との関係性を規定する。具体的には、演算子は、パラメータ値が条件値よりも小さい事を示す「<」、パラメータ値が条件値よりも大きい事を示す「>」、パラメータ値が条件値に等しい事を示す「=」が挙げられる。条件値は、分岐の条件式を構成する値であり、パラメータの値に対する比較対象である。偽分岐は、分岐の条件式を満たさない場合に移行する次の節(node)である。次の節としては、分析結果を出力する偽葉(false leaf)又は次分岐を示す。真分岐は、分岐の条件式を満たす場合に移行する次の節(node)である。次の節としては、分析結果を出力する真葉(true leaf)又は次分岐を示す。偽分岐確信度は、偽分岐の分析結果に対する確信度を示す。真分岐確信度は、真分岐の分析結果に対する確信度を示す。本実施形態において確信度は、分析結果の一種であるとする。なお、確信度は必須の項目ではない。例えば、分析結果が完治確率等の数値である場合、確信度が設定される必要はない。
例えば、パラメータID「00102」のパラメータは、モデルIDが「001」であり、パラメータ名が「ICD9」であり、演算子が「=」であり、条件値が「161」であり、偽分岐が「体重減少(Weight Loss)なし」であり、真分岐が「体重減少(Weight Loss)あり」であり、偽分岐確信度が「60%」であり、真分岐確信度が「80%」である。なお、パラメータID「00101」及び「00103」のように真分岐確信度が「-」であるパラメータは、次分岐が存在するため分析結果を算出できる段階に無い事を示す。モデル詳細情報テーブルは、数学的モデルデータベース2により管理される。
本実施形態に係る数学的モデルは、図2に示すように、決定木や回帰木等の様々なアルゴリズムを用いる事が可能である。例えば、アルゴリズムが決定木の場合、数学的モデルは、図3に示すように、樹形図的に連なる複数の条件式により構成される。条件式は、パラメータと演算子と条件値とにより構成される。条件式は、例えば、真分岐に移行するためにパラメータ値が条件値との間で満たすべき、演算子により記述される関係性を規定する。条件式が成立する場合、真分岐に移行し、条件式が成立しない場合、偽分岐に移行する。
分析結果算出機能12において演算回路1は、複数の患者の患者情報に、第1の数学的モデルと第2の数学的モデルとをそれぞれ適用し、複数の患者毎に前記第1の数学的モデルに基づく第1の分析結果と第2の数学的モデルに基づく第2の分析結果とを算出する。患者情報は、患者情報データベース3に記憶されている。
患者情報データベース3は、複数の患者の患者情報を記憶するデータベースである。患者情報は、患者基本情報と治療結果情報とを含む。患者基本情報は、患者を特定するための基本的な情報である。治療結果情報は、患者に実際に施された治療の結果に関する情報である。
図4は、患者基本情報のテーブル(以下、患者基本情報テーブルと呼ぶ)を示す図である。図4に示すように、患者基本情報は、患者ID、患者名、性別及び年齢の項目を有する。患者IDは、当該患者に割り当てられた識別子である。患者名は、当該患者の氏名である。性別は、当該患者の性別である。年齢は、当該患者の年齢である。例えば、患者ID「1」の患者は、患者名が「X」であり、性別が「男性」であり、年齢が「50」である。患者基本情報テーブルは患者情報データベース3により管理される。
図5は、治療結果情報のテーブル(以下、治療結果情報テーブルと呼ぶ)を示す図である。図5に示すように、治療結果情報は、治療ID、患者ID、ICD9、LarynxX75、ParotidX89、ParotidX70及び体重減少あり/なしの項目を有する。治療IDは、当該患者に施された治療に割り当てられた識別子である。患者IDは、当該患者に割り当てられた識別子である。ICD9は、当該患者の病名や診断結果を示すパラメータの一つである。LarynxX75、ParotidX89、ParotidX70は、放射線治療における照射パラメータの一つである。体重減少あり/なしは、当該治療の経過を評価するパラメータの一つである。ICD9、LarynxX75、ParotidX89、ParotidX70及び体重減少あり/なしの項目は、治療後に実際に計測された治療結果に関する項目である。治療結果情報テーブルは患者情報データベース3により管理される。
指標算出機能13において演算回路1は、複数の患者毎に、実際の治療結果と第1の分析結果とに基づいて第1の分析結果の正しさを示す第1の正しさ指標を算出し、実際の治療結果と第2の分析結果とに基づいて第2の分析結果の正しさを示す第2の正しさ指標を算出し、第1の分析結果と第2の分析結果との比較を示す比較指標を算出する。実際の治療結果としては、患者情報データベース3により記憶されている治療結果情報が利用される。第1の正しさ指標と第2の正しさ指標とは、第1の分析結果と第2の分析結果とを評価するため、同種の正しさ指標である。
比較対象設定機能14において演算回路1は、複数の患者の中から比較対象の患者を設定する。比較対象の患者は、後述の参照傾向情報に基づいて設定されても良いし、ユーザにより入力インタフェース8を介して任意に指定されても良い。
参照傾向情報記録機能16において演算回路1は、参照傾向情報を参照傾向情報データベース4に記録する。参照傾向情報は、普段の放射線治療の医療作業工程(ワークフロー)における医師や技師等の医療従事者等の、患者情報や医用画像等の医用情報に対する参照の傾向に関する情報である。参照傾向情報は、部門や職種等の医用情報を参照する主体(以下、参照主体と呼ぶ)毎、患者や治療部位等の医用情報の客体(以下、参照客体と呼ぶ)、医用情報を参照した期間(以下、参照期間と呼ぶ)、医用情報に係る治療に使用された治療装置(以下、参照治療装置と呼ぶ)毎に記録される。なお、参照主体である職種としては、例えば、医師、技師、看護師等が挙げられる。治療装置としては、例えば、画像誘導放射線治療(IGRT:Image Guided Radiotherapy)装置や強度変調放射線治療(IMRT:Intensity Modulated Radiation Therapy)装置等が挙げられる。また、治療装置としては、大型の装置だけでなく、小線源療法に用いられる小型デバイスであっても良い。
参照傾向情報データベース4は、参照傾向情報を記憶するデータベースである。参照傾向情報は、参照主体、参照客体、参照期間又は参照治療装置毎の参照回数が挙げられる。
図6は、患者毎の参照傾向情報のテーブル(以下、参照傾向情報テーブルと呼ぶ)を示す図である。図6に示すように、患者毎の参照傾向情報は、臨床医ID、患者ID及び参照回数の項目を有する。臨床医IDは、当該患者を担当する参照主体たる臨床医に割り当てられた識別子である。患者IDは、当該患者に割り当てられた識別子である。参照回数は、当該患者の医用情報を当該臨床医が参照した回数である。例えば、臨床医ID「1001」の臨床医は、患者ID「1」の患者の医用情報に対する参照回数は、「80」である。
図7は、治療部位毎の参照傾向情報テーブルを示す図である。図7に示すように、治療部位毎の参照傾向情報は、臨床医ID、治療部位及び参照回数の項目を有する。臨床医IDは、参照客体たる治療部位に対する治療を担当する臨床医に割り当てられた識別子である。治療部位は、当該治療部位の名称である。参照回数は、当該治療部位に関する医用情報を当該臨床医が参照した回数である。例えば、臨床医ID「1001」の臨床医は、治療部位「頭頚部」の医用情報に対する参照回数は、「80」である。
検証画面生成機能15において演算回路1は、比較対象設定機能14により設定された比較対象の患者について、第1の数学的モデルと第2の数学的モデルとの間の臨床的変化を評価するための評価情報を生成する。評価情報は、例えば、第1の数学的モデルを基準にした第2の数学的モデルの良化又は悪化の度合いを示す。他の例として、評価情報は、第2の数学的モデルが第1の数学的モデルに比して良化しているか又は悪化しているかの判定を示しても良い。具体的には、検証画面生成機能15において演算回路1は、比較対象設定機能14により設定された比較対象の患者について、実際の治療結果を基準とする第1の分析結果と第2の分析結果との間の臨床的変化を算出する。そして演算回路1は、当該臨床的変化の傾向を示す検証画面を生成する。具体的には、演算回路1は、比較対象の患者に関する第1の正しさ指標、第2の正しさ指標及び比較指標の少なくとも一方を図式的に示す検証画面を生成する。
数学的モデル更新機能17において演算回路1は、数学的モデルを更新する。数学的モデルの更新とは、数学的モデルを構成する内部パラメータを変更、追加及び削除することを指す。本実施形態に係る内部パラメータは、数学的モデルを構成する詳細情報の各項目の値に対応する。例えば、アルゴリズムが決定木である場合、数学的モデルの更新とは、数学的モデルを構成する演算子、条件値及び分岐先の少なくとも一方を変更、追加及び削除することを指す。
治療計画機能18において演算回路1は、医用画像診断装置等により生成された治療計画画像等に基づいて、当該患者についての治療計画を作成する。治療計画の項目は、例えば、治療部位や放射線の線量分布、放射線の照射方法、放射線の治療条件を含む。治療計画に関する情報は、放射線治療装置に伝送される。放射線治療装置は、治療計画に従い放射線を照射し、患者の腫瘍を消滅又は縮小する。
画像処理回路5は、ハードウェア資源として、CPUやGPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。画像処理回路5は、治療計画画像に種々の画像処理を施す。例えば、画像処理回路5は、3次元の治療計画画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示用の2次元の医用画像を生成する。なお、画像処理回路5は、上記画像処理を実現可能なASICやFPGA、CPLD、SPLDにより実現されても良い。
通信インタフェース6は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療装置や画像保存通信システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)、放射線科情報システム(RIS:Radiology Information System)、放射線治療情報管理システム(OIS:Oncology Information System)等との間でデータ通信を行う。
ディスプレイ7は、検証画面生成機能15により生成された検証画面等の種々の情報を表示する。具体的には、ディスプレイ7としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
入力インタフェース8は、入力機器を有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェース8は、入力機器からの出力信号をバスを介して演算回路1に供給する。
主記憶回路9は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。例えば、主記憶回路9は、臨床モデル比較プログラム、モデル更新プログラム及び治療計画プログラムを記憶する。ハードウェアとして主記憶回路9は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。
次に、本実施形態に係る臨床モデル比較プログラムの実行による治療計画装置100の動作例について説明する。治療計画装置100は、同種の2つの数学的モデルを比較検証するために臨床モデル比較プログラムを実行する。比較対象である同種の2つの数学的モデルは、例えば、数学的モデル更新機能17による更新前後の数学的モデルに設定される。同種の数学的モデルとは、例えば、アルゴリズムが同一であるが、数学的モデルを構成する内部パラメータが異なるものを指す。例えば、アルゴリズムが決定木である場合、同種の数学的モデルとは、演算子、条件値及び分岐先等が異なるものを指す。また、同種の数学的モデルとして、例えば、アルゴリズムが異なるが、分析対象が同一のモデルであっても良い。例えば、決定木による体重減少の予測のための数学的モデルと、回帰木による体重減少の予測のための数学的モデルとが同種の数学的モデルとして比較対象になり得る。
本実施形態に係る比較対象の2つの数学的モデルは、更新前後の数学的モデルに限定されない。病院や部門、医療従事者等の2つの数学的モデル使用主体が異なる内部パラメータを使用している場合、比較対象である同種の2つの数学的モデルは、使用主体毎の数学的モデルに設定される。例えば、病院Aにおいて使用している数学的モデルと病院Bにおいて使用している数学的モデルとが比較対象に設定されても良い。
図8は、演算回路1により臨床モデル比較プログラムに従い実行される、数学的モデル比較の流れを示す図である。数学的モデル比較は、数学的モデル更新機能17により数学的モデルの更新が完了した後に、自動的に又はユーザにより入力インタフェース8を介して開始指示が入力されたことを契機として、演算回路1により開始される。なお、数学的モデルの更新が完了した場合、数学的モデル更新機能17から更新完了通知が数学的モデル取得機能11に供給される。なお、更新完了通知は、更新が完了した数学的モデルのモデルIDの情報を含んでも良い。
図8に示すように、まず演算回路1は、数学的モデル取得機能11を実行する(ステップS1)。ステップS1において演算回路1は、更新前の数学的モデルと更新後の数学的モデルとを取得する。以下、ステップS1の処理を具体的に説明する。
ステップS1において演算回路1は、まず、数学的モデルデータベース2から更新後の数学的モデルのモデル詳細情報を取得する。具体的には、演算回路1は、更新後の数学的モデルのモデルIDを検索キーワードとして、図3のモデル詳細情報テーブルを検索し、更新前の数学的モデルの旧バージョンの番号を特定する。例えば、モデルIDが「003」の場合、パラメータID「00105」のモデル詳細情報と「00106」のモデル詳細情報とが特定される。
次に演算回路1は、数学的モデルデータベース2から更新前の数学的モデルの詳細情報を取得する。より詳細には、まず、演算回路1は、更新後の数学的モデルのモデルIDを検索キーワードとして、図2のモデル基本情報テーブルを検索し、更新前の数学的モデルの旧バージョンの番号とモデルIDとを特定する。例えば、モデルIDが「003」の場合、旧バージョンの番号「2.0」とモデルID「002」とが特定される。次に演算回路1は、更新前の数学的モデルのモデルIDを検索キーワードとして、図3のモデル詳細情報テーブルを検索し、更新前の数学的モデルの詳細情報を特定する。例えば、モデルIDが「002」の場合、パラメータID「00103」の詳細情報と「00104」の詳細情報とが特定される。なお、更新前の数学的モデルとして、例えば、同一の旧バージョンの番号を有する2つの数学的モデルが特定されても良い。例えば、現バージョン「2.1」の数学的モデルと現バージョン「3.0」の数学的モデルとの旧バージョンの番号が共に「2.0」の場合、更新前の数学的モデルとして現バージョン「2.1」の数学的モデルが特定され、更新後の数学的モデルとして現バージョン「3.0」の数学的モデルが特定される。
次に演算回路1は、取得した更新前の数学的モデルの詳細情報に基づいて更新前の数学的モデルを再現し、取得した更新後の数学的モデルの詳細情報に基づいて更新後の数学的モデルを構築する。
具体的に、更新前の数学的モデルとして、モデルID「002」の数学的モデルを構築する例について説明する。図9は、図2及び図3のモデルID「002」の数学的モデルを示す図である。まず、演算回路1は、モデルID「002」を検索キーワードとして、図3の詳細情報テーブルを検索し、モデルID「002」の数学的モデルの詳細情報を特定する。例えば、図3の場合、パラメータID「00103」の詳細情報とパラメータID「00104」の詳細情報とが特定される。
次に演算回路1は、特定された更新前の数学的モデルの複数のパラメータIDの中から、偽分岐及び真分岐の何れにも含まれていないパラメータIDを、決定木の出発点(root node)のパラメータIDとして特定する。例えば、上記の例の場合、パラメータID「00103」及び「00104」のうち、「00104」はパラメータID「00103」の真分岐に含まれており出発点に該当しないが、「00103」はパラメータID「00103」及び「00104」の真分岐及び偽分岐の何れにも含まれていないため出発点のパラメータIDとして特定される。
次に演算回路1は、特定された出発点のパラメータ名、演算子及び条件値の値を取得し、取得されたパラメータ名、演算子及び条件値に基づいて決定木の出発点の条件式を決定する。例えば、出発点のパラメータIDが「00103」である場合、パラメータ名「ParotidX70」、演算子「>」及び値「1500」が特定されるので、条件式は、「ParotidX70>1500」に決定される。
次に演算回路1は、特定された出発点の偽分岐及び真分岐の値を特定する。演算回路1は、特定された偽分岐及び真分岐の値の種類を判別する。偽分岐の値が分析結果の場合、演算回路1は、当該偽分岐を終端(偽葉)に設定し、偽分岐の出力として当該分析結果を設定する。この際、演算回路1は、偽分岐確信度が入力されている場合、偽分岐の分析結果として当該偽分岐確信度も設定する。真分岐についても同様に、当該真分岐の終端(真葉)に対して分析結果の設定と真分岐確信度の設定とが行われる。特定された値がパラメータIDの場合、演算回路1は、当該パラメータIDの内部パラメータを次の分岐枝に設定する。そして設定された次の分岐枝について、上記同様の工程を実行して、条件式の決定、偽分岐及び真分岐の値の特定を行う。例えば、出発点のパラメータID「00103」の場合、偽分岐については出力として分析結果「体重減少なし」及び偽分岐確信度「70%」が設定され、真分岐については次分岐「00104」が設定される。
このように、演算回路1は、全ての分岐枝について条件式の決定、偽分岐及び真分岐の値の特定を行うまで上記処理を実行する。全ての分岐枝について上記処理が行われると、数学的モデルの構築が終了する。なお、更新後の数学的モデルについても、更新後の数学的モデルと同様の工程により構築可能である。
ステップS1が行われると演算回路1は、分析結果算出機能12を実行する(ステップS2)。ステップS2において演算回路1は、患者情報データベース3から取得した算出対象の複数の患者の患者情報を用いて、更新前の数学的モデルに基づく分析結果(以下、更新前分析結果と呼ぶ)と更新後の数学的モデルに基づく分析結果(更新後分析結果と呼ぶ)とを算出する。算出対象の複数の患者は、患者情報データベース3に記憶されている全ての患者に設定されても良いし、ユーザが担当している複数の患者に設定されても良い。以下、具体的に分析結果の算出について説明する。
まず、演算回路1は、患者情報データベース3から患者リストを取得する。患者リストは、例えば、患者情報データベース3に記憶されている治療結果情報テーブルである。次に、演算回路1は、患者リストから任意の1患者の治療結果情報を抽出し、更新前及び更新後の数学的モデルが使用している当該患者のパラメータの実測値を、抽出された治療結果情報から取得する。例えば、上述のモデルID「002」の数学的モデルがICD9とParotidX70を使用しているので、図5の治療ID「1」の患者ID「1」のレコードの場合、ICD9の実測値「170」、ParotidX70の実測値「1600」等が取得される。そして演算回路1は、取得したパラメータの実測値に基づいて数学的モデルの分析結果を算出する。
図10は、図5の治療ID「1」の患者ID「1」の治療結果情報を利用した、図3のモデルID「2」に対応する更新前の数学的モデルに基づく分析結果の算出工程を模式的に示す図であり、図11は、図5の治療ID「1」の患者ID「1」の治療結果情報を利用した、図3のモデルID「3」に対応する更新前分析結果の算出工程を模式的に示す図である。図10に示すように、更新前の数学的モデルにおいては、まず、ParotidX70が1500よりも大きいか否かが判定される。図5に示すように、治療ID「1」の患者ID「1」の場合、ParotidX70は「1600」である。従って、ParotidX70は1500よりも大きいので真分岐に移行する。図10に示すように次の真分岐において、ICD9が170に等しいか否かが判定される。図5に示すように、治療ID「1」の患者ID「1」の場合、ICD9は「170」である。従って、ICD9は170に等しいので真分岐に移行する。従って更新前分析結果は、「体重減少あり」、確信度は「80%」である。
更新後の数学的モデルにおいては、まず、図11に示すように、ParotidX70が1400よりも大きいか否かが判定される。図5に示すように、治療ID「1」の患者ID「1」の場合、ParotidX70は「1600」である。従って、ParotidX70は1400よりも大きいので真分岐に移行する。図11に示すように、次の真分岐において、ICD9が180に等しいか否かが判定される。図5に示すように、治療ID「1」の患者ID「1」の場合、ICD9は「170」である。従って、ICD9は180に等しくないので偽分岐に移行する。従って更新後分析結果は、「体重減少なし」、確信度は「60%」である。
ステップS2が行われると演算回路1は、指標算出機能13を実行する(ステップS3)。ステップS3において演算回路1は、更新前分析結果に基づく正しさ指標、更新後分析結果に基づく正しさ指標及び更新前の数学的モデルに基づく正しさ指標と更新後の数学的モデルに基づく正しさ指標との比較を示す比較指標を算出する。
具体的には、まず、演算回路1は、分析結果算出機能12により算出された更新前の数学的モデルの情報及び分析結果、更新後の数学的モデルの情報及び分析結果、算出対象の患者情報を取得する。次に、演算回路1は、患者情報データベース3から、算出対象の患者情報の実際の治療結果情報を取得する。例えば、図5の治療ID「1」の患者ID「1」の患者の場合、治療結果「体重減少なし」が取得される。そして演算回路1は、分析結果と治療結果とを比較し、予測の正しさを示す正しさ指標を算出する。正しさ指標は、更新前の数学的モデル及び更新後の数学的モデル各々について算出される。
図12は、正しさ指標の算出結果を示す図である。図12に示すように、正しさ指標は、例えば、真陽性、偽陽性、真陰性及び偽陰性に分類される。真陽性は、分析結果が「体重減少あり」であり、且つ治療結果が「体重減少あり」の場合に算出される。偽陽性は、分析結果が「体重減少あり」であり、且つ治療結果が「体重減少なし」の場合に算出される。真陰性は、分析結果が「体重減少なし」であり、且つ治療結果が「体重減少なし」の場合に算出される。偽陰性は、分析結果が「体重減少なし」であり、且つ治療結果が「体重減少あり」の場合に算出される。例えば、患者ID「1」に対して、モデルID「002」の数学的モデルの分析結果は「体重減少あり」であるが、治療結果は「体重減少なし」であるので、正しさ指標は「偽陽性」である。なお、正しさ指標は、上記のみに限定されず、分析結果と治療結果との一致度合いを示すことが可能であれば、如何なる指標でも良い。
次に演算回路1は、更新前分析結果と更新後分析結果との比較を示す比較指標を算出する。比較指標は、更新前の数学的モデルから更新後の数学的モデルに更新された場合における、更新前分析結果及び更新後分析結果各々の実際の治療結果に対する一致度合いの変化の傾向を示す。
図13は、比較指標を示す図である。図13に示すように、演算回路1は、比較指標として臨床変化度と確信度差とを算出する。臨床変化度と確信度差とは、副作用の有無を予測する数学的モデルと、治療経過パラメータの数値を予測する数学的モデルとで定義が異なる。まず、副作用の有無を予測する数学的モデルの場合の臨床変化度と確信度差とについて説明する。
臨床変化度は、更新前分析結果に対する更新後分析結果の臨床的変化の傾向の分類を示す。具体的には、臨床変化度は、更新前分析結果に対して更新後分析結果が臨床的に良化しているか、悪化しているか又は変化無しの何れかに決定される。確信度差は、更新前分析結果の確信度と更新後分析結果の確信度との差に規定される。より詳細には、確信度差は、更新後分析結果の確信度から更新前分析結果の確信度を減算することにより得られる値(減算値)に規定される。臨床変化度は、減算値が+の場合は良化、減算値が-の場合は悪化、減算値が0の場合は変化無しに分類される。
演算回路1は、実際の治療結果と更新前分析結果と更新後分析結果とに基づいて確信度差を算出する。より詳細には、まず演算回路1は、実際の治療結果と分析結果とが一致しているか否かを、更新前の数学的モデルと更新後の数学的モデルとの各々について判別する。実際の治療結果と分析結果とが一致している場合、演算回路1は、確信度の符号を+に設定し、実際の治療結果と分析結果とが一致していない場合、確信度の符号を-に設定する。次に演算回路1は、符号が設定された更新後分析結果の確信度から更新前分析結果の確信度を減算して確信度差を算出する。演算回路1は、確信度差の符号及び値を特定する。確信度差の符号が-の場合、臨床変化度を「悪化」に設定し、確信度差の符号が+の場合、臨床変化度を「良化」に設定し、確信度差が0の場合、臨床変化度を「変化なし」に設定する。
例えば、患者「A」のように、治療結果「体重減少あり」、更新前分析結果「体重減少あり(確信度:80%)」、更新後分析結果「体重減少なし(確信度:40%)」である場合、確信度差は(-40)-80=-120であり、臨床変化度は悪化である。また、患者「D」のように、治療結果「体重減少なし」、更新前分析結果「体重減少なし(確信度:70%)」、更新後分析結果「体重減少なし(確信度:80%)」である場合、確信度差は(80)-70=10であり、臨床変化度は良化である。
次に、治療経過パラメータの数値を予測する数学的モデルの場合の臨床変化度と確信度差とについて説明する。治療経過パラメータの数値を予測する数学的モデルとしては、例えば、腫瘍の完治確率の数学的モデルが挙げられる。臨床変化度は、更新前分析結果に対して更新後分析結果が臨床的に良化しているか、悪化しているか又は変化無しの何れかに決定される。確信度差は、更新前分析結果(数値)と更新後分析結果(数値)との差に規定される。臨床変化度は、減算値が+の場合は良化、減算値が-の場合は悪化、減算値が0の場合は変化無しに分類される。
演算回路1は、実際の治療結果と更新前分析結果と更新後分析結果とに基づいて確信度差を算出する。治療結果が「完治」の場合、分析結果である完治確率の符号が+に設定され、治療結果が「未完治」の場合、分析結果である完治確率の符号が-に設定される。例えば、治療結果「完治」、更新前分析結果「完治確率10%」、更新後分析結果「完治確率95%」である場合、確信度差は(95)-10=85であり、臨床変化度は良化である。治療結果「未完治」、更新前分析結果「完治確率80%」、更新後分析結果「完治確率20%」である場合、確信度差は(-20)-(-80)=60であり、臨床変化度は良化である。
ステップS3が行われると演算回路1は、比較対象設定機能14を実行する(ステップS4)。ステップS4において演算回路1は、参照傾向情報データベース4に記憶されている参照傾向情報に基づいて、複数の患者の中から比較対象の患者を設定する。
例えば、参照傾向情報として図6の患者別の参照回数が記憶されている場合、演算回路1は、参照回数が多い上位10患者を比較対象に設定する。なお、比較対象は、上位10患者に限定されず、上位から如何なる順位の患者に設定されても良い。また、上位から所定番目の患者に限定されず、下位から所定番目の患者に設定されても良い。
上記の通り、参照傾向情報は、演算回路1の参照傾向情報記録機能16により記録される。具体的には、まず演算回路1は、放射線治療装置や画像保存通信システム、病院情報システム、放射線科情報システム、放射線治療情報管理システムを、医師等の参照主体が使用している場合、当該参照主体のIDを取得する。演算回路1は、当該参照主体が患者の医用情報を参照(アクセス)するイベント(以下、参照イベントと呼ぶ)を検知する。例えば、演算回路1は、入力インタフェース8等を介して、医用情報を参照するための入力操作やユーザインタフェースの画面遷移を参照イベントとして検知する。そして演算回路1は、参照主体のIDと参照客体の患者のIDに基づいて当該参照主体及び参照客体の組合せの参照回数を増加する。
なお、参照傾向情報として、参照時の放射線治療の医療作業工程が含まれても良い。この場合、演算回路1は、参照イベントの検知と共に、参照時の放射線治療の医療作業工程を、放射線治療装置や画像保存通信システム、病院情報システム、放射線科情報システム、放射線治療情報管理システムから取得する。医療作業工程としては、例えば、治療計画作成や治療計画再計画、フォローアップ等が挙げられる。演算回路1は、取得された医療作業工程での参照回数を増加する。この場合、比較対象の患者の設定の際、医療作業工程毎の参照回数を考慮することができる。例えば、フォローアップ時の参照回数の上位10患者等を比較対象の患者に設定することも可能である。
比較対象の患者は、正しさ指標が算出された複数の患者のうちの一部患者に限定されない。すなわち、正しさ指標が算出された複数の患者の全てが比較対象に設定されても良い。この場合、演算回路1は、参照傾向情報を利用することなく、正しさ指標が算出された複数の患者の全てを自動的に比較対象に設定する。また、比較対象の患者は、正しさ指標が算出された複数の患者のうちの、ユーザにより入力インタフェース8を介して指定された任意の患者に設定されても良い。
ステップS4が行われると演算回路1は、検証画面生成機能15を実行する(ステップS5)。ステップS5において演算回路1は、更新前分析結果と更新後分析結果との間の臨床的変化傾向を示す検証画面を生成する。
ステップS5が行われると演算回路1は、ディスプレイ7に表示処理を行わせる(ステップS6)。ステップS6においてディスプレイ7は、検証画面生成機能15により生成された検証画面を表示する。
以下、比較対象として参照回数が上位所定番目までの患者が設定された場合を例に挙げて、ステップS5における検証画面の生成とステップS6における検証画面の表示について具体的に説明する。
演算回路1は、検査対象の患者に関する更新前分析結果、更新後分析結果、更新前分析結果に基づく正しさ指標、更新後分析結果に基づく正しさ指標及び比較指標の少なくとも一つに基づいて検証画面を生成する。例えば、演算回路1は、検証画面として、参照回数上位所定番目までの患者に関する、更新前後の数学的モデルについての確信度差と臨床変化度とを示す図表(グラフ)を生成する。
図14は、参照回数上位7番までの患者に関する、更新前後の数学的モデルについての確信度差と臨床変化度とを示す検証画面I1の一例を示す図である。図14に示すように、更新前の数学的モデルは、体重減少あり/なしの予測に関する2015年モデルであり、更新後の数学的モデルは、体重減少あり/なしの予測に関する2016年モデルである。数学的モデル検証処理のユーザは〇〇太郎医師である。比較対象の患者は、〇〇太郎医師による参照回数が上位7位までの患者である。
図14に示すように、検証画面I1の縦軸は確信度差に規定され、横軸は参照回数に規定される。確信度差の+範囲は臨床変化度「良化」に区分され、-範囲は臨床変化度「悪化」に区分される。このように検証画面I1は、患者毎の確信度差と臨床変化度とを棒グラフの長さと向きとで視覚的に示している。すなわち、棒グラフの長さは確信度差の絶対値を示し、棒グラフの向きは臨床変化度を示している。ディスプレイ7は、このような検証画面I1を表示することにより、数学的モデルの更新前後で分析結果が良化したのか悪化したのか、更に、どの程度だけ良化又は悪化したのかを明確に提示することができる。また、グラフの原点に近いほど参照回数が多くなるように患者の棒グラフが並べられる。図14の場合、患者Cが最も参照回数が多い。このように参照回数に従って患者の棒グラフが配列されることにより、参照回数が多い患者の棒グラフを簡便に識別することができる。ディスプレイ7は、医師等のユーザが医療作業工程において良く参照する患者について、更新前後の数学的モデルに基づく分析結果の比較(例えば、確信度差や臨床変化度)等を表示するので、ユーザは、更新前後の数学的モデルの妥当性について容易に判断することができる。
検証画面I1に含まれる各患者の患者名又は棒グラフは、ユーザインタフェースとして機能し、入力インタフェース8を介して選択可能に表示される。検証画面I1においてユーザにより入力インタフェース8を介して患者名又は棒グラフが指定された場合、ディスプレイ7は、図15に示すように、指定された患者名又は棒グラフに対応する患者の詳細情報D1を表示しても良い。図15は、患者Nの詳細情報D1が重畳された検証画面I1を示す図である。図15に示すように、詳細情報D1として、例えば、判断経路が示された更新前の数学的モデルの樹形図と更新後の数学的モデルの樹形図とが表示される。なお、図15において判断経路は、太線矢印で示されている。このようにディスプレイ7は、判断経路が示された更新前後の数学的モデルの樹形図を並べて表示することにより、ユーザは、分析結果の妥当性をより正確に判断することができる。詳細情報D1の種類は、判断経路が示された樹形図に限定されない。例えば、判断経路が示されていない樹形図が詳細情報として表示されても良いし、当該患者の治療結果情報等が表示されても良い。
なお、分析結果の比較の表示形態は、図14及び図15の検証画面のようなグラフ形式に限定されず、リスト形式であっても良い。
図16は、リスト形式の検証画面I2を示す図である。図16に示すように、更新前後の数学的モデルは、腫瘍の完治確率の数学的モデルである。数学的モデル検証処理のユーザは〇〇太郎医師である。比較対象の患者は、〇〇太郎医師の担当患者34名である。図16に示すように、検証画面I2には、各患者の実際の治療結果、更新前分析結果である完治確率及び更新後分析結果である完治確率のリストが臨床変化度(良化及び悪化)毎に描出されている。「良化」及び「悪化」各々について、更新前の完治確率と更新後の完治確率との差(確信度差)が大きい順に上から表示される。すなわち、更新前後において分析結果の臨床的変化の大きい順番に表示される。
患者の表示順序は、種々の観点から選択可能である。例えば、検証画面I2は、表示順序の観点を選択するプルダウンメニューM1を含む。表示順序の観点としては、例えば、確信度差が良い順(又は悪い順)だけでなく、分析結果値が良い順(又は悪い順)、参照回数が多い順が挙げられる。
このように、検証画面I2においては、臨床医等の参照主体が医療作業工程において頻繁に参照する患者各々について、更新前の数学的モデルに基づく完治確率と更新後の数学的モデルに基づく完治確率との比較を表示している。従って統計に通じていない者であっても、更新前後の数学的モデルの善し悪しについて判断することができる。
図17は、他の観点の検証画面I3を示す図である。図17に示すように、検証画面I3は、比較対象の患者に関する、更新前分析結果と更新後分析結果との間の臨床変化傾向の統計を示す。例えば、検証画面I3は、更新前分析結果と更新後分析結果後とに50%以上の差がある年代別患者数を、臨床変化度(良化及び悪化)毎に示す。数学的モデルは腫瘍の完治確率である。ディスプレイ7は、年代別以外の観点での結果の並び替えを選択可能なプルダウンメニューM2を表示する。年代別以外の観点としては、例えば、性別毎であっても良いし、治療装置毎であっても良いし、その他の観点であっても良い。また、検証画面I3は、確信度差に50%以上の差がある患者に限定して表示しているが、50%以外の如何なる数値以上又は以下の差がある患者を表示しても良い。また、検証画面I3は、確信度差に50%以上の差がある患者数をリスト形式で示しているが、ヒストグラムや分布図等の図表形式で表示されても良い。
このようにディスプレイ7は、比較対象の患者に関する更新前分析結果と更新後分析結果との間の臨床変化傾向の統計を示すことが可能である。ユーザは比較対象の患者を日々の医療作業工程において良く参照しているので統計を良く理解することが可能である。
以上により、演算回路1により臨床モデル比較プログラムに従い実行される、数学的モデル比較の説明を終了する。
なお、図8の処理の流れは種々の変更が可能である。例えば、ステップS4の比較対象の患者の設定を、分析結果の算出の前段に設けても良い。この場合、比較対象の患者のみについてステップS2の分析結果の算出及びステップS3の正しさ指標の算出が行われる。従って分析結果の比較に関与しない患者についてのステップS2の分析結果の算出及びステップS3の正しさ指標の算出を省略することができる。
また、ステップS1においては、数学的モデルデータベース2に記憶されているモデル基本情報とモデル詳細情報とに基づいて数学的モデルが構築されているが、構築後の数学的モデルが数学的モデルデータベース2に記憶されても良い。この場合、ステップS1においては、数学的モデルの構築処理を行う必要はなく、モデルID等に基づいて数学的モデルデータベース2から更新前後の数学的モデルが読み出されれば良い。
また、本実施形態においては第1の数学的モデルと第2の数学的モデルとを比較するものとした。しかしながら、3つ以上の数学的モデルを比較しても良い。例えば、演算回路1は、更新前の数学的モデルと更新後の数学的モデル1とを比較し、更に、更新前の数学的モデルと更新後の数学的モデル2とを、上記実施形態と同様の処理により比較する。そして演算回路1は、更新前の数学的モデルと更新後の数学的モデル1との比較結果と、更新前の数学的モデルと更新後の数学的モデル2との比較結果とを同時又は並列に示す検証画面を生成し、ディスプレイ7は、生成された検証画面を表示する。これによりユーザは、更新後の数学的モデル1と更新後の数学的モデル2との何れが良いのかを検証・判断することが容易にできる。
上記の説明の通り、本実施形態に係る治療計画装置100は、演算回路1とディスプレイ7とを有する。演算回路1は、臨床に関する複数の分析モデル各々に患者情報を適用して前記複数の分析モデルに基づく複数の分析結果を算出する。演算回路1は、複数の分析結果各々と比較対象の患者に関する実際の臨床結果とを比較して、複数の分析モデル間の変化を評価するための評価情報を生成する。ディスプレイ7は、評価情報を表示する。
上記1実施例において演算回路1は、複数の患者の患者情報に、治療経過に関する第1の数学的モデルと第2の数学的モデルとをそれぞれ適用し、当該複数の患者毎に第1の数学的モデルに基づく第1の分析結果と第2の数学的モデルに基づく第2の分析結果とを算出する。演算回路1は、当該複数の患者の中から比較対象の患者を設定する。演算回路1は、比較対象の患者について、評価情報として、実際の治療結果を基準とする第1の分析結果と第2の分析結果との間の臨床的変化の傾向を示す検証画面を生成する。ディスプレイ7は、検証画面を表示する。
上記の構成の通り、本実施形態に係る治療計画装置100は、比較対象の患者について、例えば、更新前後の数学的モデルに基づく分析結果の比較を表示するので、医師等のユーザは、更新前後の数学的モデルの妥当性を、統計に精通することなく容易且つ正確に判断することができる。結果的に、信頼性の高い数学的モデルを使用することができるので、ユーザは、当該数学的モデルの分析結果に基づいて患者のQOL向上のための医療判断を的確に行うことができる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、臨床に関する数学的モデル間の比較を容易に行うことが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。