図1は,発光点1から出射する発光を集光レンズ2によって集光し,集光レンズから一定距離だけ離れた位置に配置したセンサで検出する光学系の光軸を含む断面模式図である。本発明では,発光点及び発光という言葉を多用するが,これは検出対象とする物質自身が蛍光や燐光等を発光している場合を示すとは限らず,検出対象に対して光を照射し,その結果生じる検出対象から生じる散乱光や,検出対象を透過した透過光を示す場合もあり,これらを一括して発光点からの発光と表現する。
発光点1の径をd,集光レンズ2の焦点距離をf,集光レンズ2の有効径をD,センサの検出領域の径をD,集光レンズ2とセンサの光学的な距離(光路長)をgとする。発光点1と集光レンズ2の距離をfとする,すなわち集光レンズ2の焦点の位置に発光点1の中心を配置すると,発光点1の中心からの発光は集光レンズ2によって,径がDの平行光束3となり,光軸方向に進行する。集光レンズ2より光路長gだけ離れた位置のセンサにおいて,平行光束3は径がDのスポット4を形成する。図1の光学系の下側に光軸方向から見た発光点1,上側に光軸方向から見たスポット4,及び後述のスポット5を示す。一方,発光点1の左端からの発光は集光レンズ2によって,径がDの平行光束3’となり,光軸と角度θをなす方向に進行する。センサにおいて,平行光束3’は径がDのスポット5を形成する。
発光点1の中心からの発光の集光効率は,集光レンズ2のF値を用いて1/F2に比例する。F=f/Dであるから,D一定とすると,fが小さいほど集光光率が大きくなる。一方,発光点1の左端からの発光のスポット5はセンサの検出領域から右側にずれる。つまり,スポット4はセンサによってすべて検出されるが,スポット5は,スポット4と重なった比率でのみ検出される。この重なりが大きいほど発光点の全域について検出される光量が大きくなる。そのためには,平行光束3’の光軸となす角θが小さければ良く,θ=tan-1(d/2/f)であるため,d一定とすると,fが大きいほど良い。以上のように,発光点1の検出光量を大きくするためには,fを小さくした方が良い面と,fを大きくした方が良い面のトレードオフの関係があるが,どのようなfが最も良いかの検討はこれまでになされていない。そこで,次に,発光点1の検出光量を大きくするためのf及びgの条件を解明する。
検出光量を評価するため,特許文献1の図3に示された蛍光検出装置を基準とする。この蛍光検出装置の典型例では,共通の集光レンズの焦点距離はf1=50mm,有効径はD1≧25mmである。このレンズの明るさはF=f1/D1≦2.0である。そこで,F0=2.0の集光レンズを用いた場合に,焦点に位置する無限小サイズの発光点からの発光が,このレンズによって平行光束化され,その光量がすべてロスなくセンサで検出されるとき,その検出光量を基準(100%)とする。以降では,任意の無限小サイズの発光点についての検出光量を上記基準に対する相対検出光量で評価する。また,平均の有効径dの有限サイズの発光点は,多数の無限小サイズの発光点で構成されていると考える。本明細書では,「有限サイズの発光点」は単に「発光点」と呼び,「無限小サイズの発光点」はその都度「無限小サイズの発光点」と呼ぶ。発光点の相対検出光量は,それを構成する多数の無限小サイズの発光点の相対検出光量の平均とする。例えば,上記の例で,集光レンズをF=2.0からF=1.4に置き換えると,集光効率が(F0/F)2=2.0倍になるので,上記無限小サイズの発光点の相対検出光量は200%となる。ただし,発光点から全方位に発光される全光量は一定とし,発光点の内部の発光密度は空間的に均一であると仮定する。また,本蛍光検出装置の典型例では,発光点アレイの発光点の間隔がp=0.36mm,発光点の数がM=24,発光点アレイの全幅がAW=p*(M-1)=8.28mmであり,発光点アレイの中央に位置する発光点はレンズの焦点近傍に位置するため相対検出光量がほぼ100%になるが,発光点アレイの端に位置する発光点はレンズの焦点から離れるため相対検出光量が減少し,約50%となる。そこで,本発明では,各発光点の相対検出光量が50%以上になるようにして,各発光点の検出感度が従来と同等以上になるようにすることを目標とする。
図2は,図1に示した構成において,fをパラメータとして,gと相対検出光量の関係を計算した結果の図である。ここで,発光点1の平均の有効径はd=0.05mmとした。また,個別の集光レンズ2の有効径をD=0.5mmとした。レンズの明るさF=f/0.5を考慮して相対検出光量を計算した。有効径d=0.05mmの発光点1を,0.1μm間隔の約500個の無限小サイズの発光点で構成し,各無限小サイズの発光点について,図1のスポット4とスポット5の重なり面積比と同じ考え方によって相対検出光量を計算し,それらの平均により発光点1の相対検出光量を求めた。その結果,図2に示す通り,fは小さいほど,またgは小さいほど相対検出光量が大きくなることを初めて見出した。これは,fを小さくすることによって発光点1の中心に位置する無限小サイズの発光点の相対検出光量が増大する効果が,fを大きくすることによって上記の重なり面積比を増大する効果よりも大きいことを示している。また,任意のfに対して,gを小さくすることによって上記の重なり面積比を増大する効果が大きいことを示している。
図1及び図2では,発光点1の中心を集光レンズ2の焦点に配置し,発光を平行光束にした。本発明は本条件においても良好に機能するが,後に詳しく説明する通り,発光点1の中心を集光レンズ2の焦点よりも若干離し,発光を若干絞った光束6にすると,高感度と低クロストークを両立する上で,より好適な条件となることが判明した。より具体的には,センサ位置において,すなわち集光レンズ2から光路長gの位置において発光点1の像を結ぶとき,発光点1の径を最小にできるため,最も良い条件であることが判明した。
図3は,隣り合う2つの発光点1からの発光をそれぞれ,個別の集光レンズ2で集光し,センサ位置において発光点1の像である発光点像7をそれぞれ得る光学系の光軸を含む断面図である。本発明では,発光点像という表現は,発光点からの発光が結像された像を必ずしも意味するものではなく,発光点からの発光が集光された光束の,所定の位置における断面を一般に意味する。発光点1の径をd,集光レンズ2の焦点距離をf,集光レンズ2の有効径をD,発光点1の間隔及び集光レンズ2の間隔をp,センサの検出領域の径をD,集光レンズ2とセンサの光学的な距離(光路長)をg,センサ位置における発光点像7の径をd’とする。発光点1と集光レンズ2の距離を調節し,発光点1からの発光を集光レンズ2によってセンサ位置において結像させるとき,発光点像7の径d’は最小となる。
このとき,像倍率は,
[式1]
m=(g-f)/f
で表されるため,発光点像7の径d’は,
[式2]
d’≧m*d=(g-f)/f*d
である。ここで,式(2)は,発光点1からの発光が集光レンズ2によってセンサ位置において結像される場合に等号が成立し,それ以外の場合に不等号が成立する。図3の光学系の下側に光軸方向から見た発光点1,上側に光軸方向から見た発光点像7を示す。本発明は,g≧2*fの場合に,つまりm≧1の場合に良好に機能する。より望ましくは,m≧5,さらにはm≧10が良い条件となる。これは,図2から明らかなように,相対検出光量を向上するためにはfをmmレベルに縮小する必要がある一方で,gをそれほど縮小することは物理的に困難なためである。
本明細書の各図では,発光点1及び発光点像7をそれぞれ円形で描くが,現実には円形とは限らず,その他の形状の場合がある。一般に,発光点1の径d,及び発光点像7の径d’はそれぞれ,発光点1,及び発光点像7の配列方向の幅とする。また,後述する通り,同じ発光検出装置の中で,集光レンズ2とセンサの光学的な距離(光路長)が複数存在する場合がある。その場合,集光レンズ2とセンサの光学的な距離を一般に光路長sとし,sの最大値を光路長gとして,上記の式(1),(2),及び下記の式(3)~(18)を成立させれば良い。その理由を次に述べる。集光レンズ2とセンサの光学的な距離を変数sで表現すると,gを最大値として,0≦s≦gである。このとき,任意のsにおける発光点像7の径d’(s)は,d’(s=0)=Dと,d’(s=g)=d’のいずれか大きい方よりも小となる。すなわち,D≧d’のときはd’(s)≦D,D≦d’のときはd’(s)≦d’となる。前者の場合はクロストークが発生せず,後者の場合はs=gでクロストークの基準がクリアされていれば,0≦s≦gでも同基準をクリアできることを意味している。一方で,相対検出光量はsによらずに一定である。
また,本明細書では,集光レンズ2が,その直径が有効径Dの円形であることを基本としているが,必ずしもその必要はない。一般に,集光レンズ2の有効径Dは,発光点1の配列方向,及び集光レンズ1の配列方向の幅を示し,これらの配列方向と直交する方向の幅はその限りではない。集光レンズ2は,円形でも,楕円形でも,正方形でも,長方形でも,その他の形状でも構わない。上述の議論において,発光点像7の径d’(s=0)=Dは,発光点1の配列方向,及び集光レンズ1の配列方向の径と考えれば良い。これらの配列方向と直交する方向の発光点像7の径は,どれだけ大きくても,クロストークに寄与することはない。また,gが十分に大きければ,d’(s=g)=d’はDと無関係である。したがって,クロストークに関する以降の式(13)~(18)の条件は,集光レンズ2の配列方向と直交する方向の幅に関わらずそのまま成立する。一方で,仮に集光レンズ2の配列方向と直交する方向の幅を有効径Dよりも大とすれば,F値をF=f/Dよりも小さく,つまり集光効率をより高くすることが可能である。この場合,感度に関する以降の式(3)~(12)の条件は,より一層高い相対検出光量及び感度をもたらすことができる。
まず,高感度を得るための条件を検討する。発光点1からの発光の集光レンズ2による集光効率は,集光レンズ2のF値,F=f/Dにより表現できる。相対検出光量を50%以上とするためには,F≦2.8,すなわちf≦2.8*Dとすれば良い。一方で,集光レンズアレイを構成するためには,p≧Dとする必要があるため,
[式3]
f≦2.8*p
が相対検出光量が50%以上の条件である。同様に,相対検出光量が100%以上,200%以上,400%以上,及び800%以上にするには,それぞれ,F≦2.0,1.4,1.0,及び0.7,すなわち,次の式(4),(5),(6),及び(7)が条件である。
[式4]
f≦2.0*p
[式5]
f≦1.4*p
[式6]
f≦1.0*p
[式7]
f≦0.7*p
以上の式(3)~(7)は,発光点1と集光レンズ2の距離がfで近似できるとき正しいが,より厳密には次のように表現できる。発光点1と集光レンズ2の距離は,発光点1からの発光が集光レンズ2によって光学的な距離gにおいて結像されるとき,f2/(g-f)+fであるため,集光レンズ2の実効的なF値は,F’=(f2/(g-f)+f)/Dと表現できる。したがって,相対検出光量が50%,100%以上,200%以上,400%以上,及び800%以上にするには,次の式(8),(9),(10),(11)及び(12)が厳密な条件である。
[式8]
f≦(1/(2.8*p)+1/g)-1
[式9]
f≦(1/(2.0*p)+1/g)-1
[式10]
f≦(1/(1.4*p)+1/g)-1
[式11]
f≦(1/(1.0*p)+1/g)-1
[式12]
f≦(1/(0.7*p)+1/g)-1
次に,低クロストークを得るための条件を検討する。図3に示すように,隣り合う発光点1の発光点像7が互いに重ならない場合はクロストークが存在しないが,図4に示すように,隣り合う発光点1の発光点像7が互いに重なるとクロストークが発生する。以降,クロストークを,図4において,発光点像7の面積に対する,隣り合う発光点像7の重なり面積の比率Xで表現する。クロストークをX以下とするためには,
[式13]
X=1/π*(cos-1(V2/2-1)-sin(cos-1(V2/2-1)))
として,
[式14]
V≦2*p/d’
が条件となる。式(2)を用いて式(14)を変形すると,
[式15]
f≧1/((2*p)/(V*d)+1)*g
と表すことができる。
検出対象となる発光点1からの発光の検出を,両隣の発光点1からの発光の影響を受けずに実行するためには,図4において,2つの発光点像7の距離が,少なくとも発光点像の半径(又は径の半分)よりも大である必要がある。これを式(13),式(14)で表すと,X=0.39(39%),V=1となり,式(15)は,
[式16]
f≧1/(2*p/d+1)*g
で表すことができる。
複数の発光点1からの発光を,より実効的に,独立に検出するためには,両隣からのクロストークの合計の割合を50%以下にすることが望ましく,そのためには,式(13),式(14)で表すと,X=0.25(25%),V=1.27となり,式(15)は,
[式17]
f≧1/((2*p)/(1.27*d)+1)*g
が条件である。
さらに望ましくは,クロストークを0%にすることが良く,そのためには,式(13),式(14)で表すと,X=0(0%),V=2となり,式(15)は,
[式18]
f≧1/(p/d+1)*g
が条件である。
以上の通り,与えられたp及びdに対して,式(3)~(12)のいずれかを満たすg及びfを選定することによって所望の相対検出光量及び感度を得ることが可能である。一方,与えられたp及びdに対して,式(16)~(18)のいずれかを満たすg及びfを選定することによって所望のクロストークを得ることが可能である。つまり,式(3)~(12)のいずれかと,式(16)~(18)のいずれかの両者を満たすg及びfを選定することによって,トレードオフの関係にある相対検出光量とクロストークを所望のレベルで両立させることができる。
図5は,典型例として,p=1mm,d=0.05mmとした場合について式(3)~(12)及び式(16)~(18)を,横軸g,縦軸fで図示したものである。曲線又は直線に示す番号は,対応する番号の式の境界線を示し,↓は境界線から下側の領域,↑は境界線から上側の領域を示す。例えば,相対検出光量を50%以上の条件である式(3)とするには,図5の直線↓(3)よりも下側の領域のg及びfであれば良い。一方,クロストークを25%以下の条件である式(17)とするには,図5の直線↑(17)より上側の領域のg及びfであれば良い。つまり,相対検出光量を50%以上かつクロストークを25%以下とするには,図5の直線↓(3)よりも下側かつ直線↑(17)より上側の領域のg及びfであれば良い。
図5に示されるg及びfを用いた発光検出装置は,gとfの大きさから明らかなように,高感度かつ低クロストークの性能だけでなく,特許文献1及び非特許文献1の検出装置と比較して,装置サイズを1桁~3桁も小型化することができる特長がある。以上から明らかなように,pが小さいほど,dが大きいほど,高感度,低クロストークの条件を満たすgとfの範囲が狭くなる一方,発光検出装置の小型化が必然の構成となる。逆に言えば,pが小さいほど,dが大きいほど,本発明の特徴が活かされ,従来法に対する効果が顕著になる。具体的にはp≦20mm,より望ましくはp≦10mmの場合に本発明の特徴が特に活かされる。また,d≧0.005mm,より望ましくはd≧0.01mmの場合に本発明の特徴が特に活かされる。
続いて,以上の条件に基づき,さらに多色検出を行う方法について説明する。図3又は図4における発光点像7の位置にカラーセンサを,センサ表面が集光レンズ2の光軸と垂直になるように,すなわち,発光点1の配列平面及び集光レンズ2の配列平面に対してセンサ表面が平行になるように配置する。ここで,カラーセンサとは,少なくとも2種類以上の異なる波長の光をそれぞれ識別して検出できる2種類以上の画素が配列したものである。最も一般的なカラーセンサは,一般消費者向けのデジタルカメラに用いられているカラーセンサであり,R,G,B,すなわち赤,緑,青の3種類の色を識別する3種類の画素が2次元状に多数配列している。本発明においても,そのような一般的なカラーセンサを用いることが可能である。近年の一般的なカラーセンサは感度が高く,本技術分野でも利用できる。上記のカラーセンサは,3色の識別に最も適しているが,デジタルカメラが行っているように,3種類の画素の強度比から4色以上の識別を行うことも可能である。したがって,上記のカラーカメラを用いた検出装置を,4色検出を行うDNAシーケンサに応用することができる。
ただし,発光点1からの発光の色識別を精度良く行うためには,発光点像7の径d’を各種類の画素のサイズよりも大きくすることが有効である。これは,ひとつの発光点1について,及び各種類の画素について,複数の画素を用いて発光を検出することによって,発光点像7と画素の相対位置のばらつきの影響を回避できるためである。式(3)~(12)及び式(16)~(18)に示す本発明の適正条件では,式(1)でm>1,すなわち,式(2)でd’>dとなる場合が多く,上記の条件を満足させることが容易である。また,発光点1の配列平面及び集光レンズ2の配列平面がセンサ表面と平行であるため,センサ表面を集光レンズ2の配列平面に接近させることが可能であり,式(3)~(12)及び式(16)~(18)の条件に従うことが容易である。
最近は,R,G,Bに加えてIR(赤外)を加えた4種類の画素を有するカラーセンサが市販されており,そのようなカラーセンサをDNAシーケンサにおける4色検出に用いることは有用である。複数種類の画素は同一平面上に配列されているものでも,センサ表面と垂直方向に配列されているものでも良い。以上のように,既に実用化されているカラーセンサを本発明に適用することは,開発コストを抑える点で有効である。もちろん,カラーセンサの画素の種類数,各種類の画素が識別する色の特性を目的に応じてカスタマイズさせることは有効である。
図6は,カラーセンサを用いた多色検出装置の例を示す。図6(a)は,集光レンズ2の各光軸を含む平面に垂直方向から見た多色検出装置,図6(b)は2次元カラーセンサ11で検出されるイメージ12を示す。ここでは4色検出を行う例を示す。
図6(a)に示すように,各発光点1からの発光を,それぞれ個別に集光レンズ2により集光して光束9とし,共通のロングパスフィルタ10を並列に透過させ,共通の2次元カラーセンサ11に並列に入射させる。ロングパスフィルタ10は,励起光など,多色検出の邪魔となる波長の光を遮断するために設ける。図6(b)に示すように,2次元カラーセンサ11のイメージ12上には,各発光点1からの発光の発光点像7がそれぞれ形成される。2次元カラーセンサ11は,例えば,主にA発光を検出するA画素13,主にB発光を検出するB画素14,主にC発光を検出するC画素15,主にD発光を検出するD画素16の4種類の画素がそれぞれ多数個,規則正しく配列して構成されている。各画素13,14,15,16のサイズはいずれもS=0.05mmである。一方で,d=0.05mm,f=1mm,g=10mmとし,発光点1を2次元カラーセンサ上で結像させると,式(1)よりm=9,式(2)よりd’=0.45mmである。つまり,S<d’が満たされ,発光点像7は約64個の画素で検出され,1種類の画素あたり約16画素で検出される。
このように,各種類の画素について,多数個の画素が各発光点像7を検出することによって,発光点1からの発光の4色検出を精度良く行うことができる。例えば,各種類の画素と,発光点像7の相対位置が変動したとしても問題にならない。あるいは,発光点像7内の光強度分布が不均一であったとしても,各色を均等かつ安定に検出できる。図6に示す多色検出装置では,各発光点1の径d,各発光点1及び各集光レンズ2の間隔p,各集光レンズ2の焦点距離f,有効径D,各集光レンズ2とセンサ11の光学的な距離gが,式(3)~(7),式(8)~(12),及び式(16)~(18)のそれぞれの,いずれかが満足され,所定の高感度と低クロストークを実現するとともに,検出装置の小型化と低コスト化を実現している。
一方,図6のように複数種類の画素が同一平面上に配列されているカラーセンサを用いる場合,入射光の利用効率が低いことが課題である。例えば,図6のように,4種類の画素が配列されたカラーセンサで4色を識別する場合,入射光の利用効率は1/4以下になってしまう。これは,より高感度な発光検出を行う場合の障害となる場合がある。入射光の利用効率は,複数種類の画素がセンサ表面と垂直方向に配列されているカラーセンサを用いることで改善される可能性があるが,そのようなカラーセンサはまだ一般的に用いられていない状況である。そこで,次に,入射光の利用効率の高い他の多色検出の方法を提案する。
入射光の利用効率を高める手段のひとつに,1種類以上のダイクロイックミラー(以降,略してダイクロと呼ぶ)を用いる方法がある。ダイクロは,ガラス等の透明基板の少なくとも片側の正面に多層膜を形成し,一般に45°で入射した光の反射光と透過光が異なる波長帯の光となるようにするものであり,反射光と透過光の両方を活用することによって,入射光の利用効率を高めることができる。一般に,1種類のダイクロを用いれば最大2色検出,2種類のダイクロを組み合わせれば最大3色検出,同様にN種類のダイクロを組み合わせれば最大N+1色検出が可能である。上記のダイクロに加えて,バンドパスフィルタ,色ガラスフィルタ,又は全反射ミラーを併用する場合も多い。一般消費者向けのデジタルビデオカメラでは,3種類のダイクロを組み合わせ,3個のCCDを用いて3色検出を行っているものがある。また,非特許文献1は,3種類のダイクロを組み合わせ,4個のCCDを用いて4色検出を行っている例である。これらのように,ダイクロを用いる方法では,反射光と透過光の進行方向が異なることから複数のセンサを用いる場合が多い。このことは,本発明の目的である検出装置の小型化,及び低コスト化と相反する。
図7は,これらの課題を解決した多色検出装置の例を示す。図7(a)は集光レンズ2の各光軸を含む平面に垂直方向から見た多色検出装置,図7(b)はひとつの集光レンズ2の光軸を含み,集光レンズアレイの配列方向に垂直な多色検出装置の断面,図7(c)は2次元センサ30で検出されるイメージ29を示す。ここでは4色検出を行う例を示す。
例として4個の発光点アレイの各発光点1からの発光を,それぞれ個別の集光レンズ2により集光して光束9として,共通のロングパスフィルタ10を並列に透過させるまでは図6と同様である。ここでは,共通の4種類のダイクロ17,18,19,及び20を図7(b)のように並べて配置したダイクロアレイを用いる。各光束9を,各ダイクロ17~20にそれぞれ並列に入射させ,発光点アレイ方向と垂直方向に,光束21,22,23,及び24に4分割し,かつ,それぞれを光束9と同一方向,すなわち,集光レンズ2の光軸方向に進行させ,共通の2次元センサ30に並列に入射させ,発光点像25,26,27,及び28を形成させる。ここで,ダイクロ20は全反射ミラーで置き換えても良いが,以降では簡単のため,ダイクロ28と呼ぶ。
図7(c)に示す通り,2次元センサ30のイメージ29上に,4個の発光点1からの発光が4分割された16個の発光点像25~28が一括して観察される。ここで,光束9の内,ダイクロ17を透過する光束が光束21,ダイクロ17及び18で反射する光束が光束26,ダイクロ17で反射してダイクロ18を透過してダイクロ19で反射する光束が光束23,ダイクロ17で反射してダイクロ18及び19を透過してダイクロ20で反射する光束が光束24である。ロングパスフィルタ10及びダイクロ17~20の透過特性及び反射特性を設計,制御することにより,光束21は主にA蛍光,光束22は主にB蛍光,光束23は主にC蛍光,光束24は主にD蛍光の成分を有するようにし,発光点像25,26,27,及び28の強度を検出することによって,A,B,C,及びD蛍光を検出できるようにする。
光束21,22,23,及び24の波長帯は任意に設計して良いが,これらが波長順に並んでいる方がダイクロ17~20の設計が容易である。つまり,A蛍光の中心波長>B蛍光の中心波長>C蛍光の中心波長>D蛍光の中心波長とするか,あるいは,A蛍光の中心波長<B蛍光の中心波長<C蛍光の中心波長<D蛍光の中心波長とするのが良い。また,図7には図示しないが,光束21,22,23,及び24の少なくとも1箇所以上の位置に,それぞれ異なる分光特性を有するバンドパスフィルタ,あるいは色ガラスフィルタを配置し,ダイクロ17~20の分光特性を補ったり,高めたりすることは有効である。さらに,図7には図示しないが,発光点1に発光をもたらすための励起光等の照射光を備えることは有効である。そのような照射光は,集光レンズ2を用いずに,集光レンズ2の光軸と垂直方向から照射すると,照射光が集光レンズ2を介してセンサに入射する比率を下げられるため,感度的に有利である。また,ロングパスフィルタ10の代わりに,ダイクロ17~20とは別のダイクロを配置し,照射光を上記ダイクロで反射させてから集光レンズ2で絞って発光点1に照射し,発光点1からの発光は集光レンズ2で集光してから上記ダイクロを透過させ,図7と同様の多色検出装置で検出する,いわゆる落射発光検出の構成とすることも有効である。
図7に示す多色検出装置では,各発光点1の径d,各発光点1及び各集光レンズ2の間隔p,各集光レンズ2の焦点距離f,有効径D,各集光レンズ2とセンサ30の光学的な距離gが,式(3)~(7),式(8)~(12),及び式(16)~(18)のそれぞれの,いずれかを満足することにより,所定の高感度と低クロストークを実現するとともに,検出装置の小型化と低コスト化を実現している。ここで,図7に示すダイクロアレイを用いた多色検出装置を小型化,低コスト化する上での特徴を次の(1)~(10)に纏める。これらの特徴は,必ずしも全てを満たす必要はなく,いずれかひとつでも満たすことは効果的である。
(1)発光点アレイのM個の発光点について,集光レンズアレイによって各発光点からの発光を集光したM個の光束を,それぞれ異なる波長成分を有するN個の光束に分割し,それぞれを同一方向に進行させる。
(2)発光点アレイのM個の発光点について,集光レンズアレイによって各発光点からの発光を集光したM個の光束を,それぞれ異なる波長成分を有するN個の光束に分割し,それぞれを各集光レンズの光軸方向に進行させる。
(3)発光点アレイのM個の発光点について,集光レンズアレイによって各発光点からの発光を集光したM個の光束を,それぞれ異なる波長成分に分割する方向を,発光点アレイ及び集光レンズアレイの配列方向と垂直方向とする。
(4)発光点アレイのM個の発光点について,集光レンズアレイによって各発光点からの発光を集光したM個の光束を,それぞれ異なる波長成分に分割する方向を,各集光レンズの光軸と垂直方向とする。
(5)発光点アレイのM個の発光点について,集光レンズアレイによって各発光点からの発光を集光したM個の光束を,それぞれ異なる波長成分に分割するN個のダイクロを,発光点アレイ及び集光レンズアレイの配列方向と垂直方向に配列する。
(6)発光点アレイのM個の発光点について,集光レンズアレイによって各発光点からの発光を集光したM個の光束を,それぞれ異なる波長成分に分割するN個のダイクロを,各集光レンズの光軸と垂直方向に配列する。
(7)発光点アレイのM個の発光点について,集光レンズアレイによって各発光点からの発光を集光したM個の光束を,それぞれ異なる波長成分にN個に分割したM×N個の光束をセンサに,再集光せずに,直接入射する。
(8)発光点アレイのM個の発光点について,各発光点からの発光を集光する集光レンズアレイの各集光レンズの光軸とセンサ面を垂直とする。
(9)N個の異なる種類のダイクロで構成し,各ダイクロをそれぞれ単一の部材で構成し,発光点アレイのM個の発光点からの発光を個別に集光したM個の光束を各ダイクロに並列に入射する。
(10)発光点アレイのM個の発光点からの発光を個別に集光したM個の光束をそれぞれ異なる波長成分にN個に分割したM×N個の光束を単一のセンサに並列に入射する。
以上では,発光点アレイからの各発光を集光レンズアレイの各集光レンズで集光した各光束を,上記集光レンズ以外の他のレンズによって再集光せずに,センサに直接入射させる場合について説明した。以下では,発光点アレイからの各発光を集光レンズアレイの各集光レンズで集光した各光束を,上記集光レンズ以外の他のレンズによって再集光してからセンサに入射させる場合について説明する。以降,各光束について,再集光するためのレンズを再集光レンズと呼ぶことにする。
式(1)~(18)の導出にあたっては,集光レンズとセンサの光学的な距離をgとしたが,再集光レンズを用いる場合は,集光レンズと再集光レンズの光学的な距離をgとすれば,式(1)~(18)がそのまま高感度及び低クロストークの条件とすることができる。つまり,図3あるいは図4において,発光点像7の位置が,センサの位置ではなく,再集光レンズの位置と考えれば良い。仮に,再集光レンズの位置で,高感度及び低クロストークの条件になっていなければ,例えば,隣り合う光束の重なりが大き過ぎれば,再集光レンズ以降の構成がいかなるものであっても,高感度及び低クロストークの性能が改善することはないためである。集光レンズから光路長gの位置に,集光レンズと同数の再集光レンズを,対となる集光レンズと再集光レンズの光軸を一致させて,間隔pで配列する。再集光レンズの有効径を,集光レンズの有効径と等しく,Dとすることによって,再集光レンズによる検出光量のロスを抑え,かつ再集光レンズアレイを構築することができる。センサは,再集光レンズよりも後段の,集光レンズからの光路長がgよりも大の位置に配置する。このように考えれば,図3あるいは図4での高感度,低クロストークを実現するための条件が,再集光レンズを用いる場合にも,そのまま成立することが分かる。
図8は,波長分散素子及び再集光レンズアレイを用いた多色検出装置の例を示す模式図である。図8(a)は集光レンズ2の各光軸を含む平面に垂直な方向から見た多色検出装置の模式図,図8(b)はひとつの集光レンズ2及び対となる再集光レンズ33の光軸を含み,集光レンズアレイ及び再集光レンズアレイの配列方向に垂直な多色検出装置の断面模式図,図8(c)は2次元センサ37で検出されるイメージ42を示す図である。ここでは3色検出を行う例を示す。
図8(a)に示すように,発光点1からの発光を集光レンズ2により集光して光束9としてロングパスフィルタ10を透過させるまでは図6と同様である。その後,図8(b)に示すように,各光束9を,波長分散素子である,共通の透過型回折格子31に並列に入射させて発光点アレイ方向と垂直方向に波長分散させ,再集光レンズ33で再集光し,2次元センサ37に入射させる。ここで,光束34,35,及び36はそれぞれ,A,B,及びC蛍光の中心波長の光束を示す。図8(c)に示すように,2次元センサ37のイメージ42上で,各発光点1からの発光の波長分散像41が得られる。ここで,波長分散像41の内,像38,39,及び40はそれぞれ,A,B,及びC蛍光の中心波長の光束の像を示す。
図8に示す多色検出装置では,各発光点1の径d,各発光点1及び各集光レンズ2の間隔p,各集光レンズ2の焦点距離f,有効径D,各集光レンズ2と各再集光レンズ33の光学的な距離gが,式(3)~(7),式(8)~(12),及び式(16)~(18)のそれぞれの,いずれかを満足することにより,所定の高感度と低クロストークを実現するとともに,検出装置の小型化と低コスト化を実現している。
図8では,再集光レンズを用いる場合は,集光レンズと再集光レンズの光学的な距離をgとして,式(3)~(7),式(8)~(12),及び式(16)~(18)のそれぞれの,いずれかを満足させることが良いことを示した。同様に,発光点アレイの各発光点からの発光をそれぞれ個別に集光して光束とする集光レンズからの光学的な距離がgの位置に,各光束を互いに異なる方向に進行させる光学素子,あるいは,各光束の間隔を拡大させる光学素子を配置し,式(3)~(7),式(8)~(12),及び式(16)~(18)のそれぞれの,いずれかを満足させることは有効である。
例えば,図9は,光学素子として,図6のロングパスフィルタ10の後段にプリズム43を配置することにより,各光束9を,互いに異なる方向に進行させてから,共通の2次元カラーセンサ11に並列に入射して検出している。図9(a)は集光レンズ2の各光軸を含む平面に垂直方向から見た多色検出装置,図9(b)は2次元カラーセンサ11で検出されるイメージ12を示す。プリズム43は,各光束9の入射位置によって,屈折の方向と角度が変化し,屈折後の各光束44の間隔が拡大するようにしている。集光レンズ2とプリズム43の光学的な距離をgとすれば,式(1)~(18)がそのまま高感度及び低クロストークの条件となる。加えて,2次元カラーセンサ11のイメージ12上の発光点像45の間隔が,図6の場合と比較して拡大するため,プリズム43以降でのクロストークの増大を回避し,各発光点1からの発光の独立検出が容易となる。また,発光点像45の間隔が大きいため,図9のようにセンサが共通の2次元カラーセンサである必要は必ずしもなく,各光束44を個別のカラーセンサで検出することも可能である。プリズム43を図7の構成に適用する場合は,プリズム43をロングパスフィルタ10とダイクロアレイの中間に配置するのが良い。集光レンズ2とプリズム43の光路長は,集光レンズ2と2次元センサ30の光路長よりも小さくすることができるため,低クロストークの条件を満たすことがより容易になる。また,図7(c)における発光点像25~28の,光束分割方向の間隔は変化しないが,発光点アレイ方向の間隔が広がるため,クロストークを低減することが容易となる。
以上のように,ダイクロ,フィルタ,全反射ミラー,回折格子,及びセンサ等を複数の発光点について共通化することによって装置構成が簡略化され,実装が容易化される。また,検出装置の全体サイズが小型化される。さらに,以上の構成によれば,各発光点について検出効率及び分光精度は等価であり,感度及び色識別のばらつきを低減することが可能である。
図10は,光学素子として,図6のロングパスフィルタ10の後段に光ファイバ46を配置した例である。各光束9を,個別の光ファイバ46の入射端より入射させ,相互の間隔を拡大した出射端より出射させ,出射した光束47を共通の2次元カラーセンサ11に並列に入射して検出している。図10(a)は集光レンズ2の各光軸を含む平面に垂直方向から見た多色検出装置,図10(b)は2次元カラーセンサ11で検出されるイメージ12を示す。
集光レンズ2と光ファイバ46の入射端の光学的な距離をgとすれば,式(1)~(18)がそのまま高感度及び低クロストークの条件となる。加えて,2次元カラーセンサ11のイメージ12上の発光点像48の間隔が,図6の場合と比較して拡大するため,光ファイバ46以降でのクロストークの増大を回避し,各発光点1からの発光の独立検出が容易となる。また,発光点像48の間隔が大きいため,図10のようにセンサが共通の2次元カラーセンサである必要は必ずしもなく,各光束47を個別のカラーセンサで検出することも可能である。光ファイバ46を図7の構成に適用する場合は,光ファイバ46の入射端を図7の2次元センサ30の位置,つまりダイクロアレイの後段に配置するのが良い。また,光ファイバ46は,図7(c)の発光点像25~28のすべてに対応させることができる。これにより,発光点像25~28の相互の間隔や配置を任意に設定できるため,個々を個別のセンサで検出したり,所望の1次元センサや2次元センサで検出することが容易となる。
以下,本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
図11は,キャピラリアレイDNAシーケンサの装置構成例を示す模式図である。図11を用いて分析手順を説明する。まず,複数のキャピラリ49(図11では4本のキャピラリ49を示す)の試料注入端50を陰極側緩衝液60に浸し,試料溶出端51をポリマブロック55を介して陽極側緩衝液61に浸した。ポンプブロック55のバルブ57を閉じ,ポンプブロック55に接続されたシリンジ56により内部のポリマ溶液に加圧し,ポリマ溶液を各キャピラリ49の内部に,試料溶出端51から試料注入端50に向かって充填した。次に,バルブ57を開け,各キャピラリに試料注入端50から異なる試料を注入した後,陰極58と陽極59の間に電源62により高電圧を印加することにより,キャピラリ電気泳動を開始した。4色の蛍光体で標識されたDNAは試料注入端50から試料溶出端51に向かって電気泳動した。
各キャピラリ49の,試料注入端50より一定距離電気泳動された位置(レーザ照射位置52)を被覆除去して同一平面上に配列し,レーザ光源53より発振されたレーザビーム54を,集光してから,配列平面の側方より,配列平面に沿って導入し,各キャピラリ49のレーザ照射位置52を一括照射した。4色の蛍光体で標識されたDNAを各キャピラリ49の内部で電気泳動し,レーザ照射位置52を通過する際に励起し,蛍光を発光させた。各キャピラリ49の内部からの発光は発光点アレイを形成し,各発光は,配列平面に対して垂直方向(図11の紙面に垂直方向)から図6~10に代表される多色検出装置によって検出した。
本実施例では,図11のキャピラリDNAシーケンサにダイクロアレイによる多色検出装置を用いる場合について具体的に説明する。外径0.36mm,内径0.05mmの4本のキャピラリ49のレーザ照射位置52を間隔p=1mmで同一平面上に配列し,径0.05mmに絞ったレーザビーム54を配列平面側方より照射することで,数がM=4個,有効径d=0.05mmの発光点1が間隔p=1mmで配列する発光点アレイを得た。ここで,発光点の有効径は,キャピラリの内径と一致するとした。レーザビーム54の波長は505nm,4色の蛍光(発光極大波長)は,A蛍光(540nm),B蛍光(570nm),C蛍光(600nm),及びD蛍光(630nm)とした。発光点アレイの全幅はAW=p*(M-1)=3mmとした。焦点距離f=1.5mm,有効径D=1mmの4個の集光レンズ2を間隔p=1mmで配列した集光レンズアレイ8の各集光レンズ2により,各発光点1からの発光をそれぞれ集光した。以上のd,p,f,及びDは,発光点毎に,及び集光レンズ毎に等しくすることを基本とするが,必ずしも等しい必要はない。そのような場合は,d,p,f,及びDは,複数の発光点,及び集光レンズについての平均値とする。
図12は,ひとつの集光レンズ2の光軸を含み,集光レンズアレイ8の配列方向に垂直な多色検出装置の断面であるが,図7と異なり,各集光レンズ2の光軸と,ダイクロアレイによる光束の分割後の進行方向が垂直,すなわち各集光レンズ2の光軸と2次元センサ30のセンサ面を平行とした。その他の点は図7に従った。ただし,図12では発光点1を図示省略している。
集光レンズ2から距離3mmの位置に,集光レンズ2の光軸と法線が平行になるように,幅がα=5mm,厚さがβ=1mm,奥行きがγ=5mmのロングパスフィルタ10を配置した。また,幅がα=5mm,厚さがβ=1mm,奥行きがγ=5mmの石英基板(屈折率n0=1.46)の右下正面に多層膜又は単層膜を形成したダイクロ17,18,19,20を,集光レンズ2の光軸に対して法線を45°に傾け,5mm間隔で配置した。図7と同様に,ダイクロ20は,全反射ミラーで置き換えても構わない。図12は,ロングパスフィルタ10,ダイクロ17~20はいずれも,α×βの側面を示しており,γは紙面に垂直方向である。また,ダイクロ17,18,19の左上正面に,反射ロスを低減するための反射防止膜を形成した。さらに,ダイクロ17,18,19,及び20の全側面には,意図しない迷光を防ぐため,光の透過を防ぐ遮光膜を形成した。集光レンズ2から距離5mmの位置に(つまり,ロングパスフィルタ10から距離2mmの位置に),ダイクロ17の右端を配置した。ダイクロ17,18,19,及び20の上端,下端をそれぞれ同一平面上に配置した。ダイクロ17,18,19,及び20の下端から距離5mmの位置に2次元センサ30を配置した。以上の光学系要素はいずれも空中に配置した。空中配置とするのは,ダイクロの分光性能が高くなるためである。
図12に示す11本の光束要素65は,上記のダイクロアレイによって入射する平行な光束を設計通りに4分割することができ,かつ光束の幅が最大となる場合の光束を示し,反射の法則,屈折の法則を用いて,それらの光路を計算した結果を示している。以降,上記の最大光束幅を,ダイクロアレイの開口幅63と呼び,その大きさをWで表す。開口幅は,ダイクロアレイが入射する光束を設計通りに良好に分割することができる,光束の最大幅を意味する。開口幅Wと,発光点1からの発光を集光レンズ2で集光して得られる光束の,集光レンズ2からの光路長sにおける幅d’(s)は一般には異なる。d’(s)は実際の光束の幅であるのに対して,Wは与えられた条件下の多色検出装置が受け入れることができる光束の幅の最大値を示している。つまり,集光レンズ2で集光した光束の光量をロスせずに分割するためには,W≧d’(s)とするのが良い。また,Wは大きいほど,集光レンズ2で集光した光束の中心軸と,開口幅63の中心軸のずれに対する許容度が増すので良い。集光レンズ2から左に進行する11本の光束要素65は,光束の開口幅63内で等間隔とし,互いに平行とした。
図12に示した通り,各光束要素65は,各ダイクロ17~19を通過する際に,内部屈折により上側に順次平行移動した。この影響を低減するため,集光レンズ2の光軸,及び集光レンズから出射する光束要素の中心は,ダイクロ17の右下正面の中央よりも下側に配置した。一方,集光レンズ2と2次元センサ30の光学的な距離である光路長sは,図12から明らかなように,4つに分割された光束によって異なり,ダイクロ17~19を透過し,ダイクロ20で反射する光束が最大の光路長64を与える。以降では,集光レンズとセンサの間に複数の光路が存在する場合,その内の最も長い光路の光路長64を,その光検出装置の光路長とし,その大きさをgで表す。図12の多色検出装置については,開口幅63はW=2.1mm,光路長64はg=29mmと計算された。以上のW及びgは,発光点毎に,及び集光レンズ毎に等しくすることを基本とするが,必ずしも等しい必要はない。そのような場合は,W及びgは,複数の発光点,及び集光レンズについての平均値とする。
発光点1と,焦点距離がf=1.5mmの集光レンズ2の光学的な距離を約1.58mmとすることによって,発光点1からの発光を,集光レンズ2から光学的な距離がg=29mmにおいて,式(1)より像倍率がm=18.3,式(2)より径がd=0.05mmの発光点1の発光点像7の径がd’=0.92mmで結像した。上記d’と比較して集光レンズの有効径D=1mmの方が大であるため,集光レンズ2からの光路長sが0mm≦s≦29mmに対して,d’(s)≦1mmであり,d’(s)≦W=2.1mmが成立した。したがって,ダイクロ17~20で4個に分割した光束は,いずれもロスなく,2次元センサ30に到達させることができた。
以上の多色検出装置では,式(4),式(9),及び式(18)が満足され,相対検出光量が100%以上,厳密な相対検出光量が100%以上,クロストークが0%の高感度,低クロストーク条件が得られることが分かった。多色検出装置のサイズは,発光点アレイの全幅AW=3mm,図12に示す通り,集光レンズ2の光軸方向の幅24.2mm,集光レンズ2の光軸及び発光点アレイに垂直方向の幅9.2mmで規定される直方体の体積(668mm2)よりも小さくすることができる。すなわち,特許文献1の場合と比較して,蛍光検出装置の全体サイズを1/2,400倍に小型化できる。また,用いる光学素子はいずれも微細であるため,大幅な低コスト化が可能である。以上のm及びd’は,発光点毎に,及び集光レンズ毎に等しくすることを基本とするが,必ずしも等しい必要はない。そのような場合は,m及びd’は,複数の発光点,及び集光レンズについての平均値とする。
[実施例2]
実施例1の図12の多色検出装置では,ダイクロアレイ,集光レンズアレイ,発光点アレイの配列方向は,いずれも2次元センサ30のセンサ面と平行に配列するため,これらの間で立体障害は発生しない。しかしながら,キャピラリアレイの各キャピラリ49の配列平面は2次元センサ30のセンサ面と垂直となるため,これらの立体障害が発生する場合があり,装置構成上の課題となる。そこで,本実施例では本課題を解決する多色検出装置を提案する。
キャピラリDNAシーケンサにおける,キャピラリアレイから集光レンズアレイまでの構成は実施例1と同様とし,図12の構成を図13の構成に置き換えた。図13は,ひとつの集光レンズ2の光軸を含み,集光レンズアレイ8の配列方向に垂直な多色検出装置の断面模式図であり,図7と同様に,各集光レンズ2の光軸と分割後の光束の進行方向が平行,すなわち各集光レンズ2の光軸と2次元センサ30のセンサ面を垂直とした。集光レンズ2から距離3mmの位置に,集光レンズ2の光軸と法線が平行になるように,幅がα=5mm,厚さがβ=1mm,奥行きがγ=5mmのロングパスフィルタ10を配置した。また,幅がα=5mm,厚さがβ=1mm,奥行きがγ=5mmの石英基板(屈折率n0=1.46)の,左上正面に多層膜を形成したダイクロ17,右下正面に多層膜又は単層膜を形成したダイクロ18,19,及び20を,集光レンズ2の光軸に対して法線を45°に傾け,5mm間隔で配置した。ダイクロ17の右下正面,ダイクロ18,19の左上正面に,反射ロスを低減するための反射防止膜を形成した。さらに,ダイクロ17,18,19,及び20の全側面には,意図しない迷光を防ぐため,光の透過を防ぐ遮光膜を形成した。
集光レンズ2から距離5mmの位置にダイクロ17の上端を配置した。ダイクロ17,18,19,20の上端,下端をそれぞれ同一平面上に配置した。ダイクロ17,18,19,及び20の下端から距離5mmの位置に2次元センサ30を配置した。以上の光学系要素はいずれも空中に配置した。図12と同様に,11本の光束要素65を示す。この結果,図13の多色検出装置については,開口幅63はW=1.7mm,光路長64はg=28mmと計算され,図12と同等の性能が得られた。
発光点1と集光レンズ2の光学的な距離を約1.58mmとすることによって,発光点1からの発光を,集光レンズ2から光学的な距離がg=28mmにおいて,像倍率がm=17.7,発光点像7の径がd’=0.88mmで結像した。上記d’と比較して集光レンズの有効径D=1mmの方が大であるため,集光レンズからの光学的距離sが0mm≦s≦28mmに対して,d’(s)≦1mmであり,d’(s)≦W=1.7mmが成立した。したがって,ダイクロ17~20で4個に分割した光束は,いずれもロスなく,2次元センサ30に到達させることができた。
以上の多色検出装置では,式(4),式(9),及び式(18)が満足され,相対検出光量が100%以上,厳密な相対検出光量が100%以上,クロストークが0%の高感度,低クロストーク条件が得られることが分かった。多色検出装置のサイズは,発光点アレイの全幅AW=3mm,図13に示す通り,集光レンズ2の光軸方向の幅14.2mm,集光レンズ2の光軸及び発光点アレイの配列方向に垂直方向の幅19.2mmで規定される直方体の体積(818mm2)よりも小さくすることができる。すなわち,特許文献1の場合と比較して,蛍光検出装置の全体サイズを1/2,000倍に小型化できる。また,用いる光学素子はいずれも微細であるため,大幅な低コスト化が可能である。
図13の多色検出装置では,ダイクロアレイ,集光レンズアレイ,発光点アレイの配列方向,さらにキャピラリアレイの配列平面のいずれも2次元センサ30のセンサ面と平行に配列するため,これらの立体障害は発生しないため,これらの実装が容易となった。
[実施例3]
実施例1及び実施例2の条件における,各キャピラリ49の内径,すなわち発光点1の径d=0.05mmを,d=0.075mmに拡大した条件について検討する。図13の多色検出装置を用い,発光点1からの発光を,光路長g=28mmにおいて,像倍率がm=17.7,発光点像7の径がd’=1.33mmで結像させた。上記d’は,集光レンズの有効径D=1mmよりも大であるため,集光レンズからの光学的距離sが0mm≦s≦28mmに対して,d’(s)≦1.33mmであり,d’(s)≦W=1.7mmが成立した。したがって,図13と同様に,ダイクロ17~20で4個に分割した光束は,いずれもロスなく,2次元センサ30に到達させることができた。
しかし,以上の多色検出装置では,式(4),式(9)は図13と同様に満足されるものの,式(18)が満足されず,式(17)が満足された。したがって,相対検出光量が100%以上,厳密な相対検出光量が100%以上,クロストークは25%以下の高感度,低クロストーク条件となり,クロストークについては図13よりも劣化することが分かった。そこで,本実施例では,光路長gを縮小することによって,像倍率m及び発光点像7の径d’を縮小し,クロストークを低減することを狙う。光路長gを縮小するためには,各ダイクロ17~20の,サイズ及び配列間隔を縮小することが有効と考えられる。
図14は,図13の条件における,ロングパスフィルタ10及びダイクロ17~20を,幅がα=5mm,厚さがβ=1mm,奥行きがγ=5mmから,幅がα=2.5mm,厚さがβ=1mm,奥行きがγ=5mmに縮小し,ダイクロ17~20の配列間隔をx=5mmからx=2.5mmに縮小した場合の結果を示している。
このとき,図14において,ダイクロ17の左端とダイクロ18の右端の横方向(集光レンズ2の光軸と垂直方向)の位置が一致する。同様に,ダイクロ18の左端とダイクロ19の右端,及びダイクロ19の左端とダイクロ20の右端の横方向の位置がそれぞれ一致する。その他の条件は図13と同等とした。図14は,図13と同じスケールで示す。
その結果,光路長64は,g=28mmからg=19mmに縮小することができた。したがって,式(1)より像倍率がm=11.7,式(2)より発光点像の径がd’=0.88mmとなり,式(4),(9)に加えて,式(18)が満足されるようになった。つまり,相対検出光量が100%以上,厳密な相対検出光量が100%以上,クロストークは0%以下の高感度,低クロストーク条件となった。しかしながら,開口幅63がW=1.7mmからW=0.03mmに大幅に縮小されること,つまり集光レンズ2で集光された光束をロスなく2次元センサ30に到達させることが不可能であることが明らかとなった。これは,各ダイクロのサイズと間隔の縮小に伴って,それぞれの厚さβ=1mmの相対的な比率が増大したため,光束が各ダイクロを通過する際に,内部屈折により上側に順次平行移動する影響を無視できなくなったためである。
そこで,上記影響を解消するため,図15に示す通り,ダイクロ17~20を同一平面配置から段ずれ配置に変更した。すなわち,上記平行移動に応じて,ダイクロ17~20の集光レンズ2の光軸方向の相対位置を同一平面から変化させた。以下で,図14との相違点を説明する。まず,集光レンズ2から距離6.3mmの位置にダイクロ17の上端を配置した。次に,ダイクロ18の下端を,ダイクロ17の下端と比較して,ダイクロ17を透過した光束の進行方向と反対側に,つまり図15で上側に,y=0.7mmだけずらした。続いて,ダイクロ19の下端を,ダイクロ18の下端と比較して,ダイクロ18で反射した光束の進行方向と反対側に,つまり図15で上側に,z=0.3mmだけずらした。最後に,ダイクロ20の下端を,ダイクロ19の下端と比較して,ダイクロ19で反射した光束の進行方向と反対側に,つまり図15で上側に,z=0.3mmだけずらした。
以上の結果,開口幅63が,図14のW=0.03mmから,W=1.3mmに大幅に拡大できることが判明した。一方,光路長64がg=21mmと,図14よりわずかに増大したため,式(1)より像倍率がm=13,式(2)より発光点像の径がd’=0.98mmとなった。上記d’と比較して集光レンズの有効径D=1mmの方が大であるため,集光レンズからの光路長sが0mm≦s≦21mmに対して,d’(s)≦1mmであり,d’(s)≦W=1.3mmが成立した。したがって,ダイクロ17~20で4個に分割した光束は,いずれもロスなく,2次元センサ30に到達させることができた。
以上の多色検出装置では,図14と同様に,式(4),式(9),及び式(18)が満足され,相対検出光量が100%以上,厳密な相対検出光量が100%以上,クロストークが0%の高感度,低クロストーク条件が得られることが分かった。多色検出装置のサイズは,発光点アレイの全幅AW=3mm,図15に示す通り,集光レンズ2の光軸方向の幅13.8mm,集光レンズ2の光軸及び発光点アレイの配列方向に垂直方向の幅10mmで規定される直方体の体積(414mm2)よりも小さくすることができる。すなわち,特許文献1の場合と比較して,蛍光検出装置の全体サイズを1/3,900倍に小型化できる。また,用いる光学素子はいずれも微細であるため,大幅な低コスト化が可能である。
[実施例4]
以上の実施例で明らかにしたように,ダイクロアレイを用いた多色検出装置では,開口幅Wの拡大と,光路長gの縮小というトレードオフの関係にあるふたつを両立させることが重要であり,この両立は装置の小型化に伴って困難となった。実施例3で示したダイクロアレイの配列間隔x,及び段ずれy及びzの調整は,この課題を解決する効果的な手段であった。本実施例では,上記の配列間隔と段ずれ配置を一般化し,開口幅Wの拡大と光路長gの縮小を両立する一般解を導出する。本発明におけるダイクロの配置の端的な特徴は,ダイクロの厚さβを考慮している点である。従来は,ダイクロのサイズ(α及びγ)が十分大きいために,βを考慮しなくても支障がなかったが,これらを小型化する場合,βを考慮した配置が重要なのである。特に,各ダイクロを,空中ではなく,ガラス材の内部に設置する場合は,β=0と考えて支障がなかった。
図16は,ひとつの集光レンズ2の光軸を含み,集光レンズアレイ8の配列方向に垂直な多色検出装置の断面模式図であり,ダイクロの幅α,厚さβが与えられたとき,開口幅Wを最大とし,光路長gを最小とする多色検出装置の構成を示している。図15における,集光レンズ2,ロングパスフィルタ10,2次元センサ30は図示を省略した。
図16において,上から下に向かって入射する開口幅Wの光束70は,ダイクロM(1),M(2),M(3),…,及びM(N)で反射及び透過を順次繰り返し,上から下に向かって出射する光束F(1),F(2),F(3),…,及び光束F(N)を得ている。ダイクロの数,すなわち光束70の分割数は,図16で例として4個としているが,本実施例では一般化してN個(N≧2)とする。もちろん,N番目のダイクロM(N)は全反射ミラーで置き換えても良い。以上では,図12~15に示すように,発光検出装置の光路長gを,集光レンズ2からセンサ30までの最大長の光路の光路長で定義した。以降では,光路長gの一部として,ダイクロアレイの光路長Lを,図16に示すように,最大長の光路(光束70から光束F(N)に至る光路)における,光束70の光軸上のダイクロアレイの最上端(ダイクロM(N)の上端)と同じ高さの位置から,光束F(N)の光軸上のダイクロアレイの最下端(ダイクロM(1)の下端)と同じ高さの位置までの光路長で定義する。
各ダイクロは,屈折率n0の透明基板の少なくとも一方の正面に光学的な膜が形成されたものであり,空気中に,間隔xで配置した。各ダイクロについて,図16において左上正面から左上方向に向かう法線ベクトルを定義する。各ダイクロを,各法線ベクトルが,光束70の進行方向と反対方向(図16で下から上に向かう方向)に対して角度θ0(0≦θ0≦90°)だけ傾くように傾けた。図16では,θ0=45°で描いているが,本実施例では,0°≦θ0≦90°の任意のθ0とする。以上より,各ダイクロM(1)~M(N)を,互いに略平行,かつ略等間隔に配列した。また,ダイクロM(2)の下端を,ダイクロM(1)の下端に対して,yだけ上側に,すなわちyだけ光束F(1)の進行方向と反対方向に,ずらして配置した。さらに,ダイクロM(3)の下端を,ダイクロM(2)の下端に対して,zだけ上側に,すなわちzだけ光束F(2)の進行方向と反対方向に,ずらして配置した。同様に,3≦n≦Nとして,ダイクロM(n)の下端を,ダイクロM(n-1)の下端に対して,zだけ上側に,すなわちzだけ光束F(n-1)の進行方向と反対方向に,ずらして配置した。
このとき,ダイクロM(1)の入射面における光束の入射角はθ0であり,ダイクロM(1)の入射面(左上正面)における光束の屈折角θ1は,
[式19]
θ1=sin-1(1/n0*sinθ0)
である。また,ダイクロM(2)~M(N)の入射面(右下正面)における光束の入射角は90°-θ0であり,ダイクロM(2)~M(N)の入射面における光束の屈折角θ2は,
[式20]
θ2=sin-1(1/n0*sin(90°-θ0))
である。光束70の内,右端を光束右端66として点線で示し,左端を光束左端67として一点鎖線で示し,それぞれ光束F(1),F(2),F(3),…,及び光束F(N)の右端,左端まで追跡して描いた。
図16に従い,開口幅Wを最大とし,光路長Lを最小とするベストモードの二つの条件を次に記す。第一に,光束右端66が,△で示す,ダイクロM(1),M(2),…,及びM(N-1)の左端の角69を通過,もしくはかすめることである。第二に,光束左端67が,○で示す,ダイクロM(1)の下端の角68と,ダイクロM(2),…,及びM(N-1)の左端の角69を通過,もしくはかすめることである。以上の条件によれば,図16の幾何学的な関係より,以下の関係式が導出される。まず,各ダイクロM(1)~M(N)の間隔xは,ベストモードにおいて,
[式21]
x=x0=cosθ0*α+sinθ0*β
となる。また,開口幅Wは,ベストモードにおいて,
[式22]
W=W0=aW*α+bW*β
となる。ここで,
[式23]
aW≡cosθ0
[式24]
bW≡-cosθ0*tanθ1
とした。
さらに,光路長Lは,ベストモードにおいて,
[式25]
L=L0=aL*α+bL*β
である。ここで,
[式26]
aL≡(N-1)*cosθ0+sinθ0
[式27]
bL≡(N-2)/cosθ0*(2*sin(90°-θ0-θ2)+1-sin(θ0+θ2))+(N-2)*sinθ0+2*cosθ0
とした。
一方,各ダイクロM(1)~M(N)の段差y,及びzは,ベストモードにおいて,
[式28]
y=y0=cosθ0*β
[式29]
z=z0=sin(90°-θ0-θ2)/cosθ2*β
となる。
以上の通り,x0,W0,L0,y0,及びz0はいずれもα及びβと関連付けられた。
以上のα,β,n0,θ0,x,及びzはダイクロイックミラー及び全反射ミラー毎に等しくすることを基本とするが,必ずしも等しい必要はない。そのような場合は,α,β,n0,θ0,x,及びzは,複数のダイクロについての平均値とする。
以上を逆に解くことにより,目標とする開口幅の最小値Wminを得るためのα,β,及びxを導出できる。W0≧Wmin及び式(22)より,
[式30]
α≧-bW/aW*β+1/aW*Wmin
となり(等号のときベストモード),式(21)より,
[式31]
x≧(sinθ0-bW/aW*cosθ0)*β+1/aW*cosθ0*Wmin
となる(等号のときベストモード)。
同様に,目標とする光路長の最大値Lmaxを得るためのα,β,及びxを導出できる。L0≦Lmax及び式(25)より,
[式32]
α≦-bL/aL*β+1/aL*Lmax
となり(等号のときベストモード),式(21)より,
[式33]
x≦(sinθ0-bL/aL*cosθ0)*β+1/aL*cosθ0*Lmax
となる(等号のときベストモード)。
以上のWmin,及びLmaxは発光点毎に,及び集光レンズ毎に等しくすることを基本とするが,必ずしも等しい必要はない。そのような場合は,Wmin,及びLmaxは,複数の発光点,及び集光レンズについての平均値とする。
図17は,例として,N=4,n0=1.46,θ0=45°の場合について,式(31)及び(33)を満たす範囲を,横軸β,縦軸xで示したものである。パラメータとして,Wmin=0.5,1,2,3,及び4mm,Lmax=5,10,20,30,及び40mmとし,↑は直線より上側の範囲,↓は直線より下側の範囲を示している。例えば,Wmin=0.5mm,かつLmax=20mmとするためには,図17において,↑Wmin=0.5の直線より上側,かつ↓Lmax=20の直線より下側の範囲のβ及びxを選定すれば良いことが分かる。
一方で,与えられた発光点の径d,発光点アレイの間隔pに対して,式(3)~(7)又は式(8)~(12)のいずれかの高感度条件を満たす,集光レンズの焦点距離f,集光レンズとセンサの光路長gを選定し,Wmin=d’,Lmax=gとして,式(31)及び(33)を満たせば,高感度条件のダイクロアレイを用いた小型多色検出装置を構築できる。ここで,式(2)より,d’=(g-f)/f*dとする。同様に,与えられた発光点の径d,発光点アレイの間隔pに対して,式(16)~(18)のいずれかの低クロストーク条件を満たす,集光レンズの焦点距離f,集光レンズとセンサの光路長gを選定し,Wmin=d’,Lmax=gとして,式(31)及び(33)を満たせば,低クロストーク条件のダイクロアレイを用いた小型多色検出装置を構築できる。もちろん,式(3)~(7)又は式(8)~(12)のいずれかの高感度条件,及び,式(16)~(18)のいずれかの低クロストーク条件の両方を満たす,集光レンズの焦点距離f,集光レンズとセンサの光路長gを選定し,Wmin=d’,Lmax=gとして,式(31)及び(33)を満たせば,高感度かつ低クロストーク条件のダイクロアレイを用いた小型多色検出装置を構築できる。
例えば,実施例1に従い,d=0.05mm,p=1mm,f=1.5mm,D=1mm,g=29mmに対して,N=4,n0=1.46,θ0=45°,β=1mm,x=5mmとするとき,式(4),式(9),式(18),式(31),及び式(33)のすべてが満足され,高感度かつ低クロストークなダイクロイックミラーを用いた小型多色検出装置となることが分かる。
次に,各ダイクロM(1)~M(N)の間隔xについて検討を深める。上述の通り,ベストモードにおいては式(21)のx0とするのが最も良いが,ベストモードからどの程度ずれても効果が得られるかを次に詳細に検討する。図18に示す実線は,間隔xと,図15のダイクロ17及び18で得られる開口幅Wの関係を計算した結果である。一般に,ダイクロの総数Nが増えるに従い,トータルの開口幅が上記結果よりも小さくなる可能性があるが,ここではN=2の場合を指標として評価する。図15は,θ0=45°,β=1mmのときの式(21)で計算されるx=x0=2.5mmの条件であるが,このとき,図18に示す通り,開口幅がW=1.3mmと最大になった。x<x0では,|x-x0|に比例してWが減少し,x=1.6mmでW=0mmとなった。これに対して,x>x0では,W=1.3mmで一定となった。一方,図18に示す破線は,間隔xと,図15における,光路長Lの変化量ΔLの関係を示す。ここで,x=x0=2.5mmのとき,ΔL=0mmとし,W=1.3mmと同じ高さになるように表示した。また,Wの縦軸(左側)とΔLの縦軸(右側)のスケールを揃え,ΔLの縦軸を上下反転させた。一般に,ダイクロの総数Nが増えるに従い,ΔLが上記結果よりも大きくなる可能性があるが,ここではN=2の場合を指標として評価する。ΔLは,当然ながら,xに比例して増大した。
図18より,1.6mm≦x≦2.5mmにおけるxに対するWの増加率と,2.5mm≦xにおけるxに対するΔLの増加率は,いずれも傾きが略1で等しかった。つまり,いずれも|x-x0|に比例して性能が低下することが分かった。これに対して従来は,βが考慮されておらず,β=0mmに相当する。このとき,仮に同等の配置とする場合の間隔x0は,式(21)よりx=1.8mmとなり,このとき図18により,W=0.4mmとなる。以上より,従来と同等以上の性能を得るためには,1.8mm≦x≦3.2mmとすれば良いことが分かった。一般には,図16において,2≦n≦Nとして,ダイクロM(n)とM(n-1)の配列間隔xを,
[式34]
cosθ0*α≦x≦cosθ0*α+2*sinθ0*β
とすることによって,開口幅Wを拡大し,光路長Lを縮小することができる。
続いて,各ダイクロM(1)~M(N)の段差y,及びzについて検討を深める。上述の通り,ベストモードにおいては式(28)及び(29)のy0及びz0とするのが最も良いが,ベストモードからどの程度ずれても段差配置の効果が得られるかを次に詳細に検討する。
図19(a)は,段差yと,図15のダイクロ17及び18で得られる開口幅Wの関係を計算した結果である。一般に,ダイクロの総数Nが増えるに従い,トータルの開口幅Wが上記結果よりも小さくなる可能性があるが,ここではN=2の場合を指標として評価する。図15は,θ0=45°,β=1mmのときの式(28)で計算されるy=y0=0.7mmの条件であるが,このとき,図19(a)に示す通り,開口幅がW=1.3mmと最大になった。また,|y-y0|に比例してWが減少し,y=0mm及び1.4mmでW=0.6mm,y=-0.7mm及び2.1mmでW=0mmとなった。ここで,マイナスのyは図15と逆向きの段差を示す。したがって,0mm≦y≦1.4mmとすることで段差の効果が得られることが分かった。
同様に,図19(b)は,段差zと,図15のダイクロ18及び19で得られる開口幅Wの関係を計算した結果である。図15は,θ0=45°,β=1mmのときの式(29)で計算されるz=z0=0.3mmの条件であるが,このとき,図19(b)に示す通り,開口幅がW=1.3mmと最大になった。また,|z-z0|に比例してWが減少し,z=0mm及び0.6mmでW=1mm,y=-1.1mm及び1.7mmでW=0mmとなった。ここで,マイナスのzは図15と逆向きの段差を示す。したがって,0mm≦z≦0.6mmとすることで段差の効果が得られることが分かった。以上を一般化すると次のようになる。図16において,ダイクロM(2)の分割光束進行側の端を,ダイクロM(1)の分割光束進行側の端に対して,分割光束進行方向と反対側にyだけずらし,
[式35]
0≦y≦2*cosθ0*β
とすることによって,開口幅Wを拡大し,光路長Lを縮小することができる。
また,3≦n≦Nとして,ダイクロM(n)の分割光束進行側の端を,ダイクロM(n-1)の分割光束進行側の端に対して,分割光束進行方向と反対側にzだけずらし,
[式36]
0≦z≦2*sin(90°-θ0-θ2)/cosθ2*β
とすることによって,開口幅Wを拡大し,光路長Lを縮小することができる。
以上は,図15及び図16のように,集光レンズの光軸と分割光束進行方向が平行の場合の構成について検討したが,図12のようにこれらが垂直の場合は,2≦n≦Nとして,ダイクロM(n)の分割光束進行側の端を,ダイクロM(n-1)の分割光束進行側の端に対して,分割光束進行方向と反対側にzだけずらし,式(36)の通りにすることによって,開口幅Wを拡大し,光路長Lを縮小することができる。
[実施例5]
実施例3,実施例4では,複数のダイクロの段差配置によって,ダイクロアレイの開口幅Wの拡大と,光路長Lの縮小を実現した。本実施例では,段差配置をしない場合,すなわち,複数のダイクロを同一平面配置する場合,より具体的には,各ダイクロの分割光束進行方向側の端を同一平面上に並べる場合について,開口幅Wの拡大と,光路長Lの縮小を実現する手段を提案する。
実施例3の図14はθ0=45°の場合の結果であるが,θ0=50°とした場合の結果を図20に示す。その他の条件は,図14と図20で等しく,いずれの場合もダイクロ17~20を同一平面配置とした。それにも関わらず,開口幅が,図14では僅かにW=0.03mmに過ぎなかったのに対して,図20ではW=0.9mmと大幅に拡大できることが明らかとなった。最大光路長は両者で変化せず,L=19mmであった。したがって,図14と同様に,像倍率がm=11.7,発光点像の径がd’=0.88mmとなり,式(4),(9)に加えて,式(18)が満足されるようになった。したがって,相対検出光量が100%以上,厳密な相対検出光量が100%以上,クロストークは0%以下の高感度,低クロストーク条件となった。
このような効果が得られた理由を次に検討する。図14に示す通り,θ0=45°の場合は,光束が,異なるダイクロ間の空間では水平に左方向に進行する一方で,各ダイクロの内部では左上方向に進行するため,光束はダイクロを通過する毎に段々に上方向に移動してしまい,そのことが開口幅Wを制限した。これに対して,図20に示す通り,θ0=50°≧45°とすることによって,光束が,異なるダイクロ間の空間では左下方向に進行する一方で,各ダイクロの内部では左上方向に進行するため,両者が相殺され,光束がダイクロを通過する毎の上下方向の移動が抑えられ,そのことが開口幅Wの拡大につながったのである。したがって,θ0は45°以上とするのが良いが,さらに開口幅Wを最大にする最適値が存在するはずである。
図21は,図14及び図20の条件下で,θ0を変化させたときのWを計算した結果である。θ0=45°からWが上昇し,θ0=52°でWが最大値0.92mmとなり,θ0=57°でWが略ゼロまで減衰することが分かった。つまり,45°≦θ0≦57°とすることによって,Wを拡大できることが分かった。
次に,以上を一般化する。図16の議論と同様に,図20の幾何学的な関係から以下を導出する。ダイクロM(1)の入射面における光束の屈折角θ1は式(19)の通りであり,ダイクロM(2)~M(N-1)の入射面における光束の屈折角θ2は式(20)の通りである。異なるダイクロ間の空間で左下方向に進行する光束の下方向の移動距離S↓は,
[式37]
S↓=tan(2*θ0-90°)*tanθ0/(tanθ0-tan(2*θ0-90°))*(x-β/cos(90°-θ0)
で求められる。一方,各ダイクロの内部で左上方向に進行する光束の上方向の移動距離S↑は,
[式38]
S↑=1/cosθ2*β*sin(90°-θ0-θ2)
で求められる。ここで,βは各ダイクロの厚さ,xは各ダイクロの間隔を示す。図20のように,S↓とS↑を相殺させるためには,S↓=S↑とするのが最も良い。そこで,このベストモードにおけるθ0をθ0(BM)とする。
式(37),(38)を図20の条件であるβ=1mm,x=2.5mmに適用したところ,θ0(BM)=50°と求められた。すなわち,図20の構成はベストモードの構成である。しかしながら,図21によれば,Wが最大になるのはθ0=52°であり,上記のθ0(BM)より2°だけ大きくなっている。これは,θ0をθ0(BM)より若干大きく,すなわちS↓をS↑より若干大きくして光束を段々左下に進行させた方が,Wを若干大きくできることを示している。
以上より,従来の基準であるθ0=45°の場合に対して,Wを有意に拡大するための条件は,
[式39]
45°≦θ0≦2*θ0(BM)-45°
である。また,上記の2°のずれを考慮すると,より正確な条件は,
[式40]
45°≦θ0≦2*θ0(BM)-43°
となる。
[実施例6]
図22は,図6の構成において,発光点のサイズが比較的大きい場合の発光検出装置を示す模式図である。発光点71の径はd=0.5mm,間隔はp=1mmと,実施例1と比較して発光点のサイズが一桁大きい。発光点71はそれぞれ,0.5mm×0.5mm×0.5mmの立方体の反応セルで構成し,内部の化学反応によって化学発光を生じさせた。この化学発光の波長,強度の時間変化を発光点71毎に調べることによって,各反応セルに導入された試料を分析した。集光レンズ2の焦点距離はf=1mm,有効径はD=1mm,間隔はp=1mm,集光レンズ2と2次元カラーセンサ11の光学的距離はg=10mmとした。発光点71及び集光レンズ2の配列方向は,図22(a)の横方向だけでなく,図22(a)の紙面に垂直方向にも等間隔で配列しても良い。本実施例では,励起光源を必要としないため,図6のロングパスフィルタ10は省略した。
図22(a)に示すように,2次元カラーセンサ11のセンサ面で発光点71を結像させると,式(1)によりm=9,式(2)によりd’=4.5mmとなった。このとき,式(6)及び式(10)が満足され,相対検出光量400%以上,厳密な相対検出光量200%以上となった。一方で,図22(a)の光束9に示す通り,異なる発光点71間のクロストークが非常に大きく,式(16)~(18)がいずれも満たされなかった。
そこで,図22(b)に示すように,各発光点71と対応する各集光レンズ2の中間にそれぞれピンホール72を有するピンホールアレイ73を配置した。各ピンホール72の径d0は,d0≦dであり,ここでは,d0=0.1mmとした。各ピンホールの間隔はp=1mmとした。ピンホールの配列方向は,図22(b)の横方向だけでなく,図22(a)の紙面に垂直方向にも等間隔で配列しても良い。ここで,発光点71ではなく,ピンホール72を発光点と見なし,図22(b)のように,2次元カラーセンサ11のセンサ面でピンホール72を結像させ,ピンホール像74を形成すると,ピンホール像74の径は式(2)によりd’=0.9mmとなった。このとき,式(18)が満足され,クロストークを0%とすることができた。図22(a)と同様に,式(6)及び式(10)が満足され,相対検出光量400%以上,厳密な相対検出光量200%以上となった。ただし,これはピンホール72を通過した全光量を基準にしたものであり,図22(a)の発光点71から発光した全光量を基準にしたものよりも小さい。
図23は,図22(b)と同様の検出装置を応用する他の例を示す模式図である。図23(a)に示すように,発光点75の径はd=0.01mm,間隔はp’=0.1mmである一方で,集光レンズ2の焦点距離はf=1mm,有効径はD=1mm,間隔はp=1mm,集光レンズ2と2次元カラーセンサ11の光路長はg=10mmである。つまり,以上の実施例と異なり,発光点の間隔と集光レンズの間隔が異なり,p’<pの場合の例である。発光点75,集光レンズ2は,図23(a)の紙面に垂直方向にも等間隔で配列しても良い。2次元カラーセンサ11のセンサ面で発光点75を結像させると,図22(a)の場合よりもさらに広範囲の多数の発光点75からの発光が個々の集光レンズ2で集光されるため,クロストークが一層増大してしまう。
そこで,図23(b)のように,各発光点75と対応する各集光レンズ2の中間にそれぞれピンホール72を有するピンホールアレイ73を配置した。各ピンホール72は,それぞれ対応する集光レンズ2に位置合わせされて配置されている。各ピンホール72の径はd0=0.1mm,間隔p=1mmとし,d0≧dとした。ピンホールは,図23(b)の紙面に垂直方向にも等間隔で配列しても良い。ここで,発光点アレイとピンホールアレイ73を十分近接させることにより,各発光点75及び各ピンホール72を2次元カラーセンサ11のセンサ面に一括して結像させ,それぞれ発光点像76とピンホール像74を形成した。式(2)よりピンホール像74の径は0.9mmとなり,異なるピンホール像74間のクロストークが0%となることは図22(b)と同様である。一方,各集光レンズ2が各ピンホール72を通して平均2個の発光点75からの発光を集光し,2次元カラーセンサ11のセンサ面の各ピンホール像74の内部にそれぞれの発光点像76を形成した。各発光点像76の径は0.09mm,間隔は0.9mmであるため,異なる発光点像76間のクロストークもなかった。
図23(b)は,集光レンズの間隔よりも細かい間隔で配列する発光点からの発光を高感度,低クロストークに多色検出することを可能とする構成であるが,多数の発光点の内の一部の発光点のみしか検出できない。図23(b)の場合,10個の発光点の内,平均して2個の発光点のみが検出されている。そこで,図23(b)において,発光点アレイと,ピンホールアレイ73以降の検出装置の相対位置を例えば矢印方向に順次ずらすことにより,すなわち多数の発光点の内,検出対象となる発光点をスキャンすることにより,すべての発光点を検出することができるようになる。
以上では,2次元カラーセンサを用いた多色検出装置を用いたが,もちろん2次元カラーセンサの代わりに2次元モノクロセンサを用いた検出装置としても構わない。また,図7に示すような,ダイクロアレイを用いた多色検出装置を用いても良い。
図24(a)は,本実施例で用いる,ダイクロアレイを用いた多色検出装置の例を示す模式図であり,図7(b)と図23(b)を融合した構成である。図24(a)では,光束21,22,23,及び24はそれぞれ光路長が異なるため,対応する発光点像25,26,27,及び28のいずれかを2次元センサ30のセンサ面で結像させると,その他の発光点像は上記センサ面で結像されないため,若干ボケた状態となる。図7では,1個の発光点75を1個の集光レンズ2で集光し,4個の発光点像25,26,27,及び28を得ていたため,上記のボケがクロストークの原因となることはなかった。これに対して図24(a)では,複数個の発光点75を1個の集光レンズ2で集光し,各発光点について4個に分割された発光点像25,26,27,及び28を得ていたため,上記のボケによって,ピンホール像74の内部の複数の発光点像76が互いに重なり合い,クロストークの原因となった。
そこで,図24(b)に示す通り,本実施例では,光束21,22,及び23の光路上にそれぞれ異なる長さの光路長調整素子77,78,及び79を挿入し,集光レンズ2と2次元センサ30の光学的距離で定義される光束21,22,23,及び24の光路長が略等しくなるように調整した。光路長調整素子は,屈折率が1よりも大の透明材質で構成されている。例えば,屈折率が2の材質の内部では,空間的に同じ距離であっても,空中と比較して2倍の光学的距離を有する。このような構成とすることにより,発光点像25,26,27,及び28を2次元センサ30のセンサ面に同時に結像させることが可能となり,上記のボケ及びそれによるクロストークの発生を回避することができた。
以上では,検出対象が略等間隔に配列する発光点アレイであったが,検出対象を1次元,2次元,あるいは3次元状の任意の発光分布とすることができ,図23(b)と同様の発光検出装置によって,検出結果から元の発光分布を再構築してイメージングすることも可能である。図25は,そのようなイメージングの例を模式的に示したものである。
図25(a)に示すように,発光分布80を2次元状に分布させた。ここでは,発光分布80が「α」という文字を描いている場合を例として示す。これに対して,発光点分布80に平行かつ近接してピンホールアレイ73を配置した。図25(a)は,発光点分布80とピンホールアレイ73に含まれる複数のピンホール72の位置関係及び大小関係を模式的に示したものである。ここでは,3×3=9個のピンホール72を2次元状に等間隔で配列した。発光点分布80と各ピンホール72は十分に近接しているため,図25(a)で,発光点分布80の内,各ピンホール72と重なっている部分からの発光が,各ピンホール72を通じて,図23(b)と同様の発光検出装置によって検出される。
図25(b)は,このとき2次元カラーセンサ11によって撮像される,9個のピンホール72の像である9個のピンホール像74,及び9個のピンホール72を通して検出される発光点分布80の部分の像である9個の発光点分布部分像81を示している。これまでの実施例と同様に,各ピンホール72は拡大結像される一方で,ピンホール72の間隔とピンホール像74の間隔が等しいため,図25(b)に示す通り,隣り合うピンホール像74の隙間が狭くなったが,相互のクロストークは0%であった。また,各発光点分布部分像81は,対応する各ピンホール像74の内部に収められるため,やはり相互のクロストークは0%であった。
図25(c)は,図25(a)において,発光点分布80とピンホールアレイ73の相対位置を横方向にずらしたものである。各ピンホール72は,図25(a)と比較して,発光点分布80の異なる部分と重なった。その重なった部分からの発光を,図25(d)に示すように,それぞれ結像させ,検出した。以上のように,発光点分布80とピンホールアレイ73の相対位置を,横方向及び縦方向に順次スライドさせ,撮像を繰り返すことによって,発光点分布80の全体像をイメージングすることができた。この際,発光点分布80と2次元カラーセンサ11の相対位置を固定すれば,画像処理を行わなくても,発光点分布80の全体像をイメージングすることができる。
[実施例7]
本発明の実装上の課題のひとつは,各発光点と各集光レンズの位置合わせを如何に精度良く,簡便に行うかである。本実施例は,複数のキャピラリについて,これを実現する手段を示すものである。
図26は,複数のキャピラリ49と,複数のキャピラリ49を配列するV溝アレイと,集光レンズアレイ8を一体化したデバイス86の構成例を示す断面模式図である。図26(a)は,レーザビーム54の照射位置における各キャピラリ49の長軸に垂直な断面を示し,図26(b)はレーザビーム54の照射位置ではない個所における各キャピラリ49の長軸に垂直な断面を示し,図26(c)は任意の一つのキャピラリの長軸を含む断面を示す。図26(a)は図26(c)のA-A断面に相当し,図26(b)は図26(c)のB-B断面に相当する。
図26に示すデバイス86は,複数のキャピラリ49からなるキャピラリアレイと,サブデバイス85を含む。サブデバイス85は,複数のV溝82が間隔pで配列したV溝アレイを含む部分であるV溝アレイデバイス84と,複数の集光レンズ2が間隔pで配列した集光レンズアレイ8を含む部分である集光レンズアレイデバイス83が一体化したものである。図26(a)において,各発光点1と,各V溝82,及び各集光レンズ2の中心軸をそれぞれ一致させてある。複数のキャピラリ49をそれぞれV溝82に押し当てることによって,簡便に,複数のキャピラリ49を所定の間隔pで同一平面上に配列させることができる。また,各キャピラリ49のレーザビーム54の照射位置である各発光点1と,各集光レンズ2が所望の距離となるように,サブデバイス85の構造を調整しておく。これにより,発光点1からの発光が集光レンズ2によって所望の通りに集光される。
図26(a)に示すように,発光点1におけるキャピラリ49の断面には,サブデバイス85の集光レンズ2が存在し,V溝82が存在しない。一方,図26(b)に示すように,発光点1の両脇におけるキャピラリ49の断面には,サブデバイス83の集光レンズ2が存在せず,V溝82が存在する。図26(c)はキャピラリ49の長軸方向の断面を示し,サブデバイス85の中央に集光レンズ2が存在し,その両脇にV溝82が存在している。これは,V溝82によるキャピラリ49の高精度な位置合わせを実現しつつ,発光点1からの発光の検出をV溝82が邪魔をしないようにする工夫である。以上のようなサブデバイス85を予め作成しておけば,複数のキャピラリ49をそれぞれ各V溝82に押し付けるだけで,各発光点1と各集光レンズ2の高精度な位置合わせを簡便に行うことが可能となる。
本実施例は,以上の実施例のいずれの構成とも組み合わせることができる。V溝アレイデバイス84と集光レンズアレイデバイス83を一体化したサブデバイス85は,射出成形やインプリントのような加工法で一体成形することが可能であり,低コストに量産も可能である。もちろん,V溝アレイデバイス84と集光レンズアレイデバイス83を別々に作製してから結合させることでサブデバイス85を完成させても良い。
サブデバイスはV溝アレイが無い場合も有効である。例えば,サブデバイスのキャピラリ配列側の表面をV溝アレイではなく,平面としても良い。複数のキャピラリの配列間隔は別の手段によって調整する必要があるが,各キャピラリをサブデバイスの上記平面に押し付けることによって,各キャピラリと各集光レンズの距離,すなわち各発光点と各集光レンズの距離を制御することは可能である。あるいは,V溝ではなくても,キャピラリの位置を制御するための構造物をサブデバイスに設ければ良い。
各集光レンズ2の,発光点アレイの配列方向と平行方向の焦点距離をf1と,同垂直方向の焦点距離をf2とするとき,以上の実施例ではf=f1=f2としていたが,f1≠f2とすることも有効である。例えば,本実施例のように,発光点1がキャピラリ49の内部に存在するときに有効である。キャピラリ49は円筒形状をしているため,発光点アレイの配列方向にレンズ作用を持つが,各キャピラリ49の長軸方向にはレンズ作用を持たない。したがって,発光点1からの発光を集光レンズ2で効率良く集光するためには,上記のキャピラリ49のレンズ作用の方向による違いをキャンセルすることが有効であり,そのためにはf1≠f2,具体的にはf1<f2とすれば良い。これは,各集光レンズ2の表面を非球面形状とすることで簡単に実現できる。また,各集光レンズ2をフレネルレンズとすることによって,レンズの厚みを低減し,蛍光検出装置をさらに小型化することも可能である。フレネルレンズの利用は,f1=f2の場合も,もちろん有効である。
図27は,図26において,発光点アレイと集光レンズアレイ8の中間に,ピンホールアレイ73を追加した構成を示す。より具体的には,V溝アレイデバイス84と集光レンズアレイデバイス83の中間にピンホールアレイ73を挟み込み,これら全体をサブデバイス86とした。図22(b)に示すピンホール72は,その存在によって,集光レンズ2が発光点71からの発光を集光する光量を制限していた。これに対して図27に示すピンホール72は,図27(a)に示すように,その存在によって,集光レンズ2が発光点1からの発光を集光する光量を制限しないように,各ピンホール72の径d0は発光点1の径dよりも大きくした(d0≧d)。図22(b)のピンホール72の役割は発光点71の径を実効的に縮小することであったのに対して,図27のピンホール72の役割は,集光レンズ2が対応する発光点1からの発光以外の光を集光することを回避することである。例えば,レーザビーム54をキャピラリアレイに照射する際に発生する,各キャピラリ49の外表面におけるレーザビーム54の散乱光が,集光レンズ2によって集光され,センサに到達することを回避,あるいは低減できる。あるいは,集光レンズ2によって隣接する発光点1からの発光が集光され,センサに到達することを回避,あるいは低減できる。以上によって,発光点1からの発光の高感度な検出が可能となる。
これらの不要な光をセンサに到達させないためには,発光点とセンサの中間の任意の箇所に色ガラスフィルタを配置することも有効である。色ガラスフィルタは上記のピンホールと併用しても良いし,どちらか一方のみを用いても良い。これらの不要な光が集光レンズ2で集光された光束は,集光レンズ2の光軸(すなわち,発光点1からの発光が集光レンズ2で集光された光束の光軸)に対して傾いて進行するため,上述のロングパスフィルタやダイクロで遮断することが難しい(発光点1からの発光が集光レンズ2で集光された光束に対して設計されているため)。これに対して,色ガラスフィルタは,光の入射角度が違っても,同等のフィルタ性能を発揮することができるため,上記の効果を得ることができる。
図28は,図27と同様の効果を生じる別な構成を示す。サブデバイス85の構成要素である集光レンズアレイデバイス83は,以上と同様に,ガラス,樹脂等の透明材料で作製するのに対して,V溝アレイデバイス84は不透明な材料で作製する。V溝アレイデバイス84の各集光レンズ2の光軸と交差する位置にそれぞれ貫通孔であるピンホール87を形成することにより,V溝アレイデバイス84がピンホールアレイの役割を担うようにする。このような構成にすることによって,図27の場合よりも簡便にサブデバイス85を作製することが可能である。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。