以下、図面を参照し、本発明の電力変換装置の実施形態について説明する。以下では、一例として電力変換装置が車両システム1に適用された実施形態について説明する。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせを含む。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
図1は、実施形態に係る電力変換装置100を含む車両システム1の概略構成を示す図である。車両システム1は、例えば、バッテリ(BATT)10と、インバータ20と、モータ(MOT)30と、電力変換装置100とを備える。バッテリ10は、「電源」の一例である。インバータ20は、「駆動回路」の一例である。モータ30は、「回転電機」の一例である。
バッテリ10は、車両システム1の動力源であり、電力変換装置100を介してモータ30に電力を供給する。バッテリ10は、例えば、リチウムイオン電池等のように充電と放電とを繰り返すことができる二次電池である。二次電池には、例えば、鉛蓄電池、ニッケル・水素電池、ナトリウムイオン電池等の他、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ、または二次電池とキャパシタとを組み合わせた複合電池等が含まれる。また、バッテリ10は、例えば、バッテリケースと、バッテリケース内に収容される複数のバッテリモジュールとを備えていてもよい。この場合、バッテリモジュールは、直列に接続される複数のバッテリセルを備える。
電力変換装置100は、例えば、バッテリ10から入力された電力の電圧を上昇させる電圧変換を行う多相のDC-DCコンバータ(電圧変換部)等を備える。また、電力変換装置100は、例えば、多相VCU(Voltage Control Unit)である。電力変換装置100の詳細については後述する。
インバータ20は、例えば、直流と交流との電力変換を行う。また、インバータ20は、例えば、モータ30の力行および回生を制御する。例えば、インバータ20は、モータ30の力行時には、電力変換装置100から入力される直流電力を3相交流電力に変換してモータ30に供給することによって回転駆動力を発生させる。また、インバータ20は、モータ30の回生時には、モータ30から入力される3相交流電力を直流電力に変換してバッテリ10に供給することによってバッテリ10を充電することが可能である。また、インバータ20は、出力される電力に対する電流値を検出し、検出した電流値(電流検出値)を制御部150に出力してもよい。
モータ30は、インバータ20から入力される電力によって回転駆動力(力行動作)を生成し、生成した駆動力によってトランスミッション(不図示)等を通じて車輪を回転させる。また、モータ30は、回生によって生成した電力を、インバータ20に出力してもよい。例えば、モータ30は、例えば、U相、V相、およびW相からなる3相交流のブラシレスDCモータである。また、モータ30は、インナーロータ型でもよくアウターロータ型でもよい。モータ30は、界磁用の永久磁石を有する回転子(ロータ)と、回転子を回転させる回転磁界を発生させるための3相のステータ巻線を有する固定子とをそれぞれ備えている。例えば、インバータ20は、バッテリ10から電力変換装置100を介して入力される直流電力を3相交流電力に変換し、モータ30の3相のステータ巻線に交流のU相電流、V相電流、及びW相電流を供給する。
センサ32は、モータ30の回転数を検出する回転数センサである。センサ32には、例えば、モータ30のロータの回転角を検出し、電気信号であるロータ回転角、すなわち所定の基準回転位置からのロータの磁極の回転角度に係る状態量を検出する出力するレゾルバ等の回転角センサが含まれる。レゾルバは、モータ30の図示しない出力軸又は外ロータの回転角度(モータ30の図示しないステータに対して固定された座標系での回転角度)である電気角を検出する。センサ32は、検出結果を制御部150に出力する。
次に、電力変換装置100について具体的に説明する。電力変換装置100は、例えば、バッテリ10からの入力電圧が与えられる入力端子IN1、IN2と、モータ30等の負荷回路に供給する出力電圧が出力される出力端子OT1、OT2との間に並列に接続された多相の昇圧コンバータを制御部150の制御によって同一周波数を有する複数の駆動信号により駆動するものである。
電力変換装置100は、例えば、第1コンデンサ102と、第2コンデンサ104と、リアクトルユニット110と、電圧変換部120と、制御部150とを備える。図1に示す電圧変換部120は、例えば、第1変換回路120-1と、第2変換回路120-2と、第3変換回路120-3とを備える。第1変換回路120-1、第2変換回路120-2、第3変換回路120-3は、それぞれ相として動作する。つまり、電圧変換部120は、三相の昇圧コンバータである。第1変換回路120-1、第2変換回路120-2、および第3変換回路120-3のそれぞれは、「変換部」の一例である。なお、実施形態において、変換部の相数についてはこれに限定されるものではなく、二相以上の変換部を備えていればよい。電圧変換部120は、制御部150からの制御信号により、相数を切り替えて動作可能である。
第1コンデンサ102は、電力変換装置100の入力端子であるバッテリ10の正極端子IN1と負極端子IN2との間に並列に接続されている。第1コンデンサ102は、例えば、電圧変換部120(第1変換回路120-1と、第2変換回路120-2と、第3変換回路120-3)の回生時における上アーム素子S1に含まれるスイッチング素子および下アーム素子S2に含まれるスイッチング素子のオン/オフの切り替え動作に伴って発生する電圧変動を平滑化する。
第2コンデンサ104は、電圧変換部120の正極バスバーPVおよび負極バスバーNV間に並列に接続されている。第2コンデンサ104は、例えば、電圧変換部120の昇圧時における上アーム素子S1および下アーム素子S2のオン/オフの切換動作に伴って発生する電圧変動を平滑化する。また、第2コンデンサ104は、例えば、二つの出力端子(正極端子OT1および負極端子OT2)を介して、インバータ側の動作に伴って発生する電圧変動を平滑化する。
リアクトルユニット110は、例えば、第1リアクトル112と、第2リアクトル114と、第3リアクトル116とを備える。第1リアクトル112~第3リアクトル116は、互いに並列に接続されている。第1リアクトル112の一端はバッテリ10の正極端子IN1に接続され、他端は第1変換回路120-1のバスバーB1に接続されている。第2リアクトル114の一端はバッテリ10の正極端子IN1に接続され、他端は第2変換回路120-2のバスバーB2に接続されている。第3リアクトル116の一端はバッテリ10の正極端子IN1に接続され、他端は第3変換回路120-3のバスバーB3に接続されている。
第1リアクトル112~第3リアクトル116のそれぞれは、例えば、コイルとコイルの温度を検出する温度センサとを備える。温度センサは、温度の検出結果を制御部150に出力する。
第1変換回路120-1は、スイッチング素子として機能する一相分の上アーム素子S1と下アーム素子S2とを備える。上アーム素子S1の正極側の電極は、正極バスバーPVに接続されている。正極バスバーPVは、第2コンデンサ104の正極端子および出力端子OT1に接続されている。上アーム素子S1の負極側の電極は、下アーム素子S2の正極側の電極に接続されている。下アーム素子S2の負極側の電極は、負極バスバーNVに接続されている。負極バスバーNVは、負極バスバーNVは、第2コンデンサ104の負極端子および出力端子OT2に接続されている。
上アーム素子S1は、例えば、スイッチング素子としてのトランジスタ122と、整流素子としての還流ダイオード124とを備える。下アーム素子S2は、例えば、スイッチング素子としてのトランジスタ126と、還流ダイオード128とを備える。トランジスタ122および126は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semi-conductor Field Effect Transistor)である。また、トランジスタ122および126は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。還流ダイオード124および128は、それぞれトランジスタ122および126と並列に接続される。上アーム素子S1と下アーム素子S2との接続点を構成するバスバーB1は、第1リアクトル112の一端に接続されている。
第2変換回路120-2および第3変換回路120-3は、第1変換回路120-1と同様にそれぞれ1相分の上アーム素子S1と下アーム素子S2とを備える。上アーム素子S1および下アーム素子S2の回路構成は、第1変換回路120-1の構成と同様であるため、ここでの具体的な説明は省略する。なお、第2変換回路120-2において、上アーム素子S1と下アーム素子S2との接続点を構成するバスバーB2は、第2リアクトル114の一端に接続されている。また、第3変換回路120-3において、上アーム素子S1と下アーム素子S2との接続点を構成するバスバーB3は、第3リアクトル116の一端に接続されている。
第1変換回路120-1~第3変換回路120-3は、制御部150の制御によってそれぞれが一つの相として動作する。第1変換回路120-1~第3変換回路120-3のそれぞれは、昇圧時において、下アーム素子S2のスイッチング素子(トランジスタ126)がオン(導通)且つ上アーム素子S1のスイッチング素子(トランジスタ122)がオフ(遮断)に設定される第1状態と、下アーム素子S2のスイッチング素子がオフ(遮断)且つ上アーム素子S1のスイッチング素子がオン(導通)に設定される第2状態とを交互に切り替える。第1状態では、順次、バッテリ10の正極端子、リアクトル(動作中の変換回路に接続されたリアクトル)、下アーム素子S2、バッテリ10の負極端子へと電流が流れ、動作するリアクトルが直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。第2状態では、リアクトルに流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてリアクトルの両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。リアクトルに蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧はバッテリ電圧に重畳されて、バッテリ10の端子間電圧よりも高い昇圧電圧が電圧変換部120の正極バスバーPVと負極バスバーNVとの間に印加される。
また、第1変換回路120-1~第3変換回路120-3のそれぞれは、回生時において、第2状態と、第1状態とを交互に切り替える。第2状態では、順次、動作中の変換回路の正極バスバーPV、上アーム素子S1、リアクトル、バッテリ10の正極端子へと電流が流れ、リアクトルが直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。第1状態では、リアクトルに流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてリアクトルの両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。リアクトルに蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧は降圧されて、電圧変換部120の正極バスバーPV及び負極バスバーNV間の電圧よりも低い降圧電圧がバッテリ10の正極端子と負極端子との間に印加される。
制御部150は、例えば、電力変換装置100およびインバータ20における各構成の動作を制御する。また、制御部150は、車両システム1に含まれる他の構成の動作を制御してもよい。制御部150は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPU等のプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマー等の電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。制御部150の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路であってもよい。
例えば、制御部150は、インバータ20から出力される電力に対する電流検出値とモータ30に対するトルク指令値に応じた電流目標値とを用いる電流のフィードバック制御等を実行し、電圧変換部120に与える制御信号を生成する。また、制御部150は、インバータ20から出力される電力に対する電流検出値とモータ30に対する回生指令値に応じた電流目標値とを用いる電流のフィードバック制御等を実行し、電圧変換部120等に与える制御信号を生成する。制御信号は、例えば、電圧変換部120の各相の動作や、上アーム素子S1および下アーム素子S2のそれぞれをオン(導通)/オフ(遮断)駆動するタイミングを示す信号である。例えば、制御信号は、パルス幅変調された信号等である。
また、制御部150は、例えば、回転数取得部152と、駆動相制御部154とを備える。回転数取得部152は、センサ32から得られるモータ30の回転数に関する情報を取得する。例えば、センサ32がレゾルバである場合、回転数取得部152は、モータ30の出力軸または外ロータの回転角度(モータ30の図示しないステータに対して固定された座標系での回転角度)である電気角θを取得し、取得した電気角を微分することで、モータ30の出力軸の回転速度(=外ロータの回転速度)の検出値として、電気角速度ωを取得する。電気角速度ωは、回転数に関する情報の一例である。電気角速度ωは、モータの回転数が大きくなるほど値が大きくなる。
駆動相制御部154は、回転数取得部152により取得された回転数に関する情報(例えば、電気角速度ω)に基づいて、電圧変換部120において動作させる相数(変換回路の数)を切り替える。このように、モータ30の回転数に関する情報に基づいて、動作させる相数を切り替えることで、第1コンデンサ102、リアクトルユニット110、および第2コンデンサ104により定まる共振周波数に、電圧変換部120の出力信号のリプル成分が一致して発生する共振現象を抑制する。
ここで、共振周波数について説明する。例えば、図1に示す車両システム1は、例えば、第1コンデンサ102と、第2コンデンサ104と、リアクトルユニット110とによって共振回路が構成される。この共振回路の共振周波数FRは、以下に示す(1)式で表される。
(1)式において、Lxは「L/相数」で算出される値を示す。Lは駆動する電圧変換部120に接続されたリアクトルのインダクタンスである。また係数Cは、以下に示す(2)式で表される。
(2)式において、C1は第1コンデンサ102の静電容量値である。また、Caは電圧変換部120と第2コンデンサ104とを纏めて仮想的な回路(例えば、コンデンサ)と見なしたときの静電容量値である。Caは第2コンデンサ104の静電容量C2を用いると、Ca=a
2×C2で表される。aは電圧変換部120による昇圧率を示している。昇圧率aは、例えば、第1コンデンサ102の端子間電圧をV1、第2コンデンサ104の端子間電圧をV2とすると、昇圧率a=V2/V1で求められる。これらにより、上述した(1)式に示す共振周波数FRは、以下に示す(3)式で表すことができる。
つまり、(3)式に示すように、共振周波数FRは、昇圧率、電圧変換部120の相数、第1コンデンサ102、リアクトルユニット110、および第2コンデンサ104によって決定される。
ここで、従来では、モータ30の回転に起因する電流リプルの周波数成分と、第1コンデンサ102、リアクトルユニット110、および第2コンデンサ104との共振特性が一致した場合には、第1コンデンサ102、リアクトルユニット110、および第2コンデンサ104に大電流が流れることで、発熱、過電流による電圧変換部120の劣化等を防止している。しかしながら、共振周波数をずらずために(3)式に含まれる昇圧率aを変化させると、昇圧が不要な領域でも昇圧制御を行う必要が生じるため、システム損失が増加して電力変換の効率が低下してしまう。そこで、駆動相制御部154は、(3)式に含まれる相数を切り替えることで共振周波数を変更させる。具体的には、リプル電流は、モータ30のステータ巻線に流れる電流でありモータ30の回転数に起因するため、駆動相制御部154は、モータ30の回転数に応じて、電圧変換部120を所定の相数で駆動させた場合の共振周波数がリプル電流の周波数成分(以下、リプル電流周波数を称する)と重ならないように電圧変換部120の相数を切り替える。
図2は、共振周波数とモータの回転数とに基づく相の切替制御の内容について説明するための図である。図2の例では、電圧変換部120の一相駆動と二相駆動との切替制御を示している。図2(A)において横軸はモータ30の電気加速度ω[rpm]を示し、縦軸はリプル電流周波数[Hz]を示している。また、図2(A)には、一相駆動の場合の共振周波数FR1と、二相駆動の場合の共振周波数FR2とが示されている。また、図2(B)は、電気角速度に基づいて二相駆動と一相駆動とが切り替わる様子を示している。
ここで、一般的に図2(A)に示すように電気角速度ωが増加すると、それに比例してリプル電流周波数も増加する。図2(A)の例において、一相駆動の場合には、電気角速度ω1で共振周波数FR1となり、二相駆動の場合には、電気角速度ω2で共振周波数FR2となっている。この場合、駆動相制御部154は、モータ30の電気角速度に基づいて、電圧変換部120の相数を切り替えて共振周波数を変化させることで、共振現象の発生を抑制する。
例えば、駆動相制御部154は、電圧変換部120の第1の相数に応じた共振周波数に対応する第1の回転数(第1の電気角速度)においては、第1の相数とは異なる第2の相数を駆動させる。また、駆動相制御部154は、電圧変換部120の第2の相数に応じた共振周波数に対応する第2の回転数(第2の電気角速度)においては、第1の相数を駆動させる。
また、駆動相制御部154は、例えば、センサ32の検出結果から得られるモータ30の電気角速度が、相数を切り替える前の第1の相数を駆動させた場合の共振周波数に対応付けられた電気角速度と、相数を切り替えた後の第2の相数を駆動させた場合の共振周波数に対応付けられた電気角速度との間である場合に、電圧変換部120の相数を、第1の相数から第2の相数に切り替える。例えば、駆動相制御部154は、一相と二相との相数の切り替え制御を行う場合に、センサ32から得られる電気角速度ωが、一相駆動において共振周波数となる電気角速度ω1と二相駆動において共振周波数となるω2との間にある場合に、電圧変換部120の相数を、第1の相数から第2の相数に切り替える。例えば、モータ30の回転を開始させる場合において、駆動相制御部154は、電圧変換部120を二相駆動させて昇圧を行う。また、駆動相制御部154は、センサ32から得られる電気角速度ωがω1より大きく、且つ、ω2よりも小さい角速度の場合に一相駆動に切り替える。つまり、駆動相制御部154は、所定時間における電気角速度ω(モータ30の回転数)が増加傾向にある場合には、駆動させる相数を現在の相数から減少させる。
また、駆動相制御部154は、一相駆動の状態において、モータ30の電気角速度ωをω2以上の状態から小さくする場合、電気角速度ωがω2より小さく、且つ、ω1よりも大きい電気角速度で二相駆動に切り替える。つまり、駆動相制御部154は、所定時間における電気角速度ω(モータ30の回転数)が減少傾向にある場合には、駆動させる相数を現在の相数から増加させる。これにより、共振周波数がモータ30の回転に起因するリプル電流周波数と重ならないように電圧変換部120の相数を、より適切に切り替えることができる。このように、駆動相制御部154は、モータ30の回転数に応じて相数を切り替えて共振周波数を調整することで、不要な昇圧を行わずに共振周波数をずらすことができる。そのため、昇圧を行う場合にも、必要最低限の昇圧率a(=V2/V1)で共振を抑制することができる。
なお、駆動相制御部154は、相数の切り替えを行う場合には、電気角速度がω1~ω2の区間のうち、電気角速度ω1から所定角速度△ω1だけ大きい電気角速度ωaと、電気角速度ω2から所定角速度△ω2だけ小さい電気角速度ωbとの間(電気角速度がωa~ωbの区間内)で切り替えてもよい。所定角速度△ω1、△ω2は、予め決められた固定値でもよく、電圧変換部120が備える相数や他の回路構成等によって決められる可変値であってもよい。
このように、駆動相制御部154は、電気角速度ωが、電圧変換部120の駆動させる相数ごとの共振周波数に対応付けられた電気角速度から所定数だけ離れた電気角速度である場合に、電圧変換部120の相数を切り替えることで、共振による電流の増大を、より確実に抑制することができる。
なお、駆動相制御部154は、駆動させる相数が二相と三相との関係においても、モータの回転数に関する情報に基づいて相数の切り替え制御を行ってもよい。図3は、相数を二相と三相との間で切り替える制御について説明するための図である。図3(A)の横軸はモータの電気加速度ω[rpm]を示し、縦軸はリプル電流周波数[Hz]を示している。また、図3(A)には、二相駆動の場合の共振周波数FR2と、三相駆動の場合の共振周波数FR3とが示されている。また、図3(B)は、電気角速度ωに基づいて三相駆動と二相駆動とが切り替わる様子を示している。図3(A)に示す状態においても駆動相制御部154は、モータ30の回転数に基づいて、電圧変換部120の相数を切り替えて共振周波数を変化させることで、共振現象の発生を抑制する。
例えば、駆動相制御部154は、二相と三相との間で相数の切り替え制御を行う場合に、センサ32から得られる電気角速度ωが、二相駆動において共振周波数となる電気角速度ω2と三相駆動において共振周波数となるω3との間にある場合に、電圧変換部120の相数を、第1の相数から第2の相数に切り替える。例えば、モータ30の回転を開始させる場合において、駆動相制御部154は、電圧変換部120を三相駆動させて昇圧を行う。また、駆動相制御部154は、センサ32から得られる電気角速度ωがω2より大きく、且つ、ω3よりも小さい角速度の場合に二相駆動に切り替える。
また、駆動相制御部154は、二相駆動の状態において、モータ30の電気角速度ωをω3以上の状態から小さくする場合、電気角速度ωがω3より小さく、且つ、ω2よりも大きい電気角速度で三相駆動に切り替える。これにより、共振周波数がモータ30に起因するリプル電流周波数と重ならないように電圧変換部120の相数を切り替えることができる。
また、駆動相制御部154は、電気角速度ω2~ω3の区間のうち、電気角速度ω2から所定角速度△ω2だけ大きい電気角速度ωcと、電気角速度ω3から所定角速度△ω3だけ小さい電気角速度ωdとの間(電気角速度がωc~ωdの区間内)で切り替えを行ってもよい。所定角速度△ω2、△ω3は、予め決められた固定値でもよく、電圧変換部120の相数や回路構成等によって決められる可変値であってもよい。
また、駆動相制御部154は、上述と同様の手法で一相と三相との間で相数の切り替え制御を行ってもよい。また、駆動相制御部154は、電圧変換部120を一相または二相で駆動させる場合に、所定条件に基づいて駆動させる変換回路を切り替えてもよい。例えば、駆動相制御部154は、リアクトルユニット110に温度センサから得られる温度が閾値以上である場合に駆動させる相を切り替える。例えば、第1変換回路120-1が一相で駆動している場合であって、第1変換回路120-1に接続された第1リアクトル112の温度が閾値以上である場合に、駆動させる相を、第1変換回路120-1から第1リアクトルの温度よりも低いリアクトルに接続された他の変換回路(例えば、第2変換回路120-2または第3変換回路120-3)に切り替える。これにより、電力変換装置100は、より適切な相を駆動させることができる。
[変形例]
上述の実施形態では、モータ30の回転数に関する情報として電気角速度ωを用いたが、電気角速度ωに代えて、モータ30の回転数を用いて上述した制御を行ってもよく、モータ30の回転に関する他の情報を用いて上述した制御を行ってもよい。
また、上述した電力変換装置100は、例えば、磁気結合VCUに適用してもよい。磁気結合VCUの場合には、相互インダクタンスが存在する。例えば、一相駆動の場合のリアクトルのインダクタンスをLとすると、二相駆動の場合のインダクタンスは、相互インダクタンスをMとして(L-M)/2で表される。相互インダクタンスMは、結合係数をkとするとM=k×Lで表される。ここで、二相の磁気結合の場合には、二相駆動と一相駆動のインダクタンスを比較すると、結合係数kの値によって異なるが、おおよそ一相駆動の方が二相駆動よりも値が約2倍程度大きくなる。そのため、駆動相制御部154は、インダクタンス値を大きくする場合には、電圧変換部120を一相で駆動させる制御を行ってもよい。
以上説明した実施形態によれば、電力変換装置100において、バッテリ10から供給される電力を電圧変換してインバータ20へ出力する電圧変換部120と、インバータ20と、電圧変換部120とを制御する制御部150とを備え、電圧変換部120は相数を切り替えて動作可能であり、制御部150は、モータ30の回転数に関する情報に基づいて電圧変換部120の相数を制御することで、昇圧制御による電力変換効率(例えば、車両システム1のシステム効率)が低下することを抑制することができる。
具体的には、実施形態によれば、多相昇圧コンバータ(磁気結合含む)において、相数を切り替える場合に、電力変換装置100に流れる電流値の大きさに基づいて駆動相数を変更するのではなく、モータ30の回転数に関する情報に基づいて相数を切り替えることにより、より適切に共振周波数を変更することができ、不要な昇圧をせず共振周波数をずらすことができる。そのため、昇圧による損失の増加を抑制しながら、共振による電流の増大を抑制することができる。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。