以下、一実施の形態について、図1乃至図7を参照して説明する。図1乃至図7は一実施の形態を示す図である。なお、以下の各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。
(飲料無菌充填システム)
まず図1により本実施の形態による飲料無菌充填システムの全体について説明する。
図1に示す飲料無菌充填システム10は、炭酸飲料及び非炭酸飲料兼用のシステム、すなわちボトル(容器)30に対して炭酸飲料からなる飲料と非炭酸飲料からなる飲料との両方を択一的に充填可能な無菌充填システムである。ボトル30は、合成樹脂材料を射出成形して製作したプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより作製することができる。ボトル30の材料としては、熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、又はPEN(ポリエチレンナフタレート)を使用することが好ましい。このほか、容器としては、紙容器、ガラス瓶、缶等であっても良い。本実施の形態においては、容器としてプラスチックボトルを用いる場合を例にとって説明する。
図1に示すように、飲料無菌充填システム10は、ボトル供給部21と、ボトル殺菌部11と、エアリンス部14と、無菌水リンス部15と、飲料充填部(フィラー)20と、キャップ装着部(キャッパー、巻締及び打栓機)16と、製品ボトル搬出部22とを備えている。これらボトル供給部21、ボトル殺菌部11、エアリンス部14と、無菌水リンス部15、飲料充填部20、キャップ装着部16、および製品ボトル搬出部22は、ボトル30の搬送方向に沿って、上流側から下流側に向けてこの順に配設されている。また、ボトル殺菌部11、エアリンス部14と、無菌水リンス部15、飲料充填部20、およびキャップ装着部16の間には、これらの装置間でボトル30を搬送する複数の搬送ホイール12が設けられている。
ボトル供給部21は、外部から飲料無菌充填システム10へ空のボトル30を順次受け入れ、受け入れたボトル30をボトル殺菌部11へ向けて搬送するものである。
なお、ボトル供給部21の上流側に、プリフォームを二軸延伸ブロー成形することによりボトル30の成形を行うボトル成形部(図示せず)が設けられていても良い。このように、プリフォームの供給からボトル30の成形を経て、ボトル30への飲料の充填および閉栓に至る工程を連続して行っても良い。この場合、外部から飲料無菌充填システム10まで、容積の大きいボトル30の形態ではなく容積の小さいプリフォームの形態で運搬することができるので、飲料無菌充填システム10を構成する設備をコンパクトにすることができる。
ボトル殺菌部11は、殺菌剤をボトル30に噴射することにより、ボトル30内を殺菌するものである。殺菌剤としては、例えば過酸化水素水溶液が用いられる。ボトル殺菌部11においては、1重量%以上、好ましくは35重量%の濃度の過酸化水素水溶液を一旦気化させた後に凝縮したミスト又はガスが生成され、このミスト又はガスがボトル30の内外面に噴霧される。このようにボトル30内が過酸化水素水溶液のミスト又はガスで殺菌されるので、ボトル30の内面がムラなく殺菌される。
エアリンス部14は、ボトル30に無菌の加熱エア又は無菌の常温エアを供給することにより、過酸化水素の活性化を行いつつ、ボトル30内から異物、過酸化水素等を除去するものである。
無菌水リンス部15は、殺菌剤である過酸化水素により殺菌されたボトル30に対して、無菌の15℃以上85℃以下の水による洗浄を行うものである。これによりボトル30に付着した過酸化水素を洗い流し、且つ異物が除去される。なお、無菌水リンス部15は必ずしも設ける必要はない。
飲料充填部20は、ボトル30の口部からボトル30内へ、予め殺菌処理された無菌炭酸飲料又は無菌非炭酸飲料、あるいは、殺菌処理が不要な無殺菌炭酸飲料(以下、単に「飲料」ともいう)を充填するものである。この飲料充填部20において、空の状態のボトル30に対して飲料が充填される。この飲料充填部20において、複数のボトル30が回転(公転)されながら、ボトル30の内部へ飲料が充填される。
ボトル30内へ充填される飲料が炭酸飲料(無菌炭酸飲料又は無殺菌炭酸飲料)である場合、炭酸飲料は1℃以上40℃以下、好ましくは5℃以上10℃以下の充填温度でボトル30内に充填される。このように炭酸飲料の充填温度を例えば1℃以上10℃以下とする理由は、炭酸飲料の液温が10℃を上回ると炭酸ガスが炭酸飲料から抜けやすくなってしまうためである。飲料充填部20で充填される炭酸飲料としては、炭酸ガスを含む各種飲料、例えば、サイダー、コーラ等の炭酸清涼飲料、ビール等のアルコール飲料等が挙げられる。
ボトル30内へ充填される飲料が無菌非炭酸飲料である場合、飲料は1℃以上40℃以下、好ましくは10℃以上30℃以下の充填温度でボトル30内に充填される。なお、飲料充填部20で充填される無菌非炭酸飲料としては、例えば果汁や乳成分などの動植物由来の成分を含む非炭酸飲料が挙げられる。
キャップ装着部16は、ボトル30の口部にキャップ33を装着することにより、ボトル30を閉栓するものである。キャップ装着部16において、ボトル30の口部はキャップ33により閉じられ、ボトル30内に外部の空気や微生物が侵入しないように密封される。キャップ装着部16において、飲料が充填された複数のボトル30が回転(公転)しながらその口部にキャップ33が装着される。このようにして、ボトル30の口部にキャップ33を装着することにより、製品ボトル35が得られる。
キャップ33は、予めキャップ殺菌部25において殺菌される。キャップ殺菌部25は、例えば無菌チャンバ13(後述)の外側であってキャップ装着部16の近傍に配置されている。キャップ殺菌部25において、外部から搬入されたキャップ33は、予め多数集められ、キャップ装着部16に向かって列になって搬送される。キャップ33がキャップ装着部16に向かう途中で、過酸化水素のミスト又はガスがキャップ33の内外面に向かって吹き付けられた後、ホットエアで乾燥し、殺菌処理される。
製品ボトル搬出部22は、キャップ装着部16でキャップ33を装着された製品ボトル35を、飲料無菌充填システム10の外部へ向けて連続的に搬出するものである。
また、飲料無菌充填システム10は、無菌チャンバ13を有している。無菌チャンバ13の内部に、上述したボトル殺菌部11、エアリンス部14、無菌水リンス部15、飲料充填部20、およびキャップ装着部16が収容されている。この無菌チャンバ13の内部は、無菌状態に保持されている。
さらに無菌チャンバ13は、ボトル殺菌チャンバ13aと、充填・巻締チャンバ13bとに区画されている。ボトル殺菌チャンバ13aと充填・巻締チャンバ13bとの間にはチャンバ壁13cが設けられ、チャンバ壁13cを介してボトル殺菌チャンバ13aと充填・巻締チャンバ13bとが互いに分離されている。ボトル殺菌チャンバ13aの内部には、ボトル殺菌部11とエアリンス部14と無菌水リンス部15とが配置されている。一方、充填・巻締チャンバ13bの内部には、飲料充填部20とキャップ装着部16とが配置されている。
次に、図2を用いて、飲料無菌充填システム10の飲料充填部20およびその周囲の構成について説明する。
図2に示すように、飲料充填部20は、無菌チャンバ13内に設けられている。また、無菌チャンバ13の外部であって、飲料充填部20の上方には、飲料充填タンク(充填ヘッドタンク、バッファータンク)75が配置されている。飲料充填タンク75の内部には飲料が充填されている。飲料充填タンク75は、炭酸ガス供給ライン61を介して無菌炭酸供給部63に連結されている。炭酸ガス供給ライン61には、第1バルブ62が設けられており、第1バルブ62を開放することにより、無菌炭酸供給部63から飲料充填タンク75に無菌状態の炭酸ガスが供給される。炭酸ガス供給ライン61、第1バルブ62及び無菌炭酸供給部63は、充填される飲料が炭酸飲料である場合に用いられる。この無菌炭酸ガスによって飲料充填タンク75内の無菌炭酸飲料を加圧することにより、炭酸飲料に溶解した炭酸ガスが気相中に放出されるのを防ぐ。好ましくは製造基準の炭酸ガス圧より高い圧力で加圧すると良い。これにより、飲料充填タンク75内の炭酸飲料中の炭酸ガスの濃度が一定に保たれる。なお、飲料充填タンク75内の圧力P1は、飲料充填タンク75に設けられた第1圧力計64によって測定されている。
飲料充填タンク75には、飲料導入ライン65が連結されている。この飲料導入ライン65は、図示しない飲料製造装置に連結されている。また飲料導入ライン65には、第2バルブ66が設けられている。この第2バルブ66を開放することにより、飲料製造装置からの飲料が飲料導入ライン65を通過して、飲料充填タンク75に充填される。また飲料導入ライン65には、後述するCIP循環ライン81に連結されている。飲料導入ライン65のうち、飲料充填タンク75側の部分には、CIP処理用の洗浄液や、SIP処理用の加熱蒸気又は熱水も流される。
飲料充填タンク75には、炭酸ガス放出ライン86が連結されている。この炭酸ガス放出ライン86は、充填される飲料が炭酸飲料である場合に用いられ、後述する排出タンク85に連結されている。さらに炭酸ガス放出ライン86には、第3バルブ87が設けられている。第3バルブ87を開放した場合、飲料充填タンク75内の炭酸ガスを排出タンク85に向けて放出することができる。また、炭酸ガス放出ライン86内の圧力P2は、炭酸ガス放出ライン86に設けられた第2圧力計88によって測定されている。この圧力P2は、排出タンク85内の圧力に等しい。
この場合、第1バルブ62と第3バルブ87とは、制御部60によって制御され、これにより飲料充填タンク75内の圧力が制御されている。具体的には、第1圧力計64によって測定された飲料充填タンク75内の圧力P1と、第2圧力計88によって測定された炭酸ガス放出ライン86内の圧力P2との間で、P1>P2という関係が成り立つようになっている。なお、飲料充填タンク75内の圧力P1は、例えば0.01MPa以上1.0MPa以下となるように制御されても良い。また、炭酸ガス放出ライン86内の圧力P2は、0MPaをわずかに上回る圧力、例えば0.0001MPa以上0.01MPa以下となるように制御されても良い。これにより、飲料充填タンク75に対して無菌チャンバ13の外部から非無菌状態のガスが侵入することを防ぐことができる。このため、排出タンク85として、無菌状態に制御されていない非無菌タンクを用いることができる。この場合、炭酸ガス放出ライン86を、無菌状態となっている無菌タンクと連結する必要がないので、このような無菌タンクを飲料無菌充填システム10から取り除くことができる。この結果、飲料無菌充填システム10の製造コストを低減することができる。なお、制御部60は、飲料無菌充填システム10全体を制御する制御部からなっているが、これに限らず、第1バルブ62と第3バルブ87とを独立して制御するものであっても良い。また、第2圧力計88を設けずに、第1圧力計64のみで制御を行うことも可能である。具体的には、第1圧力計64の指示値より、第1バルブ62と第3バルブ87のそれぞれの開度を調整し、第1圧力計64の値を機器滅菌(SIP)処理中から生産終了時まで0.01MPa以上1.0MPa以下となるよう両バルブ62、87のみで制御しても良い。また排出タンク85を設けずに、炭酸ガス放出ライン86に、製造前に蒸気で滅菌された除菌フィルター(図示せず)を設けて、炭酸ガス放出ライン86から炭酸ガスを排出させても良い。
また、飲料充填タンク75には、飲料供給ライン73が連結されている。飲料供給ライン73は、飲料充填タンク75に充填された飲料を、後述する充填ノズル72に向けて供給するラインである。この飲料充填タンク75は、飲料供給ライン73を介して充填ノズル72に連結されている。
さらに、飲料充填タンク75には、カウンタガスライン74が連結されている。カウンタガスライン74は、充填される飲料が炭酸飲料である場合に用いられ、飲料充填タンク75に充填された無菌炭酸ガスを、後述する充填ノズル72に向けて供給するラインである。この飲料充填タンク75は、カウンタガスライン74を介して充填ノズル72に連結されている。
カウンタガスライン74上であって、飲料充填タンク75とカウンタガスライン74との接続部には、カウンタガス用バルブ67が設けられている。カウンタガス用バルブ67は、飲料充填タンク75に直結されている。このカウンタガス用バルブ67は、充填される飲料が炭酸飲料である場合に開放され、充填される飲料が非炭酸飲料である場合に閉鎖される。また、カウンタガス用バルブ67は、CIP処理を行う際、直前にボトル30に充填された飲料が炭酸飲料である場合に開放され、直前にボトル30に充填された飲料が非炭酸飲料である場合に閉鎖される。
飲料充填部20においては、飲料充填タンク75に充填された飲料が、空の状態のボトル30に対して充填される。飲料充填部20は、鉛直方向に平行な軸周りに回転する搬送ホイール71を有している。この搬送ホイール71によって複数のボトル30が回転(公転)されながら、ボトル30内部へ飲料が充填される。また搬送ホイール71の外周に沿って、複数の充填ノズル72が配置されている。各充填ノズル72には、それぞれ1本のボトル30が装着され、充填ノズル72からボトル30の内部に飲料が注入される。なお、充填ノズル72の構成は後述する。
搬送ホイール71と、充填ノズル72と、飲料供給ライン73の少なくとも一部と、カウンタガスライン74の少なくとも一部とは、無菌チャンバ13の一部を構成するカバー76によって取り囲まれている。カバー76の上部にはロータリージョイント77が取り付けられている。飲料供給ライン73およびカウンタガスライン74は、ロータリージョイント77によって無菌チャンバ13のカバー76に取り付けられている。このロータリージョイント77は、回転体(搬送ホイール71、充填ノズル72、ならびに飲料供給ライン73およびカウンタガスライン74の回転配管等)と非回転体(カバー76、ならびに飲料供給ライン73およびカウンタガスライン74の固定配管等)とを、無菌状態でシールする。
各充填ノズル72には、飲料供給ライン73およびカウンタガスライン74が連結されている。このうち飲料供給ライン73は、その一端が飲料を充填した飲料充填タンク75に連結されるとともに、他端においてボトル30の内部に連通している。そして飲料充填タンク75から供給された飲料は、飲料供給ライン73を通過して、ボトル30の内部に注入される。
特開2008-105699号公報にも記載の通り、カウンタガスライン74は、その一端が飲料充填タンク75に連結されるとともに、他端においてボトル30の内部に連通している。飲料充填タンク75から供給される無菌炭酸ガスからなるカウンタープレッシャー用のガスは、カウンタガスライン74を通過して、ボトル30の内部に充填される。カウンタガスライン74の途中にはカウンタガス分岐部53が設けられており、飲料充填タンク75からのカウンタガスライン74は、カウンタガス分岐部53において複数に分岐されて、それぞれの充填ノズル72まで延在する。
さらに、各充填ノズル72には、スニフトライン78が連結されている。スニフトライン78は、充填される飲料が炭酸飲料である場合に用いられる。スニフトライン78は、その一端がカウンタガスライン74に連結されるとともに、他端において無菌チャンバ13の外方へ延在している。このスニフトライン78を介してボトル30の内部のガスを排出可能となっている。スニフトライン78の途中にはスニフトライン分岐部56が設けられており、スニフトライン78からの炭酸ガスは、スニフトライン分岐部56においてまとめられて、無菌チャンバ13内に排出されるようになっている。無菌チャンバ13内のスニフトライン78には、排出弁79が設けられている。この排出弁79によって、スニフトライン78からの炭酸ガスが無菌チャンバ13内に排出される。なお、スニフトライン分岐部56とカウンタガス分岐部53とは、第1バイパスライン54によって連結されている。第1バイパスライン54には、第4バルブ55が設けられており、通常、この第4バルブ55は閉鎖されている。
この場合、スニフトライン78は、内側スニフトライン78aと、外側スニフトライン78bとを有している。内側スニフトライン78aは、その一端が充填ノズル72に連結されるとともに、他端において排出弁79に連結されている。内側スニフトライン78aは、その全体が無菌チャンバ13内に位置しており、上述したスニフトライン分岐部56は、内側スニフトライン78aの途中に位置している。また内側スニフトライン78aは、充填ノズル72とともに回転する回転式となっている。
外側スニフトライン78bは、その一端が排出弁79に連結されるとともに、他端において無菌チャンバ13の外部に開放されている。外側スニフトライン78bは、その一部が無菌チャンバ13の内部に位置しており、残りの一部が無菌チャンバ13の外部に位置している。また外側スニフトライン78bは、充填ノズル72とともに回転することがない非回転式となっている。
上述した排出弁79は、内側スニフトライン78aと外側スニフトライン78bとの間に位置している。内側スニフトライン78aと外側スニフトライン78bとは、排出弁79において着脱可能となっている。また排出弁79は、開閉可能であり、通常時は開放されている。排出弁79が開放された状態では、内側スニフトライン78aは外側スニフトライン78bから物理的に分離されており、内側スニフトライン78aは排出弁79において無菌チャンバ13内と連通する。排出弁79が閉鎖された場合、内側スニフトライン78aは外側スニフトライン78bに連結され、内側スニフトライン78aは外側スニフトライン78bに連通する。このとき、内側スニフトライン78aは無菌チャンバ13内とは連通しない。なお、従来は、例えば特開2005-14918号公報に記載のとおり、スニフトラインはロータリージョイントおよびスニフト用配管を介して大気に開放される。
また、外側スニフトライン78bは、蛇腹部78cにおいて伸縮自在となっている。そして排出弁79が開放されている場合、外側スニフトライン78bの蛇腹部78cが縮まり、外側スニフトライン78bが内側スニフトライン78aから離脱する。この際、内側スニフトライン78aは、回転可能となるとともに、排出弁79において無菌チャンバ13内に連通する。一方、排出弁79を閉鎖する場合、内側スニフトライン78aの回転を停止するとともに、内側スニフトライン78aと外側スニフトライン78bとを回転方向に位置決めする。この状態で、外側スニフトライン78bの蛇腹部78cを伸長させ、排出弁79において外側スニフトライン78bが内側スニフトライン78aに連結される。このとき、内側スニフトライン78aは、外側スニフトライン78bと一体化されて外側スニフトライン78bと連通する。
このように、排出弁79を用いてスニフトライン78からの炭酸ガスを無菌チャンバ13内に排出することにより、ボトル30内の炭酸ガスを無菌空間である無菌チャンバ13内に、菌のコンタミなく排出することができる。また、回転するスニフトライン78を無菌チャンバ13の外部へ連結するためのロータリージョイントを設ける必要がない。このようなロータリージョイントは、一般に複雑な機構を有しているとともに、高価である。このため、スニフトライン78用のロータリージョイントを省略することにより、飲料無菌充填システム10の機構を簡素化し、製造コストを低減することができる。
ところで、飲料無菌充填システム10のうち、飲料が通過する流路については、定期的にあるいは飲料の種類を切り替える際に、CIP(Cleaning in Place)処理をし、さらに、SIP(Sterilizing in Place)処理をすることが好ましい。CIP処理は、原料液を供給する経路の管路内から飲料充填部20の充填ノズル72に至るまでの流路に、例えば水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加した洗浄液を流した後に、水に酸性薬剤を添加した洗浄液を流すことにより行われる。これにより、飲料が通過する流路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去される。またSIP処理は、飲料の充填作業に入る前に、予め飲料が通過する流路内を殺菌するための処理であり、例えば、上記CIPで洗浄した流路内に加熱蒸気又は熱水を流すことによって行われる。これにより、飲料が通過する流路内が殺菌処理され無菌状態とされる。
上述したCIP処理を行うために、充填ノズル72の近傍には、充填ノズル72からの洗浄液を受けるCIPカップ82が設けられている。このCIPカップ82には、CIPライン83が連結されている。CIPライン83は、その一端がCIPカップ82に連結されるとともに、他端が無菌チャンバ13の外方に配置された排出タンク85に連結されている。このCIPライン83を介して充填ノズル72からの洗浄液を排出タンク85に排出可能となっている。CIPライン83の途中にはCIPライン分岐部59が設けられており、CIPライン83からの洗浄液は、CIPライン分岐部59でまとめて回収されて、排出タンク85に排出されるようになっている。なお、CIPライン分岐部59とスニフトライン分岐部56とは、第2バイパスライン57によって連結されている。第2バイパスライン57には、第5バルブ58が設けられている。通常、この第5バルブ58は閉鎖されている。
この場合、CIPライン83は、内側CIPライン83aと、外側CIPライン83bとを有している。内側CIPライン83aは、その一端がCIPカップ82に連結されるとともに、他端において接続弁84に連結されている。内側CIPライン83aは、その全体が無菌チャンバ13内に位置しており、上述したCIPライン分岐部59は、内側CIPライン83aの途中に位置している。また内側CIPライン83aは、充填ノズル72とともに回転する回転式となっている。
外側CIPライン83bは、その一端が接続弁84に連結されるとともに、他端において排出タンク85に連結されている。外側CIPライン83bは、その一部が無菌チャンバ13の内部に位置しており、残りの一部が無菌チャンバ13の外部に位置している。また外側CIPライン83bは、充填ノズル72とともに回転することがない、非回転式となっている。
接続弁84は、内側CIPライン83aと外側CIPライン83bとの間に位置している。内側CIPライン83aと外側CIPライン83bとは、接続弁84において着脱可能となっている。また接続弁84は、開閉可能であり、通常時は開放されている。接続弁84が開放された状態では、内側CIPライン83aは外側CIPライン83bから物理的に分離されており、内側CIPライン83aは接続弁84において無菌チャンバ13内と連通する。接続弁84が閉鎖された場合、内側CIPライン83aは外側CIPライン83bに連結され、内側CIPライン83aは外側CIPライン83bを介して排出タンク85に連通する。接続弁84の構成は、上述した排出弁79の構成と略同様であっても良い。なお、第5バルブ58を開放することにより、スニフトライン78から送られてきたボトル30の内部のガスを、接続弁84から無菌チャンバ13内に排出しても良い。
また、外側CIPライン83bは、蛇腹部83cにおいて伸縮自在となっている。そして接続弁84が開放されている場合、外側CIPライン83bの蛇腹部83cが縮まり、接続弁84において外側CIPライン83bが内側CIPライン83aから離脱する。この際、内側CIPライン83aは、回転可能となるとともに、無菌チャンバ13内と連通する。一方、接続弁84を閉鎖する場合、内側CIPライン83aと外側CIPライン83bとを回転方向に位置決めする。この状態で、外側CIPライン83bの蛇腹部83cを伸長させ、接続弁84において外側CIPライン83bが内側CIPライン83aに接続される。このとき、内側CIPライン83aは、外側CIPライン83bと一体化され、外側CIPライン83bと連通する。
排出タンク85の上部には、排出タンク85の内部のガスを排出する排気ライン89が設けられている。排気ライン89には、ガスを処理する図示しないスクラバーが連結されている。また、排出タンク85の下部には、上述したCIP循環ライン81が連結されている。このCIP循環ライン81は、排出タンク85に貯留された洗浄液を飲料充填タンク75側に向けて送液し、循環させるラインである。CIP循環ライン81は、排出タンク85と、飲料導入ライン65の途中とを連結している。CIP循環ライン81には、排出タンク85側から順に、洗浄液供給部94と、ポンプ91と、第6バルブ92と、ヒータ93と、第7バルブ95とが設けられている。また、ポンプ91と第6バルブ92との間には、排液ライン96が連結され、この排液ライン96には第8バルブ97が設けられている。排液ライン96は、ヒータ93と第7バルブ95との間に設けても良く、また各配管内の残水を速やかに除去できる場所であれば適宜追加しても良い。
無菌チャンバ13のカバー76には、無菌チャンバ13内に大容量の無菌エアを送り込む無菌エア供給装置70が設けられている。この無菌エア供給装置70が、無菌チャンバ13内に無菌エアを導入することにより、無菌チャンバ13内が陽圧に保持され、無菌チャンバ13内に外気が侵入することを抑止している。また、無菌エア供給装置70によって大容量の無菌エアが無菌チャンバ13内に送られるので、上述したように排出弁79から無菌チャンバ13内に炭酸ガスが排出された場合でも、無菌チャンバ13内の炭酸ガス濃度が過度に上昇するおそれがない。上記目的を満たすための無菌エアの供給量は、5m3/min以上100m3/min以下であり、好ましくは10m3/min以上50m3/min以下である。
制御部60は、飲料無菌充填システム10を制御し、飲料及び炭酸ガスが通過する流路に対してCIP処理及びSIP処理を行う。上述したように、飲料無菌充填システム10は、炭酸飲料及び非炭酸飲料兼用のシステム、すなわちボトル30に対して炭酸飲料からなる飲料と非炭酸飲料からなる飲料との両方を択一的に充填可能な充填システムである。
本実施の形態において、制御部60は、CIP処理を行う際、直前にボトル30に充填された飲料が炭酸飲料である場合と、非炭酸飲料である場合とで、異なる制御を行う。
具体的には、制御部60は、CIP処理の直前にボトル30に充填された飲料が炭酸飲料である場合、炭酸飲料の充填に用いられた、炭酸飲料及び炭酸ガスが通過する流路全てに対してCIP処理を行う。このような流路としては、炭酸飲料の充填のみに用いられる炭酸飲料専用流路と、炭酸飲料及び非炭酸飲料の両方の充填に用いられる炭酸・非炭酸飲料兼用流路とが挙げられる。
一方、制御部60は、CIP処理の直前にボトル30に充填された飲料が非炭酸飲料である場合、非炭酸飲料の充填に用いられた、非炭酸飲料が通過する流路のみに対してCIP洗浄を行う。このような流路としては、炭酸飲料及び非炭酸飲料の両方の充填に共用される炭酸・非炭酸飲料兼用流路が挙げられる。この場合、炭酸飲料専用流路に対してはCIP洗浄を行わない。
図2に示す例において、炭酸・非炭酸飲料兼用流路としては、飲料導入ライン65、第2バルブ66、飲料充填タンク75、飲料供給ライン73、ロータリージョイント77、飲料供給ライン73、充填ノズル72、CIPカップ82、CIPライン83、接続弁84、CIPライン分岐部59、排出タンク85、洗浄液供給部94、ポンプ91、第8バルブ97、排液ライン96、第6バルブ92、ヒータ93、CIP循環ライン81、第7バルブ95等が挙げられる。なお、図示されていなくても、炭酸飲料及び非炭酸飲料の両方の充填に使用される流体(飲料・ガス等)の流路であって、CIP洗浄が必要な流路については、炭酸・非炭酸飲料兼用流路に含まれる。
また、図2に示す例において、炭酸飲料専用流路としては、カウンタガス用バルブ67、カウンタガスライン74、カウンタガス分岐部53、スニフトライン78、第4バルブ55、第1バイパスライン54、スニフトライン分岐部56、第5バルブ58、排出弁79、炭酸ガス放出ライン86、第3バルブ87等が挙げられる。なお、図示されていなくても、炭酸飲料の充填のみに使用される流体(飲料・ガス等)の流路であって、CIP洗浄が必要な流路については、炭酸飲料専用流路に該当する。
(充填ノズル)
次に、図3を用いて、上述した飲料充填部20の充填ノズル72の構成について説明する。
図3に示すように、充填ノズル72は、本体部72aを有している。本体部72aには、飲料供給ライン73およびカウンタガスライン74がそれぞれ連結されている。このうち飲料供給ライン73は、その上端が飲料充填タンク75に連結されるとともに、下端においてボトル30の内部に連通している。そして飲料充填タンク75から供給された飲料は、飲料供給ライン73を通過して、ボトル30の内部に注入される。
カウンタガスライン74は、充填される飲料が炭酸飲料である場合に用いられる。特開2008-105699号公報にも記載の通り、カウンタガスライン74は、その上端が飲料充填タンク75に連結されるとともに、下端においてボトル30の内部に連通している。飲料充填タンク75から供給された炭酸ガス等のカウンタープレッシャー用のガスは、カウンタガスライン74を通過して、ボトル30の内部に充填される。カウンタガスライン74の途中には、スニフトライン78が連結されており、スニフトライン78を介してボトル30の内部の炭酸ガス等を排出可能となっている。
飲料供給ライン73およびカウンタガスライン74は、カバー76に設けられたロータリージョイント77を通過している。一方、スニフトライン78は、上述したようにロータリージョイントを介在させることなく、スニフトライン78からの炭酸ガスを無菌チャンバ13内に排出させるようになっている。
(無菌炭酸飲料充填方法)
次に、上述した飲料無菌充填システム10(図1)を用いた無菌炭酸飲料充填方法について説明する。なお、以下において、通常時における無菌炭酸飲料の充填方法、すなわち無菌炭酸飲料をボトル30に充填して製品ボトル35を製造する無菌炭酸飲料充填方法について説明する。
まず複数の空のボトル30が、飲料無菌充填システム10の外部からボトル供給部21へ順次供給される。このボトル30は、搬送ホイール12によってボトル供給部21からボトル殺菌部11へ送られる(容器供給工程)。
次に、ボトル殺菌部11において、ボトル30に対して殺菌剤である過酸化水素水溶液を用いて殺菌処理が行われる(殺菌工程)。このとき、過酸化水素水溶液は、1重量%以上、好ましくは35重量%の濃度の過酸化水素水溶液を一旦気化させた後に凝縮したガス又はミストであり、このガス又はミストがボトル30に向かって供給される。
続いて、ボトル30は、搬送ホイール12によってエアリンス部14に送られ、エアリンス部14において、無菌の加熱エア又は無菌の常温エアを供給することにより、過酸化水素の活性化を行いつつ、ボトル30から異物、過酸化水素等が除去される。次いで、ボトル30は、搬送ホイール12によって無菌水リンス部15に搬送される。この無菌水リンス部15において、無菌の15℃以上85℃以下の水による洗浄が施される(リンス工程)。具体的には、無菌の15℃以上85℃以下の水が、5L/min以上15L/min以下の流量でボトル30内に供給される。その際、好ましくはボトル30は倒立状態とされ、下向きになった口部からボトル30内へ無菌水が供給され、この無菌水は口部からボトル30の外方に流出する。この無菌水によって、ボトル30に付着した過酸化水素を洗い流し、且つ異物が除去される。なお、ボトル30内へ無菌水が供給される工程は必ずしも設けられていなくても良い。
続いて、ボトル30は、搬送ホイール12によって飲料充填部20に搬送される。この飲料充填部20において、ボトル30は回転(公転)されながら、その口部からボトル30内へ無菌炭酸飲料が充填される(充填工程)。飲料充填部20においては、殺菌されたボトル30に、飲料充填タンク75から送られた無菌炭酸飲料が1℃以上40℃以下、好ましくは5℃以上10℃以下の充填温度で充填される。
この間、図3に示すように、飲料充填部20において、充填ノズル72がボトル30の口部に密着し、カウンタガスライン74とボトル30とが互いに連通する。なお、このときスニフトライン78は閉鎖されている。次に、飲料充填タンク75からカウンタガスライン74を介して、ボトル30の内部にカウンタープレッシャー用の無菌炭酸ガスが供給される。これにより、ボトル30の内圧が大気圧よりも高められ、ボトル30の内圧が飲料充填タンク75の内圧と同一の圧力となる。
次に、飲料供給ライン73からボトル30の内部に無菌炭酸飲料が充填される。この場合、無菌炭酸飲料は、飲料充填タンク75から飲料供給ライン73を通過して、ボトル30の内部に注入される。
続いて、飲料供給ライン73からの無菌炭酸飲料の供給を停止する。次いで、飲料供給ライン73およびカウンタガスライン74を閉鎖するとともに、スニフトライン78を開放し、スニフトライン78からボトル30の内部のガスを排出する。これにより、ボトル30の内部の圧力が大気圧と等しくなり、ボトル30への無菌炭酸飲料の充填が完了する。このとき、ボトル30からのガスは、スニフトライン78を通過した後、排出弁79から無菌チャンバ13内へ排出される。
再度図1を参照すると、飲料充填部20で無菌炭酸飲料が充填されたボトル30は、搬送ホイール12によってキャップ装着部16に搬送される。
一方、キャップ33は、予めキャップ殺菌部25によって殺菌処理される(キャップ殺菌工程)。キャップ殺菌部25で殺菌されたキャップ33は、キャップ装着部16において、飲料充填部20から搬送されてきたボトル30の口部に装着される。これにより、ボトル30とキャップ33とを有する製品ボトル35が得られる(キャップ装着工程)。
その後、製品ボトル35は、キャップ装着部16から製品ボトル搬出部22へ搬送され、飲料無菌充填システム10の外部へ向けて搬出される。
なお、上記殺菌工程からキャップ装着工程に至る各工程は、無菌チャンバ13で囲まれた無菌の雰囲気内すなわち無菌の環境下で行われる。無菌エアが常時無菌チャンバ13外に向かって吹き出るように、無菌エア供給装置70から無菌チャンバ13内に陽圧の無菌エアが供給される。
なお、飲料無菌充填システム10におけるボトル30の生産(搬送)速度は、100bpm以上かつ1500bpm以下とすることが好ましい。ここでbpm(bottle per minute)とは、1分間当たりのボトル30の搬送速度をいう。
(無菌非炭酸飲料充填方法)
次に、飲料無菌充填システム10(図1)を用いた無菌非炭酸飲料充填方法について説明する。なお、以下において、通常時における無菌非炭酸飲料の充填方法、すなわち無菌非炭酸飲料をボトル30に充填して製品ボトル35を製造する無菌非炭酸飲料充填方法について説明する。
まず、上記無菌炭酸飲料充填方法の場合と同様に、ボトル供給部21(容器供給工程)、ボトル殺菌部11(殺菌工程)、エアリンス部14及び無菌水リンス部15(リンス工程)を順次経て、ボトル30が飲料充填部20に搬送される。この飲料充填部20において、ボトル30内へ無菌非炭酸飲料が充填される(充填工程)。
この間、図3に示すように、飲料充填部20において、充填ノズル72がボトル30の口部に密着しない状態で、飲料供給ライン73からボトル30の内部に無菌非炭酸飲料が充填される。無菌非炭酸飲料は、飲料充填タンク75から飲料供給ライン73を通過して、ボトル30の内部に注入される。その後、飲料供給ライン73からの無菌非炭酸飲料の供給を停止する。なお、このときカウンタガスライン74及びスニフトライン78は、それぞれカウンタガス用バルブ67及び図示しないバルブによって閉鎖されている。
飲料充填部20で無菌非炭酸飲料が充填されたボトル30は、キャップ装着部16に搬送され、キャップ装着部16において、キャップ33がボトル30の口部に装着される。これにより、ボトル30とキャップ33とを有する製品ボトル35が得られる(キャップ装着工程)。
その後、製品ボトル35は、キャップ装着部16から製品ボトル搬出部22へ搬送され、飲料無菌充填システム10の外部へ向けて搬出される。
(CIP処理方法)
次に、無菌充填システム10において、例えば定期的にあるいは飲料の種類を切り替える際に、CIP(Cleaning in Place)処理を行う場合の作用について説明する。
まず、無菌充填システム10の飲料供給系配管内をCIP処理する。この場合、まずCIP処理の直前にボトル30に充填された飲料が炭酸飲料であるか、非炭酸飲料であるかを判断する。制御部60は、直前にボトル30に充填された飲料に応じて、CIP洗浄する流路を選択し、選択された流路をCIP洗浄する。
(炭酸飲料充填後のCIP処理方法)
具体的には、CIP処理の直前にボトル30に充填された飲料が炭酸飲料である場合、制御部60は、炭酸飲料の充填に用いられた飲料及び炭酸ガスが通過する流路全てに対してCIP洗浄を行う。この場合、炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路の全てに対し、例えば水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加した洗浄液を流し、その後、水に酸性薬剤を添加した洗浄液を流す。
すなわち、図4及び図5に示すように、アルカリ性の洗浄液を、例えば飲料導入ライン65から流入し、飲料充填タンク75、飲料供給ライン73、充填ノズル72、CIPライン83、排出タンク85及びCIP循環ライン81を経て、排液ライン96から流出させる。また、アルカリ性の洗浄液を、例えば飲料充填タンク75から、カウンタガスライン74、スニフトライン78、CIPライン83、排出タンク85及びCIP循環ライン81を経て、排液ライン96から所定時間循環・洗浄した後に流出させる。さらに、アルカリ性の洗浄液を、例えば飲料充填タンク75から、炭酸ガス放出ライン86、排出タンク85及びCIP循環ライン81を経て、所定時間循環・洗浄した後に排液ライン96から流出させる。同様に、他の炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路もアルカリ性の洗浄液で洗浄する。このようにして、アルカリ性の洗浄液を炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路の全てに対して流し、炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路の全体をアルカリ洗浄する。
続いて、同様にして、酸性の洗浄液を、炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路の全てに対して流し、炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路の全体を酸洗浄する。その後、無菌水を、炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路の全てに対して流し、炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路の全体を濯ぐ。このようにして、飲料が通過する流路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去される。なお、図4及び図5において、CIP洗浄される炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路を太線及び網掛けで示している。なお、酸性の洗浄液とアルカリ性の洗浄液とを用いる順番は洗浄性をみて適宜判断してよく、例えばまず酸洗浄した後、アルカリ洗浄を行っても良い。
(非炭酸飲料充填後のCIP処理方法)
一方、CIP処理の直前にボトル30に充填された飲料が非炭酸飲料である場合、制御部60は、非炭酸飲料の充填に用いられた飲料が通過する流路のみに対してCIP洗浄を行う。具体的には、炭酸・非炭酸飲料兼用流路のみに、例えば水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加した洗浄液を流し、その後、水に酸性薬剤を添加した洗浄液を流す。一方、炭酸飲料専用流路は、予めバルブ等により封鎖し、CIP洗浄を行わない。
すなわち、図6及び図7に示すように、アルカリ性の洗浄液を、例えば飲料導入ライン65から流入し、飲料充填タンク75、飲料供給ライン73、充填ノズル72、CIPライン83、排出タンク85及びCIP循環ライン81を経て、排液ライン96から流出させる。同様に、他の炭酸・非炭酸飲料兼用流路もアルカリ性の洗浄液で洗浄する。このようにして、アルカリ性の洗浄液を炭酸・非炭酸飲料兼用流路のみに対して流し、炭酸・非炭酸飲料兼用流路のみをアルカリ洗浄する。
続いて、同様にして、酸性の洗浄液を、炭酸・非炭酸飲料兼用流路のみに対して流し、炭酸・非炭酸飲料兼用流路のみを酸洗浄する。その後、水を、炭酸・非炭酸飲料兼用流路のみに対して流し、炭酸・非炭酸飲料兼用流路を濯ぐ。このようにして、飲料が通過する流路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去される。なお、図6及び図7において、CIP洗浄される炭酸・非炭酸飲料兼用流路を太線及び網掛けで示している。なお、炭酸・非炭酸飲料兼用流路を濯ぐ間、カウンタガス用バルブ67やスニフトライン78上のバルブ等を1分間に2秒から10秒程度、間欠式に開閉し、Oリングやバルブの弁シート等、飲料と接する可能性がある箇所を洗浄するようにしても良い。
(SIP処理方法)
次に、無菌充填システム10において、SIP(Sterilizing in Place)処理を行う。このSIP処理は、飲料の充填作業に入る前に、予め飲料が通過する流路内を殺菌するための処理であり、例えば、上記CIP洗浄で洗浄した流路内に加熱蒸気又は熱水を流すことによって行われる。これにより、飲料が通過する流路内が殺菌処理され無菌状態とされる。
本実施の形態において、SIP処理は、CIP処理の直前にボトル30に充填された飲料が炭酸飲料であるか非炭酸飲料であるかを問わず、炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路の全てに対して行う。
すなわち、CIP処理の直前にボトル30に充填された飲料が炭酸飲料である場合、CIP処理された炭酸飲料専用流路と炭酸・非炭酸飲料兼用流路の両方についてそのままSIP処理を行う。一方、CIP処理の直前にボトル30に充填された飲料が非炭酸飲料である場合、CIP処理後に炭酸飲料専用流路を開放し、炭酸・非炭酸飲料兼用流路だけでなく、炭酸飲料専用流路についてもSIP処理を行う。これにより、CIP処理の直前にボトル30に充填された飲料が炭酸飲料であるか非炭酸飲料であるかに関わらず、全ての流路が滅菌されるため、無菌充填システム10の全体を確実に滅菌することができる。また、SIP処理はCIP処理と比べて処理時間が短いため、炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路の全てに対してSIP処理を行っても、生産性が大きく低下することはない。加えて、制御部60は、蒸気を炭酸飲料専用流路に流すことで、炭酸・非炭酸飲料兼用流路との接液部のバルブ等の殺菌と洗浄を同時に行う。すなわち、SIP処理を蒸気で行う場合、100℃以上、好ましくは121.1℃以上の蒸気を流し、最初に生成する高温の凝縮水でパッキンやガスケット、バルブの弁シートに滲んだ製品液を、殺菌と同時に洗浄することが可能である。特に弁シートの材質がテフロン系の場合、SIP処理による洗浄効果が高く、弁シートの隙間に僅かに付着した製品液をCIPで積極的に洗浄する必要はない。
すなわち、例えばCIP処理の後、熱水を、飲料導入ライン65から流入させ、飲料充填タンク75、飲料供給ライン73、充填ノズル72、CIPライン83、排出タンク85及びCIP循環ライン81を経て、排液ライン96から流出させる。これにより、これらの経路の内部を殺菌し、その後、これらの経路内に無菌水又は無菌エアを通して冷却することによってSIP処理が行われる。
一方、蒸気を、飲料充填タンク75からカウンタガスライン74、スニフトライン78、CIPライン83から流出させる。さらに、蒸気を、例えば飲料充填タンク75から炭酸ガス放出ライン86、排出タンク85及びCIP循環ライン81を経て、排液ライン96から流出させる。これにより、これらの経路の内部を殺菌し、その後、これらの経路内に冷却エア及び無菌水を順次通して冷却することによってSIP処理が完了する。
以上のように本実施の形態によれば、CIP洗浄の直前にボトル30に充填された飲料が炭酸飲料である場合、炭酸飲料専用流路及び炭酸・非炭酸飲料兼用流路の両方に対してCIP洗浄を行う。一方、CIP洗浄の直前にボトル30に充填された飲料が非炭酸飲料である場合、炭酸・非炭酸飲料兼用流路のみに対してCIP洗浄を行う。
一般に、CIP洗浄は、飲料充填システム10内の流路を複数のルートに分け、それぞれに対して別個に行う。例えば、複数のルートのそれぞれについて、第1濯ぎ工程、アルカリ洗浄工程、酸洗浄工程、第2濯ぎ工程を順次行う。このため、CIP洗浄には時間がかかり、生産性の低下を生じるおそれがある。
これに対して本実施の形態においては、とりわけCIP洗浄の直前にボトル30に充填された飲料が非炭酸飲料である場合、炭酸・非炭酸飲料兼用流路のみに対してCIP洗浄を行う。これにより、炭酸飲料及び非炭酸飲料兼用の飲料充填システム10において、CIP処理の時間を短縮することができる。この結果、飲料充填システム10における生産性を向上させるとともに、CIP洗浄に用いられるエネルギーを低減することができる。また、CIP洗浄の直前にボトル30に充填された飲料が非炭酸飲料である場合、非炭酸飲料の充填に炭酸飲料専用流路は用いられないため、炭酸飲料専用流路をCIP洗浄する必要は生じない。
また本実施の形態によれば、無菌チャンバ13内のスニフトライン78に排出弁79を設け、スニフトライン78からのガスを排出弁79から無菌チャンバ13内に排出している。これにより、スニフトライン78を回転体(例えば充填ノズル72)と非回転体(例えば無菌チャンバ13の外部)との間で連結するためのロータリージョイントを設ける必要が生じない。この結果、スニフトライン78用のロータリージョイントを省略することができるため、システム全体でのロータリージョイントの数を減らし、飲料無菌充填システム10の全体構成を簡単なものとすることができる。また、飲料無菌充填システム10の製造コストを低減することができる。
また、本実施の形態によれば、排出弁79は、回転式の内側スニフトライン78aと非回転式の外側スニフトライン78bとの間に位置している。これにより、通常時は、内側スニフトライン78aと外側スニフトライン78bとが分離されて、スニフトライン78からのガスを排出弁79から無菌チャンバ13内に排出することができる。一方、内側スニフトライン78aの回転を停止することにより、内側スニフトライン78aと外側スニフトライン78bとを連結して排出弁79を閉鎖し、スニフトライン78を無菌チャンバ13の外部と連通させることもできる。
また、本実施の形態によれば、外側スニフトライン78bは、伸縮自在となっている。これにより、通常時は、内側スニフトライン78aと外側スニフトライン78bとを分離し、外側スニフトライン78bと回転する内側スニフトライン78aとが干渉しないようにすることができる。また、排出弁79を閉鎖する際には、外側スニフトライン78bの蛇腹部78cを伸長させ、排出弁79において外側スニフトライン78bを内側スニフトライン78aに連結することができる。
また、本実施の形態によれば、飲料充填タンク75に、炭酸ガス供給ライン61と炭酸ガス放出ライン86とを連結している。また、炭酸ガス供給ライン61と炭酸ガス放出ライン86とに、それぞれ第1バルブ62と第3バルブ87とを設け、制御部60により第1バルブ62及び第3バルブ87をそれぞれ制御して飲料充填タンク75内の圧力を制御するようになっている。とりわけ、飲料充填タンク75内の圧力P1と炭酸ガス放出ライン86内の圧力P2との間でP1>P2という関係が成り立つように制御される。これにより、飲料充填タンク75に対して無菌チャンバ13の外部から非無菌状態のガスが侵入することを防ぐことができる。このため、排出タンク85として、無菌状態に制御されていない非無菌タンクを用いることができる。この場合、炭酸ガス放出ライン86を無菌状態の無菌タンクと連結する必要がないので、このような無菌タンクを飲料無菌充填システム10に設ける必要がなく、飲料無菌充填システム10の製造コストを低減することができる。
また、第2圧力計88を設けずに、第1圧力計64のみで制御を行うことも可能である。具体的には、第1圧力計64の指示値より、第1バルブ62と第3バルブ87のそれぞれの開度を調整し、第1圧力計64の値を機器滅菌(SIP)処理中から生産終了時まで0.01MPa以上1.0MPa以下となるよう両バルブ62、87のみで制御される。これにより、飲料充填タンク75に対して無菌チャンバ13の外部から非無菌状態のガスが侵入することを防ぐことができ、上記と同様の効果を得ることができる。
なお、上記において、ボトル30、プリフォーム、キャップ33等の容器殺菌は、過酸化水素からなる殺菌剤を用いて行う場合を例にとって説明したが、これに限らず、過酢酸等の殺菌剤や電子線を用いて殺菌しても良い。
また、上記において、飲料充填システムとして、無菌充填方式を用いる飲料無菌充填システム10を例にとって説明したが、これに限られるものではない。飲料充填システムとしては、例えば55℃以上95℃以下の高温下で飲料を充填するホット充填方式を用いる飲料充填システムであっても良い。
上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。