JP7327788B2 - 糖化産物生成抑制剤及び医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、糖化産物生成抑制剤及び医薬組成物に関する。
アミノ酸と還元糖の混合物を加熱すると褐変する現象は、一般にメイラード反応と呼ばれる。グリコシルヘモグロビン(HbA1c)が生体内で同定され、糖尿病、老化等の進行に伴って蛋白質の糖化反応が、生体内で進行することが明らかにされた。このような蛋白質の糖化反応における終末糖化産物(Advanced glycation end products、以下「AGEs」ともいう)について、糖尿病合併症、動脈硬化といった生活習慣病の発症、老化の進行等に関与することが報告されている。これらAGEsの体内蓄積は、腎糸球体組織硬化症、腎動脈硬化症などの糖尿病合併症だけでなく、アルツハイマー病などの神経変性疾患、皮膚の弾力性の低下や黄色化といった皮膚老化、骨の老化、眼球の老化、アルブミン蛋白の老化に深く関与することが報告されている。
例えば、特許文献1には、アミノグアニジン等の化合物を含むメイラード反応阻害剤が記載されている。アミノグアニジンは、抗糖化作用を示す物質であるが、肝障害等の副作用のため、実用化には至っていない。また、特許文献2には、タウリンとビオチンを含む抗糖尿病用組成物が記載されている。
特公平6-67827号公報 特開2017-66052号公報
本発明は、糖化産物の生成を抑制可能な糖化産物生成抑制剤を提供することを目的とする。
第一態様は、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む糖化産物生成抑制剤である。式中、Arはアリール基を表し、Rは水素原子又は脂肪族基を表し、nは1から3の整数、mは1から4の整数を表す。
第二態様は、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種を処置するための医薬組成物である。式中、Arはアリール基を表し、Rは水素原子又は脂肪族基を表し、nは1から3の整数、mは1から4の整数を表す。
第三態様は、前記医薬組成物を、対象に投与することを含む、糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種の処置方法である。
さらに本発明は、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の前記糖化産物生成抑制剤又は前記医薬組成物の製造における使用を包含する。
本発明によれば、糖化産物の生成を抑制可能な糖化産物生成抑制剤を提供することができる。
アルブミン糖化実験の結果を示すグラフである。 コラーゲン糖化実験の結果を示すグラフである。 糖尿病モデルマウスの体重変化を示すグラフである。 糖尿病モデルマウスに医薬組成物を腹腔内投与した場合のHbA1c値の変化を示すグラフである。 糖尿病モデルマウスに医薬組成物を経口投与した場合のHbA1c値の変化を示すグラフである。
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、糖化産物生成抑制剤等を例示するものであって、本発明は、以下に示す糖化産物生成抑制剤等に限定されない。
糖化産物生成抑制剤及び医薬組成物は、下記式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の少なくとも1種を有効成分として含む。医薬組成物は、糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種を処置するために用いられる。
式中、Arはアリール基を表し、Rは水素原子又は脂肪族基を表し、nは1から3の整数、mは1から4の整数を表す。
式(1)で表される化合物は、生体内における糖化産物の生成を抑制することができる。したがって、式(1)で表される化合物を含む医薬組成物を、対象者に投与することで、対象者における糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種を処置することができる。また、健常者に投与することで、糖尿病、糖尿病合併症等の糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患を予防することができる。なお、式(1)で表される化合物が、生体内における糖化産物の生成を抑制する作用機序の詳細については未だ不明である。
式(1)において、Arは、例えば、置換基を有していてもよい炭素数6から10のアリール基である。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
Arにおけるアリール基は少なくとも1つの置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数1から6のアルキルカルボニル基、カルバモイル基、炭素数1から6のモノ又はジアルキルカルバモイル基、炭素数1から6のアシルアミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルケニル基、炭素数1から6のアルキニル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数1から6のアルキルオキシ基、炭素数1から6のアルケニルオキシ基、炭素数1から6のアルキニルオキシ基、アミノ基、炭素数1から6のモノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基、スルホ基等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。Arにおける置換基は、可能な場合には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等の置換基を更に有していてもよい。また、Arにおける置換基は、複数の置換基が連結して、脂肪族の縮合環構造を形成してもよい。更に置換基としてのアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
は、水素原子又は炭素数1から6の脂肪族基を表す。脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。Rにおける脂肪族基は、ハロゲン原子等の置換基を更に有していてもよい。
式(1)において、nは1から3の整数を表し、例えば、1であってよい。また、mは1から4の整数を表し、例えば、2であってよい。
式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、公知の方法によって製造することができる。例えば、アリールアルキルカルボン酸と、アミノアルキルスルホン酸とを公知の縮合剤を用いて縮合することで製造することができる。また、アリールアルキルカルボン酸のハロゲン化物とアミノアルキルスルホン酸とを反応させて製造することができる。
糖化産物生成抑制剤又は医薬組成物は、式(1)で表される化合物を薬学的に許容される塩として含んでいてもよい。式(1)で表される化合物の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属塩から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩等が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。また、置換アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)等が挙げられる。
医薬組成物は、例えば、糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種(以下、「特定疾患」ともいう)を処置するために用いられる。特定疾患には、例えば、糖尿病、糖尿病合併症、動脈硬化症、高血圧症、腎障害、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病等が含まれ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、糖尿病合併症としては、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経症、糖尿病血管合併症等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。ここで、本明細書において用いられる「処置」とは、疾患について施される何らかの処置であればよく、例えば、疾患の治療、改善、進行の抑制(悪化の防止)等が挙げられる。
医薬組成物は、式(1)で表される化合物に加えて、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。薬学的に許容される担体としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤;デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤;緩衝剤;矯味剤;懸濁化剤;乳化剤;着色剤;粘稠剤等が挙げられる。
また、医薬組成物が液状製剤の場合、医薬組成物は有効成分に加えて溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、pH調整剤、無痛化剤等を含んでいてもよい。液状製剤における溶剤としては、例えば、精製水、エタノール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油などが挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポビドン、メチルセルロース、モノステアリン酸グリセリンなどが挙げられる。等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、D-マンニトールなどが挙げられる。緩衝剤またはpH調整剤としては、例えば、リン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
医薬組成物は、公知の糖尿病薬剤、AGEs生成抑制効果を有する他の薬剤等をさらに含んでいてもよい。他の薬剤としては、例えば、インスリン抵抗性改善薬、脂質異常症治療薬、アンジオテンシンII1型受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、メトホルミン等が例示される。
医薬組成物の剤形としては、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠等の錠剤;カプセル剤;発泡顆粒剤等の顆粒剤;散剤;エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、リモナーデ剤等の経口液剤;シロップ剤(シロップ用剤);経口ゼリー剤;トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠、ガム剤等の口腔用錠剤;口腔用スプレー剤;口腔用半固形剤;含嗽剤;輸液剤、埋め込み注射剤、持続性注射剤等の注射剤;腹膜透析用剤、血液透析用剤等の透析用剤;吸入粉末剤、吸入液剤、吸入エアゾール剤等の吸入剤;坐剤;直腸用半固形剤;注腸剤;点眼剤;眼軟膏剤;点耳剤;点鼻粉末剤、点鼻液剤等の点鼻剤;膣錠;膣用坐剤;外用固形剤(外用散剤);リニメント剤、ローション剤等の外用液剤;外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等のスプレー剤;軟膏剤;クリーム剤;ゲル剤;テープ剤、パップ剤等の貼付剤などが挙げられる。これらの中でも経口投与のし易さの点で、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤、口腔用錠剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤および含嗽剤が好ましく、生体内に吸収され易い点で、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤がより好ましい。
また、医薬組成物は、エキス剤、丸剤、酒精剤、浸剤、煎剤、茶剤、チンキ剤、芳香水剤、流エキス剤等の生薬関連製剤に、式(1)で表される化合物を添加した剤形で使用することもできる。これら剤形は、糖尿病、糖尿病合併症等の特定疾患の程度、その他の疾病の程度、年齢、性別等の条件に応じて適宜選択される。
医薬組成物の投与量は、糖尿病、糖尿病合併症等の特定疾患の程度、その他の疾病の程度、年齢、性別等の条件に応じて適宜選択される。例えば、糖化産物の生成を抑制することができる量(以下、「糖化産物生成抑制有効量」とも称する)の式(1)で表される化合物を投与すればよい。糖化産物生成抑制有効量は、各種の非臨床および臨床試験の少なくとも一方を含む、当業者に周知の方法を用いて適宜決定することができる。
医薬組成物は、糖化産物生成抑制有効量の式(1)で表される化合物を一度に投与するものであってもよく、間隔を置いて複数回に分けて投与するものであってもよい。複数回に分けて投与する場合は、一日に投与される式(1)で表される化合物の合計量が糖化産物生成抑制有効量となればよく、例えば、食事の回数に合わせて投与してもよい。
医薬組成物は、糖尿病、糖尿病合併症等の特定疾患に罹患した対象者又は健常者のいずれに対しても投与することができる。糖化産物との関連性が高い糖尿病等の特定疾患に罹患した対象者に対して投与することが好ましい。例えば、糖尿病に罹患した対象者とは、ヘモグロビンA1cが6.1%(JDS値)以上で、且つ、以下の(1)から(3)のいずれかに該当する者を指す:(1)空腹時血糖値が126mg/dL以上、(2)随時血糖値(空腹か食後かにかかわらず)が200mg/dL以上、および(3)ブドウ糖負荷後2時間値が200mg/dL以上。糖尿病診断基準の詳細は、日本糖尿病学会による「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」(同学会のホームページ等から入手可能)に記載されている。
処置方法
処置方法は、有効量の前記医薬組成物を、対象に投与することを含み、糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種の疾患を処置する方法である。前記疾患群は、例えば、糖尿病、糖尿病合併症、動脈硬化症、高血圧症、腎障害、認知症、アルツハイマー病及びパーキンソン病からなる群から選択される少なくとも1種の特定疾患であってもよい。医薬組成物の詳細および投与方法は既述の通りである。処置の対象は、例えば、哺乳動物であり、哺乳動物はヒトを含む。また、処置の対象は非ヒト動物であってもよい。
本発明は、別の態様として、糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患の処置に用いられる医薬組成物の製造における式(1)で表される化合物の使用、糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患の処置における式(1)で表される化合物の使用、糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患の処置に使用される式(1)で表される化合物を包含する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
参考例1
フェニルアセチルタウリンの合成
1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10mLにタウリン10.5mmolを溶解した溶液へ、撹拌、30℃以下に冷却しながら、溶液が弱アルカリ性を示すような速度で、フェニルアセチルクロリド10mmolと3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液とを別々に添加した。添加終了後、混合物を2時間撹拌した。次いで混合物を3mLの濃塩酸を含む100mLのビーカーへ注いだ。生じた沈殿を吸引濾過で集め、冷水で洗浄し、乾燥させた。エタノール-水から再結晶して目的物としてフェニルアセチルタウリンを得た。
実施例1
アルブミン糖化実験
ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(Ca,Mg不含)(DPBS:ナカライテスク社製)中のα-グルコース(ナカライテスク社製)の最終濃度が0.2mol/Lで、ヒトアルブミン(SIGMA社製)の最終濃度が8mg/mlとなるように、エッペンドルフチューブ(750μl/tube)に調製した。各チューブにフェニルアセチルタウリンを所定の最終濃度になるように適量添加して、60℃で40時間インキュベーションした。インキュベーション後の糖化アルブミン(糖化産物;AGEs)の生成レベルを、マイクロプレートリーダー(TECAN)を用いて蛍光強度(励起波長370nm、検出波長440nm)を測定することで評価した。また、フェニルアセチルタウリンの代わりに、陽性対照としてアミノグアニジン(AG;和光純薬社製)を、比較としてタウリンを用い、同様にして糖化アルブミンの生成レベルを評価した。結果を図1に示す。図1にはコントロールを100%としたときの抑制率を併せて示す。なお、「+」を付した数値は生成レベルを上昇させたことを意味する。また、水を用いたコントロールを100としたときの相対蛍光強度を表1に示す。
図1から、フェニルアセチルタウリンはアルブミンの糖化抑制作用を有することが認められた。一方、タウリンはアルブミンの糖化抑制作用を示さなかった。
実施例2
コラーゲン糖化実験
コラーゲン抗糖化アッセイキット(グリセルアルデヒド)(コスモバイオ社製)を用いて、フェニルアセチルタウリンのコラーゲン糖化抑制能を評価した。陽性対照にはキットに付属のアミノグアニジンを用い、比較としてタウリンを用いた。アッセイはキットに付属の説明書に準じて行い、37℃で24時間のインキュベーションで行った。結果を図2に示す。図2には、コントロールを100%としたときの抑制率を併せて示す。なお、「+」を付した数値は生成レベルを上昇させたことを意味する。また、水を用いたコントロールを100としたときの相対蛍光強度を表2に示す。
図2及び表2から、フェニルアセチルタウリンは、用量依存的にコラーゲンの糖化抑制作用を有することが認められた。一方、タウリンは、コラーゲンの糖化抑制作用を示さず、むしろ、コラーゲンの糖化を促進した。
実施例3
2型糖尿病モデルマウスであるKK/Ta Jclマウス(10週齢、オス、コントロール群n=5、被験群n=3)を通常飼料(CE-2)で飼育し、8週間に渡って被験物質としてフェニルアセチルタウリン(Ph-T)を腹腔内へ投与(ip)して、体重、尿糖、及びHbA1cの変化を調べた。具体的には、フェニルアセチルタウリン2mgを蒸留水1mLに溶解したもの5mL/kg(10mg/kg)を、1日1回連日腹腔内投与した。コントロールには水のみを投与した。1週毎に、絶食時に代謝ケージにて蓄尿し、尿糖試験紙(新ウリエースGa)を用いて尿糖を測定した。また、2週毎に、DCA Vantage HbA1cカートリッジ(シーメンスヘルスケア社製)を用いてHbA1cを測定した。体重及び尿糖の変化を図3に、HbA1cの測定結果を図4及び表3に示す。
図3に示すように、コントロールに比べて被験物質の腹腔内投与群は、体重の増加が有意に緩やかであり、尿糖の陽性化が遅延した。また、図4及び表3に示すように、コントロールに比べて被験物質の投与群は、HbA1c値が低値であった。
実施例4
2型糖尿病モデルマウスであるKK/Ta Jclマウス(10週齢、オス、コントロール群n=3、各被験群n=3)を通常飼料(CE-2)で飼育し、8週間に渡って被験物質としてフェニルアセチルタウリン(Ph-T)を経口投与(po)して、HbA1cの変化を調べた。具体的には、フェニルアセチルタウリン5mgを蒸留水1mLに溶解したものを、1日1回経口で投与した。コントロールには水のみを投与した。2週毎に、DCA Vantage HbA1cカートリッジ(シーメンスヘルスケア社製)を用いてHbA1cを測定した。測定結果を図5及び表4に示す。
図5及び表4に示すように、コントロールに比べて被験物質の経口投与群は、HbA1c値が低値であった。

Claims (8)

  1. 式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む糖化産物生成抑制剤。
    Figure 0007327788000007
    (式中、Arは置換基を有していてもよいフェニル基を表し、Rは水素原子を表し、nは1を表し、mは2を表す
  2. 式(1)において、Arにおける置換基が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数1から6のアルキルカルボニル基、カルバモイル基、炭素数1から6のモノ又はジアルキルカルバモイル基、炭素数1から6のアシルアミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルケニル基、炭素数1から6のアルキニル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数1から6のアルキルオキシ基、炭素数1から6のアルケニルオキシ基、炭素数1から6のアルキニルオキシ基、アミノ基、炭素数1から6のモノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の糖化産物生成抑制剤。
  3. 式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種を処置するための医薬組成物。
    Figure 0007327788000008
    (式中、Arは置換基を有していてもよいフェニル基を表し、Rは水素原子を表し、nは1を表し、mは2を表す
  4. 式(1)において、Arにおける置換基が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数1から6のアルキルカルボニル基、カルバモイル基、炭素数1から6のモノ又はジアルキルカルバモイル基、炭素数1から6のアシルアミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルケニル基、炭素数1から6のアルキニル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数1から6のアルキルオキシ基、炭素数1から6のアルケニルオキシ基、炭素数1から6のアルキニルオキシ基、アミノ基、炭素数1から6のモノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群から選択される少なくとも1種である請求項3に記載の医薬組成物。
  5. 終末糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患が、糖尿病、糖尿病合併症、動脈硬化症、高血圧症、腎障害、認知症、アルツハイマー病及びパーキンソン病からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項3又は4に記載の医薬組成物。
  6. 糖尿病合併症が、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経症及び糖尿病血管合併症からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項に記載の医薬組成物。
  7. 錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤、口腔用錠剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、含嗽剤、注射剤及び吸入剤からなる群より選ばれる剤形のものである請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  8. 請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の医薬組成物を、対象(ヒトを除く)に投与することを含む、糖化産物の生成又は蓄積に由来する疾患群から選択される少なくとも1種の処置方法。
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