JP7327094B2 - 面間熱伝導シート - Google Patents
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Description
即ち、本発明は以下を要旨とする。
また、本発明の面間熱伝導シートは、多孔高分子シートの孔内に炭素粒子を充填するのみで製造することができるため、その製造は非常に容易である。
また、多孔高分子シート内で孔の分布を変化させることで、局所的に熱伝導率の異なる部分を設けることも可能である。このように局所的に熱伝導率の異なる部分を有する面間熱伝導シートによれば、例えば、面方向に均一な温度分布を有する熱源の上に、この面間熱伝導シートを配置することで不均一な温度分布を任意に形成することが可能となる。逆に温度分布が不均一な熱源上にこの面間熱伝導シートを配置することで、温度分布を均一にすることもできる。
多孔高分子シートとは、高分子材料よりなる多孔シートである。
本発明に用いる多孔高分子シートを構成する高分子材料としては、例えば樹脂あるいはゴムが挙げられる。
多孔高分子シートは熱源に接触ないし近接して用いられるものであることから、この多孔高分子シートを構成する高分子材料は、耐熱温度が100℃以上であるものが好ましい。高分子材料のより好ましくい耐熱温度は150℃以上であり、さらに好ましくは200℃以上である。
高分子材料の耐熱温度は、樹脂の場合はTg(ガラス転移点)で規定され、ゴムの場合は耐熱限界温度で規定される。
また、好ましいゴムとしては天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらのゴムのうち、特にシリコーンゴム、フッ素ゴムは耐熱性、柔軟性の観点から好ましい材料である。
これらの樹脂やゴムは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
多孔高分子シートを構成するこれらの高分子材料には、ガラス繊維等の強化材や、その他の添加剤等を配合してもよい。
空隙率(%)=[1-{M÷(V×D)}]×100
ここで、多孔高分子シートの孔径の平均値D1は、光学顕微鏡ないし走査型電子顕微鏡(SEM)にて多孔高分子シートを平面視したときに観察される孔について測定される20個の孔径の算術平均値である。
多孔高分子シートは高分子シートの面間方向に孔が開いた形態でもよいし、高分子細線が結合した形態でもよい。またメッシュ状であってもよい。高分子細線よりなるメッシュ状の多孔高分子シートの場合、その線幅(繊維径)は10~1000μmで、1インチあたりの開口数は10~200メッシュ程度であることが好ましい。
従って、本発明に用いる多孔高分子シートの厚さについても、このような厚さの面間熱伝導シートとなるように、50μm以上5mm以下であることが好ましい。
炭素粒子としては薄片状及び繊維状のうちの少なくとも一方の黒鉛を用いることが好ましい。特に薄片状黒鉛を用いることにより、炭素粒子と多孔高分子シートの孔の壁面が分子間力で結合して、たとえ貫通孔であっても炭素粒子を安定に充填することができるようになる。また分子間力により各々の炭素粒子のベーサル面が結合することで熱伝導性を向上させることができる。この分子間力は炭素粒子の厚みが薄いほど強くなるため、十分に強い分子間力を得るためには厚みの薄い薄片状黒鉛であることが好ましく、その厚みの平均値は100nm以下が好ましく、50nm以下がさらに好ましく、25nm以下が特に好ましく、中でも厚みが10nm以下になる、いわゆるグラフェンが最も好ましい。グラフェンの中でも、平均厚み8nm以下が好ましく、6nm以下がより好ましく、4nm以下が最も好ましい。ただし、炭素の原子サイズから薄片状黒鉛の厚みの下限は約0.3nmとなる。
グラフェンの厚みの平均値についても、同様に、20個以上のグラフェン粒子の厚みを走査型電子顕微鏡(SEM)あるいは走査型プローブ顕微鏡(SPM)で観察して測定された値の算術平均値として求めることができる。
炭素粒子を多孔高分子シートの孔内に充填して本発明の面間熱伝導シートを製造する方法としては、特に制限されないが、炭素粒子を分散媒に分散させた分散液に多孔高分子シートを浸漬して分散液を含浸させた後、該多孔高分子シートから分散媒を除去する方法(キャスト法、ディップコート法など)、炭素粒子を分散媒に分散させた分散液を多孔高分子シートに塗布(スピンコート、ブレードコート、バーコート、ダイコートなど)してから分散媒を除去する方法が挙げられる。あるいは、フィルター(例えばろ紙など)の上に多孔高分子シートを置き、炭素粒子を分散媒に分散させた分散液をこの多孔高分子シート上に供給し、ろ紙の下方から真空吸引を行って分散媒を除去する真空ろ過法を用いてもよい。インクジェット法などの印刷法により孔部分だけに炭素粒子分散液を供給することもできる。
分散液中の炭素粒子濃度には特に制限はないが、分散液を効率的に多孔高分子シートの孔内に浸入させて高い充填率で炭素粒子を充填する観点から0.1~5質量%程度とすることが好ましい。
分散媒の除去後に分散剤等の有機不純物を除去するために多孔高分子シートの融点以下の温度で加熱することもできる。この加熱温度は通常100~300℃程度である。
本発明の面間熱伝導シートを適用する際、面間熱伝導シートと熱源や放熱部材などとの接触時の熱抵抗を低減するために熱源又は放熱部材と面間熱伝導シートとの間に接触層を設けても良い。接触層は隣接する部材との熱抵抗を低減するために柔軟性が高く、かつ熱伝導率が比較的高いものであることが好ましい。接触層の好ましい熱伝導率は1W/m・K以上である。また接触層はタック性を有するものであることが好ましい。放熱部材がLEDやICなど電気を利用する電気部材と接触する際には、電気部材の短絡を防ぐために接触層は絶縁性のものであることが好ましい。
本発明の面間熱伝導シートが面内熱伝導性の効果を奏する理由については、以下のとおり推察される。
すなわち、多孔高分子シートの空孔の面間方向を向いた壁面に炭素粒子が分子間力で接着し、同方向に炭素粒子が積層することで、炭素粒子のベーサル面が主に面間方向を向き、面間方向に熱が良好に流れるようになる結果、高い面間熱伝導性が得られる。
<面間熱伝導シートの製造>
STREM CHEMICALS社製06-0220のグラフェン粉末(最大径の平均値:12μm、平均厚み:2.5nm)200mgと、分散媒として純水60mLと、イソプロピルアルコール40mLとを容器に入れ、超音波バスで10分超音波を印加することにより分散させた。
多孔高分子シートとしては、53メッシュ(1インチあたり53の開口)、線幅190μm、開口率49%、厚み220μmのナイロンメッシュ(平均孔径:0.45mm)を用いた。このナイロンメッシュは、断面が円形のナイロン線を格子状に組み合わせたものであり、その孔(開口)の最も狭い部分において孔面がシートの主面に対し垂直になっている。
製造された面間熱伝導シートの熱伝導率を株式会社べテル製サーモウェーブアナライザTA3で測定したところ、シートの面内方向に5W/m・K、面間方向には78W/m・Kの熱伝導率が得られた。
ナイロンのみの平坦なシートでの熱伝導率は0.2W/m・Kであることから、面内方向にも面間方向にも熱伝導率が向上しており、特に面間方向の熱伝導率は飛躍的に向上していることが分かる。
多孔高分子シートの孔内へのグラフェン粉末の充填性を、製造された面間熱伝導シートの透過光を目視で見ることにより充填状態を確認すると共に、以下の剥離試験を行って、グラフェン粉末の剥離状態を確認し、以下の基準で評価した。
<剥離試験>
スリーエムジャパン社製メンディングテープ(12mm幅)を面間熱伝導シート表面に接着した後、一気に剥がすことにより行った。
<評価基準>
○:グラフェン粉末を欠陥なく充填することができ、充填後、剥離試験で剥離しない。
△:グラフェン粉末を欠陥なく充填することができているが、充填後、剥離試験で一部剥離する。
×:グラフェン粉末を孔内部に十分に充填できていない。
これらの評価結果を表1に示す。
グラフェン粉末を、シグマアルドリッチ社製製品番号900413(最大径の平均値:25μm、平均厚み:7.1nm)とした以外は、実施例1と同様にして、面間熱伝導シートを作成し、実施例1と同様に熱伝導率の測定と孔内への充填性の評価を行った。孔内には完全にグラフェンが充填されており、すなわち空隙体積の100%をグラフェンが占めていた。結果を表1に示す。
グラフェン粉末をアイテック社製iGrafen-α(最大径の平均値:120μm、平均厚み:1200nm)とした以外は、実施例1と同様にして、面間熱伝導シートを作成し、実施例1と同様に熱伝導率の測定と孔内への充填性の評価を行った。孔内には完全にグラフェンが充填されており、すなわち空隙体積の100%をグラフェンが占めていた。結果を表1に示す。
グラフェン粉末を、グラフェンプラットフォーム社製GNH-XZ(最大径の平均値:2μm、平均厚み:130nm)とした以外は、実施例1と同様にして、面間熱伝導シートを作成し、実施例1と同様に熱伝導率の測定と孔内への充填性の評価を行った。孔内には完全にグラフェンが充填されており、すなわち空隙体積の100%をグラフェンが占めていた。結果を表1に示す。
グラフェン粉末を、XG SCIENCES社製XGnP C-500(最大径の平均値:0.12μm、平均厚み:2.8nm)とした以外は、実施例1と同様にして、面間熱伝導シートを作成し、実施例1と同様に熱伝導率の測定と孔内への充填性の評価を行った。孔内には完全にグラフェンが充填されており、すなわち空隙体積の100%をグラフェンが占めていた。結果を表1に示す。
グラフェン粉末を、Luxor社製(型番無し)(最大径の平均値:330μm、平均厚み:1.6nm)とした以外は、実施例1と同様にして、面間熱伝導シートの作成を試みたが、ナイロンメッシュの孔内部にグラフェン粉末は充填されなかった。
多孔高分子シートを、厚さ0.49mmで孔径0.75mmの円形の孔が、シートの主面に対して垂直に、1.1mmピッチで開いた、開口率40%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製パンチングシートとした以外は、実施例1と同様にして、面間熱伝導シートを作成し、実施例1と同様に熱伝導率の測定と孔内への充填性の評価を行った。孔内には完全にグラフェンが充填されており、すなわち空隙体積の100%をグラフェンが占めていた。結果を表1に示す。
なお、この面間熱伝導シートは柔軟性があり、容易に手で曲げることが可能であった。また、この面間熱伝導シートの密度は1.5g/cm3であり、PTFEの2.2g/cm3よりもさらに軽量となった。
多孔高分子シートを、厚さ0.7mmで孔径1.2mmの円形の孔が、シートの主面に対して垂直に、2.3mmピッチで開いた、開口率25%のシリコーンゴムパンチングシートとした以外は、実施例1と同様にして、面間熱伝導シートを作成し、実施例1と同様に熱伝導率の測定と孔内への充填性の評価を行った。孔内には完全にグラフェンが充填されており、すなわち空隙体積の100%をグラフェンが占めていた。結果を表1に示す。
なお、この面間熱伝導シートは柔軟性があり、容易に手で曲げることが可能であった。また、この面間熱伝導シートの密度は0.6g/cm3であり、シリコーンゴムの0.97g/cm3よりもさらに軽量となった。
Claims (6)
- 多孔高分子シートと、該多孔高分子シートの孔内に充填された炭素粒子とを有する面間熱伝導シートであって、
前記炭素粒子が薄片状黒鉛であり、該薄片状黒鉛の厚みが100nm以下であり、
前記炭素粒子の最大径の平均値D2が10μm以上である面間熱伝導シート。 - 前記多孔高分子シートの平均孔径をD1、前記炭素粒子の最大径の平均値をD2としたとき、D1≧D2×2である請求項1に記載の面間熱伝導シート。
- 前記多孔高分子シートの平均孔径をD1、前記炭素粒子の最大径の平均値をD2としたとき、D1≦D2×3000である請求項1又は2に記載の面間熱伝導シート。
- 前記多孔高分子シートの孔は、該多孔高分子シートの主面に対し垂直に開けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の面間熱伝導シート。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の面間熱伝導シートの製造方法であり、多孔高分子シートに、炭素粒子の分散液を含浸させる工程を含む面間熱伝導シートの製造方法。
- 前記分散液を含浸させる工程において、前記多孔高分子シートをフィルター上に置き、該分散液を該多孔高分子シート上に供給し、該フィルターの下方から真空吸引を行う請求項5に記載の面間熱伝導シートの製造方法。
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