JP7326980B2 - マイクロニードル - Google Patents

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本発明はマイクロニードルに関する。
ワクチンなどの薬剤を体内に投与する方法として、マイクロニードルを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。マイクロニードルは、針形状を有する突起部を基体の表面に有している。マイクロニードルを用いる投与方法では、基体が皮膚に押し付けられることによって突起部が皮膚に刺さり、突起部に形成された孔から薬剤が皮膚の内部に送り込まれる。突起部の長さは、皮膚における真皮層の神経細胞に達しない長さであるため、マイクロニードルを用いる投与方法では、注射針を用いる投与方法と比べて、皮膚に孔が形成されるときの痛みが抑えられる。また、マイクロニードルを用いる投与方法では、注射針を用いて皮下に投与する方法と比べて、抗原提示細胞が豊富に存在する皮内に薬剤が投与されるため、薬剤の投与量を減らすことができる可能性がある。
マイクロニードルを用いた薬剤の投与方式の1つでは、突起部の延びる方向に基体と突起部とを貫通する貫通孔が形成されたマイクロニードルが用いられ、貫通孔を通して液状の薬剤である液剤が皮内に投与される。
例えば、皮膚への突起部の挿入深さを制御するリミッターと、突起部の周囲で皮膚の変形を抑えるスタビライザーとを備える装置が提案されている(特許文献2参照)。また、例えば、マイクロニードルの周囲にばねを組み付け、ばね力によって、皮膚を穿孔するための付勢力を突起部に与え、また、液剤の投与中に突起部が皮膚から抜けることを抑える装置が提案されている(特許文献3参照)。
特開2005-21677号公報 特表2009-516572号公報 特許第5718622号公報
微細な開口が設けてあるマイクロニードルにおいては、皮膚に対する穿刺角度や穿刺の速度の条件によっては、開口に皮膚片が詰まる問題が生じる。皮膚片による閉塞が生じた場合は、投与時の注入圧力が設計値以上に高まって投与できない問題や、投与時に液漏れが発生し規定量の投与ができない問題等が生じるおそれがある。
本発明は、使用時に貫通孔の閉塞が生じにくく、効率よく皮膚内に液体を送達することが可能なマイクロニードルを提供することを課題とする。
本発明の一態様に係るマイクロニードルは、基板と、基板の一方の面から突出する突起部と、を備え、突起部の突出方向に延び突起部及び基板を貫通する貫通孔が突起部及び基板に形成されたマイクロニードルであって、マイクロニードルの使用時の貫通孔の閉塞を防止する閉塞防止ガイドが、貫通孔の開口が形成された突起部の先端面に設けられており、閉塞防止ガイドは、先端面から隆起する隆起部を一つ以上有することを要旨とする。
本発明に係るマイクロニードルによれば、穿刺性を大きく損なうことなく、使用時に貫通孔の閉塞が生じにくく、効率よく皮膚内に液体を送達することが可能である。
本発明の一実施形態に係るマイクロニードルの構造を示す斜視図である。 本発明の別の実施形態に係るマイクロニードルの構造を示す上面図及び断面図である。 図2のマイクロニードルの使用時の、貫通孔の閉塞を防止する効果を説明する断面図である。 従来のマイクロニードルの使用時の、貫通孔の閉塞を説明する断面図である。
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1の(a)は本発明に係るマイクロニードルの第一例を説明する図であり、図1の(b)は本発明に係るマイクロニードルの第二例を説明する図であり、図2は本発明に係るマイクロニードルの第三例を説明する図である。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
図1及び図2が示すように、マイクロニードル10は、基板11と、皮膚に穿孔するための突起部12と、を備えており、突起部12は基板11の一方の平坦面から突出している。突起部12及び基板11には、突起部12の突出方向に延び突起部12及び基板11を貫通する貫通孔12aが形成されており、貫通孔12a内を流体が流動可能とされている。突起部12の貫通孔12aに供給される流体の種類は特に限定されるものではないが、例えば、液状の薬剤である液剤が挙げられる。
また、マイクロニードル10は、マイクロニードル10の使用時(突起部12を皮膚に穿刺した時)の貫通孔12aの閉塞を防止する閉塞防止ガイド13を備えている。閉塞防止ガイド13は、貫通孔12aの開口が形成された突起部12の先端面14に設けられており、先端面14から隆起する隆起部13aを一つ以上(図2の例では1つ)有している。閉塞防止ガイド13は、図2の(a)、(b)に示すように、貫通孔12aの開口の一部を覆っていてもよい。
マイクロニードル10(基板11、突起部12、及び閉塞防止ガイド13)を形成する素材の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス、チタン、シリコン、コバルトクロム合金、マグネシウム合金等の金属材料が挙げられる。
また、マイクロニードル10(基板11、突起部12、及び閉塞防止ガイド13)を形成する素材は樹脂材料であってもよい。樹脂材料の種類は特に限定されるものではないが、例えば、汎用のプラスチック、医療用のプラスチック、化粧品用のプラスチックが挙げられる。より具体的な樹脂材料の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
なお、マイクロニードル10(基板11、突起部12、及び閉塞防止ガイド13)を形成する樹脂材料は、上記の樹脂材料の群に含まれる2つ以上の樹脂材料の共重合体であってもよい。また、マイクロニードル10(基板11、突起部12、及び閉塞防止ガイド13)を形成する樹脂材料、特に突起部12を形成する樹脂材料は、ポリ乳酸等の生分解性樹脂で形成されていることが好ましい。突起部12が生分解性樹脂で形成されていると、皮膚に穿刺時に突起部12が折れて体内に留まった場合においても、突起部12が分解するため取り出す必要が無い。
基板11、突起部12、及び閉塞防止ガイド13は、全てが同一の素材で構成されていてもよいし、全て異なる素材で構成されていてもよい。また、基板11、突起部12、及び閉塞防止ガイド13のうち2つが同一の素材で構成され、残り一つが異なる素材で構成されていてもよい。
例えば、基板11、突起部12、及び閉塞防止ガイド13は、金属材料と樹脂材料の組み合わせで構成されていてもよい。具体的には、突起部12が金属材料製で且つ基板11が樹脂材料製であってよく、その逆に、突起部12が樹脂材料製で且つ基板11が金属材料製であってよい。なお、必要に応じて、基板11と突起部12とを密接させるためのシール剤、接着剤、ガスケット、オーリング等を組み合わせて使用してもよい。
閉塞防止ガイド13が突起部12と異なる素材で構成される場合には、穿刺対象物への穿刺や貫通孔12aの開口を流れる流体の圧力によって閉塞防止ガイド13の形状や配置部位が変化しない仕様であることが好ましい。具体的には、接着や溶接等の接合方法により強固に固定された形状である。より好ましくは、閉塞防止ガイド13と突起部12が同一の素材で構成されており、一体加工又は一体成形で作製された構造である。
さらに、基板11と突起部12が一体に形成された一体成形物であってもよいし、基板11、突起部12、及び閉塞防止ガイド13が一体に形成された一体成形物であってもよい。
また、突起部12は、皮膚に穿孔するために十分な細さと先端角とを有し、先端に向けて横断面積が小さくなる形状であることが好ましい。例えば、突起部12は円錐形状を有しているが、四角錐や三角錐などの角錐形状や、円柱形状、角柱形状を有していてもよい。また、突起部12は、突起部12の突出方向において、上述した形状の群のうち互いに異なる2つ以上の形状を有していてもよいし、上述した形状の群に含まれる形状の各々に準ずる形状であって、非対称な形状を有していてもよい。また、突起部12の外周面には溝が形成されていてもよいし、突起部12の外周面は段差面で形成されていてもよい。
さらに、突起部12は、基板11上に複数配置されていてもよく、その配列パターンとしては格子状、円形状、同心円状等であってもよい。
閉塞防止ガイド13は、突起部12の先端に形成されている先端面14内に配置されていてよい。閉塞防止ガイド13は、突起部12の頂点に近い部位であることがより好ましい。突起部12の頂点は穿刺時に皮膚との最初の接点となるため、穿刺時に皮膚片が貫通孔12aの開口に向かってくる際に皮膚片と貫通孔12aの開口との間に閉塞防止ガイド13が位置するように、閉塞防止ガイド13を設けることがより効果的である。
次に、マイクロニードル10について、図2~4を参照しながら、さらに詳細に説明する。
一般に、マイクロニードルは、皮膚などの穿刺対象物を穿孔することで、体内へのアクセス経路を確保する。その際、従来のマイクロニードルにおいては、図4に示すように、皮膚が突起部の先端面を覆って貫通孔を閉塞する場合がある。特に、皮膚に対して貫通孔が垂直をなすような方向から突起部を皮膚に穿刺する場合においては、貫通孔の開口の全面が皮膚によって覆われたり、複数の小さな皮膚片が貫通孔の内部に侵入したりしやすいため、貫通孔の閉塞が生じやすい。
本実施形態のマイクロニードル10においては、図2、3に示すように、先端面14に閉塞防止ガイド13が設けてあるため、穿刺時には閉塞防止ガイド13によって貫通孔12aの開口と皮膚との間に空間が形成される。また、マイクロニードル10のうち最も鋭利な構造となる先端部によって、穿刺直後に皮膚が切開されるが、切開された皮膚は、先端面14に沿って進まずに、先端面14から隆起する隆起部13aに沿って貫通孔12aの開口から離れる方向へ誘導される。これにより、皮膚への穿刺の際に皮膚片が貫通孔12aの開口内に詰まることを抑止することができるので、貫通孔12aが閉塞することなく皮膚面に対して液剤を注入することができる。
また、本実施形態のマイクロニードル10は、閉塞防止ガイド13を備えることによりマイクロニードル10の側面に開口を設ける必要がないので、より高い圧力の穿刺に耐え得る設計とすることができる。穿刺時の皮膚片の詰まりを抑制するためにマイクロニードルの側面に開口を有する構造とすると、穿刺の際に側面の開口を起点として座屈や変形を生じる欠点がある。
図2の(a)の上面図及び(b)の断面図から分かるように、閉塞防止ガイド13は、基板11側から貫通孔12a内を観察した場合に、貫通孔12aの開口から閉塞防止ガイド13の一部が確認できる位置まで、閉塞防止ガイド13が貫通孔12aの開口にせり出した構造、すなわち、貫通孔12aの開口の一部を閉塞防止ガイド13が覆う構造であることが好ましい。このような構造であれば、穿刺時に、貫通孔12aが延びる方向から貫通孔12aの内部へ皮膚が侵入しにくい。
また、貫通孔12a内を流れる流体が貫通孔12aの開口から吐出される際の吐出方向は、貫通孔12aの開口の形状によって決定されるが、図2に示すように閉塞防止ガイド13が存在した場合には、閉塞防止ガイド13に流体が接触することにより吐出方向は変化し、貫通孔12aが延びる方向から貫通孔12aが延びる方向に直交する方向へ変更される。そして、吐出方向が変化した流体が皮膚を押し込むことによって、皮膚による貫通孔12aの閉塞が生じにくくなる。
さらに、本実施形態のマイクロニードル10によれば、薬剤の円滑な投与が可能である。その結果、薬剤の押圧に要する力の増大や薬剤の投与に要する時間の増大が抑えられるため、薬剤の投与者や被投与者の負担が大きくなることを抑えられる。また、皮内に広がることのできる薬剤の量が制限されることに起因して薬剤が皮膚の表面や皮下に流出することが抑えられるため、薬剤が所望の位置とは異なる部位に漏れ出して皮内に投与される薬剤の量が少なくなることも抑えられる。
本実施形態のマイクロニードル10は、上記のように、液剤の経皮投与用の中空型マイクロニードルであるが、本実施形態のマイクロニードル10を使用する対象は、人間に限らず、他の動物であってもよい。
また、本実施形態のマイクロニードル10は、細胞を皮膚内に送達するデバイスとしても使用することができる。さらに、本実施形態のマイクロニードル10は、微粒子を含む液剤の投与にも使用することができる。
10・・・マイクロニードル
11・・・基板
12・・・突起部
12a・・・貫通孔
13・・・閉塞防止ガイド
13a・・・隆起部
14・・・先端面

Claims (2)

  1. 基板と、前記基板の一方の面から突出する突起部と、を備え、前記突起部の突出方向に延び前記突起部及び前記基板を貫通する貫通孔が前記突起部及び前記基板に形成されたマイクロニードルであって、
    前記マイクロニードルの使用時の前記貫通孔の閉塞を防止する閉塞防止ガイドが、前記貫通孔の開口が形成された前記突起部の先端面に設けられており、前記閉塞防止ガイドは、前記先端面から隆起する隆起部を一つ以上有し、
    前記閉塞防止ガイドは前記貫通孔の開口の一部を覆っており、
    前記マイクロニードルの使用時に前記貫通孔内を流れる流体が前記閉塞防止ガイドに接触することにより前記流体の吐出方向が変化し、前記貫通孔が延びる方向から前記貫通孔が延びる方向に直交する方向へ変更されるように、前記閉塞防止ガイドが設けられているマイクロニードル。
  2. 前記突起部は生分解性樹脂で形成されている請求項1に記載のマイクロニードル
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