JP5026980B2 - 可撓性の生体障壁内へ流体を供給するための装置 - Google Patents

可撓性の生体障壁内へ流体を供給するための装置 Download PDF

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本発明は可撓性の生体障壁を介して流体を供給するためのシステム及び方法に関し、特に、このような目的のためにマイクロニードルを用いるシステム及び方法に関する。
皮内への薬剤送達は、免疫化、免疫調節、遺伝子送達、皮膚科学、アレルギー、過敏症、化粧といった幅広く様々な薬物療法及び処置において有益であることが知られている。従来、皮内への薬剤送達は、熟練した医療専門家により、皮下針を用いて行われる。皮下針は、先端の面取り部を上にして、皮膚表面に対して浅い角度をなすように配置される。正しい深さへの貫通により、皮下ではなく皮膚層内へ成功裡に注射を行うには、注意が必要とされる。針と皮膚表面の噛合わせを容易にするためには、先端の面取り部が上を向く向きが必要である。いずれにせよ、このような向きが、鋭角の皮下針を挿入(例えば、より深い層内への静脈穿刺のための挿入)を行う際の標準的な習慣に従うものである。皮内送達のための皮下針の使用は、痛みを伴うものとして知られている。これは、皮膚層内の神経終末が、比較的大型の針により、通常切断されるからである。
更に、例えばワクチンといった薬剤の表皮内送達は、更に強力な生物学的効果を有するという仮説が立てられている。このような浅い領域への使用が可能な送達装置が存在しなかったことから、有望な将来性があるにも拘らず、長年この手法は概して用いられていなかった。
技術を要する操作が不要な薬剤送達装置(例えば、患者自身による薬剤の自己投与のための装置)の開発に多くの関心が寄せられてきた。一つの手法として、アクチュエータ付きの「ミニ・ニードル」が挙げられる。このミニ・ニードルは、針を選択的に伸縮して、皮膚層内の限られた深さへ貫通を行う。このような装置の例は、Becton, Dickinson & Co. (米国)により販売されており、米国特許第6,843,781号、第6,776,776号、第6,689,118号、第6,569,143号、第6,569,123号、及び第6,494,865号に記載されている。このような装置のニードル・カニューレは、通常1乃至2ミリメートル突出し、これにより送達システムの貫通深さを定める。針先端の予め長さを縮められた先端面取り部は、それ自体で少なくとも約0.8mmの長さを有するから、1mm以下の貫通深さへの密閉された流体供給のためには、従来のこの種のニードル構造を用いた装置(すなわち面取りされた先端部を有する中空の金属製シリンダ)を容易に使用できない。
従来のニードル構造に代わるものとして、様々なマイクロマシニング技術と様々な材料を用いた「マイクロニードル」構造を開発する試みが多くなされてきた。「マイクロニードル」の手法の初期の例として、米国特許第3,964,482号(出願人:Gerstel他 1976年登録)が挙げられる。この特許は、10ミクロン以下の寸法のマイクロニードル(突起)を用いた薬剤の経皮投与のための薬剤送達装置を開示している。このマイクロニードルは角質層に穿孔することにより、表皮まで薬剤を到達させることができる。この装置は、一つの表面から外側に突出した複数のニードルを有し、或る一つの形態では、リザーバからマイクロニードルの中央穴部を介して薬剤を送達する。
Gerstel他の特許から30年の間に、多くのマイクロニードル装置が提案されてきたが、多くの実際的な問題のために、広く普及した医療用製品として商業的に成功を収めた装置はいまだ存在していない。多くのマイクロニードルの設計の第1の主要な問題は、マイクロニードルの機械的な脆弱性に関する。マイクロニードルは、特に横方向の動きに伴う剪断力を受けたときに、皮膚との接触によって破砕する傾向がある。第2の問題は、皮膚を介する挿入の際に組織を打ち抜くことに伴って、中空のマイクロニードルの穴部に詰まりが生じることに関する。加えて、多くの設計では、ニードルは、比較的薄い壁部を有することにより脆弱性を生じるとともに、切れ味の悪い接触面を有することにより皮膚の弾性を克服しての貫通のために過度の力を必要とする。これらの問題は、本出願人が譲受人である米国特許第6,533,949号に開示されるマクロニードル構造により効果的に解消されている。この特許の開示内容は、参照により全て本明細書中に組込まれるものとする。上記のマイクロニードル構造は、マクロニードル装置の更に別の問題を克服するためにも役立つ。この更なる問題とはすなわち、弾性の高い皮膚障壁を効果的に貫通する際の問題である。上記のマクロニードル構造を用いて容易に貫通を行うための様々な構造及び技術が、本出願人が譲受人であるPCT特許出願公開番号WO03/074102 A2に開示されている。この出願の内容は、参照により全て本明細書中に組込まれるものとする。
米国特許第6,843,781号 米国特許第6,776,776号 米国特許第6,689,118号 米国特許第6,569,143号 米国特許第6,569,123号 米国特許第6,494,865号 米国特許第3,964,482号 米国特許第6,533,949号 国際公開公報WO03/074102 A2
マイクロニードルの使用に対して障害となる更に別の問題は、マイクロニードル周囲に流体が漏出する危険である。特に、中空のマイクロニードルを介する流体の注射は通常、逆圧を生み出し、この逆圧は、マイクロニードルをその切開部から押し出すことがある。下方向(すなわち皮膚へ向かう方向)への力を加えることによりマイクロニードルが押し出されることを防止しようとすると、下方にある組織が圧縮される。この圧縮は、流体の注射に逆らう流体のインピーダンスを増加させ、ターゲット組織への流体の供給を阻害する。更に、多くの設計において、流体の流路は先端部まで全長に亘って延設している。このことはこれら2つの要素の間に構造的な依存性を生じさせる。これにより、流路のサイズを増大させることにより、マイクロニードルを詰まらせることなく、また、貫通に必要な力と、皮膚によりこの構造に加えられる応力とを大きく増大させることなく、流量を増やす可能性が制限される。
したがって、マイクロニードルと生体障壁の間に信頼性の高いシール部を生み出すとともに、上述の逆圧による押出しがマイクロニードルに与える影響を低減し、漏出を防止可能な可撓性の生体障壁内へ流体を供給するためのシステム及び方法が必要とされている。
本発明は、可撓性の生体障壁に対して流体を供給するためのマイクロニードルによるシステムと方法である。
本発明の内容によると、可撓性の生体障壁内へ流体を供給するための方法であって、該方法が、(a)前記可撓性の生体障壁と接する少なくとも1つの接触表面を、該可撓性の生体障壁の表面と平行な成分を有する動きにより移動させて、該可撓性の生体障壁の伸長部分と、該可撓性の生体障壁の非伸長部分の間に境界領域を生み出す段階と、(b)前記可撓性の生体障壁内へ少なくとも1つのマイクロニードルを貫通させることにより、前記接触表面を移動させる段階の終わりに、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、前記境界領域から前記可撓性の生体障壁内へ、前記非伸長部分へ向かって延設するようにする段階と、(c)前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルを介して、前記非伸長部分へ流体を供給する段階を備えることを特徴とする方法が提供される。
本発明の別の実施形態によると、前記接触表面を移動させる段階と、前記マイクロニードルを貫通させる段階が同時に行われる。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、前記接触表面と機械的に接合されており、前記接触表面を移動させる段階の結果として、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、前記可撓性の生体障壁内へ貫通する。
本発明の別の実施形態によると、前記接触表面が材料のブロックの辺であり、前記少なくとも1つのマイクロニードルが前記ブロックの面上に配備され、前記辺が前記面の境界となる。
本発明の別の実施形態によると、前記辺が、前記ブロックの2つの略直角な面の間に形成される。
本発明の別の実施形態によると、前記辺が、前記動きの前記表面と平行な成分に対して略直角である。
本発明の別の実施形態によると、前記接触表面を移動させる段階の間、前記面が前記辺の前方に位置する。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、複数の中空のマイクロニードルからなる直線状の列により前記面上に形成され、前記直線状の列が前記辺に対して略平行に延設する。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが一定の高さを有するとともにその先端に貫通用先端部を備え、前記辺から、前記面上に配される前記貫通用先端部の直角の突出部までの距離が、前記高さと等しい又は前記高さより小さい。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの接触表面の少なくとも一部が、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルの表面により形成される。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、前記生体障壁内へ流体を供給するための穴部を備え、前記穴部が、前記可撓性の生体障壁の前記表面が最初に位置する平面に対して、45度以下の角度で延設するように、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、前記可撓性の生体障壁内へ延設する。
本発明の内容によると、可撓性の生体障壁内へ流体を供給するための方法であって、該方法が、(a)接触領域と、少なくとも1つの中空のマイクロニードルを備えた開放領域を有する供給用装置を用意する段階を備え、該中空のマイクロニードルが、該開放領域上に配備されており、該方法が更に、(b)前記接触領域が前記生体障壁と接触し、前記開放領域が前記生体障壁と接触しないように、前記装置を前記生体障壁に接触させる段階と、(c)前記生体障壁の前記表面に対して平行な前記動きの成分を用いて前記装置を移動させることにより、前記生体障壁を機械的に変形させて、前記生体障壁を前記開放領域の少なくとも一部と接触させ、これにより少なくとも1つのマイクロニードルが前記生体障壁内へ貫通することを特徴とする方法もまた提供される。
本発明の別の実施形態によると、前記接触領域が略平面状の接触表面を有し、前記開放領域が略平面状の開放表面を有し、前記接触表面と前記開放表面が互いの間に約150度以下の角度をなす。
本発明の別の実施形態によると、前記接触表面と前記開放表面が、互いの間に約130度以下の角度をなす。
本発明の別の実施形態によると、前記接触表面と前記開放表面が略直角である。
本発明の別の実施形態によると、前記接触表面と前記開放表面が縁部領域において接する。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、前記生体障壁内へ流体を供給するための穴部を備え、前記穴部が、前記接触表面に対して45度以下の角度で延設する。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、一定の高さを有するとともに、その先端において貫通用先端部を有し、前記接触表面の位置する平面から前記貫通用先端部までの距離が、前記高さより小さい。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、流体流通用穴部を備え、前記流体流通用穴部が、前記マイクロニードルの面取りされた下向き表面と交差することにより、下向きの流体放出用開口部が形成される。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、(a)前記開放領域の表面に対して略直角に立設する少なくとも1つの壁部を備え、前記少なくとも1つの壁部が、前記開放領域の表面上方からみたときに、開口形状を有するように配され、前記開口形状が内包領域を有し、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが更に、(b)前記少なくとも1つの壁部と交差するように傾斜した傾斜表面を有し、前記傾斜表面と前記少なくとも1つの壁部との交差により、少なくとも1つの切れ刃が形成される。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、1ミリメートル以下の高さを有する。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、複数のマイクロニードルからなる直線状の列として実施される。
本発明の別の実施形態によると、前記装置を移動させることにより前記生体障壁を機械的に変形させる段階において、前記生体障壁の一部を前記生体障壁が最初に位置する平面より上方に隆起させて、前記少なくとも1つのマイクロニードルを前記生体障壁の前記隆起部分に貫通させる。
本発明の別の実施形態によると、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルを介して、前記生体障壁の前記隆起部分内へ前記流体が供給される。
本発明の内容によると、可撓性の生体障壁内へ流体を供給するための方法であって、該方法が、(a)少なくとも1つの中空のマイクロニードルを備える供給用装置を用意する段階を備え、該マイクロニードルが、該装置の表面から1ミリメートル以下突出しており、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルが、流れのベクトルを定める流体流通用穴部を備え、前記方法が更に、(b)前記流れのベクトルが、前記可撓性の障壁が最初に位置する平面に対して、マイナス15度乃至45度の範囲の角度をなすように、前記可撓性の生体障壁を機械的に変形させて、前記少なくとも1つの中空のマイクロニードルを前記可撓性の生体障壁に貫通させる段階を備えることを特徴とする方法もまた提供される。
以下、付随する図面を参照しつつ本発明を説明する。
本発明は、可撓性の生体障壁内へ流体を供給するためのマイクロニードル・システム及び方法に関する。
本発明に係るシステム及び方法の原理と動作は、図面と以下の説明を参照することにより、よりよく理解できる。
ここで図面を参照する。図1及び図2は、本発明に係る構造とこれに対応する方法の群の例を概略的に示す。概してこれらの図は、マイクロニードル構造を用いる供給用接合部分(10)を示す。供給用接合部分(10)において、生体障壁(14)内に挿入された1若しくはそれ以上のマイクロニードルの最終位置は、従来の下方に突出する形態の代わりに、一般的に横向きに供給用構造から突出している。特に、マイクロニードルは、好ましくは開放表面(16)から突出する。開放表面(16)は、供給用構造の最初に生体障壁と接する接触領域(18)と異なり、典型的には生体障壁から離れる方向に上向きに角度を有するように配される。これにより、流体の流れのベクトルが、組織の非圧縮領域へ確実に向けられるから、流体の注入を妨げる組織の圧力に関する上記の問題を避けることができる。更にこの形態は、固定効果を有し、供給用構造を皮膚内へ閉じ込める。これにより、上記した針周囲での漏出、又は逆圧によりニードルが押し出されるなどの問題を防止することができる。
本発明の方法は主に、供給用構造の挿入のための一連の動作に関する。接触領域(18)を生体障壁と接触させるとともに、この可撓性の生体障壁の表面と平行な成分を有する動きにより移動させることにより、可撓性の生体障壁の伸長部分(22)と可撓性の生体障壁の非伸長部分(24)の間に境界領域(20)を生み出す。典型的にはこの動きの少なくとも一部と同時に、そして最も好ましくはこの動きの直接の結果として、少なくとも1つのマイクロニードルが、可撓性の生体障壁内へ貫通する。これにより、この動きの終わりには、中空マイクロニードル(12)が、境界領域(20)から可撓性の生体障壁(14)内へ、非伸長部分(24)へ向かう方向に延設することになる。その後、所定量の流体が、マイクロニードルの穴部を介して、非伸長部分(24)へ注入される。
この段階において、本発明が、マイクロニードルを皮膚表面に対して直角に挿入するための従来の手法と比べて、大きな利点を有することが理解できる。特に、本発明の構造と、これに対応する挿入方法は、信頼性の高いシール状態における中空マイクロニードルの挿入を可能とするマイクロニードル流体供給用接合部分を提供する。この構造及び方法によると、漏出や、ニードルが押し出されるといった従来技術における問題を防止できる。本発明のこの特徴及びその他の特徴は、以下の詳細な説明から、より明らかとなる。
本発明の各種の具体的な実施形態の特徴を、より詳細に説明する前に、本明細書の詳細な説明や請求の範囲において用いられる用語を定義する。まず、本発明の装置は、可撓性の生体障壁内へ流体を供給するものとして説明される。本発明は、様々な内部器官の壁部といった各種の生体障壁を介する流体の供給に好適に使用可能であるが、本発明は、生物の皮膚層内へ流体を供給することを第一の目的としている。特に、本発明は、人体の皮膚内へ流体を皮内供給又は表皮内供給することを目的としている。供給される流体は、任意の流体であってよい。好適な例としては、これらには限定されないが、皮膚科的治療薬、ワクチン、その他の化粧用、治療用、又は診断用目的に使用される流体が挙げられる。更に、皮内への流体の供給が特に重要であると考えられるが、本発明は、流体の経皮的供給及び/又は流体の吸引(例えば、診断的な試料採取などのための吸引)といった用途においても好適に使用可能である。
可撓性の生体障壁の表面に関する形状についても参照する。本明細書と付属の請求の範囲において、可撓性の生体障壁の「表面」に関する全ての形状に関する記述は、生体障壁の残りの部分の最初の状態、すなわち、マイクロニードル流体供給構造の挿入に起因して障壁に変形が生じる前の状態における障壁の表面に近似した平面に関連して定義される。より専門的な定義としては、大きな曲率を有する皮膚の一領域の場合特に重要となるが、この表面は、所望の位置における可撓性の生体障壁表面への互いに直角な2つの接線を含む平面として定義される。
生体障壁の表面に対して平行な成分を有する動きの方向について説明する。この動きには、皮膚表面に対して非直角な任意の動きが含まれる。好ましくは、この動きは皮膚表面に対して平行な、すなわち皮膚表面に対して45度より浅い角度をなす主要成分を有する。最も好ましくは、この動きのうち皮膚と接して行われる部分は、皮膚の表面に対して略平行に行われる。すなわち、この動きは、静止状態の皮膚表面が位置する平面から約±15度以下上方又は下方を向いた運動ベクトルを有する。
皮膚の平面に対する角度について説明する。皮膚に対して平行なベクトルの角度を0度として、皮膚内部に向かう角度を正の角度、皮膚から離れる(皮膚の外側に向かう)角度を負の角度とする。記述を簡潔にするために、「上方に(upwards)」又は「上に(up)」との語を、皮膚が最初に位置する平面から外側へ向かう方向を示すために用いる。また、「下方に(downwards)」又は「下に(down)」との語を、皮膚が最初に位置する平面の内側へ向かう方向、又はこの平面に向かう方向を示すために用いる。
生体障壁の物理的状態についても説明する。障壁上に定められた点同士の距離が、少なくとも一つの方向において、皮膚が開放されたときの同じ2点間の距離より大きいとき、生体障壁が「伸長」されていると称する。最大の伸長が得られる方向を単に伸長方向と称する。伸長された皮膚に隣接する領域において、伸長方向に平行な方向において伸長が存在しない場合の皮膚の状態を、「非伸長」状態と称する。皮膚組織の圧縮により、組織の局部的な隆起が起きたり、又は組織が折畳まれた場合、組織の面外変形を防止するように、ある程度の伸長が圧縮ベクトルに対して平行に生じる。しかしながら、このような組織は、本明細書中において「非伸長」状態と称される。何故なら、伸長方向においては伸長が生じていないからである。皮膚が開放されたときの2点間の距離と比べて、同じ2点間の距離が小さい組織を「弛緩」状態の組織と称する。弛緩状態の組織は、開放時の皮膚と比べて、低い表面張力を有する。
障壁の「凹状」領域又は「隆起」領域についても説明する。凹状領域は、皮膚が最初に位置する平面より下方に位置する領域として定義される。典型的には、装置により下方へ加えられる接触圧力により、この凹状領域は皮膚が最初に位置する平面より下方に位置するようになる。隆起領域は、皮膚が最初に位置する平面より上方に位置する領域として定義される。典型的には、隣接する皮膚領域の面内圧縮により、この隆起領域が生じる。
本発明は、1若しくはそれ以上のマイクロニードルを使用するものとして説明される。「マイクロニードル」との語は、本明細書の詳細な説明及び請求の範囲において、基底表面から1mm未満の高さまで突出した構造のことをいう。好ましくは、マイクロニードルは50乃至500ミクロンの範囲の高さを有する。本発明に用いられるマイクロニードルは、好ましくは中空マイクロニードルで、その内部を、流体の供給のための流体流通用チャネルが貫通している。マイクロニードルの高さは、基底表面が位置する平面から直角に計測したマイクロニードルの先端部の高さとして定義される。
上述の如く、本発明の最も好適な実施形態においては、本出願人が譲受人である米国特許第6,533,949号に開示される種類のマイクロニードルが用いられる。具体的には、このマイクロニードルは、基底表面に対して略直角に立設した少なくとも1つの壁部を有するように形成されるとともに、上方から見たときに開口形状を有するように配備される。この開口形状は、内包領域(開口部内壁領域)と傾斜表面を有する。傾斜表面は、少なくとも1つの壁部と交差するように傾斜されている。傾斜表面と少なくとも1つの壁面が交差することにより、少なくとも1つの切れ刃が形成される。流体流通用チャネルは、傾斜表面と交差する穴部として形成されることが好ましい。上記したマイクロニードル構造が特に頑強であることと、このマイクロニードル構造の特別な幾何学的特性により、この構造と本発明の挿入方法は大きな相乗効果を生み出す。これにより、マイクロニードルが、加えられる剪断力に耐えうるものとなるのに加えて、生体障壁内へ流体を供給するために最適な方向に向けられる。これらの利点については以下で更に詳しく説明する。
「材料のブロック」が備える様々な表面についても説明する。本明細書中において、「ブロック」との用語は一般的に、一つの一体的な要素からなる任意の構造、又は上記の表面を一定の機械的関連を有する状態でともに提供する複数の要素からなる任意の構造のことをいう。このように用いられる「ブロック」との語は、これらには限定されないが、中実のブロック、中空のブロック、薄いシート状のブロック、ブロックとして機能するように相互に機械的に接続された開口形状の表面を含む。このブロックの一部又は全体が、その上にマイクロニードルが一体的に形成された基板により形成されてもよい。
本発明は「流体供給用接合部分」との語を用いて説明される。「流体供給用接合部分」とは、生体障壁と接して、この障壁内へ流体の供給のための経路を形成するマイクロニードル構造の構造及び動作に関して用いられる。流体供給用接合部分は、内蔵型の流体供給用装置の一部として組込まれてもよく、或いは外部流体供給用装置とともに用いられる補助的装置として用いられてもよい。
用語について最後に、本明細書の詳細な説明及び請求の範囲において「同時に」との語は、互いに重なり合う期間において起こる2つの工程のことを示す。同時にとの語は、完全に同時であることを必ずしも意味せず、2つの工程が同時に起こる場合、一方の工程が、他方の工程の期間内に含まれる時間中に起こる場合、第1の工程と比べて、第2の工程が遅く開始されるとともに、遅くまで継続されるように部分的に重なり合って起こる場合を含む。
図1及び図2を再び参照する。皮膚と接しながら移動される接触表面は、多数の異なる方法で実施可能である。具体的には、接触表面は、供給用構造の下向き表面の一部分(18)であっても、及び/又は表面(16)及び(18)の間の縁部領域により形成されてもよい。後者の場合、縁部は、比較的鋭利な接合部分であっても、或いは所定の曲率半径を有するように変形されても、又は任意のその他の所望の変形を加えられてもよい。例えば、このような変形としては、皮膚表面との摩擦による接合を強化するように表面加工が施されるものが挙げられる。任意により、接触表面の少なくとも一部は、中空マイクロニードル(1つ若しくは複数)(12)自体の表面により形成されてもよい。例えば、本発明の特に好適な実施形態は、皮膚表面に対してマイクロニードルの貫通用先端部を緩やかに押圧し、これにより皮膚内にこの先端部を固定することから開始される。これにより、更に効率よく貫通を行うことが可能となり、本発明の面内移動の間に皮膚表面が正の方向に噛合うことを保証する。この場合、マイクロニードル自体が「接触表面」の一部をなす。
図2に示すごとく、伸長状態の皮膚(22)及び非伸長状態の皮膚(24)は、一般的に高さの相違から互いに区別可能である。装置の下に存在する組織領域は一般的に、加えられる接触圧力により押し下げられている。伸長状態の皮膚のうち装置の背部に位置する領域もまた、皮膚表面の最初の高さから幾分押し下げられている。非伸長状態の皮膚(24)は、装置の下に位置する皮膚に対して隆起しており、皮膚表面の最初の高さからも僅かに隆起している。皮膚領域(24)の隆起、及び/又は組織の非伸長状態若しくは弛緩状態は、本発明の多数の利点に貢献するものと考えられている。上述の如く、流体が注入される領域へ下方の圧力が加わらないことにより、流体の注入の妨げとなる逆圧が大きく低減される。面内圧縮に起因する組織の弛緩と、その結果生じる組織の隆起もまた、皮膚層間に皮内の流路を開くことを容易にする。これにより、このほかの方法で可能な量と比べて大幅に大きな量の注入用流体の収容が容易となり、皮膚層内における拡散が促進される。本発明の装置が皮膚から手動で引きだされるまで、ここで示す流体供給用接合部分が、マイクロニードルの挿入後の引き抜けに対する抵抗となるロック効果を生み出すこともまた観察されている。以下の請求の範囲に明確に示されている他に本発明の範囲を限定するものではないが、このロック効果は、隆起組織(24)によりマイクロニードル(12)に対して加えられる下向きの力から生じるものと考えられている。この下向きの力はその後、下層の組織(20)に対して接触表面(18)を押圧する。
マイクロニードル(12)は境界領域から非伸長領域(24)へ向けて延設するものとして説明される。当然ながら、用いられる接触表面の設計によっては、境界領域内で又は境界領域に隣接して貫通が起こる。境界領域自体は、装置表面により押圧される大きな領域であっても、接触縁により押圧される幅の小さい線であってもよい。若しくは境界領域が幅の小さい線であって、この線に沿ってマイクロニードル自体が固定されていてもよい。
図1及び図2の垂直断面図においては、1つのみのマイクロニードル(12)が示されているが、本発明の最も好適な実施形態においては、マイクロニードル(12)の直線状の列が用いられる。このマイクロニードル(12)の列は、生体障壁と接した状態での移動の方向に対して略直角に延設している。マイクロニードルの直線状列の使用は、図3及び図6に示される。任意により、別々のマイクロニードルが、別々の流体供給用流路/リザーバを介して、流体と接続していてもよい。これら別々の流体供給用流路/リザーバは、複数の異なる流体を、同時に、又は所望の順序で供給するために用いられる。或いは、複数のマイクロニードルが、同じ供給用流体に接続されてもよい。これにより、組織内での流体の分配が改善される、及び/又は供給速度が向上される。更に別の選択肢として、マイクロニードルの一部のみを用いて流体の供給を行い、その他のマイクロニードルにより吸引を行っても、又はこれら他のマイクロニードルを、組織内により安定的に装置を固定するためにのみ用いてもよい。
中空マイクロニードル(12)は、好ましくは接触表面(18)と機械的に接合される。これにより、接触表面が移動する結果として、少なくとも1つの中空マイクロニードルが可撓性の生体障壁内へ貫通することとなる。最大限の信頼性を保ちながら、製造費用を最小限に抑えるために、本発明の流体供給用接合部分の特定の好適な実施形態は、移動部分を備えないように形成され、全ての必要な部品が固定した機械的関係を有する。この場合、接触表面(18)の少なくとも一部が、好ましくは材料のブロック(16、18)の縁部(26)により形成され、マイクロニードル(12)が、好ましくはブロックの面(16)上に配備され、この面(16)は縁部(26)により境される。上述の如く、面(16)は好ましくは「開放面」、すなわち、装置が生体障壁と最初に接触させられるとき、障壁と完全には接触しない表面である。これを実現するために、面(16)は好ましくは面(18)の平面に対して上方に傾斜している。面(16)と面(18)の間の角度は、好ましくは約150°未満であり、より好ましくは約130°未満である。尚、この角度は、ブロックの内部において計測される。特に好適な実施形態においては、略直行する面(16)及び(18)の間に、縁部(26)が形成される。縁部(26)は、面(16)および(18)が位置する平面が鋭く交差した部分として、必ずしも形成される必要はなく、このことは好ましくもない。例えば、縁部(26)は適切な曲率半径を有する曲線的形状に整えられる。
上述のごとく、マイクロニードル(12)が突出する面(16)が開放面であることが好ましい一方で、マイクロニードルが装置の接触表面と比較的近接していることが重要である。なぜなら、これにより皮膚の変形が起きたとき、マイクロニードルが皮膚表面を貫通した状態となることが容易になるからである。数量的には、接触表面(18)の平面から、マイクロニードルの先端部までの距離は、面(16)に対して直角に測ったマイクロニードル(12)の高さより小さいことが好ましい。最も好適な例においては、面(16)に対して平行に測った縁部(26)から貫通用先端部までの距離もまた、マイクロニードルの高さより小さい。この詳細な説明と、付随する請求の範囲においては、面又は表面に対して平行に測った2点間の距離は、これら面又は表面に対するこれらの点の直角な射影の間の距離として定義される。
本発明の別の好ましい特徴は、流体の供給における流れのベクトルに関する。まず、中空マイクロニードルそれぞれが、生体障壁内へ流体を供給するための穴部(28)を有すると仮定すると、この穴部の拡張方向を用いてマイクロニードルの向きが定められる。本発明の好ましい特徴として、挿入動作の終了時に、可撓性の生体障壁が最初に位置する平面に対して45度未満の角度で、穴部が生体障壁内部へ延設している。より好ましくは、マイクロニードルの最終位置において、障壁が最初に位置する平面に対して30度の角度で、穴部が延設する。いくつかの場合には、可撓性の生体障壁が最初に位置する平面に対して±15度の範囲が特に好ましい。
本発明のシステム及び方法の両方が有する別の顕著な特徴は、本発明の特定の実施形態のマイクロニードル(12)が、好ましくは、皮膚に対して「下向きに向かい合う(face down)」向きで配備されることである。尚、これとは対照的に、皮下針を用いる場合は、「上向きに向かい合う(face up)」向きが用いられる。それぞれのマイクロニードルは、好ましくは「傾斜表面(bevel surface)」、または上記の本出願人が譲受人である米国特許第6,533,949号に関連して上述された傾斜表面を有するように形成される。尚、この文献に記載の傾斜表面は、下向きに配される。この傾斜表面と、流体流通用穴部(28)が交差することにより、流体放出用開口部が形成される。流体放出用開口部は、一般的に下向きに、すなわち組織の深さに向かう方向に配される。このような向きを用いることにより、より直立したマイクロニードル壁部表面が上方に向くことになる。これにより、組織内におけるマイクロニードルの固定が強化され、上述のように装置の動きに向かって組織が持ち上げられることが容易になる。下向きに開口した流体放出用開口部もまた、組織によりマイクロニードルに対して加えられる下向きの力が、流体放出用開口部を塞ぐことなく、逆にマイクロニードルの先端部の真下に存在する層を開くことにより、流体の供給又は吸入が妨げられないことを確実にする。補足であるが、「上向き」の実施形態もまた、本発明の広義の範囲内に含まれる。特に浅い領域への注入など特定の場合には、上向きの実施形態が好適である。
挿入動作に関して、本発明の方法は、定められたマイクロニードルの挿入動作に、様々な異なる経路を用いて実施することが可能である。ただし、この経路は、皮膚の表面に対して平行な動きの成分を含む皮膚表面と接しながらの動きを受けることを可能とする経路でなければならない。この動きは、直線経路を辿る動作であっても、純粋な回転であってもよく、或いはより複雑な動作であってもよい。より複雑な動作は、手動による補助を受けずに行われても、手動で操作される挿入ガイド用構造を用いて行われても、或いはロボット型構造により完全に自動化されていてもよい。これらの様々な動作は、図1において、直線状矢印と回転を示す矢印の組み合わせにより、概略的に表されている。
縁部(26)が接触表面として用いられる全ての場合において、縁部は表面に平行な動きの成分に対して略直角であることが好ましい。マイクロニードルが突出する面(16)は、動きの方向において縁部(26)の前方に配される。マイクロニードルの列が用いられる場合には、直線状の列は、縁部(26)に対して略平行に延設する。
ここまで、図1及び図2を参照しながら、本発明の一般的特徴の多くを説明してきた。ここで、図3乃至図17Dに示す多数の具体的な好適な実施形態について説明する。具体的には、案内を受けない手動による挿入のための3つの装置を説明する。これら装置は、図3、図4乃至図6、及び図14乃至図17Dにそれぞれ示される。これら装置は、これら装置とともに用いられる流体供給用構造の形態において主に相違する。図7乃至図9と、図10乃至図13は、更に別の2つの実施形態を示す。これらの実施形態においては、ガイド用構造が流体供給用接合部分の挿入動作の経路を定める。
ここで、図3を参照する。図3は、図1及び図2に示す流体供給用接合部分を備える流体供給用補助器具を示す。流体供給用接合部分においては、接触表面(18)、開放表面(16)、マイクロニードル(12)は細長いブロック(30)の一部として形成される。4つのマイクロニードル全てを接続する流体の流路(図示せず)は、接続ポートを有する可撓性の流体供給用導管(31)と接続する。ここでは接続ポートは、ルアーコネクター(luer connector)(32)として示されている。
使用時には、ブロック(30)は最初、皮膚に対して約60度の角度で保持され、皮膚表面に対して緩やかに押圧される。このとき、マイクロニードルの先端部が、皮膚内に滞留した状態とされる。この予備的工程は一般的には重要ではないが、一般的にこの工程は、装置の動作を改善する。次に装置は、皮膚に対して浅い角度(典型的には10乃至30度の範囲の角度)をなすように押し下げられ、皮膚を横切るように押し進められる。このとき装置は、典型的には約5ミリメートル乃至約15ミリメートルの経路を通って皮膚とともに移動する。この動きにより、皮膚の変形と、本発明のマイクロニードルの挿入の両方が同時に実現される。続いて装置は皮膚に対して固定される。この固定は、ブロック(30)の細長い本体を横切るように外科用テープを貼り付けることにより行われる。そして、ルアーコネクターを、供給される流体の適切な供給源(例えばシリンジ又は輸液セット)に接続することにより、装置はすぐに使用可能な状態となる。皮膚の横方向の変形は、マイクロニードルの挿入を行うために用いられるが、流体を供給する工程自体の間には、横方向の変形を維持する必要は一般的にない。
この実施形態の装置を、マイクロニードルの寸法の適切な選択と、またできる限り小さな適合を行って使用することにより、弾力的に、皮内へ、表皮内へ、又は経皮的に流体を供給する上で、場所を選ばず使用可能なヘパリンロックと同様の機能を発揮させることができる。
ここで図4乃至図6を説明する。図4乃至図6は、シリンジ(33)とマイクロニードル流体供給用接合部(34)を組み合わせた流体供給用装置の形態を示す。マイクロニードル流体供給用接合部(34)は図1及び図2に示すものと同様である。基本的には、シリンジ(33)は接合部(34)に永久的に取付けられたプレフィルド・シリンジであってもよく、一回のみ使用する使い捨て可能な製品の部品として形成される。より好ましくは、マイクロニードル流体供給用接合部(34)は皮下針に代わって、各種の標準的なシリンジに取付け可能な交換部品として形成される。この場合もまた、流体供給用接合部(34)は一回のみ使用する使い捨てのアイテムであることが好ましい。
図4乃至図6に示すシリンジを含む形態の動作形態は、図3に示す形態の動作形態と基本的に同様であるが、流体供給が、通常、皮膚へ装置を固定することなく、挿入の直後に行われるという点において異なる。シリンジ注射において、慣例的には皮膚への装置の固定が行われる。
図7乃至図9に示す形態を説明する。この形態は、図4に示す装置の変更形態であり、追加的に機械的挿入ガイド部を備える。この挿入ガイド部は、生体接合部に対するマイクロニードル流体供給用構造の移動を案内する。この場合、流体供給用接合部(34)は、皮膚表面に対して略直角に伸縮するシリンジと噛合うように形成される。接合部(34)はガイド・ハウジング(36)内に配されている。ガイド・ハウジング(36)は、皮膚表面に接して支持されても、或いは、適切な医療用接着剤を用いて一時的に固定されてもよい。またガイド・ハウジング(36)は接合部及び/又はシリンジと協働して、マイクロニードル供給用接合部の挿入のための移動経路を定める。図示例において、接合部(34)は多数の横方向の突起部(図示せず)を備える。これら突起部は垂直ガイド・スロット(38)及び水平ガイド・スロット(40)と噛合う。垂直ガイド・スロット(38)及び水平ガイド・スロット(40)は、ガイド・ハウジングの対向する側壁に形成される。横方向の突起部と、垂直ガイド・スロット(38)及び水平ガイド・スロット(40)が噛合うことにより、図8に示す開始位置から図9に示す最終位置まで、接合部(34)とガイド・ハウジング(36)の間の相対的移動の経路が定められる。接合部(34)とガイド・ハウジング(36)を単に回動可能に接続するだけでもかなり似通った移動経路が提供されるが、垂直ガイド・スロット(38)を用いることが有益であると考えられる。これは、皮膚表面に対して平行な不測の引込み動作に対するロック作用が得られるからである。流体供給が完了すると、シリンジは図8の位置まで傾け戻される。これにより、ロック作用が解除され、マイクロニードル・アセンブリを図8の位置へ引込むことが可能となる。
図10乃至図13は、機械的挿入ガイド部を備えたマイクロニードル流体供給用接合部の更に別の変更形態を示す。この形態においても、ガイド・ハウジング(42)は、皮膚表面に対して接するように支持されても、或いは一時的に固定されてもよい。この固定は、図10及び図12に示す開始位置から図11乃至図13に示す最終位置まで、マクロニードル流体供給用接合部が移動する前に行われる。この場合、供給用接合部(44)はアーム(46)上に回動可能に取付けられる。アーム(46)は更に、ハウジング(42)に回動可能に取付けられる。供給用接合部から突出した側方ピンは、ハウジングに設けられた対応するスロット内を摺動して、更なる移動経路を定める。この構造は、図11及び図13に示す配備位置において、機械的ロック作用を生み出す。この形態の装置は、任意の所望の種類の流体供給(図示せず)に対して適用可能である。当業者には明らかであるように、この流体供給としては例えば、可撓性チューブやルアーコネクターへの取付け、シリンジへの直接的な接続、或いは内蔵型流体供給用リザーバの追加が挙げられる。
最後に、図14乃至図17は、本発明の開示内容にしたがって構築並びに動作されるマイクロニードル流体供給用装置の変更形態を示す。この形態において、本発明の装置は、内蔵型流体リザーバを備える。この内蔵型流体リザーバは、マイクロニードル流体供給用接合部を介して、供給される流体を加圧した状態で供給する。
特に、図17A乃至図17Dから明らかなように、この形態の装置は、マイクロニードル流体供給用接合部(50)を備える。シリンダ(52)との間の流体の伝達において、このマイクロニードル流体供給用接合部は、図1及び図2の接合部と略同様に動作する。シリンダ(52)内で、ばねにより付勢されたピストン(54)が動作する。シール位置(図17A及び図17B)から、開放位置(図17C及び図17D)まで、バルブ(56)を手動で操作することができる。開放位置においては、シリンダから流体供給用接合部へ流体が移動可能である。
本発明の装置に流体を装填するには、好ましくは外部シリンジが、可撓性チューブ(58)末端のルアーコネクターに接続される。可撓性チューブはピストンの軸に沿って導管を供給する。導管は、ピストン(54)内の一方向流体バルブに接続する。可撓性チューブに沿って注入された流体は、ピストン内の一方向バルブを通って進み、ピストンを超えてシリンダの側部を満たす。これにより、図17Aの位置から図17Bの位置まで、ばねの付勢力に抗してピストンが引込まれる。その後外部シリンジが取り外されると、本発明の装置はすぐに使用可能な状態となる。或いは、装填後の装置を、必要となるまでそのままの状態で長期間保管することができる。
この形態の装置を、図3と、図4乃至図6を参照して説明した形態と略同様の方法で、使用者の皮膚に対して使用することができる。或いは、この形態の装置が、図7乃至図9、或いは図10乃至図13に示すような挿入ガイド部を備えてもよい。マイクロニードルが生体障壁を貫通するようにマイクロニードル流体供給用接合部が配置され、バルブのアクチュエータ・ボタンが押され(図17C)ると、流体供給用接合部を介して、ばねにより付勢されたピストンにより生み出される供給圧力下で、流体が供給され始める。そして、図17Dに示すごとく、シリンダが空になるまで流体の供給が続けられる。動作の終了まで効果的な供給圧力を確実に持続させるために、ピストン(54)に接続したばねは予め負荷を加えられることが好ましい。
以上の説明は例示の目的にのみ示されたものであり、以下の請求の範囲に定められる本発明の範囲内で他の多くの実施形態が可能である。
本発明の内容にしたがって構築並びに動作されるマイクロニードル流体供給用装置を、本発明の方法に従って可撓性の生体障壁内へ挿入される前の状態で示す概略垂直断面図である。 本発明の内容にしたがって構築並びに動作されるマイクロニードル流体供給用装置を、本発明の方法に従って可撓性の生体障壁内へ挿入された後の状態で示す概略垂直断面図である。 本発明の内容にしたがって構築並びに動作される流体供給用補助器具の斜視図である。この補助器具はマイクロニードルの列を備え、このマイクロニードルの列は先端にルアーコネクターを有する可撓性チューブにより流体と接続している。 プレフィルド・シリンジとマイクロニードル供給用構造を組み合わせて形成された本発明の内容にしたがって構築並びに動作される装置の断面図である。 図4の「B」と標識された領域を示す拡大図である。 図4の装置のマイクロニードル流体供給用構造を端部方向から見た拡大斜視図である。 本発明の内容にしたがって構築並びに動作される図4の装置の変更形態を示す斜視図である。この装置は、生体障壁に対するマイクロニードル流体供給用構造の動きを案内するための機械的挿入ガイド用構造を備える。 図7の装置を貫通前の状態で示す部分拡大断面図である。 貫通後の状態を示す図8と同様の図である。 本発明の内容にしたがって構築並びに動作される機械的挿入ガイド用構造を備えた別のマイクロニードル流体供給用接合部分を、貫通前の状態で示す斜視図である。 貫通後の状態を示す図10と同様の図である。 図10に示す状態の装置を示す断面図である。 図11に示す状態の装置を示す断面図である。 本発明の内容にしたがって構築並びに動作されるマイクロニードル流体供給用装置の変更形態を、流体を装置内へ装填するために用いられる外部シリンジとともに示す斜視図である。 図14の装置を示す上面図である。装填用シリンジは示されていない。 図15の線B−Bにおける断面図である。 図16において「C」と示された領域を、装填前の状態で示す拡大断面図である。 図16において「C」と示された領域を、装填後の状態で示す拡大断面図である。 図16において「C」と示された領域を、供給開始直後の状態で示す拡大断面図である。 図16において「C」と示された領域を、供給終了時の状態で示す拡大断面図である。

Claims (10)

  1. 可撓性の生体障壁内へ流体を供給するための装置であって、該装置が流体の供給用接合部分(10)を備え、
    該供給用接合部分(10)が
    (a)第1の表面(16)と、
    (b)前記第1の表面から、固定した機械的関係を有して、突出するとともに貫通用先端部で終結する少なくとも1つのマイクロニードル(12)と、
    (c)夫々のマイクロニードル(12)を貫いて延伸する流体を供給するための穴部(28)と、を備え、
    前記供給用接合部分は更に、
    (d)前記第1の表面(16)に対して150度未満の角度になるように測定し、固定した機械的関係を有して、配置される接触表面を備え、
    前記少なくとも1つのマイクロニードル(12)は、マイクロニードルの貫通用先端部と一体となって前記接触表面(18)の平面に隣接して配され、これにより、使用時に前記接触表面(18)が生体障壁と接触するように設置されるとともに前記第1の表面(16)に向かって、前記生体障壁と平行な動作要素で動かされる場合、前記少なくとも1つのマイクロニードル(12)は、前記供給用接合部分(10)により覆われていないが、近接する前記生体障壁に侵入することを特徴とする装置。
  2. 前記第1の表面(16)と前記接触表面(18)が互いの間に130度未満の角度をなすことを特徴とする請求項1記載の装置。
  3. 前記第1の表面(16)と前記接触表面(18)が略直角であることを特徴とする請求項1記載の装置。
  4. 夫々のマイクロニードル(12)の前記穴部(28)が、前記接触表面に対して45度未満の角度で延設することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の装置。
  5. 前記少なくとも1つのマイクロニードル(12)が、一定の高さを有するとともに、その終端において貫通用先端部を有し、
    前記接触表面(18)の位置する平面から前記貫通用先端部までの距離が、前記高さより小さいことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の装置。
  6. 前記少なくとも1つのマイクロニードル(12)は、下向きの先端面取り表面を備え、
    前記穴部(28)が、下向きの先端面取り表面と交差することにより下向き流体放出用開口部を定義することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の装置。
  7. 前記少なくとも1つのマイクロニードル(12)が、
    (a)前記第1の表面に対して略直角に立設する直立した表面を備え、
    前記開口形状が内包領域を有し、
    前記少なくとも1つのマイクロニードルが更に、
    (b)前記少なくとも1つの壁部と交差するように傾斜した傾斜表面を有し、前記傾斜表面と前記少なくとも1つの壁部との交差により、少なくとも1つの切れ刃が形成されることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の装置。
  8. 前記少なくとも1つのマイクロニードルが、1ミリメートル未満の高さを有することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の装置。
  9. 前記少なくとも1つのマイクロニードルが、複数のマイクロニードルからなる直線状の列として実施されることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の装置。
  10. 流体を供給するための前記穴部と流体接続されるとともに、流体供給装置と共に使用するために適用される接続ポートをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の装置。
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