JP7325754B2 - 難燃剤組成物および難燃性材料 - Google Patents

Description

本発明は、難燃剤組成物および難燃性材料に関する。

従来、白セメントなどの水硬性無機粉体に無機系骨材や、水酸化アルミニウム、ホウ酸またはホウ酸塩などの不燃剤を配合して粉剤とし、その粉剤にアクリル系樹脂などの水性エマルション樹脂よりなる液剤を混練してなる不燃塗料が開示されている（例えば、特許文献１参照）。

特開２０１３－４３８９１号公報

しかしながら、特許文献１に記載の不燃塗料では、ホウ酸またはホウ酸塩が液剤に分散しにくくかつ浸透しにくく、不燃効果が十分に得られないという課題があった。

本発明は、このような課題に着目してなされたもので、難燃効果が高い難燃剤組成物および難燃性材料を提供することを目的とする。

上記目的を達成するために、本発明に係る難燃剤組成物は、ポルトランドセメントまたはプラスターと、エマルション系接着剤と、全体の２乃至１０質量％のホウ酸またはホウ酸塩と、全体の２乃至１０質量％の界面活性剤と、全体の７０乃至９０質量％の水とを含むことを特徴とする。
前記ポルトランドセメントまたはプラスターは全体の２乃至１０質量％、前記エマルション系接着剤は全体の２乃至１０質量％含まれることが好ましい。
前記ポルトランドセメントは白セメントから成り、前記エマルション系接着剤はアクリル樹脂系エマルション形接着剤から成り、前記界面活性剤は石鹸から成ることが好ましい。
本発明に係る難燃剤組成物は、着色剤、防黴剤、防虫剤などの添加剤を含んでいてもよい。
本発明に係る難燃剤組成物は、ナフサおよびアルミニウム粉を含むことが好ましい。

本発明に係る難燃性材料は、前述の難燃剤組成物を可燃性固体材料の表面に浸透させて成ることを特徴とする。浸透させる方法は、浸漬、塗布、噴射、その他いかなる方法であってもよい。
前記可燃性固体材料は木材、布または発泡樹脂から成ることが好ましい。

本発明に係る難燃剤組成物は、ホウ酸またはホウ酸塩が全体に分散しやすくかつ浸透しやすい。本発明に係る難燃剤組成物を可燃性固体材料の表面に浸透させることにより、可燃性固体材料に高い難燃効果を付与することができる。

本発明によれば、ホウ酸またはホウ酸塩が全体に分散して表面に浸透し、難燃効果が高い難燃剤組成物および難燃性材料を提供することができる。

以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態の難燃剤組成物は、ポルトランドセメントまたはプラスターと、エマルション系接着剤と、ホウ酸またはホウ酸塩と、界面活性剤と、水とを含む。
ポルトランドセメントまたはプラスターは全体の２乃至１０質量％、エマルション系接着剤は全体の２乃至１０質量％、ホウ酸またはホウ酸塩は全体の２乃至１０質量％、界面活性剤は全体の２乃至１０質量％含まれることが好ましい。ポルトランドセメントまたはプラスターとエマルション系接着剤とホウ酸またはホウ酸塩と界面活性剤とは、全体の１０～３０質量％含まれることが好ましい。水は、全体の７０～９０質量％含まれることが好ましい。

ポルトランドセメントは、白セメントから成ることが好ましい。プラスターとしては、例えば、石こうプラスター、石灰プラスター、ドロマイトプラスターなどが挙げられる。エマルション系接着剤として、例えば、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン形接着剤、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂（ＥＶＡ樹脂）系エマルジョン形接着剤が挙げられるが、アクリル樹脂系エマルション形接着剤から成ることが好ましい。アクリル樹脂系エマルション形接着剤は、アクリル共重合樹脂を水に溶解させて成る。アクリル樹脂系エマルション形接着剤は、パルミチン酸などの可塑剤および充てん剤を含むことが好ましい。
界面活性剤は、イオン性界面活性剤であっても、非イオン（ノニオン）界面活性剤であってもよい。イオン性界面活性剤は、陰イオン（アニオン）界面活性剤、陽イオン（カチオン）界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。非イオン（ノニオン）界面活性剤は、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型のいずれであってもよい。界面活性剤は、石鹸から成ることが好ましい。石鹸は、粉石鹸でも液体石鹸であってもよい。
界面活性剤は、水に溶解し、エマルション系接着剤とホウ酸またはホウ酸塩とを木材、布、発泡樹脂などの可燃性固体材料の表面に浸透させやすくする。また、界面活性剤は、ポルトランドセメントとホウ酸またはホウ酸塩とをエマルション系接着剤および水に分散させ、難燃効果を高めることができる。
本発明の実施の形態の難燃性材料は、ナフサおよびアルミニウム粉を含むことが好ましい。ナフサは、全体の２乃至１０質量％含まれることが好ましい。アルミニウム粉は、全体の２乃至５質量％含まれることが好ましい。
本発明の実施の形態の難燃性材料は、ナフサを含む場合、３日経過後でも固まることなく、噴霧器で吹き付け可能となる。アルミニウム粉は、難燃性材料を可燃性固体材料の表面に浸透させたとき、表面の状態を滑らかにする。

本発明の実施の形態の難燃性材料は、難燃剤組成物を可燃性固体材料の表面に浸透させて成る。浸透させる方法は、浸漬、塗布、噴射、その他いかなる方法であってもよい。
難燃性材料を量産する場合、プールに難燃剤組成物を入れ、プールの底部にポンプで空気を送って難燃剤組成物を曝気により常時撹拌しておく。その難燃剤組成物に木材などの可燃性固体材料をクレーンで吊り上げて数秒間浸漬し、取り出して自然乾燥させ、難燃性材料の量産化が可能である。
可燃性固体材料の例としては、木材、紙材、布、発泡樹脂が挙げられるが、木材、布または発泡樹脂から成ることが好ましい。難燃剤組成物は、着色剤、防黴剤、防虫剤などの添加剤を含んでいてもよい。防黴剤、防虫剤として、ヒバ油（ヒバの木抽出油）を添加してもよい。
本発明の実施の形態の難燃剤組成物は、ホウ酸またはホウ酸塩が全体に分散しやすくかつ浸透しやすい。本発明の実施の形態の難燃剤組成物を可燃性固体材料の表面に浸透させることにより、可燃性固体材料に高い難燃効果を付与することができる。
また、本発明の実施の形態の難燃剤組成物は、木材などの対象物に付着させることにより、ホウ酸の効果として防虫効果、防カビ効果、シロアリ予防効果を付与することができる。本発明の実施の形態の難燃剤組成物を建物の基礎の中に噴霧した場合、基礎に防虫効果、防カビ効果、シロアリ予防効果を付与することができる。
本発明の実施の形態の難燃剤組成物は、水が全体の７０～９０質量％含まれる場合、可燃性固体材料に短時間で浸透させやすく、難燃性材料を量産しやすい。

以下の配合により、難燃剤組成物を製造した。ポルトランドセメント５質量％、アクリル樹脂系エマルション形接着剤５質量％、ホウ酸５質量％、石鹸５質量％、水８０質量％。
ポルトランドセメントには、白セメントを用いた。アクリル樹脂系エマルション形接着剤には、シーリング用の市販の建材用接着剤を用いた。石鹸には、市販の液体石鹸を用いた。これらの材料を撹拌混合し、難燃剤組成物を得た。
得られた難燃剤組成物５リットルに２０ｃｍ×２０ｃｍ×１ｃｍの木製合板材を数秒間浸漬して、板材の表面に難燃剤組成物を浸透させた。難燃剤組成物を浸透させた板材を常温で自然乾燥させて難燃性材料を製造した。

難燃性材料の表面および木口を約１２００℃のバーナーで１分間加熱した。比較のため、難燃剤組成物を浸透させない木製合板材を同様に加熱した。
その結果、難燃剤組成物を浸透させない木製合板材は着火、燃焼したが、難燃性材料は表面が黒色になったものの着火しなかった。
このように、難燃性材料の高い難燃効果が確認された。

以下の配合により、難燃剤組成物を製造した。ポルトランドセメント８質量％、アクリル樹脂系エマルション形接着剤２質量％、ホウ酸１０質量％、ナフサ３質量％、石鹸５質量％、アルミニウム粉２質量％、水７０質量％。ポルトランドセメントには、白セメントを用いた。アクリル樹脂系エマルション形接着剤には、シーリング用の市販の建材用接着剤を用いた。ナフサは、市販品を用いた。石鹸には、市販の液体石鹸を用いた。これらの材料を撹拌混合し、難燃剤組成物を得た。
得られた難燃剤組成物５リットルを噴霧器に入れ、布製クロスおよび木製合板材に吹き付けた。難燃剤組成物を吹き付けた布製クロスおよび木製合板材を常温で自然乾燥させて難燃性材料を製造した。

難燃性材料の表面および木口を約１２００℃のバーナーで１分間加熱した。比較のため、難燃剤組成物を浸透させない布製クロスおよび木製合板材を同様に加熱した。
その結果、難燃剤組成物を浸透させない布製クロスおよび木製合板材は着火、燃焼したが、難燃性材料の布製クロスおよび木製合板材は表面が黒色になったものの着火しなかった。
このように、難燃性材料の高い難燃効果が確認された。

Claims (6)

1. ポルトランドセメントまたはプラスターと、エマルション系接着剤と、全体の２乃至１０質量％のホウ酸またはホウ酸塩と、全体の２乃至１０質量％の界面活性剤と、全体の７０乃至９０質量％の水とを含むことを特徴とする難燃剤組成物。
2. 前記ポルトランドセメントまたはプラスターは全体の２乃至１０質量％、前記エマルション系接着剤は全体の２乃至１０質量％含まれることを特徴とする請求項１記載の難燃剤組成物。
3. 前記ポルトランドセメントは白セメントから成り、前記エマルション系接着剤はアクリル樹脂系エマルション形接着剤から成り、前記界面活性剤は石鹸から成ることを特徴とする請求項１または２記載の難燃剤組成物。
4. ナフサおよびアルミニウム粉を含むことを特徴とする請求項１、２または３記載の難燃剤組成物。
5. 請求項１乃至４のいずれか１項に記載の難燃剤組成物を可燃性固体材料の表面に付着させて成ることを特徴とする難燃性材料。
6. 前記可燃性固体材料は木材、布または発泡樹脂から成ることを特徴とする請求項５記載の難燃性材料。