以下に、添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電動機駆動装置、それを備えた冷凍サイクル適用機器である冷凍サイクル装置、並びに、この冷凍サイクル装置を備えた空気調和機、給湯機、及び冷蔵庫について説明する。なお、以下に示す実施の形態は例に過ぎず、電動機駆動装置及びそれを備えた各装置は、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。なお、以下の説明において、同じ符号が付された構成要素は、同じ又は同様の機能を持つ。
図1は、実施の形態の空気調和機(冷凍サイクル装置900を含む)の構成例を示す概略図である。図1に示されるように、冷凍サイクル装置900は、四方弁902の切替え動作により暖房運転又は冷房運転をすることができる。
暖房運転時には、実線矢印で示されるように、冷媒が圧縮機904で加圧されて送り出され、四方弁902、室内の熱交換器906、膨張弁908、室外の熱交換器910及び四方弁902を通って圧縮機904に戻る。冷房運転時には、破線矢印で示されるように、冷媒が圧縮機904で加圧されて送り出され、四方弁902、室外の熱交換器910、膨張弁908、室内の熱交換器906及び四方弁902を通って圧縮機904に戻る。
暖房運転時には、熱交換器906が凝縮器として作用して熱放出を行い(室内を暖房し)、熱交換器910が蒸発器として作用して熱吸収を行う。冷房運転時には、熱交換器910が凝縮器として作用して熱放出を行い、熱交換器906が蒸発器として作用し、熱吸収を行う(室内を冷房する)。膨張弁908は、冷媒を減圧して膨張させる。圧縮機904は、電動機駆動装置2によって可変速制御される電動機7によって駆動される。
図2は、実施の形態のヒートポンプ式給湯器(冷凍サイクル装置900aを含む)の構成例を示す概略図である。図2に示されるように、冷凍サイクル装置900aでは、熱交換器906が凝縮器として作用して熱放出を行い(水を温め)、熱交換器910が蒸発器として作用して熱吸収を行う。圧縮機904は、電動機駆動装置2によって可変速制御される電動機7によって駆動される。
図3は、実施の形態の冷蔵庫(冷凍サイクル装置900bを含む)の構成例を示す概略図である。図3に示されるように、冷凍サイクル装置900bでは、熱交換器910が凝縮器として作用して熱放出を行い、熱交換器906が蒸発器として作用し、熱吸収を行う(冷蔵庫内を冷却する)。圧縮機904は、電動機駆動装置2によって可変速制御される電動機7によって駆動される。
《1》実施の形態1.
《1-1》実施の形態1の概要
図4は、本発明の実施の形態1の電動機駆動装置2を、電動機7及び交流電源4とともに示す概略配線図である。電動機駆動装置2は、電動機7を駆動するためのものである。図4に示されるように、電動機駆動装置2は、インバータ30と、接続切替装置60と、制御装置100とを備える。また、電動機駆動装置2は、交流電源入力端子2a,2bと、リアクトル8と、整流回路10と、コンデンサ20と、制御電源生成回路80と、母線電流検出手段85と、電気量検出部90とを備えてもよい。
接続切替装置60は、切替器(スイッチ回路)61~63を有し、電動機7の回転動作中に切替器61~63の切替え動作を行うことによって電動機7の巻線71~73の接続状態(結線状態)を切替える。インバータ30は、切替器61~63を介して巻線71~73に交流電圧を印加するとともに、切替器61~63を介して回転動作中の電動機7の巻線71~73から逆起電圧が印加される。
制御装置100は、インバータ30を制御することによって電動機7の回転動作を制御する。また、制御装置100は、接続切替装置60に巻線の接続状態の切替えを実行させる。実施の形態1においては、制御装置100は、巻線71~73に流れる交流電流の値(第1の実効値)が切替器61~63の切替え動作の前において巻線に流れる交流電流の値(第2の実効値)よりゼロに近づけられている電流制御期間Pc(「ゼロ電流制御期間」とも言う)内に、切替器61~63の切替え動作を実行させる。
なお、本出願において、巻線の接続状態は、巻線の結線状態(例えば、Y結線とΔ結線)と、巻線の巻数との両方を含む。巻線の巻数の切替えについては、実施の形態3で説明する。また、切替器61~63をメカリレーで構成した場合には、電流制御期間Pcは、数百ミリ秒以下に設定できる。切替器61~63を半導体スイッチで構成した場合には、電流制御期間Pcは、数ミリ秒以下に設定できる。また、電動機7を空気調和機、ヒートポンプ式給湯器、冷蔵庫などの冷凍サイクル装置の圧縮機に使用する場合には、電流制御期間Pcは、数m秒から1秒までの範囲内で設定できる。
《1-2》実施の形態1の構成
制御装置100は、例えば、制御情報をソフトウェアプログラムとして記憶する記憶装置としてのメモリと、このプログラムを実行する情報処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)とを備えたマイコン(マイクロコンピュータ)、又はDSP(Digital Signal Processor)等で構成される。また、制御装置100は、専用のハードウェア(例えば、処理回路)で構成されていてもよい。以下では、制御装置100がマイコンで構成されている場合を説明する。
交流電源入力端子2a,2bは、外部の交流電源4に接続される。交流電源入力端子2a,2bには、交流電源4から交流電圧が印加される。印加される電圧は、例えば、振幅(実効値)が100V又は200V等であり、周波数が50Hz又は60Hz等である。
整流回路10は、交流電源4から入力端子2a,2b及びリアクトル8を介して交流電力を受けて整流することで、直流電圧を生成する。整流回路10は、ダイオード等の整流素子11~14をブリッジ接続することで形成された全波整流回路である。
コンデンサ20は、整流回路10で生成された直流電圧を平滑化して、直流電圧V20を出力する。
図5は、図4のインバータ30の構成を示す図である。図5に示されるように、インバータ30は、インバータ主回路310と、駆動回路350とを有する。インバータ主回路310の入力端子は、コンデンサ20の電極に接続されている。整流回路10の出力、コンデンサ20の電極、及びインバータ主回路310の入力端子を結ぶ線を、直流母線と言う。
インバータ30は、制御装置100によって制御されて、インバータ主回路310の6つのアームのスイッチング素子311~316がオン、オフ動作する。このオン、オフ動作によって、インバータ30は、周波数可変で電圧可変の3相交流電流を生成し、この3相交流電流を電動機7に供給する。スイッチング素子311~316には、還流用の整流素子321~326がそれぞれ並列接続されている。
電動機7は、3相永久磁石同期電動機であり、固定子巻線(以下「巻線」とも言う)の端部が電動機7の外部に引き出されており、スター結線(Y結線)及びデルタ結線(Δ結線)のいずれかへの切替えが可能なものである。この切替えは、接続切替装置60により行われる。なお、Y結線を第1の結線という場合には、Δ結線が第2の結線であり、Δ結線を第1の結線という場合には、Y結線が第2の結線である。また、巻線の接続状態は、3種類以上であってもよい。
図6は、電動機7の固定子巻線及び接続切替装置60をより詳細に示す配線図である。図6に示されるように、電動機7の、U相、V相、W相から成る3つの相の巻線71,72,73の第1の端部71a,72a,73aが、外部端子71c,72c,73cにそれぞれ接続されている。電動機7の、U相、V相、W相の巻線71,72,73の第2の端部71b,72b,73bが、外部端子71d,72d,73dにそれぞれ接続されている。このように、電動機7は、接続切替装置60との接続が可能となっている。また、外部端子71c,72c,73cには、インバータ30のU相、V相、W相の出力線331,332,333が接続されている。
接続切替装置60は、図示の例では、切替器61~63で構成されている。切替器61,62,63としては、電磁的に接点が開閉する電磁接触器が用いられている。そのような電磁接触器は、リレー、コンタクターなどと呼ばれるものが含まれる。
図7は、切替器61~63の構成例を示す配線図である。切替器61~63は、例えば、図7に示されるように構成されており、励磁コイル611,621,631に電流が流されているときと、電流が流されていないときとで、異なる結線状態を取る。励磁コイル611,621,631は、半導体スイッチ604を介して、切替電源電圧V60を受けるように接続される。半導体スイッチ604の開閉は、制御装置100から出力される切替制御信号Scにより制御される。なお、制御装置100に含まれるマイコンからの電流供給が十分確保されている場合には、マイコンから直接励磁コイルに電流を流すように動作してもよい。
切替器61の共通接点61cは、リード線61eを介して外部端子71dに接続されている。常閉接点61bは、中性点ノード64に接続され、常開接点61aは、インバータ30のV相の出力線332に接続されている。
切替器62の共通接点62cは、リード線62eを介して外部端子72dに接続されている。常閉接点62bは、中性点ノード64に接続され、常開接点62aは、インバータ30のW相の出力線333に接続されている。
切替器63の共通接点63cは、リード線63eを介して外部端子73dに接続されている。常閉接点63bは、中性点ノード64に接続され、常開接点63aは、インバータ30のU相の出力線331に接続されている。
励磁コイル611,621,631に電流が流れていないときは、切替器61,62,63が、図7に示されるように、常閉接点側に切替わった状態、即ち、共通接点61c,62c,63cが常閉接点61b,62b,63bに接続された状態にある。この状態では、電動機7は、Y結線状態にある。
励磁コイル611,621,631に電流が流れているときは、切替器61,62,63が図示とは逆に、常開接点側に切替わった状態、即ち、共通接点61c,62c,63cが常開接点61a,62a,63aに接続された状態にある。この状態では、電動機7は、Δ結線状態にある。
ここで、電動機7としてY結線及びΔ結線のいずれかへの切替えが可能なものを用いることの利点について図8(a)及び(b)を用いて説明する。図8(a)は、Y結線としたときの巻線の結線状態、図8(b)は、Δ結線としたときの巻線の結線状態をそれぞれ概念的に示す。
Y結線時の線間電圧をVY、巻線に流れ込む電流をIYとし、Δ結線時の線間電圧をVΔ、巻線に流れ込む電流をIΔとし、各相の巻線に掛かる電圧が互いに等しいとすると、以下の式(1)及び(2)の関係がある。
VΔ=VY/√3 (1)
IΔ=√3×IY (2)
Y結線時の電圧VY及び電流IYと、Δ結線時の電圧VΔ及び電流IΔとが式(1)及び(2)の関係を有するとき、Y結線時とΔ結線時とで電動機に供給される電力が互いに等しい。つまり、電動機に供給される電力が互いに等しいとき、Δ結線の方が電流は大きく、駆動に必要な電圧が低い。
以上の性質を利用し、負荷条件等に応じて結線状態を選択することが考えられる。例えば、低負荷時には、Y結線で低速運転し、高負荷時には、Δ結線で高速運転することが考えられる。このようにすることで、低負荷時の効率を向上させ、高負荷時の高出力化も可能となる。
以下に、この点について、空気調和機の圧縮機を駆動する電動機の場合について、さらに詳しく述べる。空気調和機の圧縮機駆動用の電動機7としては、省エネルギー化の要求に応えるため、回転子に永久磁石を備えた同期電動機が広く用いられている。また、近年の空気調和機においては、室温と設定温度との差が大きいときは、電動機7を高速で回転させる高速運転によって室温を設定温度に早く近づけ、室温が設定温度に近いときは、電動機7を低速で回転させる低速運転によって室温を維持するようにしている。このように制御する場合、全運転時間に対する低速運転の時間の占める割合が大きい。
同期電動機を用いた場合、回転数が上がると逆起電力が増加し、駆動に必要な電圧値が増加する。この逆起電力は、上記のようにY結線の方がΔ結線に比べて高い。
高速での逆起電力を抑制するために、永久磁石の磁力を小さくしたり、固定子巻線の巻き数を減らしたりすることが考えられる。しかし、そのようにすると、同一出力トルクを得るための電流が増加するため、電動機7及びインバータ30に流れる電流が増加し、効率が低下する。
そこで、回転数に応じて結線状態を切替えることが考えられる。例えば、高速での運転が必要な場合には、Δ結線状態とする。こうすることで、駆動に必要な電圧を(Y結線に比べ)1/√3にすることができる。このため、巻線の巻数を減らす必要もなく、また弱め磁束制御を用いる必要もなくなる。
一方、低速回転では、Y結線状態とすることでΔ結線に比べて電流値を1/√3にできる。さらに、巻線をY結線状態で低速での駆動に適したように設計することが可能となり、Y結線を速度範囲の全域にわたり使用する場合に比べて、電流値を低減することが可能となる。この結果、インバータ30の損失を低減することができ、効率を高めることが可能となる。
以上説明したように、負荷条件に応じて結線状態を切替えることには意義があり、接続切替装置60が設けられるのは、このような切替えを可能にするためである。
図4に示される母線電流検出手段85は、母線電流、即ち、インバータ30に入力する直流電流Idcを検出する。母線電流検出手段85は、直流母線に挿入されたシャント抵抗を含み、検出結果を示すアナログ信号を制御装置100に供給する。この信号(検出信号)は、制御装置100で図示しないA/D(Analog to Digital)変換部によりデジタル信号に変換されて制御装置100の内部での処理に用いられる。
制御装置100は、上記のように、接続切替装置60による結線状態の切替えを制御するとともに、インバータ30の動作を制御する。インバータ30の制御のため、制御装置100は、PWM(Pulse Width Modulation)信号Sm1~Sm6を生成して、インバータ30に供給する。
図5に示されるように、インバータ30は、インバータ主回路310のほかに、駆動回路350を備えており、駆動回路350がPWM信号に基づいて駆動信号Sr1~Sr6を生成する。駆動回路350は、駆動信号Sr1~Sr6によりスイッチング素子311~316のオン、オフを制御し、これにより、周波数可変で電圧可変の3相交流電圧が電動機7に印加される。
PWM信号Sm1~Sm6が論理回路の信号レベルの大きさ(0~5V)のものであるのに対し、駆動信号Sr1~Sr6は、スイッチング素子311~316を制御するのに必要な電圧レベル、例えば、+15Vから-15Vまでの大きさを持つ信号である。また、PWM信号Sm1~Sm6が、制御装置100の接地電位を基準電位とするものであるのに対し、駆動信号Sr1~Sr6は、それぞれ対応するスイッチング素子の負側の端子(エミッタ端子)の電位を基準電位とするものである。
図9は、図4の制御装置100の一例を示す機能ブロック図である。図9に示されるように、制御装置100は、運転制御部102及びインバータ制御部110を有する。
運転制御部102は、電気量検出部90から提供される指令信号Qeに基づいて指示信号を出力する。電気量検出部90は、図示しない温度センサで検出された室温(空調対象空間の温度)を示す電気信号の電気量に基づく指令信号、並びに、図示しない操作部、例えば、リモコンからの指示情報を示す指令信号を受け、空気調和機の各部の動作を制御する。操作部からの指示には、設定温度を示す情報、運転モードの選択、運転開始及び終了の指示等が含まれる。
運転制御部102は、例えば、電動機7の固定子巻線をY結線とするかΔ結線とするかの決定及び目標回転数の決定を行い、決定に基づいて切替制御信号Sc及び周波数指令値ω*を出力する。例えば、室温と設定温度との差が大きいときは、Δ結線とすることを決め、目標回転数を比較的高い値に設定し、起動後上記の目標回転数に対応する周波数まで徐々に周波数を上昇する周波数指令値ω*を出力する。
目標回転数に対応する周波数に達したら、室温が設定温度に近づくまで、その状態を維持し、室温が設定温度に近くなったら、一旦電動機を停止させ、Y結線に切替え、比較的低い目標回転数に対応する周波数まで徐々に上昇する周波数指令値ω*を出力する。目標回転数に対応する周波数に達したら、その後、室温が設定温度に近い状態を維持するための制御を行う。この制御には、周波数の調整、電動機の停止、再始動等が含まれる。
図9に示されるように、インバータ制御部110は、電流復元部111、3相2相変換部112、周波数補償部113、一次周波数演算部114、電圧指令演算部115、2相3相変換部116、PWM生成部117、電気角位相演算部118、及び励磁電流指令制御部119を有する。
電流復元部111は、母線電流検出手段85(図4)で検出された直流電流Idcの値に基づいて電動機7に流れる相電流iu,iv,iwを復元する。電流復元部111は、母線電流検出手段85で検出される直流電流Idcを、PWM生成部117から提供されたPWM信号に基づいて定められるタイミングでサンプリングすることで、相電流iu,iv,iwを復元する。
3相2相変換部112は、電流復元部111により復元された相電流iu、iv、iwの電流値を、後述の電気角位相演算部118で生成される電気角位相θを用いて励磁電流成分(「γ軸電流」とも言う)iγ及びトルク電流成分(「δ軸電流」とも言う)iδで表わされるγ-δ軸の電流値に変換する。
励磁電流指令制御部119は、トルク電流成分(δ軸電流)iδを基にして、電動機7を駆動するために最も効率が良くなる最適な励磁電流指令値iγ
*を求める。なお、図9においては、トルク電流成分iδを基にして励磁電流指令値iγ
*を求めているが、励磁電流成分iγ、周波数指令値ω*を基にして励磁電流指令値iγ
*を求めても同様の効果を得ることができる。
励磁電流指令制御部119では、トルク電流成分iδ(又は、励磁電流成分iγ、周波数指令値ω*)に基づいて、出力トルクが予め決められた値以上(あるいは最大)、すなわち電流値が予め決められた値以下(あるいは最小)となる電流位相角βm(図示せず)となるような励磁電流指令値iγ
*を出力する。
図10は、図9の電圧指令演算部115を詳細に示す図である。図10に示されるように、電圧指令演算部115は、3相2相変換部112より得られたγ軸電流iγ及びδ軸電流iδと、周波数指令値ω*と、励磁電流指令制御部119より得られた励磁電流指令値iγ
*とに基づいて、電圧指令値Vγ
*,Vδ
*を出力するよう動作する。
制御器1152は、例えば、比例積分(PI)制御器であり、周波数指令値ω*と周波数推定部1151により生成された周波数推定値ωestとの差分(ω*-ωest)に基づいて、周波数推定値ωestが周波数指令値ω*に一致するようなδ軸電流指令値iδ
*を出力する。
周波数推定部1151は、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδと電圧指令値Vγ
*,Vδ
*とに基づいて、電動機7の周波数を推定して、周波数推定値ωestを生成する。
切替部1155は、δ軸電流指令値iδ
*と0とのいずれかからδ軸電流指令値iδ
**の値を選択し、例えば、PI制御器などの制御器1156は、δ軸電流iδがδ軸電流指令値iδ
**に一致するようなδ軸電圧指令値Vδ
*を出力する。
切替部1153は、γ軸電流指令値iγ
*と0とのいずれかからγ軸電流指令値iδ
**の値を選択し、例えば、PI制御器などの制御器1154は、γ軸電流iγがγ軸電流指令値iγ
**に一致するようなγ軸電圧指令値Vγ
*を出力する。
図9に示される2相3相変換部116は、電圧指令演算部115により得られたγ軸電圧指令値Vγ
*及びδ軸電圧指令値Vδ
*(2相座標系の電圧指令値)を電気角位相演算部118により得られた電気角位相θを用いて3相座標系の出力電圧指令値(3相電圧指令値)Vu
*,Vv
*,Vw
*に変換して出力する。
PWM生成部117は、2相3相変換部116より得られる3相電圧指令値Vu
*,Vv
*,Vw
*を基にPWM信号Sm1~Sm6を生成して出力する。
運転制御部102から提供される停止信号Stは、例えば、PWM生成部117に与えられ、PWM生成部117は、停止信号Stを受けると、直ちにPWM信号Sm1~Sm6の出力を停止する。
図5に示される駆動回路350は、PWM信号Sm1~Sm6を基に駆動信号Sr1~Sr6を生成する。
なお、図9の例では、インバータ30の入力側の直流電流Idcから相電流iu,iv,iwを復元する構成を説明しているが、インバータ30の出力線331,332,333に電流検知器を設け、該電流検知器で相電流を検出するような構成としてもよい。このようにする場合には、上記電流検知器で検出された電流を、電流復元部111で復元された電流の代わりに用いればよい。
また、電動機7に3相永久磁石同期電動機を用いた場合、電動機7に過大な電流が流れると永久磁石の不可逆減磁が発生し磁力が低下してしまう。そのような状態が発生すると、同一のトルクを出力するための電流が増加するため、損失が悪化する問題が発生する。そのため、相電流iu,iv,iwもしくは直流電流Idcを制御装置100に入力し、電動機7に過大な電流が流れた場合に、PWM信号Sm1~Sm6を停止させることで電動機7への通電を停止させることで、不可逆減磁を防止することが可能となる。なお、相電流iu,iv,iwもしくは直流電流Idcにノイズを除去するLPF(Low Pass Filter)を設けることで、ノイズにより誤ってSm1~Sm6を停止させることを防止することが可能であり、より信頼性を向上させることが可能となる。
ここで、電動機7としてY結線とΔ結線のいずれかへの切替が可能なものを用いた場合は、Y結線とΔ結線で不可逆減磁が発生する電流値(図8のIYとIΔ)が概ね√3倍異なり、Y結線に対してΔ結線の方が√3倍高くなる。そのため、Y結線に合わせて不可逆減磁の保護レベルを設定すると、IΔの保護が早くかかることになるため、運転範囲の拡大が困難となる。そのため、制御装置100内でY結線とΔ結線に合わせて保護レベルを切替えることにより、各巻線で確実に不可逆減磁から電動機7を保護することが可能となり、信頼性を向上させた電動機駆動装置を得ることが可能となる。
なお、保護レベルについては、電動機7の初期状態の磁力を100%と設定し、不可逆減磁が発生した場合に性能に影響を与えない範囲である電流値(例えば、磁力が97%に低下する電流値)に設定することが挙げられるが、使用する機器に応じて保護レベルの設定電流値を変更しても何ら問題ない。
《1-3》実施の形態1の動作
以下、電動機7の運転中(即ち、回転動作中)に接続切替装置60の切替器61~63の切替えを実行させた際の電動機駆動装置2の動作について説明する。最初に、従来技術の問題点、即ち、本発明の特徴を備えない電動機駆動装置における動作について、図4を用いて簡単に説明する。
〈比較例の電動機駆動装置の動作〉
電動機が運転中、即ち、接続切替装置60を構成する切替器61,62,63に電流が流れている状態で、励磁コイル611,621,631に流れる電流を操作した場合、共通接点61c,62c,63cは、常閉接点61b,62b,63b、又は常開接点61a,62a,63aに接続が切替わる。切替わりが起きるときに、インバータ30から電動機7への給電が続いており、電動機7の回転数Nmが未だゼロになっていないとすると、切替器61,62,63の接点間にアーク放電が発生し、これにより接点溶着等の故障が発生する可能性がある。
このような故障を避けるため、接続切替装置60を動作させる前にインバータ30から電動機7への給電を停止し、電動機7の回転数Nmがゼロの状態(即ち、回転動作が停止した状態)とすることにより、切替器61,62,63の接点間にアーク放電が発生することなく切替を行うことが可能となる。
しかしながら、電動機7の回転数Nmをゼロにすると、電動機7を再始動させる際に、電動機7にかかる負荷が、例えば、圧縮機904(図1)の場合は、冷媒の状態が安定しない状態のため、再始動に必要なトルクが増加し、起動時の電流が増加し、最悪の場合再始動ができない恐れがある。そのため、電動機7を動作させずに十分に冷媒の状態が安定するまで時間が経過した後に、再始動を行う必要がある。そのため、圧縮機904により冷媒を加圧することができなくなり、冷房や暖房能力の低下による室温の上昇や低下を招き、室温が一定に保たれない恐れがある。
〈電動機駆動装置2の動作〉
そこで、実施の形態1の電動機7では、電動機7の回転動作中(運転中)に電動機7の巻線又は接続切替装置60に流れる電流の値(実効値)をゼロに近づけるように制御(電流制御期間Pc)したのちに、インバータ30から電動機7への給電を停止(給電停止期間Ps)し、その状態で(給電停止期間Ps中に)接続切替装置60の切替器を動作させることで、切替器61,62,63の接点間にアーク放電及び過大な電流を発生させることなく切替えを完了させる。
電流制御期間Pcは、インバータが電動機7の回転動作によって発生する逆起電圧を打ち消すように交流電圧を電動機に印加している期間である。このように、電動機7の回転数Nmをゼロにすることなく、即ち、回転動作を停止させることなく、電動機7の巻線に流れる電流の値(実効値)をゼロに近づけることができる。その後、給電停止期間Psはインバータ30の給電が停止されるため、インバータ30から接続切替装置60への電圧供給が停止するため、より信頼性を向上させた状態で巻線71~73の結線状態を切替えることが可能となる。そのため、空気調和機の場合には、結線状態の切替えに際して電動機7の回転動作を停止させる必要が無いため、回転動作の停止により冷媒が安定するまでの待機時間が不要となり、室温の上昇や低下を抑制することが可能となる。
図10において、電圧指令演算部115は、切替部1155によりδ軸電流指令値iδ
**に0を選択するよう動作させることにより、δ軸電流iδがδ軸電流指令値iδ
*に一致するような、つまりδ軸電流指令値iδ
**が0に一致するようなδ軸電圧指令値Vδ
*を出力する。さらに、電圧指令演算部115は、切替部1153によりγ軸電流指令値iγ
**に0を選択するよう動作させることにより、γ軸電流iγがγ軸電流指令値iγ
*に一致するような、つまりγ軸電流指令値iγ
**が0に一致するようなγ軸電圧指令値Vγ
*を出力する。その後、PWM信号Sm1~Sm6の出力を停止することで、インバータ30が出力する電圧を停止させる。
《1-4》実施の形態1の効果
以上の動作により、電動機7の巻線に流れる電流、即ち、切替器61~63に流れる電流の値(実効値)を、図11に示される電流制御期間Pcのように、ゼロに近づける制御(望ましくは、ゼロにする制御)(以降「ゼロ電流制御」と称す)をさせることができる。よって、切替器61~63に電流が流れていない状態で切替器61~63の切替え動作を行うことができ、切替器61~63の接点間にアーク放電を生じさせることが無い。このため、切替器61~63としてメカリレーを用いた場合に、接点溶着を防止し、信頼性の高い電動機の駆動装置を実現できる。なお、ここで言う「ゼロにする制御」とは、切替器61~63に流れる電流の値(実効値)を正確にゼロにするという意味ではなく、実質的にゼロとみなすことができるほどゼロに近いという意味である。
しかしながら、正確にゼロにすることはできないため、微弱な電流が電動機7の巻線に流れることになる。この状態で切替器61~63の切替え動作を行うと、例えば図6に示す切替器61~63の接続状態を想定した場合に、例えば常閉接点61bと共通接点61cが接続状態にあり、その状態で常閉接点61bと共通接点61cを開状態に操作すると電流によるアーク放電が発生する恐れがある。その際のアーク放電は軽微であるが、アーク放電が生じた状態で常開接点61aに接すると、常開接点61a、常閉接点61b、共通接点61cが低インピーダンスで接続された状態となる。ゼロ電流制御では、電動機7の誘起電圧を打ち消すために、インバータ30により電圧を供給しており、その状態で常開接点61a~63a、常閉接点61b~63b、共通接点61c~63cが低インピーダンスで接続された状態が2つ以上発生すると短絡電流が生じ、過大な電流が切替器61~63に流れる恐れがある。
巻線に供給される駆動電流を0にする方法としては、PWM信号Sm1~Sm6の出力を停止する方法もあるが、電動機7の巻線に大きな電流が流れている状態で出力を停止すると回生電力の発生やサージ電圧の発生が懸念される。しかしながらゼロ電流制御を行ったのちに、インバータ30の動作を停止させることにより、電動機7の巻線に流れる電流が低下した状態で、インバータ30の動作を停止させることが可能となる。これにより電動機7の巻線のインダクタンスに蓄積されたエネルギーが低下した状態を作り出すことができ、回生電圧が発生し、電動機7から接続切替装置60及び整流素子321~326を介してコンデンサ20に向かう充電電流が流れることを防止することが可能となる。またこの状態で切替器61~63を操作することで、インバータ30の出力が停止されるため、その間に切替器61~63を切り替えることで、常開接点61a~63a、常閉接点61b~63b、共通接点61c~63cが低インピーダンスで接続された場合においても、過大な電流が流れることなく切替動作を完了することができる。
また、電流制御期間Pcの経過後の、給電停止期間Ps中に切替器61~63の切替え動作を行うと、巻線に供給される駆動電流の大きな電流変化を生じさせることなく切り替えることができる。つまり、実施の形態1の接続切替装置60は、巻線に流れる交流電流の第1の実効値が切替器の切替え動作の前において巻線に流れる交流電流の第2の実効値よりゼロに近づける電流制御期間Pcを有する第1の段階と、インバータが出力する交流電圧を停止させる給電停止期間を有する第2の段階とを備えており、第2の段階の期間中に、切替器の切替え動作を実行させる。ここで、第2の段階は、第1の段階の後(例えば、直後)の段階である。このため、切替えによる電動機7の急変を抑制することができ、電動機7の騒音及び振動を抑制しながら結線状態を切替えることができる。しかしながら、電流制御期間Pc期間中は電流出力がなされないため、電動機7を駆動するトルクが発生せず、また給電停止期間Psにおいても電動機7に電圧が印加されない状態であるため、電動機7を駆動するトルクが発生しない。そのため、空気調和機の場合には、冷媒を圧縮する圧縮機の負荷の大きさと、圧縮機の慣性モーメントに応じて、電動機7の減速が生じる。しかしながら、切替器61~63の動作時間は、たかだか10ミリ秒程度である。そのため、電流制御期間Pc及び給電停止期間Psを十分短く設定すれば、長くとも100ミリ秒以下での切替動作を完了することが可能であるため、大幅な減速は生じない。つまり、圧縮機の負荷や慣性モーメントに応じて切替を行う回転数を適切に設定すること、電流制御期間Pc及び給電停止期間Psを適切に設定すること、又はこれらの組み合わせによって、電動機7の回転数を大幅に低下させることなく切替動作を完了し、回転を継続させることが可能となる。これにより、圧縮機の停止による室温の上昇又は低下を抑制することが可能となる。
なお、電動機が圧縮機に備えられた場合、電流制御期間は1秒以下であり、給電停止期間は1秒以下である。
そこで、実施の形態1の制御装置100は、電動機7が高速で回転しているときに、電動機7又は接続切替装置60に流れる電流の値(例えば、実効値)をゼロに近づけるように(望ましくは、略0となるように)制御し、十分に電流がゼロになったことを確認したのちにインバータ30の通電を停止するよう動作する。インバータ30の通電が停止された状態で接続切替装置60の切替器61~63の切替え動作を行うように制御する。なお、電動機7の巻線に流れる電流が極めて低い場合(軽負荷状態)には、ゼロ電流制御を行うことなく、インバータ30の通電を停止するように動作させても良い。このようにすることで、切替器61~63の切替わり動作時の電流の変化による騒音及び振動の発生を抑制できる。また、接続切替装置60にメカリレーを用いた場合における接点溶着等の故障を防止することが可能となり、信頼性の高い電動機駆動装置を得ることができる。
言い換えれば、実施の形態1の電動機駆動装置2は、安価な部品で接続切替装置60を構成した場合であっても、故障発生率の低下及び装置の長寿命化を図ることができるので、製品コストを低下させることができる。
なお、Y結線とΔ結線で不可逆減磁が発生する電流値が異なるため、Y結線とΔ結線を切替えるタイミングで保護レベルを切替えることで、各巻線に対応した保護が可能となる。しかしメカリレーを用いた場合には、励磁コイル611,621,631に電流が流れてから、切替器61,62,63が、常開接点61a,62a,63ba、または常閉接点61b,62b,63bに切り替わるまでに時間遅れが生じる。そのため、例えばY結線からΔ結線に切り替えた場合には、保護レベルはΔ結線に切り替わっているが、電動機7はΔ結線への切替移行中であるためY結線のままの状態であることが想定される。その場合、誤って過大な電流が流れた場合に、電動機7の不可逆減磁を生じる可能性がある。
そこで、結線の切り替え時には電流をゼロにする制御を開始した時点、またはゼロにする制御を開始し、インバータ30の動作を停止してから結線を切替えるまでの間に、保護レベルの低いY結線の保護レベルに設定しておくことにより、結線の切り替え時にY結線、Δ結線何れの状態であっても不可逆減磁から保護することが可能となる。なお、結線切替時には電流をゼロにする制御を行うため、電動機7の運転に何ら影響が無いことは言うまでもない。
また、保護レベルについては、先に説明した通り電動機7の初期状態の磁力を100%と設定し、不可逆減磁が発生した場合に性能に影響を与えない範囲である電流値(例えば、磁力が97%に低下する電流値)に設定することが挙げられ、さらにY結線に対してΔ結線における電流値を√3倍の値にしておくことで結線状態によらず確実に不可逆減磁から保護することが可能となる。ただし、図8(b)においてIΔを検出せずに、巻線に流れる電流値を検出して保護を行う場合には、IΔ÷√3の電流値(Y結線における保護レベルの電流値と同等)を保護レベルとして設定することが望ましい。なお、使用する機器に応じて保護レベルの設定電流値を変更しても何ら問題ない。
《1-5》実施の形態1の変形例
整流回路10の整流素子11~14としては、ダイオードなどを用いることが一般的である。しかし、整流回路10の構成は、図2の例に限定されない。例えば、整流回路10の整流素子11~14の代わりに、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)等のトランジスタ素子(半導体スイッチ)を用いて、交流電源4から供給される電圧(入力交流電圧)の極性に合わせてオン状態とすることで、整流を行うように構成してもよい。
インバータ主回路310のスイッチング素子311~316としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はMOSFETが用いられるが、本発明はこれに限定されない。スイッチング素子311~316は、スイッチングを行うことができる素子であれば、どのようなものを用いてもよい。なお、スイッチング素子311~316としてMOSFETを用いる場合には、MOSFETが構造上寄生ダイオードを有するため、環流用の整流素子321~326(図5)を並列接続する必要はない。
整流素子11~14及びスイッチング素子311~316を構成する材料については、ケイ素(Si)だけでなく、ワイドバンドギャップ半導体である炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド等を用いたもので構成することにより、損失をより少なくすることが可能となる。
《2》実施の形態2.
本発明の実施の形態2の電動機駆動装置は、接続切替装置60の代わりに、接続切替装置260を用いた点が、実施の形態1の電動機駆動装置と異なる。図4の構成では、接続切替装置60の切替器61~63は、切替スイッチ(選択スイッチ)を用いている。実施の形態2では、接続切替装置260の各切替器を、常閉スイッチと常開スイッチとの組み合わせ、すなわち、オン・オフ式のスイッチの組み合わせで構成している。
図12は、実施の形態2における電動機7の巻線71~73と接続切替装置260とを示す配線図である。図12の接続切替装置260では、切替器61を常閉スイッチ615と常開スイッチ616との組合せで構成し、切替器62を常閉スイッチ625と常開スイッチ626との組合せで構成し、切替器63の常閉スイッチ635と常開スイッチ636との組合せで構成している。
図12に示されるように、常閉スイッチ615,625,635が閉じ(オンしており)、常開スイッチ616,626,636が開いた(オフしている)状態では、電動機7の巻線71~73はY結線状態である。図示の状態とは逆に、常閉スイッチ615,625,635が開き(オフしており)、常開スイッチ616,626,636が閉じた(オンしている)状態では、電動機はΔ結線状態である。
図12に示されるように、各切替器を常閉スイッチ615,625,635と常開スイッチ616,626,636との組合せで構成する場合にも、各スイッチとして、電磁接触器を用いることができる。電磁接触器は、オン時の導通損失が小さいので好適である。
図12に示されるように、各切替器を半導体スイッチを用いて構成してもよい。図13は、図12の接続切替装置260の切替器61(62,63)にMOSトランジスタを用いた構成例を示す回路図である。図13には、切替器61,62,63の内の一つが示されている。切替器61,62,63は、互いに同様の構成を持ち、同様に動作する。図14は、図13の切替器のMOSトランジスタのオン及びオフ状態の例を表形式で示す図である。
図13に示されるように、切替器61(62,63)は、リード線61e(62e,63e)と出力線332(333,331)との間に直列に接続されたMOSトランジスタ616a(626a,636a)及びダイオード616c(626c,636c)と、リード線61e(62e,63e)と出力線332(333,331)との間に直列に接続されたMOSトランジスタ616b(626b,636b)及びダイオード616d(626d,636d)とを備えている。
また、切替器61(62,63)は、リード線61e(62e,63e)と中性点ノード64との間に直列に接続されたMOSトランジスタ615a(625a,635a)及びダイオード615c(625c,635c)と、リード線61e(62e,63e)と中性点ノード64との間に直列に接続されたMOSトランジスタ615b(625b,635b)及びダイオード615d(625d,635d)とを備えている。
各MOSトランジスタ616a(626a,636a)、616b(626b,636b)、615a(625a,635a)、615b(625b,635b)は、アノードがダイオードに接続され、カソードがリード線(又は中性点ノード又は出力線)に接続された寄生ダイオードを有している。
図14に示されるように、MOSトランジスタ616a,626a,636aをオンにし、MOSトランジスタ616b,626b,636bをオンにし、MOSトランジスタ615a,625a,635aをオフにし、MOSトランジスタ615b,625b,635bをオフにすることによって、巻線71~73をΔ結線にすることができる。
また、図14に示されるように、MOSトランジスタ616a,626a,636aをオフにし、MOSトランジスタ616b,626b,636bをオフにし、MOSトランジスタ615a,625a,635aをオンにし、MOSトランジスタ615b,625b,635bをオンにすることによって、巻線71~73をY結線にすることができる。
また、半導体スイッチとしてのMOSトランジスタは、ワイドバンドギャップ(WBG)半導体で構成されることが望ましい。WBG半導体は、例えば、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドを構成材料として含む半導体である。WBG半導体で構成した場合、オン抵抗が小さく、低損失で素子発熱も少なく、また、切替え動作を速やかに行うことができる。
このように半導体スイッチを用いる場合にも、切替え動作を高速に動作させることが可能であるが、各半導体スイッチで数μs程度の動作ばらつきが生じる。そのため、電動機7の巻線抵抗Rと巻線インダクタンスLに基づく時定数L÷Rが非常に小さい場合には、急激な電流変化が生じて電動機7の回転数の急激な変化が発生し振動及び騒音が発生する恐れがあるだけでなく、半導体が発熱し故障する恐れがある。
そのため、半導体で構成された接続切替装置260において、図11に示される電流制御期間Pcの後の給電停止期間Ps内において常閉スイッチ615,625,635と常開スイッチ616,626,636の切替え動作を行うことで、大きな電流変化を生じさせることなく、結線状態の切替え動作を行うことができる。このため、切替器における切替え動作による電動機7の回転数の急激な変化を抑制することができる。このため、騒音及び振動を抑制しながら結線状態を切替えることができる。
また、接続切替装置260にメカリレーを用いた場合における接点溶着等の故障を防止することができ、信頼性の高い電動機駆動装置を得ることができる。
また、接続切替装置260に半導体スイッチを用いた場合における半導体スイッチの発熱に起因する故障を防止することができ、信頼性の高い電動機駆動装置を得ることができる。
言い換えれば、実施の形態2の電動機駆動装置は、安価な部品で接続切替装置260を構成した場合であっても、故障発生率の低下及び装置の長寿命化を図ることができるので、製品コストを低下させることができる。
以上の点以外について、実施の形態2の電動機駆動装置は、実施の形態1の電動機駆動装置2と同じである。
《3》実施の形態3.
実施の形態1及び2では、巻線71~73をY結線とΔ結線の間で切替え可能な電動機7に、本発明が適用された電動機駆動装置が接続されている例を説明している。実施の形態3では、巻線71~73の各々の巻数を切替え可能な電動機7aに、本発明が適用された電動機駆動装置が接続されている例を説明している。実施の形態3では、例えば、各相の巻線71~73が、2以上の巻線部分から成るものを用いる。この場合、各相の巻線71~73を構成する2以上の巻線部分の各々の両端部を、電動機7aの外部に接続可能として、接続切替装置360で固定子巻線71,72,73の接続状態(実施の形態3においては、巻線の巻数)を切替える。また、本発明が適用された接続切替装置は、巻線部分を並列接続及び直列接続のいずれかに切替えることができる電動機にも適用できる。
図15には、Y結線された電動機において各相の巻線を2つの巻線部分で構成し、該巻線部分の各々の両端部を、電動機7aの外部に接続可能として、接続切替装置360で接続状態を切替える構成を示す。
具体的には、U相の巻線71が2つの巻線部分711,712で構成され、V相の巻線72が2つの巻線部分721,722で構成され、W相の巻線73が2つの巻線部分731,732で構成されている。
巻線部分711,721,731の第1の端部は、外部端子71c,72c,73cを介してインバータ30の出力線331,332,333にそれぞれ接続されている。巻線部分711,721,731の第2の端部は、外部端子71g,72g,73gを介して切替スイッチ617,627,627の共通接点にそれぞれ接続されている。
巻線部分712,722,732の第1の端部は、外部端子71h,72h,73hを介して切替スイッチ618,628,638の共通接点にそれぞれ接続されている。巻線部分712,722,732の第2の端部は、外部端子71d,72d,73dを介して中性点ノード64にそれぞれ接続されている。
切替スイッチ617,627,637の常閉接点は、切替スイッチ618,628,638の常閉接点にそれぞれ接続されている。切替スイッチ617,627,637の常開接点は、中性点ノード64に接続されている。
切替スイッチ618,628,638の常開接点は、インバータ30の出力線331,332,333に接続されている。
切替スイッチ617,627,637,618,628,638により、接続切替装置360が構成されている。
このような接続切替装置360が使用されている場合にも、実施の形態1及び2で示したものと同様に、電流制御期間Pcに接続切替装置360の切替器の切替え動作を行うことで、メカリレー又は半導体スイッチを保護することができる。
図15に示される構成の場合、切替スイッチ617,627,637,618,628,638が図示のように常閉接点側に切替えられた状態では、電動機7aは、直列接続状態となり、切替スイッチ617,627,637,618,628,638が図示とは逆の常開接点側に切替えられた状態では、電動機7aは並列接続状態となる。
なお、実施の形態3においても、実施の形態2で述べたように、切替スイッチの代わりに常閉スイッチと常開スイッチとの組合せを用いることができる。また、常閉スイッチと常開スイッチとを、半導体スイッチとすることができる。
以上に、Y結線された電動機7aにおいて、直列接続状態と並列接続状態との切替えを行う場合について説明したが、Δ結線された電動機の電動機駆動装置において、直列接続状態と並列接続状態との切替えを行う場合にも、上記と同様に本発明を適用することができる。
また、Y結線又はΔ結線の状態で巻線に中間タップを設けて巻線の一部をスイッチング手段で短絡することで、駆動に必要な電圧を変更する構成を有する電動機の電動機駆動装置にも、本発明を適用することができる。要するに、本発明は、電動機が、巻線の接続状態が切替え可能で、前記接続状態の切替えにより逆起電圧が切替わるものであれば、適用が可能である。
以上の点以外について、実施の形態3の電動機駆動装置は、実施の形態1又は2の電動機駆動装置と同じである。
なお、以上の実施の形態1から3に示した構成は、本発明の構成例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能である。