図1~図4に示すように、建物躯体の壁部100は、上枠材101と、床面FLから上方に延びる左右の縦枠材102,103と、によって構成される既設の三方枠の内側に開口部104を有する。壁部100は、建物内の2つの室R1、R2を仕切る壁部であり、開口部104によって室R1と室R2とを連通させている。上枠材101及び左右の縦枠材102,103は、壁部100の壁厚よりも幅広に形成され、室R1側及び室R2側にそれぞれ僅かに張り出している。
折戸装置1は、折戸2と、折戸2を摺動可能に上吊りするガイドレール3と、を有する。本実施形態の折戸装置1は、2つの室R1、R2のうちの一方の室R1から、開口部104を塞ぐようにアウトセットされる。この折戸装置1は、開口部104に対して容易に後付けすることができるため、室内をリフォームする際に好適に使用することができる。
折戸2は、図1及び図4における左側が戸先側、右側が戸尻側であり、開口部104の幅寸法よりもやや幅広の幅寸法を有し、且つ、開口部104の高さ寸法よりもやや高い高さ寸法を有する。折戸2の戸先側は、縦枠材102のやや内側に配置されている。詳しくは、図4に示すように、折戸2の戸先側は、開口部104に対して、開口部104の見込み方向の外側である室R1に配置されるとともに、開口部104の幅方向の内側に配置される。したがって、折戸2の戸先側は、縦枠材102には当接していない。折戸2を室R1及び室R2のいずれから観察しても、折戸2の戸先側と縦枠材102とは重なっていない。なお、開口部104の見込み方向とは、開口部104を境にして室R1と室R2とに亘る方向である。
折戸2の戸尻側は、縦枠材103よりもやや外側に配置され、縦枠材103を覆っている。詳しくは、図4に示すように、折戸2の戸尻側は、開口部104に対して、開口部104の見込み方向の外側である室R1に配置されるとともに、開口部104の幅方向の外側に配置される。したがって、折戸2の戸尻側も、縦枠材103には当接していない。しかし、折戸2を室R1から観察した場合、折戸2の戸尻側は、縦枠材103と重なり、縦枠材103を覆い隠している。
折戸2の戸先側に配置される縦枠材102の内側には、縦枠材102と略同じ厚みの板材からなる戸先側の新設縦枠材105が、室R1に向けて更に突出するように取り付けられている。新設縦枠材105は、床面FLから上方に延びており、アウトセットされる折戸2の戸先側の端面に対向するように配置されている。新設縦枠材105の上下方向の長さは、縦枠材102の上下方向の長さよりも僅かに長い。そのため、図2に示すように、新設縦枠材105は、縦枠材102と重なり合う部位の上端に、上枠材101の端部を納めるためのL形の切り欠き部105aを有している。
新設縦枠材105には、戸当たり106が取り付けられている。戸当たり106は、新設縦枠材105の長さ方向に沿って設けられた溝部105bに配置されている。戸当たり106は、折戸2が閉じられた際に、室R2側から戸先に当接するように配置されている。新設縦枠材105には、戸当たり106に代えて、又は、戸当たり106に加えて、折戸2を閉状態に保持するためのラッチ、錠等を設けてもよい。
図3及び図4に示すように、壁部100における室R1側に面する壁面100aには、折戸2の戸尻側の端部22aの近傍の縦枠材103よりも外側に、折戸2の高さ方向の全長に亘るスペーサ材107が取り付けられている。スペーサ材107は、縦枠材103を挟んで開口部104と反対側の壁面100aに取り付けられる戸尻側の新設縦枠材である。スペーサ材107は、折戸2の戸尻側の端部と縦枠材103及び壁面100aとの間に形成される間隙Gを目隠ししている。
折戸2は、図1及び図4に示すように、最も戸先側に配置される戸先扉体21と、最も戸尻側に配置される戸尻扉体22と、戸先扉体21及び戸尻扉体22の間に配置される中間扉体23と、の3枚の扉体を有し、戸先扉体21及び中間扉体23を戸尻扉体22に向けて相互に重なり合うように折り畳むことによって開口部104を開放するように構成される。中間扉体23と戸尻扉体22とは、略同じ幅を有し、戸先扉体21は、戸尻扉体22及び中間扉体23の略倍の幅を有する。
戸先扉体21と中間扉体23とは、上下端部にそれぞれ配置されるヒンジ部24aによって連結され、中間扉体23と戸尻扉体22とは、上下端部にそれぞれ配置されるヒンジ部24bによって連結される。ヒンジ部24a,24bは、ギヤが噛合したギヤ構造を有する。開口部104を閉じた状態の折戸2において、ヒンジ部24aは、戸先扉体21と中間扉体23との間から室R1側に僅かに突出した位置に設けられ、ヒンジ部24bは、中間扉体23と戸尻扉体22との間から室R2側に僅かに突出した位置に設けられている。
戸先扉体21は、上端部に、後述するガイドレール3に沿って移動可能な吊車25を有する。吊車25は戸先側の吊部材であり、図5に示すように、本体部251の両側部に4つのローラ252を有し、戸先扉体21から上方に突出する第1回動軸253に対して回動可能に取り付けられている。第1回動軸253は、戸先扉体21における戸尻側の端部である中間扉体23側の端部に配置され、開閉操作時にガイドレール3に沿って移動する戸先扉体21の可動回動軸を構成する。図1及び図4に示すように、戸先扉体21の戸先側の両面には、それぞれ開閉操作用のハンドル211が取り付けられている。
戸尻扉体22は、上端部に、後述するガイドレール3に沿って移動可能な吊部材27を有する。吊部材27は、図6A及び図6Bに示すように、戸尻扉体22から上方に突出する第2回動軸273に対して回動可能に取り付けられている。第2回動軸273は、戸尻扉体22における中間扉体23と反対側の端部に配置されている。
本実施形態に示す戸尻側の吊部材27は、ローラを有しない点で、戸先扉体21に設けられる吊車25とは異なっている。詳しくは、吊部材27は、第2回動軸273に回動可能に取り付けられる本体部271と、本体部271の上面に取り付けられる固定金具272と、を有する。固定金具272は、吊部材27をガイドレール3に対して固定可能な固定部である。
本体部271は、吊車25と同じ幅を有し、吊車25と同様に、後述のガイドレール3内に収容される。本体部271の幅方向(即ち、図6Bにおける上下方向)の両端部には、ガイドレール3に対して摺動可能に嵌合する摺動部275,275が、上下方向にそれぞれ張り出すように設けられている。摺動部275,275は、吊部材27の長さ方向(即ち、図6A及び図6Bの左右方向)に延びている。摺動部275,275の上下の両端面275aは、吊部材27の長さ方向に沿って真っ直ぐに延びている。摺動部275,275の長さ方向の両端の角部275bは、それぞれ滑らかな円弧状に形成されている。
固定金具272は、吊部材27の長さ方向に細長い帯状の金属プレートからなり、本体部271の上面に、吊部材27の長さ方向の両端部にそれぞれ配置される一対のねじ274,274によって取り付けられている。固定金具272は、ねじ274,274によってそれぞれ固定される固定部位272a,272aと、固定部位272a,272a間に配置される中央部位272bと、戸先扉体21側(即ち、図6A及び図6Bの左側)に配置される固定部位272aよりも更に戸先扉体21側に延びる延出部位272cと、を有する。
固定金具272は、一対の固定部位272a,272aに対して、中央部位272b及び延出部位272cの方が上方に突出するように、屈曲形成されている。中央部位272b及び延出部位272cは、面一状に配置されている。延出部位272cには、吊部材27の長さ方向に長い長穴によって形成される2つのねじ挿通穴272d,272dが、直列状に設けられている。
戸尻扉体22は、下端部に、下方に突出可能に設けられる下部回動軸28を有する。下部回動軸28は、上端部の第2回動軸273と同軸状に配置され、下方に突出した状態において、床面FL上に固定される軸受部材29に対して回動可能に係合している。戸尻扉体22の第2回動軸273及び下部回動軸28は、戸尻扉体22の固定回動軸を構成する。
中間扉体23は、上端部に、後述するガイドレール3の溝部311dに対して摺動可能に係合する摺動体であるガイド円板26を有する。ガイド円板26は、図9に示すように、ガイドレール3の溝部311dの幅よりも大径に形成された大径部261と、この大径部261上に配置され、ガイドレール3の溝部311dの幅と略同一径に形成された小径部262と、を有し、中間扉体23における戸先側の端部である戸先扉体21側の端部の上面から上方に突出する第3回動軸263に同軸状に取り付けられている。この第3回動軸263は、開閉操作時にガイドレール3に沿って移動する中間扉体23の可動回動軸を構成する。
ガイドレール3は、開口部104の上部における室R1側に面する壁面100aに、上枠材101に対して平行に取り付けられている。壁面100aには、ガイドレール3の長さと同じ長さを有する断面矩形状の下地材4が、室R1側に面する側面4aから打ち込まれるねじSC1によって固定され、室R1に向けて突出している。
ガイドレール3は、下地材4を介して壁面100aに取り付けられることによって、壁面100aから離隔し、室R1側に大きく突出している。壁面100aに対するガイドレール3の離隔距離は、下地材4の大きさ、具体的には、下地材4の壁面100aからの突出高さによって規定される。下地材4の突出高さを適宜選定することにより、壁面100aに対するガイドレール3の離隔距離を所望の距離に調整することができる。
ガイドレール3が下地材4を介して壁面100aから離隔して設けられることによって、ガイドレール3によって上吊りされる折戸2も、壁面100aから離隔する。本実施形態における下地材4の壁面100aからの突出高さは、図4に示すように、折戸2の戸尻側の端部に配置される既設の縦枠材103の室R1側の端部103aと折戸2との間に、相互干渉を避ける間隙Gが形成されるように設定される。この間隙Gが形成されることによって、折戸2は壁面100aから離隔し、壁面100aとの間に間隙を有する。
ガイドレール3は、アルミニウム等の金属により押し出し成形されたガイドレール本体31と、ガイドレール本体31の外側を覆う樹脂カバー32と、ガイドレール3の長さ方向の両端部にそれぞれ取り付けられる樹脂キャップ33,33と、を有する。ガイドレール本体31及び樹脂カバー32は、上枠材101の長さよりも長尺に延びており、折戸2の幅に対応するガイドレール3の全長を規定している。
図7及び図8に示すように、ガイドレール本体31は、折戸2の吊車25及び吊部材27を収容する走行部311と、走行部311よりも壁面100a側に配置される第1の固定片312と、第1の固定片312の下端部から壁面100a側に向けて延びる第2の固定片313と、を一体に有する。図7は、ガイドレール本体31に折戸2の吊車25が収容された状態を示している。図7では、ガイドレール3の樹脂キャップ33、縦枠材102及び新設縦枠材105の図示を省略している。
走行部311は、それぞれガイドレール3の長さ方向に延びる上壁部311aと、上壁部311aの室R1側の端縁及び室R2側の端縁からそれぞれ垂下する一対の平行な側壁部311b,311bと、側壁部311b,311bの下端縁から互いに近接する方向にそれぞれ延びる一対のレール部311c,311cと、で構成され、内側に吊車25及び吊部材27の収容空間を形成する。
走行部311における吊車25及び吊部材27の収容空間は、幅方向(即ち、図7における左右方向)の中央部に凹部311fを有する。凹部311fは、上壁部311aの幅方向の中央部が上方に突出することによって形成され、走行部311の長さ方向に延びている。この凹部311fによって、走行部311における吊車25及び吊部材27の収容空間は、幅方向の中央部の高さが高く形成されている。
走行部311において、レール部311c,311c同士は離隔している。レール部311c,311cの間には溝部311dが形成されている。走行部311は、下面311eが上枠材101の上面101aと略同一面となるように、ガイドレール3における下方側に片寄って配置されている。
走行部311における室R1側に配置される側壁部311bには、室R1側に向けて略水平方向に突出する上部突出片314及び下部突出片315が一体に設けられている。上部突出片314及び下部突出片315は、後述する樹脂カバー32の取り付け部となる部位であり、走行部311から室R1側に向けて略同一の突出量で互いに平行に突出している。下部突出片315の先端は、上方に向けて直角に屈曲する立ち上がり部315aを有している。
第1の固定片312は、ガイドレール本体31を下地材4に対して固定するための固定部であり、下地材4の側面4aに対して平行に配置される。ガイドレール3の上下方向に沿う第1の固定片312の幅は、下地材4の側面4aと略同一幅に形成されている。第1の固定片312は、走行部311に対して下地材4側及び壁面100a側に離隔して配置され、走行部311の下面311eと同じ高さの位置から走行部311の高さの略倍の高さの位置まで、下地材4の側面4aに沿って上下方向に延びている。
第1の固定片312と走行部311とは、上部連結板316及び下部連結板317によって一体に連結されている。上部連結板316は、第1の固定片312の上下方向の中央部よりもやや上方寄りの部位から、走行部311の室R2側に配置される側壁部311bと上壁部311aとの連結部位にかけて、下り傾斜するように設けられている。下部連結板317は、走行部311の室R2側に配置される側壁部311bの下端部と第1の固定片312の下端部とを略水平に連結している。
第1の固定片312の上端部には、第1の固定片312に対して直交するとともに、下地材4の上面4bに対して平行に延びる上端片318が設けられている。上端片318は、第1の固定片312の上端部から室R2側に向けて延びる第1片部318aと、第1の固定片312の上端部から室R1側に向けて延びる第2片部318bと、で構成される。第1片部318aは、下地材4の上面4bに当接している。第2片部318bは、後述する樹脂カバー32の取り付け部を構成する。
第2の固定片313は、ガイドレール本体31を下地材4に対して固定するためのもう一つの固定部であり、第1の固定片312の下端部から、走行部311とは反対方向である室R2側に向けて、略水平方向に延びている。第2の固定片313は、第1の固定片312に対して直交し、且つ、下地材4の下面4cに対して平行に配置されている。第2の固定片313の見込み方向に沿う幅は、下地材4の下面4cの見込み方向に沿う幅と略同一である。見込み方向とは、開口部104を挟んで室R1と室R2とに亘る方向であり、図7における左右方向である。第2の固定片313は、下地材4の下面4cの全体を覆って目隠しするため、下面側から見たガイドレール3の意匠性も向上する。
ガイドレール本体31は、第1の固定片312を下地材4の側面4aに当接させるとともに、上端片318の第1片部318aと第2の固定片313とによって、下地材4を上下から挟むように下地材4に取り付けられる。上枠材101の上面101aにおける室R1側に張り出した部位と下地材4の下面4cとの間には、第2の固定片313の厚みに相当する隙間108が形成されている。第2の固定片313は、この隙間108内に挿入されている。
ガイドレール本体31が下地材4に対して取り付けられた後、第1の固定片312及び第2の固定片313が、固定部材であるねじSC2,SC3によってそれぞれ固定される。ねじSC2は、第1の固定片312における上部連結板316との連結部位よりも上方に配置される固定片上部312aに、壁面100aに対して垂直な方向から打ち込まれる。これによって、第1の固定片312は、下地材4の側面4aに対して固定される。ねじSC3は、第2の固定片313に、下方から上方に向けて打ち込まれる。これによって、第2の固定片313は、下地材4の下面4cに対して固定される。ねじSC2,SC3は、ガイドレール本体31の長さ方向に間隔をおいて、複数本ずつ設けられる。
このように、ガイドレール本体31は、互いに略直交する方向に打ち込まれるねじSC2,SC3によって、ガイドレール本体31の上部と下部とにおいて下地材4に対して固定される。これによって、ガイドレール本体31は、下地材4の壁面100aからの突出高さに応じた離隔距離で壁面100aから離隔して取り付けられる。ガイドレール本体31は、互いに直交する第1の固定片312と第2の固定片313とによって強固に固定されるため、耐荷重性が向上し。折戸2の荷重によって変形等を生じるおそれはない。ガイドレール本体31は、第1の固定片312及び第2の固定片313を含めて一体に押し出し形成されているため、第1の固定片312及び第2の固定片313にそれぞれねじSC2,SC3を打つだけで、走行部311を一体に有するガイドレール本体31を固定することができる。
ガイドレール本体31において、第2の固定片313と下部連結板317とは、両者間に間隙や溝部等が形成されることなく、面一状に連続している。そのため、ガイドレール本体31を下面から観察した場合、レール部311c、下部連結板317及び第2の固定片313は、見込み方向に沿って面一状に連続する平坦面を形成する。走行部311の下部と第1の固定片312及び第2の固定片313とが、下部連結板317によって略水平方向に一体化されるため、ガイドレール3における走行部311の支持構造が強化され、ガイドレール3の耐荷重性がより向上する。
樹脂カバー32は、図7に示すように、ガイドレール本体31の室R1側に面する前面側を覆う前面カバー部321と、ガイドレール本体31の上面側を覆う上面カバー部322と、を一体に有するL型に形成されている。
前面カバー部321は、ガイドレール本体31の第1の固定片312と平行に配置され、ガイドレール本体31の前面側を完全に覆い隠している。前面カバー部321の内面321aには、ガイドレール本体31の上部突出片314の位置に対応して、上部突出片314を室R1側から挟着する一対の挟着片324と、ガイドレール本体31の下部突出片315の位置に対応して、下部突出片315の下面側を室R1側から支持する支持片325と、が突設されている。
上面カバー部322は、ガイドレール本体31の第2の固定片313と平行に配置されている。上面カバー部322は、前面カバー部321の上端から壁面100a側に向けて延び、ガイドレール本体31から下地材4の上面4bに亘る略全体を覆い隠している。上面カバー部322の内面322aには、ガイドレール本体31の上端片318の第1片部318aを室R1側から挟着する挟着片323が設けられている。挟着片323は、上面カバー部322と平行に配置され、室R2側に向けて延びている。
樹脂カバー32は、下地材4に固定されたガイドレール本体31に対して、室R1側から着脱可能に取り付けられる。具体的には、前面カバー部321の挟着片324が、ガイドレール本体31の上部突出片314を上下から挟着するとともに、前面カバー部321の支持片325が、ガイドレール本体31の下部突出片315の下面側を支持する。挟着片324と支持片325とは、ガイドレール本体31の上部突出片314と下部突出片315とを挟持する。ガイドレール本体31の下部突出片315の立ち上がり部315aは、前面カバー部321の内面321aに当接し、前面カバー部321を安定して支持する。更に、上面カバー部322の挟着片323が、ガイドレール本体31の上端片318の第2片部318bを挟着する。
樹脂キャップ33,33は、ガイドレール本体31及び樹脂カバー32の両端面の形状に対応する矩形状に形成される。樹脂キャップ33,33は、図1~図4に示すように、下地材4を含むガイドレール本体31及び樹脂カバー32の両端面を覆い隠すように着脱可能に取り付けられる。
このようにして壁面100aにアウトセットされるガイドレール3に対して折戸2を取り付ける際は、少なくとも一方の樹脂キャップ33を取り付ける前のガイドレール本体31の走行部311に対して、図2及び図3に示すように、折戸2の吊車25及び吊部材27をスライドさせながら挿入するとともに、図9に示すように、ガイド円板26の小径部262を、走行部311のレール部311c,311c間の溝部311dに嵌合させる。吊車25のローラ252及び吊部材27の摺動部275は、一対のレール部311c,311c上に、それぞれ転動可能及び摺動可能に載置される。吊部材27の上面に配置される固定金具272は、図3及び図10に示すように、走行部311の凹部311f内に嵌り込むように配置される。
このようにしてガイドレール3に取り付けられる折戸2は、2つの吊車25及び吊部材27によって、ガイドレール3に上吊りされるため、ガイドレール3に掛かる折戸2の荷重は、吊車25及び吊部材27の2箇所に分散される。そのため、折戸2をガイドレール3に沿ってスムーズに開閉操作することができる。しかも、折戸2の戸尻側を上吊りする吊部材27は、走行部311に沿って移動可能であるため、折戸2を走行部311に沿って容易に移動させることが可能であり、折戸2の横方向の位置調整を容易に行うことができる。
吊部材27は固定金具272を有するため、折戸2の位置調整が完了した後、吊部材27を走行部311に固定することによって、戸尻扉体22をガイドレール3に沿って移動不能に固定することができる。詳しくは、図10に示すように、走行部311の凹部311f内に嵌り込むように配置される固定金具272の一対のねじ挿通穴272d,272dの位置を、上壁部311aに設けられた一対のねじ穴311g,311gの位置に合わせた後、固定金具272を、ガイドレール3の下方から挿入されるねじ276,276によって固定する。ねじ挿通穴272d,272dは長穴であるため、上壁部311aのねじ穴311g,311gに対する吊部材27の位置を、ねじ挿通穴272d,272dの長さの範囲で微調整することができる。
吊部材27が走行部311内に固定された後、戸尻扉体22の下部回動軸28を下方に突出させ、床面FL上の軸受部材29に係合させる。軸受部材29は、図11A及び図11Bに示すように、ベース板291と、ベース板291上に載置される軸受板292と、で構成される。
ベース板291は、開口部104の幅方向に細長い矩形状の板材からなり、軸受板292を収容するための2つの矩形穴部291a,291aと、1つの長穴部291bと、を有する。2つの矩形穴部291a,291aは、ベース板291の長さ方向に離隔して配置され、長穴部291bは、矩形穴部291a,291aの間に配置されている。長穴部291bは、一方の矩形穴部291aと繋がっている。長穴部291bと繋がっていない他方の矩形穴部291aと長穴部291bとの間には、上方に向けて凸となるねじ台座部291cが設けられている。2つの矩形穴部291a,291aよりも両端部側には、床面FLに対してねじ止めするための長穴からなるねじ穴291d,291dが設けられている。
軸受板292は、ベース板291よりも短尺であり、略矩形状の軸受板本体292aの幅方向の両端部に、脚部292b,292bをそれぞれ有する。脚部292b,292bは、軸受板本体292aの幅方向の両端部をベース板291に向けて略直角に折り曲げることによって形成され、軸受板292をベース板291の上面に支持する。軸受板本体292aの長さ方向の両端部には、嵌合部292c,292cが、ベース板291に向けて略直角に折り曲げられて形成されている。嵌合部292c,292cは、ベース板291の2つの矩形穴部291a,291aの幅に略等しい幅を有し、矩形穴部291a,291aにそれぞれ嵌合している。
軸受板本体292aは、戸尻扉体22の下部回動軸28を受け入れて係合させる軸受凹部292dを有する。軸受凹部292dは、軸受板本体292aからベース板291に向けて突出するように形成され、ベース板291の長穴部291b内に嵌合している。更に、軸受板本体292aは、ベース板291のねじ台座部291cに対応するねじ穴292eを有する。ねじ穴292eは、軸受板292の長さ方向に長い長穴からなる。
軸受板292は、ねじ穴292eに挿入されるねじ293によって、ベース板291のねじ台座部291cに固定される。ねじ穴291eは長穴であるため、軸受板292のベース板291に対する取り付け位置は、ベース板291の長さ方向に容易に調整可能である。このとき、軸受板292の嵌合部292c,292cは、ベース板291の矩形穴部291a,291a内で移動可能であり、軸受凹部292dは、ベース板291の長穴部291b内で移動可能である。従って、軸受部材29は、戸尻扉体22の下部回動軸28の係合位置を、吊部材27の固定位置に合わせて微調整することができる。
ガイドレール3に取り付けられた折戸2は、図4に示すように、折戸2の戸先扉体21、中間扉体23、戸尻扉体22を直列状に展開させることによって、開口部104を閉鎖する。戸先扉体21は、新設縦枠材105の見込み面に対向するように配置され、戸尻扉体22は、既設の縦枠材103を室R1側から覆うように配置される。ガイドレール3は、下地材4を介して壁面100aから室R1側に突出しているため、開口部104を閉鎖した折戸2は、壁面100aから離隔して配置される。そのため、室R1側に張り出すように設けられている縦枠材102,103と折戸2との干渉は容易に回避される。下地材4を使用してガイドレール3を取り付けることによって、壁面100aからの折戸2の離隔の程度、即ち、縦枠材102,103との干渉回避の程度を容易に調整することができる。ガイドレール3を壁面100aから離隔させることによって生じる折戸2の戸先扉体21と縦枠材102との間の隙間は、新設縦枠材105によって塞がれる。折戸2の戸尻扉体22と壁面100aとの間の隙間は、スペーサ材107によって塞がれる。
折戸2の開放動作は次のようにして行われる。折戸2のハンドル211を室R1側に向けて操作すると、図12Aに示すように、戸先扉体21が、可動回動軸を構成する吊車25の第1回動軸253を中心に室R1側に回動する。戸先扉体21の回動動作は、ヒンジ部24aを介して中間扉体23に伝達され、中間扉体23も、可動回動軸を構成する第3回動軸263を中心に室R1側に回動する。これによって、戸先扉体21と中間扉体23とが、室R1側に突出するように折り畳まれ始める。更に、中間扉体23の回動動作は、ヒンジ部24bを介して戸尻扉体22に伝達され、戸尻扉体22も、第2回動軸273及び下部回動軸28を中心に室R1側に回動する。これによって、中間扉体23と戸尻扉体22とが、室R1側に突出するように折り畳まれ始める。
吊部材27がガイドレール3の走行部311に固定されることによって、戸尻扉体22の第2回動軸273及び下部回動軸28は固定回動軸を構成する。そのため、戸尻扉体22の第2回動軸273及び下部回動軸28のガイドレール3に対する位置は不動である。従って、戸先扉体21は、吊車により構成される吊車25が走行部311内を戸尻側に向けて走行することによって、第1回動軸253を中心に回動しながら戸尻扉体22に向けて移動する。これに伴い、中間扉体23は、ガイド円板26が溝部311dを戸尻側に向けて摺動することによって、第3回動軸263を中心に回動しながら戸尻扉体22に向けて移動する。その結果、図12Bに示すように、戸先扉体21、戸尻扉体22及び中間扉体23は、互いに平行に重なり合うように折り畳まれ、開口部104を開放する。このとき、戸先扉体21と中間扉体23のそれぞれの可動回動軸である第1回動軸253及び第3回動軸263は、互いに近接する側の端部に配置されるため、図12Bに示すように、開口部104を開放した折戸2は、ガイドレール3から室R1側に向けて突出するように折り畳まれ、室R2側に大きく突出することはない。
開口部104を開放した折戸2は、室R2側に大きく突出することはないため、開口部104に対するガイドレール3の長さ、折戸2の各扉体の大きさ、ストッパの位置等を適宜調整することにより、図12Cに示すように、折戸2の全開時に、折り畳まれた折戸2が開口部104の開口幅内に重ならないようにすることも可能である。これによれば、折戸2の全開時に開口部104を最大限有効に活用できるため、例えば車いす、介護ベッド等の移動も容易に行える。
図7に示すように、ガイドレール3は、走行部311の下面311eから上枠材101の室R1側に面する側面101bに亘って略水平な平坦面を有するため、折戸2と上枠材101の側面101bとの間の空間Wには、ガイドレール3から下方に突出するものが何も存在していない。そのため、戸先扉体21、戸尻扉体22及び中間扉体23の回動軌道が、ガイドレール3と干渉することはない。その結果、折戸2とガイドレール3との間を可及的に近接させて両者間の隙間を小さくすることが可能であり、隙間からガイドレール3の固定部が視認されにくくなり、折戸装置1の意匠性も向上する。
折戸2の戸尻扉体22に設けられる吊部材27は、走行部311に対して固定されなくてもよい。この場合、固定金具272は、必ずしも設けられなくてもよく、戸尻扉体22の下部回動軸28も不要であるため、戸尻扉体22内に収納される。走行部311に対して固定されない吊部材27は、ガイドレール3に沿って摺動可能であるため、例えば、図12Bに示すように折戸2を折り畳んだ後、折戸2の全体を縦枠材102側に移動させることが可能である。ガイドレール3を戸尻側に更に延長させれば、折り畳んだ折戸2をガイドレール3の延長部分に移動させることによって、開口部104を更に大きく開放させることも可能である。吊部材27は、ローラ252によって走行部311内をスムーズに転動する戸先扉体21の吊車25に比べると、摺動部275とレール部311c,311cとが面接触し、折戸2の荷重によるレール部311c,311cとの摩擦が大きいため、走行部311内を移動しにくい。そのため、吊部材27は、走行部311に対して固定されなくても、折戸2の開閉操作に支障が生じるおそれは少ない。
吊部材27は、戸先扉体21の吊車25と同様の吊車によって構成されてもよい。戸尻扉体22をガイドレール3に沿って、よりスムーズに移動させることができるため、折戸2の位置調整もよりスムーズに行うことができる。吊車は、固定金具272と同様の固定金具によって、走行部311に対して固定することができる。
以上の実施形態では、一方の室R1側から折戸2によって開口部104を覆うようにアウトセットされる折戸装置1について説明したが、図13に示すように、折戸装置1は、左右の縦枠材102,103の内側に折戸2が完全に納められるようにインセットされてもよい。また、図14に示すように、壁部100の開口部104に隣接して引き戸収容用の凹部109が設けられている場合は、例えば折戸2の戸先側が、縦枠材102の内側に納められるようにインセットされ、折戸2の戸尻側が、凹部109内に納められるようにアウトセットされてもよい。
更に、以上の実施形態では、開口部104を形成する既設枠を取り外すことなく、折戸2を開口部104にアウトセットするように構成される折戸装置1を例示した。しかし、折戸装置1は、リフォームの際に開口部104を形成する既設枠の一部又は全部を取り外して折戸2をアウトセットしてもよいし、新築の建物の開口部にも取り付け可能である。
折戸装置1に使用される折戸2は、少なくとも戸先扉体21及び戸尻扉体22を有していればよく、3枚の扉体によって構成されるものに限定されない。