JP7323857B1 - 鋼管、鋼管群、パイプライン、及び鋼管製造方法 - Google Patents

鋼管、鋼管群、パイプライン、及び鋼管製造方法 Download PDF

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Abstract

機械加工され、圧子押し込み法の測定跡である圧痕を有する管端面と、圧痕の位置の降伏強度に対応する降伏強度情報が付与された、外周面及び内周面の少なくとも一方と、を備える鋼管を提供する。また、この鋼管が、複数本、区画内に配置された鋼管群を提供する。また、前記鋼管を、複数本、互いに周溶接で接合したパイプラインであって、連結方向の各鋼管同士における降伏強度の差が65MPa以下であるパイプラインを提供する。さらに、機械加工された管端面を有する鋼管を準備する準備工程と、圧子押し込み法により管端面で荷重-変位特性を測定する測定工程と、測定工程で測定した荷重-変位特性に基づいて降伏強度を得る取得工程と、取得工程で得た降伏強度に関する降伏強度情報を、鋼管の外周面及び内周面の少なくとも一方に表示する表示工程とを含む鋼管製造方法を、提供する。

Description

本発明は、鋼管、鋼管群、パイプライン、及び鋼管製造方法に関する。
本願は、2022年2月7日に、日本国に出願された特願2022-016940号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
天然ガスや原油は、パイプラインで輸送される。この種のパイプラインは、海底に敷設される場合と、陸上に敷設される場合とがある。
例えばパイプラインを海底に敷設する場合、その手法には様々なものがあり、そのうちの一つに、コストの削減に優位なRレイ(Reel lay)法がある。Rレイ法では、陸上のスプールベースと呼ばれる基地において、複数本の鋼管の各管端面同士が周溶接で接合される。これにより、各鋼管同士が直線状に連結され、パイプラインの一部が形成される。
鋼管の1本あたりの長さは約12mであり、Rレイ法では100本近くの鋼管が接合されて総延長が1kmを超える。この接合された鋼管は、運搬のために、直径15m程度のドラムに巻き付けられる。ドラムに巻き付けられた鋼管には、長手方向(ドラムの円周方向)に沿って約12m間隔で周溶接部が配置されることになる。
接合された鋼管を巻き付けたドラムは、レイバージ船と呼ばれる、パイプラインを敷設するための船に運ばれる。洋上において、船上のドラムに巻き付けられた鋼管は、ドラムから巻き解かれて、海に沈められる。これにより、海底にパイプラインが敷設される。このようなRレイ法を用いれば、設備の整った陸上で鋼管同士を周溶接して各鋼管同士を連結できるため、船上で鋼管を接合する手法に比べ、洋上での溶接作業が減り、効率的で信頼性の高い敷設作業を行うことができる。
Rレイ法では、パイプラインは、陸上ではドラムに巻き付けられ、また、洋上ではドラムから巻き解かれてまっすぐに伸ばされる。また、トラブル発生時には、パイプラインが、洋上でドラムに再度巻き付けられ、その後にドラムから再度巻き解かれる。このため、Rレイ法では、ドラムに対するパイプラインの巻き付け及び巻き解きが、最大で5回行われた場合であっても、パイプラインに座屈及び破断が生じないことが要求される。パイプラインの巻き付け及び巻き解きのとき、鋼管の表面(外周面)に、曲げによる軸方向の引張及び圧縮の塑性歪みが発生する。このときに発生する塑性歪みの大きさは、管径(外径)の大きさに比例する。150mm~500mmの実用的な管径を持つ鋼管では、1%~3%の引張及び圧縮の歪みが鋼管に対して繰り返し付与される。
一方、陸上に敷設されるパイプラインも、同様に、引張歪み及び圧縮歪みが繰り返し付与される場合がある。その一例として、不連続永久凍土地帯や地すべり地帯に敷設される長距離ガスパイプラインが挙げられる。例えば不連続永久凍土地帯では、土壌の凍結及び融解が1年ごとに繰り返されるので、これに伴って鋼管には、軸方向に沿って2%程度の引張歪み及び圧縮歪みが繰り返し付与される。
以上に説明したように、Rレイ法を用いて海底にパイプラインを敷設する場合、及び、不連続永久凍土地帯にパイプラインを敷設する場合の何れにおいても、パイプラインの軸方向に沿った引張及び圧縮の塑性歪みが鋼管に対して繰り返し付与される。従来から、このような状況下においてパイプラインの健全性を保つための技術が求められている。
このような要望に対し、例えば特許文献1には、パイプライン及びその製造方法が開示されている。具体的には、複数の鋼管の端部同士が溶接によって接合された複数の溶接部を有するパイプラインが開示されている。そして、互いに溶接された一方の鋼管の降伏強度と他方の鋼管の降伏強度との差と、前記一方の鋼管及び前記他方の鋼管のうち、前記降伏強度が低い方の鋼管の引張強度に対する前記降伏強度の比である降伏比とが、所定の数式を満たすように制御している。このパイプライン及びその製造方法によれば、鋼管の変形特性を十分に発揮させるパイプラインを提供できると記載されている。
また、特許文献2には、複数本の電縫鋼管が軸方向に周溶接部を介して接合されてなるリール工法用鋼管が開示されている。この特許文献2では、電縫鋼管のシーム位置を管断面0時の位置として、電縫鋼管の管断面が管軸周りに12等分されてそれぞれを時計回りに順に管断面0時から11時の各位置としたとき、隣り合う一方の電縫鋼管の管断面0時の位置に、隣り合う他方の電縫鋼管の管断面2時の位置から管断面4時の位置の範囲又は管断面8時の位置から管断面10時の位置の範囲が相対して接合されている。特許文献2には、上記のように、互いに隣り合う各電縫鋼管同士のシーム位置を相対的にずらして各電縫鋼管同士を接合することで、長尺鋼管をリールに巻き付けた際に管断面0時の位置(又は管断面6時の位置)が、リール巻付けした際の内周側又は外周側に位置しても、発生する軸方向歪みが小さくなり、局所的な座屈及び破断が発生しにくくなる、と記載されている。
また、非特許文献1には、軸方向の引張及び圧縮の塑性歪みが繰り返し付与されるパイプラインにおいて、接合する鋼管同士の降伏強度差を抑えることにより、周溶接部近傍での座屈を防止できると記載されている。
国際公開第2013/111902号 国際公開第2020/067064号
Eiji Tsuru、他4名、「Reeling Capability of Non-Heat-Treated ERW Line Pipes in R-lay」、2013、ISOPE-I-13-548
パイプラインをその長手方向に沿って見た場合、鋼管同士を接合する周溶接部近傍がパイプラインの最脆弱部であるため、パイプラインの軸方向に引張及び圧縮の塑性歪みが繰り返し付与されるとき、周溶接部近傍に座屈が発生する恐れがある。したがって、パイプラインの健全性を保つためには、周溶接部近傍の座屈を防止することが重要である。
ここで、上記特許文献1に記載のパイプライン及びその製造方法によれば、鋼管の変形特性を十分に発揮させるパイプラインを提供できると説明されているものの、その一方で、全ての鋼管の降伏強度を測定することが困難であることも認識している。そのため、全数測定の代案として、製造番号が近い鋼管同士を選んで溶接することを提案している。
また、上記特許文献2に記載された技術は、リールに巻き付けられた鋼管の内側周側及び外周側に発生する局所的な座屈及び破断に着目しているが、周溶接部近傍での座屈を防止するものではない。
また、上記非特許文献1には、接合する各鋼管同士の降伏強度差を抑えることが開示されているものの、全ての鋼管の降伏強度情報を測定することが困難であるという観点においては、上記特許文献1と同様である。
上記従来技術より分かるように、接合する鋼管同士の降伏強度差を抑えるためには、接続する全ての鋼管の降伏強度に関する情報が必要である。通常、降伏強度の値は、材質試験により測定されたロット毎(例えば、同一製造単位毎)の代表値が用いられる。つまり、多数本の鋼管に対して一つの降伏強度値が代表値として割り当てられる。
しかしながら、この降伏強度値はあくまでも1ロットの代表値であるので、各鋼管それぞれが個別に持つ実際の降伏強度値とは異なる場合がある。各鋼管の正確な降伏強度を測定するためには、当然ながら、全ての鋼管それぞれに対して個別に引張試験を行う必要がある。この場合、引張試験を行うためにコストが上昇する上に、試験片採取のために歩留まりが低下する。
ここで、1本の鋼管に対して行われる引張試験の手順を説明しておく。引張試験では、鋼管の片端からの試験片切り出しと、試験片加工と、降伏強度の実測とが行われる。
まず、試験片切り出しでは、例えば12m+0.5mの長さを持つ鋼管を準備する。そして、この鋼管の管端から約0.5mの長さ部分を切り取ってこれを試験片として用いる。この試験片は、鋼管の全長12mの約4%に相当するが、降伏強度の測定のみに用いられ、実製品としては用いられない。
続く試験片加工では、切り出した試験片に対して旋盤やフライスなどの機械加工を行うことにより、実測に適した状態に前加工する。
そして、実測では、引張試験を行うことにより、降伏強度の実測値が求められる。
以上説明の試験片取り出しから実測までの全工程に掛かる作業期間は、おおよそ20日間程度になるため、これを多数本の鋼管の全てに対して実施することは現実的ではない。加えて、全ての鋼管から4%ずつの歩留まりロスが発生することにもなるので、コスト面でも実施が難しいものとなっている。コストについて具体的に説明すると、鋼管1本の引張試験を行う場合の費用として、まずガス切断に5000円、試験片加工に5000円、そして引張試験に5000円が費やされる。加えて、試験期間として2週間を要する。当然ながら、これら試験費用及び試験期間は、鋼管本数に比例して増していくため、全数に対して実施することは容易ではない。
さらに言うと、同一長を持つパイプライン等の長尺構造物を製造する場合、試験片の切り出しを行う場合は試験片の切り出しによって鋼管1本あたりの長さが短くなるため、切り出しが無い場合よりも全長における溶接箇所の数が必然的に多くなる。よって、溶接作業に伴うコストが増すことになる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、複数本の鋼管を接続してパイプライン等の長尺構造物を得る際に各鋼管同士の周溶接部近傍での座屈の抑制を最終目的とし、その最終目的を実現させるために必要な降伏強度情報が個別に付与された鋼管及び鋼管群を簡易かつ歩留まり良く提供することを課題とする。また、この鋼管群によって製造されたパイプラインの提供も課題とする。さらには、降伏強度情報が個別に付与された鋼管を簡易かつ歩留まり良く得るための鋼管製造方法の提供も課題とする。
上記各課題を達成するために、本発明は以下の各態様を採用した。
(1)すなわち、本発明の一態様に係る鋼管は、
機械加工され、圧子押し込み法の測定跡である圧痕を有する管端面と、
前記圧痕の位置の降伏強度に対応する降伏強度情報が付与された、外周面及び内周面の少なくとも一方と、
を備える。
上記(1)に記載の鋼管によれば、複数本の鋼管を接合してパイプライン等の長尺構造物を得る際に、鋼管の外周面及び内周面の少なくとも一方に付与された降伏強度情報を参照する。そして、降伏強度が互いに近い鋼管同士を選び、それぞれの管端同士を突き合わせて周溶接によって接合する。これにより、互いに接合する各鋼管間の降伏強度差を確実に低く抑えることができるので、各鋼管同士の周溶接部近傍における座屈発生を抑制できる。
(2)上記(1)に記載の鋼管において、以下の構成を採用してもよい:
前記降伏強度情報が、
前記降伏強度の数値表示、
前記降伏強度の数値が該当する区分を示す区分表示、
前記降伏強度の数値が該当する区分を示すカラー表示、
前記降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示、
のうちの少なくとも一つを含む。
上記(2)に記載の鋼管の場合、降伏強度情報が、降伏強度の数値表示である場合には、この数値表示が互いに同じかまたは近い鋼管同士を選んで接合する。あるいは、降伏強度情報が、降伏強度の数値が該当する区分を示す区分表示である場合には、この区分に紐付けられた降伏強度の数値が互いに同じかまたは近い鋼管同士(同じ区分表示又は近い区分表示の鋼管同士)を選んで接合する。あるいは、降伏強度情報が、降伏強度毎に色分けされたカラー表示である場合には、この色分けに紐付けられた降伏強度の数値が互いに同じかまたは近い鋼管同士(同じカラー表示か又は近いカラー表示の鋼管同士)を選んで接合する。あるいは、降伏強度情報が、降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示である場合には、この製品番号表示に紐付けられた降伏強度の数値が互いに同じかまたは近い鋼管同士を選んで接合する。
(3)また、本発明の一態様に係る鋼管群は、
区画内に配置された複数本の鋼管の全てが、上記(1)又は上記(2)に記載の鋼管である。
上記(3)に記載の鋼管群によれば、鋼管群から複数本の鋼管を接続してパイプライン等の長尺構造物を得る際、鋼管の外周面及び内周面の少なくとも一方に付与された降伏強度情報を参照する。そして、降伏強度が互いに同じかまたは近い鋼管同士を選び、それぞれの管端同士を突き合わせて周溶接により接合する。これにより、互いに隣り合う鋼管間の降伏強度差を確実に低く抑えることができるので、各鋼管同士の周溶接部近傍における座屈発生を抑制できる。
(4)上記(3)に記載の鋼管群において、
各前記鋼管が、前記区画内に、前記降伏強度情報に応じて区分けして配置されていてもよい。
上記(4)に記載の鋼管群の場合、区画内から鋼管を取り出す際、区分けを参照することにより、降伏強度差が低い鋼管同士を選ぶことができる。
(5)また、本発明の一態様に係るパイプラインは、
上記(1)~(4)の何れか1項に記載の鋼管が、複数本、互いに周溶接で接合されたパイプラインであって、
連結方向において互いに隣り合う各前記鋼管同士における前記降伏強度の差が、65MPa以下である。
上記(5)に記載のパイプラインによれば、連結方向において互いに隣り合う各鋼管同士における降伏強度の差が小さく抑えられているので、各鋼管同士の周溶接部近傍における座屈発生を抑制できる。
(6)また、本発明の一態様に係る鋼管製造方法は、
機械加工された管端面を有する鋼管を準備する準備工程と、
圧子押し込み法により前記管端面で荷重-変位特性を測定する測定工程と、
前記測定工程で測定した前記荷重-変位特性に基づいて降伏強度を得る取得工程と、
前記取得工程で得た前記降伏強度に関する降伏強度情報を、前記鋼管の外周面及び内周面の少なくとも一方に表示する表示工程と、
を含む。
上記(6)に記載の鋼管製造方法によれば、測定工程、取得工程、表示工程を行うことによって、個別の降伏強度情報が表示された鋼管を製造することができる。したがって、複数本の鋼管を接合してパイプライン等の長尺構造物を得る際には、降伏強度情報を参照することで降伏強度が互いに同じかまたは近い鋼管同士を選ぶことができる。そして、選んだ各鋼管それぞれの管端同士を互いに突き合わせて周溶接で接合する。これにより、互いに隣り合う鋼管間の降伏強度差を確実に低く抑えられるので、各鋼管同士の周溶接部近傍における座屈発生を抑制できる。
(7)上記(6)に記載の鋼管製造方法において、
前記表示工程で、前記降伏強度情報として、
前記降伏強度の数値表示、
前記降伏強度の数値が該当する区分を示す区分表示、
前記降伏強度の数値が該当する区分を示すカラー表示、
前記降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示、
のうちの少なくとも一つを表示してもよい。
上記(7)に記載の鋼管製造方法の場合、降伏強度情報が、降伏強度の数値表示である場合には、この数値表示が互いに同じかまたは近い鋼管同士を選んで接合する。あるいは、降伏強度情報が、降伏強度の数値が該当する区分を示す区分表示である場合には、この区分に紐付けられた降伏強度の数値が互いに同じかまたは近い鋼管同士(同じ区分表示又は近い区分表示の鋼管同士)を選んで接合する。あるいは、降伏強度情報が、降伏強度毎に色分けされたカラー表示である場合には、この色分けに紐付けられた降伏強度の数値が互いに同じかまたは近い鋼管同士(同じカラー表示か又は近いカラー表示の鋼管同士)を選んで接合する。あるいは、降伏強度情報が、降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示である場合には、この製品番号表示に紐付けられた降伏強度の数値が互いに同じかまたは近い鋼管同士を選んで接合する。
本発明の上記態様に係る鋼管及び鋼管群によれば、複数本の鋼管を接続してパイプライン等の長尺構造物を得る際、各鋼管同士の周溶接部近傍における座屈発生を抑制できる。加えて、機械加工された管端面に対して圧子押し込み法を適用した測定結果に基づく降伏強度情報を有するため、降伏強度が簡易かつ歩留まりよく付与された鋼管及び鋼管群となっている。
また、上記態様に係るパイプラインにおいても、同様に、各鋼管同士の周溶接部近傍における座屈発生を抑制することができる。
さらに、上記態様に係る鋼管製造方法によれば、複数本の鋼管を接続してパイプライン等の長尺構造物を得る際に、各鋼管同士の周溶接部近傍における座屈発生を抑制するために必要な降伏強度情報が個別に付与された鋼管を製造することができる。加えて、機械加工された管端面に対して圧子押し込み法を適用した測定結果に基づいて降伏強度情報を鋼管に付与するため、降伏強度が簡易かつ歩留まりよく付与された鋼管を製造できる。
鋼管Aについての検証結果を示すグラフである。 鋼管Aについての検証結果を示すグラフである。 鋼管Aについての検証結果を示すグラフである。 鋼管Bについての検証結果を示すグラフである。 鋼管Cについての検証結果を示すグラフである。 鋼管Cについての検証結果を示すグラフである。 鋼管Dについての検証結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る鋼管の断面図である。 同実施形態に係るパイプラインの断面図である。 同実施形態に係る鋼管の製造方法を示すフロー図である。 同実施形態における圧子押し込み試験の様子を示す模式図である。 同実施形態における圧子押し込み試験の様子を示す模式図であって、図11のP部の拡大断面図である。 同実施形態における圧子押し込み試験の測定点の例を示す模式図である。 開先の形状毎に圧子押し込み方向を矢印で示した図であって、図11のP部に相当する部分の拡大断面図である。(a)は、管端に機械加工を施して平坦化したまま(開先未加工)の状態を示す。(b)は、(a)に対してV字開先を形成した場合を示す。(c)は、(a)に対してU字開先を形成した場合を示す。(d)は、(a)に対してX字開先を形成した場合を示す。 (a)は、スプールベースに配置された鋼管群における降伏強度とその本数分布との関係を示すグラフであり、横軸が降伏強度で縦軸がその降伏強度における本数を示す。(b)は、(a)に示すスプールベースから鋼管を取り出して接続したパイプラインの一例を示す。 鋼管Aの試験結果を示す図である。 鋼管Bの試験結果を示す図である。 鋼管Cの試験結果を示す図である。 鋼管Dの試験結果を示す図である。 第2実施例の試験結果を示す図である。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ね、歩留まりを落とさずに鋼管の降伏強度を測定する方法として圧子押し込み法(Instrumented Indentation Test)に着目した。そこで、本発明者は、圧子押し込み法を用いて鋼管の機械加工された管端面で測定した荷重-変位特性に基づいて算出した降伏強度の妥当性を検証した。具体的には、圧子押し込み法の結果から算出した降伏強度を、実際に引張試験を行って測定した降伏強度と比較した。なお、圧子押し込み法を用いた降伏強度の測定方法及び算出方法の説明は、後述する。まず先に、引張試験で求めた降伏強度と圧子押し込み法を用いて求めた降伏強度とを比べることで、圧子押し込み法を用いて求めた降伏強度の妥当性を調べた検証について説明する。以下に、その検証条件及び検証結果について述べる。
本検証では、下記鋼管A~Dを用いた。
鋼管Aは、成形後に熱処理を施したERW鋼管(電縫鋼管:Electric Resistance Welded steel pipe)であった。鋼管Aのサイズは、外径323.9mm、肉厚14.3mmであった。
鋼管Bは、成形ままのERW鋼管であった。鋼管Bのサイズは、外径457.2mm、肉厚20.3mmであった。
鋼管Cは、成形ままのUO鋼管であった。鋼管Cのサイズは、外径508mm、肉厚22.2mmであった。
鋼管Dは、成形後に時効処理を施したUO鋼管であった。鋼管Dのサイズは、鋼管Cと同じく、外径508mm、肉厚22.2mmであった。鋼管Dに施した時効処理は、耐食性向上のために鋼管表面をコーティングするためのものである。
鋼管A~Dの降伏強度は、いずれも400MPa~450MPaの範囲内であった。鋼管A~Dのいずれも、鋼管同士を周溶接により接合することを仮定して、管端面に機械加工を施して平坦にした。
鋼管A~Dのそれぞれの管端面(機械加工面)に対して圧子押し込み試験を行った。圧子押し込み試験では、鋼管の肉厚をtとしたとき、厚み方向において、管端面のうち鋼管の外周面の位置を基準とし、この外周面から中心軸線に向かう方向の距離がt/4、t/2、及び3t/4となる位置のうち少なくとも一箇所に対して圧子(Indentation Indenter)を押し込み、降伏強度を測定した。また、鋼管A~Dの各管端面のうち、圧子を押し込む位置の近傍から直径3mmの丸棒引張試験片を採取した。そして、各丸棒引張試験片のそれぞれに対して引張試験を行い、降伏強度を測定した。さらに、圧子を押し込む位置と同一母線上で全厚引張試験片を採取した。そして、各全厚引張試験片のそれぞれに対して引張試験を行い、降伏強度を測定した。
なお、全厚引張試験は、全厚の平均的な値の採取を目的とするものであり、具体的には、出荷試験等で行われる。
ERW鋼管である鋼管A及び鋼管Bについて、それぞれ10本の異なる鋼管の管端面の周方向1箇所又は2箇所以上から試験片を採取した。
また、UO鋼管である鋼管C及び鋼管Dについて、1本の鋼管の管端面の周方向1箇所又は2箇所以上から複数の試験片を採取した。
図1~図3は、鋼管Aについての検証結果を示すグラフである。
図1は、鋼管Aに対して、圧子押し込み法を用いて算出した応力-歪み曲線(以下、SS曲線とも言う。)と、丸棒引張試験を行って測定したSS曲線との対比を示している。図1において、横軸が歪みで縦軸が応力を示す。図1より明らかなように、歪み(横軸)の全領域において、圧子押し込み法による応力の算出結果(縦軸)が、丸棒引張試験による応力の測定結果(縦軸)に対してよく一致していることが確認された。
図2は、鋼管Aに対して、圧子押し込み法を用いて算出した降伏強度と、丸棒引張試験を行って測定した降伏強度との関係を示す。
図3では、圧子押し込み法を用いて算出した降伏強度と、全厚引張試験を行って測定した降伏強度との関係を示す。すなわち、t/4,t/2,3t/4の各位置における圧子押し込み試験の結果の加重平均値と、全厚引張試験での値との比較である。
図2及び図3から明らかなように、鋼管Aにおいて、丸棒引張試験により測定した降伏強度と、全厚引張試験により測定した降伏強度は、いずれも、圧子押し込み法を用いて算出した降伏強度と正の相関を示した。
図4は、鋼管Bについての検証結果を示すグラフである。図4では、鋼管Bに対して、圧子押し込み法を用いて算出した降伏強度と、丸棒引張試験を行って測定した降伏強度との関係を示す。
図5及び図6は、鋼管Cについての検証結果を示すグラフである。
図5では、圧子押し込み法を用いて算出したSS曲線と、全厚引張試験を行って測定したSS曲線とを示す。
図6では、鋼管Cに対して、圧子押し込み法を用いて算出した降伏強度と、全厚引張試験を行って測定した降伏強度との関係を示す。すなわち、t/4,t/2,3t/4の各位置における圧子押し込み試験の結果の加重平均値と、全厚引張試験での値との比較である。ここで、図5のように応力歪み曲線で降伏伸びが見られない場合の降伏強度は、0.2%オフセット耐力として求めた。
図7は、鋼管Dについての検証結果を示すグラフである。図7は、鋼管Dに対して、圧子押し込み法を用いて算出した降伏強度と、全厚引張試験を行って測定した降伏強度との関係を示す。すなわち、t/4,t/2,3t/4の各位置における圧子押し込み試験の結果の加重平均値と、全厚試験での値との比較である。
図4~図7に示す結果から、鋼管B~Dにおいても、丸棒引張試験又は全厚引張試験を行って測定した降伏強度は、圧子押し込み法を用いて算出した降伏強度と正の相関を示した。
なお、一般に、鋼管Dは時効処理により熱的影響を受けるため、時効処理を行わない場合(例えば、鋼管C)と比較してSS曲線の形状が変化し、降伏強度が上昇する。しかしながら、図7に示されるように、時効処理により熱的影響を受けたとしても、全厚引張試験を行い測定した降伏強度は、圧子押し込み法を用いて算出した降伏強度と正の相関を示す。よって、時効処理をする鋼管に対して、圧子押し込み試験を行う場合、時効処理前後のどちらで試験を行うかを統一しておけば、時効処理前に圧子押し込み試験を行ってもよいし、時効処理後に圧子押し込み試験を行ってもよい。
以上の結果より、圧子押し込み法によって得られた降伏強度の値は、引張試験で実測した降伏強度の値とほとんど一致することを実証できた。
本発明の実施形態およびその変形例に係る鋼管、鋼管群、パイプライン、鋼管製造方法は、本発明者が上記の知見に基づいてさらに検討を重ね、完成させたものである。その詳細を説明する前に、骨子を以下に纏めておく。
<第1の形態>
本実施形態に係る鋼管製造方法は、準備工程と、測定工程と、取得工程と、表示工程と、を備える。なお、以下の説明では、取得工程を算出工程と呼ぶ場合がある。
準備工程では、機械加工された平坦な管端面を有する鋼管を準備する。続く測定工程では、圧子押し込み法を用いて鋼管の管端面で荷重-変位特性を測定する。続く算出工程では、測定工程で測定した荷重-変位特性に基づいて降伏強度を算出する。続く表示工程では、算出工程で算出した降伏強度に関する情報(以下、降伏強度情報と呼ぶ)を鋼管の外周面及び内周面の少なくとも一方に表示する。前記準備工程と、前記測定工程と、前記算出工程と、前記表示工程とを備える製造方法によって、降伏強度情報が付与された鋼管を得る形態を、以下、第1の形態と称する。
この第1の形態の製造方法では、測定工程において、鋼管の管端面に対して圧子押し込み法を用いて荷重-変位特性を測定し、その荷重-変位特性に基づいて算出工程で各鋼管の降伏強度を算出する。この降伏強度の値は、上述した通り、引張試験で実測した降伏強度の値とほとんど一致する。第1の形態の製造方法では、表示工程において、算出工程で算出した降伏強度情報を鋼管の外周面及び内周面の少なくとも一方に表示する。そのため、このようにして得られた複数本の鋼管同士を接合する際、作業者は、表示された降伏強度情報を確認すれば、接合する各鋼管同士における降伏強度差が小さくなる組み合わせの鋼管を選択することができる。これにより、溶接によって鋼管同士を連結してパイプラインを製造する際に、各鋼管同士の周溶接部近傍での座屈発生を抑制できる。また、圧子押し込み法は、鋼管の、平坦に機械加工された管端面を追加加工無しで利用できるため、鋼管から試験片を採取する必要がなく、簡易かつ短時間でしかも低コストに降伏強度情報を得ることができる。したがって、本第1の形態の鋼管製造方法によれば、各鋼管同士の周溶接部近傍での座屈発生を抑制できるパイプラインの製造に適した鋼管を、簡易かつ歩留まり良く製造できる。
<第2の形態>
本第2の形態では、表示工程で表示する情報を、算出工程で算出した降伏強度の値そのものとしている。その他については上記第1の形態と同様であるので、ここではその重複説明を省略する。
本第2の形態の製造方法では、表示工程において、算出工程で算出した降伏強度の値そのものを、鋼管の外周面及び内周面の少なくとも一方に表記する。そのため、鋼管を接合する際、作業者は、表記された降伏強度の数値を確認すれば、降伏強度差がより小さくなる鋼管同士の組み合わせを選択することができる。そのため、適切な鋼管の選択を具体的な数値で行える。
<第3の形態>
本第3の形態では、表示工程で表示する情報を、算出工程で算出した降伏強度の値が含まれる降伏強度レベルに対応する標識としている。その他については上記第1の形態と同様であるので、ここではその重複説明を省略する。
本第3の形態の製造方法では、表示工程において、算出工程で算出した降伏強度の値が含まれる降伏強度レベルに対応する標識を、鋼管の外周面及び内周面の少なくとも一方に表示する。この標識は、所定の範囲毎に区分された、降伏強度のレベルを示す。要するに、このような標識を複数本の鋼管それぞれに表示することにより、各鋼管が降伏強度の値に応じて分類される。これにより、鋼管を接合する際、作業者は、表示された標識を確認すれば、降伏強度差が小さくなるような鋼管同士の組み合わせを簡単に選択することができる。そのため、適切な鋼管の選択をより簡便に行える。
<第4の形態>
本形態に係る鋼管は、管端面と、外周面と、内周面と、を備える。管端面は、機械加工されて平坦になっている。外周面及び内周面の少なくとも一方には、降伏強度情報が表示されている。降伏強度は、圧子押し込み法を用いて管端面で測定された荷重-変位特性に基づいて算出されたものである。その他については上記第1の形態と同様であるので、ここではその重複説明を省略する。
本第4の構成の鋼管は、鋼管の降伏強度情報が、鋼管の外周面及び内周面の少なくとも一方に表示されている。この降伏強度情報は、圧子押し込み法により得られた降伏強度に関するものである。このような鋼管同士を接合する際、作業者は、表示された情報を確認すれば、鋼管同士の降伏強度差が小さくなるように接合する鋼管を選択することができる。これにより、溶接によって鋼管同士を連結してパイプラインを製造する際に、各鋼管同士の周溶接部近傍での座屈発生を抑制できる。したがって、第4の形態の鋼管は、各鋼管同士の周溶接部近傍での座屈発生を抑制できるパイプラインの製造に適する。
<第5の形態>
また、本実施形態に係るパイプラインは、互いに溶接によって連結された上記第4の形態に係る複数本の鋼管からなる。各鋼管それぞれに表示された降伏強度情報について、互いに連結された鋼管同士で、降伏強度の差が所定の範囲内である。本第5の形態のパイプラインによれば、接合された各鋼管同士の降伏強度の差が所定の範囲内に抑えられているため、各鋼管同士の周溶接部近傍での座屈発生を抑制できる。
以上説明の骨子に続き、本発明の実施形態及び変形例について、図面を参照しつつ以下に説明する。各図において同一又は類似する構成については同一符号を付し、重複説明を省略する。
[鋼管]
図8は、本実施形態に係る鋼管10を、その中心軸線CLを含む断面で見た断面図である。鋼管10は、天然ガスや原油を輸送するパイプラインの製造に用いられる部品である。パイプラインの詳細は後述する。本実施形態では、鋼管10は、継目無鋼管である。しかしながら、鋼管10は、電縫鋼管やUO鋼管等の溶接鋼管であってもよい。以下、鋼管10が延びる長手方向(中心軸線CLに沿った方向)を軸方向と言う。鋼管10は、軸方向の両端それぞれに、環状の管端面10aを有する。さらに、鋼管10は、外周面10bと内周面10cとを有する。
鋼管10の軸方向における全長は、例えば12mである。鋼管10の外径Dは、例えば193~1200mmであり、鋼管10の肉厚tは、例えば7.0mm~40.0mmである。
図8を参照して、鋼管10の外周面には、標識11が表示されている。標識11は、鋼管10の降伏強度の値に対応する情報(降伏強度情報)である。鋼管10の降伏強度の値は、鋼管10の両端の管端面10aのうちの少なくとも一方に対して、後述する圧子押し込み法を用いて測定された荷重-変位特性に基づいて算出される。鋼管10における降伏強度の数値は、鋼管10の一端で求めた場合と他端で求めた場合とにおいて互いに若干異なる場合がある。これは、鋼管10の製造方法によって生じる、一端及び他端間の降伏強度差である。例えば、ERW鋼管のように熱延板から造管された鋼管では、両端での降伏強度差はそれほど大きくない。一方、UOE鋼管やJCO鋼管のように厚板から成形される鋼管では、トップ側とボトム側で冷却が開始される温度が異なるため(ボトム側が低くなる)、最終的な鋼管のトップとボトムで降伏強度差が出てくる場合がある。しかし、この降伏強度差は、互いに接合する各鋼管間の降伏強度差の値よりも小さく、無視できる。よって、降伏強度の値は、鋼管10の片端のみで求めた値を採用してもよいし、あるいは、鋼管10の両端それぞれで求めた値の平均値を採用してもよい。
標識11は、所定の範囲毎に区分された、鋼管10の降伏強度のレベルを示す。このような標識11を複数の鋼管10に表示することにより、各鋼管10は、降伏強度の値に応じて複数の区分に分類される。
標識11として、降伏強度の高さ毎に色分けされたカラーバンドを、鋼管10の外周面10bに巻いて表示してもよい。標識11は、カラーバンドのみに限らず、降伏強度の高さ毎に色分けされたペンキを外周面10bに塗布したものであってもよい。標識11に示す降伏強度のレベルは、例えば20MPa毎に区分けする設定としてもよい。
本実施形態の例では、鋼管10の降伏強度情報を、鋼管10の降伏強度の強度レベルを示す標識11で示している。しかしながら、鋼管10の外周面10bに表示される降伏強度情報は、標識11のみに限定されるものではない。例えば、降伏強度情報は、降伏強度の値そのものであってもよい。要するに、鋼管10の外周面10bに降伏強度の値そのものが記載されていてもよい。あるいは、降伏強度の値の情報を含んだバーコードを鋼管10の外周面10bに付していてもよい。
あるいは、鋼管10の降伏強度情報を、鋼管10の降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示としてもよい。この場合、製品番号表示を鋼管10の外周面10bに記載しておく。さらに、製品番号表示と降伏強度との対応関係を纏めた一覧表を、紙あるいは電子媒体に記録しておき、パイプラインを製造する作業者が接合作業時に一覧表を参照できるようにしておく。例えば電子媒体に記録した場合には、一覧表を、電子端末上で降伏強度の昇順あるいは降順にソートすることにより、各鋼管を、互いに隣り合うもの同士で降伏強度差が小さくなる並び順を得ることが出来る。その結果、作業者は、ソート後の一覧表を見て、降伏強度の並び順に沿って製品番号を選んで接合することが可能になる。このように、降伏強度情報は、各鋼管が持つ降伏強度の値に直接的に関係する表示のみに限らず、選んだ鋼管と、この鋼管の降伏強度の値との間を1対1対応の関係で繋ぐ情報も含まれる。
以上説明のように、降伏強度情報は、降伏強度の数値表示、降伏強度の数値が該当する区分を示す区分表示、降伏強度の数値が該当する区分を示すカラー表示、降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示、のうちの少なくとも一つを含む。
また、降伏強度情報の表示位置は、上記に例示した外周面10bのみとしてもよいし、または内周面10cのみとしてもよいし、あるいは外周面10b及び内周面10cの両方としてもよい。また、鋼管10の周方向においては、その一部のみに表示するようにしてもよいが、全周に渡るように表示した方が、鋼管10の置き方に関わらず視認できるため好ましい。
図9は、本実施形態に係るパイプライン20を、その長手方向に沿った断面で見た断面図である。より具体的には、中心軸線CLを含む断面で見た縦断面図である。
パイプライン20は、複数本の鋼管10からなる。各鋼管10は、同軸に配置された状態で、互いに溶接によって連結されている。つまり、各鋼管10同士が周溶接部Wで溶接接合されることにより、パイプライン20が形成されている。各鋼管10を溶接する際、中心軸線CL方向において互いに隣り合う鋼管10の降伏強度の差が、所定の範囲内になるように接合する。隣り合う鋼管10の降伏強度差は、好ましくは65MPa以下である。
[鋼管の製造方法]
図10は、本実施形態に係る鋼管10の製造方法を示すフロー図である。図10に示すように、本実施形態の製造方法は、準備工程(S1)と、測定工程(S2)と、算出工程(S3)と、表示工程(S4)と、を備える。以下、図10に示す各工程を具体的に説明する。
〔準備工程(S1)〕
準備工程(S1)では、複数本の鋼管10を準備する。鋼管10を製造する方法は、周知の方法を用いてよい。鋼管10が継目無鋼管である場合、鋼管10は、例えば中実の丸ビレットを素材として、マンネスマン法により製造される。鋼管10が溶接鋼管である場合は、鋼板を管状に成形し、鋼板の側縁同士をシーム溶接することで鋼管10が製造される。鋼管10は、機械加工された管端面10aを有する。管端面10aに機械加工が施されるのは、鋼管10同士を周溶接によって接合するためである。そして、次工程では、この機械加工された管端面10aを利用して、圧子押し込み法による測定を行う。
圧子押し込み法を適用する測定位置は、管端面10aのみに限定される。例え管端に近い位置であっても、鋼管10の外周面10b及び内周面10cに対して圧子押し込み法を適用しない。その理由は、測定面の性状と、管端面(断面)での強度ばらつきと、の2つにある。
まず、測定面の性状について説明する。圧子押し込み法では、事前に、測定面をある粗さ以下に仕上げておく必要がある。通常、鋼管10の外周面10b及び内周面10cは、酸化スケールがついている状態にあるので、このままでは精度の高い測定を行うことができない。そのため、測定前に機械加工で酸化スケールを取り除く必要があり、その分、余計な手間を要する。これに対し、切断面である管端面10aを測定箇所とすることで、例え調整を要するとしても粗さの調整程度で済み、測定のための新たな加工の必要性を最小限に抑えることができる。
続いて、管端面(断面)での強度ばらつきについて述べる。ERW鋼管、UO鋼管、JCO鋼管などの溶接鋼管は、冷間加工により板から造管する。そのため、鋼管長手方向のどの位置の断面においても、その肉厚方向において強度分布を生じる。すなわち、多くの鋼管では、肉厚中心で強度が低く、内周面及び外周面で強度が高くなる傾向にある。同様に、シームレス鋼管においても、熱処理時の冷速の影響及びその後の冷間加工によって、肉厚方向に強度分布を有する。したがって、外周面あるいは内周面の測定では、肉厚全体の強度を精度良く測定することができない。これに対し、本実施形態のように、管端面10aを測定面として用いれば、より高い精度で測定することができる。例えば、肉厚がtである管端面10aにおいて、外周面から、t×1/4の位置、t×1/2の位置、t×3/4の位置をそれぞれ測定すれば、肉厚tの全体における強度を正確に測定することができる。
〔測定工程(S2)〕
測定工程(S2)では、圧子押し込み法を用いて鋼管10の管端面10aで荷重-変位特性を測定する。具体的には、鋼管10が持つ一対の管端面10aのうち少なくとも一方に対して圧子押し込み試験を行う。以下、圧子押し込み試験の具体的な方法について説明する。
図11は、圧子押し込み試験の様子を示す模式図である。図12は、図11のP部の拡大図である。図11及び図12に示すように、圧子押し込み試験には、球形状の先端30aを有する圧子30を含む試験装置(図示略)を用いる。
試験装置は、例えば、測定対象となる鋼管10を固定する固定装置と、圧子30を介して鋼管10の管端面10aに垂直な押し込み荷重Fを与える負荷装置と、圧子30の変位(押し込み量)hを測定する測定装置と、押し込み荷重Fと圧子30の変位hとの関係を記録する記録装置と、を備える。記録装置は、単に試験終了時点での圧子30の変位hを記録するだけでなく、圧子30が押し込まれている最中の押し込み荷重Fと圧子30の変位hの関係を記録してもよい。
圧子押し込み試験では、測定対象である鋼管10の管端面10aに圧子30の先端30aを押しつけ、押し込み荷重Fを負荷して圧子30を管端面10aに垂直に押し込む。圧子30は、所定の深さまで連続的に押し込んでもよいし、荷重の除荷を含めて断続的に押し込んでもよい。また、圧子30の押し込みの際は、図11に示すように、管端面10aに対して圧子30の中心軸線CLaが垂直となるように押し込む。
圧子30の先端30aは、面圧が分散し、より精度の高い解析ができるという観点から、球形であることが好ましい。そして、その球形の曲率半径としては、0.05mm~0.50mmの範囲内であることが好ましい。例えば、0.25mmの曲率半径を持つ圧子30を用いてもよい。
また、圧痕のサイズとしては、正面視での径が0.1mm~1.0mmの範囲内で、深さが0.02mm~0.20mmの範囲内であることが好ましい。例えば、正面視の径が0.4mmで深さが0.15mmを圧痕のサイズとしてもよい。
また、圧子30の押し込み荷重としては、200N~800Nの範囲とすることが好ましい。例えば、押し込み荷重を450Nとしてもよい。押し込み荷重を加えた結果として、押し込み位置に生じた測定点の変位が、圧痕の深さとなる。
また、圧子押し込み法の測定跡である圧痕の有無の確認は、目視により行う。このとき、圧子押し込み法により生じた圧痕と、搬送作業等により生じた通常の傷跡とを見比べた場合、搬送作業等による損傷痕の大きさは圧子による測定痕の大きさをはるかに上回るので、目視によって両者を判別できる。
圧子押し込み試験において、一つの鋼管10に対する測定点の数は特に限定されない。しかしながら、特に冷間成形で製造した鋼管10では、鋼管10の厚み方向及び周方向にも強度分布がある。そのため、鋼管10の厚み方向及び周方向の両方において、それぞれ複数箇所で測定を行うことが好ましい。
図13は、圧子押し込み試験の測定点の例を示す模式図である。図13は、鋼管10の管端面10aの一部を、軸方向に沿って対面視した状態を示す。図13の例では、鋼管10の肉厚tを厚み方向に4等分する破線上に測定点Mが設けられている。具体的には、厚み方向において、鋼管10の外周面を基準(0mm)とし、この基準からの長さがt/4、t/2、及び3t/4となる破線上に、それぞれ3つずつ測定点Mが等間隔に設けられている。このような合計9つの測定点Mでの測定を、鋼管10の周方向に等間隔をあけて4箇所で行ってもよい。
厚み方向において複数の測定点Mが設けられている場合、下記の式(1)を用いてその鋼管10の降伏強度σYSを算出してもよい。式(1)において、σt/4、σt/2、及びσ3t/4は、管端面10aにおいて、それぞれ鋼管10の外周面からの厚み方向における長さがt/4、t/2、及び3t/4となる位置で測定した降伏強度である。
Figure 0007323857000001
本実施形態の例では、図14(a)に示すように、鋼管10の管端面10aが、軸方向に垂直な面であり、管端に機械加工を施して平坦化したまま(開先未加工)となっている。しかしながら、鋼管10の端部は、別の鋼管10と溶接接合するために開先加工されていてもよい。よって、管端面10aは、例えば図14(b)に示すV字開先であってもよいし、図14(c)に示すU字開先であってもよいし、図14(d)に示すX字開先であってもよい。鋼管10が開先を有する場合、管端面10aは必ずしも軸方向に垂直ではない。このような場合であっても、図14(b)~(d)の各図に矢印で示すように、圧子30を管端面10aに対して垂直に押し込む必要がある。
〔算出工程(S3)〕
算出工程(S3)では、測定工程(S2)で測定した荷重-変位特性に基づいて、複数の鋼管10の各々について降伏強度を算出する。例えば、ISO/TR29381:2008に記載の方法(加工硬化式を仮定してその係数を決める方法、FEA等の数値解析シミュレーションから逆解析によりSS曲線を求める方法、ニューラルネットワークを使用する方法)を用いることで、荷重-変位特性から鋼管10のSS曲線を算出することができる。
本算出工程(S3)について補足説明をすると、実際に使用した方法は、日本国特開2019-174270号公報において、弾塑性材料の変形抵抗式測定法に記載されている方法を使用した。グレード毎(例えば、X60,X65等)に、近似曲線の係数を決めて、引張試験の降伏強度との相関を決定した。実際の各鋼管に対する測定では、その係数を使用して、圧子押し込み試験で測定した荷重-変位曲線から降伏強度を決定した。
〔表示工程(S4)〕
表示工程(S4)では、算出工程(S3)で算出した降伏強度に関する情報(降伏強度情報)を、各鋼管10の各々の外周面に表示する。表示工程(S4)で表示する情報は、上述した通り強度レベル(区分)を示す標識11またはカラー表示であってもよいし、降伏強度の値そのものであってもよいし、あるいは降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示であってもよい。
[効果]
本実施形態に係る鋼管製造方法では、測定工程(S2)において、鋼管10の管端面10aに対して圧子押し込み法を用いて荷重-変位特性を測定する。算出工程(S3)では、その荷重-変位特性に基づいて各鋼管10の降伏強度を算出する。この降伏強度の値は、引張試験で実測した降伏強度の値とほとんど一致する。さらに、本実施形態に係る製造方法では、表示工程(S4)において、算出工程(S3)で算出した降伏強度に関する情報を鋼管10の外周面に表示する。そのため、このようにして得られた各鋼管10同士を接合する際、作業者は、鋼管10に表示された降伏強度情報を確認すれば、降伏強度差が小さくなるように接合する鋼管10を選択することができる。これにより、溶接によって鋼管同士を連結してなるパイプライン20では、鋼管10同士の周溶接部W(図9参照)近傍での座屈発生を抑制できる。また、測定工程(S2)で用いる圧子押し込み法は、鋼管10の管端面10aに対して直接行うことができる。そのため、圧子押し込み法では鋼管10から試験片を採取する必要がなく、容易に実施できる。したがって、本実施形態の鋼管製造方法によれば、鋼管10同士の周溶接部W近傍での座屈発生を抑制できるので、パイプライン20の製造に適した鋼管10を歩留まり良く簡易に製造できる。
本実施形態に係る製造方法では、表示工程(S4)において、算出工程(S3)で算出した降伏強度の値が含まれる降伏強度レベルに対応する標識11を鋼管10の外周面に表示している。この標識11は、所定の範囲毎に区分された、降伏強度のレベルを示す。これにより、鋼管10を接合する際、作業者は、表示された標識11を確認すれば、降伏強度差が小さくなるような鋼管10同士の組み合わせを簡単に選択することができる。そのため、適切な鋼管10の選択を簡便に行える。
その具体例を、図15を用いて説明する。図15(a)は、スプールベースに配置された鋼管群における降伏強度とその本数分布との関係を示すグラフであり、横軸が降伏強度で縦軸がその降伏強度に該当する鋼管10の本数を示す。図15(b)は、(a)に示すスプールベースから鋼管10を多数本取り出して接続したパイプライン20の一例を示す。ここで、降伏強度が相対的に最も低い鋼管10をYS1とし、その次に降伏強度が低い鋼管10をYS2とし、さらにその次に降伏強度が低い鋼管10をYS3とし、さらにその次に降伏強度が低い鋼管10をYS4とし、そして最も降伏強度が高い鋼管10をYS5としている。このようにしてYS1~YS5の5つに色分けされた標識(カラーバンド)11が、全ての鋼管10に巻かれている。
まず、陸上のスプールベース(区画内)には、上述した鋼管製造方法によって製造された鋼管10が、多数本、配置されている。各鋼管10それぞれの外周面10bには、降伏強度情報を示す標識11がすでに付与されている。そのため、降伏強度の高い順、あるいは低い順に並ぶように、各鋼管10を予めスプールベースに並べておくことが、作業効率向上の観点から好ましい。
続いて、パイプライン20を製造する作業者は、スプールベースから、YS1を示すカラーバンドが巻かれた鋼管10を選んで取り出していく。そして、選び出した鋼管10を周溶接により次々と接合していく。
YS1に属する全ての鋼管10を使い切ったら、今度は、YS1に近いYS2を示すカラーバンドが巻かれた鋼管10を選んで取り出していく。そして、接合済みのYS1に属する鋼管10に対し、新たに選び出したYS2に属する鋼管10を周溶接により次々と接合していく。
YS2に属する全ての鋼管10を使い切ったら、今度は、YS2に近いYS3を示すカラーバンドが巻かれた鋼管10を選んで取り出していく。そして、接合済みのYS2に属する鋼管10に対し、新たに選び出したYS3に属する鋼管10を周溶接により次々と接合していく。
YS3に属する全ての鋼管10を使い切ったら、今度は、YS3に近いYS4を示すカラーバンドが巻かれた鋼管10を選んで取り出していく。そして、接合済みのYS3に属する鋼管10に対し、新たに選び出したYS4に属する鋼管10を周溶接により次々と接合していく。
YS4に属する全ての鋼管10を使い切ったら、今度は、YS4に近いYS5を示すカラーバンドが巻かれた鋼管10を選んで取り出していく。そして、接合済みのYS4に属する鋼管10に対し、新たに選び出したYS5に属する鋼管10を周溶接により次々と接合していく。
以上の工程により、図15(b)に示すパイプライン20が完成する。
なお、表示工程(S4)において、上述したカラーバンドである標識11を鋼管10に巻く代わりに、取得工程(S3)で算出した降伏強度の値そのものを鋼管10の外周面10bに表記してもよい。その場合でも、鋼管10を接合する際、作業者は、表記された数値を確認すれば、接合する鋼管同士の降伏強度差がより小さくなる鋼管10同士の組み合わせを選択することができる。そのため、適切な鋼管10の選択を具体的な数値で行える。
このようにして製造されたパイプライン20は、互いに周溶接部Wで溶接によって連結された複数本の鋼管10からなる。パイプライン20は、互いに連結された各鋼管10同士で、降伏強度の差が所定の範囲内(65MPa以内)である。そのため、より確実に鋼管10同士の周溶接部W近傍での座屈発生を抑制できる。上述したように、パイプライン20は、総延長が1kmを超えるが、例え1箇所でも座屈が発生すると全体としての水密を損なう恐れが生じる。そのため、各鋼管10同士の接合箇所において、降伏強度の差を前記所定の範囲内(65MPa以内)として座屈発生をより確実に防止することが望ましい。
[第1実施例]
本実施形態の製造方法により製造された鋼管の効果を確認するため、以下に示すシミュレーション試験を実施した。
本第1実施例では、上述した鋼管A~Dを想定したシミュレーション試験を行った。
本発明例として、鋼管の降伏強度に関する情報(降伏強度情報)が外周面に表示された鋼管を複数本、準備する場合を想定した。この降伏強度情報の取得に際しては、圧子押し込み法を用いる場合を想定した。そして、複数の鋼管が互いに連結されたときに降伏強度差が小さくなるような鋼管の組み合わせを選択し、選択した各鋼管同士を接合した場合の降伏強度差の分布を調査した。
また、比較例として、鋼管の降伏強度に関する情報が表示されていない鋼管を複数本、準備する場合を想定した。そして、任意に選択した各鋼管同士を接合した場合の降伏強度差の分布を調査した。接合した各鋼管同士の降伏強度差は、接合前の各鋼管に対して全厚引張試験を行って得られた降伏強度から求める場合を想定した。
図16~図19に、試験結果を示す。図16は、鋼管Aの試験結果を示すグラフである。図17は、鋼管Bの試験結果を示すグラフである。図18は、鋼管Cの試験結果を示すグラフである。図19は、鋼管Dの試験結果を示すグラフである。これらのグラフにおいて、横軸は降伏強度差を示し、縦軸は接合した鋼管同士がその降伏強度差を持つ確率を示す。
図16~図19の結果から、鋼管A~Cにおいて本発明例の最大降伏強度差は、比較例よりも10MPa小さかった。また、図19の結果から、鋼管Dにおいて本発明例の最大降伏強度差は、比較例よりも5MPa小さかった。このことから、本実施形態に係る製造方法で製造された鋼管によれば、接合した鋼管の種類によらず、接合した鋼管同士の降伏強度差を低く抑えることができることが確認された。
[第2実施例]
本第2実施例では、まず鋼管に座屈が発生する条件について検証するため、ドラムに巻き付けたときの鋼管について解析(シミュレーション)を行った。鋼管の座屈特性は、鋼管の寸法的には鋼管の外径Dに依存し、鋼管の材料的には主に降伏比(降伏強度/引張強度)YRに依存する。また、鋼管の座屈特性は、降伏伸びの有無などにも影響を受けるが、鋼管同士の降伏強度差ΔYSと比較してその影響は小さい。以上を考慮して、鋼管に座屈が起こっているか否かを判定する座屈指標Bindexを導入した。座屈指標Bindexは以下の式(2)で表される。式(2)において、ドラム間隙δmaxは、ドラムと鋼管との間における、鋼管の厚み方向の隙間の大きさを表す。ここで、式(2)の各変数のうち、座屈指標Bindexの単位はmm-2であり、外径Dの単位はmmであり、降伏比YRの単位は%であり、ドラム間隙δmaxの単位はmmである。なお、ドラム間隙δmaxは、降伏強度差ΔYSの関数である。座屈が発生すると、鋼管はドラムから離反するため、ドラム間隙δmaxは大きくなる。
Figure 0007323857000002
ドラム間隙δmaxは、FEAシミュレーションにより求めた。降伏比YRは、接合した鋼管のうち降伏強度が低い方の鋼管について、降伏強度及び引張強度を算出して求めた。
本シミュレーションでは、外径Dが219mm、324mm、及び508mmの鋼管に対して解析を行った。これらの鋼管の降伏比YRは、80~95%の範囲内であった。解析では、接合した鋼管同士の降伏強度差ΔYSを変化させて、座屈の発生有無を調べた。
図20は、第2実施例の試験結果を示す図である。図20に示すように、降伏強度差ΔYSが大きくなるほど、座屈指標Bindexの値も大きくなる。解析結果から、座屈指標Bindexの大きさが50を超えると、鋼管に座屈が発生しやすくなる。そのため、図20の結果から、座屈指標Bindexの大きさが50に対応する降伏強度差ΔYSはおよそ68MPaであるので、安全を見越して、降伏強度差ΔYSの閾値を65MPa(このときの座屈指標Bindexは45mm-2)に設定する。よって、接合する鋼管同士の降伏強度差ΔYSを65MPa以下とすれば、座屈指標Bindexをほとんど50以下に抑えることができるため、座屈の発生を抑制できることが分かる。以上の理由により、連結方向において互いに隣り合う各鋼管同士における降伏強度差ΔYSは、65MPa以下に抑えることが好ましい。
そこで、本発明を実施した場合と実施しない場合とについての解析を、ドラムに巻き付けたときの鋼管に対して行い、前記座屈指標Bindexの値から座屈の発生有無を判定した。本実施例では、互いに周溶接で接合されている複数本の鋼管において、鋼管の周溶接部のうち任意の3箇所の座屈指標Bindexをそれぞれ求めた。
発明例では、まず、鋼管の管端面に圧子押し込み法を用いて測定した荷重-変位特性に基づいて算出される降伏強度に関する情報(降伏強度情報)が外周面に表示された鋼管を、複数本、準備することを想定した。そして、これら複数本の鋼管を、降伏強度差が小さくなるような組み合わせで接合したパイプラインを製造する場合を想定した。そして、この発明例のパイプラインについて座屈指標Bindexを求めた。
また、比較例として、接合対象の鋼管を任意に選択して接合したパイプラインを製造する場合を想定した。そして、この比較例のパイプラインについて座屈指標Bindexを求めた。
上記発明例及び比較例のそれぞれについて、3箇所全てにおいて座屈指標Bindexの値が50以下であれば合格とし、逆に座屈指標Bindexの値が50超であれば不合格とした。
発明例1~8の結果を、下表1に示す。
発明例1~4は、鋼管に表示された降伏強度情報が降伏強度の値そのものである例である。
発明例5~8は、鋼管に表示された降伏強度に関する情報が、20MPa毎に強度レベルを設定して色分けしたカラーバンドの例である。なお、表1では、降伏強度差は、降伏強度の値そのものの差を表示している。
表1に示される通り、発明例1~8のいずれにおいても、3箇所全ての周溶接部で座屈指標Bindexの値が50以下を達成している。よって、発明例1~8では、座屈の発生を抑制できることが分かる。
Figure 0007323857000003
比較例1~4の結果を、下表2に示す。
表2に示される通り、比較例1~4のいずれにおいても、3箇所の周溶接部のうちの少なくとも1箇所で座屈指標Bindexの値が50よりも大きくなっている。よって、比較例1~4では、座屈が発生する可能性があることが分かる。
Figure 0007323857000004
以上、本発明の実施形態、実施例、及び各種変形例を説明した。しかしながら、上述した実施形態、実施例、及び各種変形例は、本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は、上述した内容のみに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、本発明をパイプラインの製造に適用する場合を例示したが、建築構造物に用いられる建材に適用してもよい。
改めて、本発明の骨子を以下に纏めておく。
(1)図8に例示したように、本発明の一態様に係る鋼管10は、機械加工され、圧子押し込み法の測定跡である圧痕を有する管端面10aと、前記圧痕の位置の降伏強度に対応する降伏強度情報である標識11が付与された、外周面10bとを備える。前記降伏強度情報は、内周面10cに付与してもよいし、あるいは、外周面10b及び内周面10cの両方に付与してもよい。
(2)上記(1)の態様において、前記降伏強度情報が、前記降伏強度の数値表示、前記降伏強度の数値が該当する区分を示す区分表示、前記降伏強度の数値が該当する区分を示すカラー表示、前記降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示、のうちの少なくとも一つを含んでもよい。図8の例示では、前記カラー表示である標識11を採用している。
(3)図15に例示したように、本発明の一態様に係る鋼管群は、区画内に配置された複数本の鋼管の全てが、上記(1)または上記(2)に記載の鋼管10である。
(4)上記(3)に記載の鋼管群は、各鋼管10が、前記区画内に、前記降伏強度情報に応じて区分けして配置されていてもよい。
(5)図15に例示したように、本発明の一態様に係るパイプライン20は、上記(1)~上記(4)の何れか1項に記載の鋼管10が、複数本、互いに周溶接で接合されており、連結方向において互いに隣り合う各鋼管10同士における前記降伏強度の差が、65MPa以下である。
(6)図10に例示したように、本発明の一態様に係る鋼管製造方法は、機械加工された管端面10aを有する鋼管10を準備する準備工程S1と、圧子押し込み法により管端面10aで荷重-変位特性を測定する測定工程S2と、測定工程S2で測定した前記荷重-変位特性に基づいて降伏強度を得る取得工程(算出工程)S3と、前記取得工程で得た前記降伏強度に関する降伏強度情報を、鋼管10の外周面10b及び内周面10cの少なくとも一方に表示する表示工程S4と、を含む。
(7)上記(6)の鋼管製造方法において、表示工程S4で、前記降伏強度情報として、前記降伏強度の数値表示、前記降伏強度の数値が該当する区分を示す区分表示、前記降伏強度の数値が該当する区分を示すカラー表示、前記降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示、のうちの少なくとも一つを表示してもよい。図8の例示では、前記カラー表示である標識11を採用している。
本発明の上記態様に係る鋼管の製造方法によれば、鋼管同士の周溶接部近傍での座屈発生を抑制できるパイプラインの製造に適した鋼管を簡易に製造できる。また、本発明の上記態様に係る鋼管は、鋼管同士の周溶接部近傍での座屈発生を抑制できるパイプラインの製造に適する。さらに、本発明の上記態様に係るパイプラインによれば、鋼管同士の周溶接部近傍での座屈発生を抑制できる。
10:鋼管
10a:管端面
10b:外周面
10c:内周面
11:標識
20:パイプライン
30:圧子
S1:準備工程
S2:測定工程
S3:取得工程
S4:表示工程

Claims (7)

  1. 機械加工され、圧子押し込み法の測定跡である圧痕を有する管端面と、
    前記圧痕の位置の降伏強度に対応する降伏強度情報が付与された、外周面及び内周面の少なくとも一方と、
    を備えることを特徴とする鋼管。
  2. 前記降伏強度情報が、
    前記降伏強度の数値表示、
    前記降伏強度の数値が該当する区分を示す区分表示、
    前記降伏強度の数値が該当する区分を示すカラー表示、
    前記降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示、
    のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の鋼管。
  3. 区画内に配置された複数本の鋼管の全てが、請求項1または2に記載の鋼管であることを特徴とする鋼管群。
  4. 各前記鋼管が、前記区画内に、前記降伏強度情報に応じて区分けして配置されていることを特徴とする請求項3に記載の鋼管群。
  5. 請求項1または2に記載の鋼管が、複数本、互いに周溶接で接合されたパイプラインであって、
    連結方向において互いに隣り合う各前記鋼管同士における前記降伏強度の差が、65MPa以下である
    ことを特徴とするパイプライン。
  6. 機械加工された管端面を有する鋼管を準備する準備工程と、
    圧子押し込み法により前記管端面で荷重-変位特性を測定する測定工程と、
    前記測定工程で測定した前記荷重-変位特性に基づいて降伏強度を得る取得工程と、
    前記取得工程で得た前記降伏強度に関する降伏強度情報を、前記鋼管の外周面及び内周面の少なくとも一方に表示する表示工程と、
    を含むことを特徴とする鋼管製造方法。
  7. 前記表示工程で、前記降伏強度情報として、
    前記降伏強度の数値表示、
    前記降伏強度の数値が該当する区分を示す区分表示、
    前記降伏強度の数値が該当する区分を示すカラー表示、
    前記降伏強度の数値と紐付けられた製品番号表示、
    のうちの少なくとも一つを表示する
    ことを特徴とする請求項6に記載の鋼管製造方法。
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