JP7321638B2 - 水分センサー及び蒸気圧計測装置用センサー - Google Patents
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Description
また、前記非特許文献1の水分センサーは、不定形耐火物内部に埋め込まれた電極の先端部周辺の水分の有無を、電極の先端部間の電気抵抗の変化によって検出するものであることから、先端部以外の電極に水分含有による導通が生じると、正確な水分計測ができない。
さらに、前記非特許文献1の水分センサーにおいて、不定形耐火物内部に埋め込まれた電極の先端部周囲は所定の蒸気圧となる一方、不定形耐火物外部の接続導線に接続される電極の基端部周囲は大気圧であるので、不定形耐火物内部の電極の先端部周囲と不定形耐火物外部の接続導線に接続される電極の基端部周囲とで圧力差が生じる。このため、不定形耐火物に埋め込まれた電極の周囲に水分の移動経路があると、その移動経路を通って水分が移動してしまい、正確な水分計測ができなくなる。例えば、不定形耐火物の乾燥性評価において水分の移動経路のある水分センサーを使用した場合、水分の移動が実際より促進されることから、正確な乾燥性評価(水分計測)ができない。
そして、正確な水分計測ができないと、正確な蒸気圧計測もできない。
1.
一対の導電体を備え、前記一対の導電体を被計測物に導入し当該一対の導電体の先端部間の電気抵抗を計測する、高温環境下で使用される水分センサーにおいて、
前記導電体の先端部以外は、耐熱性を有する絶縁物で被覆されており、
前記導電体の先端部周辺に存在する水分が、前記導電体と前記絶縁物との隙間を介して被計測物の外部へ移動するのを抑制する遮蔽構造を有し、
前記絶縁物は貫通孔を有する1本又は複数本の管であり、前記貫通孔に前記一対の導電体が1本ずつ挿通され、
前記遮蔽構造は、前記貫通孔と前記導電体との隙間の少なくとも一部に充填される耐熱性を有する充填材であり、
耐熱性、絶縁性及び水分遮蔽性を具備することを特徴とする水分センサー。
2.
前記導電体は金属線であり、
前記絶縁物はセラミックス製である、前記1に記載の水分センサー。
3.
前記充填材は、シリコーン系充填材、エポキシ系充填材及び耐火性モルタルから選択される少なくとも一種である、前記2に記載の水分センサー。
4.
前記1から3のいずれか一項に記載の水分センサーと、当該水分センサーの近傍に配置される熱電対とを備え、高温環境下で使用される蒸気圧計測装置用センサーにおいて、
前記熱電対は、一対の異種金属線を備え、前記異種金属線の先端部以外は、耐熱性を有する絶縁物で被覆されており、前記異種金属線の先端部周辺に存在する水分が、前記異種金属線と前記絶縁物との隙間を介して被計測物の外部へ移動するのを抑制する遮蔽構造を有することを特徴とする蒸気圧計測装置用センサー。
5.
前記1から3のいずれか一項に記載の水分センサーと、当該水分センサーの近傍に配置される熱電対とを備え、高温環境下で使用される蒸気圧計測装置用センサーにおいて、
前記熱電対は、一対の異種金属線を備え、前記一対の異種金属線は、その全部が耐熱性を有する絶縁物で被覆されていることを特徴とする蒸気圧計測装置用センサー。
6.
不定形耐火物の乾燥工程において、当該不定形耐火物内部の蒸気圧計測用に使用される、前記4又は5に記載の蒸気圧計測装置用センサー。
そして本実施形態では、遮蔽構造として、セラミックス管12の内部、具体的には2個の貫通孔12aの全部(貫通孔12aと金属線11との隙間の全部)にシリコーン系充填材13が充填されている。
なお、2本の金属線11,11の基端部は被計測物40の外部に位置する場合もあり、この場合、2本の金属線11,11の基端部は「耐熱性を有する絶縁物」で被覆しなくてもよい。すなわち、本発明の水分センサーにおいて、耐熱性を有する絶縁物で被覆する導電体の先端部以外の領域とは、被計測物に導入される領域のことである。
そして本実施形態では、遮蔽構造として、セラミックス管22の内部、具体的には2個の貫通孔22aの全部(貫通孔22aと異種金属線21a,21bとの隙間の全部)にシリコーン系充填材23が充填されている。
なお、2本の異種金属線21a,21bの基端部は被計測物40の外部に位置する場合もあり、この場合、2本の異種金属線21a,21bの基端部は「耐熱性を有する絶縁物」で被覆しなくてもよい。すなわち、本発明の熱電対において、耐熱性を有する絶縁物で被覆する異種金属線の先端部以外の領域とは、被計測物に導入される領域のことである。
ここで、「高温環境」とは、概ね130℃以上250℃以下の温度域をいう。この温度域は不定形耐火物の乾燥工程において爆裂が問題となる温度域に対応する。
また、「耐熱性を有する」とは、その耐熱温度が、前記高温環境の温度域内又は前記高温環境の温度域以上であることをいう。言い換えれば、「耐熱性を有する」とは、その耐熱温度が、水分センサーが使用される温度以上であることをいう。
(1)水分センサー10においては、一対の導電体として一対(2本)の金属線11,11を用いたが、導電体は金属線には限定されず、例えば金属板とすることもできる。要するに先端部間の電気抵抗を計測可能なものであればよい。
また、導電体等を被覆する耐熱性を有する絶縁物の形態は「管」には限定されず、例えば、横断面形状が「コの字型」をした2つの耐熱性を有する絶縁物を組み合わせて、導電体等を被覆することもできる。要するに、導電体等の先端部以外が、耐熱性を有する絶縁物で被覆されていればよい。
ただし、耐熱性及び絶縁性を十分に確保する点から、耐熱性を有する絶縁物の材質は、アルミナ、ムライト、ジルコニア、マグネシア、石英、フォルステライト等のセラミックスであることが好ましい。また、導電体等の先端部以外を確実かつ簡単に被覆する点から、導電体等を被覆する耐熱性を有する絶縁物の形態は「管」であることが好ましい。
なお、耐熱性を有する絶縁物の熱膨張係数が被計測物の熱膨張係数と大きく異なると、被計測物に亀裂を生じる懸念があるので、耐熱性を有する絶縁部の熱膨張係数は被計測物の熱膨張係数に近いほうが好ましい。
また、遮蔽構造は、セラミックス管の貫通孔の少なくとも一部に耐熱性を有する充填材を充填する構成には限定されず、例えば、セラミックス管の先端部及び基端部の少なくとも一方にシリコーン樹脂等の耐熱性及び絶縁性を有する材料を配置することもできる。要するに遮蔽構造は、導電体等の先端部周辺に存在する水分が、導電体等とこれを被覆する絶縁物との隙間を介して被計測物の外部へ移動するのを抑制するものであればよい。
なお、耐熱性を有する充填材としては、シリコーン系充填材以外に、エポキシ系充填材、耐火性モルタルを好適に用いることができる。シリコーン系充填材、エポキシ系充填材、耐火性モルタルは、いずれも入手しやすく充填作業性にも優れている。
具体的には、図2に示すように、熱電対20Aは、異種金属線21a,21bの全部がセラミックス管22で被覆されている構成としてもよい。この構成の場合、セラミックス管22は前述の遮蔽構造と同様の機能を発揮する。
また、異種金属線21a,21bは、通常の熱電対と同様に先端部以外は絶縁物で被覆する必要がある。この場合の被覆物は通常の熱電対と同様にセラミックス網線、セラミック管、耐熱性樹脂等を用いることができる。
なお、耐熱性を有する絶縁物で被覆する異種金属線の全部の領域とは、被計測物に導入される領域のことである。
横158.5×縦78.1×高さ205mmの一面のみの開口部(横158.5×縦78.1mmの面)を持つスチール缶を使用し、開口部から100mmとなる位置に水分センサーと熱電対を固定した。
このスチール缶に対して不定形耐火物を流し込み施工し、施工日の翌日まで養生後、開口部を電気炉の炉内側になるように配置して試料の開口部の面のみ加熱されるように配置して乾燥試験を実施した。加熱は、0→280℃を0.3h、280→450℃を2.7h、その後450℃で6h保持するパターンをプログラムコントローラーに設定して実施した。
所定の電圧V0を出力する電源に水分センサーと固定抵抗器R1を直列に接続し、固定抵抗器の両端部に発生する電圧V1を計測した。水分センサーにおける一対の導電体の先端部間の電気抵抗Rは、R=R1×(V0-V1)/V1により算出した。乾燥されていない不定形耐火物では、材料中に水分が存在するため電気抵抗Rは低いが、前述の加熱試験では水分センサーにおける一対の導電体の先端部間の水分がなくなる直前から電気抵抗Rが増加し始め、その後急激に増加する。電気抵抗Rが3MΩ以上の状態を水分無しと判定して、脱水完了時間を読み取った。
前述のとおり、乾燥試験では水分センサーにおける一対の導電体の先端部間の水分がなくなる直前から電気抵抗Rが増加し始める。電気抵抗Rの増加開始時の電気抵抗値を基準として0.05MΩ上昇した時点を、脱水開始時期とした。「キャスタブル耐火物施工体の乾燥に関する一考察」、耐火物40[5]270- 278(1988)でも示されているように、蒸気圧は水分が十分にあれば、その温度における飽和蒸気圧となる。このことから、乾燥試験における不定形耐火物内部の蒸気圧は、水分センサーによる水分計測の結果において、計測開始から脱水開始時期までは、水分センサーの近傍に配置した熱電対により計測した温度から計算される飽和蒸気圧とした。なお、脱水開始時期以降は蒸気圧の推定ができなくなるため、本発明による手法では蒸気圧は計測できない。
また、脱水開始時期から脱水完了時期においても、電気抵抗Rが十分に上がりきっていないことからもわかるように、いくらかの水分は存在するが、実験によるとこの間に関しては、蒸気圧が飽和蒸気圧に達することはなかった。脱水開始時期を過ぎると、飽和蒸気圧を維持するには水分が不足するためと推定される。
すなわち、「水分計測正確性」については、圧力センサーによる計測結果によって定めた最大圧力発生時期(5.3h)を基準として、水分センサーによる計測結果によって定めた脱水開始時期が±0.5hの範囲内であるものを○(合格)、±0.5hの範囲内でないものを×(不合格)とした。
また、「蒸気圧計測正確性」については、圧力センサーによる計測結果によって定めた最大蒸気圧(0.76MPa)を基準として、水分センサーによる計測結果によって定めた最大蒸気圧が±0.1MPaの範囲内であるものを○(合格)、±0.1MPaの範囲内でないものを×(不合格)とした。
また、実施例5は、実施例1において絶縁物をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)管に変えたもの、実施例6,7は、実施例1において遮断構造を変えたものであるが、いずれも、水分計測正確性、蒸気圧計測正確性ともに○(合格)となった。
比較例2は導電体を被覆する絶縁物が耐熱性を有しないものであり、電気抵抗が途中から計測できなくなった。導電体を被覆する絶縁物が溶融し、導通してしまったことが原因と考えられる。
比較例3は導電体を被覆する絶縁物がセラミックス編線被覆材であり、かつ遮断構造を有しないものであり、脱水完了時間が長く、最大蒸気圧が大幅に低くなり、水分計測正確性、蒸気圧計測正確性ともに×(合格)となった。セラミックス編線被覆材に水分が浸入して絶縁性が低下し、水分センサーにおける一対の導電体の先端部間以外の領域に電気抵抗の低い部分が生じたと考えられる。また、セラミックス編線被覆材が水分の移動経路となり、蒸気圧が低下したと考えられる。
11 金属線(導電体)
12 セラミックス管(耐熱性を有する絶縁物)
12a 貫通孔
13 シリコーン系充填材(遮蔽構造)
14 シリコーン樹脂
20,20A 熱電対
21a,21b 異種金属線
22 セラミックス管(耐熱性を有する絶縁物)
22a 貫通孔
23 シリコーン系充填材(遮蔽構造)
24 シリコーン樹脂
30 蒸気圧計測装置用センサー
40 被計測物
50,60 接続導線
Claims (6)
- 一対の導電体を備え、前記一対の導電体を被計測物に導入し当該一対の導電体の先端部間の電気抵抗を計測する、高温環境下で使用される水分センサーにおいて、
前記導電体の先端部以外は、耐熱性を有する絶縁物で被覆されており、
前記導電体の先端部周辺に存在する水分が、前記導電体と前記絶縁物との隙間を介して被計測物の外部へ移動するのを抑制する遮蔽構造を有し、
前記絶縁物は貫通孔を有する1本又は複数本の管であり、前記貫通孔に前記一対の導電体が1本ずつ挿通され、
前記遮蔽構造は、前記貫通孔と前記導電体との隙間の少なくとも一部に充填される耐熱性を有する充填材であり、
耐熱性、絶縁性及び水分遮蔽性を具備することを特徴とする水分センサー。 - 前記導電体は金属線であり、
前記絶縁物はセラミックス製である、請求項1に記載の水分センサー。 - 前記充填材は、シリコーン系充填材、エポキシ系充填材及び耐火性モルタルから選択される少なくとも一種である、請求項2に記載の水分センサー。
- 請求項1から3のいずれか一項に記載の水分センサーと、当該水分センサーの近傍に配置される熱電対とを備え、高温環境下で使用される蒸気圧計測装置用センサーにおいて、
前記熱電対は、一対の異種金属線を備え、前記異種金属線の先端部以外は、耐熱性を有する絶縁物で被覆されており、前記異種金属線の先端部周辺に存在する水分が、前記異種金属線と前記絶縁物との隙間を介して被計測物の外部へ移動するのを抑制する遮蔽構造を有することを特徴とする蒸気圧計測装置用センサー。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の水分センサーと、当該水分センサーの近傍に配置される熱電対とを備え、高温環境下で使用される蒸気圧計測装置用センサーにおいて、
前記熱電対は、一対の異種金属線を備え、前記一対の異種金属線は、その全部が耐熱性を有する絶縁物で被覆されていることを特徴とする蒸気圧計測装置用センサー。 - 不定形耐火物の乾燥工程において、当該不定形耐火物内部の蒸気圧計測用に使用される、請求項4又は5に記載の蒸気圧計測装置用センサー。
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