一実施形態に係る外照看板フィルムは、基材層と、基材層上に設けられた表面層と、を備え、表面層は、光入射角85度以下において20%以下の表面光沢度を有する。
この外照看板フィルムでは、基材層上に設けられた表面層が、光入射角85度以下において20%以下の表面光沢度を有する。この光入射角85度以下における低い表面光沢度によって、看板上の特定領域における輝度の増大が緩和され、看板上へのホットスポットの生成が抑制されることができる。
更に補足すると、例えば、ビルの上や戸外に設置されることが多い外照看板の看板面は比較的大きいサイズであり、外部照明からの照明光は、看板面全体を照明するために、看板面に対し低い角度(光入射角としては例えば60度~90度の高い角度)から照明光をあてることが望まれる。ここで、光入射角85度以下における表面光沢度を20%以下とすることによって、外照看板として好適な光入射角範囲において効果的にホットスポットの生成を抑制できる。
別の態様に係る外照看板フィルムにおいて、表面層は、光入射角85度以下において7%以下の表面光沢度を有してもよい。この外照看板フィルムによれば、光入射角85度以下における7%以下の低い表面光沢度によって、看板上の特定領域における輝度の増大がより緩和され、看板上へのホットスポットの生成がより抑制されることができる。
別の態様に係る外照看板フィルムにおいて、表面層は、光入射角85度以下において3%以下の表面光沢度を有してもよい。この外照看板フィルムによれば、光入射角85度以下における3%以下の低い表面光沢度によって、看板上の特定領域における輝度の増大が更に緩和され、看板上へのホットスポットの生成が更に抑制されることができる。
別の態様に係る外照看板フィルムにおいて、表面層は、ウレタン樹脂ビーズを含んでもよい。この外照看板フィルムによれば、ウレタン樹脂ビーズは、外照看板フィルムの表面において、当該ビーズの形状に由来する微細な凹凸を形成し、外照看板フィルムの表面に低光沢性を付与することができる。
別の態様に係る外照看板フィルムにおいて、ウレタン樹脂ビーズは、4μm以上かつ20μm以下の平均粒径を有してもよい。この外照看板フィルムによれば、この範囲の平均粒径を有するウレタン樹脂ビーズが、表面層に入射した光を適度に散乱することによって、表面層に明度の低い、すなわち白みの少ない低光沢性を付与することができる。
別の態様に係る外照看板フィルムは、表面層は、フッ素化合物を含んでもよい。この外照看板フィルムは、外照看板フィルムの表面に低光沢性を付与することができる。
本明細書において、「外照看板フィルム」とは、スポットライトなどの外部照明によって照らされる外照看板フィルムをいう。外照看板フィルムは、外照看板を保護等するためのフィルムであることができ、また、印刷層を備えて、当該印刷層に施された文字や図形などの情報を提供するフィルムであることができる。「印刷層」は、インクなどによって形成された文字や図形を含む層である。「表面層前駆体」は、表面層を作製するための材料を含む媒体をいう。「表面層」は、外照看板フィルムの最上層であることができる。本明細書において、「透明」とは、ある材料又は物品の波長範囲400~700nmにおける全光線透過率が約85%以上であることを意味し、「半透明」とは、ある材料又は物品の波長範囲400~700nmにおける全光線透過率が約20%以上、約85%未満であることを意味し、「不透明」とは、ある材料又は物品の波長範囲400~700nmにおける全光線透過率が約20%未満であることを意味する。全光線透過率はJIS K 7361-1:1997(ISO 13468-1:1996)に準拠して決定される。
以下、図面を参照しながら、外照看板フィルムについて詳細に説明する。本説明において、同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、実施形態に係る外照看板フィルムの断面を模式的に示す図である。外照看板フィルム1は、表面層10と基材層20とを備え、表面層10は、基材層20上に設けられる。基材層20は、第1面20aと、第2面20bとを有し、第2面20bは、第1面20aの反対側に設けられる。表面層10は、基材層20の第1面20a上に設けられることができる。外照看板フィルム1は、必要に応じて、基材層20の第2面20b上に接着層30を有する。基材層20は、表面層10と接着層30との間に位置することができて、表面層10は、外照看板フィルム1の最上層であることができる。表面層10は、上面10aを有し、上面10aは、外照看板フィルム1の最上面であることができる。
接着層30は、基材層20の反対側に下面30bを有し、外照看板フィルム1は、必要に応じて、下面30b上にライナー40を有することができる。また、基材層20は、必要に応じて、例えば、当該基材層20内の表面層10側に印刷層50を有する。印刷層50は、インクなどによって形成された文字や図形を含む。基材層20が印刷層50を有するとき、基材層20は、当該基材層20内において、印刷層50を除く領域に基材層本体22を有し、印刷層50は、表面層10と基材層本体22との間に位置する。
図2は、本実施形態に係る表面光沢度測定装置の概略図である。表面光沢度測定装置60は、外照看板フィルム1の表面光沢度を測定する装置であり、外照看板フィルム1に対して入射光E1を照射する光源62と、例えば、外照看板フィルム1からの反射光R1を検出する検出器64とを備える。表面光沢度測定装置60は、例えば、携帯型光沢計BYKガードナー・マイクロ-トリ-グロス(ビックケミー・ジャパン社、東京都新宿区)である。表面光沢度の測定は、外照看板フィルム1に垂直な基準線SP1から計測して、光入射角20度、60度、及び85度において行われ、表面光沢度は、外照看板フィルム1からの光反射率(%)によって規定されることができる。すなわち、入射光E1の光強度をP1とし、反射光R1の光強度をP2とすると、表面光沢度は、(P2/P1)×100(%)(光強度P2を光強度P1で除し、かつ、100を乗じた値)で規定されることができる。
基材層20上に設けられた表面層10は、光入射角85度以下、すなわち、光入射角85度、60度及び20度において、20%以下の表面光沢度を有する。外照看板フィルム1では、この光入射角85度以下における低い表面光沢度によって、看板上の特定領域における輝度の増大が緩和され、看板上へのホットスポットの生成が抑制されることができる。
更に補足すると、例えば、ビルの上や戸外に設置されることが多い外照看板の看板面は比較的大きいサイズであり、外部照明からの照明光は、看板面全体を照明するために、看板面に対し低い角度(光入射角としては例えば60度~90度の高い角度)から照明光をあてることが望まれる。ここで、光入射角85度以下における表面光沢度を20%以下とすることによって、外照看板として好適な光入射角範囲において効果的にホットスポットの生成を抑制できる。
外照看板フィルム1において、表面層10は、光入射角85度以下、すなわち、光入射角85度、60度及び20度において、7%以下の表面光沢度を有することができる。外照看板フィルム1では、この光入射角85度以下における7%以下の低い表面光沢度によって、看板上の特定領域における輝度の増大がより緩和され、看板上へのホットスポットの生成がより抑制されることができる。
外照看板フィルム1において、表面層10は、光入射角85度以下、すなわち、光入射角85度、60度及び20度において、3%以下の表面光沢度を有することができる。外照看板フィルム1では、この光入射角85度以下における3%以下の低い表面光沢度によって、看板上の特定領域における輝度の増大が更に緩和され、看板上へのホットスポットの生成が更に抑制されることができる。
外照看板フィルム1において、表面層10の表面光沢度が上記範囲の値を有することにより、外照看板フィルム1に様々な角度で入射する光の反射を抑制し、幅広い視角範囲において、外照看板フィルム1に施された文字等を視認することができる。また、外照看板フィルム1が外照看板を保護等するためのフィルムであるときにおいても、外照看板フィルム1を通して、幅広い視角から外照看板に施された文字等を視認することができる。
図3の(a)及び図3の(b)は、表面層の表面光沢度と、ホットスポットの生成との関係を示す概略図である。図3の(a)は、光入射角85度以下において20%以下の表面光沢度を有する表面層10を含む外照看板フィルム1の平面図を示す。一方、図3の(b)は、光入射角85度以下において20%を超える表面光沢度を有する表面層を含む外照看板フィルムCP1の平面図を示す。図3の(a)及び図3の(b)においては、共に、外照看板フィルム1及び外照看板フィルムCP1に対して、スポットライトを含む外部照明が照射されている。
図3の(a)に示されるように、外照看板フィルム1では、当該外照看板フィルム1に施された文字と記号とにおいて欠損する箇所が視認されない。すなわち、外部照明に由来するホットスポットHPが外照看板フィルム1上に生じておらず、当該フィルムにおいては、文字と記号とを全て視認することができる。一方、図3の(b)に示されるように、外照看板フィルムCP1では、外部照明に由来するホットスポットHPが当該フィルム上に生じている。ホットスポットHPでは、その周囲に比べて輝度が高いので、外照看板フィルムCP1に施された文字と記号が白飛びするようになる。すなわち、本来白色ではない文字と記号とが白く見えるようになり、フィルムFL1に施された文字と記号とにおいて、視認に際して欠損する箇所が生じて、文字と記号とを全て視認することができなくなる。図3の(b)では、白飛びした文字と記号との該当箇所を破線で表示している。
図1に示されるように、本実施形態では、表面層10は、バインダー12を含み、また、バインダー12内に、必要に応じて、例えばウレタン樹脂ビーズ14及びナノシリカ粒子16の少なくとも一つ以上を含む。
バインダー12は、例えば、ウレタン樹脂を含む。このウレタン樹脂は、公知の様々なウレタン樹脂であることができて、例えば、ウレタン樹脂組成物を乾燥又は硬化して得られる。ウレタン樹脂組成物は、水系であってもよく非水系であってもよい。ウレタン樹脂は、2液型ウレタン樹脂組成物の硬化物であってもよく、2液型ウレタン樹脂組成物は、一般に非水系ウレタン樹脂組成物であることができる。2液型ウレタン樹脂組成物を用いて作製されたウレタン樹脂では、表面層10の形成時に、表面層10の他の成分、例えばウレタン樹脂ビーズ14やナノシリカ粒子16が、ウレタン樹脂と化学結合を形成することができる。この化学結合の形成は、例えば、ウレタン樹脂ビーズ14やナノシリカ粒子16が表面層10から脱落すること、及びブリードアウトすることを防止又は抑制することができる。
2液型ウレタン樹脂組成物は、例えば、主剤としてポリオールを含み、硬化剤として多官能イソシアネートを含む。また、2液型ウレタン樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、触媒及び/又は溶剤を含む。
主剤としてのポリオールには、例えば、ポリカプロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオールなどのポリエステルポリオールと、シクロヘキサンジメタノールカーボネート及び1,6-ヘキサンジオールカーボネートなどのポリカーボネートポリオールと、それらの組み合わせとが挙げられる。これらのポリオールを用いてウレタン樹脂を作製するときには、表面層10は、透明性、耐候性、強度、及び耐薬品性といった特性を有することができる。ポリカーボネートポリオールを用いてウレタン樹脂を作製するときには、表面層10は、高い透明性及び耐薬品性を有することができる。ジオールを用いてウレタン樹脂を作製するときには、過度の架橋構造が形成されないので、表面層10は高い伸長性を有することができる。このようなジオールには、例えば、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオール、特にポリカーボネートジオールが挙げられる。
主剤としてのポリオールのOH値は、例えば、約10mg/KOH以上、約20mg/KOH以上、又は約30mg/KOH以上、約150mg/KOH以下、約130mg/KOH以下、又は約120mg/KOH以下である。
硬化剤としての多官能イソシアネートは、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及び芳香脂肪族ポリイソシアネートといったポリイソシアネート、及び、これらのポリイソシアネートの多量体(ダイマー、トリマーなど)を含む。また、硬化剤としての多官能イソシアネートは、例えば、ビウレット変性体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、オキサジアジントリオン変性体、及び、カルボジイミド変性体といった変性体を含む。
多官能イソシアネートは、過度の架橋構造を形成させないで、高い伸長性を有する表面層10を形成する観点から、ジイソシアネートであることができる。そのようなジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネートと、イソホロンジイソシアネート、trans,trans-、trans,cis-、及びcis,cis-ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート及びこれらの混合物(水添MDI)などの脂環式ジイソシアネートと、2,4-トリレンジイソシアネート及び2,6-トリレンジイソシアネート、並びに、これらトリレンジイソシアネートの異性体混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、並びに、これらジフェニルメタンジイソシアネートの異性体混合物(MDI)などの芳香族ジイソシアネートと、1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物(XDI)、1,3-若しくは1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート又はその混合物(TMXDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートとが挙げられる。
ポリオールとポリイソシアネートとの当量比は、例えば、ポリオール1当量に対して、ポリイソシアネートが約0.6当量以上、約0.7当量以上、約2当量以下、又は約1.2当量以下である。
2液型ウレタン樹脂組成物のための触媒としては、ウレタン樹脂形成に一般に使用されるもの、例えば、ジ-n-ブチルスズジラウレート、ナフテン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、トリエチレンジアミンなどが挙げられる。触媒の使用量は、例えば、2液型ウレタン樹脂組成物100質量部を基準として、約0.005質量部以上、又は約0.01質量部以上、約0.5質量部以下又は約0.2質量部以下である。
バインダー12は、セルロースエステルを更に含むことができる。セルロースエステル用いてバインダー12を形成するときには、乾燥過程でのバインダー12の粘度が増大して表面流動性が下がるので、バインダーの均一性が向上することができる。セルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
セルロースエステルの分子量は、溶剤への溶解性を考慮して、例えば、約12000以上、約16000以上又は約20000以上、約110000以下、約100000以下又は約90000以下である。
セルロースエステルのガラス転移温度(Tg)は、使用温度での形状維持性を考慮して、例えば、約85℃以上、約96℃以上又は約101℃以上、約190℃以下、約180℃以下又は約160℃以下である。
セルロースエステルは、バインダー12の100質量部を基準として、約5質量部以上、約10質量部以上又は約15質量部以上、約35質量部以下、約30質量部以下又は約25質量部以下の量でバインダー12に含まれてもよい。この範囲の質量部を有するセルロースエステルによれば、ウレタン樹脂ビーズ14が表面層10により均一に分散されて、表面層10が均一な低光沢外観を有することができる。
本実施形態の表面層10は、例えば、ウレタン樹脂ビーズ14を含む。ウレタン樹脂ビーズ14は、表面層10の上面10aにおいて、当該ビーズの外形に由来する微細な凹凸を形成し、外照看板フィルム1の表面に低光沢性を付与することができる。さらに、ウレタン樹脂ビーズ14は、ウレタン樹脂を含むバインダー12との親和性が良いので、バインダー12との密着性が高い。その結果、外照看板フィルム1を伸長又は変形した場合に、バインダー12からのウレタン樹脂ビーズ14の脱離が抑制される。
ウレタン樹脂ビーズ14は、懸濁重合、シード重合、及び乳化重合といった重合によって得られる架橋ポリウレタン微粒子を含むことができる。ウレタン樹脂ビーズ14は、柔軟性、強靭性、及び耐擦傷性などに優れており、これらの特性を表面層10に付与することができる。
ウレタン樹脂ビーズ14の平均粒径D1は、約4μm以上、かつ約20μm以下であることができる。また、ウレタン樹脂ビーズ14の平均粒径は、約6μm以上、又は約10μm以上であってもよく、約10μm以下、又は約15μm以下であってもよい。
ウレタン樹脂ビーズ14の平均粒径が約4μm未満の場合は、光の散乱による外照看板フィルム1の表面の白化を生じやすくなる。ウレタン樹脂ビーズ14の平均粒径が約20μmを超えると、光沢が生じやすくなり、低光沢性が得られにくくなる。
ウレタン樹脂ビーズ14の平均粒径は、約4μm以上、かつ約20μm以下であるときに、ウレタン樹脂ビーズ14は、表面層10の上面10aに適度な凹凸形状を形成することができる。その結果、表面層10に入射した光が適度に散乱されて、表面層10に明度の低い、すなわち、白み又は白飛びの少ない低光沢性が付与される。
ウレタン樹脂ビーズ14は、表面層10内において、例えば、バインダー12の100質量部を基準として約70質量部以上、約80質量部以上、又は約100質量部以上、約240質量部以下、約230質量部以下、又は約200質量部以下の量で含まれる。ウレタン樹脂ビーズの配合量が約70質量部未満であると、表面層10において低光沢性が得られにくく、約240質量部を超えると、表面層10が白化しやすくなる。表面層10は、この範囲の質量部を有するウレタン樹脂ビーズ14を含むとき、幅広い視角範囲において低光沢を示すことができる。
ナノシリカ粒子16は、例えば、水ガラス(ケイ酸ナトリウム溶液)を出発原料として得られるシリカゾルである。ナノシリカ粒子の表面は、シラン、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、チタネートなどの表面処理剤によって改質されることができる。
ナノシリカ粒子16の平均粒径D2は、約10nm以上、約20nm以上、又は約30nm以上、約100nm以下、約75nm以下、又は約45nm以下である。このように、微小なサイズのナノシリカ粒子を使用することで、ナノシリカ粒子16を表面層10中に高濃度に分散させることができる。表面層10を伸長した場合にも、微小なナノシリカ粒子16は、表面層10内の延伸された領域内に分散して残留するので、低光沢性の消失が抑えられ、表面層10の白化を効果的に防止することができる。ウレタン樹脂ビーズ14に隣接して存在するナノシリカ粒子16が、ウレタン樹脂ビーズ14とバインダー12間のある種の物理的架橋点として働く可能性もある。このような物理的架橋点として作用しうるナノシリカ粒子16の存在により、表面層10を伸長した際のウレタンビーズの脱落が抑制され、表面層10の白化を効果的に防止することができる。
ナノシリカ粒子16は、表面層10において、バインダー100質量部を基準として約5質量部以上、約10質量部以上、又は約20質量部以上、約120質量部以下、約110質量部以下、又は約100質量部以下の量で含まれてよい。表面層10は、この範囲の質量部を有するナノシリカ粒子を含むことによって、伸長可能フィルムの伸長時にも低光沢の外観を維持し、例えば150%伸長時に、明度の上昇すなわち白化を防止又は抑制することもできる。また、表面層10は、この範囲の質量部を有するナノシリカ粒子を含むことによって、優れた耐擦傷性を有することができる。
表面層10は、イソシアネート又は水酸基と反応可能な官能基を有するシリコーン変性ポリマーをさらに含んでもよい。低光沢の表面層10に指脂が付着すると、指脂の痕跡が容易に観察されて看板に描かれた文字等の視認性が低下するが、シリコーン変性ポリマーを含む表面層10は、高い耐指紋性を有することができる。また、シリコーン変性ポリマーを含む表面層10では、摩擦係数が低下して耐擦傷性が向上する。シリコーン変性ポリマーのイソシアネート又は水酸基は、バインダー12中のウレタン樹脂又はウレタン樹脂ビーズの水酸基又はイソシアネート基と反応してシリコーン変性ポリマーがウレタン樹脂又はウレタン樹脂ビーズに結合していてもよい。シリコーン変性ポリマーが表面層10からブリードアウトすることが防止又は抑制されることができる。
イソシアネート又は水酸基と反応可能な官能基を有するシリコーン変性ポリマーとしては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、シリコーン変性ポリアクリレート、及びウレタン変性シリコーンといったシリコーン変性ポリマーが挙げられる。シリコーン変性ポリマーのイソシアネート又は水酸基と反応可能な官能基としては、例えば、水酸基、活性水素を有するアミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、及び酸無水物基といった官能基が挙げられる。シリコーン変性ポリマーのうち、シリコーン変性ポリアクリレートは、特に高い耐指紋性を有する。シリコーン変性ポリマーは、イソシアネート又は水酸基との反応性が高い水酸基又はイソシアネート基、特に水酸基を有することができる。
イソシアネート又は水酸基と反応可能な官能基を有するシリコーン変性ポリマー、例えばシリコーン変性ポリアクリレートは、表面層10内において、バインダー12の100質量部を基準として約0.1質量部以上、約0.5質量部以上、又は約1.0質量部以上、約15質量部以下、約12質量部以下、又は約10質量部以下の量で含まれることができる。表面層10は、この範囲の質量部を有するシリコーン変性ポリマーを含むことによって、高い耐指紋性及び/又は高い耐擦傷性を有することができる。
表面層10は、その他の任意成分として、ウレタン樹脂ビーズ及びナノシリカ粒子以外のフィラー、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、及びレベリング剤といった添加剤を含むことができる。これらの添加剤の個々の及び合計の配合量は、表面層10に必要な特性を損なわない範囲で決定される。
表面層10は、表面層前駆体を用いて形成することができる。表面層前駆体は、例えば、バインダー12のためのバインダー樹脂、ウレタン樹脂ビーズ14、及び、ナノシリカ粒子16を含む。
バインダー12のためのバインダー樹脂は、例えば、ウレタン樹脂組成物を含み、また、このほか、セルロースエステルを更に含むことができる。バインダー樹脂がセルロースエステルを含むことによって、表面層前駆体は、速乾性、指触乾燥性、フロー性、又はレベリング性といった特性を有することができる。セルロースエステルは、表面層前駆体の作製時に、その表面層前駆体の粘度を調整することができる。
表面層前駆体は、イソシアネート又は水酸基と反応可能な官能基を有するシリコーン変性ポリマーを更に含むことができる。シリコーン変性ポリマーのイソシアネート又は水酸基は、ウレタン樹脂組成物又はウレタン樹脂ビーズの水酸基又はイソシアネート基と反応することによって、シリコーン変性ポリマーをウレタン樹脂又はウレタン樹脂ビーズに結合させることができる。この結合は、シリコーン変性ポリマーが表面層10からブリードアウトすることを防止又は抑制することができる。シリコーン変性ポリマーが用いられるとき、ウレタン樹脂組成物は、その高い反応性に鑑み、2液型ウレタン樹脂組成物であることができる。
表面層前駆体における各材料の配合量は、表面層10における各材料の配合量と同等であることができる。表面層前駆体における各材料、具体的には、例えば、セルロースエステル、ウレタン樹脂ビーズ、ナノシリカ粒子、及びイソシアネート又は水酸基と反応可能な官能基を有するシリコーン変性ポリマーである。
表面層前駆体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1-メトキシ-2-プロピルアセテート)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテルなどの溶剤をさらに含むことができる。表面層前駆体は、これらの溶剤を含むとき、作業性及び塗工性といった特性を向上させることができる。表面層前駆体中の溶剤の配合量は、例えば、樹脂組成物100質量部を基準として、約20質量部以上、又は約30質量部以上、約60質量部以下又は約50質量部以下である。
表面層前駆体の粘度は、例えば、約20mPa・s以上、約50mPa・s以上、又は約100mPa・s以上、約1000mPa・s以下、約800mPa・s以下、又は約600mPa・s以下である。表面層前駆体の粘度は、B型粘度計を用い、適当なスピンドルを選択して回転数60rpmで測定されることができる。
表面層前駆体は、例えば、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート及びキャストコートといった手法によって、基材層20上にコーティングされ、このコーティング後に表面層10が作製される。表面層10の作製工程では、基材層20上に設けられた表面層前駆体は、必要に応じて、例えば、約80℃~150℃の温度に加熱されて乾燥及び/又は硬化される。
外照看板フィルム1において、表面層10は、フッ素化合物を含んでもよい。フッ素化合物を含むフィルムとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムが使用できる。これらのフィルムは、デンカ社(東京都中央区)、又はクレハエステック社(茨城県かすみがうら市)から入手可能である。
フッ素化合物を含むフィルムは、透明であることが望ましい。フッ素化合物を含むフィルムは、可視域(400nm~700nm)の範囲において、70%以上又は80%以上の透過率を有することが望ましい。
さらに、フッ素化合物を含むフィルムにおいて、例えば、フィルム厚が20μmのときに、ヘイズは、0.5~10%の範囲であることができる。また、このフィルム厚20μmのときに、ヘイズは、1~5%の範囲であることができる。
表面層10は、フッ素化合物を含むフィルムのほか、透明ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含むフィルムを有することができる。これら表面層のフィルムは、エンボスなどの表面加工によって形成される構造化表面を有してもよい。エンボス加工は、例えば、表面に所定の凹凸パターンを有するニップロールによって形成することができる。
エンボス加工によって、表面層10のフィルムは、凹凸形状を有する。この凹凸形状に由来するエンボス深度は、5μm以上かつ150μm以下であることができる。また、エンボス深度は、10μm以上かつ100μm以下であることができる。さらに、エンボス深度は、20μm以上かつ40μm以下であることができる。なお、エンボス深度は、凹凸形状を有するフッ素フィルムにおいて、凸部の最高点(最上点)から、凹部の最低点(最深部)までの距離によって規定される。エンボス加工によって、表面層10は、低光沢な光学特性を付与することができる。
コーティング法によって表面層10を形成する場合、又は、基材層20と異なるフィルムを当該基材層20に貼り合わせて表面層10を形成する場合において、表面層10の厚さは、例えば約3μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約50μm以下、約30μm以下、又は約20μm以下とすることができる。また、表面層10の厚さは、例えば約20μm以上、約50μm以上、又は約80μm以上、約200μm以下、約150μm以下、又は約100μm以下とすることができる。本開示における表面層10の厚さとは、最も厚い部分の厚さ、すなわち最大厚さを意味する。本実施形態では、基材層20と異なるフィルムとの貼り合わせは、例えば、加熱加工ロールを用いた熱溶着といった方法によることができる。
表面層10は、可視域において透明又は半透明であることができる。具体的には、表面層10は、例えば、波長400~700nmの範囲において、約80%以上、約85%以上、又は約90%以上の全光線透過率を有する。この光透過特性によって、基材層20内の表面層10側に設けられた印刷層50の文字や図形は、当該表面層10を通して視認されることができる。
基材層20は、伸長可能な材料を含むことができる。基材層20は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。
基材層20は、有色であってもよく無色であってよく、不透明、半透明又は透明であってもよい。基材層20は、例えば、透明ポリ塩化ビニル樹脂層と、有色ポリ塩化ビニル樹脂層とを含む。透明ポリ塩化ビニル樹脂層は、有色ポリ塩化ビニル樹脂層を支持又は保護することができるので、外照看板フィルム1は、高い耐久性を有することができる。外照看板フィルム1は、例えば、建造物などに貼り付ける看板用途に好適に使用されることができる。
基材層20の厚さは、例えば、約25μm以上、約50μm以上、又は約80μm以上、約5mm以下、約1mm以下、又は約0.5mm以下である。
接着層30は、一般に使用されるアクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を含むことができる。接着層30の厚さは、例えば、約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約100μm以下、約80μm以下、又は約50μm以下である。
ライナー40は、例えば、紙、プラスチック材料、及びプラスチック材料で被覆された紙を含む。プラスチック材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及び酢酸セルロースを含む。本実施形態において、ライナー40は、シリコーンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。ライナー40の厚さは、例えば、約5μm以上、約15μm以上又は約25μm以上、約500μm以下、約300μm以下又は約250μm以下である。
印刷層50は、基材層20内において、例えば、インク、トナーなどの着色剤を用いた印刷技術によって形成される。印刷技術として、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、静電印刷、インクジェット印刷、又は熱転写印刷などが挙げられる。印刷層50は、外照看板フィルム1に対して、文字や図形等の印刷画像を提供する。
以下、本発明の実施例及び比較例により、外照看板フィルムについて更に説明する。本発明は、下記例に制限されない。
(実施例1)
(表面層前駆体の作製)
初めに、表1に示す材料を用いて、表面層前駆体のための混合物を準備した。混合物は、ウレタン樹脂ビーズ(Art pearl CE-800T-200)、ポリカーボネートジオール(T5652)、溶剤メチルイソブチルケトン(MIBK)中にナノシリカ粒子を30質量%分散させた分散液(MIBK ST L)、セルロースアセテートブチレート(CAB-381-20)、水酸基含有シリコーン変性ポリマー(SILCLEAN 3700)、及び、キシリレンジイソシアネート(D110N)を含む。本実施例では、溶剤(1-メトキシ-2-プロピルアセテート)中に混合物を分散させて、混合溶液を調製した。混合溶液における混合物の配合率は、30質量%であった。混合物における各材料の配合量は、表2に示した通りである。
混合溶液の調製後、攪拌機を用いて混合溶液を3.5分間撹拌して、表面層前駆体を作製した。撹拌機には、自公転型遠心撹拌機THINKY AR-250(シンキー社、東京都千代田区)を用いた。
(外照看板フィルムの作製)
続いて、表面層前駆体を、基材層上にナイフコーター法によって塗布した。基材層は、ポリ塩化ビニルフィルム(PVCフィルム)とした。基材層の厚さは、50μmである。ナイフコーター装置のナイフの先端と基材層とのギャップは、40μmとした。ナイフコーター法による塗布後、基材層上の表面層前駆体をオーブン内で乾燥及び熱硬化させて、基材層上に表面層を形成した。表面層の乾燥厚さは、約12μmであった。オーブン内での乾燥及び熱硬化は、二つの工程を有し、一つ目の工程では、基材層上の表面層前駆体を温度65℃で2分間、乾燥及び熱硬化させた。二つ目の工程では、一つ目の工程の後に、基材層上の表面層前駆体を温度120℃で5分間、乾燥及び熱硬化させた。乾燥及び熱硬化の工程後、外照看板フィルムの作製が完成した。作製した外照看板フィルムでは、バインダー100重量部に対するウレタン樹脂ビーズの配合量(100を乗じた値)は、143重量部であった。バインダー100重量部に対するナノシリカ粒子の配合量(100を乗じた値)は、42.9重量部であった。
実施例1では、表面層及び基材層において特にエンボス加工はなされておらず、また、基材層は、印刷層を有していない。
(表面光沢度の測定)
本実施例において作製した外照看板フィルムに対して、表面光沢度を測定した。表面光沢度の測定は、光入射角20度、60度、及び85度において行った。測定装置は、携帯型光沢計BYKガードナー・マイクロ-トリ-グロス(ビックケミー・ジャパン社、東京都新宿区)とした。本実施例では、測定装置の光源からの光を外照看板フィルムに照射し、外照看板フィルムからの光反射率を測定した。表面光沢度は、その外照看板フィルムからの光反射率(%)によって規定した。
(ホットスポットの観察)
図4は、実施例1に係るホットスポット測定装置の概略図である。実施例1では、ホットスポット測定装置70を用いて、外照看板フィルムのサンプル72に係るホットスポットの観察を行った。ホットスポット測定装置70は、サンプル72に対して光L1を照射する光源74と、サンプル72上のホットスポットを観察する検出器76と、サンプル支持台78を備える。光源74には、スポットライトERS3149(遠藤照明社、大阪市中央区)を用いた。検出器76には、サンプル72を撮影する撮影装置と、サンプル72上の輝度を計測する輝度計とを用いた。撮影装置には、デジタルカメラDMC-LF1(パナソニック社、大阪府門真市)を用いて撮影し、得られた画像から、輝度解析ソフトRISA-DCJ(3M社、東京都品川区)を用いて輝度分布を出力した。
本実施例では、光源74からサンプル72への光L1の入射角TH1は、57.5度とした。検出器76は、サンプル72に対して、ほぼ正面に位置するように配置された。ホットスポットの観察では、サンプル72上にホットスポットがほぼ全く認められない場合を「A(非常に良好)」と評価し、殆ど認められない場合を「B(良好)」と評価し、サンプル上にホットスポットが認められた場合を「C(不良)」と評価した。
(実施例2)
実施例2では、表面層にフッ素フィルムを用い、基材層に黒色PVCフィルムを用いた。フッ素フィルムには、DXフィルム(デンカ社、東京都中央区)を用いた。本実施例で用いたフッ素フィルムは、フィルム厚20±2μmのときに、可視光線透過率は93.4%であり、ヘイズは1.3%であった。黒色PVCフィルムの厚さは、140μmであった。
本実施例では、フッ素フィルムと黒色PVCフィルムとを積層した後、加熱加工ロールを用いた熱溶着によって、フッ素フィルムと黒色PVCフィルムとを貼り合わせた。貼り合わせと同時に、フィルム表面に対してエンボス加工を施した。加熱加工ロールはニップロールを有し、ニップロールのライン速度は7m/分であり、ニップ圧力は0.2MPaであった。また、圧着時の温度は、60℃であった。
本実施例でフィルムに施したエンボスは、梨地パターンを有し、エンボス深度は、約40μmであった。基材層は、印刷層を有していない。実施例2では、実施例1と同様に、表面光沢度の測定、及びホットスポットの観察を行った。
(実施例3)
実施例3では、表面層に透明ポリ塩化ビニル樹脂フィルム(クリアPVCフィルム)を用い、基材層にPVCフィルムを用いた。表面層のクリアPVCフィルムの厚さは、80μmであり、可視域透過率は、91.5%であった。基材層のPVCフィルムの厚さは、80μmであった。
本実施例では、クリアPVCフィルムとPVCフィルムとを積層した後、加熱加工ロールを用いた熱溶着によって、クリアPVCフィルムとPVCフィルムとを貼り合わせた。貼り合わせと同時に、フィルム表面に対してエンボス加工を施した。貼り合わせ及びエンボス加工は、実施例2と同様の装置及び作製条件によった。
本実施例でフィルムに施したエンボスは、砂目パターンであり、エンボス深度は、約100μmであった。基材層は、印刷層を有していない。実施例3では、実施例1と同様に、表面光沢度の測定、及びホットスポットの観察を行った。
(実施例4)
実施例4では、表面層にクリアPVCフィルムを用い、基材層にPVCフィルムを用いた。クリアPVCフィルムには、実施例3と同じフィルムを用いた。基材層のPVCフィルムの厚さは、80μmであった。本実施例でも、クリアPVCフィルムとPVCフィルムとを積層した後、加熱加工ロールを用いた熱溶着によって、クリアPVCフィルムとPVCフィルムとを貼り合わせた。貼り合わせと同時に、フィルム表面に対してエンボス加工を施した。貼り合わせ及びエンボス加工は、実施例2と同様の装置及び作製条件によった。
クリアPVCフィルム側の表面に施したエンボスは、布目パターンであり、エンボス深度は、約100μmであった。基材層は、印刷層を有していない。実施例4では、実施例1と同様に、表面光沢度の測定、及びホットスポットの観察を行った。
(実施例5)
実施例5では、表面層にクリアPVCフィルムを用い、基材層にPVCフィルムを用いた。クリアPVCフィルムには、実施例3と同じフィルムを用いた。基材層のPVCフィルムの厚さは、80μmであった。本実施例でも、クリアPVCフィルムとPVCフィルムとを積層した後、加熱加工ロールを用いた熱溶着によって、クリアPVCフィルムとPVCフィルムとを貼り合わせた。貼り合わせと同時に、フィルム表面に対してエンボス加工を施した。貼り合わせ及びエンボス加工は、実施例2と同様の装置及び作製条件によった。
クリアPVCフィルム側の表面に施したエンボスは、梨地パターンであり、エンボス深度は、約40μmであった。基材層は、印刷層を有していない。実施例5では、実施例1と同様に、表面光沢度の測定、及びホットスポットの観察を行った。
(実施例6)
実施例6では、表面層にクリアPVCフィルムを用い、基材層にPVCフィルムを用いた。クリアPVCフィルムには、実施例3と同じフィルムを用いた。基材層のPVCフィルムの厚さは、80μmであった。本実施例でも、クリアPVCフィルムとPVCフィルムとを積層した後、加熱加工ロールを用いた熱溶着によって、クリアPVCフィルムとPVCフィルムとを貼り合わせた。貼り合わせと同時に、フィルム表面に対してエンボス加工を施した。貼り合わせ及びエンボス加工は、実施例2と同様の装置及び作製条件によった。
クリアPVCフィルム側の表面に施したエンボスは、梨地パターンであり、エンボス深度は、約10μmであった。基材層は、印刷層を有していない。実施例6では、実施例1と同様に、表面光沢度の測定、及びホットスポットの観察を行った。
(比較例1)
比較例1では、基材層にPVCフィルムを用いた。PVCフィルムの厚さは、50μmであった。比較例1に係る外照看板フィルムは、表面層を有しておらず、また、基材層内に印刷層を有していない。比較例1では、実施例1と同様に、表面光沢度の測定、及びホットスポットの観察を行った。
図5の(a)~(f)は、それぞれ、実施例1~実施例6に係るホットスポットの写真撮影の結果を示す図である。図5の(g)は、比較例1に係るホットスポットの写真撮影の結果を示す図である。
図6の(a)~(f)は、それぞれ、実施例1~実施例6に係るホットスポットの輝度測定の結果を示す図である。図6の(g)は、比較例1に係るホットスポットの輝度測定の結果を示す図である。図6の(a)~(g)においては、それぞれ、H1~H7と表記されている領域は、サンプル上で最大輝度を示したスポットを示している。
表3は、実施例1~実施例6、及び比較例1において、表面光沢度の測定、及びホットスポットの観察を行った結果を示す表である。表3の「写真撮影」の欄における「図5の(a)」とは、実施例1についての写真撮影の結果が、図5の(a)に示されていることを示す。また、「輝度測定」の欄における「図6の(a)」とは、実施例1についての輝度測定の結果が、図6の(a)に示されていることを示す。
表3における「評価」の欄は、光源74からサンプル72への光L1の入射角TH1が57.5度であるときの結果であるが(図4を参照)、入射角TH1が20~85度の範囲であるときも、入射角TH1が57.5度であるときと、同様の結果が得られた。