第一実施形態の燃料電池発電システム12について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、燃料電池発電システム12は、改質器14、第一燃料電池16、第二燃料電池26、分離装置18、吸着器20、凝縮器22、および冷凍機24を有している。
第一燃料電池16は、本実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。具体的には、第一燃料電池16は、第一電解質層16Bと、この第一電解質層16Bの一方の面に積層された第一燃料極16Aと、他方の面に積層された第一空気極16Cとを有している。
なお、第二燃料電池26の基本構成は、第一燃料電池16と同様であり、第一電解質層16Bに対応する第二電解質層26B、第一燃料極16Aに対応する第二燃料極26A、第一空気極16Cに対応する第二空気極26C、を有している。
改質器14には、燃料ガス管40の一端が接続されており、燃料ガス管40の他端は、第一燃料電池16の第一燃料極16Aに接続されている。これにより、第一燃料電池16の第一燃料極16Aに、燃料ガス管40を介して、改質器14が接続されている。
改質器14には、燃料源及び水蒸気が導入されるようになっている。そして、改質器14は、導入された燃料源を、水素を多く含む改質ガス(燃料ガス)に改質する。たとえば、改質器14に導入する燃料源としてメタンを用いる場合、改質器14では、下記(1)式に示すように、燃料源のガスであるメタンが水蒸気改質され、水素と一酸化炭素が生成される。また、下記(2)式に示すように、生成された一酸化炭素と水とのシフト反応により二酸化炭素と水素が生成される。
CH4+H2O→3H2+CO …(1)
CO+H2O→CO2+H2 …(2)
この改質ガスが、燃料ガス管40を通じて、第一燃料電池16の第一燃料極16Aに送られる。
本実施形態では、改質器14に導入する燃料源として上記したようにメタンを用いているが、改質により水素を生成可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、バイオガス、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、本実施形態で用いるメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスは天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。原料ガスに不純物が含まれる場合、脱硫器等が必要になるが、図では省略されている。
そして、第一燃料極16Aにおいて、下記(3)式に示すように、水素と酸素イオンとから、水と電子とが生成される。
(燃料極反応)
H2+O2-→H2O+2e-…(3)
電子は、外部回路(図示省略)を通って第1空気極へ移動する。これにより、第一燃料電池16において発電される。
第一燃料電池16の第一空気極16Cには、空気管42が接続されており、この空気管42を通して、酸化剤ガスとしての空気が第一空気極16Cに供給される。
本実施形態では、空気管42の途中に圧縮装置28が設けられている。圧縮装置28は、大気を圧縮することで、第一空気極16Cに供給する空気を昇圧する。
第一空気極16Cでは、下記(4)式に示すように、空気管42を通じて供給された空気中の酸素と、外部回路を通って第一燃料極16Aから移動した電子とが反応し、酸素イオンが生成される。
(空気極反応)
(1/2)O2+2e-→O2- …(4)
第一燃料極16Aには、第一燃料極オフガス管44Fの一端が接続されている。第一燃料極オフガス管44Fの他端は、分離装置18に接続されている。
第一燃料極16Aから排出される第一燃料極オフガスには、第一燃料極16Aにおいて未反応の水素の他に二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素等が含まれる。分離装置18は、本実施形態では、供給された第一燃料極オフガスから、少なくとも二酸化炭素を分離する分離膜を有している。実際には、分離装置18では、第一燃料極オフガスにおいて、二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素等と、水素とを分離する。
分離装置18には、リサイクルガス管46の一端が接続されている。リサイクルガス管46の他端は、第二燃料電池26の第二燃料極26Aに接続されている。分離装置18で第一燃料極オフガスから少なくとも二酸化炭素が分離されたガス(水素を含有している)が、リサイクル燃料ガスとして、リサイクルガス管46を通じて第二燃料電池26の第二燃料極26Aに送られる。
第一燃料電池16の第一空気極16Cには、第一空気極オフガス管48Fの一端が接続されている。第一空気極オフガス管48Fの他端は、第二燃料電池26の第二空気極26Cに接続されている。第一燃料電池16の第一空気極16Cから排出された第一空気極オフガスは、第一空気極オフガス管48Fを通って、第二燃料電池26の第二空気極26Cに送られる。第二燃料電池26では、第一燃料電池16と同様の発電反応が行われる。
吸着器20は、第一酸素吸着塔30Fと、第二酸素吸着塔30Sを備えている。第一酸素吸着塔30Fと、第二酸素吸着塔30Sとは、後述するように処理対象ガスの流れ方向(矢印F1方向)に対し並列で設けられている。
分離装置18には、分離ガス管50の一端が接続されている。分離ガス管50は、中間の分岐部52において、分離ガス分岐管50P、50Qに分岐されており、それぞれ、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sに接続されている。分離ガス分岐管50P、50Qにはそれぞれ、第一分離ガス開閉弁72F、第二分離ガス開閉弁72Sが設けられている。図2に示すように、第一分離ガス開閉弁72F、第二分離ガス開閉弁72Sの開閉は、制御装置60によって制御される。
第二燃料極26Aには、第二燃料極オフガス管44Sの一端が接続されている。第二燃料極オフガス管44Sの他端は、分離ガス管50において、一端から分岐部52までの間の位置(合流部54)で接続されている。分離装置18から排出された分離ガスと、第二燃料極26Aから排出された第二燃料極オフガスとは、合流部54で合流する。分離ガス管50と、第二燃料極オフガス管44Sとは、吸着器20によって酸化処理される対象のガス(処理対象ガス)が流れる配管であり、以下では、処理対象ガス管56ということがある。
第二空気極26Cには、第二空気極オフガス管48Sの一端が接続されている。第二空気極オフガス管48Sは、中間の分岐部58において、第二空気極オフガス分岐管58P、58Qに分岐され、それぞれ、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sに接続されている。第二空気極オフガス分岐管58P、58Qにはそれぞれ、第一酸素導入開閉弁74F、第二酸素導入開閉弁74Sが設けられている。図2に示すように、第一酸素導入開閉弁74F、第二酸素導入開閉弁74Sの開閉は、制御装置60によって制御される。
第一酸素吸着塔30Fには、第一濃度センサ32Fを介して、第一凝縮管64Fと第一開放管66Fとが接続されている。本実施形態では第一濃度センサ32F側の1本の管が分岐されて、第一凝縮管64Fと第一開放管66Fとが構成されている。
第一凝縮管64Fには第一凝縮器22Fが設けられている。第一開放管66Fは、他端側で大気開放されている。第一開放管66Fからは、酸素含有ガス中の酸素が第一酸素吸着塔30Fの酸素吸着材に吸着された後のガス、すなわち窒素の濃度が高められた窒素富化ガスが排出される。
第一濃度センサ32Fは、処理対象ガスが第一酸素吸着塔30Fで酸化されて排出されるガス(酸化後ガス)の各成分、具体的には、少なくとも二酸化炭素、酸素、水素及び一酸化炭素の濃度を検出する。そして、検出データを制御装置に送信する。
第一凝縮管64F及び第一開放管66Fにはそれぞれ、第一凝縮器開閉弁76F、第一開放管開閉弁78Fが設けられている。図2に示すように、第一凝縮器開閉弁76F、第一開放管開閉弁78Fの開閉は制御装置60によって制御される。
第二酸素吸着塔30Sには、第二濃度センサ32Sを介して、第二凝縮管64Sと第二開放管66Sとが接続されている。
第二凝縮管64Sには第二凝縮器22Sが設けられている。第二開放管66Sは、他端側で大気開放されている。第二開放管66Sからは、酸素含有ガス中の酸素が第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材に吸着された後のガス、すなわち窒素の濃度が高められた窒素富化ガスが排出される。
本実施形態では、第一凝縮管64Fと第一開放管66Fとは、第一濃度センサ32Fよりも下流側で1本の管が分岐されることにより構成されている。同様に、第二凝縮管64Sと第二開放管66Sとは、第二濃度センサ32Sよりも下流側で1本の管が分岐されることにより構成されている。
第二濃度センサ32Sは、第二酸素吸着塔30Sからの酸化後ガスの各成分、具体的には、少なくとも二酸化炭素、酸素、水素及び一酸化炭素の濃度を検出する。そして検出データを制御装置に送信する。
第二凝縮管64S及び第二開放管66Sにはそれぞれ、第二凝縮器開閉弁76S、第二開放管開閉弁78Sが設けられている。図に示すように、第二凝縮器開閉弁76S、第二開放管開閉弁78Sの開閉は制御装置60によって制御される。
以下において、単に「バルブ80」というときは、これらの第一分離ガス開閉弁72F、第二分離ガス開閉弁72S、第一酸素導入開閉弁74F、第二酸素導入開閉弁74S、第一凝縮器開閉弁76F、第一開放管開閉弁78F、第二凝縮器開閉弁76S、第二開放管開閉弁78Sを意味する。これらのバルブ80は、切替部材の一例である。
第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sはそれぞれ、加熱装置34F、34Sを有している。加熱装置34F、34Sは制御装置60によって制御され、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材における酸素の吸着及び脱着が効率的になされるように、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sを加熱する。
第一凝縮器22F及び第二凝縮器22Sには、冷媒管68F、68Sを介して冷凍機24が接続されている。冷凍機24からの冷媒供給により、第一凝縮器22F及び第二凝縮器22Sを冷却し、内部の気体を凝縮することができる。第一凝縮器22F及び第二凝縮器22Sの電力は、たとえば、第一燃料電池16や第二燃料電池26から供給されてもよいし、これらの燃料電池とは別の外部電源から供給されてもよい。第一凝縮器22F及び第二凝縮器22Sが第一燃料電池16や第二燃料電池26から電力供給を受ける構成では、外部電源が不要である。
第一凝縮器22F及び第二凝縮器22Sの下流側には、それぞれ、図示しない回収タンクが設けられている。第一凝縮器22F及び第二凝縮器22Sからは、酸化後ガスの二酸化炭素濃度がさらに高められた二酸化炭素富化ガスが排出される。この二酸化炭素富化ガスが、回収タンクで回収される。
空気管42と第二燃料極オフガス管44Sとは、バイパス管70によって連通されている。空気管42に導入された空気を、バイパス管70を通ることで、第一空気極16C及び第二空気極26Cを経ることなく、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sに送ることが可能である。
第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sには、導入された気体の酸素分圧によって、酸素を可逆的に吸着又は脱着する酸素吸着材が収容されている。具体的には、この酸素吸着材は、導入された気体の酸素分圧が所定値以上である場合に、酸素を吸着する。また、酸素分圧が所定値以下である場合には、吸着している酸素を脱着する。
本実施形態では、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sに収容された酸素吸着材として、400℃以上800℃以下の温度、すなわち常温よりも高温の温度域において、酸素を吸着する効率が高い酸素吸着材が用いられている。ただし、高温吸着材としては、400℃未満や800℃超でも酸素吸着は可能である。
次に、本実施形態の作用を説明する。
第一燃料電池16では、第一燃料極16Aに供給された水素を含む燃料ガス(改質ガス)と、第一空気極16Cに供給された酸素を含む空気と、により、発電が行われる。そして、第一燃料極16Aで発生した第一燃料極オフガスが分離装置18に送られる。
分離装置18では、第一燃料極オフガスから水素を分離し、この水素は、リサイクル燃料ガスとして、リサイクルガス管46を通じて第二燃料電池26の第二燃料極26Aに送られる。
第一燃料電池16の第一空気極16Cからは、第一空気極オフガスが、第一空気極オフガス管48Fを通じて第二燃料電池26の第二空気極26Cに送られる。
第二燃料電池26では、第二燃料極26Aに供給された水素を含むリサイクル燃料ガスと、第二空気極26Cに供給された酸素を含む第一空気極オフガスと、により発電が行われる。
このように、本実施形態では、第一燃料電池16の第一燃料極オフガスと第一空気極オフガスとを、第二燃料電池26で再度用いることで、第一燃料電池16と第二燃料電池26の二段階で発電を行える。したがって、一段階で発電を行う構成と比較して、効率的な発電が可能である。
第二燃料極26Aで発生した第二燃料極オフガスは、第二燃料極オフガス管44Sを通じて、分離ガス管50内の分離ガスと合流する。第二空気極26Cの空気極オフガスは、第二空気極オフガス管48Sを通じて、第一酸素吸着塔30Fまたは第二酸素吸着塔30Sに供給可能な状態となる。
制御装置60は、第一濃度センサ32F及び第二濃度センサ32Sで検出した気体の濃度成分に基づいて、各バルブ80の開閉を制御する。これにより、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sのいずれか一方では、酸素吸着材に酸素が吸着され、他方では、酸素吸着材から酸素が脱着される。
第二燃料極オフガス及び分離ガスには、未燃焼の成分である水素や一酸化炭素(以下、これら未燃焼のガス成分を単に「未燃成分」という)が残存している。酸素吸着材から酸素が脱着されると、この脱着された酸素により、これらの未燃成分を速やかに酸化させることができる。これは、未燃成分が酸素と接触する環境が、各未燃成分の自着火温度より高く、かつ酸素吸着材の成分が、未燃成分と酸素の酸化反応を促進する触媒としての機能を兼ね備えているためである。すなわち、本実施形態では、酸化剤ガスである酸素を、第二空気極オフガスから、処置対象ガス(第二燃料極オフガス及び分離ガスに)に作用させて、未燃成分を、酸素吸着材から脱着された酸素により、その場で速やかに酸化させることができる。
ここで、これらのバルブ80の開閉状態には、図3に示す第一状態と、図4に示す第二状態と、がある。
図3に示す第一状態では、第一酸素吸着塔30Fは、酸素吸着状態である。具体的には、第一分離ガス開閉弁72F及び第一凝縮器開閉弁76Fが閉弁され、第一酸素導入開閉弁74F及び第一開放管開閉弁78Fが開弁されている。したがって、第一酸素吸着塔30Fには、酸素含有ガスである第二空気極オフガス又は空気が供給される。そして、この酸素含有ガス中の酸素分圧により、第一酸素吸着塔30Fの酸素吸着材に酸素が吸着される。酸素吸着材で吸着しきれなかった酸素は、第一開放管66Fから窒素富化ガスとして大気中に排出される。このため、酸素含有ガスを継続的に第一酸素吸着塔30Fの酸素吸着材に送って、多くの酸素を酸素吸着材に吸着させることができる。
このとき、第一凝縮器開閉弁76Fは閉弁されている。したがって、第一酸素吸着塔30Fから、たとえば酸化後ガスが第一凝縮管64Fを通って不用意に排出されることはない。さらに、第一分離ガス開閉弁72Fも閉弁されているので、処理対象ガスが第一酸素吸着塔30Fに供給されたり、第一酸素吸着塔30F及び第一凝縮管64Fを通って排出されたりすることもない。
また、この第一状態では、第二酸素吸着塔30Sは、酸素脱着状態である。具体的には、第二分離ガス開閉弁72S及び第二凝縮器開閉弁76Sが開弁され、第二酸素導入開閉弁74S及び第二開放管開閉弁78Sが閉弁されている。したがって、第二酸素吸着塔30Sには、第二燃料電池26の第二燃料極26A及び分離装置18から、処理対象ガスが供給される。
この処理対象ガス(第二燃料極オフガス及び分離ガス)には、二酸化炭素の他に、水蒸気、水素、一酸化炭素等の未燃成分が含まれている。水素は、第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材から脱離された酸素との酸化反応により、水蒸気になる。第二凝縮器開閉弁76Sが開弁されているので、水蒸気は第二凝縮器22Sにより凝縮されて液相の水となる。また、一酸化炭素は、同じく第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材から脱離された酸素との酸化反応により、二酸化炭素になる。
このように、第一状態は、第一酸素吸着塔30Fにおいて酸素吸着材に酸素を吸着させると共に、第二酸素吸着塔30Sにおいて酸素吸着材から酸素を脱離させ、処理対象ガスの未燃成分を酸化させて、二酸化炭素濃度を高めることができる状態である。
これに対し、図4に示す第二状態では、第一状態と比較して、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sの動作が入れ替わっている。すなわち、第一酸素吸着塔30Fは、酸素脱着状態である。具体的には、第一分離ガス開閉弁72F及び第二凝縮器開閉弁76Sが開弁され、第一酸素導入開閉弁74F及び第一開放管開閉弁78Fが閉弁されている。したがって、第一酸素吸着塔30Fには、第二燃料電池26の第二燃料極26Aから第二燃料極オフガスが供給され、分離装置18から分離ガスが供給される。これらの処理対象ガスに含まれる水素は、第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材から脱着された酸素との酸化反応により、水蒸気になる。第二凝縮器開閉弁76Sが開弁されているので、水蒸気は第二凝縮器22Sにより凝縮されて液相の水となる。また、処理対象ガスに含まれる一酸化炭素は、同じく第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材から脱離された酸素との酸化反応により、二酸化炭素になる。
この第二状態では、第二酸素吸着塔30Sは、酸素吸着状態である。具体的には、第二分離ガス開閉弁72S及び第二凝縮器開閉弁76Sが閉弁され、第二酸素導入開閉弁74S及び第二開放管開閉弁78Sが開弁されている。したがって、第二酸素吸着塔30Sには、酸素含有ガスである空気が供給され、この空気中の酸素分圧により、第一酸素吸着塔30Fの酸素吸着材に酸素が吸着される。酸素吸着材で吸着しきれなかった酸素は、第二開放管66Sから大気中に排出されるので、酸素含有ガスを継続的に第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材に送って、多くの酸素を酸素吸着材に吸着させることができる。
このように、第二状態は、第二酸素吸着塔30Sにおいて酸素吸着材に酸素を吸着させると共に、第一酸素吸着塔30Fにおいて酸素吸着材から酸素を脱離させ、処理対象ガスの二酸化炭素濃度を高めることができる状態である。
以上の説明からわかるように、本実施形態では、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sに吸着された酸素を用いて、処理対象ガスの二酸化炭素濃度を高めることができる。
そして、処理対象ガスにおいて二酸化炭素の濃度を高めるにあたって必要な酸素を、各バルブ80の開閉を制御すれば得ることができ、酸素ガス発生装置は不要である。すなわち、本実施形態では、簡単な設備で、燃料電池発電システム12において処理対象ガスの二酸化炭素の濃度を高めることができる。
本実施形態では、第一酸素吸着塔30Fと第二酸素吸着塔30Sとが上記したように交互に酸素脱着状態と酸素吸着状態とを採る。1回の酸素脱着状態と酸素吸着状態とを続いて行う処理を1サイクルとし、この1サイクルを繰り返すことで、処理対象ガスの二酸化炭素濃度を高めて回収する動作を連続的に行わせることができる。
上記では、分離装置18として、二酸化炭素分離膜を有する構造を例示したが、分離装置としては、これに代えて、たとえば、水凝縮器を用いることも可能である。
分離装置18として水凝縮器を用いた構成では、分離装置18では、液相の水が生成されるが、これ以外の成分は第二燃料電池26の第二燃料極26Aに供給される。したがって、分離装置18から吸着器20へ気体を供給する管(分離ガス管50において、分離装置18側の一端から、合流部54までの部分)は、二酸化炭素濃度を高めるために吸着器20へ気体を送る観点からは不要である。すなわち、分離装置18として水凝縮器を用いた構成では、第二燃料極26Aの第二燃料極オフガスのみ処理対象ガスとして吸着器20に供給されるようになっていればよい。
また、上記では、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材として、400℃以上800℃以下の温度範囲で酸素を吸着する効果を高く発揮する高温吸着材を用いた構成を例示したが、たとえば、0℃以上80℃未満の温度範囲で酸素を吸着する効果を高く発揮する低温吸着材を用いつつ、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sの上流に設置するバルブ80の上流側に熱交換器や冷却装置(一例としては放熱フィン)を設置すれば、分離ガス開閉弁や酸素導入開閉弁を常温で使用可能なバルブとすることができ、より簡易な構成とすることができる。第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sの上流に設置するバルブ80とは、本実施形態の場合、第一分離ガス開閉弁72F、第二分離ガス開閉弁72Sと第一酸素導入開閉弁74F、第二酸素導入開閉弁74Sが該当する。
高温吸着材としては、たとえば、構造式がAxA’x’ByB’y’O3-z(但し、0.8≦x+x’≦1、y+y’=1、0.05≦z≦0.3)で表されるペロブスカイト型酸化物を挙げることができる。ここで、Aはランタノイド元素またはアルカリ土類金属元素であり、A’はランタノイド元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素の群のうちいずれかの元素ドーパントであり、Bはチタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)の群から選択される1または複数の元素であり、B’はチタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の群から選択される1または複数の元素であり、かつ、Bとは異なる元素である。
本実施形態では、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sがそれぞれ、加熱装置34F、34Sを有しているので、酸素吸着材として高温吸着材を用いた構成において、酸素吸着材を高温に維持して、酸素吸着効果を高く発揮させることが可能である。このように高温吸着材における酸素吸着濃度が高くなると、脱離時の酸素濃度も高くなる。
また、酸素吸着材がペレット状である場合、酸素吸着材が容器に収容された状態で生じる隙間においては、第二燃料極オフガスが膨張した状態、すなわち、酸素以外の気体(主には窒素)の分子数密度が少ない状態で存在する。したがって、酸素吸着材が酸素を脱着した場合には、酸素濃度が高い状態を実現できる。
上記実施形態では、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sがいずれも、それぞれ加熱装置34F、34Sを有しているので、酸素吸着材の酸素吸着効果を高く発揮させる構造を容易にかつ確実に実現できる。
本実施形態では、第一燃料電池16及び第二燃料電池26として、SOFCを用いている。SOFCには、高温の燃料極オフガスや空気極オフガスを発生するものが多いので、酸素吸着材として高温吸着材を用いた構成において、高温吸着材の温度を高く維持する点で好ましく適用できる。このように、オフガスの温度が高温である燃料電池としては、SOFCの他に、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)を挙げることができる。
酸素吸着材として高温吸着材を用い、高温の第二空気極オフガスや処理対象ガスを第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sに供給する場合には、第一分離ガス開閉弁72F、第一酸素導入開閉弁74F、第二分離ガス開閉弁72S、第二酸素導入開閉弁74Sに、高温での使用が可能なバルブを用いればよい。
酸素吸着材として高温吸着材を用いた場合であっても、これらのバルブ80として、常温で使用可能なバルブを用いることが可能である。この場合には、たとえば、これらのバルブ80における気体の流れ方向の上流側に冷却装置(一例としては放熱フィン)を設けると共に、これらのバルブ80の下流側(第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sよりは上流側)に、昇温装置(加熱装置)を設ければよい。すなわち、上流側の冷却装置によって、一旦気体をバルブ80の使用可能温度域まで冷却した状態でバルブ80を通過させ、バルブ80通過後に昇温装置で高温吸着材が効果的に作動する温度まで昇温すればよい。
さらには、第一酸素吸着塔30Fや第二酸素吸着塔30Sの下流側(第一凝縮器開閉弁76F、第一開放管開閉弁78F、第二凝縮器開閉弁76S、第二開放管開閉弁78Sの上流側)に冷却装置を設ければ、第一酸素吸着塔30Fや第二酸素吸着塔30Sから排出される酸化後ガスが高温の場合でも、常温で使用可能なバルブ80を用いた構造にできる。
これに対し、酸素吸着材として常温吸着材を用いることも可能である。常温吸着材とは、たとえば、0℃以上40℃以下の範囲で、酸素を吸着する効率が高い酸素吸着材である。ただし、常温吸着材としては、0℃未満や40℃超でも酸素吸着は可能である。このような常温吸着材を用いた構成では、第一酸素吸着塔30Fや第二酸素吸着塔30Sに加熱装置を設ける必要がないので、構造の簡素化を図ること可能である。また、各バルブ80にも耐熱性が要求されないので、低コストのバルブ80を使用することが可能である。さらに、大気の酸素分圧は、第二燃料極オフガスの酸素分圧よりも高い場合が多く、この場合には、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材への酸素吸着をより効率的に行える。
常温吸着材としては、たとえば、活性炭等の細孔を利用した物理吸着による吸着材を挙げることができる。
また、図1等に示したように、バイパス管70を有する構造であれば、第二燃料電池26の第二空気極26Cで生じた第二空気極オフガスに代えて、あるいは併用して、外気から第一燃料電池16及び第二燃料電池26をバイパスした空気を第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sに供給することも可能である。
酸素吸着材として適用可能な高温吸着材には、それ自体として、酸素や一酸化炭素との酸化反応を促進する触媒作用がある酸素吸着材がある。上記したペロブスカイト型酸化物はその一例である。この場合には、酸素吸着材に吸着された酸素を脱離により処理対象ガスに供給することで、水素や一酸化炭素との酸化反応を生じさせて水蒸気や二酸化炭素に変換できる。
これに対し、酸素吸着材として、上記した触媒作用を有さない酸素吸着材を用いることも可能である。
図5には、第二実施形態の燃料電池発電システム212として、触媒作用を有さない第一酸素吸着塔230F及び第二酸素吸着塔230Sを用いた例が示されている。第二実施形態及びその変形例において、第一実施形態と同様の要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
第二実施形態の燃料電池発電システム212では、第一酸素吸着塔230F及び第二酸素吸着塔230Sの下流側に、それぞれ、第一反応器234F及び第二反応器234Sが設けられている。第一酸素吸着塔230F及び第二酸素吸着塔230Sは触媒作用を有さないが、第一反応器234F及び第二反応器234Sにおいて、処理対象ガスの水素や一酸化炭素に対し、第一酸素吸着塔230F、第二酸素吸着塔230Sから脱着された酸素により、酸化反応を生じさせることができる。
なお、図5に示す例では、第一反応器234Fが第一酸素吸着塔230Fと第一濃度センサ32Fの間に配置され、第二反応器234Sが第二酸素吸着塔230Sと第二濃度センサ32Sの間に配置された例である。
これに対し、図6に示す変形例の燃料電池発電システム292のように、第一反応器234Fが第一濃度センサ32Fの下流側に配置され、第二反応器234Sが第二濃度センサ32Sの下流側に配置された構成でもよい。
図5に示す第二実施形態では、第一濃度センサ32F及び第二濃度センサ32Sにおいて、それぞれ、第一反応器234F及び第二反応器234Sで酸化反応が生じた後の気体に対し、未燃成分の濃度を検出できる。これに対し、図6に示す第二実施形態の変形例では、第一反応器234F及び第二反応器234Sにおける酸化反応が生じる前段階の気体に対し、未燃成分の濃度を検出することができる。
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図7に示すように、第三実施形態の燃料電池発電システム312では、吸着器320が、第一還流管316F及び第二還流管316Sを有している。第一還流管316Fの一端は、第一凝縮管64Fに接続され、第一還流管316Fの他端は、処理対象ガス管56の分岐管(分離ガス分岐管50Q)に接続されている。第二還流管316Sの一端は、第二凝縮管64Sに接続され、第二還流管316Sの他端は、処理対象ガス管56の分岐管(分離ガス分岐管50P)に接続されている。
第一還流管316F及び第二還流管316Sにはそれぞれ、第一還流管開閉弁314F及び第二還流管開閉弁314Sが設けられている。第一還流管開閉弁314F及び第二還流管開閉弁314Sの開閉は、制御装置60(第三実施形態では図示省略、第一実施形態として示した図2参照)によって制御される。
このような構成とされた第三実施形態の燃料電池発電システム312では、第一還流管開閉弁314F及び第二還流管開閉弁314Sを閉弁状態に維持すれば、第一還流管316F及び第二還流管316Sには気体が流れないので、第一実施形態の燃料電池発電システム12と同様の動作を実行できる。
さらに、第三実施形態の燃料電池発電システム312では、たとえば、第一酸素吸着塔30Fからの酸化後ガスの各成分濃度を第一濃度センサ32Fで検出し、未燃成分濃度(水素濃度あるいは一酸化炭素濃度)が予め設定された閾値を超えた場合には、第一還流管開閉弁314F、第二分離ガス開閉弁72S及び第二凝縮器開閉弁76Sを開弁すると共に、第二酸素導入開閉弁74S及び第二開放管開閉弁78Sを閉弁する。これにより、第一酸素吸着塔30Fからの酸化後ガス(未燃成分濃度が高いガス)を、第二酸素吸着塔30Sに送り、あらためて酸化処理することが可能である。特に、この状態では、第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材には、多くの酸素が吸着されている(たとえば飽和状態にあることが多い)ので、この酸素により、未燃ガスに対する実質的な酸素との接触時間を長く確保し、未燃成分をあらためて酸化処理することで、二酸化炭素濃度を高めることができる。
なお、第二酸素吸着塔30Sからの酸化後ガスの各成分濃度を第二濃度センサ32Sで検出し、未燃成分濃度の閾値が高い場合には、第二還流管開閉弁314S、第一分離ガス開閉弁72F及び第一凝縮器開閉弁76Fを開弁すると共に、第一酸素導入開閉弁74F及び第一開放管開閉弁78Fを閉弁する。第二酸素吸着塔30Sからの酸化後ガスを、第二酸素吸着塔30Sの酸素であらためて酸化処理できる。
上記では、酸素吸着塔を、第二燃料極オフガス及び分離ガスの流れ方向に対し、並列で複数(第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sの2つ)配置した例を挙げた。これにより、複数の酸素吸着塔で、酸素の吸着と、酸素の脱着とを交互に行うことで、連続的な処理を可能としている。このような連続的な処理を行うことが可能であれば、並列で設けられる酸素吸着塔は3つ以上であってもよい。
また、酸素吸着塔が、1つのみ設けられる構成であってもよい。この場合には、酸素吸着塔の上流側に、処理対象ガスを一時的に貯留する処理対象ガスタンクと、空気極オフガスを一時的に貯留する空気極オフガスタンクとを並列に設け、これらのタンクの前後に開閉弁を設ける構成とすればよい。
具体的には、たとえば、処理対象ガスタンクに処理対象ガスを貯留しつつ、空気極オフガスタンクから空気(酸素を含有している)を酸素吸着塔に送って酸素吸着材に酸素を吸着させる状態と、処理対象オフガスタンクから処理対象ガスを酸素吸着塔に送って処理対象ガスを酸化させつつ、空気極オフガスタンクに空気を貯留する状態と、を交互に切り替えるようにすればよい。
また、上記では、複数(第一燃料電池16及び第二燃料電池26)の燃料電池を備えた構成を例示したが、燃料電池を1つとしてもよい。燃料電池を1つとした構成では、分離装置18が不要であり、構造を簡素化できる。また、分離対象ガスとしては、1つの燃料電池の燃料極から排出される燃料極オフガスが該当するので、この燃料極オフガスを吸着器20に送る。また、酸素含有ガスとしては、空気又は、1つの燃料電池の空気極から排出された空気極オフガスが該当するので、この空気極オフガスを吸着器20に送ればよい。
上記各実施形態において、吸着器の状態を切り替えるタイミング、具体的には、第一酸素吸着塔30Fと第二酸素吸着塔30Sとで、酸素脱着状態と酸素吸着状態とを切り替えるタイミングは、第一濃度センサ32F及び第二濃度センサ32Sの検出値に基づいて決定することが可能である。
図8には、一例として、第一酸素吸着塔30Fの状態に関し、酸素脱着状態から酸素吸着状態へ切り替えるタイミングと、排出される気体の二酸化炭素濃度との関係が示されている。
図8に示すタイミングT2の範囲で第一酸素吸着塔30Fを酸素脱着状態から酸素吸着状態に切り替えると、処理対象ガス中の水素や一酸化炭素を酸化するために、酸素吸着材に吸着されていた酸素を概ね使い切った時点で、酸素吸着状態に切り替えることになる。したがって、第一酸素吸着塔30Fから排出される酸化後ガスにおいては、二酸化炭素濃度として高い値が得られる。
これに対して、タイミングT2より早いタイミングT1の範囲で、第一酸素吸着塔30Fを酸素脱着状態から酸素吸着状態に切り替えると、酸素吸着材の酸素が脱着され切っていない状態で、あらたに空気が送り込まれるため、空気中の酸素を漏れなく酸素吸着材で吸着することができない。すなわち、酸素吸着状態において、第一酸素吸着塔30Fから排出される気体には酸素が混入してしまう。このため、酸素吸着状態と酸素脱着状態とを繰り返し行った場合のトータルでの二酸化炭素濃度は低くなる。
タイミングT2より遅いタイミングT3の範囲で、第一酸素吸着塔30Fを酸素脱着状態から酸素吸着状態に切り替えると、酸素吸着材に吸着されていた酸素を使い切った状態で、さらに処理対象ガスが送られるため、これらのガス中の水素や一酸化炭素を酸化させることができない。第一酸素吸着塔30Fから排出される気体には水素や一酸化炭素が混入してしまい、やはり二酸化炭素濃度は低くなる。
このように、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sの状態を切り替えるタイミングは、処理対象ガスに含まれる水素や一酸化炭素を、より多く(好ましくは完全に)酸化させるために必要かつ十分な量の酸素を酸素吸着材から供給できるように調整される。
第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sの状態を切り替えるにあたっては、第一濃度センサ32F及び第二濃度センサ32Sにおける検出値を基に、たとえば、以下の3つのケースのように切り替えることができる。
<ケース1>
ケース1は、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sから排出される気体(酸化後ガス)の未燃成分濃度と、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sに供給される気体の酸素濃度と、がいずれも一定である場合である。ケース1は、上記各実施形態のいずれの燃料電池発電システムにも適用可能である。
このケース1の場合は、1サイクルあたりの必要酸素量を第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sに供給できるように第一状態及び第二状態における各バルブ80の開閉を制御する。なお、この必要酸素量は、たとえば、第一凝縮管64Fや第二凝縮管64Sに流量計を設け、この流量計で検出した酸化後ガスの積算流量から知ることができる。
<ケース2>
ケース2は、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sから排出される酸化後ガスの未燃成分濃度と、第一酸素吸着塔30F及び第二酸素吸着塔30Sに供給される気体の酸素濃度と、のいずれか一方もしくは両方が変化する場合である。ケース2も、上記各実施形態のいずれの燃料電池発電システムにも適用可能である。
ケース2では、処理対象ガス及び第二空気極オフガスの少なくとも一方の組成が変化するので、ケース1と異なり、第一酸素吸着塔30Fや第二酸素吸着塔30Sからの酸化後ガスの積算流量から、必要酸素量を知ることが難しい。このような場合に、第一濃度センサ32F及び第二濃度センサ32Sで検出した酸素濃度や未燃成分濃度から、酸化後ガス中の二酸化炭素濃度の最大化、あるいは、未燃成分濃度の最小化を図るように、バルブ80の開閉を行う制御である。
この場合、制御装置60は、図9に示すフローに従ってバルブ80の開閉を制御する。このフローは、一例として、バルブ80を最初に第二状態(第一酸素吸着塔30Fが酸素脱着状態、第二酸素吸着塔30Sが酸素吸着状態)とし、次に第一状態(第一酸素吸着塔30Fが酸素吸着状態、第二酸素吸着塔30Sが酸素脱着状態)とする場合である。
制御装置60は、ステップS102において、第一酸素吸着塔30Fを、酸素脱着状態とする。具体的には、第一分離ガス開閉弁72F及び第一凝縮器開閉弁76Fを開弁し、第一酸素導入開閉弁74F及び第一開放管開閉弁78Fを閉弁する。これにより、第一酸素吸着塔30Fに処理対象ガスが投入される。第一酸素吸着塔30Fの酸素吸着材から脱離された酸素による酸化反応で、処理対象ガス中の未燃成分が酸化される。酸化後ガス中の水蒸気は第一凝縮器22Fで凝縮される。
なお、制御装置60は、このときに、第二酸素吸着塔30Sを酸素吸着状態とする。具体的には、第二分離ガス開閉弁72S及び第二凝縮器開閉弁76Sを閉弁し、第二酸素導入開閉弁74S及び第二開放管開閉弁78Sを開弁する。これにより、第二酸素吸着塔30Sには第二空気極オフガスが投入され、第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材に酸素が吸着される。第二酸素吸着塔30Sの酸素吸着材で吸着しきれなかった酸素は、第二開放管66Sから外部に排出される。
次に、ステップS104では、制御装置60は、第一濃度センサ32Fの検出値から、酸化後ガス中の酸素濃度、水素濃度、及び一酸化炭素濃度を計測する。
そして、ステップS106において、制御装置60は、酸素濃度比が、所定の範囲に入っているか否かを判断する。この酸素濃度比とは、酸素濃度/(水素濃度+一酸化炭素濃度)の値である。そして、この酸素濃度比が所定範囲に入っていると判断すれば、ステップS102に戻る。
これに対し、制御装置60は、ステップS106において、酸素濃度比が所定の範囲内に入っていないと判断した場合は、第一酸素吸着塔30Fの酸素吸着材からの酸素の脱離は終了しており、以降は酸化後ガス中の水素濃度や一酸化炭素濃度が過多になると想定されるので、第一酸素吸着塔30Fを、酸素吸着状態に切り替えると共に、第二酸素吸着塔30Sを酸素脱着状態に切り替える。具体的には、ステップS108において、第一分離ガス開閉弁72F及び第一凝縮器開閉弁76Fを閉弁し、第一酸素導入開閉弁74F及び第一開放管開閉弁78Fを開弁する。これにより、第一酸素吸着塔30Fに第二空気極オフガスが投入され、酸素吸着材に吸着される。第一酸素吸着塔30Fの酸素吸着材で吸着しきれなかった酸素は、第一開放管66Fから外部に排出される。
次に制御装置60は、ステップS110において、第二濃度センサ32Sの検出値から、酸化後ガスの酸素濃度を検出し、第二酸素吸着塔30Sからの酸素の排出が終了したか否かを判断する。たとえば、ステップS104と同様に酸素濃度比を計測し、この酸素濃度比が所定値よりも低い場合に、酸素の排出が終了したと判断できる。
制御装置60は、ステップS110において酸素の排出が終了していないと判断した場合は、ステップS108に戻る。これに対し、ステップS110において、酸素の吸着が終了したと判断した場合は、ステップS102に戻り、第一酸素吸着塔30Fを、酸素脱着状態とすると共に、第二酸素吸着塔30Sを酸素吸着状態とする。
以降は、同様の処理を繰り返すことで、処理対象ガスにおいて二酸化炭素濃度を高める動作を連続的に行うことが可能である。
<ケース3>
ケース3は、第一濃度センサ32F及び第二濃度センサ32Sにおける未燃成分の濃度を、常時、あるいは所定のタイミングで検出しつつ、各バルブ80(第一還流管開閉弁314F及び第二還流管開閉弁314Sを含む)の状態を切り替える場合である。ケース3は、上記各実施形態のうち、第三実施形態の燃料電池発電システム312に適用可能である。
この場合、第一酸素吸着塔30Fからの酸化後ガスの各成分濃度を第一濃度センサ32Fで検出する。制御装置60は、未燃成分濃度が予め設定された閾値を超えた場合には、第一還流管開閉弁314F、第二分離ガス開閉弁72S及び第二凝縮器開閉弁76Sを開弁すると共に、第二酸素導入開閉弁74S及び第二開放管開閉弁78Sを閉弁する。第一酸素吸着塔30Fからの酸化後ガスの未燃成分濃度が高いが、このガスを第二酸素吸着塔30Sであらためて酸化処理することが可能である。同様に、第二酸素吸着塔30Sからの酸化後ガスの各成分濃度を第二濃度センサ32Sで検出し、未燃成分濃度の値が閾値を超えている場合に、第二還流管開閉弁314S、第一分離ガス開閉弁72F及び第一凝縮器開閉弁76Fを開弁すると共に、第一酸素導入開閉弁74F及び第一開放管開閉弁78Fを閉弁する。第二酸素吸着塔30Sからの酸化後ガスを、第二酸素吸着塔30Sの酸素であらためて酸化処理できる。