JP7315833B2 - 被覆肥料 - Google Patents
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Description
溶出速度を調整する目的で、被覆肥料に高吸水性物質を添加することが知られている。高吸水性物質は、被膜を透過した水を吸水することで膨潤し、肥効成分の溶出を促進する。
また、特許文献2には、粒状肥料を、ウレタン樹脂及び高吸水性樹脂を含む被膜で覆った被覆粒状水溶性物質が記載されている。
これに対して、特許文献1及び2には、短期間で肥効成分が溶出する肥料については記載されていない。
また、特許文献1には、高吸水性物質が添加された粒状肥料を、ウレタン樹脂を含む被膜で被覆した粒状被覆肥料を製造するに際して、ウレタン樹脂によるコートを10回以上行うことで、被覆欠陥のない被膜を得ることができる旨記載されているが、本発明者らが検討したところ、被覆肥料における被膜を構成する層の数が10以上の場合は、層の数が少ない場合と比較して、良品率が低くなり、肥効成分の初期溶出の抑制が不十分になる傾向となることが分かった。なお、被覆欠陥を有する被覆肥料が多いほど良品率が低い値を示しやすい。
水溶性粒状肥料と、前記水溶性粒状肥料を覆う被膜とを含む被覆肥料であって、
前記被膜は、2層以上8層以下の層から構成されており、前記被膜を構成する層の少なくとも1つの層は、球状の高吸水性樹脂を含有する、被覆肥料。
<2>
前記被膜が、3層以上6層以下の層から構成されている<1>に記載の被覆肥料。
<3>
前記被膜がウレタン樹脂を含有する<1>又は<2>に記載の被覆肥料。
<4>
前記ウレタン樹脂がポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させてなるウレタン樹脂である<3>に記載の被覆肥料。
<5>
前記被膜の総質量が、前記被覆肥料の全質量に対して1.0質量%~12質量%である<1>~<4>のいずれか1項に記載の被覆肥料。
<6>
前記高吸水性樹脂の含有量が、前記被膜の総質量に対して0.05質量%~1.50質量%である<1>~<5>のいずれか1項に記載の被覆肥料。
<7>
前記高吸水性樹脂の平均粒子径が5μm~50μmである<1>~<6>のいずれか1項に記載の被覆肥料。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、「短期溶出型」とは、溶出試験開始後から7日~30日経過時で、上記の溶出率が80%以上である溶出パターンを指すものとする。
本発明の被覆肥料は、水溶性粒状肥料と、前記水溶性粒状肥料を覆う被膜とを含む被覆肥料であって、前記被膜は、2層以上8層以下の層から構成されており、前記被膜を構成する層の少なくとも1つの層は、球状の高吸水性樹脂を含有する、被覆肥料である。
以下、本発明の被覆肥料について詳細に説明する。
本発明の被覆肥料は、水溶性粒状肥料を含む。水溶性粒状肥料は肥効成分として用いられる。水溶性粒状肥料は水溶性であればよく、特に限定されるものではない。水溶性粒状肥料としては、例えば、尿素、塩安、硫安、硝安、塩化カリ、硝酸カリ、硝酸ソーダ、燐安カリ、燐安アンモニア、燐安石灰等が挙げられ、尿素であることが好ましい。なお、水溶性粒状肥料は、上記から選ばれる1種を用いた肥料でもよく、2種以上を用いた複合肥料でもよい。
また、肥料としての性質に大きな影響を与えない範囲であれば、水溶性粒状肥料に、水溶性や不溶性の不純物等を含んでいてもよい。
本発明の被覆肥料における被膜とは、水溶性粒状肥料を覆う膜である。
本発明の被覆肥料において、被膜は、2層以上8層以下の層により構成されている。すなわち、本発明では、水溶性粒状肥料を覆う2層以上8層以下の積層構造からなる膜の全体を「被膜」と呼んでいる。
被膜を構成する2~8つの層は、それぞれ異なる組成の層であっても良いし、すべて同じ組成の層であっても良い。なお、上記「組成」とは、層に含まれる成分及びその含有率のことを示す。
すなわち、被膜を構成する2層以上の層のうち、最も外側の層(以下、「最外層」と記載することもある。)には高吸水性樹脂を含まない態様が好ましい。
被膜はウレタン樹脂を含むことが好ましい。
ウレタン樹脂は、特に限定されないが、有機溶媒を使用する必要がない熱硬化型のウレタン樹脂を用いるのが好ましく、特に芳香族ポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させてなるウレタン樹脂(芳香族ポリイソシアネートとポリオールとの重付加物)であることが好ましい(すなわち、ウレタン樹脂形成用材料として、芳香族ポリイソシアネートと、ポリオールとを用いてなるウレタン樹脂であることが好ましい)。ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂形成用材料として、芳香族ポリイソシアネート及びポリオールに加えて、これら以外の成分を用いてなるものであっても良いが、製造方法が簡便なことから、ウレタン樹脂形成用材料として、芳香族ポリイソシアネート及びポリオールのみを用いてなるものが好ましい。
ウレタン樹脂形成用材料として用いられるポリイソシアネート成分としては、芳香族ポリイソシアネートが好ましい。
芳香族ポリイソシアネートとは、芳香環及び2以上のイソシアネート基を有する化合物である。芳香族ポリイソシアネートが有する芳香環の数は1つであっても、2つ以上であっても良い。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等、あるいはこれらの変性体、例えば、ウレア変性体、二量体、三量体、ポリマー、カルボジイミド体、アロハネート変性体、ビュレット変性体、などが挙げられる。これらは2種類以上を併せて使用することができ、また、工業的に使用されるいわゆる「粗製」ポリイソシアネートであってもよい。
芳香族ポリイソシアネートは、25℃における粘度が250mPa・s以下であることが好ましく、150mPa・s以下であることがより好ましい。具体的には、例えば、液状のMDI(構造異性体:2,2’-MDI、2,4-MDI、4,4’-MDIの混合物)、及びポリメリックMDIを好ましい例として挙げることができる。
ウレタン樹脂形成用材料として用いられるポリオールは、1つの分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物であり、特に限定されるものではないが、脂肪族系のポリオールが好ましく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ひまし油、ひまし油の誘導体等が挙げられる。
ひまし油誘導体としては、例えば、ひまし油の一部が加水分解したもの、又はひまし油と上記ポリオール、もしくは後述するアミン系ポリオールとのエステル交換体を挙げることができる。
アミン系ポリオールは特に限定されるものではないが、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられ、また、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,6―ヘキサンジアミンのようなアミン化合物にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド等を付加した付加体が挙げられる。前記付加体の中でもイソシアネート成分との反応が穏やかで、混合や塗布等の作業性が良好なことから、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミンを用いるのが好ましい。
本発明の被覆肥料は、被膜を構成する層の少なくとも1つの層に球状の高吸水性樹脂を含有する。
被覆肥料の被膜中の高吸水性樹脂が鋭角部分を有する不定形な粒子であった場合、該鋭角部分で被膜が薄膜化しやすく、肥効成分の初期溶出の抑制効果が得られにくい場合があると考えられる。一方、本発明では球状の高吸水性樹脂を用いているため、被膜の局所的な薄膜化が抑制され、初期溶出を効果的に抑制できると推察される。
また、高吸水性樹脂は、被膜を透過した水を吸水することで膨潤し、被膜を水や肥効成分が透過しやすくすることで水溶性粒状肥料の溶出を促進するものであるが、高吸水性樹脂を球状とすることによって、理由は定かではないが、初期に溶出を抑制し、溶出が開始された後は、水溶性粒状肥料の溶出がより促進され、短期溶出型の溶出パターンが得られやすくなる。
本明細書において、高吸水性樹脂が「球状」であるとは、下記円形度係数が0.7以上であることを表す。
円形度係数は、高吸水性樹脂の粒子100個について下記式(1)により円形度係数をそれぞれ算出し、それらを平均した値を用いるものとする。なお、下記式(1)は、一次粒子に対して用いられる算出式である。
高吸水性樹脂は、上記式(1)により算出される円形度係数が0.7以上である一次粒子が、高吸水性樹脂全体に対して70質量%以上含まれることが好ましく、85質量%以上含まれることがより好ましく、90質量%以上含まれることが更に好ましく、95質量%以上含まれることが特に好ましい。
高吸水性樹脂の吸水量は、特に限定されるものではないが、水を吸収することで乾燥体積の5倍以上に膨潤する樹脂であることが好ましく、例えば、吸水倍率が100(g/g)以上であることが好ましく、より好ましくは250~330、さらに好ましくは280~330としてもよい。
なお、高吸水性樹脂の吸水倍率は、日本工業規格(JIS-K-7223)に準じて求めることができる。
高吸水性樹脂の最大粒子径は、被覆欠陥抑制の観点から被覆しやすくする、被膜の厚み(被膜を構成する各層の膜厚の合計)よりも小さくすることが好ましい。高吸水性樹脂の最大粒子径は、例えば、150μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは100μm以下としてもよい。
本発明の被覆肥料の被膜は、本発明の性質を損なわない範囲で、被膜形成時の作業性の向上及び肥効調整の補助的手段などの観点で、被膜の外側の表面や、被膜内部に、有機系や無機系の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤の例としては、界面活性剤、パラフィンワックス、タルク、ケイソウ土、シリカ、硫黄粉末等が挙げられる。
被膜の総質量を被覆肥料の全質量に対して1.0質量%以上とすることによって、初期溶出を抑制し、被膜の膜厚が薄いことによる被覆欠陥の発生を抑制する効果が得られやすい。また、被膜の総質量を被覆肥料の全質量に対して20質量%以下とすることで、短期溶出型の溶出パターンが得られやすくなる。また、高吸水性樹脂の含有量を抑えた低コストで、短期溶出型の溶出パターンを有する被覆肥料を得るのであれば、被膜の総質量を被覆肥料の全質量に対して1.0~12質量%とするのがより好ましい。
なお、被覆肥料の全質量に対する被膜の総質量の割合を被覆率とも呼ぶ。
被覆率(%)=(被膜の総質量/被覆肥料の全質量)×100
なお、上記膜厚とは、各層の膜厚の合計を被膜の膜厚とする。
被膜を構成する各層の厚みは特に限定されず、被膜の膜厚によって適宜変更できるが、例えば、5.0μm~30μmとすると被覆のし易さの点から好ましい。
透湿度は所望の溶出パターンに応じて決定されればよく、特に限定されるものではないが、短期溶出型、かつ初期溶出抑制型の被覆肥料においては、例えば、温度40℃、湿度90%の条件下において、80g~250g/(m2・day・25μm)の範囲内であるとしてもよく、より好ましくは80g~170g/(m2・day・25μm)としてもよい。なお、当該透湿度は、日本工業規格(JIS-Z-0208)に準じて求めることが可能である。
以下、本発明の被覆肥料の製造方法について説明する。本発明の被覆肥料の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、下記工程1~工程3を含む製造方法が好ましく挙げられる。また、被膜を構成する層が複数である場合には、さらに工程4を含むことが好ましい。
工程1:水溶性粒状肥料を流動状態又は転動状態にする工程
工程2:流動状態又は転動状態にある該水溶性粒状肥料上に芳香族ポリイソシアネート、ポリオール、及び球状の高吸水性樹脂を供給する工程
工程3:該水溶性粒状肥料を流動状態又は転動状態に維持し、被膜を構成する層(第1層)を形成させる工程
工程4:流動状態又は転動状態にある該水溶性粒状肥料上に芳香族ポリイソシアネート及びポリオールを供給し、被膜を構成する層(第2層以降の層)を形成させる工程
上記工程1について説明する。
工程1では、水溶性粒状肥料を流動状態又は転動状態にする。水溶性粒状肥料を流動状態又は転動状態にすることによって、工程2及び工程3において、また工程4を有する場合においては工程4において、比較的均一な膜厚で被膜を形成させることができる。
水溶性粒状肥料を流動化又は転動化する装置は、特に限定されるものではないが、回転ドラム等の装置を好適に使用することができる。また、この時、装置内の温度を予め被覆温度程度に維持し、工程2の前に水溶性粒状肥料を加熱してもよい。被覆温度は使用するウレタン樹脂、高吸水性樹脂、及び水溶性粒状肥料の融点によって決定されればよく、特に限定するものではないが、例えば20℃~150℃であり、好ましくは40~100℃である。
上記工程2について説明する。
工程2では、流動状態又は転動状態にある該水溶性粒状肥料上に芳香族ポリイソシアネート、ポリオール、及び高吸水性樹脂を供給する。供給時、芳香族ポリイソシアネート及びポリオールは液状であることが好ましい。供給時、該水溶性粒状肥料は転動状態又は流動状態が維持されているものとする。
供給方法は効率良く分散及び供給できれば特に限定されず、例えば、噴霧や滴下が挙げられるが、これらに限られない。芳香族ポリイソシアネート、ポリオール、及び高吸水性樹脂を供給した後、被覆温度を維持しながら流動状態又は転動状態を保つことによって、水溶性粒状肥料上にウレタン樹脂及び高吸水性樹脂を含む層を形成することが可能となる。
また、特に好ましい供給方法として、上記樹脂液Aと、上記樹脂液Bとを圧縮空気を用いた二流体ノズルによって、水溶性粒状肥料上に噴霧することによって良好な層(被膜を構成する層)を形成させることが可能である。
上記工程3について説明する。
工程3では、該水溶性粒状肥料を流動状態又は転動状態に維持し、被膜を構成する層(第1層)を形成させる。
工程3は、被覆温度を維持したまま、所定時間水溶性粒状肥料を転動状態又は流動状態とすることで、該水溶性粒状肥料上に被膜を形成する層(第1層)を形成する工程であることが好ましい。この時にかかる時間は、芳香族ポリイソシアネート、ポリオール、及び高吸水性樹脂を添加する量や、形成されるウレタン樹脂の硬化温度に依存するため特に限定されるものではない。
被膜を構成する層が2層以上である場合は、ウレタン樹脂の硬化は完全硬化である必要はなく、ある程度ウレタン樹脂の粘着性が弱まれば工程4を行なってもよい。また、被膜が1層のみである場合は、当該工程3でウレタン樹脂を完全に硬化させるのが望ましく、この時にかかる時間は例えば10分~30分としてもよい。
上記工程4について説明する。
工程4では、流動状態又は転動状態にある該水溶性粒状肥料上に芳香族ポリイソシアネート及びポリオールを供給し、被膜を構成する層(第2層以降の層)を形成させる。
被膜を構成する層が2層以上である場合、工程2及び工程3において形成した層の表面にさらに芳香族ポリイソシアネート及びポリオールを供給し、被覆温度にて所定時間転動状態又は流動状態を維持することで、被膜を構成する層(第2層以降の層)を形成する。当該工程4を複数回行い、2層以上の層を形成してもよい。ただし、本発明の被覆肥料の被膜を構成する層の数は最大でも8であるため、工程4を行う回数の上限は7回である。
また、被覆肥料の被膜を構成する層のうち、最外層を形成する場合は、前述した工程3と同様に、最外層のウレタン樹脂を完全に硬化させる為に被覆温度での流動状態又は転動状態を、約10分~30分間程度維持させることが好ましい。
実施例及び比較例の被覆肥料の調製に用いた使用材料について説明する。
粒子径2.0mm~4.0mmの尿素を用いた。
(球状高吸水性樹脂1)
球状高吸水性樹脂1として、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物の粉体(アクアキープ 10SH-NF(住友精化株式会社製))を用いた。
当該粉体を走査型電子顕微鏡とデジタルマイクロスコープにて観測したところ、球状高吸水性樹脂1の円形度係数は0.86であった。また、レーザー回折式粒度分布計で粒子径を測定した結果、最大粒子径:138μm、平均粒子径:27μm、粒度分布:13μm~138μmであった。
球状高吸水性樹脂1を75μmのフィルターを用いて分級し、大径品を除去したものを球状高吸水性樹脂2とした。
球状高吸水性樹脂2を走査型電子顕微鏡とデジタルマイクロスコープにて観測したところ、球状高吸水性樹脂2の円形度係数は0.86であった。また、レーザー回折式粒度分布計で粒子径を測定した結果、最大粒子径:44μm、平均粒子径:25μm、粒度分布:16μm~44μmであった。
不定形高吸水性樹脂としては、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物の粉体を用いた。
当該粉体を走査型電子顕微鏡とデジタルマイクロスコープにて観測したところ、粒子には不規則な凹凸や欠け、角等が見られる形状であることが確認された(球状ではないことが確認された)。レーザー回折式粒度分布計で粒子径を測定した結果、最大粒子径:138μm、平均粒子径:27μm、粒度分布:1μm~138μmであった。
粒状尿素(1kg)を直径300mmのドラム型転動被覆装置に仕込み、25rpm(rotations per minute)で転動させながら、熱風発生機により粒状尿素の温度を60℃に保持した。
次に、被膜の第1層を形成させるために、成分1(25℃の粘度が50mPa・sでイソシアネート基含有率が32質量%のポリメリックMDI)と成分2(ひまし油と、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミンを8:2の質量比で加熱混合した溶液)とを、イソシアネート基/水酸基=0.60(モル比)となるように準備し、それぞれ別の供給口から装置内へ供給して混合を行った(成分1と成分2の合計は15.17g)。また、この供給時、球状高吸水性樹脂1(0.23g)も同時に装置内へ投入した。
次に、5分毎に3回、上記の成分1と成分2を、第1層と同様の比率、合計13.2gになるように準備し、それぞれ別の供給口から装置内へ供給・混合して、第2層~第4層を形成させた。
最後に、第1層目と同様の成分1と成分2を、イソシアネート基/水酸基=0.80(モル比)となるように準備し(成分1と成分2の合計は11.00g)、それぞれ別の供給口から装置内へ供給し、30分間転動させて、第5層を形成し、該粒状尿素上の被膜を硬化させた。これを常温(約25℃)まで冷却し、目的の被覆肥料1-1を得た。
被覆肥料1-1の被膜を構成する層は5層であった。
上記ポリメリックMDIとしては、ルプラネートM5S(BASF社製)を用い、上記N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミンとしては、T0781(東京化成工業製)を用いた。
球状高吸水性樹脂1の代わりに、球状高吸水性樹脂2を用いた以外は実施例1と同様の製造法にて、被覆肥料1-2を得た。
被覆肥料1-2の被膜を構成する層は5層であった。
被膜の第1層を形成させるために、前記成分1と成分2の合計量を14.53g、球状高吸水性樹脂1を0.87g用いた以外は、実施例1-1と同様にして被覆肥料2を得た。
被覆肥料2の被膜を構成する層は5層であった。
被膜の第1層を形成させるために、前記成分1と成分2の合計量を15.38g、球状高吸水性樹脂1を0.02g用いた以外は、実施例1-1と同様の製造法にて被覆肥料3を得た。
被覆肥料3の被膜を構成する層は5層であった。
粒状尿素(1kg)を直径300mmのドラム型転動被覆装置に仕込み、25rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素の温度を70℃に保持した。
次に、熱風の送風を停止し、球状高吸水性樹脂1(0.23g)を加えた。
次に、送風を停止し、転動させた状態で、3分毎に2回、前記成分1と成分2が実施例1-1の第1層目と同様の比率、合計4.90gになるように準備し、それぞれ別の供給口から装置内へ供給し、混合した。
次に、熱風発生機による送風を再開し、3分毎に10回、前記成分1と成分2を実施例1-1の第1層目と同様の比率、合計4.50gになるように準備し、それぞれ別の供給口から装置内へ供給し、混合した。
次に、3分毎に2回、実施例1-1の第5層目と同様の比率、合計5.60gになるように準備し、それぞれ別の供給口から装置内へ供給し、混合した。
上記工程終了後、送風しながら10分間転動させて、被膜を硬化させた。これを常温(約25℃)まで冷却し、比較被覆肥料1を得た。
比較被覆肥料1の被膜を構成する層は14層であった。
球状高吸水性樹脂1の代わりに、不定形高吸水性樹脂を用いた以外は実施例1-1と同様の製造法にて比較被覆肥料2を得た。
比較被覆肥料2の被膜を構成する層は5層であった。
球状高吸水性樹脂1の代わりに、不定形高吸水性樹脂を用いた以外は実施例2と同様の製造法にて比較被覆肥料3を得た。
比較被覆肥料3の被膜を構成する層は5層であった。
球状高吸水性樹脂1の代わりに、不定形高吸水性樹脂を用いた以外は実施例3と同様の製造法にて比較被覆肥料4を得た。
比較被覆肥料4の被膜を構成する層は5層であった。
実施例1-1、比較例1、及び比較例2で得られた被覆肥料について、良品率の測定を行った。縮分した被覆肥料のうち10gを採取して、予め希釈したインキ(S-1(赤),シヤチハタ社製)希釈液(2.5g/250ml純水)を、被覆肥料が完全に浸漬するまで加え25℃で1時間静置し、その後、該被覆肥料をろ過回収した。続いて該被覆肥料に付着したインキを水洗後、インキで着色された被覆肥料および肥効成分を溶出し終えた被覆肥料を取り除き、着色されなかった被覆肥料の質量(非着色被覆肥料の質量)から良品率を算出した。
なお、良品率は以下の式で求めた。
良品率(%)={(非着色被覆肥料の質量)g/10g}×100
結果を表1に示す。
上記実施例及び比較例で作製した被覆肥料を縮分して溶出試験を行った。溶出試験は、まず、縮分した被覆肥料のうち12.5gを採取して250mlのイオン交換水に投入し、25℃の恒温槽内に保存した。所定日数経過後に被覆肥料を取出し、水中に溶出した尿素を全窒素分析計で定量して、溶出率を求めた。経過日数と尿素の溶出率の関係を表2と図1~3に記載した。
溶出率は、溶出試験開始3日後、7日後、14日後、21日後、28日後、及び35日後に測定した。また、溶出率が90%を超えた時点で、溶出試験を終了した。
高吸水性樹脂の添加率が同じ実施例1-1、実施例1-2、比較例1及び比較例2を比較すると、実施例1-1及び1-2の方が、比較例1及び比較例2よりも初期溶出を抑制できることが分かった。また、表1に示した良品率より、良品率の最も低い比較例1は、実施例1-1及び比較例2よりも初期溶出の抑制が不十分になることが分かった。
実施例2と比較例3、及び実施例3と比較例4についても、同様に実施例の方が比較例に対して初期溶出を抑制する効果が高いことが分かった。
実施例1-1、実施例1-2、実施例2及び実施例3はいずれも28日経過時の溶出率が80%を超えており、短期溶出型の溶出パターンを示した。
また、図1~3より、実施例1-1、実施例1-2、実施例2及び実施例3の被覆肥料は、比較例1~4よりも初期溶出を抑制しているにも関わらず、溶出が始まってからの速度が優れており、よりシグモイド型の溶出曲線を示す被覆肥料であることが分かった。
Claims (9)
- 水溶性粒状肥料と、前記水溶性粒状肥料を覆う被膜とを含む短期溶出型被覆肥料であって、
前記被膜は、2層以上8層以下の層から構成されており、前記被膜を構成する層の少なくとも1つの層は、球状の高吸水性樹脂を含有し、
前記高吸水性樹脂の含有量が、前記被膜の総質量に対して0.05質量%~1.20質量%であり、
溶出試験開始から3日経過時の溶出率が3.2%以下、溶出試験開始後から7日~30日経過時の溶出率が80%以上である、短期溶出型被覆肥料。 - 前記被膜が、3層以上6層以下の層から構成されている請求項1に記載の短期溶出型被覆肥料。
- 前記被膜がウレタン樹脂を含有する請求項1又は2に記載の短期溶出型被覆肥料。
- 前記ウレタン樹脂がポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させてなるウレタン樹脂である請求項3に記載の短期溶出型被覆肥料。
- 前記被膜の総質量が、前記被覆肥料の全質量に対して1.0質量%~12質量%である請求項1~4のいずれか1項に記載の短期溶出型被覆肥料。
- 前記高吸水性樹脂の平均粒子径が5μm~50μmである請求項1~5のいずれか1項に記載の短期溶出型被覆肥料。
- 水溶性粒状肥料と、前記水溶性粒状肥料を覆う被膜とを含む短期溶出型被覆肥料の製造方法であって、
工程1:水溶性粒状肥料を流動状態又は転動状態にする工程、
工程2:流動状態又は転動状態にある前記水溶性粒状肥料上に芳香族ポリイソシアネート、ポリオール、及び球状の高吸水性樹脂を供給する工程、
工程3:前記水溶性粒状肥料を流動状態又は転動状態に維持し、被膜(第1層)を構成する層を形成させる工程、及び
工程4:流動状態又は転動状態にある前記水溶性粒状肥料上に芳香族ポリイソシアネート及びポリオールを供給し、被膜を構成する層(第2層以降の層)を形成させる工程、を有し、
前記高吸水性樹脂の含有量が、前記被膜の総質量に対して0.05質量%~1.20質量%であり、
前記被膜の前記第1層と第2層以降の層はウレタン樹脂を含有し、合計2層以上8層以下の層から構成されており、
溶出試験開始から3日経過時の溶出率が3.2%以下、溶出試験開始後から7日~30日経過時の溶出率が80%以上である、短期溶出型被覆肥料の製造方法。 - 前記工程3及び前記工程4は、前記芳香族ポリイソシアネートとポリオールとを、モル比でイソシアネート基/水酸基=0.60~0.80となるように混合する工程を含む、請求項7に記載の短期溶出型被覆肥料の製造方法。
- 前記高吸水性樹脂は、粒度分布が1μm~150μmである、請求項7又は8に記載の短期溶出型被覆肥料の製造方法。
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