JP7315068B1 - 磁気特性予測装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 0007315068000001
【課題】磁気特性を精度よく予測可能な磁気特性予測装置及び方法、データベースを提供する。
【解決手段】永久磁石の磁気特性を予測する磁気特性予測装置1であって、予め設定された説明変数データ81と、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データ74との関係を機械学習し、説明変数データ81と特性データ74との相関性を表す回帰モデル33を作成する回帰モデル作成処理部24と、回帰モデル33を用いて予測対象の磁気特性を予測する磁気特性予測処理部25と、を備え、説明変数データ81は、着磁した永久磁石の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁気特性予測装置及び方法に関する。
永久磁石においては、残留磁束密度Bや保磁力HcJが磁気特性の主な指標となっている。従来、永久磁石である焼結磁石において、磁性結晶粒子である主相粒の形状等の組織構造を調整することで良好な保磁力HcJを得ること等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、保磁力向上の指針を得るための研究も進められている(例えば、非特許文献1)。
特開2017-183710号公報
Nd-Fe-B系焼結磁石における隣接粒子間方位差と磁化反転の関係、日立金属技報第34巻、p.24~p.31
近年、データマイニングなどの情報科学を利用して新材料や代替材料を効率的に探索するマテリアルズインフォマティクス(Materials Informatics)が注目されている。また、日本では、マテリアルズインテグレーション(Materials Integration)による材料開発が検討されている。マテリアルズインテグレーションとは、材料科学の成果に、理論、実験、解析、シミュレーション、データベースなどの科学技術を融合して、材料の研究開発を支援することを目指す総合的な材料技術ツールと定義されている。
上述のように、永久磁石においては、残留磁束密度Bや保磁力HcJが磁気特性の主な指標となっており、これら磁気特性を精度よく予測することが望まれている。
そこで、本発明は、磁気特性を精度よく予測可能な磁気特性予測装置及び方法、データベースを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決することを目的として、永久磁石の磁気特性を予測する磁気特性予測装置であって、予め設定された説明変数データと、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データとの関係を機械学習し、前記説明変数データと前記特性データとの相関性を表す回帰モデルを作成する回帰モデル作成処理部と、前記回帰モデルを用いて予測対象の磁気特性を予測する磁気特性予測処理部と、を備え、前記説明変数データは、着磁した前記永久磁石の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含む、磁気特性予測装置を提供する。
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、永久磁石の磁気特性を予測する磁気特性予測方法であって、予め設定された説明変数データと、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データとの関係を機械学習し、前記説明変数データと前記特性データとの相関性を表す回帰モデルを作成する回帰モデル作成処理工程と、前記回帰モデルを用いて予測対象の磁気特性を予測する磁気特性予測処理工程と、を備え、前記説明変数データは、着磁した前記永久磁石の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含む、磁気特性予測方法を提供する。
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、予め設定された説明変数データと、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データと、を含み、前記説明変数データは、永久磁石を着磁した後に外部磁界を印加して永久磁石の断面の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含む、データベースを提供する。
本発明によれば、磁気特性を精度よく予測可能な磁気特性予測装置及び方法を提供できる。
本発明の一実施の形態に係る磁気特性予測装置の概略構成図である。 磁気特性予測装置の入出力を説明する図である。 磁化曲線の一例である。 全体データベースの一例を示す図である。 (a)は学習用データ抽出処理、(b)は回帰モデル作成処理、(c)は磁気特性予測処理を説明する説明図である。 主相粒、二粒子粒界相、粒界三重点を説明する模式図である。 (a)は組織解析処理、(b)は磁化反転解析処理、(c)は磁化反転解析情報抽出処理を説明する説明図である。 (a)は主相粒データベースの一例を示す図、(b)は二粒子粒界相データベースの一例を示す図である。 粒界三重点データベースの一例を示す図である。 (a)はMOKE顕微鏡像であり、(b)は外部磁界の強度、及び(a)のMOKE顕微鏡像における磁化反転検出箇所を示す図である。 (a)はMOKE顕微鏡像であり、(b)は外部磁界の強度、及び(a)のMOKE顕微鏡像における磁化反転検出箇所を示す図である。 (a)はMOKE顕微鏡像であり、(b)は外部磁界の強度、及び(a)のMOKE顕微鏡像における磁化反転検出箇所を示す図である。 (a),(b)は、磁化反転の伝播情報の導出方法を説明する図である。 (a),(b)は、磁化反転の伝播情報の導出方法を説明する図である。 (a),(b)は、磁化反転の伝播情報の導出方法を説明する図である。 (a),(b)は、磁化反転の伝播情報の導出方法を説明する図である。 (a),(b)は、磁化反転の伝播情報の導出方法の他の例を説明する図である。 磁化反転解析情報の項目の一覧を示す図である。 本発明の一実施の形態に係る磁気特性予測方法のフロー図である。 (a)は設定処理、(b)はデータ取得処理のフロー図である。 組織解析処理のフロー図である。 (a)は磁化反転解析処理、(b)は磁化反転情報抽出処理のフロー図である。 (a)は回帰モデル作成処理、(b)は磁気特性予測処理のフロー図である。 (a)は磁化反転解析用回帰モデル作成処理、(b)は磁化反転解析データ予測処理を説明する説明図である。
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本実施の形態に係る磁気特性予測装置1の概略構成図である。図2は、磁気特性予測装置1の入出力を説明する図である。
(予測対象について)
本実施の形態に係る磁気特性予測装置1は、永久磁石の磁気特性を予測する装置である。磁気特性の予測対象となる永久磁石は、主に焼結磁石であり、後述する磁気光学カー効果顕微鏡(以下、MOKE顕微鏡)65による観察が可能な希土類磁石が対象として好適である。
また、本実施の形態で予測対象となる磁気特性は、例えば、図3に示す磁化曲線において、永久磁石を着磁した後に外部磁界を減少させて0(ゼロ)にしたときに永久磁石に残留する磁束密度である残留磁束密度B、及び、さらに外部磁界を減少させて永久磁石に残留する磁束密度が0(ゼロ)となるときの外部磁界の強度である保磁力HcJである。なお、残留磁束密度Bや保磁力HcJに限らず、例えば、磁化曲線の角形性を示す指標として用いられる磁界Hなど他の磁気特性を予測対象としてもよい。
(磁気特性予測装置1の概略構成)
図1に示すように、磁気特性予測装置1は、制御部2と、記憶部3と、表示器4と、入力装置5と、を有している。本実施の形態では、磁気特性予測装置1は、パーソナルコンピュータにより構成されている。
制御部2は、CPU等の演算素子、メモリ、インターフェイス、ソフトウェア、記憶装置等を適宜組み合わせて実現されている。本実施の形態では、制御部2は、設定処理部21、データ取得処理部22、学習用データ抽出処理部23、回帰モデル作成処理部24、磁気特性予測処理部25、予測データ提示処理部26、組織解析処理部27、磁化反転解析処理部28、及び磁化反転解析情報抽出処理部29を有している。このうち、組織解析処理部27、磁化反転解析処理部28、及び磁化反転解析情報抽出処理部29は、本発明の磁化反転解析装置10を構成するものである。各部の詳細については後述する。
記憶部3は、メモリや記憶装置の所定の記憶領域により実現されている。表示器4は、例えば液晶ディスプレイ等であり、入力装置5は、例えばキーボードやマウス等である。なお、表示器4をタッチパネルで構成し、表示器4が入力装置5を兼ねる構成としてもよい。また、表示器4や入力装置5は、磁気特性予測装置1と別体に構成され、無線通信等により磁気特性予測装置1と相互に通信可能に構成されていてもよい。この場合、表示器4または入力装置5は、タブレットやスマートフォン等の携帯端末で構成されていてもよい。
(磁気特性予測装置1の入出力)
磁気特性予測装置1は、機械学習を利用して、永久磁石の磁気特性を予測する装置である。磁気特性予測装置1には、機械学習に必要なデータ、組織や磁化反転の挙動の解析に用いる画像データ、及び、予測元となるデータが入力される。具体的には、図2に示すように、永久磁石を製造する製造装置61から磁気特性予測装置1に、永久磁石の組成の情報である組成情報を含む組成データ70と、永久磁石の製造条件の情報であるプロセス情報を含むプロセスデータ71とが入力される。入力された組成データ70及びプロセスデータ71は、後述するデータ取得処理部22により全体データベース31に登録され、記憶部3に記憶される。なお、組成データ70やプロセスデータ71の入力はネットワークを介して行われてもよいし、USBメモリ等のメディアを介して行われてもよいし、入力装置5により行われてもよい。
分析エリアでは、製造装置61で製造された永久磁石のサンプルの磁気特性の分析、及び組織や磁化反転の挙動の解析に用いる画像データの取得が行われる。磁気特性試験装置62により取得された永久磁石の磁気特性の情報である特性情報を含む特性データ74は、磁気特性予測装置1に入力される。入力された特性データ74は、後述するデータ取得処理部22により全体データベース31に登録され、記憶部3に記憶される。なお、特性データ74の入力はネットワークを介して行われてもよいし、USBメモリ等のメディアを介して行われてもよい。
また、磁気特性予測装置1には、SEM(走査電子顕微鏡)63で取得したSEM像のデータであるSEM像データ631、EBSD(後方散乱電子回折装置)64で取得したEBSD像のデータであるEBSD像データ641、及びMOKE顕微鏡(磁気光学カー効果顕微鏡)65で取得したMOKE顕微鏡像(磁気光学カー効果顕微鏡像)のデータであるMOKE顕微鏡像データ651がそれぞれ入力される。入力されたSEM像データ631、EBSD像データ641、及びMOKE顕微鏡像データ651は、画像データベース36に登録され記憶部3に記憶される。なお、これら画像データのうち、SEM像データ631とEBSD像データ641は、組織の解析に用いられる。そして、MOKE顕微鏡像データ651は、磁化反転の挙動の解析に用いられる。なお、これら画像データの入力はネットワークを介して行われてもよいし、USBメモリ等のメディアを介して行われてもよい。なお、SEM像のデータはSEI(二次電子像)やBEI(反射電子像)など異なる結像原理で取得される複数種の画像データを取得してもよい。また、画像データはEDX(エネルギー分散X線分光分析)やWDX(波長分散X線分光分析)で得られた組成分布の画像データでもよく、XRD(X線回折装置)で得られた相比率のデータなど、他の分析手段で取得したデータを含んでもよい。
また、入力装置5からは、磁気特性の予測元となる情報を含む予測元データ34が入力される。入力された予測元データ34は、記憶部3に記憶される。なお、予測元データ34の入力は、入力装置5に限らず、例えば、ネットワークを介して行われてもよいし、USBメモリ等のメディアを介して行われてもよい。
磁気特性予測装置1は、磁気特性予測装置1で予測した磁気特性の情報を含む予測データ35を出力する。本実施の形態では、表示器4に予測データ35が出力され、表示器4に予測結果が表示される。なお、これに限らず、予測データ35の出力先は、例えば、他のパーソナルコンピュータ等であってもよいし、例えば特定のサーバ装置等にアップロードするように構成されていてもよい。
(全体データベース31)
図4は、全体データベース31の一例を示す図である。なお、図4は全体データベース31の概念を示すものであり、実際の実験データを記載したものではない。全体データベース31は、永久磁石のサンプルの識別用のID、組成情報、プロセス情報、組織情報、磁化反転解析情報、及び特性情報を関連付けて記憶したデータベースである。すなわち、全体データベース31は、組成情報のデータである組成データ70、プロセス情報のデータであるプロセスデータ71、組織情報のデータである組織データ72、磁化反転解析情報のデータである磁化反転解析データ73、特性情報のデータである特性データ74を統合し、互いに関連付けて登録したデータベースである。
組成データ70は、ネオジム(Nd)の組成など、永久磁石の組成の情報を含む。プロセスデータ71は、プロセス情報として、例えば、熱処理温度等の情報を含む。組織データ72は、組織情報として、例えば、主相粒の粒径の平均値、二粒子粒界相の幅の平均値等の情報を含む。特性データ74は、特性情報として、残留磁束密度Bや保磁力HcJ等の情報を含む。そして、詳細は後述するが、磁化反転解析データ73に含まれる磁化反転解析情報とは、永久磁石を着磁した後に外部磁界を印加して永久磁石の断面の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた情報である。磁化反転解析情報の具体的な項目等については、後述する。
全体データベース31は、後述する説明変数データ81として用いられる磁化反転解析情報と、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データ74と、を含んでおり、本発明のデータベースに相当する。
(設定処理部21)
以下、制御部2の各部について詳細に説明する。設定処理部21は、磁気特性予測装置1の各種設定を行うための設定処理(図20(a)参照)を行うものである。設定処理部21では、例えば、データ取得処理部22によるデータ取得の方法やデータ取得日時の設定等、各種制御に係る情報の設定を行うことができる。また、設定処理部21では、記憶部3に記憶する各種情報の登録・更新・削除等が可能である。各種情報の入力には、入力装置5等を用いることができる。
(データ取得処理部22)
データ取得処理部22は、各種データを取得し記憶部3に記憶するデータ取得処理(図20(b)参照)を行うものである。データ取得処理部22は、取得した各種データをサンプル毎に関連付けて全体データベース31及び画像データベース36に登録する。データ取得処理部22は、製造装置61等の外部装置にデータを要求する信号を送信するなど、積極的にデータの取得を行うよう構成されていてもよい。また、データ取得処理部22は、任意のサンプルに関して、欠損しているデータを表示器4に表示するなど、欠損しているデータを提示する機能を有していてもよい。
(学習用データ抽出処理部23)
学習用データ抽出処理部23は、種々のデータを含む全体データベース31から、機械学習に必要なデータを抽出する学習用データ抽出処理を行う。本実施の形態では、学習用データ抽出処理部23は、全体データベース31から、機械学習において説明変数として用いるデータとして、磁化反転解析情報を含むデータを抽出し、説明変数データ81とする。つまり、説明変数データ81は、着磁した永久磁石の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含む。
本実施の形態では、一例として、説明変数データ81として磁化反転解析データ73のみを用いる場合を説明するが、これに限らず、説明変数データ81として、磁化反転解析データ73に加えて、組成データ70、プロセスデータ71、及び組織データ72のうち1つ以上を用いるようにしてもよい。これにより、磁気特性の予測精度をより向上させることが可能になる。例えば、組成が一定である場合であっても、説明変数データ81として、磁化反転解析データ73に加え、組織データ72及びプロセスデータ71の少なくとも一方を用いることで、永久磁石の組織構造や製造条件を考慮したより高精度な磁気特性の予測が可能である。
また、学習用データ抽出処理部23は、全体データベース31から、予測対象の磁気特性のデータを抽出し、目的変数データ82とする。抽出した説明変数データ81と目的変数データ82とは、学習用データ32として記憶部3に記憶される。
図5(a)に示すように、例えば、説明変数として磁化反転解析情報のみを用い、予測対象の磁気特性を保磁力HcJとする場合、学習用データ抽出処理部23は、全体データベース31から、所望の磁化反転解析データ73を抽出して説明変数データ81とすると共に、特性データ74のうち保磁力HcJのデータを抽出して目的変数データ82とし、説明変数データ81と目的変数データ82とを関連付けた学習用データ32を生成する。生成した学習用データ32は記憶部3に記憶される。なお、本実施の形態では、学習用データ32を生成し記憶するように学習用データ抽出処理部23を構成したが、これに限らず、説明変数データ81と目的変数データ82とを抽出して抽出結果をそのまま回帰モデル作成処理に用いてもよく、学習用データ32を生成する機能を省略してもよい。また、学習用データ32を一時記憶とし、回帰モデル作成処理後に学習用データ32を削除してもよい。
なお、学習用データ32は、少なくとも、説明変数データ81として用いられる磁化反転解析情報と、目的変数データ82として用いられる予測対象の磁気特性の情報(すなわち特性データ74)と、を含んでおり、上記の全体データベース31と同様に、本発明のデータベースに相当する。
(回帰モデル作成処理部24)
回帰モデル作成処理部24は、予め設定された説明変数データ81と、予測対象の磁気特性の情報を含む目的変数データ82との関係を機械学習し、説明変数データ81と目的変数データ82との相関性を表す回帰モデル33を作成する回帰モデル作成処理(図23(a)参照)を行うものである。本実施の形態では、回帰モデル作成処理部24は、学習用データ抽出処理部23が生成した学習用データ32を用い、説明変数データ81と目的変数データ82との相関性を表す回帰モデル33を作成する。なお、本実施の形態では、説明変数データ81には、磁化反転解析情報が含まれている。
回帰モデル作成処理部24は、説明変数と目的変数との相関性を、機械学習により自ら学習するための学習アルゴリズム等のソフトウェアを含んでいる。学習アルゴリズムは特に限定されず、公知の学習アルゴリズムを用いることができ、例えば、3層以上の層をなすニューラルネットワークを用いた所謂ディープラーニング等を用いることができる。回帰モデル作成処理部24が学習するものは、説明変数データ81として用いられるデータ(例えば、磁化反転解析データ73)と、目的変数データ82として用いられるデータ(例えば、保磁力HcJのデータ)との相関性を表すモデル構造に相当する。
図5(b)に示すように、回帰モデル作成処理では、学習用データ32に基づき、磁化反転解析情報を含む説明変数データ81と、予測対象の特性データ74を含む目的変数データ82との関係を機械学習し、これらの相関性を表す回帰モデル33を作成する。なお、図5(b)では、一例として、目的変数データ82が磁化反転解析データ73のみを含んでおり、目的変数データ82が保磁力HcJのデータである場合(つまり、磁化反転解析情報から保磁力HcJを予測する場合)を示している。
より具体的には、回帰モデル作成処理部24は、学習用データ32を基に、説明変数と目的変数とを含むデータ集合に基づく学習を反復実行し、両者の相関性を自動的に解釈する。なお、学習の開始時には相関性は未知の状態であるが、学習を進めるに従って説明変数に対する目的変数の相関性を徐々に解釈し、その結果として得られた学習済みモデルである回帰モデル33を用いることで、説明変数に対する目的変数の相関性の解釈が可能になり、精度よく予測することが可能となる。
回帰モデル作成処理部24は、作成した回帰モデル33を記憶部3に記憶する。本実施の形態では、回帰モデル作成処理部24は、全体データベース31が更新される度に、回帰モデル33を更新する。ただし、これに限らず、例えば後述する磁気特性予測処理を実行する際に、データ更新分をまとめて学習し、回帰モデル33を更新するようにしてもよい。
(磁気特性予測処理部25)
磁気特性予測処理部25は、回帰モデル33を用いて予測対象の磁気特性を予測する磁気特性予測処理(図23(b)参照)を行うものである。磁気特性予測処理部25は、予測した磁気特性を予測データ35として記憶部3に記憶する。
図5(c)に示すように、磁気特性予測処理では、磁気特性予測処理部25に、回帰モデル33と、入力装置5等で入力された予測元データ34(図示例では、磁化反転解析データ73である場合を示している)とが入力される。磁気特性予測処理部25は、回帰モデル33を用いて、予測元データ34に対応した磁気特性(図示例では保磁力HcJ)を求め、得られた特性データ74を予測データ35として記憶部3に記憶する。
(予測データ提示処理部26)
予測データ提示処理部26は、予測データ35を提示する予測データ提示処理を行う。予測データ提示処理では、例えば、予測データ35を表示器4に表示する。なお、予測データ提示処理では、予測データ35以外のデータ、例えば、予測に使用した説明変数データ81の項目や予測精度を示す指標等もあわせて提示するように構成されていてもよい。また、予測データ提示処理部26は、管理用の演算装置など、外部の装置に予測データ35を送信する機能を有していてもよく、予測データ35を提示する具体的な手段は特に限定されない。
(磁化反転解析装置10)
本実施の形態では、磁化反転解析装置10は、磁気特性予測装置1の一部を構成している。磁化反転解析装置10は、磁気特性予測装置1を構成するパーソナルコンピュータ等に一体に搭載されており、当該パーソナルコンピュータ等の制御部2の一部が磁化反転解析装置10として作用するように構成されている。ただし、これに限らず、磁化反転解析装置10は、磁気特性予測装置1を構成するパーソナルコンピュータ等とは別体に構成されていてもよく、また単独での使用も当然に可能である。さらに、磁化反転解析装置10は、記憶部3の画像データベース36とミクロ組織データベース37が含まれていてもよく、パーソナルコンピュータ等に制御部2と一体に搭載されていてもよく、別体に構成されていてもよい。
磁化反転解析装置10は、解析対象の永久磁石を着磁した後に、外部磁界を印加して磁化の向きを反転させた際の磁化反転の挙動を解析する装置であり、組織解析処理部27と、磁化反転解析処理部28と、磁化反転解析情報抽出処理部29と、を有している。これら組織解析処理部27、磁化反転解析処理部28、及び磁化反転解析情報抽出処理部29は、磁気特性予測装置1と磁化反転解析装置10の両方の構成要素となるものである。
(組織解析処理部27)
組織解析処理部27は、分析エリア(図2参照)で取得された画像データを基に、永久磁石の組織を解析して組織データ72を得る組織解析処理(図21参照)を行うものである。なお、ここでいう組織の解析とは、図6に示すように、磁性結晶粒子である主相粒と、隣り合う主相粒の間に位置する粒界相である二粒子粒界相と、3以上の主相粒に囲まれた粒界相である粒界三重点と、を識別し、それぞれの大きさ、隣接関係等を解析することを意味している。本実施の形態では、組織の解析において、主相粒の磁化容易方向(配向方向)を取得するため、EBSD像データ641を用いた。また、主相粒、二粒子粒界相、及び粒界三重点の識別、大きさや隣接関係の解析のためにSEM像データ631を用いた。
なお、本実施の形態では、組織の解析に用いる画像データとして、SEM像データ631とEBSD像データ641を用いたが、永久磁石の断面の組織構造を十分に観察でき、主相粒の磁化容易方向を検出可能であれば、どのような画像データを用いてもよい。例えば、EDX(エネルギー分散X線分光分析)やWDX(波長分散X線分光分析)で得られた組成分布の画像データや光学顕微鏡により取得した画像データ等を適宜用いてもよい。また、着磁後には高精度な画像を取得することが困難となる場合があるため、着磁前(すなわち、磁化反転解析前)に、組織の解析用の画像データを取得することが望ましい。
また、SEM像データ631とEBSD像データ641としては、後述する磁化評価用画像であるMOKE顕微鏡像データ651と同一視野の断面画像を用いる。そのため、当該画像を用いて得られた永久磁石の組織の情報は、磁化反転解析が行われる永久磁石の断面の領域と同一の領域から得られたものとなる。なお、画像データベースに保存されるSEM像データ631とEBSD像データ641の全てが磁化反転解析を行うための画像データである必要はなく、組織データ72を得るために使用する画像データが含まれていてもよい。そして、組織データ72を得るために使用する画像データ(磁化反転解析に使用しない画像データ)は、MOKE顕微鏡像データ651と同一視野でなくともよい。
組織解析処理では、図7(a)に示すように、組織解析処理部27に、組織解析用の画像データとして、SEM像データ631とEBSD像データ641とが入力される。組織解析処理部27は、入力されたSEM像データ631及びEBSD像データ641を基に解析を行い、主相粒の特徴量を抽出した主相粒データベース(主相粒DB)91、二粒子粒界相の特徴量及び隣接関係に関する情報を抽出した二粒子粒界相データベース(二粒子粒界相DB)92、及び、粒界三重点の特徴量を抽出した粒界三重点データベース(粒界三重点DB)93を生成する。これら主相粒データベース91、二粒子粒界相データベース92、及び粒界三重点データベース93は、微視的な組織構造を表すデータベースであり、まとめてミクロ組織データベース(ミクロ組織DB)37と呼称する。なお、各ミクロ組織データベース37の詳細については、後述する。
さらに、組織解析処理部27は、ミクロ組織データベース37から、永久磁石全体に影響を及ぼすパラメータを適宜演算、抽出することで、組織データ72を生成する。つまり、組織データ72は、ミクロ組織データベース37に含まれる情報、あるいは、ミクロ組織データベース37から演算した情報から構成されている。組織解析処理部27が生成した組織データ72は、全体データベース31に登録され、記憶部3に記憶される。
組織解析処理部27は、磁化評価用画像と同一視野の断面画像(ここではSEM像データ631)を用いて、主相粒と、二粒子粒界相と、粒界三重点と、を識別する識別処理部271を有している。識別処理部271は、SEM像データ631を適宜画像処理して、主相粒、二粒子粒界相、粒界三重点の各領域に区別する。識別処理部271による識別の具体的な方法は特に限定されず、例えば、特許第6988707号公報に記載の方法を用いることができる。
また、組織解析処理部27は、識別処理部271の識別結果に基づき、各主相粒、各二粒子粒界相、及び各粒界三重点にラベル(ID)を付けるラベル処理部272を有している。本実施の形態では、ラベル処理部272で付したラベルが、各主相粒、各二粒子粒界相、及び各粒界三重点の識別のために用いられることになる。つまり、隣接関係抽出処理部273や、後述する磁化反転解析処理部28の磁化方向抽出処理部281や磁化反転伝播解析処理部282は、ラベル処理部272が付けたラベルに基づき、各主相粒を区別する。
組織解析処理部27は、各主相粒の特徴量(大きさなど)を抽出し、ラベルと関連付けて主相粒データベース91を生成する。また、組織解析処理部27は、各二粒子粒界相の特徴量(幅、磁化容易方向など)を抽出し、ラベルと関連付けて二粒子粒界相データベース92を生成する。同様に、組織解析処理部27は、各粒界三重点の特徴量(大きさなど)を抽出し、ラベルと関連付けて粒界三重点データベース93を生成する。
また、組織解析処理部27は、磁化評価用画像と同一視野の断面画像(ここではSEM像データ631)を用いて、少なくとも主相粒同士の隣接関係を抽出する隣接関係抽出処理部273を有している。本実施の形態では、二粒子粒界相を基準として、当該二粒子粒界相に接する一対の主相粒(二粒子粒界相を挟んで向かい合う一対の主相粒)を隣接関係にあるとし、また、二粒子粒界相の両端に位置する一対の粒界三重点を隣接関係にあるとして、基準となる二粒子粒界相に関連付けて二粒子粒界相データベース92に登録するようにした。なお、これに限らず、隣接関係抽出処理部273が求めた隣接関係の情報を、二粒子粒界相データベース92とは別のデータベースに登録するようにしてもよい。また、隣接関係抽出処理部273は、隣り合う主相粒と粒界三重点との関係も抽出するよう構成されていてもよい。なお、隣接関係を求める具体的な方法については特に限定されず、例えば、特許第6988707号公報に記載の方法を用いることができる。
(磁化反転解析処理部28)
磁化反転解析処理部28は、磁化評価用画像として、磁気光学カー効果顕微鏡により得た画像データであるMOKE顕微鏡像データ651を用いて、着磁した永久磁石に外部磁界を印加して磁化の向きを反転させた際の磁化反転の挙動を解析する磁化反転解析を行う磁化反転解析処理(図22(a)参照)を行うものである。磁化反転解析処理部28は、磁化方向抽出処理部281と、磁化反転伝播解析処理部282と、を有している。
磁化方向抽出処理部281は、外部磁界の強度を変化させつつ取得した、主相粒の磁化の向きを特定可能な複数の磁化評価用画像(MOKE顕微鏡像データ651)を用い、外部磁界の強度毎の各主相粒の磁化の向きを抽出する。以下、磁化方向抽出処理部281が抽出する外部磁界の強度毎の各主相粒の磁化の向きの情報を、磁化方向情報と呼称する。磁化方向抽出処理部281が抽出した磁化方向情報は、主相粒データベース91に登録され、記憶部3に記憶される。磁化方向情報を抽出する方法の詳細については、後述する。なお、各主相の磁化の向きの情報は、外部磁界を印可する前の磁化の向きに対して、例えば略平行や略反平行等の情報であってもよい。
磁化反転伝播解析処理部282は、磁化方向抽出処理部281の抽出結果、および隣接関係抽出処理部273の抽出結果を基に、磁化反転の伝播情報を得る。磁化反転の伝播情報とは、外部磁界を段階的に変化させたときに、主相粒の磁化反転がどのように伝播したかを示す情報である。磁化反転伝播解析処理部282が得た磁化反転の伝播情報は、二粒子粒界相データベース92に登録され、記憶部3に記憶される。
つまり、図7(b)に示すように、磁化反転解析処理では、磁化反転解析処理部28に、MOKE顕微鏡像データ651と、ミクロ組織データベース37が入力される。磁化反転解析処理部28の磁化方向抽出処理部281は、入力された主相粒データベース91及びMOKE顕微鏡像データ651を基に、磁化方向情報を抽出し、主相粒データベース91に登録する。そして、磁化反転解析処理部28の磁化反転伝播解析処理部282は、入力された二粒子粒界相データベース92と磁化方向情報とを基に、磁化反転の伝播情報を導出し、二粒子粒界相データベース92に登録する。磁化反転の伝播情報の導出の詳細については、後述する。
(ミクロ組織データベース37)
ここで、ミクロ組織データベース37の具体例について説明しておく。ミクロ組織データベース37は、微視的な組織の情報や磁化反転の挙動に関する詳細な情報を記録したデータベースであり、主相粒データベース91、二粒子粒界相データベース92、及び粒界三重点データベース93を有している。
図8(a)は、主相粒データベース91の一例を示す図である。なお、図8(a)は主相粒データベース91の概念を示すものであり、実際の実験データを記載したものではない。図8(a)に示すように、主相粒データベース91は、組織解析処理部27が抽出した主相粒のミクロ組織情報と、磁化方向抽出処理部281が抽出した磁化方向情報を含んでおり、これら各情報が主相粒のラベルに関連付けて登録されている。主相粒のミクロ組織情報には、例えば、各主相粒の円相当径、着磁方向と磁化容易方向との角度、アスペクト比等の情報が含まれる。磁化方向情報は、外部磁界の強度毎の各主相粒の磁化の向きの情報である。磁化方向情報の形式等の詳細については、後述する。
図8(b)は、二粒子粒界相データベース92の一例を示す図である。なお、図8(b)は二粒子粒界相データベース92の概念を示すものであり、実際の実験データを記載したものではない。図8(b)に示すように、二粒子粒界相データベース92は、隣接関係抽出処理部273が抽出した隣接関係情報と、組織解析処理部27が抽出した各二粒子粒界相のミクロ組織情報と、磁化反転伝播解析処理部282が抽出した磁化反転の伝播情報と、を含んでおり、これら各情報が二粒子粒界相のラベルに関連付けて登録されている。隣接関係情報には、例えば、二粒子粒界相に接する一対の主相粒それぞれのラベル、二粒子粒界相の両端部に位置する粒界三重点のラベル等が含まれる。二粒子粒界相のミクロ組織情報には、例えば、二粒子粒界相の厚さや長さ等の情報が含まれる。磁化反転の伝播情報には、例えば、対となる主相粒間での伝播阻止の有無、対となる主相粒の片方が磁化反転する磁界強度、対となる主相粒の両方が磁化反転する磁界強度等が含まれる。なお、伝播阻止の有無とは、外部磁界を段階的に変化させた際に、いずれかの段階で、対となる主相粒の一方が磁化反転し、他方が磁化反転しない状態が存在したかどうかを表している。
図9は、粒界三重点データベース93の一例を示す図である。なお、図9は粒界三重点データベース93の概念を示すものであり、実際の実験データを記載したものではない。図9に示すように、粒界三重点データベース93は、組織解析処理部27が抽出した各粒界三重点のミクロ組織情報を含んでおり、該ミクロ組織情報が粒界三重点のラベルに関連付けて登録されている。粒界三重点のミクロ組織情報には、例えば、各粒界三重点のSEM画像平均輝度や円相当径、アスペクト比等の情報が含まれる。
(磁化方向情報の抽出)
次に、磁化方向抽出処理部281による磁化方向情報の抽出の具体例について説明する。まず、永久磁石を着磁した状態とし、着磁方向とは逆方向の外部磁界を加え、外部磁界の強度を段階的に変化させていく。図10(a)は、約-200kA/mの外部磁界(ここでは、観察視野における反磁界の影響も考慮した有効磁界)を付与した際のMOKE顕微鏡像(MOKE顕微鏡像データ651)を表しており、図10(b)は磁化反転を検出した箇所を示している。この段階では、主相粒に磁化反転は生じていない。
その後、外部磁界の強度を約-300kA/mとした際のMOKE顕微鏡像(MOKE顕微鏡像データ651)を図11(a)に、磁化反転を検出した箇所を図11(b)に示す。図11(a),(b)に示すように、外部磁界の強度を-300kA/mとすると、主相粒の一部が磁化反転していることが分かるとともに、隣接粒子が共に反転している領域があることが確認できる。なお、MOKE顕微鏡像では、輝度の変化により各主相粒の磁化反転の有無を判定することができる。例えば、外部磁界を加えたときのMOKE顕微鏡像と、外部磁界を加えていないときのMOKE顕微鏡像との輝度を比較し、輝度の変化が所定の閾値よりも大きい領域を抽出することで、磁化反転した主相粒を抽出することが可能である。
その後、外部磁界の強度を約-450kA/mとした際のMOKE顕微鏡像(MOKE顕微鏡像データ651)を図12(a)に、磁化反転を検出した箇所を図12(b)に示す。図12(a),(b)に示すように、外部磁界の強度を-450kA/mとすると、磁化反転した主相粒が大幅に増加していることが分かる。
(磁化反転の伝播情報の導出1)
次に、磁化反転伝播解析処理部282による磁化反転の伝播情報の導出の具体例について説明する。磁化反転の伝播情報の導出方法は、磁化方向情報の形式に応じたものとなるため、ここでは、磁化方向情報の形式もあわせて説明する。
図13~16の例では、磁化方向抽出処理部281は、着磁方向に対して磁化の向きが反転した主相粒の情報と未反転の主相粒の情報をそれぞれ特定の数値として、主相粒データベース91の磁化方向情報として記録している。より詳細には、磁化方向抽出処理部281は、着磁方向に対して磁化の向きが反転した主相粒の情報と未反転の主相粒の情報とを、絶対値が等しく正負の符号が異なる数値として記録している。ここでは、磁化反転した主相粒を-1、未反転の主相粒を1として記録する場合を示している。
磁化方向抽出処理部281により抽出された磁化反転情報が図13(a)~図16(a)の左表の通りであり、各主相粒の隣接関係が図13(a)~図16(a)の右図の通りである場合について、磁化反転の伝播情報の導出を説明する。
まず、図13(a)に示すように、外部磁界の強度が0kA/mであるときには、全ての主相粒が未反転の状態となる。磁化反転伝播解析処理部282は、隣接する主相粒の数値(ここでは1または-1)の組合せから、磁化反転の伝播情報を導出する。具体的には、図13(b)に示すように、隣接する主相粒の数値(磁化反転の有無を示す数値)を足し合わせて判定値とする。本実施の形態では、磁化反転伝播解析処理部282は、外部磁界の強度を段階的に変化させたときの前段階での強度との判定値の差(前磁場との差)も導出するように構成している。ここでは、全ての主相粒の数値が1であるから、判定値は全ての隣接している主相粒間で2となる。
図14(a)に示すように、外部磁界の強度を-100kA/mとすると、ラベル1の主相粒が磁化反転して数値が-1となる。これにより、図14(b)に示すように、ラベル1,2の主相粒のペア間において、判定値が0となる。このように、この方法では、任意の主相粒のペア間での判定値が0となったときに、当該主相粒のペア間で磁化反転が止まっていることが分かる。
さらに、図15(a)に示すように、外部磁界の強度を-200kA/mとすると、ラベル2,3,5,6の主相粒が一斉に磁化反転し数値が-1となる。これにより、図15(b)に示すような判定値が得られ、判定値が0となっている主相粒のペア間で磁化反転が止まっていることが分かる。また、判定値が-2でかつ前磁場との差が負の値となっている主相粒のペアは、現段階の外部磁界の強度とすることで、両方の主相粒が磁化反転した状態となったことが分かる。
さらに、図16(a)に示すように、外部磁界の強度を-300kA/mとすると、さらにラベル4,8,9の主相粒が一斉に磁化反転し数値が-1となる。これにより、図16(b)に示すような判定値が得られ、判定値が0となっている主相粒のペア間で磁化反転が止まっていることが分かる。また、判定値が-2でかつ前磁場との差が負の値となっている主相粒のペアは、現段階の外部磁界の強度とすることで、両方の主相粒が磁化反転した状態となったことが分かる。さらに、判定値が-2となり前磁場との差が0である主相粒のペアは、前段階で既に両方の主相粒が磁化反転しており、現段階では特に変化がない状態(前磁場から不変)であることが分かる。
このように、着磁方向に対して磁化の向きが反転した主相粒の情報と未反転の主相粒の情報をそれぞれ特定の数値として記録し、隣接する主相粒の数値を組合せることで、磁化反転の伝播情報を導出することができる。
(磁化反転の伝播情報の導出2)
磁化反転の伝播情報を導出する他の方法について説明する。図17(a)の例では、磁化方向抽出処理部281は、各主相粒について、磁化の向きが反転したときの外部磁界の強度である反転磁界強度を、主相粒データベース91に磁化方向情報として記録する。
この場合、図17(b)に示すように、磁化反転伝播解析処理部282は、隣接する主相粒同士に反転磁界強度の差がある場合に、反転磁界強度がより大きい主相粒において、磁化の向きが反転しない最大の外部磁界の強度(磁化反転が生じた強度の一段階前の強度)である伝播遮断磁界強度を、磁化反転の伝播情報として導出する。この伝播遮断磁界強度は少なくともその磁界強度を超えた磁界を印加しない限り隣接する主相粒に磁化反転が伝播しないことを意味する。ペアとなる主相粒が一斉に磁化反転している場合には、伝播遮断磁界強度は0(ゼロ)になる。つまり、任意の主相粒のペア間で伝播遮断磁界強度がゼロでないということは、当該主相粒のペア間で磁化反転の伝播阻止が存在していることを意味する。
また、図17(b)の例では、磁化反転伝播解析処理部282は、外部磁界の強度を段階的に変化させた際に磁化の向きが一斉に反転する集団反転が生じた主相粒のグループである集団反転グループを、磁化反転の伝播情報として導出している。集団反転グループを求める際には、例えば、反転磁界強度の最大値が同じ主相粒のペアをグルーピングした後、さらに、一方の主相粒が共通している連結されているペアをグルーピングするとよい。つまり、反転磁界強度の最大値が同じであっても、連結されていない主相粒のペアは、別グループとするとよい。
さらに、磁化反転伝播解析処理部282は、主相粒のペアの両方の磁化反転が生じる外部磁界の強度、すなわち主相粒のペアの集団反転が生じる外部磁界の強度である集団反転磁界強度を、磁化反転の伝播情報として導出してもよい。なお、外部磁界を不連続に変化させる態様を含んでもよい。この場合、外部磁界を連続的に変化させた場合よりも記録される反転磁界強度が高くなる場合がある。
(磁化反転解析情報抽出処理部29)
磁化反転解析情報抽出処理部29は、磁化反転伝播解析処理部282の解析結果、すなわち磁化反転の伝播情報を基に、磁化反転の挙動に係る特徴量である磁化反転解析情報を得る磁化反転解析情報抽出処理(図22(b)参照)を行うものである。磁化方向情報や磁化反転の伝播情報がミクロの情報であるのに対し、磁化反転解析情報は永久磁石全体での磁化反転に関する情報を表すマクロな情報であるといえる。
図7(c)に示すように、磁化反転解析情報抽出処理では、磁化反転解析情報抽出処理部29に、磁化方向情報を含む主相粒データベース91と、磁化反転の伝播情報を含む二粒子粒界相データベース92とが入力される。磁化反転解析情報抽出処理部29は、入力された主相粒データベース91及び二粒子粒界相データベース92を基に、磁化反転解析情報を抽出し、全体データベース(全体DB)31に登録し記憶部3に記憶する。
図18は、磁化反転解析情報の項目の一覧を示す図である。図18に示すように、磁化反転解析情報は、(1)主相粒のうち所定の割合の主相粒の磁化の向きが反転した際の外部磁界の強度の情報、及び、(2)外部磁界の強度を段階的に変化させた際に集団反転が生じた領域の面積の情報、を含むとよい。これらの情報は、保磁力HcJ等の磁気特性に大きな影響を与えると考えられるためである。
さらに、磁化反転解析情報は、永久磁石の組織の情報を磁化反転の伝播に関連付けた(3)磁化反転伝播詳細情報を含むとよい。磁化反転伝播詳細情報は、(3-1)全二粒子粒界相の長さに占める磁化反転の伝播が止まった二粒子粒界相の長さの情報を含んでもよい。
また、磁化反転伝播詳細情報は、(3-2)隣接する主相粒間の磁化容易方向の角度差を、磁化反転の伝播に関連付けた情報を含んでもよい。この情報は、具体的には、例えば、集団反転が起きた箇所と隣接主相粒との磁化容易方向の差の平均値・分散値の情報や、磁化反転の伝播が止まった箇所の隣接粒との磁化容易方向の角度差の平均値・分散値などである。
また、磁化反転伝播詳細情報は、(3-3)主相粒の磁化容易方向と外部磁界とがなす角度を、磁化反転の伝播に関連付けた情報を含んでもよい。この情報は、具体的には、例えば、集団反転が起きた箇所の外部磁界印加方向と磁化容易方向の角度差の平均値・分散値の情報や、磁化反転の伝播が止まった箇所の外部磁界印加方向と磁化容易方向の角度差の平均値・分散値の情報などである。
また、磁化反転伝播詳細情報は、(3-4)二粒子粒界相の厚さを、磁化反転の伝播に関連付けた情報を含んでもよい。この情報は、具体的には、集団反転が起きた箇所の二粒子粒界相の厚さの平均値・分散値の情報や、磁化反転の伝播が止まった箇所の二粒子粒界相の厚さの平均値・分散値の情報などである。なお、磁化反転伝播詳細情報は、(3-1)~(3-4)の情報に限らず、磁化反転の伝播や停止と、組織の情報とを組み合わせたものであればよい。
(磁気特性予測方法、及び磁化反転解析方法)
図19は、本実施の形態に係る磁気特性予測方法のフロー図である。図19のフロー図のうち、ステップS5の組織解析処理、ステップS6の磁化反転解析処理、及びステップS7の磁化反転解析情報抽出処理の各ステップが、本実施の形態に係る磁化反転解析方法に相当するフロー図となる。以下、各ステップについて詳細に説明する。
図19に示すように、まず、ステップS1にて、設定処理を行う。設定処理では、図20(a)に示すように、入力装置5等から設定データが入力され(ステップS101)、ステップS102にて、設定処理部21が、入力された設定データに応じた各種の設定を行う。その後、ステップS103にて、設定処理部21が、各種の設定に伴うデータ更新処理等を行い、リターンする。
ステップS1の設定処理の後、ステップS2にて、制御部2は、新たなデータが入力されたかを判定する。ステップS2でNo(N)と判定された場合、ステップS11に進む。ステップS2でYES(Y)と判定された場合、ステップS3にて、データ取得処理を行う。
データ取得処理では、図20(b)に示すように、ステップS301にて、データ取得処理部22が、組成データ70、プロセスデータ71、特性データ74、及び各種画像データ(SEM像データ631、EBSD像データ641、MOKE顕微鏡像データ651)を受信する。なお、必ずしもすべてのデータを一度に受信しなくてもよいし、全てのデータが揃わなくてもよい。その後、ステップS302にて、データ取得処理部22が、受信した各データを関連付けて、全体データベース31や画像データベース36に登録し、記憶部3に記憶する。その後、リターンする。
ステップS3のデータ取得処理の後、ステップS4にて、制御部2が、ステップS3のデータ取得処理にて画像データが入力されたかを判定する。ステップS4でNo(N)と判定された場合、ステップS8に進む。ステップS4でYes(Y)と判定された場合、ステップS5にて、組織解析処理を行う。
図21に示すように、組織解析処理では、ステップS501にて、識別処理部271が、SEM像データ631を用いて、主相粒と二粒子粒界相と粒界三重点とを識別する識別処理を行う。なお、識別処理に用いる画像は、SEM像に限らず、EBSD像やMOKE顕微鏡像、光学顕微鏡像等でもよい。その後、ステップS502にて、ラベル処理部272が、ラベル処理を行い、各主相粒、各二粒子粒界相、及び各粒界三重点にラベルを付ける。その後、ステップS503にて、隣接関係抽出処理部273が、隣接関係抽出処理を行う。隣接関係抽出処理では、磁化評価用画像のデータであるMOKE顕微鏡像データ651、または当該磁化評価用画像と同一視野の断面画像のデータであるSEM像データ631等を用いて、少なくとも主相粒同士の隣接関係を抽出する。ここでは、隣接関係抽出処理部273は、SEM像データ631を用いて、主相粒同士の隣接関係や、粒界三重点同士の隣接関係を抽出する。なお、ステップS503の隣接関係抽出処理は、本発明の隣接関係抽出処理工程に相当する。
その後、ステップS504にて、組織解析処理部27が、各主相粒、各二粒子粒界相、及び各粒界三重点のミクロ組織情報を取得するミクロ組織情報取得処理を行う。なお、組織情報を抽出しない場合にはステップS504は省略可能である。その後、ステップS505にて、組織解析処理部27が、ラベル、ミクロ組織情報、及び隣接関係情報を関連付けて、ミクロ組織データベース37である主相粒データベース91、二粒子粒界相データベース92、及び粒界三重点データベース93を生成するミクロ組織データベース生成処理を行う。その後、ステップS506にて、組織解析処理部27が、ミクロ組織データベース37から、主要な組織の情報を組織データ72として抽出する組織データ抽出処理を行う。抽出した組織データ72は、全体データベース31に登録され、記憶部3に記憶される。その後、リターンする。
ステップS5の組織解析処理を行った後、ステップS6にて、磁化反転解析処理を行う。図22(a)に示すように、磁化反転解析処理では、ステップS601にて、磁化方向抽出処理部281が、磁化方向抽出処理を行う。磁化方向抽出処理では、磁化方向抽出処理部281が、外部磁界の強度を変化させつつ取得した、主相粒の磁化の向きを特定可能な複数の磁化評価用画像としてのMOKE顕微鏡像(MOKE顕微鏡像データ651)を用い、外部磁界の強度毎の各主相粒の磁化の方向を抽出して磁化方向情報とする。なお、ステップS601の磁化方向抽出処理は、本発明の磁化方向抽出工程に相当する。その後、ステップS602にて、磁化方向抽出処理部281が、抽出した磁化方向情報を主相粒データベース91に登録し、記憶部3に記憶する。
その後、ステップS603にて、磁化反転伝播解析処理部282が、磁化方向抽出処理工程の抽出結果である磁化方向情報、および隣接関係抽出処理工程の抽出結果である隣接関係情報を基に、磁化反転の伝播情報を導出する磁化反転伝播解析処理を行う。なお、ステップS603の磁化反転伝播解析処理は、本発明の磁化反転伝播解析工程に相当する。その後、ステップS604にて、磁化反転伝播解析処理部282が、抽出した磁化反転の伝播情報を二粒子粒界相データベース92に登録し、記憶部3に記憶する。その後、リターンする。
ステップS6の磁化反転解析処理を行った後、ステップS7にて、磁化反転解析情報抽出処理部29が、磁化方向情報、磁化反転の伝播情報、及び組織の情報を基に、磁化反転解析情報を抽出する磁化反転解析情報抽出処理を行う。磁化反転解析情報は、例えば、図18にて示したものである。その後、ステップS8に進む。
ステップS8では、学習用データ抽出処理部23が、全体データベース31から、機械学習に用いる学習用データ32を抽出する学習用データ抽出処理を行う。説明変数や目的変数にどのような項目を用いるかは、例えば、設定処理で設定することができる。本実施の形態では、説明変数データ81に磁化反転解析情報が含まれるように、学習用データ抽出処理が行われる。
その後、ステップS9にて、回帰モデル作成処理を行う。予め設定された説明変数データ81と、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データ74(すなわち目的変数データ82)との関係を機械学習し、説明変数データ81と特性データ74(目的変数データ82)との相関性を表す回帰モデル33を作成する。なお、ステップS9の回帰モデル作成処理は、本発明の回帰モデル作成処理工程に相当する。回帰モデル作成処理では、図23(a)に示すように、ステップS901にて、回帰モデル作成処理部24が、未学習の学習用データ32を機械学習に用いて、回帰モデル33の更新を行う。なお、ステップS901は、回帰モデル33が未作成である場合には、回帰モデル33が新たに作成される。その後、ステップS902にて、更新(あるいは作成)した回帰モデル33を記憶部3に記憶し、リターンする。
磁気特性の予測を行う際には、入力装置5等により、予測元データ34を入力する(ステップS10)。なお、予め予測元データ34となるデータを磁気特性予測装置1に入力しておき、入力装置5により予測元データ34として用いるデータを選択するよう構成してもよい。
ステップS11では、制御部2が、予測元データ34が入力されたかを判定する。ステップS11でNo(N)と判定された場合、リターンする(ステップS1に戻る)。ステップS11でYes(Y)と判定された場合、ステップS12に進む。
ステップS12では、磁気特性予測処理を行う。磁気特性予測処理では、図23(b)に示すように、まず、ステップS121にて、磁気特性予測処理部25が、回帰モデル33を用いて、予測元データ34に対応する特性データ74(予測対象の磁気特性)を予測し、予測データ35とする。その後、ステップS122にて、得られた予測データ35を記憶部3に記憶する。なお、ステップS12の磁気特性予測処理は、本発明の磁気特性予測処理工程に相当する。その後、リターンする。
ステップS12の磁気特性予測処理を行った後、ステップS13にて、予測データ提示処理を行う。予測データ提示処理では、予測データ提示処理部26が、予測した予測データ35を表示器4に表示する等して、予測データ35を提示する。その後、リターンする(ステップS1に戻る)。
(変形例:ハードウェア構成)
上記実施の形態では、磁気特性予測装置1がパーソナルコンピュータにより構成されている場合を説明したが、これに限らず、例えば、磁気特性予測装置1は、サーバ等のネットワーク装置により構成されてもよい。この場合、磁気特性予測装置1は、データ管理用の端末装置などの所定の端末装置と相互に通信可能に構成され、当該端末装置から画像データを含む各種データを受信するように構成するとよい。また、磁気特性予測装置1で予測した予測データ35を端末装置に送信し、端末装置にて予測データ35を提示するように構成するとよい。
また、上記実施の形態では、磁気特性予測装置1と磁化反転解析装置10とが一体に構成されている(1台のパーソナルコンピュータ等で構成されている)場合について説明したが、これに限らず、例えば、磁化反転解析装置10を単独で用いることも当然に可能であり、磁化反転解析装置10をサーバ等のネットワーク装置により構成してもよい。
(変形例:機械学習による磁化反転解析データ73の予測)
また、上記実施の形態では、磁化反転解析処理部28及び磁化反転解析情報抽出処理部29によって磁化反転解析データ73(磁化反転解析情報)を求めたが、機械学習により磁化反転解析データ73を予測する機能を磁気特性予測装置1に備えてもよい。
より具体的には、磁気特性予測装置1は、図24(a),(b)に示すように、組織データ72と磁化反転解析データ73との関係を機械学習し、組織データ72と磁化反転解析データ73との相関性を表す磁化反転解析用回帰モデル102を作成する磁化反転解析用回帰モデル作成処理部101と、磁化反転解析用回帰モデル102を用いて磁化反転解析データ73(予測磁化反転解析データ73a)を予測する磁化反転解析データ予測処理部103と、をさらに備えてもよい。
図24(a)に示すように、磁化反転解析用回帰モデル作成処理部101には、学習用のデータとして、同一視野から取得した組織データ72と磁化反転解析データ73が入力される。これらデータは、全体データベース31から抽出されたものであってもよい。磁化反転解析用回帰モデル作成処理部101は、入力された組織データ72を説明変数、磁化反転解析データ73を目的変数として、これらの相関性を示す磁化反転解析用回帰モデル102を作成する。
図24(b)に示すように、磁化反転解析データ予測処理部103には、磁化反転解析用回帰モデル102と、予測元の組織データ72aが入力される。磁化反転解析データ予測処理部103は、磁化反転解析用回帰モデル102を用い、予測元の組織データ72aに対応する磁化反転解析データ73である予測磁化反転解析データ73aを導出する。
これにより、磁化反転解析を行わずとも磁化反転情報を予測することが可能になる。そのため、例えば、何らかの理由でMOKE顕微鏡像データ651を取得できないような場合であっても、精度の高い磁気特性の予測が可能になる。また、磁化反転解析用回帰モデル102を用いて、磁化反転条件を満足する所望の組織特徴を予測することもできる。
(変形例:ミクロ組織データベース37内での解析他)
さらにまた、ミクロ組織データベース37内で解析(機械学習を用いた各種パラメータの予測)を行うことも可能である。例えば、上記実施の形態では、磁化反転解析により磁化方向情報や磁化反転の伝播情報を求めたが、機械学習により磁化方向情報や磁化反転の伝播情報を予測する機能を磁気特性予測装置1に備えてもよい。この場合、磁化反転解析情報抽出処理部29は、予測した磁化方向情報や磁化反転の伝播情報に基づき、磁化反転解析情報を抽出してもよい。
例えば、主相粒のミクロ組織情報である円相当径(図8(a)参照)を説明変数とし、主相粒の反転磁界強度(図17(a)参照)を目的変数として機械学習を行い、両者の相関を示す回帰モデルを予め作成しておき、当該回帰モデルを用いて、予測元の主相粒の円相当径から、主相粒の反転磁界強度を予測することができる。
また、例えば、主相粒及び二粒子粒界相のミクロ組織情報を説明変数とし、磁化反転の伝播情報の各パラメータを目的変数として機械学習を行い、両者の相関を示す回帰モデルを予め作成しておき、当該回帰モデルを用いて、予測元の主相粒及び二粒子粒界相のミクロ組織情報から、磁化反転の伝播情報の各パラメータを予測することができる。
このように、主相粒や二粒子粒界相のミクロ組織情報の任意のパラメータを説明変数として、機械学習を利用して磁化方向情報や磁化反転の伝播情報の各種パラメータを予測してもよい。
同様に、全体データベース31に含まれる任意のパラメータを説明変数として、ミクロ組織データベース37の解析(機械学習を用いた各種パラメータの予測)を行うことも可能である。また、これとは逆に、ミクロ組織データベース37の任意のパラメータを説明変数として、全体データベース31の任意のパラメータを予測するといったことも可能である。このような様々な予測を利用して、データの不足分を補い、図1の回帰モデル33を作成可能となるように、各データベースの補完を行ってもよい。
(変形例:外部磁界の変化のさせ方)
さらに、上記実施の形態では、外部磁界の強度を段階的に増加させてMOKE顕微鏡像データ651を取得したが、これに限らず、例えばリコイル測定やFORC(First Order Reversal Curve)測定と呼ばれる手法等を応用し、外部磁界の方向を適宜反転させて外部磁界の強度の増減を繰り返すことで、より詳細に磁化反転の挙動を解析するようにしてもよい。
(変形例:磁化評価用画像)
上記実施の形態では、磁化評価用画像としてのMOKE顕微鏡像を用いる場合を説明したが、これに限らず、例えば、X線磁気円二色性(XMCD)顕微鏡や磁気力顕微鏡(MFM)により取得した画像データ等を磁化評価用画像として用いてもよい。この場合、特定の磁界における主相粒の磁化の向きを抽出して、隣接粒子間の磁化の向きの相違を求めてこれを磁化反転の伝播情報として採用できる。そのため、磁化方向抽出処理部281は複数の磁化評価用画像を使用せず、単独の磁化評価用画像を用いて外部磁界の強度毎の各主相粒の磁化の向きを抽出することができる。なお、単数に限られず複数の磁化評価用画像を使用してもよい。
(変形例:各種情報の提示)
また、上記実施の形態では、磁化反転に関する情報、すなわち、磁化反転解析情報や、磁化方向情報、磁化反転の伝播情報の提示を行わなかったが、これに限らず、磁気特性予測装置1(あるいは磁化反転解析装置10)は、磁化反転に関する情報を表示器4等に提示する機能を有していてもよい。この際、磁化反転に関する情報の統計情報等を併せて提示するようにしてもよい。同様に、組織の情報を提示する機能も有してもよい。
(変形例:その他)
さらに、上記実施の形態では、主相粒の磁化容易方向や、外部磁界の方向について、EBSD像やMOKE顕微鏡像の画像に対する垂直方向の成分(例えば、図10(a)における紙面方向の成分)について特に言及しなかったが、主相粒の磁化容易方向や、外部磁界の方向については、画像に平行な方向と垂直な方向の成分を分けて登録するようにしてもよい。また、上記実施の形態で得られる磁気特性予測装置に、VSM(試料振動型磁力計)による磁石全体の磁化過程解析(直流磁化曲線、初磁化曲線、FORCダイアグラム)など、その他の計測および解析手法で取得したデータを登録して活用してもよい。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気特性予測装置1では、予め設定された説明変数データ81と、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データ74との関係を機械学習し、説明変数データ81と特性データ74との相関性を表す回帰モデル33を作成する回帰モデル作成処理部24と、回帰モデル33を用いて予測対象の磁気特性を予測する磁気特性予測処理部25と、を備え、説明変数データ81は、着磁した永久磁石の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含んでいる。
これにより、磁化反転の挙動を考慮して磁気特性の予測を行うことが可能になり、磁気特性を精度よく予測することが可能になる。
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
[1]永久磁石の磁気特性を予測する磁気特性予測装置(1)であって、予め設定された説明変数データ(81)と、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データ(74)との関係を機械学習し、前記説明変数データ(81)と前記特性データ(74)との相関性を表す回帰モデル(33)を作成する回帰モデル作成処理部(24)と、前記回帰モデル(33)を用いて予測対象の磁気特性を予測する磁気特性予測処理部(25)と、を備え、前記説明変数データ(81)は、着磁した前記永久磁石の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含む、磁気特性予測装置(1)。
[2]磁気光学カー効果顕微鏡(65)により得た画像を用いて前記磁化反転解析を行う磁化反転解析処理部(28)と、前記磁化反転解析処理部(28)の解析結果を基に、前記磁化反転解析情報を抽出する磁化反転解析情報抽出処理部(29)と、を備えた、[1]に記載の磁気特性予測装置(1)。
[3]前記磁化反転解析情報は、少なくとも、結晶粒子である主相粒のうち所定の割合の主相粒の磁化の向きが反転した際の外部磁界の強度の情報を含む、[1]に記載の磁気特性予測装置(1)。
[4]前記磁化反転解析情報は、少なくとも、外部磁界の強度を段階的に変化させた際に、結晶粒子である主相粒の磁化の向きが一斉に反転する集団反転が生じた領域の面積の情報を含む、[1]に記載の磁気特性予測装置(1)。
[5]前記磁化反転解析情報は、少なくとも、前記永久磁石の組織の情報を磁化反転の伝播に関連付けた磁化反転伝播詳細情報を含む、[1]に記載の磁気特性予測装置(1)。
[6]前記磁化反転解析情報は、前記磁化反転伝播詳細情報として、少なくとも、隣接する主相粒間の磁化容易方向の角度差を、磁化反転の伝播に関連付けた情報を含む、[5]に記載の磁気特性予測装置(1)。
[7]前記磁化反転解析情報は、前記磁化反転伝播詳細情報として、少なくとも、主相粒の磁化容易方向と前記外部磁界とがなす角度を、磁化反転の伝播に関連付けた情報を含む、[5]に記載の磁気特性予測装置(1)。
[8]前記磁化反転解析情報は、前記磁化反転伝播詳細情報として、少なくとも、二粒子粒界相の厚さを、磁化反転の伝播に関連付けた情報を含む、[5]に記載の磁気特性予測装置(1)。
[9]前記永久磁石の組織の情報は、前記磁化反転解析が行われる前記永久磁石の領域と同一の領域から得られたものである、[5]に記載の磁気特性予測装置(1)。
[10]前記説明変数データ(81)として、前記磁化反転解析情報を含む磁化反転解析データ(73)に加え、前記永久磁石の組織の情報を含む組織データ(72)、及び前記永久磁石の製造条件の情報を含むプロセスデータ(71)の少なくとも一方を用いる、[1]に記載の磁気特性予測装置(1)。
[11]前記永久磁石の組織の情報を含む組織データ(72)と、前記磁化反転解析情報を含む磁化反転解析データ(73)との関係を機械学習し、前記組織データ(72)と前記磁化反転解析データ(73)との相関性を表す磁化反転解析用回帰モデル(102)を作成する磁化反転解析用回帰モデル作成処理部(101)と、前記磁化反転解析用回帰モデル(102)を用いて磁化反転解析データ(73)を予測する磁化反転解析データ予測処理部(103)と、をさらに備えた、[1]に記載の磁気特性予測装置(1)。
[12]永久磁石の磁気特性を予測する磁気特性予測方法であって、予め設定された説明変数データ(81)と、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データ(74)との関係を機械学習し、前記説明変数データ(81)と前記特性データ(74)との相関性を表す回帰モデル(33)を作成する回帰モデル作成処理工程と、前記回帰モデル(33)を用いて予測対象の磁気特性を予測する磁気特性予測処理工程と、を備え、前記説明変数データ(81)は、着磁した前記永久磁石の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含む、磁気特性予測方法。
[13]予め設定された説明変数データ(81)と、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データ(74)と、を含み、前記説明変数データ(81)は、着磁した永久磁石の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含む、データベース(31,32)。
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
1…磁気特性予測装置
10…磁化反転解析装置
2…制御部
21…設定処理部
22…データ取得処理部
23…学習用データ抽出処理部
24…回帰モデル作成処理部
25…磁気特性予測処理部
26…予測データ提示処理部
27…組織解析処理部
271…識別処理部
272…ラベル処理部
273…隣接関係抽出処理部
28…磁化反転解析処理部
281…磁化方向抽出処理部
282…磁化反転伝播解析処理部
29…磁化反転解析情報抽出処理部
3…記憶部
31…全体データベース(データベース)
32…学習用データ(データベース)
33…回帰モデル
34…予測元データ
35…予測データ
36…画像データベース
37…ミクロ組織データベース
4…表示器
5…入力装置
61…製造装置
62…磁気特性試験装置
63…SEM(走査電子顕微鏡)
631…SEM像データ(走査電子顕微鏡像)
64…EBSD(後方散乱電子回折装置)
641…EBSD像データ
65…MOKE顕微鏡(磁気光学カー効果顕微鏡)
651…MOKE顕微鏡像データ(磁気光学カー効果顕微鏡像、磁化評価用画像)
70…組成データ
71…プロセスデータ
72…組織データ
73…磁化反転解析データ
74…特性データ
81…説明変数データ
82…目的変数データ
91…主相粒データベース
92…二粒子粒界相データベース
93…粒界三重点データベース
101…磁化反転解析用回帰モデル作成処理部
102…磁化反転解析用回帰モデル
103…磁化反転解析データ予測処理部

Claims (12)

  1. 永久磁石の磁気特性を予測する磁気特性予測装置であって、
    予め設定された説明変数データと、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データとの関係を機械学習し、前記説明変数データと前記特性データとの相関性を表す回帰モデルを作成する回帰モデル作成処理部と、
    前記回帰モデルを用いて予測対象の磁気特性を予測する磁気特性予測処理部と、を備え、
    前記説明変数データは、着磁した前記永久磁石の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含む、
    磁気特性予測装置。
  2. 磁気光学カー効果顕微鏡により得た画像を用いて前記磁化反転解析を行う磁化反転解析処理部と、
    前記磁化反転解析処理部の解析結果を基に、前記磁化反転解析情報を抽出する磁化反転解析情報抽出処理部と、を備えた、
    請求項1に記載の磁気特性予測装置。
  3. 前記磁化反転解析情報は、少なくとも、結晶粒子である主相粒のうち所定の割合の主相粒の磁化の向きが反転した際の外部磁界の強度の情報を含む、
    請求項1に記載の磁気特性予測装置。
  4. 前記磁化反転解析情報は、少なくとも、外部磁界の強度を段階的に変化させた際に、結晶粒子である主相粒の磁化の向きが一斉に反転する集団反転が生じた領域の面積の情報を含む、
    請求項1に記載の磁気特性予測装置。
  5. 前記磁化反転解析情報は、少なくとも、前記永久磁石の組織の情報を磁化反転の伝播に関連付けた磁化反転伝播詳細情報を含む、
    請求項1に記載の磁気特性予測装置。
  6. 前記磁化反転解析情報は、前記磁化反転伝播詳細情報として、少なくとも、隣接する主相粒間の磁化容易方向の角度差を、磁化反転の伝播に関連付けた情報を含む、
    請求項5に記載の磁気特性予測装置。
  7. 前記磁化反転解析情報は、前記磁化反転伝播詳細情報として、少なくとも、主相粒の磁化容易方向と外部磁界とがなす角度を、磁化反転の伝播に関連付けた情報を含む、
    請求項5に記載の磁気特性予測装置。
  8. 前記磁化反転解析情報は、前記磁化反転伝播詳細情報として、少なくとも、二粒子粒界相の厚さを、磁化反転の伝播に関連付けた情報を含む、
    請求項5に記載の磁気特性予測装置。
  9. 前記永久磁石の組織の情報は、前記磁化反転解析が行われる前記永久磁石の領域と同一の領域から得られたものである、
    請求項5に記載の磁気特性予測装置。
  10. 前記説明変数データとして、前記磁化反転解析情報を含む磁化反転解析データに加え、前記永久磁石の組織の情報を含む組織データ、及び前記永久磁石の製造条件の情報を含むプロセスデータの少なくとも一方を用いる、
    請求項1に記載の磁気特性予測装置。
  11. 前記永久磁石の組織の情報を含む組織データと、前記磁化反転解析情報を含む磁化反転解析データとの関係を機械学習し、前記組織データと前記磁化反転解析データとの相関性を表す磁化反転解析用回帰モデルを作成する磁化反転解析用回帰モデル作成処理部と、
    前記磁化反転解析用回帰モデルを用いて磁化反転解析データを予測する磁化反転解析データ予測処理部と、をさらに備えた、
    請求項1に記載の磁気特性予測装置。
  12. 永久磁石の磁気特性を予測する磁気特性予測方法であって、
    予め設定された説明変数データと、予測対象の磁気特性の情報を含む特性データとの関係を機械学習し、前記説明変数データと前記特性データとの相関性を表す回帰モデルを作成する回帰モデル作成処理工程と、
    前記回帰モデルを用いて予測対象の磁気特性を予測する磁気特性予測処理工程と、を備え、
    前記説明変数データは、着磁した前記永久磁石の磁化の向きを反転させた際の挙動を解析する磁化反転解析により得られた磁化反転解析情報を含む、
    磁気特性予測方法
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