〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、第1実施形態に係る測距装置や、測距装置を搭載した移動体について一例を説明する。なお、測距装置は、種々の移動体に搭載可能であり、例えば線路上を走行する列車や、道路を走行する自動車やバイク等、あるいは、建機(重機)類等が考えられる。
図1に例示するように、本実施形態の測距装置1は、移動体MOに搭載され、矢印A1に示す移動体MOの移動方向に向かって投光し、返ってきた成分を受光することで、測距を行う。このため、測距装置1は、例えば、所定の走査範囲について電磁波であるレーザ光を走査させる走査部2を有する。特に、本実施形態では、測距装置1は、移動体MOの移動態様の変化を検知する検知部DT(加速度センサ20等)に加え、検知部DTでの検知結果に基づいて、走査範囲における測距点の分布について疎密を変化させる測距点制御部11を備える。これらにより、本実施形態では、例えば移動体MOの周辺における障害物の有無に関する検知を、測距によって的確かつ迅速に行うことができるようになっている。すなわち、測距装置1は、障害物検知装置として機能する。
なお、ここでは、図示のように、走査部2によって走査を行う所定の走査範囲を、走査範囲SRとする。すなわち、測距装置1は、移動体MOの進行方向の所定範囲を占める走査範囲SRに所定数の測距点RPを設定している。すなわち走査タイミングでレーザ光(パルス光)を発光し、投光し、その反射光成分を捉えることで、そのタイミングにおける方角にある物体までの距離を測定する。図示の例では、測距装置1から投光されるレーザ光の成分を投光成分PLとする。また、投光成分PLのうち走査範囲SRに存在する物体(障害物)で反射あるいは散乱された成分のうち、投光成分PLと反対方向の経路を辿った成分を、反射成分RLとする。なお、図示では、説明を簡単にするため、走査範囲SRを2次元状の矩形領域で示しているが、走査範囲SRについては、これに限らず、種々の形状が想定される。
以下、図2を参照して、測距装置1のより具体的な一構成例について説明する。
図2に例示するように、本実施形態の測距装置1は、光学式測距装置50を構成するものとして、上記した走査部2のほか、投光部3と、受光部4と、これらの光学系各部の各種動作制御をする制御部10とを有する。特に、制御部10には、測距点の位置を制御する測距点制御部11が含まれている。測距装置1は、光学式測距装置50のほか、検知部DTとしての加速度センサ20と、障害物判定部30とを備える。
光学式測距装置50のうち、走査部2は、既述のように、電磁波であるレーザ光を、走査範囲SR(図1あるいは図3、図4等参照)について走査させるための装置であり、例えば2次元走査ミラー(スキャナ)等で構成することができる。なお、詳しくは図3等を参照して後述するが、本実施形態では、一例として、ラスタスキャン型の走査を行うものとする。
光学式測距装置50のうち、投光部3は、例えばレーザドライバ、レーザ素子(半導体レーザ)、レンズ等を含んで構成され、レーザ光(パルス光)を発光し、投光するレーザ投光部である。なお、投光部3から発光されたレーザ光は、必要に応じて設けた種々の光学系(図示略)を介して走査部2に向かい、走査部2で反射される。これにより、測距装置1は、走査範囲SR(図1等参照)について投光成分PLを走査させる。なお、投光部3は、制御部10を構成する測距点制御部11からの指令に従って、所定のタイミングで投光成分PLを射出する。
光学式測距装置50のうち、受光部4は、測距装置1から射出されたレーザ光の反射成分RLを受信するレーザ受光部である。受光部4は、受光素子(フォトダイオード)のほか、必要に応じて、例えば受光光学系、プリアンプ、A/D変換器等を備え、反射成分RLを、例えば検出可能なパルス波の状態にして、制御部10に出力する。
以上のように、投光部3から発光されたレーザ光は、走査部2によって走査光として所定範囲を走査し、この際、走査範囲SRにおいて測距可能な位置に障害物OBが存在していれば、投光成分PLが障害物OBの表面において反射あるいは散乱され、そのうちの反射成分RLが受光部4において捉えられる。
なお、詳しい説明や図示を省略するが、光学式測距装置50には、上記のほか、例えば投光成分PLと反射成分RLとは、同じ光路を反対向きに進むがこれらを分離すべく適宜投光/受光分離器等といった各種光学機器が設けられている。
光学式測距装置50のうち、制御部10は、例えば各種回路機構等で構成され、上記のような光学系の各種動作の制御をする。特に、本実施形態では、制御部10には、測距点制御部11が設けられている、あるいは、制御部10が測距点制御部11として機能することで、測距を行う際の投光についての調整が可能となっている。言い換えると、図1に示す走査範囲SRにおける測距点RPの位置を変更でき、特に、測距点RPの走査範囲SRでの分布について疎密を変化させること、すなわち散らばりの度合いに偏りをもたせることを可能にしている。
制御部10は、光学式測距装置50を構成する光学系の動作制御のほか、種々の演算処理等を行う。例えば、制御部10は、障害物OBが存在していた場合における当該障害物OBまでの距離を算出すべく、投光部3の動作タイミングや、受光部4での測定結果(検出結果)の解析に基づく演算を行う。具体的には、制御部10は、時間差計測部として、投光成分PLの射出タイミングや反射成分RLの測定値及び測定タイミングから、投光から受光までの時間差を計測する。さらに、制御部10は、距離算出部として、計測した時間差から障害物OBまでの距離を算出する。なお、詳しい説明を省略するが、距離算出部としての制御部10は、各タイミングにおける走査部2の姿勢、すなわち投光成分PLの射出方向(角度)の情報を併せて取得することで、例えば、2次元走査される範囲における距離画像の作成を可能としてもよい。制御部10は、上記のようにして計測した時間差や光量の計測結果を障害物判定部30に出力する。
以下、測距装置1のうち、光学式測距装置50以外の構成要件である検知部DTとしての加速度センサ20と、障害物判定部30とについて説明する。
検知部DTとしての加速度センサ20は、移動体MOとともに移動する測距装置1の加速度についての変化を検知する検知部DTとして機能し、その検知結果を、制御部10を構成する測距点制御部11に対して出力する。
測距点制御部11は、検知部DTとしての加速度センサ20での検知結果に基づいて、走査範囲SR(図1等参照)における測距点RPの分布について疎密を変化させる、すなわち、走査部2の動作タイミングや、投光部3でのパルス光(レーザ光)の射出タイミングを変更する。言い換えると、測距点制御部11は、加速度センサ20での検知をトリガーとして、この結果に基づいて走査態様を変化させる。以上のような動作を行うため、例えば、検知部DTで検知される各種数値に予め閾値が設けられており、測距点制御部11は、当該閾値に基づいて、測距点RPの分布についての疎密変化の度合等を決定する。
障害物判定部30は、例えば演算回路等で構成され、上記のように加速度センサ20での検知結果に基づいて動作した光学式測距装置50における演算結果に基づいて、障害物OBに関する判定を行う判定部である。典型的には、障害物OBのようなものについて、移動体MOの移動(走行)に際しての妨げとなるものであるか否か、延いては、移動体MOの移動における危険の有無等についての判定を行う。
障害物判定部30における判定の方法として、典型的には、走査範囲SR(図1等参照)において、予め定めた距離についての閾値に対して、当該閾値以下の距離となる測距点RPの個数が、所定数以上あるか否かに応じて、移動体MOの移動先における障害物の有無を判定する、といったものが考えられる。この場合、測距点RPの密度が高まるほど、検知感度(解像度)が高まることになる。
以下、図3及び図4を参照して、測距装置1による測距におけるパルス光(レーザ光)の走査と、走査における動作態様の変更について一例を説明する。図3(A)は、測距装置1による走査の様子について一例を示す概念図であり、図3(B)は、投光部3におけるパルス光(レーザ光)の射出タイミングについて示すチャート図である。また、図4(A)及び図4(B)は、図3(A)及び図3(B)にそれぞれ対応する図であり、測距装置1による走査の様子について別の一例を示している。
本実施形態では、既述のように、また、図3(A)に示すように、走査部2は、ラスタスキャン型の走査をする。すなわち、図3(A)では、2次元状の領域で概念的に示す走査範囲SR上において、パルス光(レーザ光)が照射されるタイミングを測距点RPとして示しており、走査範囲SR上における測距点RPの走査の仕方が、ラスタスキャン状になっていることから、ここではラスタスキャン型としている。具体的には、例えば図示の例では、矩形の領域である走査範囲SRの左上から順に、水平方向に(図中において左から右へ向かって)高速にライン状(1次元状)のスキャンがなされ、このようなスキャンが複数回に亘って繰り返されて、垂直方向下向きに進んでいき、走査範囲SRの右下まで到達することで、走査範囲SR全体の走査がなされる。なお、この場合、投光部3でのパルス光(レーザ光)の射出タイミングについては、図3(B)に示すようなものとなる。すなわち、図3(A)において矢印L1で示す最初の1ラインのスキャンの間、等間隔でパルス光(レーザ光)の射出がなされ、インターバルを経た後、矢印L2で示す2つ目の1ラインのスキャンの間、同様に、等間隔でパルス光(レーザ光)の射出がなされ。これが繰り返されることで、図3(A)に示すような水平方向について等間隔となる測距点RPが走査範囲SRの全体に形成される。
これに対して、測距点制御部11は、検知部DTから出力された情報によっては、別の一例として示す図4(A)及び図4(B)のように、測距点RPの分布について疎密を変化させる、すなわち、走査範囲SRにおける測距点RPの位置を変更して、偏りを変化させる。例えば図4(A)に示す一例のように、左右での密度について変化させるのであれば、図4(B)に示すように、測距点制御部11からの指令により、各ラインのスキャンにおいて、投光部3における射出タイミングをずらせばよい。この場合、例えば検知部DTでの結果に応じて、射出タイミングのずらし具合をアナログ的に調整するようにしてもよい。なお、詳しい図示等は省略するが、例えば、投光部3における射出タイミングの調整に加えて、走査部2の動作を調整することで、密度変化を左右での密度変化に限らず、さらに種々の態様にできる。
ここで、上記した移動体MOにおける移動に関して、特に、移動方向の変化や姿勢の変化においては、変化した移動先における障害物検知が重要となる可能性が高い。例えば、列車や車両であれば、レールで規定される軌道が曲がっていく先や、道路を曲がる場合の曲がっていく先に、もしも障害物が存在する場合には、これを一刻も早く検知して危険を知らせることが重要となる。また、重機などで旋回を行う場合にも旋回方向において、人や物の存在を迅速に確認することは非常に重要である。また、これらのことは、移動体MOについて有人運転を行う場合にも、無人運転を行う場合にも重要となる。
しかしながら、例えば、測距点を増やすことで検知を確実にしようとすると、測距点の増大と、検知速度とでは、トレードオフの関係にあり、従来の測距装置における性能等を勘案した場合、必ずしも十分な検知を迅速に行えるとは限らない。そこで、本実施形態では、測距点制御部11において、検知部DTでの検知に基づき、測距点RPの分布について疎密を変化させることで、例えば測距点を増大させなくても、移動体の移動方向に応じて、より迅速かつ的確に障害物を捉えることを可能にしている。すなわち、測距装置1は、搭載された走行装置等の移動体MOの移動方向が変化する場合に、変化した移動先における障害物検知等を重点的に行うことで、的確で迅速な測距を可能にしている。
以下、図5等を参照して、測距装置1が搭載された移動体MOについて一例を説明するとともに、搭載された測距装置1の動作について、説明する。
図5(A)~図5(D)は、測距装置1が搭載された移動体MOについて、概念的な一例を示すものである。ここでの移動体MOは、図示のように、前方側を構成する第1本体部MOaと、後方側を構成する第2本体部MObと、これらを接続する接続部CNとで構成されている。なお、図示において、移動体MOの進行方向を+X方向とし、X方向を前後方向とする。また、X方向に対して垂直な面(垂直面)内において互いに直交する方向をY方向及びZ方向とする。すなわち、X方向に垂直な面をYZ面とする。また、これらのうち、水平方向(左右方向)をY方向とし、垂直方向(上下方向)をZ方向とする。
移動体MOのうち、前方側(+X側)を構成する第1本体部MOaには、前方部FPと、一対構成の前輪FWとが設けられている。なお、これらは、筐体SCaに取り付けられている。また、後方側(-X側)を構成する第2本体部MObには、一対構成の後輪RWが、筐体SCbに取り付けられている。前輪FW及び後輪RWが、回転駆動する。
また、第1本体部MOaと第2本体部MObとを接続する接続部CNは、蛇腹状の部材で構成されている、すなわち変形可能なものとなっている。これにより、第1本体部MOaと第2本体部MObとの位置関係は、種々に変更可能となっており、例えば左右方向についての旋回動作がなされる。
ここでは、例えば、図5(A)において矢印R1、R2で示すように、前輪FWが向きを変えることができる、すなわち移動体MOのステアリングの動作が可能になっている。以上により、移動体MOの走行や旋回がなされる。したがって、図1等に示す検知部DT(加速度センサ20等)において検知される移動体MOの移動態様の変化として、移動体MOの旋回、移動体MOのステアリングの動作に伴う変化が含まれる。また、例えば図5(B)及び図5(C)において矢印TL,TRで示すように、移動体MOの左右方向(Y方向)についての向きの変更、あるいは、移動体MOの左右方向(Y方向)についての旋回が可能になっている。
また、第1本体部MOaのうち、前方部FPには、例えばカメラ等が搭載されており、例えば移動体MOの進行方向についての状況を捉えることが可能になっている。図示の例では、測距装置1は、前方部FPに取り付けられている。すなわち、測距装置1は、移動体MOとともに移動する上で、特に、前方部FPとともに種々の姿勢を変化させる。また、図5(D)において実線および破線で示すように、ここでは、前方部FPは、軸状の部材で構成される可動部PPの先端側に取り付けられている一方、可動部PPの根元側が、筐体SCaにおいてY軸の周りに回転可能に取り付けられている。これにより、前方部FPは、矢印UDで示すように、上下方向(Z方向)について旋回可能となっている。なお、前方部FPについては、上記のようなカメラを搭載して前方を捉えるような場合に限らず、例えば、建機(重機)における可動式のアーム状部分やその先端、すなわち油圧ショベルのアームやバケット部分やダンプの昇降式の荷台部分等、あるいは、フォークリフトの可動部分等といった種々の箇所が、これに相当するものとして考えられる。
また、移動体MOの走行についても、種々の態様が考えられる。前輪FW及び後輪RWの回転駆動を変化させることで、例えば、高速移動としたり、低速移動(停止を含む)としたりできる。あるいは、軌道を規定するレール上を走行したりする、といった態様としてもよい。なお、レール上を走行するような態様については、典型的には、列車を移動体MOとして捉えるような場合のように、ステアリングの動作が無い構成等としてもよい。なお、規定された軌道を走行する場合、移動体MOの移動態様の変化としては、移動体MOの走行軌道の変化が影響することになる。例えば、レールのカーブや傾斜等が、検知部DT(加速度センサ20等)において検知されることで、当該検知に基づく測距点RPの分布についての疎密変化を生じさせることになる。なお、規定された軌道に関する地図データと移動体MOの位置検知との照合によって、移動体MOの走行位置(現在位置)の軌道状況が把握可能となっているようにしてもよい。
以下、図6等を参照して、測距装置による測距における測距点RPの分布についての疎密の変化のさせ方を、いくつか例示する。なお、上記のような種々の動きをし得る移動体MO(図4等参照)について、図6以下に示す一例では、特に、左右に旋回し、かつ、走行速度(移動速度)が変化する場合について考察する。
図6は、測距装置1による測距における測距点RPの分布について疎密の変化を例示する概念図であり、予め所定数の測距点RPが設定された走査範囲SRについて、4つの変化態様を例示している。なお、ここでは、測距点制御部11は、走査範囲SRについての1回の走査における測距点RPの個数は、一定に保たれているものとする。すなわち、図示の4つの走査範囲SRにおける測距点RPの個数は、同数(図示の例では49個)となっている。言い換えると、この場合、例えば走査におけるフレームレートを変化させることなく測距を行うことができる。
図6の例示のうち、まず、走査範囲C1は、旋回がなされておらず、かつ、走行速度(移動速度)が低速(停止を含む)である場合の測距点RPの分布を示している。この場合、測距点RPは、走査範囲C1において、均一に広がった状態となっている。
一方、走査範囲C2は、走行速度(移動速度)が低速(停止を含む)で、右旋回(-Y側への旋回)がなされた場合の測距点RPの分布を例示している。この場合、測距点制御部11は、右側(-Y側)に、すなわち移動体MOの移動態様が変化していく先の方向について、測距点RPの分布密度を増大させるように、密度変化をさせている。
走査範囲C3は、走行速度(移動速度)が低速(停止を含む)で、左旋回(+Y側への旋回)がなされた場合の測距点RPの分布を例示している。この場合、測距点制御部11は、左側(+Y側)に、すなわち移動体MOの移動態様が変化していく先の方向について、測距点RPの分布密度を増大させるように、密度変化をさせている。
なお、走査範囲C4は、旋回がなされておらず、かつ、走行速度(移動速度)が高速である場合の測距点RPの分布を示している。この場合、実質的な走査範囲を破線で示す走査範囲CC4に狭めた限定された範囲とすることで、より遠方の範囲についての状況判断を優先している。
なお、図6を参照した例では、説明を簡単にするため、走行速度については高低の2段階とし、旋回については、有無について分けたが、これらについてさらに多段階としたり、組み合わせたものに対応させたりするものとしてもよい。
すなわち、図7に一例を示すように、右旋回に関して、走査範囲SRにおいて、左端に示す旋回をしていない状態(走査範囲C1に相当)から徐々に旋回の速度が速まって右端に示すある程度の旋回となった状態(走査範囲C2に相当)に至るまでに、変化に合わせて、徐々に測距点RPの分布が右に偏っていくようにさせてもよい。
さらに、図8に他の一例として示すように、右旋回に加えて走行速度(移動速度)が変化する(徐々に上がっていく)場合には、左端に示す旋回をしていない状態(走査範囲C1に相当)から徐々に旋回しつつ走行速度が高まって右端に示すある程度の旋回となった状態(走査範囲C5)に至るまでに、変化に合わせて、徐々に測距点RPの分布が右に偏っていきつつ全体の実質的な走査範囲が狭まるようにさせてもよい。
以下、図9のフローチャートを参照して、測距装置1の一連の動作について一例を説明する。なお、ここでの一例では、説明の簡略化のため、移動(走行)については低速か高速かの二段階、旋回移動については有るか無いかの二択とする。
まず、測距装置1のうち、制御部10を構成する測距点制御部11は、各種パラメータを読み込む(ステップS101)。すなわち、検知部DTである加速度センサ20からの各種データ等を読み出して、測距装置1の移動状況を把握する。このうち、まず、測距点制御部11は、低速移動であるか否かを判断する(ステップS102)。
ステップS102において低速移動でない(高速移動である)と判断した場合(ステップS102:No)、測距点制御部11は、さらに、旋回移動の有無を確認する(ステップS103)。
ステップS103において旋回移動有りと判断した場合(ステップS103:Yes)、測距点制御部11は、旋回方向に測距点RPを集中させ(偏らせ)、走査範囲SRを狭域とする走査を行わせるように、走査部2及び投光部3の動作を制御する(ステップS104)。
一方、ステップS103において旋回移動無しと判断した場合(ステップS103:No)、測距点制御部11は、旋回方向に測距点RPを集中させる(偏らせる)ことなく、走査範囲SRを狭域とする走査を行わせるように、走査部2及び投光部3の動作を制御する(ステップS105)。
ステップS102において低速移動である(停止の場合含む)と判断した場合(ステップS102:Yes)、測距点制御部11は、さらに、旋回移動の有無を確認する(ステップS106)。
ステップS106において旋回移動有りと判断した場合(ステップS106:Yes)、測距点制御部11は、旋回方向に測距点RPを集中させ(偏らせ)、走査範囲SRを広域とする走査を行わせるように、走査部2及び投光部3の動作を制御する(ステップS107)。
一方、ステップS106において旋回移動無しと判断した場合(ステップS106:No)、測距点制御部11は、旋回方向に測距点RPを集中させる(偏らせる)ことなく、走査範囲SRを広域とする走査を行わせるように、走査部2及び投光部3の動作を制御する(ステップS108)。測距装置1は、以上の動作を、測距動作の停止指令を受けるまで繰り返す。
以上のように、本実施形態では、移動体MOに搭載され、所定の走査範囲SRについて電磁波であるレーザ光を走査させる走査部2と、移動体MOの移動態様の変化を検知する検知部DTとしての加速度センサ20と、加速度センサ20での検知結果に基づいて、走査範囲SRにおける測距点RPの分布について疎密を変化させる測距点制御部11とを備える。すなわち、測距点制御部11が、加速度センサ20での検知結果に基づいて、走査範囲SRにおける測距点RPの分布について疎密を変化させて、移動体MOの周辺における障害物の有無に関する検知を行う。これにより、測距によって的確かつ迅速に行うことができる。
なお、上記では、検知部DTとしてのセンサについて、加速度センサ20を例示しているが、これに限らず、種々のセンサを利用可能である。例えばジャイロセンサ(角速度センサ)等を利用する、あるいは、これらのセンサを組み合わせて検知部DTを構成するものとしてもよい。この場合、ジャイロセンサにより旋回についての検知を行うとともに、加速度センサにより、速度変化等を捉える、といった態様にすることが考えられる。
〔第2実施形態〕
以下、図10を参照しつつ、第2実施形態の測距装置について一例を説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、検知部DTに関する構造を除いて、第1実施形態の場合と同様であるので、全体の構成について、共通する構成要素については同じ符号を付し、検知部DT以外の他の部分の詳しい説明については省略する。
図10(A)は、本実施形態に係る測距装置201の一構成例についてのブロック図であり、図2に対応する図である。また、図10(B)は、測距装置201を搭載した移動体MOについて概念的に説明するためのブロック図であり、図1に対応する図である。
図10(A)に示すように、本実施形態の測距装置201は、検知部DTを、移動体MOから移動態様の変化に関する情報を受け付ける情報受付部220で構成している点において、第1実施形態の場合と異なっている。すなわち、第1実施形態では、図2等に示すように、測距装置1が、加速度センサ20等の各種センサによって、自ら移動態様の変化を捉えている。これに対して、本実施形態では、外部装置からの情報を情報受付部220で受け付けることで、移動態様の変化を捉えている。このため、ここでの一例では、図10(B)に示すように、情報受付部220は、移動体MOに備えられた情報提供部PDに接続され、測距点制御部11は、情報受付部220を介して情報提供部PDから得た情報に基づき、各種処理や判断を行っている。
この場合、情報源となる情報提供部PDについては、種々のものが考えられ、例えば、移動体MOが加速度センサを有している場合には、当該加速度センサそのものや当該加速度センサからの情報を取得可能な装置等を、情報提供部PDとすることが考えられる。そのほか、移動体MOに設けられた速度等を測定する各種測定器等を情報提供部PDとすることで、必要な情報を取得する構成としてもよい。
本実施形態においても、移動体MOの移動態様の変化を検知する検知部DTとしての情報受付部220での検知結果に基づいて、測距点制御部11が走査範囲SRにおける測距点RPの分布について疎密を変化させて、移動体MOの周辺における障害物の有無に関する検知を行う。これにより、測距によって的確かつ迅速に行うことができる。
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
まず、上記では、ラスタスキャン型の走査を行うものとしているが、走査範囲SRにおける測距点RPの分布について、所望の疎密変化を行えるものであれば、これに限らず種々の態様とすることができる。
例えば、図11に例示するリサージュ(またはリサジュー)パターンを形成するリサージュ型の走査を行う態様を適用することも考えられる。この場合、例えば、測距点RPの分布について変化させるべく、複数のリサージュパターンを用意しておく、すなわち図11に例示するようなものと異なる形状のリサージュパターン(図示の場合と周期が異なるパターン)を準備し、各リサージュパターンと検知部DTでの検知結果とを対応付けておく、といった方法をとることが考えられる。
また、上記実施形態では、走査部2において、例えば光走査部として電磁駆動式の2次元ガルバノミラーを用いることが考えられるが、本発明はこれに限定されるものではなく、電磁駆動式、静電方式、圧電方式、熱方式などの各種の駆動方式で光反射面を有する可動部を揺動駆動する構成の光走査部にも適用することができる。
また、図12(A)において他の一例として示すように、リサージュ型や、ラスタスキャン型とは異なるスキャン方法を採用してもよい。図12(A)の例では、リサージュ型やラスタスキャン型のように、走査範囲SRについて端から端まで光(ビーム)を振るのではなく、走査範囲SRのうち任意のところに光を当てることで、必要な箇所により多くの測距点RPを設ける構成としている。例えば液晶偏光回折素子を利用して、上記のような走査の制御を行うことができる。このための液晶偏光回折素子は、2つの屈折率を持つフィルムと光の偏光状態を変える液晶素子とを多層積層したものであり、これを通過する光線の方向を離散的に任意の方向に変化させることができる。また、上記のような液晶偏光回折素子に代えてオプティカルフェーズドアレイ(OPA:Optical Phased Array)を用いたものであってもよい。オプティカルフェーズドアレイは、分岐によって複数のチャンネルを通過する光の位相をそれぞれ制御することにより、出力光ビームの方向を任意の方向に変化させることができる。
なお、比較のため、走査範囲SRについて端から端まで走査をするものとして、図12(B)にラスタスキャン型の場合の典型例を示している。図12(A)は、自動車運転の場合について例示しており、測距装置1(図1等参照)を、車両前方側に配置して進行方向を、走査範囲SRとしている。この場合、走査範囲SRのうち、特に、下方側の領域SR1についての情報が、上方側の領域SR2についての情報よりも重要となる。このため、走査範囲SRのうち、領域SR1について予め多くの測距点RPが設けられるようにしてもよい。この上で、検知部DTでの検知状況に応じて、さらに、測距点RPの疎密を変化させていく。
また、上方側の領域SR2においても、ある程度近い距離として測距されるものがある場合については、これらを捉えるべく分布が偏るようにしてもよい。つまり、上方側の領域SR2においてある程度の距離以内に物体がある可能性がある場合(例えば1点でもそのような測距点RPが検出された場合)には、その周辺の領域(例えば信号機や看板等が設置されている領域SR2a,SR2b)についての測距点RPを増やすようにする、といったことが考えられる。また、このように自動車運転に適用する場合、例えば単に車両や信号機等が検出されただけで障害物とはせず、その存在位置や相対的距離の変化等を加味して安全な状況にあるかや、障害物であるかを判断する、等の態様とすることが考えられる。