JP7312530B2 - 反射型スクリーン - Google Patents

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本発明は、光の透明、不透明状態を切り替える事ができる調光フィルムを使用した反射型スクリーンに関する。
近年、高分子ネットワーク型液晶や高分子分散型液晶などを用いた調光フィルムが、建物などの調光機能を備えた窓や電子ブラインドとして使用されている。また打合せスペースに設置する透明、不透明の切り替え可能な衝立として使用され始めている。
調光フィルムは、2枚の透明導電基材の透明導電膜側を向い合わせにして、液晶材料からなる調光層を狭持した積層体である。この積層体の透明導電膜間に適切な交流電圧を印加すると調光層が透明(光を散乱しない状態)になり、電圧を切ると不透明(光を散乱する状態)になるノーマルモードの調光フィルムが知られている。また、その逆に交流電圧を印加すると不透明になり、電圧を切ると透明になるリバースモードの調光フィルムが知られている。
その様な調光フィルムを使用したスクリーンとしては、図2に例示したような層構成の反射型スクリーン20が考えられる。単に調光フィルム1と透明基板4を積層した構成である。この様な構成のスクリーンを透過型スクリーンとして使用する場合は問題無いが、反射型スクリーンとして使用する場合は、図2に示したように反射光が投影画像に映り込み、画像が滲む問題がある。太い実線で示した投射装置6から調光フィルム1に入射した投射光は、調光層3にて反射され観察者5によって観察される。同時に透過光と散乱光を生じる。透過光は位置Aにて透過光と反射光を生じる。散乱光は観察者5側に散乱されるものと透明基板4側に散乱されるものが生じる。透明基板4側に散乱された光は、例えば位置BとCにて透過光と反射光を生じる。
この様に、透明基板4や調光層3にて生じる反射光によって、反射型スクリーンに映し出される投影画像に滲みが生じ、鮮明度が劣化することになる。
この様な反射型スクリーンの鮮明度を改善する技術として、特許文献1には、図3に例示したような層構成を備えた反射型スクリーン30が開示されている。この技術は、プロジェクタにより投影される映像を鮮明に見ることができると共に、映像を投影しない場合は、透明性が高い反射型のプロジェクタースクリーンを提供する事を課題として、プロジェクタ(投射装置)の光源に対して高分子分散型液晶層(調光層3)よりも外側(透明基板4の調光フィルム1が積層された側とは反対側)に透明反射層8が設けられた構成の反射型スクリーン30である。更に詳しくは、透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明基材、透明反射膜の順で積層されてなる反射型スクリーンである。
しかしながら、この技術においては、プロジェクタからの投射光が調光層に入射した後、反射、透過および散乱するが、透過および散乱によって透明基板4の外側(調光フィルム1とは反対側)の表面に形成された透明反射層8により、透明反射層8が無い場合より強く反射されるため輝度が上がるが、調光層3で生じた散乱光は図2の場合と本質的に変わらないと考えられる。従って、画像の滲みによる鮮明度の劣化を防ぐことは困難であると考えられる。
特開2016-109953号公報
上記の事情に鑑み、本発明は調光フィルムを透明基板に積層した構成の反射型スクリーンにおいて、調光フィルムの調光層にて生じた透過光や散乱光が透明基板により反射されることによって生じる投影画像の滲みによる鮮明度の劣化を抑制することができる反射型スクリーンを提供することを課題とする。
上記の課題を解決する手段として、本発明の第一の態様は、透明基材上に透明導電膜を備えた一対の透明導電基材の透明導電膜を内側にして、液晶材料を含有する調光層を狭持した調光フィルムと、
調光フィルムを支持する透明基板と、
反射防止層と、をこの順に積層したことを特徴とする反射型スクリーンである。
調光フィルムと透明基板と反射防止層をこの順に積層した反射型スクリーンにおいて、調光フィルム側から投射装置からの投射光が入射すると、投射光は調光フィルムの調光層で反射、透過および散乱する。透過光および透明基板側に散乱した散乱光は、各層の境界面にて反射され、観察者によって観察される。また調光層で生じた散乱光のうち観察者側に散乱した散乱光も観察者により観察される。特に透過光は散乱光と比較して高い強度を持っているため、透明基板の外側(調光フィルムとは反対側)が空気などの場合は強く反射するため、観察者によって視認され易い。しかしながら、本発明の反射型シートにおいては、透明基板の外側に反射防止層が備えられているため、反射が低減され、強い反射光が観察者によって視認されることはない。
また、第二の態様は、前記反射防止層が、モス・アイ構造または屈折率1.43以下の低屈折率層からなることを特徴とする第一の態様に記載の反射型スクリーンである。
透明基材と屈折率1.43以下の低屈折率層の界面においては反射率が著しく低減される。またモス・アイ構造からなる反射防止層であっても透明基材との界面における反射率が著しく低減される。
また、第三の態様は、前記透明基材の厚さが、0.3mm以上、25.0mm以下であることを特徴とする第一または第二の態様に記載の反射型スクリーンである。
本発明の反射スクリーンは、調光フィルムと透明基板と反射防止層がこの順に積層されているため、調光フィルム側から入射した光は、調光フィルムの調光層によって反射、透過、散乱された光のうち、透明基板側に進んだ透過光と散乱光は、反射防止層があるため反射を著しく抑制される。そのため、反射光によって形成される画像の滲みが抑制され、鮮明な画像を得ることができる。
本発明の反射型スクリーンの層構成を例示する断面説明図。 従来の反射型スクリーンの層構成を例示する断面説明図。 従来の反射型スクリーンの層構成を例示する断面説明図。
本発明の反射型スクリーンを、図1を用いて説明する。
本発明の反射型スクリーン10は、透明基材(透明樹脂フィルム)上に透明導電膜を備
えた一対の透明導電基材2の透明導電膜を内側にして、液晶材料を含有する調光層3を狭持した調光フィルム1と、調光フィルム1を支持する透明基板4と、反射防止層7と、をこの順に積層した反射型スクリーンである。
(透明導電基材)
透明導電基材2は、透明基材上に透明導電膜を形成したものである。透明基材としては、透明な樹脂フィルムや樹脂シートを好適に使用することができる。樹脂材料としては特に限定する必要はなく、光透過率が例えば80%以上の樹脂材料であれば使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、などを挙げることができるが、これらに限定するものではない。熱硬化性の樹脂も使用することができる。
これらの透明樹脂材料を、フィルム状またはシート状に加工することにより、透明樹脂フィルムや透明樹脂シートを作製することができる。
(調光層)
調光層3は、液晶材料を含有する材料からなる層である。調光層3にはノーマルタイプとリバースタイプが知られている。ノーマルタイプの調光層は、透明導電基材の透明導電膜側を内側にして液晶材料を狭持した積層体であり、透明導電膜間に交流電圧を印加することによって透明な状態とすることができ、電圧を印加していない状態では不透明な状態とすることができる。リバースタイプの調光層は、逆に、透明導電膜間に交流電圧を印加していない時に透明な状態とすることができ、電圧を印加していない状態では透明な状態とすることができる。
本発明の反射型スクリーン10においては、いずれのタイプの調光層3であっても構わない。
(透明基板)
透明基板4は、透明で自立可能な透明な材料からなる基板であれば特に限定する必要は無い。従って、材料としは、各種のガラスを好適に使用可能であるが、同等以上の透明性と自立性(自立可能な機械的な強度)を備えていれば、透明樹脂基板であっても良い。
また、透明基板4の屈折率が高いほど反射防止層7として機能する低屈折率層を容易に選択できるようになる。例えば、屈折率が1.5程度のソーダ石灰ガラスを使用した場合、低屈折率層としては、屈折率が1.5以下のフッ化マグネシウム、二酸化ケイ素などの無機物の他、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン、ウレタン、アクリルガラスなどの高分子材料を使用することができる。
(反射防止層)
反射防止層7としては、各種の反射防止層を適用可能である。単層、複数層からなる反射防止層、モス・アイ構造からなる反射防止層、などを挙げることができる。
単層からなる反射防止層7としては、透明基板4より小さい屈折率(1.43以下)の低屈折率層であれば良い。また、反射率の波長依存線はあるが、反射防止層7を2層、3層などの複数層からなる反射防止層とすることにより、最低反射率を更に低減することも可能である。
モス・アイ構造の反射防止層を使用することも可能である。モス・アイ構造とは、150nm未満の周期ピッチで、高さが数百nmの凹凸構造によって反射防止機能が発現する反射防止構造を指す。
前記したような光アスペクトの凹凸構造を高密度に形成する必要があるため、電子ビーム露光装置により電子ビームレジストの露光を行い、現像後、異方性が高いドライエッチング技術によって原版を作製し、その原版または複製版を使用して、ナノインプリントモールド技術を用いて作製することができる。
或いは、グラッシーカーボン膜を基材上に形成しておき、そのグラッシーカーボン膜にECR型イオンシャワー加工装置を用いて酸素イオンビームを照射することにより、微細な凹凸構造を形成できることが知られている。
このようなモス・アイ構造からなる反射防止層7を透明基板4側に向けて積層する事によって、反射防止層を形成することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
調光フィルムとしてノーマルモードの接着層付のLC MAGIC(凸版印刷株式会社製)を用意した。また、透明基材としてソーダ石灰ガラス(屈折率1.51)を用意した。ソーダ石灰ガラス(ガラス基板)の厚さは、0.3mmとした。
反射防止層としてモス・アイ構造の反射防止層を使用した。モス・アイ構造の反射防止層としては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に円錐形構造体を形成したものを使用した。円錐形構造体は底面の直径が250nm、高さが500nmの円錐形構造体を底面が互いに接する様に形成した。このような円錐形構造体は、TACフィルム上に直径250nmの円形パターンを互いに周縁部が接した状態のレジストパターンを形成後、酸素ガスを使用した反応性イオンエッチング装置を用いてドライエッチングすることによって形成した。
このモス・アイ構造が形成された面と反対の面を、粘着層を介してガラス基板に接着した。
以上の様にして作製した反射型スクリーンを使用してプロジェクタから投射した画像を目視により観察し、二重像が観察されるかどうか、即ち鮮明度を評価した。
鮮明度の評価方法は、反射型スクリーンとプロジェクタの距離を1mとし、プロジェクタから静止画像をスクリーンに投影した。観察者はプロジェクタと同じ側に立ち、スクリーンから2mの距離にてスクリーン上の画像を観察することにより、目視にて画像の鮮明度を評価した。
<実施例2>
ガラス基板の厚さを0.7mmとした以外は実施例1と同様とした。
<実施例3>
ガラス基板の厚さを3.0mmとした以外は実施例1と同様とした。
<実施例4>
ガラス基板の厚さを10.0mmとした以外は実施例1と同様とした。
<実施例5>
ガラス基板の厚さを25.0mmとした以外は実施例1と同様とした。
<実施例6>
反射防止層として、TACフィルム上に多孔質シリカ微粒子を含有する塗布液を塗布し、乾燥することにより低屈折率層を形成した。この低屈折率層側をガラス基板に接着層を介して貼り合せることにより、ガラス基板に低屈折率層を形成した。この低屈折率層の屈折率は1.34、膜厚は100nmであった。
このガラス基板の低屈折率層が形成された面とは反対側の面に、調光フィルムLC MAGICの粘着層が形成された面の剥離紙を剥がしながら、LC MAGICを貼り合せることにより、反射型スクリーンを作製した。ガラス基板の厚さは0.3mmとした。それ以外は実施例1と同様とした。
<実施例7>
ガラス基板の厚さを0.7mmとした以外は、実施例6と同様とした。
<実施例8>
ガラス基板の厚さを3.0mmとした以外は、実施例6と同様とした。
<実施例9>
ガラス基板の厚さを10.0mmとした以外は、実施例6と同様とした。
<実施例10>
ガラス基板の厚さを25.0mmとした以外は、実施例6と同様とした。
<比較例1>
反射防止層を備えなかったこと以外は、実施例1と同様とした。
<比較例2>
反射防止層を備えなかったこと以外は、実施例2と同様とした。
<比較例3>
反射防止層を備えなかったこと以外は、実施例3と同様とした。
<比較例4>
反射防止層を備えなかったこと以外は、実施例4と同様とした。
<比較例5>
反射防止層を備えなかったこと以外は、実施例5と同様とした。
<比較例6>
反射防止層を備えなかったこと以外は、実施例6と同様とした。
<比較例7>
ガラス基板の厚さを30.0mmとした以外は実施例1と同様とした。
<比較例8>
ガラス基板の厚さを30.0mmとした以外は、実施例6と同様とした。
以上、実施例1~10および比較例1~8の二重像に関する目視観察の結果を表1に示した。
Figure 0007312530000001
<評価結果>
表1は、ガラス基板に調光フィルムを積層した自立型の反射型スクリーンにおいて、ガラス基板の調光フィルムとは反対側の面にモス・アイ構造または低屈折率層からなる反射防止層を形成した反射型スクリーンが、どの程度の二重画像防止効果(鮮明度を良くする効果)を持っているか、を評価した結果である。
反射防止層として、モス・アイ構造を使用した実施例1~実施例5においては、全て二重像観察結果はAとなり、二重像は観察されなかった。
反射防止層として、低屈折率層を形成した実施例6~実施例10においては、実施例7と実施例8では二重像観察結果はBとなったが、観察された二重画像としては極めて幽かなレベルであった。それら以外においては、二重画像は観察されず、観察結果はAとなった。
反射防止層が無い比較例1~比較例5においては、二重像観察結果はBまたはCとなり、Aとなったものは無かった。また、Bと評価されたものも、反射防止層として低屈折率層を備えた場合の二重画像のレベルより明確に視認できるレベルであった。
以上の結果は、ガラス基板の厚さが0.3mm以上、25.0mm以下の範囲における結果であった。ガラス基板の厚さが30mmである比較例6~比較例8においては、二重像観察結果は全てAであった。この結果はガラス基板の厚さが25.0mmを超えた場合は、反射防止層の有無に関わらず、二重像は観察されないことを示している。一方、ガラス基板の厚さが0.3mm以上、25.0mm以下の範囲においては、調光フィルムが備えられた側とは反対側に反射防止層を備えることにより、二重像の発現が抑制され、鮮明な画像を得ることができることを示している。ガラス基板の厚さが0.3mmより薄い場合は、ガラス基板の機械的な強度が不十分となるため、使用する事が困難となる。
1・・・調光フィルム
2・・・透明導電基材
3・・・調光層
4・・・透明基板
5・・・観察者
6・・・投射装置
7・・・反射防止層
8・・・透明反射層
A、B、C・・・入射位置
10、20、30・・・反射型スクリーン

Claims (3)

  1. 透明基材上に透明導電膜を備えた一対の透明導電基材の透明導電膜を内側にして、液晶材料を含有する調光層を狭持した調光フィルムと、
    前記調光フィルムを支持する透明基板と、
    反射防止層と、をこの順に積層し、
    前記調光フィルム側の面が投影面であり、
    前記反射防止層は前記調光フィルムに対して前記投影面とは反対側のみに備わることを特徴とする反射型スクリーン。
  2. 前記透明基板の厚さが、0.3mm以上、25.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射型スクリーン。
  3. 請求項1または2に記載の反射型スクリーンと、投射装置を備え、
    前記投射装置は前記反射型スクリーンの前記調光フィルム側から投射することを特徴とする投影システム。
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