以下、本発明の一実施形態に係るトランスアクスル10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示すとおり、トランスアクスル10は、車両Vに設けられている。トランスアクスル10は、モータ2(駆動源)と接続されている。トランスアクスル10とモータ2とは、車両Vの駆動装置1を構成している。
駆動装置1は、減速機構42に設けられた入力側ギア46の回転軸である軸線L1や、出力側ギア52(ギア体50)の回転軸である軸線L2が、車両Vの前後方向に沿って配置された、いわゆる縦置きのレイアウトとされている。駆動装置1は、減速機構42を介してモータ2から出力された動力を駆動輪80に伝達させ、車両Vを駆動させることができる。
なお、以下の説明において、車両Vの前後方向を、単に「前後方向X」(又は軸線方向X)と記載して説明する場合がある。
また、車両Vの前後方向Xにおいて、前方を単に「前方Fr」と、後方を単に「後方Rr」と記載して説明する場合がある。さらに、車両Vの上下方向Hにおいて、上方を単に「上方Up」と、下方を単に「下方Lw」と記載して説明する場合がある。
モータ2は、車両走行用の動力を駆動輪80に向けて出力するモータ機能に加え、発電機能をも有する、いわゆるモータジェネレータとされている。モータ2は、インバータ(図示を省略)を介してバッテリ(図示を省略)から電力が供給されることにより、モータハウジング内においてステータ(図示を省略)に対してロータ(図示を省略)が回転する。
図1に示すとおり、トランスアクスル10は、トランスアクスルハウジング20、減速機構42、及び差動歯車機構58を備えている。図1に示すとおり、減速機構42及び差動歯車機構58は、トランスアクスルハウジング20に収容されている。また、トランスアクスル10は、内部空間21に複数のギア40(回転部材)が設けられている。
図1に示すとおり、減速機構42は、入力側ギア46(回転部材)、出力側ギア52及び中間ギア56が一体とされたギア体50を備えている。減速機構42のこれらの構成は、トランスアクスルハウジング20の内部に収容されている。
入力側ギア46(回転部材)は、軸線L1が車両Vの前後方向Xに沿うように配置されたギアである。入力側ギア46は、軸部44がモータ軸(図示を省略)に接続されており、モータ2から回転動力が伝達されて回転する。
ギア体50は、出力側ギア52と、中間ギア56とが、スプライン構造により連結された軸体である。図8に示すとおり、ギア体50には、軸線L2方向に貫通する連通孔54が形成されている。
出力側ギア52は、入力側ギア46とかみ合うように配置されている。出力側ギア52は、軸線L2が入力側ギア46の軸線L1に対してオフセットした位置に配置されている。
図6に示すとおり、ギア体50は、軸線方向Xの両側のうち、後方Rr側が後述する間座側空間部36に配置され、前方Fr側(中間ギア56)がデフ領域21b内に到達するように配置されている。また、ギア体50は、軸部51がトランスアクスルハウジング20内の油面Fよりも高い位置となるように配置されている。
連通孔54は、ギア体50の内部に形成された中空の貫通孔である。図6に示すとおり、ギア体50がトランスアクスル10内に配置された状態では、連通孔54は、後述する間座側空間部36とデフ領域21bとを連通させるように配置される。
また、図8に示すとおり、連通孔54は、軸線方向Xにおいて異なる径方向の大きさを備えている。より具体的に説明すると、間座側空間部36側(後方Rr側)の連通孔54は直径が大きい大径部54aとされており、デフ領域21b側(前方Fr側)の連通孔54は直径が小さい小径部54bとされている。そのため、連通孔54は、直径の大きい間座側空間部36側から直径の小さいデフ領域21b側に向けてオイルが流れやすい構造とされている。
トランスアクスル10では、連通孔54にオイルを溜める機能を持たせている。これにより、大径部54aなどにより多くのオイルを流入させ、トランスアクスルハウジング20内の油面を低下させることができる。
また、後で詳述するとおり、トランスアクスル10では、連通孔54を通じて間座側空間部36のオイルをデフ領域21bに戻すことができる。そのため、トランスアクスル10は、一次減速領域21aに配置されたギア40(入力側ギア46や出力側ギア52)のトルクの影響を回避してオイルをデフ領域21bに戻すことができる。その結果、より高いエネルギー効率(電費や燃費)の向上に寄与することができる。
入力側ギア46、及び出力側ギア52は、それぞれの軸線が車両Vの前後方向Xに沿うように設けられている。そのため、入力側ギア46や出力側ギア52が回転すると、トランスアクスルハウジング20内に収容されたオイルは、車両Vの幅方向W(トランスアクスル10の側方)に向けてかき上げられる。
中間ギア56は、出力側ギア52の軸部51に対して一体的に回転可能なように設けられている。中間ギア56は、差動歯車機構58のデフリングギア60と噛合している。そのため、減速機構42は、モータ2の出力を減速して差動歯車機構58に伝達することができる。
図1に示すとおり、差動歯車機構58は、デフリングギア60を備えている。差動歯車機構58は、一対の駆動車軸82を介して一対の駆動輪80に連結されている。差動歯車機構58は、デフリングギア60に伝達されたモータ2の動力を、一対の駆動輪80の各々に分配して伝達する。差動歯車機構58は、一対の駆動輪80の相互間に回転差が生じた場合には、その回転差を許容しつつ動力伝達を行う。
デフリングギア60は、トランスアクスルハウジング20の内部に収容されている。デフリングギア60は、出力側ギア52や入力側ギア46などの回転方向(幅方向W)に対して、回転方向が交差する方向(前後方向X)とされている。デフリングギア60が回転すると、トランスアクスルハウジング20の内部に収容されたオイルは、車両Vの後方Rr側に向けてかき上げられる。
トランスアクスルハウジング20は、減速機構42、及び差動歯車機構58を収容する中空の部材である。より具体的に説明すると、本実施形態のトランスアクスルハウジング20は、減速機構42を収容する一次減速部22と、差動歯車機構58を収容するデフ部24とが一体的に形成されている。トランスアクスルハウジング20内にはオイルが収容されている。
図1に示すとおり、トランスアクスルハウジング20の内部空間21には、入力側ギア46や出力側ギア52が収容される一次減速領域21a(一次減速部22の内側)と、デフリングギア60等が収容されるデフ領域21b(デフ部24の内側)とが形成されている。このように、トランスアクスル10は、デフリングギア60と入力側ギア46や出力側ギア52等の減速機構42とが同じ内部空間21に収容された構成とされている。
さらに詳細に説明すると、図6に示すとおり、トランスアクスルハウジング20には、内部空間21を一次減速領域21aとデフ領域21bとに区画する区画部23が設けられている。図7に示すとおり、区画部23には、複数の貫通孔が設けられている。より具体的には、一次減速領域21aとデフ領域21bとを連通させる貫通孔として、オイル連通孔23aと空気孔23bとが設けられている。また、区画部23には、ギア体50を挿通させるギア挿通孔23cが設けられている。
ギア体50は、ギア挿通孔23cに挿通されて、一次減速領域21aからデフ領域21bに到達するように配置されている。
図7に示すとおり、オイル連通孔23aは、区画部23の下方Lw寄りに設けられている。一次減速領域21aとデフ領域21bとの間は、オイル連通孔23aやギア挿通孔23cを介して、相互にオイルが行き来可能とされている。また、空気孔23bは、区画部23の上方Up寄りに設けられている。
ここで、オイル連通孔23aが大きいと、一次減速領域21aに送り出されたオイルがすぐにデフ領域21bに戻ってしまい、一次減速領域21a側のギア40(入力側ギア46や出力側ギア52など)によりかき上げられるオイルの量が少なくなることが想定される。そうすると、間座側空間部36やギア体50に設けられた連通孔54に流入するオイルの量が低下するおそれがある。そのため、オイル連通孔23aの径方向の大きさは、「デフリングギア60によりかき上げられるオイルの量(Ma)」が「一次減速領域21aからデフ領域21bにオイルが戻る量(Mb)」よりも大きくなるように(Ma>Mb)、調整されることが望ましい。これにより、間座側空間部36や連通孔54に流入するオイルの量が不足することを抑制することができる。なお、オイル(デフオイル)の粘度は高いため、一次減速領域21aからオイル連通孔23aを通じてデフ領域21bにオイルが戻る際には、緩やかに(ゆっくりと)オイルが流入する。
図1に示すとおり、トランスアクスルハウジング20には、トランスアクスル10とモータ2との連結のための座部(座面)をなす間座部26が設けられている。さらに、トランスアクスルハウジング20には、間座部26に取り付けられるギアハウジング30が設けられている。
図6に示すとおり、トランスアクスルハウジング20内には、オイルが収容されている。トランスアクスルハウジング20内に収容されたオイルは、デフリングギア60や入力側ギア46、出力側ギア52等の回転に伴って、これらのギア40の回転方向に向けてかき上げられる。
図1に示すとおり、トランスアクスルハウジング20の一次減速部22には、オイルキャッチ部28(オイル貯留部)が設けられている。
図2や図3に示すように、オイルキャッチ部28は、トランスアクスルハウジング20の側方の一部を区画するように設けられたポケット状の部分である。オイルキャッチ部28は、トランスアクスルハウジング20の内側に設けられている。また、オイルキャッチ部28は、トランスアクスル10の側方となる位置に設けられている。オイルキャッチ部28は、上方Up側が開口するように設けられており、トランスアクスルハウジング20の側方において、入力側ギア46や出力側ギア52の回転によりかき上げられたオイルを受け止めることができる。
図2や図3に示すとおり、オイルキャッチ部28は、トランスアクスルハウジング20の内側において、入力側ギア46や出力側ギア52の近傍であって、油面Fよりも上方Up側に設けられている。より詳細に説明すると、オイルキャッチ部28は、入力側ギア46や出力側ギア52等の一次減速部22に配置されているギア40(回転部材)に隣接するように設けられている。
別の観点からさらに説明すると、オイルキャッチ部28は、軸線が車両Vの前後方向Xに沿うように設けられたギア40(入力側ギア46や出力側ギア52)の周面の外側となる位置に設けられている。また、オイルキャッチ部28は、油面Fよりも高い位置となるように設けられている。
ここで、図3に示すとおり、入力側ギア46や出力側ギア52が回転すると、トランスアクスル10の内部空間21内のオイル(一次減速領域21aの底部に滞留するオイル)は、これらのギア40の回転方向に沿ってトランスアクスル10の側方(車両Vの幅方向W)に向けてかき上げられる。いわば、オイルキャッチ部28は、入力側ギア46や出力側ギア52等、一次減速領域21aに配置されたギア40の回転によりかき上げられたオイルを効率的に受け止めることができる。
また、トランスアクスル10は、オイルキャッチ部28をトランスアクスル10の側方となる位置に設けることにより、オイルキャッチ部28を上方Up側に設ける場合よりも高さを低くすることができる。
図2に示すとおり、オイルキャッチ部28の後方Rr側には、貫通孔とされたオイル孔29(第一オイル案内部)が設けられている。より詳細に説明すると、オイル孔29は、オイルキャッチ部28の下方Lw側(底部側)となるように形成されており、オイルキャッチ部28に受け止められたオイルを間座側空間部36に流下させるように形成されている。
間座部26は、モータ2に対してトランスアクスル10を接続する際の座面として機能する部分である。言い方を換えれば、トランスアクスル10は、間座部26を介在部材とするようにモータ2と接続されている。さらに付言すれば、間座部26は、トランスアクスル10において、最もモータ2に近い位置に設けられている。間座部26には、後述するギアハウジング30が取り付けられている。
ギアハウジング30は、入力側ギア46や出力側ギア52(ギア体50)を支持するために設けられている。図2に示すとおり、ギアハウジング30は、トランスアクスルハウジング20の間座部26に取り付けられている。
図4(a)に示すとおり、ギアハウジング30には、取付部31、二つのギア収容部32、及び凹部34が設けられている。ギアハウジング30には、出力側ギア収容部32aと、入力側ギア収容部32bとの、二つのギア収容部32が設けられている。
また、図5に示すとおり、ギアハウジング30の内部空間(主にギア収容部32の内部空間)は、中空とされており、区画された空間として間座側空間部36(貯留空間部)が形成されている。さらに、図5に示すとおり、ギアハウジング30には、間座側空間部36の内部と外部とを連通させてオイルを流入あるいは流出させる複数のオイル孔35(第一オイル案内部、第二オイル案内部)が設けられている。
出力側ギア収容部32aは、出力側ギア52の後方Rr側(モータ2側)の端部(軸部51の後方Rr側)を収容して支持している。また、入力側ギア収容部32bは、入力側ギア46の軸部44を挿通させて支持している。さらに、ギアハウジング30の各ギア収容部32の内側にはベアリング70が嵌め込まれており、ベアリング70を介して各ギア40(入力側ギア46や出力側ギア52)が回転可能に支持されている。
図4(a)に示すとおり、ギアハウジング30の上方Up側には、凹部34が形成されている。凹部34は、二つのギア収容部32の連結部分となる位置に設けられた窪みとして設けられている。別の言い方をすれば、凹部34は、ギア40を収容するよう略円筒状に形成された二つの略円筒状のハウジングの凹状の部分である。凹部34は、前後方向X(入力側ギア46や出力側ギア52の軸線方向)に沿って形成されている。また、図5に示すとおり、凹部34の底部34bは、後方Rr側(モータ2側)に向けて下り勾配となるように形成されている。
図4(a)に示すとおり、凹部34は、ギアハウジング30において、入力側ギア46や出力側ギア52の上方Up側に設けられている。また、凹部34は、デフリングギア60の後方Rr側となる位置に設けられている。そのため、凹部34には、入力側ギア46や出力側ギア52によりかき上げられたオイルや、デフリングギア60により後方Rr側に向けてかき上げられたオイルが受け止められる。
また、図4(a)に示すとおり、凹部34の前方Fr側には、仕切り34aが設けられている。凹部34には、ギア40にかき上げられたオイルが流入する。凹部34の底部には、貫通孔としてオイル孔35(流入側オイル孔35a、第二オイル案内部)が形成されている。流入側オイル孔35a(第二オイル案内部)は、凹部34から間座側空間部36に連通するように設けられている。さらに、凹部34の底部34bは、後方Rr側に向けて下り勾配となるように形成されている。そのため、凹部34に流入したオイルは、前方Fr側への流下が仕切り34aにより阻止されつつ、凹部34の底部34bの傾斜に導かれて後方Rr側に流下して流入側オイル孔35aに到達し、流入側オイル孔35aを通じて間座側空間部36に流入する。これにより、凹部34に受け止められたオイルを、効率的に間座側空間部36に導くことができる。なお、仕切り34aは、図4(b)に示すとおり、板状の形状としてもよいし、図4(c)に示すようにデフ領域21b側に向けて傾斜したスロープ状のものとしてもよい。仕切り34aをスロープ状のものとすれば、デフ領域21b側から仕切り34aの傾斜面をオイルが伝って、オイルが凹部34に流入しやすくなる。
さらに、図5に示すとおり、ギアハウジング30には、オイル孔35として、流出側オイル孔35b(流出側オイル案内部)や流出側オイル孔35cが形成されている。流出側オイル孔35b(流出側オイル案内部)は、ベアリング70の近傍に形成されている。そのため、間座側空間部36に流入したオイルは、流出側オイル孔35bを通じて、ベアリング70を潤滑し、少しずつ一次減速領域21aに流下する(オイルが一次減速領域21aに戻される)。また、流出側オイル孔35cは、流出側オイル孔35bから流出させるオイルの量を補完するように設けられている。
<トランスアクスル内のオイルの流れ>
続いて、トランスアクスルハウジング20内のオイルの流れについて、図6を参照しつつ説明する。
上述のとおり、車両Vは、いわゆる縦置きのレイアウトとされており、入力側ギア46等の減速機構42のギア40は、軸線が車両Vの前後方向Xに沿って配置されている。また、トランスアクスル10の内部空間21において、前方Fr側にデフリングギア60が配置されるとともに、後方Rr側に入力側ギア46等の減速機構42が配置されている。トランスアクスル10に収容されたオイルは、デフリングギア60の回転により後方Rr側(一次減速領域21a側)に搬送される。
また、一次減速領域21aに収容されている入力側ギア46や出力側ギア52が回転する際、デフリングギア60により一次減速領域21aに搬送されたオイルにより、一次減速領域21aの油量が多くなり、入力側ギア46や出力側ギア52が回転する際の油撹拌トルクによるトルク損失が大きくなるという、縦置きレイアウトの車両Vに特有の課題があった。
縦置きレイアウトで、かつデフリングギア60及び減速機構42を構成する一次減速側のギア40(入力側ギア46や出力側ギア52)が同じ内部空間21に配置されている車両Vでは、デフリングギア60の回転によりオイルが一次減速側に搬送されて、一次減速側の油面F(一次減速領域21aの油面F)が高くなるといった課題があった。また、入力側ギア46や出力側ギア52が回転してオイルを飛沫潤滑させる方向(トランスアクスル10の側方)と、オイルを飛沫潤滑させたい方向(例えばデフリングギア60側)とが異なるという課題があった。
このような縦置きレイアウトの車両Vの課題について、トランスアクスル10は、間座側空間部36やオイルキャッチ部28、凹部34、複数のオイル孔35等を設けることにより解決している。以下、具体的に説明する。
図5に示すとおり、デフリングギア60の回転に伴ってかき上げられたオイルは、トランスアクスル10内において、後方Rr側(モータ2側)に搬送され、凹部34に受け止められる。また、図5に示すとおり、凹部34に到達したオイルは、凹部34の底部34bの傾斜に沿って後方Rr側に流れ落ち、流入側オイル孔35aを介して間座側空間部36に到達し、一時的に貯留される。
また、図3に示すとおり、入力側ギア46や出力側ギア52が回転すると、トランスアクスル10内のオイルは、トランスアクスル10内のオイルキャッチ部28に受け止められる。オイルキャッチ部28に到達したオイルは、オイル孔29(第一オイル案内部)を通じて間座側空間部36に流入して一時的に貯留される。
このように、デフリングギア60や入力側ギア46等、ギア40の回転時(車両Vの駆動時)には、これらのギア40にかき上げられたオイルがオイルキャッチ部28や凹部34に受け止められて間座側空間部36に流入し、一時的に貯留される。これにより、一次減速領域21aに滞留するオイルを少なくして油面Fを低下させ、入力側ギア46等の油撹拌トルクを低減させることができる。
トランスアクスル10は、ギア40の回転時にはトランスアクスルハウジング20内の油量を低下させ、ギア40の回転抵抗を低減することができる。その結果、トランスアクスル10は、ギア40の油撹拌トルクによるトルク損失(無負荷損失トルク)を低減し、車両Vの電費や燃費などのエネルギー効率を向上させることができる。
また、図5に示すとおり、間座側空間部36に貯留されたオイルは、流出側オイル孔35b(流出側オイル案内部)を介して、少しずつ一次減速領域21aに向けて流入する。より具体的に説明すると、間座側空間部36に貯留されたオイルは、ベアリング70(図5及び図6では図示を省略)の近傍に形成された流出側オイル孔35bを介して再び一次減速領域21aに戻され、一次減速領域21aに流入する際にベアリング70を潤滑する。これにより、トランスアクスル10は、ギア40の停止時(車両Vの停止時)には、間座側空間部36に一時的に貯留されたオイルを内部空間21に流下させる。
さらに、図6に示すとおり、デフ領域21bと一次減速領域21aとを区画している区画部23には、オイル連通孔23aが設けられている。これにより、トランスアクスル10は、デフ領域21bと一次減速領域21aとの間でオイルを行き来させ、オイル量に極端な偏りが生じることを抑制することができる。
また、区画部23には、上述のとおり、空気孔23b(図6では図示を省略)が設けられている。これにより、より円滑にデフ領域21bと一次減速領域21aとの間でオイルを行き来させることができる。
さらに、上述のとおり、ギア体50には、連通孔54が設けられている。図6に示すとおり、トランスアクスル10は、間座側空間部36に貯留されたオイルを、一次減速領域21aのオイル溜まりを経由させずに連通孔54を通じて、デフ領域21bに戻すことができる。言い方を換えれば、トランスアクスル10は、ギア40等の回転トルクの影響を受けないシャフトの内部(ギア体50の内部)を通じて、オイルをデフ領域21bに戻すことができる。その結果、トランスアクスル10は、より高いエネルギー効率(電費や燃費)の向上を実現することができる。
また、上述のとおり、トランスアクスル10では、連通孔54がオイルキャッチの役割を果たしている。これにより、一次減速領域21aの油面Fをより効率良く下げることができる。なお、デフ領域21bの油面Fは、デフリングギア60のかき上げにより下がる。このように、トランスアクスル10では、間座側空間部36や連通孔54がオイルキャッチの役割を果たしているため、オイルキャッチ部をトランスアクスルハウジング20の上部に設けることを要さない。その結果、トランスアクスル10の高さを抑制することができる。
このように、トランスアクスル10は、ギア40によりかき上げられたオイルの循環経路としてオイル経路Rを形成することができる。そのため、トランスアクスル10は、オイルポンプなどを設けずとも、適切にベアリング70などを潤滑するオイル経路Rを形成してベアリング70等に適切にオイルを供給し、オイル供給不足に起因するベアリング70等の破損を抑制することができる。その結果、トランスアクスル10は、オイルポンプやオイルを貯留する別途の部品等を設けることを要さず、コストを抑制することができる。
さらに、図6に示すとおり、トランスアクスル10の間座側空間部36(ギアハウジング30)は、モータ2と隣接するように設けられている。そのため、トランスアクスル10は、間座側空間部36に貯留されたオイルをモータ2の熱により、短い時間で温めることができる。その結果、トランスアクスル10は、オイルの粘度を効率良く低下させて、好適にオイルをトランスアクスル10内で循環させることができるとともに、モータ2の冷却に寄与することができ、より効率的に電費や燃費などのエネルギー効率の向上を実現することができる。
このように、トランスアクスル10は、ギア40の油撹拌トルクによるトルク損失の低減を実現しつつ、かつコストを抑制して潤滑の必要な部分(ベアリング70など)に適切にオイルを供給するという、背反する課題を同時に解決している。
上述のとおり、トランスアクスル10は、ギア40(回転体)よりも上部の部屋に油が流れ込むことで、回転時、撹拌する油量を減らし、無負荷損失トルクを減らすことができる。また、トランスアクスル10は、ギア40の回転が止まると、自然と油が下へ落ち、油面が戻ることで、オイルポンプなどの部品を設けなくとも、ギア40、ベアリング70へ油が供給される。
以上、本発明の実施形態に係るトランスアクスル10について説明したが、本発明のトランスアクスルは上述の実施形態に限定されない。
例えば、上述の実施形態に係るトランスアクスル10では、オイルキャッチ部28及び凹部34の双方を設けた例を示したが、本発明のトランスアクスルはこれに限定されず、少なくとも一方が設けられたものであればよい。
また、オイル孔35の大きさや位置については、オイルの量や設けられる位置に応じて適宜選択可能である。なお、オイル孔35は、流入側オイル孔35aを、流出側オイル孔35bよりも大きい、あるいは多数設けられることが望ましい。
また、流出側オイル孔35bは、ベアリング70等、潤滑させたい部品よりも上方Up側に形成されることが望ましい。
さらに、上述の実施形態に係るトランスアクスル10では、凹部34をギアハウジング30に設けた例を示したが、本発明はこれに限定されない。本発明のトランスアクスルの凹部は、例えばトランスアクスルハウジングの内側に設けてもよい。また、本実施形態に係るトランスアクスル10では、トランスアクスルハウジング20とギアハウジング30とを別体とした例を示したが、ギアハウジングはトランスアクスルハウジングに一体的に形成されたものであってもよい。
また、上述の実施形態に係るトランスアクスル10では、間座側空間部36(貯留空間部)をギアハウジング30のギア収容部32の内側に形成した例を示したが、本発明のトランスアクスルは上述の実施形態に限定されない。例えば、本発明のトランスアクスルは、間座部などトランスアクスルハウジングに貯留空間部を直接形成したものであってもよい。なお、貯留空間部は、モータ(駆動源)に近い位置に設けられることが望ましい。
また、上述の実施形態に係るトランスアクスル10では、トランスアクスルハウジング20の内側にポケット状のオイルキャッチ部28を設けた例を示したが、本発明のトランスアクスルはこれに限定されない。具体的には、オイルキャッチ部は、ポケット状の部材を別体として設けてトランスアクスルハウジングの内部に取り付けられるものであってもよい。
さらに、上述の実施形態に係るトランスアクスル10は、電気自動車である車両Vに用いた例を示したが、本発明のトランスアクスルはこれに限定されない。すなわち、本発明のトランスアクスルは、エンジン車やハイブリッド車などに用いられるものであってもよい。