以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
(1)全体構成
以下、本実施形態に係る入力装置1及び入力システム100の全体構成について、図1~図7を参照しながら詳しく説明する。
入力システム100は、図2に示すように、入力装置1と、制御部9とを備えている。
入力システム100は、各種の電子機器に適用され得る。入力システム100は、操作体U1による操作の入力を受け付け、その操作体U1(図1参照)の操作状態を判定し、その判定結果を外部(例えば入力システム100が適用された電子機器内の回路モジュール)に出力可能なシステムである。ここで、操作体U1による操作の入力は、例えば、入力装置1の検知面S0に対する操作体U1による押圧、及び、検知面S0に対する操作体U1の近接及び接触によって行われる。
なお、以下の発明において、近接とは、検知面S0に非接触で近づくこと、接触とは、検知面S0を弾性変形させないように検知面S0に軽く接すること、押圧とは、検知面S0を弾性変形させるように押し込むことをそれぞれ意味する。
操作体U1は、一例として、人の指先(生体の一部)を想定するが、特に限定されない。操作体U1は、生体の一部及び当該一部を覆う物(例えば手袋)を含んでもよい。操作体U1は、生体が保持する物(例えばペン型の操作部材)を含んでもよい。入力装置1は、操作体U1から、直接押圧(又は接触)を受けるだけに限定されず、検知面S0の前方に配置される操作板(操作ハンドル)T1(図7A~図7D参照)を介して押圧(又は接触)を受けてもよい。
入力装置1は、操作体U1による操作の入力を受け付け、その受け付けた操作の入力に応じた電気信号を外部(例えば制御部9)に出力可能である。入力装置1は、電子機器の筐体に保持されてもよい。
制御部9は、入力装置1から出力された電気信号に基づいて、入力装置1に入力された操作の操作状態(すなわち操作体U1の操作状態)を判定し、その判定結果を外部(例えば電子機器内の回路モジュール)に出力可能である。制御部9は、電子機器の筐体内に収容されてもよい。
(2)入力装置
入力装置1は、図3に示すように、感圧部2と、1つ又は複数の検知部5と、ハウジング10と、押し子13とを備えている。ここでは、検知部5の数は、一例として、2つである。
(2.1)ハウジング
入力装置1のハウジング10は、図1及び図3に示すように、感圧部2、2つの検知部5及び押し子13を収容する外郭である。ハウジング10は、カバー11と、ボディ12とを備えている。ボディ12は、例えば扁平な四角形(例えば方形)の箱状である。ボディ12は、厚み方向の第1面(図3の上面)120に開口を有している。カバー11は、例えば四角形(例えば方形)のフィルム状である。カバー11は、ボディ12の第1面120の開口を覆うようにして、ボディ12の第1面120に取り付けられる。
カバー11及びボディ12は、電気絶縁性を有している。カバー11及びボディ12は、例えば、電気絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。特に、カバー11は、可撓性を有している。これにより、操作体U1(図1参照)が、ハウジング10内に収容された感圧部2を、カバー11を介して押圧することが可能である。
カバー11における、感圧部2及び2つの検知部5とは反対側の面(図3では上面)が、入力装置1の検知面S0となる。以下では、入力装置1の検知面S0のうち、感圧部2に対応する領域を、第1検知面S1と呼び、2つの検知部5に対応する2つの領域を、第2検知面S2と呼ぶこともある(図3参照)。図3では、第1検知面S1及び第2検知面S2は、仮想的に一点鎖線で図示している。
検知面S0は、例えば略矩形状の面である。検知面S0は、感圧部2から離れる方向に僅かに凸となるように形成されている。第1検知面S1は、例えば略正方形状の領域である。第1検知面S1は、検知面S0において長手方向の中央に位置する。第1検知面S1は、その中央部において、円形状に平坦な領域を有しており、押し子13は、カバー11の裏面における当該中央部に対応する領域で、安定的に位置決めされる。2つの第2検知面S2はそれぞれ、例えば略矩形状の領域である。2つの第2検知面S2は、検知面S0の長手方向において、第1検知面S1の両横に位置する。
ボディ12は、その第1面120に、第1収容凹部121及び2つの第2収容凹部122を有している。第1収容凹部121は、感圧部2と、2つの検知部5の各々の一部とを収容する。2つの第2収容凹部122は、2つの検知部5の各々の残部をそれぞれ一対一で収容する。
第1収容凹部121及び2つの第2収容凹部122は、ハウジング10の長手方向に沿って、第2収容凹部122、第1収容凹部121及び第2収容凹部122の順で、並んでいる。言い換えると、各検知部5は、ハウジング10内で、感圧部2の正面(すなわち後述の押圧面30の正面)から見たときに、感圧部2と並んで配置されている。さらに言い換えると、2つの検知部5は、感圧部2の正面から見たときに、感圧部2を間に挟むように感圧部2の両横に並んで配置されている。
第1収容凹部121及び2つの第2収容凹部122は、ハウジング10の長手方向において、互いに連結している。2つの第2収容凹部122は、互いに同じ深さである。第1収容凹部121は、2つの第2収容凹部122よりも深い。第1収容凹部121と第2収容凹部122との深さの違いは、後述する固定電極50の静電電極部51と対向電極部52との間の段差に対応している。
ボディ12は、3つの開口部12kを有する。3つの開口部12kは、ボディ12の側面12aに設けられている。側面12aは、ボディ12の長手方向に平行な一対の側面12aのうちの一方の側面である。各開口部12kは、側面12aの上辺(第1面120側の辺)で、ボディ12の第1面120で開放されている。3つの開口部12kはそれぞれ、感圧部2の端子721及び2つの検知部5の各々の端子54を一対一でボディ12の内部から外部に引き出すための開口部である。
(2.2)感圧部
感圧部2は、図1及び図3に示すように、入力装置1の検知面S0(より詳細には第1検知面S1)に対する操作体U1の押圧を感知する。感圧部2は、図3に示すように、クリック部3及び圧力センサ4を有している。
圧力センサ4は、静電容量式のセンサである。圧力センサ4は、第1電極6(可動電極)及び固定電極50(第1固定電極)の後述の対向電極52の間における静電容量の変化を含むアナログの電気信号を出力するように構成されている。固定電極50は、ボディ12に固定されている。圧力センサ4は、クリック部3の押圧面30とは反対側(図3ではクリック部3の下側)に配置される。具体的には、圧力センサ4は、第1電極6、弾性体14、絶縁シート15、対向電極52及び第2電極7を有している。本実施形態では、第2電極7は、圧力センサ4の構成に含まれるが、圧力センサ4の構成に含まれなくてもよい。第1電極6、弾性体14、絶縁シート15、及び対向電極52は、この順で、クリック部3から離れる方向に並んでいる。第2電極7は、クリック部3から離れる方向において、対向電極52と同じ位の位置に配置されている。すなわち、第1電極6が、圧力センサ4の構成要素の中で、クリック部3に最も近い位置にある。
第1電極6は、入力装置1の検知面S0に対する操作体U1による押圧によって、対向電極52(すなわち第2電極7)に対して相対的に可動方向D1(変位方向)に可動可能(変位可能)する可動電極である。本実施形態では、第1電極6は、第1電極6の厚さ方向(すなわちハウジング10の厚さ方向)に可動可能である。すなわち、可動方向D1は、第1電極6の厚さ方向である。なお、第1電極6は、上記の押圧によって、弾性体14の弾性力に抗して可動方向D1の対向電極52側(すなわち第2電極7側)に可動し、上記の押圧が解除されると、弾性体14の弾性力によって可動方向D1のクリック部3側に可動して元の位置に戻る。
第1電極6は、導電性を有する部材(例えば金属の板材)によって矩形の板状に形成されている。第1電極6は、その中央部において厚み方向に貫通する孔部61を有している。孔部61は、第1電極6の正面から見て、略円形の開口形状を有している。
第2電極7は、導電性を有する部材(例えば金属の板材)によって、全体として略矩形の平板状に形成されている。第2電極7は、第1電極6の可動方向D1において、弾性体14及び絶縁シート15を介して第1電極6と対向する。第2電極7は、ハウジング10の幅方向(長手方向及び厚み方向と直交する方向)に沿って延びている。ハウジング10の幅方向は、感圧部2及び検知部5の並び方向と、ハウジング10の厚み方向とに直交する。
第2電極7は、図4に示すように、本体部723と、段差部724と、舌部722と、端子721とを有する。
本体部723は、略矩形の平板状である。
舌部722は、舌片板状である。舌部722は、本体部723の一辺に、段差部724を介して設けられている。第1電極6の厚み方向において、舌部722の位置は、本体部723の位置と異なる。具体的には、舌部722は、本体部723の一辺から僅かにクリック部3に近づく方向にずれた位置に配置され、本体部723の表面と平行となるように延びている。舌部722は、その表面が概ね第1電極6の孔部61内に位置するように、配置される(図3参照)。舌部722は、クリック部3のドーム体31の頂部311(図3参照)が絶縁シート15を介して接触する部位である。
端子721は、本体部723の幅(ハウジング10の長手方向の幅)よりも細い幅の細長板状である。端子721は、本体部723における上記一辺(段差部724が設けられた辺)とは反対側の他辺に設けられており、上記の他辺の側に突出されている。端子721は、ボディ12の3つの開口部12kのうちの真ん中の開口部12kを通って、ハウジング10の内部から外部に突き出されている(図1参照)。
舌部722、段差部724、本体部723及び端子721は、この順で、ハウジング10の幅方向(ハウジング10の長手方向及ぶ厚さ方向に直交する方向)に沿って並んでいる。本体部723、舌部722及び段差部724は、ボディ12の第1収容凹部121内に収容される。本体部723は、第1収容凹部121内に収容された状態で、樹脂でモールドされて埋め込まれている。本体部723は、第1収容凹部121に収容された状態で、固定電極50の後述の対向電極部52よりも低い位置(すなわち第1収容凹部121の底面側の位置)に配置される。これにより、本体部723は、樹脂モールドされ易くなっている。また、舌部722は、第1収容凹部121に収容された状態で、固定電極50の後述の対向電極部52よりも高い位置に配置されている。
第2電極7は、ボディ12の第1収容凹部121内に配置されており、概ねその表面(図3では上面)のみが、第1収容凹部121の底面から露出する。
弾性体14は、図3に示すように、例えば矩形のシート状である。弾性体14は、導電性を有している。弾性体14は、例えば、導電性を有したゴムシートである。弾性体14は、その中央部において、厚み方向に貫通する孔部140を有している。孔部140は、弾性体14の正面から見て、略円形の開口形状を有している。弾性体14の外形は、第1電極6の外形と概ね等しい。弾性体14の厚みは、第1電極6の厚みと概ね等しい。孔部140の径寸法は、第1電極6の孔部61の径寸法と略同じである。弾性体14の第1面141(図3では上面)は、第1電極6の裏面(図3では下面)と、概ね面接触するように配置されている。
絶縁シート15は、図3に示すように、例えば矩形のシート状の絶縁体(誘電体)である。絶縁シート15の外形は、第1電極6の外形と概ね等しい。本実施形態では、絶縁シート15の厚みは、第1電極6の厚みよりも薄い。絶縁シート15は、第1収容凹部121の底面から露出する電極(舌部722)の表面、及び固定電極50の後述の対向電極部52の表面を、概ね覆うように配置されている。
また、絶縁シート15は、中央部15aとそれ以外の部分(本体部15b)とに分離されている。中央部15aは、第2電極7の舌部722に重なる部分であり、例えば円形状である。中央部15aが本体部15bと分離されていることで、中央部15aは舌部722の上面形状に沿って配置し易くなる。なお、本実施形態では、絶縁シート15は、中央部15aを有するが、中央部15aは無くてもよい。
クリック部3は、図3に示すように、押圧面30(図3では上面)を有し、押圧面30へ押圧を与える操作体U1にクリック感を作用させるように構成されている。クリック部3は、弾性変形部である。具体的には、クリック部3は、ドーム形の板状に形成され、かつ押圧面30を表面とするドーム体31を有している。ドーム体31は、弾性を有する材料(例えば金属板)により形成されている。ドーム体31は、いわゆるメタルドームである。
クリック部3の押圧面30は、凸面である。操作体U1による押圧P1が押圧面30に与えられると、図6Bに示すように、クリック部3が弾性変形をし、これによって、クリック感が発生する。より詳細には、この弾性変形によって、ドーム体31の中央部が反転して凸状態から凹状態となる(座屈)。このように、クリック部3は、押圧面30に押圧が与えられると、押圧面30が凹むように弾性変形してクリック感を操作体U1に作用させる。
ドーム体31は、図3に示すように、周縁部310と、頂部311とを有している。ドーム体31は、圧力センサ4の第1電極6の上に配置されている。
ドーム体31は、操作体U1からの押圧に応じて、周縁部310により、第1電極6を第2電極7側に押し込む。言い換えると、第1電極6は、ドーム体31を介して上記押圧を受けて、弾性体14及び絶縁シート15を押し込みながら、第2電極7に近づく方向に可動可能な可動電極である。また、頂部311は、操作体U1からの押圧に応じてドーム体31が座屈した時に、第1電極6の孔部61を通り、第2電極7の舌部722に近づいて、絶縁シート15における舌部722上の部分に接触する。すなわち、頂部311は、絶縁シート15を介して舌部722を押圧する。
押し子13は、クリック部3の弾性変形を起こしやすくするための部材である。押し子13は、図3に示すように、円盤状である。また、押し子13の外形形状は、クリック部3の外形形状よりも小さい。押し子13は、ドーム体31の頂部311とカバー11との間に配置されている(図5参照)。押し子13は、カバー11又はクリック部3に固定されている。押し子13は、カバー11に固定されると望ましい。押し子13は、電気絶縁性を有している。
図6Aは、ドーム体31の中央部が座屈する前の状態における、模式的な回路構成を示している。図6Bは、ドーム体31の中央部が座屈した後の状態における、模式的な回路構成を示している。図6Aの状態から、操作体U1がカバー11の第1検知面S1に接触してクリック部3が図6Bの矢印P1方向に押し込まれると、図6Bに示すようになる。すなわち、ドーム体31の中央部が、座屈して絶縁シート15の中央部15aを介して第2電極7の舌部722に接触する。以下、接点の「ON時」と呼ぶこともある。これにより、ドーム体31と舌部722とによってコンデンサC3が構成され得る。なお、この場合、第2電極7の本体部723は、樹脂モールドされているため、ドーム体31との間でコンデンサを構成し得ない。また、ドーム体31と各固定電極50の対向電極部52との間でそれぞれ、コンデンサC2が構成され得る。感圧部2が作動するときは、2つの検知部5の端子54はそれぞれ接地(接地点)される。このため、コンデンサC3に蓄積された静電電荷は、ドーム体31、コンデンサC2及び端子54を介して接地点へと放電される。このように、接点のON時では、コンデンサC3の静電容量が変化する。そして、コンデンサC3の静電容量の変化を含むアナログの電気信号が、端子721を介して入力装置1の外部に出力され得る。なお、図6BにおいてコンデンサC3の一方の電極に接続されるダイオードは、コンデンサ3に蓄積された静電電荷がコンデンサC4を介して上記の接地点側へのみ流れることを視覚的に図示したものであり、実際に存在するものではない。
(2.3)検知部
各検知部5は、入力装置1の検知面S0(より詳細には第2検知面S2)に対する操作体U1の近接及び接触を検知する(図1)。2つの検知部5は、静電容量式のセンサである。各検知部5は、図3に示すように、押圧面30の正面から見たときに、感圧部2の両横に配置されている。すなわち、2つの検知部5は、第1電極6の可動方向D1に交差(例えば直交)する方向において、感圧部2の両横に配置されている。本実施形態では、第1電極6の可動方向D1に交差する方向とは、例えば、ハウジング10の長手方向である。2つの検知部5と感圧部2は、隣接して配置されている。ここでは、2つの検知部5は、互いに鏡像対象となる構造を有しているが、互いに鏡像対象となる構造を有しなくてもよい。
各検知部5はそれぞれ、図4に示すように、固定電極50(第1固定電極)を有する。すなわち、各検知部5は、単一の固定電極50を有し、固定電極50と操作体U1との間における静電容量の変化を検知する、自己容量式のセンサである。固定電極50は、ハウジング10に固定されている。
固定電極50は、図4に示すように、静電電極部51と、対向電極部52と、接続部53と、端子54とを有する。
静電電極部51は、導電性の部材によって矩形の平板状に形成されている。静電電極部51は、第1電極6の可動方向D1に交差(例えば直交)する方向において第1電極6の隣側に配置されている(図5参照)。本実施形態では、第1電極6の可動方向D1に交差(例えば直交)する方向とは、例えば、ハウジング10の長手方向である。
対向電極部52は、静電電極部51と電気的に接続されると共に、第1電極6の可動方向D1において第1電極6と対向する。対向電極部52は、略L字形の平板状に形成されている。なお、対向電極部52の形状は、略L字形に限定されない。対向電極部52は、半U字状の切欠部52aを有する。半U字状とは、U字の左右両側のうちの片側半分の形状である。切欠部52aは、対向電極部52において、ハウジング10の幅方向(ハウジング10の長手方向と厚さ方向に直交する方向)に沿った一辺52sとは反対側の辺52tに設けられている。対向電極部52の一辺52sは、接続部53を介して静電電極部51の一辺51sに接続されている。静電電極部51の一辺51sは、静電電極部51におけるハウジング10の幅方向に沿った2つの辺51s,51tのうち、第2電極7側の辺である。
第1電極6の厚み方向において、対向電極部52の位置は、静電電極部51の位置と異なる。具体的には、対向電極部52は、静電電極部51の一辺51sからクリック部3から遠ざかる方向にずれた位置に配置され、静電電極部51の表面と平行となるように延びている。すなわち、静電電極部51は、第1電極6(可動電極)の可動方向D1において、対向電極部52よりも第1電極6に近い位置に配置されている。すなわち、静電電極部51と対向電極部2との間には、接続部53による段差が設けられている。これにより、静電電極部51は、第1電極6(可動電極)の可動方向D1において、ドーム体31の頂部311と略同じ高さに配置される(図5)。この結果、静電電極部51を、検知面S0に接近又は接触する操作体U1に、より近い位置に配置でき、検知部5のセンサ感動を向上できる。
対向電極部52は、ボディ12の第1収容凹部121の底面と第1電極6との間に配置されている(図5参照)。すなわち、対向電極部52は、第1電極6の可動方向D1において、(弾性体14及び絶縁シート15を介して)第1電極6と対向している。2つの検知部5のうち、一方の検知部5の対向電極部52は、弾性体14及び絶縁シート15を介して、第1電極6の一方の片側半分と対向し、他方の検知部5の対向電極部52は、弾性体14及び絶縁シート15を介して、第1電極6の他方の片側半分と対向している。
対向電極部52は、対向する第1電極6と容量結合している。このように、第1電極6と対向電極部52とが容量結合することで、入力装置1の平面サイズを広げることなく、固定電極50の容量を実質的に増大できる。この結果、検知部5の端子54から出力される電気信号を増幅でき、検知部5のセンサ感度を向上できる。
接続部53は、図4に示すように、導電性の部材によって形成されている。接続部53は、静電電極部51の一辺51sと対向電極部52の一辺52sとを接続する。接続部53は、第1電極6の可動方向D1に沿って延びている。すなわち、接続部53は、例えば、静電電極部51の表面及び対向電極部52の表面と直交している。
接続部53は、接続部53と第1電極6との間の容量結合を小さくするための構造を有する。具体的には、接続部53は、上記の構造として開口部53kを有する。開口部53kは、接続部53の高さ(ハウジング10の厚さ方向の高さ)と略同じ高さを有し、接続部53の横幅(ハウジング10の幅方向の幅)よりも少し小さい横幅を有する。
端子54は、対向電極部52の幅(ハウジング10の長手方向の幅)よりも細い幅の細長板状である。端子54は、対向電極部52の長手方向の一端部から突出している。具体的には、端子54は、対向電極部52の一辺52uに設けられており、一辺52uの側に突出されている。一辺52uは、第2電極7において端子721が設けられた辺と同じ側の辺である。
各検知部5の静電電極部51は、ボディ12における対応する第2収容凹部122に収容されている(図5参照)。静電電極部51は、第2収容凹部122の底面に配置されている。静電電極部51は、概ねその表面(図5では上面)のみが、ボディ12の第1面120から露出している。静電電極部51の表面は、ボディ12の第1面120と概ね面一である。各検知部5の対向電極部52及び接続部53は、ボディ12における第1収容凹部121に収容されている。対向電極部52は、第1収容凹部121の底面に配置されており、概ねその表面(図5では上面)のみが、第1収容凹部121の底面から露出している。接続部53は、第1収容凹部121の側面に配置されており、概ねその表面(図5では側面)のみが、第1収容凹部121の側面から露出している。各検知部5の端子54は、ボディ12における対応する開口部12kを通って、第1収容凹部121の内部から外部に突き出されている(図1参照)。
各検知部5の各々の切欠部52aは、第1収容凹部121の底面において、ハウジング10の長手方向に沿って隣り合っている(図5参照)。各検知部5の切欠部52aは、図4に示すように、略U字の切欠部52bを構成している。第2電極7の本体部723及び舌部722は、切欠部52bの内部に配置されている。第2電極7の本体部723の表面は、各検知部5の対向電極部52の表面と概ね面一であり、第2電極7の舌部722は、各検知部5の対向電極部52の表面からクリック部3側にずれた位置に配置されている。
カバー11の各第2検知面S2は、対応する固定電極50の静電電極部51の表面と概ね同形であり、カバー11の正面から見て、静電電極部51の表面と重なる領域である。図5に示すように(図5では操作体U1は不図示)、操作体U1がカバー11の第2検知面S2に接触することで、操作体U1と固定電極50の静電電極部51とによってコンデンサC4が構成されると共に、操作体U1と可動電極(第1電極)6とによってコンデンサC5が構成される。なお、可動電極6はドーム体31と電気的に接触しているため、コンデンサC5は、操作体U1とドーム体31との間のコンデンサであるとも言える。また、固定電極50の対向電極52と可動電極6との間には、コンデンサC6が構成されている。したがって、本実施形態では、操作体U1が第2検知面S2に接触すると、操作体U1と固定電極50との間には、コンデンサC4~C6を合成した合成コンデンサC7が構成される。この合成コンデンサC7は、コンデンサC4に対して、互いに直列接続されたコンデンサC5,C6が並列接続されるため、コンデンサC4だけの場合と比べて静電容量が増加する。この合成コンデンサC7に蓄電された静電電荷は、操作体U1を介して放電される。そして、この合成コンデンサC7の静電容量の変化(すなわち第2検知面S2に操作体U1が接触したか否かを示す情報)を含むアナログの電気信号(第2信号)が、端子541を介して出力され得る。合成コンデンサC7の静電容量は、コンデンサC4だけの場合の静電容量と比べて増加するため、合成コンデンサC7の静電容量の変化は、コンデンサC4だけの場合の静電容量と比べて増幅される。この結果、コンデンサC4だけの場合と比べて、より精度よく、上記の電気信号(第2信号)から、第2検知面S2に操作体が接触したか否かを検出できる。
図5では、コンデンサC4の一方の電極は、不図示の操作体U1を介して接地されている。図5では、コンデンサC4,C5に接続された接地点が操作体U1を表す。また、図5では、コンデンサC4,C6の一方の電極に接続されるダイオードは、合成コンデンサC7に蓄積された静電電荷が上記の接地点側へのみ流れることを視覚的に図示したものであり、実際に存在するものではない。
この検知部5によれば、対向電極部52によって、第1電極6の可動方向D1から見た(すなわち感圧部4の正面から見た)入力装置1の平面サイズを広げることなく、固定電極50の電極面積を増大できる。この結果、入力装置1の平面サイズを広げることなく、固定電極50による静電センサの感度(すなわち検知部5のセンサ感度)を向上できる。
また、対向電極部52が第1電極6と容量結合することで、第1電極6の電極分、固定電極50の大きさを実質的に大きくできて、固定電極50の容量を実質的に増大できる。この結果、入力装置1の平面サイズを広げることなく、固定電極50による静電センサの感度を更に向上できる。
また、静電電極部51及び対向電極部52に直交する接続部53によって、入力装置1の平面サイズを広げることなく、固定電極50の電極面積を増大できる。この結果、入力装置1の平面サイズを広げることなく、固定電極50による静電センサの感度を更に向上できる。
(2.4)制御部
制御部9は、入力装置1と電気的に接続されている。制御部9は、図2に示すように、第1取得部91、第2取得部92、及び判定部93等を備えている。言い換えると、制御部9は、第1取得部91としての機能、第2取得部92としての機能、及び判定部93としての機能等を備えている。
第1取得部91は、感圧部2の圧力センサ4から出力される電気信号(第1信号)を取得するように構成されている。第2取得部92は、2つの検知部5から出力される電気信号(第2信号)を、それぞれ個別に取得するように構成されている。判定部93は、入力装置1から取得する第1信号及び第2信号に基づいて、検知面S0に対する操作体U1の近接、接近又は押圧を検出し、その検出結果に基づいて、検知面S0に入力された操作体U1の操作状態を判定するように構成されている。
判定部93は、感圧部2及び2つの検知部5の静電容量の変化に関する検出結果の組み合わせから、操作体U1の様々な操作状態(操作入力)を判定する。上記の検出結果は、例えば、感圧部2へのタッチ、プッシュ、及びクリック、並びに、各検知部5へのタッチを含み得る。感圧部2へのプッシュは、タッチよりも荷重が大きく(静電容量の変化が大きく)、かつ、接点がONに達していないクリック未満を意味する。ここで、上記の操作状態は、感圧部2に対する操作体U1の移動に関する方向性を含む。また、上記の操作状態は、第1操作過程、及び第2操作過程のうち、少なくとも一方の過程に関する状態を含む。第1操作過程は、操作体U1が押圧面30に近づき押圧面30に押圧(タッチ、プッシュ、又はクリック)が与えられるまでの操作過程である。第2操作過程は、押圧面30に押圧が与えられた後に操作体U1が押圧面30から離れるまでの操作過程である。
具体的には、操作状態は、以下の7つの操作状態を含む。なお、以下の説明では、操作板T1を用いる場合があるが、操作板T1を用いなくてもよい。
第1操作状態は、図7Aに示すように、操作体U1が、操作板T1を介して、2つの検知部5にほぼ同時にタッチし、かつ感圧部2をクリックする、一連の操作状態である。なお、操作板T1の裏面には突起T10があり、突起T10により第1検知面S1に押圧が与えられる。
第2操作状態は、図7Bに示すように、操作体U1が、操作板T1を介して、左側の検知部5に先にタッチしてから感圧部2をクリックし、さらに操作体U1が弧を描くように右側に移動して右側の検知部5にタッチする、一連の操作状態である。なお、操作体U1が弧を描くように移動することに伴って、操作板T1も、突起T10を支点として弧を描くように僅かに回転する。
第3操作状態は、第2操作状態とは逆に、操作体U1が、操作板T1を介して、右側の検知部5から左側の検知部5に弧を描くようにタッチする、一連の操作状態である。第4操作状態は、図7Cに示すように、操作体U1が、操作板T1を介して、左側の検知部5から、感圧部2、及び右側の検知部5へ、略スライド移動する、一連の操作状態である。要するに、操作体U1が、感圧部2に対してクリック操作を行わずに、タッチ(又はプッシュ)移動するのみの操作状態である。第5操作状態は、第4操作状態とは逆に、操作体U1が、操作板T1を介して、右側の検知部5から左側の検知部5に略スライド移動する、一連の操作状態である。
要するに、判定部93は、感圧部2に対する操作の種別(タッチ、プッシュ、クリック)の判定だけでなく、感圧部2に対してどの方向(図示例では右、左、上)から操作を受けて、どの方向に離れていったか、方向性(操作の順番)の判定も行う。
第6操作状態は、図7Dに示すように、操作体U1が、左側の検知部5の頭上から斜めに感圧部2へ向かい、操作板T1を介して感圧部2をクリックし、さらに右側の検知部5の頭上に向かう、一連の操作状態(ホバー操作)である。要するに、操作体U1が、略V字状を描く、操作状態である。第7操作状態は、第6操作状態とは逆に、操作体U1が右側の検知部5の頭上から感圧部2へ向かい、操作板T1を介して感圧部2をクリックし、左側の検知部5の頭上に向かう、一連の操作状態である。
要するに、第6及び第7操作状態では、判定部93は、左右どちらの検知部5がタッチされたかではなく、どちらの検知部5の側から近づき、又はどちらの検知部5の側へ遠ざかるかを判定する。
第8操作状態は、操作体U1が、左側に傾斜した状態で、左側の検知部5と感圧部2とに位置する、という操作状態である。第9操作状態は、第8操作状態とは逆に、操作体U1が、右側に傾斜した状態で、右側の検知部5と感圧部2とに位置する、という操作状態である。要するに、第8及び第9操作状態に関して、判定部93は、操作体U1が、左右どちらの検知部5に偏った状態で感圧部2に押圧を与えたかを判定する。
なお、操作面S0に対する操作体U1の近接、接触及び押圧も、操作状態の一種である。
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
基本例において、弾性体14(導電弾性体)の代わりに、電気絶縁性を有する絶縁弾性体が設けられてもよい。この場合、絶縁弾性体は、例えば、誘電性エラストマのように、比較的高い誘電率を有することが好ましい。導電弾性体に代えて絶縁弾性体を設ける場合、絶縁シート15は省略可能である。
基本例では、弾性体14と第2電極7との間に絶縁シート15が配置されている。この場合、第2電極7に対する絶縁シート15の積層工程(ラミネーション)が容易となる。しかし、この限りではなく、例えば、弾性体14と絶縁シート15とが入れ替わって、絶縁シート15と第2電極7との間に、弾性体14が配置されてもよい。この場合、第2電極7に対する弾性体14の成形が容易となる。
基本例では、絶縁シート15は、ボディ12とは別体で、シート状の1つの部材であり、弾性体14と第2電極7という他の2部材の間に配置される。しかし、絶縁シート15は、ボディ12と一体となって形成されてもよい。具体的には、弾性体14と対向するボディ12の上壁が、第2電極7の表面を覆い尽くすように成形された薄膜状の壁であり、その薄膜状の壁が、絶縁シートに相当してもよい。
基本例では、検知部5の数は、2つであり、2つの検知部5が、感圧部2の左右の両側に配置されている。しかし、検知部5の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
基本例では、入力装置1上に操作板T1が配置され、入力装置1に対する操作入力は、操作板T1越しに行われる。しかし、操作板T1は、配置されてなくてもよく、入力装置1に対する操作入力は、カバー11に直接的に行われてもよい。
基本例では、固定電極50の接続部53と第1電極6とを電気的に絶縁する絶縁構造について特に説明されないが、入力装置1は、そのような絶縁構造を更に備えてもよい。絶縁構造として、例えば、接続部53をボディ12内にインサート成形で埋め込んでもよいし、接続部53の表面に絶縁フィルムを設けてもよいし、接続部53の表面に樹脂製のリブを配置させて、接続部53と第1電極6との間隔を確保してもよい。
(4)まとめ
第1の態様の入力装置(1)は、感圧部(4)と、検知部(5)とを備える。感圧部(4)は、検知面(S0)に対する操作体(U1)による押圧を感知する。検知部(5)は、検知面(S0)に対する操作体(U1)の近接又は接触を検知する。検知部(5)は、操作体(U1)との間の静電容量の変化を含む電気信号を出力する固定電極(50)を有する。感圧部(4)は、操作体(U1)による押圧によって固定電極(50)に対して相対的に変位可能な可動電極(6)を有する。固定電極(50)は、静電電極部(51)と、対向電極部(52)と、を有する。静電電極部(51)は、可動電極(6)の変位方向(D1)に交差する方向において可動電極(6)の横側に配置される。対向電極部(52)は、静電電極部(51)と電気的に接続されると共に可動方向(D1)において可動電極(6)と対向する。
この構成によれば、対向電極部(52)によって、可動電極(6)の可動方向(D1)から見た入力装置(1)の平面サイズを広げることなく、固定電極(50)の電極面積を増大できる。この結果、入力装置(1)の平面サイズを広げることなく、固定電極(50)による静電センサの感度(すなわち検知部(5)のセンサ感度)を向上できる。
第2の態様の入力装置(1)では、第1の態様において、可動電極(6)と対向電極部(52)とは、互いに容量結合している。
この構成によれば、対向電極部(52)が第1電極(6)と容量結合することで、第1電極(6)の分、固定電極(50)の大きさを実質的に大きくできて、固定電極(50)の容量を実質的に増大できる。この結果、入力装置(1)の平面サイズを広げることなく、固定電極(50)による静電センサの感度を更に向上できる。
第3の態様の入力装置(1)では、第1又は2の態様において、静電電極部(51)は、可動方向(D1)において、対向電極部(52)よりも可動電極(6)に近い位置に配置されている。
この構成によれば、静電電極部(51)を、操作体(U1)に、より近い位置に配置できる。この結果、固定電極(50)による静電センサの感動を向上できる。
第4の態様の入力装置(1)では、第1~3の態様の何れか1つの態様において、固定電極(50)は、静電電極部(51)と対向電極部(52)とを電気的に接続する接続部(53)を更に有する。
この構成によれば、接続部(53)によって、可動電極(6)の可動方向(D1)から見た入力装置(1)の平面サイズを広げることなく、固定電極(50)の電極面積を増大できる。
第5の態様の入力装置(1)では、第4の態様において、接続部(53)は、接続部(53)と可動電極(6)との間の結合容量を小さくするための構造(開口部53k)を有する。
この構成によれば、上記の構造によって、接続部(53)と可動電極(6)との間に結合容量が形成されることを抑制できる。この結果、感圧部(4)のセンサ感度が低下することを抑制できる。
第6の態様の入力装置(1)は、第4又は第5の態様において、接続部(53)と可動電極(6)とを電気的に絶縁する絶縁構造を更に備える。
この構成によれば、接続部(53)と可動電極(6)とが電気的に接続することを抑制できる。この結果、感圧部(4)のセンサ感度が低下することを抑制できる。
第7の態様の入力装置(1)は、検知部(5)を2つ備え、感圧部(4)を1つ備える。固定電極(50)を第1固定電極(50)とする。入力システム(100)は、第2固定電極(7)と、2つの第1端子(54)と、1つの第2端子(721)と、を更に備える。第2固定電極(7)は、可動方向(D1)において可動電極(6)と対向し、可動電極(6)との間の静電容量の変化を含む電気信号を出力する。2つの第1端子(54)は、2つの検知部(5)の各々の第1固定電極(50)から突出している。1つの第2端子(721)は、第2固定電極(7)から突出している。
この構成によれば、端子(2つの第1端子及び1つの第2端子)の本数を3本に制限できる。この結果、端子のスキャン時間を短縮できる。また、端子のスキャン時間を短縮することで、消費電力を低減できる。
第8の態様の入力システム(100)は、第1~第7の態様の何れか1つの態様の入力装置(1)と、入力装置(1)から出力される電気信号に基づいて、操作体(U1)の操作状態を判定する判定部(93)と、を備える。
この構成によれば、上記の効果を奏する入力システム(100)を提供できる。