[比較例]
図1に比較例を示す。この比較例は本実施形態の比較対象となる電子制御装置の一例を示すものである。
図1は比較例による電子制御装置の断面図である。プリント基板201には電子部品である半導体チップ202が搭載されている。さらに、プリント基板201には電源および通信線を引き込むワイヤハーネス401を接続するためのコネクタ302が搭載され、コネクタピン301がプリント基板201に接続されている。コネクタ302は、メス型のコネクタ302aとオス型のコネクタ302bより成り、メス型のコネクタ302aがプリント基板201上に搭載されている。
プリント基板201は、筐体上部101と筐体下部104に挟持されて配置される。筐体上部101には半導体チップ202に対向してプリント基板201側に向けて第1凸部106が形成される。半導体チップ202と第1凸部106の間には放熱グリス203が挿入される。半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体上部101に伝わり、筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
一方で、高い動作周波数で動作した半導体チップ202に起因するノイズ電流が、放熱グリス203の寄生容量を介して筐体上部101に伝わる。筐体上部101と筐体下部104は金属製であり、筐体上部101と筐体下部104はネジによって互いに固着されている。ノイズ電流が伝わるノイズ電流経路503を図中に点線で示す。
筐体上部101から筐体下部104に伝わったノイズ電流の一部は筐体下部104とアース501(車体)の間の寄生容量502を介して、アース501に伝わる。アース501に伝わったノイズ電流は図示省略した外部装置を経てワイヤハーネス401を介してプリント基板201に戻ることで、電子制御装置の外部に放射効率の高い大きなノイズ電流ループを形成し、不要な電磁放射(ノイズ)が発生する。
また、電子制御装置を自動車へ搭載した場合においては、筐体上部101、筐体下部104とアース501を導通させる場合もあるが、筐体上部101、筐体下部104とアース501との間の寄生容量502を介さずに筐体上部101、筐体下部104からアース501にノイズ電流に流れるため、同じように電子制御装置の外部にノイズ電流ループが形成されて不要な電磁放射が発生する。
以下に説明する各実施形態では、電子部品の動作によるノイズが電子制御装置の外へ漏れるのを防ぐ。
[第1の実施形態]
図2、図3は、本発明の第1の実施形態を示す図である。図2は、図3に示す電子制御装置のA-A’線断面図であり、図3は、電子制御装置の筐体上部101を取り外した上面図である。図1の比較例と同一の箇所は同一の符号を付す。
図2に示すように、プリント基板201には電子部品であるCPUなどの半導体チップ202が搭載されている。さらに、プリント基板201には電源および通信線を引き込むワイヤハーネス401を接続するためのコネクタ302が搭載され、コネクタピン301がプリント基板201に接続されている。コネクタピン301は、プリント基板201と図示省略した外部装置との間で電気的な接続をとるための端子である。コネクタ302は、メス型のコネクタ302aとオス型のコネクタ302bより成り、メス型のコネクタ302aがプリント基板201上に搭載されている。
プリント基板201は、筐体上部101と筐体下部104に挟持されて配置される。筐体上部101には半導体チップ202に対向してプリント基板201側に向けて第1凸部106が形成される。半導体チップ202と第1凸部106の間には放熱グリス203が挿入される。放熱グリス203は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた熱伝導率の高い材料である。半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体上部101に伝わり、筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
図2に示すように、筐体上部101には、筐体上部101の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、プリント基板201に向けて第2凸部103を設ける。そして、第2凸部103とプリント基板201の間に誘電体204を挿入する。誘電体204は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた絶縁性の材料である。プリント基板201にはGNDパターンが含まれているので、誘電体204は、筐体上部101とプリント基板201との間で容量結合を実現する。
これにより、半導体チップ202に起因するノイズ電流は、筐体上部101から第2凸部103、誘電体204、プリント基板201を経るノイズ電流経路503が形成される。ここで、ノイズ電流経路503は、筐体上部101の内壁側を経て形成されるので、筐体外部にノイズ電流ループが晒されて生じる電磁放射を抑えることができる。また、ノイズ電流経路503は、図1の比較例で示した筐体外を通るノイズ電流経路503よりも低いインピーダンスになるので、図1の比較例で示したように筐体外を経由することが無い。
これにより、電子制御装置は、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
図3は、電子制御装置の筐体上部101を取り外した状態の上面図である。なお、図2は、図3のA-A’の位置における断面図である。図3に示すように、プリント基板201はその四隅にネジ穴205を有し、図示省略した筐体上部101に対してネジによって固定される。また、筐体下部104は、その四隅にネジ穴105を有し、筐体上部101に対してネジによって固定される。
図3に示すように、半導体チップ202上の放熱グリス203は半導体チップ202を含むようにプリント基板201上のエリア206に塗布される。また、筐体上部101の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、プリント基板201に向けてコネクタ302を囲むようにコの字状に形成された第2凸部103に対向して、プリント基板201上のエリア207に誘電体204が塗布される。コネクタ302は、メス型のコネクタ302aとオス型のコネクタ302bより成り、メス型のコネクタ302aがプリント基板201上に搭載されている。
放熱グリス203による寄生容量(第1容量部の容量)に対して、誘電体204による寄生容量(第2容量部の容量)は同程度以上が好ましい。このような容量条件を満たすように放熱グリス203および誘電体204の誘電率および厚み、面積を定める。例えば、誘電体204として放熱グリス203と同じ材料を用い、厚みが同じである場合は、(エリア206の面積)≦(エリア207の面積)となるようにする。なお、第1容量部の容量に対して、第2容量部の容量は同程度以上が好ましいが、この容量条件は、以下に説明する各実施形態においても同様である。
なお、誘電体204を塗布するエリア207内には誘電体204の厚みを薄くする観点から、部品が搭載されていないことが望ましいが、チップコンデンサやチップ抵抗などの低背部品であれば、搭載されていてもよい。
また、筐体上部101の内側にコネクタ302を囲むように第2凸部103を設けているので、コネクタ302のハウジングが樹脂製であっても、プリント基板201上の電子部品から筐体内の空間に直接放射された電磁波が漏洩するのを防ぐ効果が得られる。
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態を示す図である。図4は、図3に示す第1の実施形態と同様に、電子制御装置の筐体上部101を取り外した状態のプリント基板201の上面図である。なお、断面図は図2に示す第1の実施形態と同様であるので省略する。図3に示した第1の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
図4に示すように、本実施形態では、プリント基板201上であってコネクタ302の周辺に電解コンデンサなどの背の高い部品215を配置した例を示す。
半導体チップ202上の放熱グリス203は半導体チップ202を含むようにプリント基板201上のエリア206に塗布される。また、筐体上部101の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、プリント基板201に向けてコネクタ302を囲むようにコの字状に形成された第2凸部103に対向して、プリント基板201上のエリア207に誘電体204が塗布される。誘電体204は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた絶縁性の材料である。この場合に、プリント基板201上のエリア207内の3つの部品215を避けるように、誘電体204を塗布するエリア207を4分割して設ける。なお、この例ではエリア207を4分割した例で説明したが、エリア207の分割数は部品215の数に応じて決定する。第2凸部103の誘電体204と接する先端部分は、背の高い部品215と干渉しないようにエリア207の分割数に応じて分割される。
これにより、プリント基板201上に背の高い部品215が配置されていた場合でも、電子制御装置は、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について、図5を参照して説明する。図5は、電子制御装置の断面図である。図2に示した第1の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
本実施形態では、電子部品である半導体チップ202は、プリント基板201上のコネクタ302の搭載面とは逆の面に搭載されている。そして、半導体チップ202と筐体下部104の第1凸部106との間に放熱グリス203が挿入されている。第1の実施形態と同様に、筐体上部101には、筐体上部101の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、コネクタピン301を囲むようにコの字状にプリント基板201に向けて第2凸部103を設ける。そして、第2凸部103とプリント基板201の間に誘電体204を挿入する。誘電体204は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた絶縁性の材料である。
また、筐体上部101と筐体下部104は金属製であり、筐体上部101と筐体下部104はネジによって互いに固着されている。そして、筐体上部101および筐体下部104の外面にはそれぞれ放熱フィン102が形成されている。
プリント基板201にはGNDパターンが含まれているので、誘電体204は、筐体上部101とプリント基板201との間で容量結合を実現する。これにより、半導体チップ202に起因するノイズ電流は、筐体下部104から筐体上部101、第2凸部103、誘電体204、プリント基板201を経るノイズ電流経路503が形成される。ここで、ノイズ電流経路503は、筐体下部104、筐体上部101の内壁側を経て形成されるので、筐体外部にノイズ電流ループが晒されて生じる電磁放射を抑えることができる。また、ノイズ電流経路503は、図1の比較例で示した筐体外を通るノイズ電流経路503よりも低いインピーダンスであるので、筐体外を経由することが無い。
また、半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体下部104および筐体上部101に伝わり、筐体下部104および筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
これにより、電子部品がプリント基板201上のコネクタ302の搭載面とは逆の面に搭載されていた場合でも、電子制御装置は、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態について、図6を参照して説明する。図6は、電子制御装置の断面図である。図5に示した第3の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
本実施形態では、図6に示すように、電子部品である半導体チップ202は、第3の実施形態と同様に、プリント基板201上のコネクタ302の搭載面とは逆の面に搭載されている。そして、半導体チップ202と筐体下部104の第1凸部106との間に放熱グリス203が挿入されている。筐体下部104には、筐体下部104の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、コネクタピン301を囲むように上面視コの字状にプリント基板201に向けて第2凸部103Aを設ける。そして、第2凸部103Aとプリント基板201の間に誘電体204を挿入する。誘電体204は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた絶縁性の材料である。
また、筐体上部101と筐体下部104は金属製であり、筐体上部101と筐体下部104はネジによって互いに固着されている。そして、筐体上部101および筐体下部104の外面にはそれぞれ放熱フィン102が形成されている。
プリント基板201にはGNDパターンが含まれているので、誘電体204は、筐体下部104とプリント基板201との間で容量結合を実現する。これにより、半導体チップ202に起因するノイズ電流は、筐体下部104から第2凸部103A、誘電体204、プリント基板201を経るノイズ電流経路503が形成される。ここで、ノイズ電流経路503は、筐体下部104の内壁側を経て形成されるので、筐体外部にノイズ電流ループが晒されて生じる電磁放射を抑えることができる。また、ノイズ電流経路503は、図1の比較例で示した筐体外を通るノイズ電流経路503よりも低いインピーダンスであるので、筐体外を経由することが無い。
また、半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体下部104および筐体上部101に伝わり、筐体下部104および筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
これにより、電子部品がプリント基板201上のコネクタ302の搭載面とは逆の面に搭載されていた場合でも、電子制御装置は、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態について、図7を参照して説明する。図7は、電子制御装置の断面図である。図6に示した第4の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
本実施形態では、図7に示すように、電子部品である半導体チップ202は、第3の実施形態と同様に、プリント基板201上のコネクタ302の搭載面とは逆の面に搭載されている。そして、半導体チップ202と筐体下部104の第1凸部106Aとの間に放熱グリス203が挿入されている。プリント基板201のコネクタピン301接続エリアにおいて、プリント基板201と筐体下部104との間に誘電体204を設置する。コネクタピン301はプリント基板201のGND端子に接続されるコネクタピンが含まれる。誘電体204は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた絶縁性の材料である。
また、筐体上部101と筐体下部104は金属製であり、筐体上部101と筐体下部104はネジによって互いに固着されている。そして、筐体上部101および筐体下部104の外面にはそれぞれ放熱フィン102が形成されている。
誘電体204は、筐体下部104とプリント基板201との間で容量結合を実現する。これにより、半導体チップ202に起因するノイズ電流は、筐体下部104から誘電体204、プリント基板201を経るノイズ電流経路503が形成される。ここで、ノイズ電流経路503は、筐体下部104の内壁側を経て形成されるので、筐体外部にノイズ電流ループが晒されて生じる電磁放射を抑えることができる。また、ノイズ電流経路503は、図1の比較例で示した筐体外を通るノイズ電流経路503よりも低いインピーダンスであるので、筐体外を経由することが無い。
また、半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体下部104および筐体上部101に伝わり、筐体下部104および筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
これにより、電子部品がプリント基板201上のコネクタ302の搭載面とは逆の面に搭載されていた場合でも、電子制御装置は、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態について、図8を参照して説明する。図8は、電子制御装置の断面図である。図2に示した第1の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
本実施形態では、図8に示すように、電子部品である半導体チップ202は、第1の実施形態と同様に、プリント基板201上のコネクタ302の搭載面と同じ面に搭載されている。そして、半導体チップ202と筐体上部101の第1凸部106との間に放熱グリス203が挿入されている。第1の実施形態と同様に、筐体上部101には、筐体上部101の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、上面視でコネクタピン301を囲むようにコの字状にプリント基板201に向けて第2凸部103が設けられている。そして、第2凸部103とプリント基板201の間に誘電体204が形成される。誘電体204は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた絶縁性の材料である。本実施例では、誘電体204はプリント基板201上のコネクタ302の搭載面と同じ面に対して薄く塗布される。例えば、誘電体204としてはプリント基板201のソルダーレジストであっても良い。第2凸部103は誘電体204に接触するように設置される。誘電体204はプリント基板201と第2凸部103との間にのみ塗布することにしてもよい。
プリント基板201にはGNDパターンが含まれているので、誘電体204は、筐体上部101とプリント基板201との間で容量結合を実現する。これにより、半導体チップ202に起因するノイズ電流は、筐体上部101から第2凸部103、誘電体204、プリント基板201を経るノイズ電流経路503が形成される。ここで、ノイズ電流経路503は、筐体上部101の内壁側を経て形成されるので、筐体外部にノイズ電流ループが晒されて生じる電磁放射を抑えることができる。また、ノイズ電流経路503は、図1の比較例で示した筐体外を通るノイズ電流経路503よりも低いインピーダンスであるので、筐体外を経由することが無い。
また、半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体上部101に伝わり、筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
これにより、誘電体204を薄くすることにより、容量結合を高くすることができるため、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
(第6の実施形態の変形例)
第6の実施形態の変形例について、図9を参照して説明する。図9は、電子制御装置の断面図である。図8に示した第6の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
第6の実施形態では、誘電体204をプリント基板201上のコネクタ302の搭載面と同じ面に薄く塗布するようにしたが、この場合、筐体上部101の第2凸部103が誘電体204に接触するような加工精度を必要とする。このような場合は、図9に示すように、第2凸部103と誘電体204の間に間隙を持たせ、この間隙に導電性の弾性体214を挿入する。導電性の弾性体214は、例えば導電布製ガスケットである。この弾性体214が第2凸部103の先端に押されて弾性変形し、プリント基板201上に塗布した誘電体204と第2凸部103とが弾性体214を介して確実に接触する。このような構成にすれば、第2凸部103の加工に高い加工精度が要求されない。
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態について、図10を参照して説明する。図10は、電子制御装置の断面図である。図2に示した第1の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
本実施形態では、図10に示すように、電子部品である半導体チップ202は、第1の実施形態と同様に、プリント基板201上のコネクタ302の搭載面と同じ面に搭載されている。そして、半導体チップ202と筐体上部101の第1凸部106との間に放熱グリス203が挿入されている。プリント基板201上には、コネクタピン301とコネクタ302の一部を覆う断面L字状のコネクタシールド208(第3凸部)が設けられている。コネクタシールド208は導電性金属であり、プリント基板201上のGNDパターンと接続される。あるいは、コネクタシールド208はコンデンサを介してAC的にプリント基板201上のGNDパターンと接続される。コネクタシールド208と筐体上部101の間に誘電体204を挿入する。換言すると、誘電体204は、プリント基板201に形成されて筐体上部101側に凸となっている第3凸部208と筐体上部101との間に設けられる。誘電体204は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた絶縁性の材料である。
誘電体204は、筐体上部101とコネクタシールド208との間で容量結合を実現する。これにより、半導体チップ202に起因するノイズ電流は、筐体上部101から誘電体204、コネクタシールド208、プリント基板201を経るノイズ電流経路503が形成される。ここで、ノイズ電流経路503は、筐体上部101の内壁側を経て形成されるので、筐体外部にノイズ電流ループが晒されて生じる電磁放射を抑えることができる。また、ノイズ電流経路503は、図1の比較例で示した筐体外を通るノイズ電流経路503よりも低いインピーダンスであるので、筐体外を経由することが無い。
また、半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体上部101に伝わり、筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
これにより、筐体内に凸部形状などを形成しづらい場合においても、電子制御装置は、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
[第8の実施形態]
本発明の第8の実施形態について、図11を参照して説明する。図11は、電子制御装置の断面図である。図10に示した第7の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
本実施形態では、図11に示すように、電子部品である半導体チップ202は、第1の実施形態と同様に、プリント基板201上のコネクタ302の搭載面と同じ面に搭載されている。半導体チップ202と筐体上部101の第1凸部106との間に放熱グリス203が挿入されている。さらに、筐体上部101の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、プリント基板201に向けてコネクタ302を囲むように上面視コの字状に第2凸部103を形成する。そして、第2凸部103に囲まれたコネクタピン301を覆うように誘電体204を充填する。コネクタピン301にはプリント基板201のGND端子に接続されるコネクタピンが含まれる。誘電体204は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた絶縁性の材料である。
誘電体204は、筐体上部101とコネクタピン301との間で容量結合を実現する。これにより、半導体チップ202に起因するノイズ電流は、筐体上部101から誘電体204、コネクタピン301、プリント基板201を経るノイズ電流経路503が形成される。ここで、ノイズ電流経路503は、筐体上部101の内壁側を経て形成されるので、筐体外部にノイズ電流ループが晒されて生じる電磁放射を抑えることができる。また、ノイズ電流経路503は、図1の比較例で示した筐体外を通るノイズ電流経路503よりも低いインピーダンスであるので、筐体外を経由することが無い。
また、半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体上部101に伝わり、筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
これにより、電子制御装置は、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。特に、ノイズ電流の出口となりうるコネクタピン301に直接結合させることから、ワイヤハーネス401へのノイズ電流の流出を抑制することができる。
[第9の実施形態]
本発明の第9の実施形態について、図12を参照して説明する。図12は、電子制御装置の断面図である。図11に示した第8の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
図12に示すように、電子部品である半導体チップ202は、第1の実施形態と同様に、プリント基板201上のコネクタ302の搭載面と同じ面に搭載されている。半導体チップ202と筐体上部101の第1凸部106との間に放熱グリス203が挿入されている。さらに、筐体上部101の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、プリント基板201に向けてコネクタ302を囲むように上面視コの字状に第2凸部103を形成する。本実施形態では、コネクタ302として、コネクタ302自身がシールド導体303を持つシールドコネクタを使用する。シールドコネクタは、プリント基板201側でGND端子と接続され、さらにケーブル側ではケーブルの周囲を被覆したシールドケーブル402に接続されている。そして、第2凸部103に囲まれ、コネクタ302のシールド導体303と筐体上部101の間に誘電体204を充填する。誘電体204は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた絶縁性の材料である。
誘電体204は、筐体上部101とコネクタ302のシールド導体303との間で容量結合を実現する。これにより、半導体チップ202に起因するノイズ電流は、筐体上部101から誘電体204、シールド導体303、プリント基板201を経るノイズ電流経路503が形成される。ここで、ノイズ電流経路503は、筐体上部101の内壁側を経て形成されるので、筐体外部にノイズ電流ループが晒されて生じる電磁放射を抑えることができる。また、ノイズ電流経路503は、図1の比較例で示した筐体外を通るノイズ電流経路503よりも低いインピーダンスであるので、筐体外を経由することが無い。
また、半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体上部101に伝わり、筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
これにより、電子制御装置は、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。特に、ノイズ電流の出口となりうるコネクタ302のシールド導体303に直接結合させることから、ワイヤハーネス401へのノイズ電流の流出を抑制することができる。
[第10の実施形態]
本発明の第10の実施形態について、図13、図14を参照して説明する。図13は、電子制御装置の断面図であり、図14は、電子制御装置の筐体上部101を取り外した上面図である。図2、図3に示した第1の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
図13に示すように、電子部品である半導体チップ202は、第1の実施形態と同様に、プリント基板201上のコネクタ302の搭載面と同じ面に搭載されている。半導体チップ202と筐体上部101の第1凸部106との間に放熱グリス203が挿入されている。さらに、筐体上部101の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、プリント基板201に接触する第2凸部103を形成する。そして、第2凸部103はプリント基板201の裏側から挿通されたネジ209によってプリント基板201に固定される。第2凸部103の先端はプリント基板201の表面に設けられた導電パターン211(図14参照)に接触する。
図14は、本実施形態において、電子制御装置の筐体上部101を取り外した状態の上面図である。なお、図13は、図14のB-B’の位置における断面図である。図14に示すように、プリント基板201はその四隅にネジ穴205を有し、図示省略した筐体上部101に対してネジによって固定される。また、筐体下部104は、その四隅にネジ穴105を有し、筐体上部101に対してネジによって固定される。
図14に示すように、第2凸部103が接触するプリント基板201上には導電パターン211が設けられている。導電パターン211に近接する位置にはプリント基板201のGND端子に接続されたGNDパターン213が設けられる。そして、導電パターン211とGNDパターン213との間には両者を跨いで3個のチップコンデンサ210が配置される。各チップコンデンサ210の一端は導電パターン211に、他端はGNDパターン213に接続される。なお、チップコンデンサ210は3個の例で説明したが、容量に応じて適宜増減可能である。また、半導体チップ202上の放熱グリス203は半導体チップ202を含むようにプリント基板201上のエリア206に塗布される。
チップコンデンサ210は、プリント基板201と第2凸部103との間で容量結合を実現する。これにより、半導体チップ202に起因するノイズ電流は、筐体上部101から第2凸部103、チップコンデンサ210、プリント基板201を経るノイズ電流経路503(図13参照)が形成される。ここで、ノイズ電流経路503は、筐体上部101の内壁側を経て形成されるので、筐体外部にノイズ電流ループが晒されて生じる電磁放射を抑えることができる。また、ノイズ電流経路503は、図1の比較例で示した筐体外を通るノイズ電流経路503よりも低いインピーダンスであるので、筐体外を経由することが無い。
また、半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体上部101に伝わり、筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
これにより、電子制御装置は、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。特に、容量結合を実現するための誘電体を用いるのが困難な場合に本実施形態を適用することができる。
[第11の実施形態]
本発明の第11の実施形態について、図15、図16を参照して説明する。図15は、電子制御装置の断面図であり、図16は、電子制御装置の筐体上部101を取り外した上面図である。図2、図3に示した第1の実施形態と同一の箇所は同一の符号を付す。
図15に示すように、プリント基板201には電子部品である半導体チップ202が搭載されている。本実施形態では半導体チップ202がプリント基板201に複数搭載される。さらに、プリント基板201には電源および通信線を引き込むワイヤハーネス401を接続するためのコネクタ302が搭載され、コネクタピン301がプリント基板201に接続されている。
プリント基板201は、その周囲を筐体上部101と筐体下部104に挟まれて配置される。各半導体チップ202と筐体上部101の各第1凸部106との間には放熱グリス203が挿入される。各半導体チップ202に発生した熱は、放熱グリス203から筐体上部101に伝わり、筐体上部101に設けられた放熱フィン102から空気中へ伝導あるいは輻射される。
図15の電子制御装置の断面図に示すように、筐体上部101には、筐体上部101の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、プリント基板201に向けて第2凸部103を設ける。この第2凸部103の形状は図2を用いて説明した第1の実施形態と同様である。すなわち、第2凸部103は、筐体上部101の内側であって、コネクタピン301の近傍の位置に、プリント基板201に向けてコネクタ302を囲むように上面視コの字状に形成される。そして、第2凸部103とプリント基板201の間に誘電体204を挿入する。誘電体204は、例えば、シリコーン系の樹脂にセラミック材料を混ぜた絶縁性の材料である。
図16は、電子制御装置の筐体上部101を取り外した状態の上面図である。なお、図15は、図16のC-C’の位置における断面図である。図16に示すように、プリント基板201はその四隅にネジ穴205を有し、図示省略した筐体上部101に対してネジによって固定される。また、筐体下部104は、その四隅にネジ穴105を有し、筐体上部101に対してネジによって固定される。
本実施形態では複数の半導体チップ202がプリント基板201上に配置されている。放熱グリス203は各半導体チップ202を含むようにプリント基板201上の各エリア206に塗布される。さらに、筐体上部101の内側に設けた第2凸部103に対向して、プリント基板201上のエリア207に誘電体204が塗布される。
プリント基板201にはGNDパターンが含まれているので、誘電体204は、筐体上部101とプリント基板201との間で容量結合を実現する。これにより、半導体チップ202の一つに起因するノイズ電流は、筐体上部101から第2凸部103、誘電体204、プリント基板201を経るノイズ電流経路503が形成される。他の半導体チップ202に起因するノイズ電流もそれぞれ同様なノイズ電流経路503が形成される。ここで、ノイズ電流経路503は、筐体上部101の内壁側を経て形成されるので、筐体外部にノイズ電流ループが晒されて生じる電磁放射を抑えることができる。また、ノイズ電流経路503は、図1の比較例で示した筐体外を通るノイズ電流経路503よりも低いインピーダンスであるので、筐体外を経由することが無い。
これにより、電子制御装置は、複数の電子部品を搭載した場合でも、放熱性能を確保しながら、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
なお、第2の実施形態~第10の実施形態では、電子部品が一つの場合を例に説明したが、各実施形態において、本実施形態と同様に複数の電子部品を搭載してもよい。
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電子制御装置は、半導体チップ202を搭載したプリント基板201を格納した筐体(実施形態は筐体上部101と筐体下部104により筐体を構成する)を備える電子制御装置であって、筐体(101、104)と半導体チップ202との間で形成される放熱グリス203と、筐体(101、104)とプリント基板201との間で形成される誘電体204と、を備え、筐体(101、104)とプリント基板201は、放熱グリス203と誘電体204とを介してノイズ伝達経路503が形成されている。これにより、半導体チップ202などの電子部品の動作によるノイズが電子制御装置の外へ漏れるのを防ぐことができる。
(2)電子制御装置は、筐体(101、104)と半導体チップ202との間に挿入された放熱グリス203を有し、筐体(101、104)とプリント基板201との間に挿入された誘電体204を有する。これにより、半導体チップ202などの電子部品の動作によるノイズが電子制御装置の外へ漏れるのを防ぐことができる。
(3)電子制御装置の筐体(101、104)は、少なくとも一つが放熱部(放熱フィン102)を有する複数の部材(筐体上部101、筐体下部104)を有する。放熱グリス203は、放熱部(放熱フィン102)を有する筐体上部101、筐体下部104のいずれか一方に形成されてプリント基板201側に凸となっている第1の凸部(106、106A)と半導体チップ202との間に設けられている。これにより、放熱性能を確保しながら、半導体チップ202などの電子部品の動作によるノイズが電子制御装置の外へ漏れるのを防ぐことができる。
(4)電子制御装置は、筐体(101、104)に形成されてプリント基板201側に凸となっている第2の凸部(103,103A)とプリント基板201との間に誘電体204を設ける。これにより、半導体チップ202などの電子部品の動作によるノイズが電子制御装置の外へ漏れるのを防ぐことができる。
(5)電子制御装置は、プリント基板201から外部装置に電気的な接続をとるための端子(コネクタ302)を囲うように第2の凸部103を設ける。これにより、プリント基板201上の電子部品から筐体内の空間に直接放射された電磁波が漏洩することを防ぐことができる。
(6)電子制御装置は、第2の凸部103の先端が複数に分割されている。そして、複数の分割された第2の凸部103の間に電子部品が配置されている。これにより、複数の第2の凸部103の先端の間の空間には、第2の凸部103と干渉しない背の高い部品215を配置して、電子部品の動作によるノイズが電子制御装置の外へ漏れるのを防ぐことができる。
(7)電子制御装置の筐体は、複数の部材(筐体上部101,筐体下部104)で構成され、複数の部材(筐体上部101、筐体下部104)のうち、プリント基板201から外部装置に電気的な接続をとる端子(コネクタ302)の搭載面とは逆側のプリント基板201面に対向する部材に第2の凸部103を設ける。これにより、プリント基板201の端子搭載面と反対面に電子部品が搭載されても、電子部品の動作によるノイズが電子制御装置の外へ漏れるのを防ぐことができる。
(8)電子制御装置は、プリント基板201上にソルダーレジスト204を塗布して形成されている。これにより、ソルダーレジスト204などの誘電体を薄くすることにより、容量結合を高くすることができ、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
(9)電子制御装置は、ソルダーレジスト204と筐体(101、104)との間に導電性の弾性体が挿入される。これにより、第2凸部103の加工に高い加工精度が要求されることなく、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
(10)電子制御装置は、プリント基板201に形成されて筐体(101、104)側に凸となっている第3の凸部と筐体(101、104)との間に誘電体204を設ける。これにより、筐体内に凸部形状などを形成しづらい場合においても、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
(11)電子制御装置は、プリント基板201から外部装置に電気的な接続をとるためのコネクタピン301と筐体(101、104)の間に誘電体204を設ける。ノイズ電流の出口となりうるコネクタピン301に直接結合させることから、ワイヤハーネス401へのノイズ電流の流出を抑制することができる。
(12)電子制御装置は、プリント基板201から外部装置に電気的な接続をとるためのシールド導体303と筐体(101、104)の間に誘電体204を設ける。ノイズ電流の出口となりうるコネクタ302のシールド導体303に直接結合させることから、ワイヤハーネス401へのノイズ電流の流出を抑制することができる。
(13)電子制御装置は、プリント基板201上に搭載されたチップコンデンサ210によって誘電体を構成する。これにより、容量結合を実現するための誘電体を用いるのが困難な場合に適用することができる。
(14)電子制御装置の筐体(101、104)は、複数の半導体チップ202を搭載したプリント基板201を格納する。放熱グリスである第1容量部203は、筐体(101、104)と複数の半導体チップ202の各々との間に形成される空間にそれぞれ設けられる。これにより、複数の電子部品を搭載した場合でも、電子制御装置の外部へノイズが漏れるのを防ぐことができる。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の各実施形態を組み合わせた構成としてもよい。